JP2004357905A - 靴底内に熱可塑性スポンジを内蔵した加硫靴及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】厚底靴の製造において、軽量化のためにスポンジを内蔵し加硫缶加硫を行なうと、内蔵したスポンジが縮んで空隙が出来、不具合を生じる。
【解決手段】厚底靴の靴底部において、周壁を有する充実ゴムの外底と中底の裏面に設置した充実ゴム中底シートと靴底の側面飾りとなる未加硫の廻しテープとに囲まれ、気体の出入りが抑制された密閉空間に、熱可塑性の発泡樹脂体が内蔵され、加硫缶にて加熱・加圧することにより、未加硫の廻しテープが加硫し、前記熱可塑性の発泡樹脂体が軟化流動と同時に完全に発泡し、前記発泡樹脂体の体積収縮が生じない軽量厚底の加硫靴が得られる。。
【選択図】 図2
【解決手段】厚底靴の靴底部において、周壁を有する充実ゴムの外底と中底の裏面に設置した充実ゴム中底シートと靴底の側面飾りとなる未加硫の廻しテープとに囲まれ、気体の出入りが抑制された密閉空間に、熱可塑性の発泡樹脂体が内蔵され、加硫缶にて加熱・加圧することにより、未加硫の廻しテープが加硫し、前記熱可塑性の発泡樹脂体が軟化流動と同時に完全に発泡し、前記発泡樹脂体の体積収縮が生じない軽量厚底の加硫靴が得られる。。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、厚底靴の靴底において、本底が軽量化のための盗み部を有する充実ゴムであり、靴底内部に発泡樹脂体を内蔵させた軽量な厚底に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、厚底の廻しテープの加硫靴が製品化されているが、厚底の型底を使用している為、靴の重量が重たく、靴の踏付け部の屈曲が曲がり難く、履き心地が悪い状況であった。そのため、軽量な靴底として熱可塑性EVA樹脂(エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂)スポンジ等の樹脂発泡体を合中底とし、これに充実ゴムを外底として接着結合した靴底が開発された。
【0003】
これは、それぞれ別個の工程で加熱、加圧、或いは発泡成形した後、これらの接合面を表面処理し、接着剤を塗布した後、加圧結合し、その後必要に応じて所望の靴底形状に切削加工するもので、手数がかかりコスト高となっていた。
【0004】
製造工程の短縮のため、周壁を有する充実ゴムの外底の窪みに、発泡剤が配合された未加硫のゴムシートを入れ甲被を中底と共にラストに吊り込み加硫缶にて間接加硫を行い、発泡剤が配合された未加硫のゴムシートを発泡させ、外底内の窪みを発泡ゴムで充填させる方法が開示されている(例えは、特許文献1参照)。
【0005】
(特許文献) 実公昭62−78105号公報(考案の詳細な説明)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
厚底の部品となる充実ゴムの外底、発泡樹脂体、をそれぞれ別個に作成し、接着剤で一体化する工程において、発泡樹脂体が露出した靴底にすると、発泡樹脂体の物理的強度が弱いため、履用中発泡樹脂体の強度不足による破損が生じる。
露出させないために、充実ゴムの廻しテープで補強するか、または、充実ゴムの外底の形状を平板の上方に十分な高さの周壁を持たせる方法が取られている。
高い周壁を持たせるには、金型が高価になり、また充実ゴムの廻しテープで靴底を密着周設すると、充実ゴムの廻しテープの曲がり部に内部歪が発生し、オゾンクラックの原因や表面白化の原因となり、又、充実ゴムの廻しテープと充実ゴムの外底及び発泡樹脂体との接着処理も手間がかかる。
【0007】
