JP2004359521A - フッ素ドープ酸化スズ粒子の製造方法 - Google Patents

フッ素ドープ酸化スズ粒子の製造方法 Download PDF

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義久 別府
Kazuo Sunahara
一夫 砂原
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Abstract

【課題】導電性に優れ、高い結晶性を有するフッ素ドープ酸化スズ粒子およびその製造方法を提供する。
【解決手段】酸化物表示で、アルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物からなる群より選ばれる1種以上と、酸化スズと、酸化ホウ素とを含み、前記酸化物の酸素原子の一部がフッ素原子に置換された溶融物を得る工程と、得られた溶融物を冷却してフッ素ドープ酸化スズ結晶を析出させる工程と、得られた結晶化物からフッ素ドープ酸化スズ結晶を分離する工程と、をこの順に含むことを特徴とするフッ素ドープ酸化スズ粒子の製造方法。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高い導電性を有し、結晶性の高いフッ素ドープ酸化スズ粒子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、液晶ディスプレイやエレクトロルミネッセンスディスプレイといった表示素子の電極や太陽電池用基板、タッチパネルなどに透明導電膜が使用されている。前記透明導電膜を構成する導電性成分としては、スズドープ酸化インジウム(ITO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、ニオブドープ酸化スズ、タンタルドープ酸化スズ、フッ素ドープ酸化スズなどが知られている。
【0003】
従来、フッ素ドープ酸化スズの製造方法としては、例えば含フッ素有機スズ化合物を気化して被膜を形成する方法(特許文献1)が知られている。この方法では、引火性の有機溶媒の使用を必要としない点で優れているものの、合成が複雑で高価な有機スズ化合物の使用が必須である。
【0004】
一方、特許文献2には、スズ(IV)塩を含む溶液と、フッ化物を含む溶液とを混合し、pHを調整して水酸化物を沈殿させた後、これを500℃程度で熱分解してフッ素ドープ酸化スズを製造する方法が開示されており、この方法は小粒径の結晶性粒子の製造に有効である。近年ではさらに、導電性に優れ、高い結晶性を有するフッ素ドープ酸化スズ粒子およびその製造方法の提供が求められている。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−165440号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開平7−69633号公報(特許請求の範囲)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、優れた導電性を有するフッ素ドープ酸化スズ粒子の製造方法に関し、特に高い結晶性を有するフッ素ドープ酸化スズ粒子およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、酸化物表示で、アルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物からなる群より選ばれる1種以上と、酸化スズと、酸化ホウ素とを含み、前記酸化物の酸素原子の一部がフッ素原子に置換された溶融物を得る工程と、得られた溶融物を冷却してフッ素ドープ酸化スズ結晶を析出させる工程と、得られた結晶化物からフッ素ドープ酸化スズ結晶を分離する工程と、をこの順に含むことを特徴とするフッ素ドープ酸化スズ粒子の製造方法を提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の製造方法において、溶融物は、アルカリ金属フッ化物およびアルカリ土類金属フッ化物からなる群より選ばれる1種以上を含む混合物を溶融して得ることが好ましい。