周壁を有する充実ゴムの外底の窪みに、発泡剤が配合された未加硫のゴムシートを入れ甲被を中底と共にラストに吊り込み加硫缶にて熱空気による間接加硫を行い、発泡剤が配合された未加硫ゴムシートを発泡させ、外底内の窪みを発泡ゴムで充填させる方法は種種の難しさがある。
【0008】
第一には、発泡剤が配合された未加硫ゴムの発泡のコントロールである。未加硫ゴムの周りが熱伝導度の低い充実ゴムの外底、プレスボード等の中底、布帛の甲被で囲まれており、しかも加硫缶加硫での熱空気による熱伝導であるので、熱の伝わる速度が遅く、未加硫ゴムの加硫速度と発泡剤の分解による気体の放出のタイミングを取るのが難しい。そのため未加硫ゴムの高度の品質管理が求められる。未加硫ゴムの加硫速度が速くても遅くても満足な発泡が得られない。又、未加硫ゴムがスコーチを起こすと粘度が上がり、発泡しなくなる。
【0009】
更に、発泡しすぎると外底が変形し膨らみ、発泡が少ないと空間が生じ外底が凹む。又、熱可塑性を有しないゴムによる発泡は、加硫後の収縮現象が大きく現われる。これは、加硫と同時に発泡が行なわれ、ゴムが加硫しつつ膨張変形するので、発泡した加硫ゴム内に内部歪が生じ、歪の緩和のために、発泡した加硫ゴムが時間をかけて縮むためである。
【0010】
又、軽量化の観点でマイナスになるのは、充実ゴムの外底は盗み部を設け軽量化を図っているが、その盗み部に発泡ゴムが充填されるので、軽量化の効果が減少する。
【0011】
本発明は、従来技術の課題を解決するために鋭意研究を行ない、簡易で、常に安定した品質の軽量厚底をうる方法を提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、厚底靴の靴底部において、周壁を有する充実ゴムの外底と甲被で周縁を包まれた中底の裏面に設置した充実ゴム中底シートと靴底の側面飾りとなる未加硫の廻しテープとに囲まれ、気体の出入りが抑制された密閉空間に、加硫温度より低い融点を有する既成形の熱可塑性の発泡樹脂体が内蔵され、加硫缶にて加熱・加圧することにより、未加硫の廻しテープが加硫し、前記熱可塑性の発泡樹脂体が軟化流動と同時に完全に発泡し、前記発泡樹脂体の体積収縮が生じないことを特徴とする軽量厚底の加硫靴である。
【0013】
本発明の製造方法は、周壁を有する充実ゴムの外底の窪みに熱可塑性の発泡樹脂体を貼り付け靴底部品と成し、次に、ラストに甲被を中底と共に吊り込み、その中底裏面に充実ゴム中底シートを貼り、更に前記靴底部品を組み込み接着一体化した後、靴底部の周囲に未加硫の廻しテープを密着周設し、その後加硫缶にて間接加硫することを特徴とする軽量厚底靴の製造方法である。
【0014】
通常、ゴムによる発泡体は、加硫・発泡時に生じた内部歪の緩和現象による収縮現象が大きく現われる。又熱可塑性の発泡樹脂体は、大気圧下で融点以上に加熱すると発泡体内のガスが大気圧以上に加圧され外気へ抜けてしまい、冷えると著しく収縮する。
【0015】
本発明は、熱可塑性の発泡樹脂体を加熱しても体積収縮が起きない技術に関する。そのためには発泡体と雰囲気の圧力を同じ圧力にしておく必要がある。
すなわち、内蔵された発泡体が体積収縮を起こさないためには、内蔵する空間を密閉空間にしておかねばならない。
【0016】
厚底を軽量化するため、周壁を有する充実ゴムの外底は、図1に示す如く盗み部を設けている。この盗み部の軽量化効果を損じることなく更に軽量化を図るため、周壁を有する外底の盗み部の畝部に加硫温度より低い融点を有する既成形の熱可塑性の軽量な発泡樹脂体を戴置する。
【0017】
ゴムによる発泡体は、内部歪の緩和現象による収縮現象が大きく現われるが、熱可塑性の発泡樹脂体で発泡温度を融点より高く設定している場合、発泡時に軟化流動するため、内部歪を発生しない。
【0018】
本発明で使用する既成形の熱可塑性の発泡樹脂体は、加熱により気体を発生する発泡剤を配合した加硫成形品であり、再度加熱を行なうと、僅かな残存の未反応の発泡剤が発泡する。
発泡樹脂体の素材としては、靴成形時の加硫缶での加硫温度が120〜140℃であるので、加硫温度より低い融点を有するエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA樹脂)(融点 70〜100℃程度)やエチレン・エチルアクリレート共重合樹脂(EEA樹脂)(融点 70〜100℃程度)等の発泡樹脂体が好適である。これは、発泡樹脂体の融点を加硫温度以下にすることにより、加硫時、軟化流動すると共に僅かな残留の未発泡剤を、内部歪が発生しない状態で発泡させるためである。
【0019】
前記発泡樹脂体の比重は0.1〜0.4で構わないが、比重0.2〜0.35がより好ましい。比重が0.1以下では物理的強度が低くなりすぎる。又0.4以上では軽量化への貢献度が低くなる。
【0020】
又、前記発泡樹脂体の硬さは、50〜80(JIS K6253 タイプE)で構わないが、好ましくは硬さ55〜75(JIS K6253 タイプE)が加硫後の硬度変化が無い。
【0021】
充実ゴムの外底及び充実ゴム中底シートの素材となるゴムは、靴底用としてのゴムであり、天然ゴム及び合成ゴムであり、例えば、天然ゴム(NR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)及び特殊合成ゴムとして、例えば、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、ブタジエン・アクリロニトリル・アクリレート系三元共重合体、水素添加アクリロニトリル・ブタジエンゴム(HNBR)、ブタジエン・アクリロニトリル・イソプレン系三元共重合体等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。又、これらのゴムが単体で用いられてもよく、ブレンドして用いられてもよい。これらのゴムに所定の加硫剤や配合剤を混合した混合物を金型に入れ、加熱・加圧により加硫して所定の形状と成す。
【0022】
部品作りが終わったら、底付けにはいる。
前記発泡樹脂体の雰囲気を密閉するために、まず外底と、外底内に戴置する発泡樹脂体とを接着一体化し靴底部品と成し、ラストに甲被を中底と共に吊り込み、その上に、底形の充実ゴム中底シートを貼りつけ、更に接着一体化した前記靴底部品を貼り合わせ、最後に靴底部の周囲に外底の周壁の幅より広い幅の未加硫の廻しテープを密着周設する。
【0023】
前記未加硫の廻しテープの幅は、前記発泡樹脂体の雰囲気を密閉するのに十分な幅である30〜50mm幅とする。
【0024】
【発明の実施の形態】
図面を参照しながら詳細な説明を行う。(図1及び図2参照)
サイズ23.0cmの靴を製作した。図1は本発明に係る周壁(1)を有する充実ゴムの外底(2)であり、図2は本発明に係る厚底靴の断面図である。
【0025】
外底(2)の窪みには盗み部(3)を靴底部全面に設けた。靴底部のベース部(4)の厚みは3mmとした。踵部の高さ17mm、つま先部の高さ8mmとし、外底(2)ゴムは天然ゴム(NR)とスチレン・ブタジエンゴム(SBR)のブレンドとし、硬さは60(JIS k6253 タイプA)であった。
【0026】
周壁(1)の高さはベース部(4)を含めてつま先の壁面を25mmとし、踵部の後部壁面を34mmとし、踵部からつま先部にかけて順次低くした。
【0027】
発泡樹脂体(5)として、EVA樹脂を使用し、発泡剤と過酸化物架橋剤を配合して加熱・加圧により加硫を行い発泡体を得た。
その物性は、比重0.31、硬さ70(JIS K6253 タイプE)であった。発泡樹脂体(5)としての厚みは9mmを使用した。
【0028】