上記アルカリ金属フッ化物およびアルカリ土類金属フッ化物からなる群より選ばれる1種以上の物質は、溶融により分解してフッ素を放出し、酸化スズ中にドープされるフッ素源として働く。また、ホウ酸塩と協働して、マトリックス形成成分として作用する。アルカリ金属フッ化物およびアルカリ土類金属フッ化物からなる群より選ばれる1種以上の物質は常温で安定な固体であり、従来より知られたフッ化水素酸、フッ化アンモニウム、フッ化水素アンモニウム、ケイフッ化水素酸、ケイフッ化アンモニウム、ホウフッ化水素酸、ホウフッ化アンモニウム、リンフッ化水素酸、リンフッ化アンモニウムなどのフッ素化合物と比較して混合時、高温での溶融時の安定性に優れたフッ素源である。
【0009】
アルカリ金属フッ化物としては、安定性、価格、入手のしやすさなどの点からLiF、NaFおよびKFからなる群より選ばれる1種以上を用いると好ましい。また、アルカリ土類金属のフッ化物としてはBeF、MgF、CaF、SrF、BaFおよびRaFからなる群より選ばれる1種以上の任意の物質を用いればよいが、安定性、価格、入手のしやすさなどの点からMgF、CaF、SrFおよびBaFからなる群より選ばれる1種以上を用いると好ましい。
【0010】
次に、本発明では、スズ源としてスズ酸塩を含む混合物の溶融により、酸化スズを含む溶融物を得ると好ましい。スズ酸塩としては酸化スズ(SnOまたはSnO)を用いると好ましく、混合時の安定性などの点から特にSnOの使用が好ましい。スズ源としてフッ化スズ(SnFまたはSnF)を用いることもでき、その場合、フッ化スズはフッ素源としても働く。
【0011】
上記のフッ素源と、スズ源とに加え、本発明ではホウ酸塩をマトリックス形成成分として加えた混合物の溶融により溶融物を得ると好ましい。ホウ酸塩としては酸化ホウ素(B)またはホウ酸(HBO)を用いると好ましく、特にBを用いると混合、溶融時の安定性やマトリックスの溶脱の容易性の点で好ましい。
【0012】
アルカリ金属フッ化物およびアルカリ土類金属フッ化物からなる群より選ばれる1種以上の物質と、スズ酸塩と、ホウ酸塩との混合割合は、得られるフッ素ドープ酸化スズ粒子中のフッ素含量、およびフッ素ドープ酸化スズ粒子の回収率を考慮して設定すればよい。具体的には、アルカリ金属フッ化物およびアルカリ土類金属フッ化物からなる群より選ばれる1種以上の物質をフッ化物基準のモル%表示で10〜50%含み、スズ酸塩をSnO基準のモル%表示で5〜50%含み、ホウ酸塩をB基準のモル%表示で10〜50%含む混合物を溶融すれば、適度な粘性を有する溶融物が得られるうえ、冷却時に、目的とするフッ素ドープ酸化スズの結晶を生成させやすい点で好ましい。
【0013】
なお、フッ素ドープ酸化スズ粒子中のフッ素含量を制御するために、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の酸化物およびアルカリ土類金属の炭酸塩からなる群より選ばれる1種以上を含む混合物を溶融して溶融物を得てもよい。具体的にはLiCO、NaCO、KCO、MgO、MgCO、CaO、CaCO、SrO、SrCO、BaOおよびBaCOからなる群より選ばれる1種以上を用いると好ましく、なかでも、フッ素含量の制御が容易である点で、アルカリ金属フッ化物またはアルカリ土類金属フッ化物中の金属と同じ金属の塩を用いるとよい。また、これらの塩以外に、さらにアルカリ金属またはアルカリ土類金属の硝酸塩、塩化物、シュウ酸塩などの有機酸塩を添加してもよい。
【0014】
所望の特性を低下させない範囲であれば、混合物中の構成材料の純度は特に限定されないが、水和水を除いた純度が99%以上であると好ましく、より好ましくは純度99.9%以上のものを用いるとよい。また、溶融して均一な溶融物が得られる範囲であれば、上記構成材料の粒度も特に限定されない。また、上記構成材料は、ボールミル、遊星ミルなどの混合・粉砕手段を用いて、乾式または湿式で混合してから溶融すると好ましい。
【0015】