EVA発泡樹脂体(5)を外底(2)の畝部(10)に戴置し、外底(2)の畝部(10)とクロロプレン系の接着剤を使用し接着した。接着処方は常法どおりデスモジュールRF(バイエル社製)を5%混合したものを用いて接合させ靴底部品と成した。
【0029】
次に、ラスト(図示せず)に甲被(6)をプレスボードの中底(7)と共に吊り込み、その上に、1mm厚みの底形の充実ゴム中底シート(8)を接着剤で貼りつけ、更に外底(2)と発泡樹脂体(5)が接着一体化した前記靴底部品を接着剤で貼り合わせ、最後に靴底部の周囲に外底(2)の周壁(1)の幅より広い幅の未加硫の廻しテープ(9)を密着周設した。中底にプレスボートを使用したが、中底の素材はプレスボードに限定するものではない。例えば、フェルトや中底スポンジ等であってもよい。
接着剤はクロロプレン系の接着剤を使用し接着した。接着処方は常法どおりデスモジュールRF(バイエル社製)を5%混合したものを用いた。
【0030】
前記未加硫の廻しテープ(9)の幅は、前記発泡樹脂体(5)の雰囲気を密閉するのに十分な38mm幅の、厚み2mmの表面に意匠を有するテープで全周貼り巡らした。
【0031】
次に、加硫缶加硫にて靴の成形を行った。加硫条件は間接加硫で、空気圧3kg/cm2、130℃×45分(ライズ時間は含まず)の条件とした。
発泡剤配合により形成され、加硫温度以下の融点を有する発泡樹脂体(5)の雰囲気を密閉し、加硫することにより、熱可塑性の発泡樹脂体が軟化流動と同時に完全に発泡し、発泡樹脂体の体積収縮が生じない軽量厚底の加硫靴が得られた。
【0032】
【発明の効果】
厚底靴の製作において、靴底部に気体の出入りが抑制された密閉空間を設け、その空間に軽量化のため、発泡樹脂体を内蔵させ、加硫缶による加熱・加圧による靴成形の条件下でも、前記発泡樹脂体の体積収縮が生じない製造方法を提供することにより、軽量な厚底靴を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る周壁を有する充実ゴムの外底の外観斜視図である。
【図2】本発明に係る厚底靴の断面図である。
【符号の説明】
1 周壁
2 外底
3 盗み部
4 ベース部
5 発泡樹脂体
6 甲被
7 中底
8 ゴム中底シート
9 廻しテープ
10 畝部
【発明の属する技術分野】
本発明は、厚底靴の靴底において、本底が軽量化のための盗み部を有する充実ゴムであり、靴底内部に発泡樹脂体を内蔵させた軽量な厚底に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、厚底の廻しテープの加硫靴が製品化されているが、厚底の型底を使用している為、靴の重量が重たく、靴の踏付け部の屈曲が曲がり難く、履き心地が悪い状況であった。そのため、軽量な靴底として熱可塑性EVA樹脂(エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂)スポンジ等の樹脂発泡体を合中底とし、これに充実ゴムを外底として接着結合した靴底が開発された。
【0003】
これは、それぞれ別個の工程で加熱、加圧、或いは発泡成形した後、これらの接合面を表面処理し、接着剤を塗布した後、加圧結合し、その後必要に応じて所望の靴底形状に切削加工するもので、手数がかかりコスト高となっていた。
【0004】
製造工程の短縮のため、周壁を有する充実ゴムの外底の窪みに、発泡剤が配合された未加硫のゴムシートを入れ甲被を中底と共にラストに吊り込み加硫缶にて間接加硫を行い、発泡剤が配合された未加硫のゴムシートを発泡させ、外底内の窪みを発泡ゴムで充填させる方法が開示されている(例えは、特許文献1参照)。
【0005】
(特許文献) 実公昭62−78105号公報(考案の詳細な説明)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