溶融は、大気雰囲気で行ってもよいが、酸素分圧や酸素流量を制御しながら行うことが好ましい。また、溶融に用いるるつぼは、白金製、またはロジウムを含む白金製であると好ましいが、耐火物を用いることもできる。また、溶融を抵抗加熱炉、高周波誘導炉またはプラズマアーク炉を用いて行うと好ましい。抵抗加熱炉は、ニクロム合金系などの金属製、炭化ケイ素質、ケイ化モリブデン製などの発熱体を備えた電気炉であると好ましい。高周波誘導炉は、誘導コイルを備えており、出力を制御できるものであればよく、また、プラズマアーク炉は、カーボンなどを電極とし、これによって発生するプラズマアークを利用できるものであればよい。溶融は800℃以上で行うことが好ましく、また、得られた溶融物は撹拌してもよい。なお、構成材料を混合した混合物は粉体状態で溶融してもよいし、あらかじめ成型した混合物を溶融してもよい。
【0016】
次に、加熱して得られた溶融物を冷却してフッ素ドープ酸化スズ結晶を析出させる。結晶化特性をもとに作成した冷却温度パターンに基づき制御しながら冷却を行えば、フッ素ドープ酸化スズ粒子の粒径、粒径分布および粒子形状を調整できるため好ましい。具体的には、40℃/s以下の速度で、マトリックス相のガラス転移点以下の温度(例えば、300℃程度)まで溶融物を冷却すれば、結晶核の生成および結晶成長を促進でき好ましい。なお、溶融炉から取り外したるつぼをそのまま室温まで空冷してもよい。比較的速い速度で冷却する場合には、溶融炉から取り外したるつぼを水冷するか、液体窒素などに接して冷却すればよい。また、冷却物に対し、再度加熱、冷却操作を行うことで、結晶の粒径およびその分布を制御してもよい。なお、結晶化によりホウ酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩が析出することもあるが、その場合には続く溶脱処理によって同時に除去できる。
【0017】
次に、上記によって得られたフッ素ドープ酸化スズ結晶を含む結晶化物から、フッ素ドープ酸化スズ結晶を分離する。酸または水を用いれば、結晶化物からフッ素ドープ酸化スズ粒子結晶以外の物質を容易に溶脱除去できる。酸としては、酢酸、塩酸、硝酸などの無機酸や、シュウ酸、クエン酸などの有機酸を用いることができる。また、溶脱を促進するために、酸または水を温めて用いてもよく、また、超音波照射を併用してもよい。この溶脱処理により、フッ素ドープ酸化スズ結晶の一部が溶解する場合もあるが、粒径を均一化できる点ではむしろ好ましい。
【0018】
溶脱処理後、必要に応じて純水による洗浄を行い、フッ素ドープ酸化スズ粒子を得る。得られるフッ素ドープ酸化スズ粒子中に、フッ素が0.1〜10質量%含まれることが好ましく、より好ましくは0.5〜3質量%含まれる。また、得られる粒子の粒径は、50nm〜10μmであると好ましい。特に好ましくは、0.2〜5μmとする。
【0019】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0020】
[例1〜9]
酸化スズ、酸化ホウ素、フッ化リチウム、炭酸リチウム、フッ化ナトリウム、炭酸ナトリウム、フッ化カリウムおよび炭酸カリウムを、それぞれSnO、B、LiF、LiO、NaF、NaO、KFおよびKO基準のモル%表示で表1に示す割合となるように秤量し、少量のエタノールを添加して自動乳鉢で混合・粉砕した。その後、乾燥させて原料粉末を得た。
得られた原料粉末を、ロジウムを10質量%含む白金製のるつぼに装填し、炭化ケイ素質発熱体と排煙設備を備えた電気炉で、200℃/hの速度で1200℃まで昇温し、2時間加熱して完全溶融させた。
【0021】
次に、200℃/hの速度で、室温まで降温して結晶化物を得た。
さらに、次に、結晶化処理後のフレークを70℃の1mol/L酢酸溶液中に20時間放置して可溶性物質を溶脱した。溶脱した液を遠心分離し、上澄みを捨てて水洗し、さらに水洗、乾燥、純水中での粉砕・分散を経て粒径0.5〜2μmの粒子を得た。
【0022】
得られた粒子の鉱物相をX線回折装置を用いて同定した結果、例1〜8のいずれも結晶性の高い粒子であり、また、フッ素ドープ酸化スズのみからなる粉末であることが判明した。
【0023】
また、得られたフッ素ドープ酸化スズ粒子の一部をジルコニウム製るつぼ中に採取し、試料に対し、質量換算で10倍量の水酸化ナトリウムを加えて溶融、分解し、イオン電極を用いてフッ素含量を定量した。結果を原料組成とともに表1に示す。
【0024】
【表1】
Figure 2004359521
【0025】
[例10〜20]
酸化スズ、酸化ホウ素、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、炭酸カルシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウムおよび炭酸バリウムを、それぞれSnO、B、MgF、CaF、CaO、SrF、BaFおよびBaO基準のモル%表示で表2に示す割合となるように秤量した以外は例1と同様にして原料粉末を得た。得られた原料粉末を、200℃/hの速度で1400℃まで昇温した以外は例1と同様にして、粒径0.5〜3μmの粒子を得た。得られた粒子は、X線回折結果より結晶性の高い粒子であり、また、フッ素ドープ酸化スズのみからなる粉末であることが判明した。また、例1と同様にしてフッ素含量を測定した。結果を原料組成とともに表1に示す。
【0026】
【表2】
Figure 2004359521
【0027】
[例21]
酸化スズ、酸化ホウ素、フッ化ナトリウムおよびフッ化バリウムを、それぞれSnO、B、NaFおよびBaF基準のモル%表示で20.0%、40.0%、20.0%および20.0%の割合となるように秤量した以外は例9と同様にして粒径約0.8μmの粒子を得た。得られた粒子は、X線回折結果より結晶性の高い粒子であり、また、フッ素ドープ酸化スズのみからなる粉末であることが判明した。また、例9と同様にしてフッ素含量を測定したところ、1.78質量%含まれていた。
【0028】
【発明の効果】
本発明によれば、導電性に優れ、高い結晶性を有するフッ素ドープ酸化スズ粒子を容易かつ安価に製造できる。本発明によって得られたフッ素ドープ酸化スズ粒子は、透明導電膜の構成材料として有用である。

Claims (9)

  1. 酸化物表示で、アルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物からなる群より選ばれる1種以上と、酸化スズと、酸化ホウ素とを含み、前記酸化物の酸素原子の一部がフッ素原子に置換された溶融物を得る工程と、得られた溶融物を冷却してフッ素ドープ酸化スズ結晶を析出させる工程と、得られた結晶化物からフッ素ドープ酸化スズ結晶を分離する工程と、をこの順に含むことを特徴とするフッ素ドープ酸化スズ粒子の製造方法。
  2. アルカリ金属フッ化物およびアルカリ土類金属フッ化物からなる群より選ばれる1種以上を含む混合物を溶融して前記溶融物を得る請求項1に記載のフッ素ドープ酸化スズ粒子の製造方法。
  3. 前記アルカリ金属フッ化物がLiF、NaFおよびKFからなる群より選ばれる1種以上である請求項2に記載のフッ素ドープ酸化スズ粒子の製造方法。
  4. 前記アルカリ土類金属フッ化物がMgF、CaF、SrFおよびBaFからなる群より選ばれる1種以上である請求項2に記載のフッ素ドープ酸化スズ粒子の製造方法。
  5. 前記混合物中に、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の酸化物およびアルカリ土類金属の炭酸塩からなる群より選ばれる1種以上を含む請求項2〜4のいずれかに記載のフッ素ドープ酸化スズ粒子の製造方法。
  6. 前記溶融物を、40℃/s以下の速度で300℃まで冷却する請求項1〜5のいずれかに記載のフッ素ドープ酸化スズ粒子の製造方法。
  7. 前記フッ素ドープ酸化スズ結晶を分離する工程を酸または水を用いて行う請求項1〜6のいずれかに記載のフッ素ドープ酸化スズ粒子の製造方法。
  8. 前記フッ素ドープ酸化スズ粒子中に、フッ素が0.1〜10質量%含まれる請求項1〜7のいずれかに記載のフッ素ドープ酸化スズ粒子の製造方法。
  9. 前記フッ素ドープ酸化スズ粒子の平均粒径が50nm〜10μmである請求項1〜8のいずれかに記載のフッ素ドープ酸化スズ粒子の製造方法。
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