厚底の部品となる充実ゴムの外底、発泡樹脂体、をそれぞれ別個に作成し、接着剤で一体化する工程において、発泡樹脂体が露出した靴底にすると、発泡樹脂体の物理的強度が弱いため、履用中発泡樹脂体の強度不足による破損が生じる。
露出させないために、充実ゴムの廻しテープで補強するか、または、充実ゴムの外底の形状を平板の上方に十分な高さの周壁を持たせる方法が取られている。
高い周壁を持たせるには、金型が高価になり、また充実ゴムの廻しテープで靴底を密着周設すると、充実ゴムの廻しテープの曲がり部に内部歪が発生し、オゾンクラックの原因や表面白化の原因となり、又、充実ゴムの廻しテープと充実ゴムの外底及び発泡樹脂体との接着処理も手間がかかる。
【0007】
周壁を有する充実ゴムの外底の窪みに、発泡剤が配合された未加硫のゴムシートを入れ甲被を中底と共にラストに吊り込み加硫缶にて熱空気による間接加硫を行い、発泡剤が配合された未加硫ゴムシートを発泡させ、外底内の窪みを発泡ゴムで充填させる方法は種種の難しさがある。
【0008】
第一には、発泡剤が配合された未加硫ゴムの発泡のコントロールである。未加硫ゴムの周りが熱伝導度の低い充実ゴムの外底、プレスボード等の中底、布帛の甲被で囲まれており、しかも加硫缶加硫での熱空気による熱伝導であるので、熱の伝わる速度が遅く、未加硫ゴムの加硫速度と発泡剤の分解による気体の放出のタイミングを取るのが難しい。そのため未加硫ゴムの高度の品質管理が求められる。未加硫ゴムの加硫速度が速くても遅くても満足な発泡が得られない。又、未加硫ゴムがスコーチを起こすと粘度が上がり、発泡しなくなる。
【0009】
更に、発泡しすぎると外底が変形し膨らみ、発泡が少ないと空間が生じ外底が凹む。又、熱可塑性を有しないゴムによる発泡は、加硫後の収縮現象が大きく現われる。これは、加硫と同時に発泡が行なわれ、ゴムが加硫しつつ膨張変形するので、発泡した加硫ゴム内に内部歪が生じ、歪の緩和のために、発泡した加硫ゴムが時間をかけて縮むためである。
【0010】
又、軽量化の観点でマイナスになるのは、充実ゴムの外底は盗み部を設け軽量化を図っているが、その盗み部に発泡ゴムが充填されるので、軽量化の効果が減少する。
【0011】
本発明は、従来技術の課題を解決するために鋭意研究を行ない、簡易で、常に安定した品質の軽量厚底をうる方法を提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、厚底靴の靴底部において、周壁を有する充実ゴムの外底と甲被で周縁を包まれた中底の裏面に設置した充実ゴム中底シートと靴底の側面飾りとなる未加硫の廻しテープとに囲まれ、気体の出入りが抑制された密閉空間に、加硫温度より低い融点を有する既成形の熱可塑性の発泡樹脂体が内蔵され、加硫缶にて加熱・加圧することにより、未加硫の廻しテープが加硫し、前記熱可塑性の発泡樹脂体が軟化流動と同時に完全に発泡し、前記発泡樹脂体の体積収縮が生じないことを特徴とする軽量厚底の加硫靴である。
【0013】
本発明の製造方法は、周壁を有する充実ゴムの外底の窪みに熱可塑性の発泡樹脂体を貼り付け靴底部品と成し、次に、ラストに甲被を中底と共に吊り込み、その中底裏面に充実ゴム中底シートを貼り、更に前記靴底部品を組み込み接着一体化した後、靴底部の周囲に未加硫の廻しテープを密着周設し、その後加硫缶にて間接加硫することを特徴とする軽量厚底靴の製造方法である。
【0014】
通常、ゴムによる発泡体は、加硫・発泡時に生じた内部歪の緩和現象による収縮現象が大きく現われる。又熱可塑性の発泡樹脂体は、大気圧下で融点以上に加熱すると発泡体内のガスが大気圧以上に加圧され外気へ抜けてしまい、冷えると著しく収縮する。
【0015】
本発明は、熱可塑性の発泡樹脂体を加熱しても体積収縮が起きない技術に関する。そのためには発泡体と雰囲気の圧力を同じ圧力にしておく必要がある。
すなわち、内蔵された発泡体が体積収縮を起こさないためには、内蔵する空間を密閉空間にしておかねばならない。
【0016】
厚底を軽量化するため、周壁を有する充実ゴムの外底は、図1に示す如く盗み部を設けている。この盗み部の軽量化効果を損じることなく更に軽量化を図るため、周壁を有する外底の盗み部の畝部に加硫温度より低い融点を有する既成形の熱可塑性の軽量な発泡樹脂体を戴置する。
【0017】
ゴムによる発泡体は、内部歪の緩和現象による収縮現象が大きく現われるが、熱可塑性の発泡樹脂体で発泡温度を融点より高く設定している場合、発泡時に軟化流動するため、内部歪を発生しない。
【0018】
本発明で使用する既成形の熱可塑性の発泡樹脂体は、加熱により気体を発生する発泡剤を配合した加硫成形品であり、再度加熱を行なうと、僅かな残存の未反応の発泡剤が発泡する。
発泡樹脂体の素材としては、靴成形時の加硫缶での加硫温度が120〜140℃であるので、加硫温度より低い融点を有するエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA樹脂)(融点 70〜100℃程度)やエチレン・エチルアクリレート共重合樹脂(EEA樹脂)(融点 70〜100℃程度)等の発泡樹脂体が好適である。これは、発泡樹脂体の融点を加硫温度以下にすることにより、加硫時、軟化流動すると共に僅かな残留の未発泡剤を、内部歪が発生しない状態で発泡させるためである。
【0019】
前記発泡樹脂体の比重は0.1〜0.4で構わないが、比重0.2〜0.35がより好ましい。比重が0.1以下では物理的強度が低くなりすぎる。又0.4以上では軽量化への貢献度が低くなる。
【0020】
又、前記発泡樹脂体の硬さは、50〜80(JIS K6253 タイプE)で構わないが、好ましくは硬さ55〜75(JIS K6253 タイプE)が加硫後の硬度変化が無い。
【0021】
充実ゴムの外底及び充実ゴム中底シートの素材となるゴムは、靴底用としてのゴムであり、天然ゴム及び合成ゴムであり、例えば、天然ゴム(NR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)及び特殊合成ゴムとして、例えば、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、ブタジエン・アクリロニトリル・アクリレート系三元共重合体、水素添加アクリロニトリル・ブタジエンゴム(HNBR)、ブタジエン・アクリロニトリル・イソプレン系三元共重合体等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。又、これらのゴムが単体で用いられてもよく、ブレンドして用いられてもよい。これらのゴムに所定の加硫剤や配合剤を混合した混合物を金型に入れ、加熱・加圧により加硫して所定の形状と成す。
【0022】
部品作りが終わったら、底付けにはいる。
前記発泡樹脂体の雰囲気を密閉するために、まず外底と、外底内に戴置する発泡樹脂体とを接着一体化し靴底部品と成し、ラストに甲被を中底と共に吊り込み、その上に、底形の充実ゴム中底シートを貼りつけ、更に接着一体化した前記靴底部品を貼り合わせ、最後に靴底部の周囲に外底の周壁の幅より広い幅の未加硫の廻しテープを密着周設する。
【0023】
前記未加硫の廻しテープの幅は、前記発泡樹脂体の雰囲気を密閉するのに十分な幅である30〜50mm幅とする。
【0024】
【発明の実施の形態】
図面を参照しながら詳細な説明を行う。(図1及び図2参照)
サイズ23.0cmの靴を製作した。図1は本発明に係る周壁(1)を有する充実ゴムの外底(2)であり、図2は本発明に係る厚底靴の断面図である。
【0025】
外底(2)の窪みには盗み部(3)を靴底部全面に設けた。靴底部のベース部(4)の厚みは3mmとした。踵部の高さ17mm、つま先部の高さ8mmとし、外底(2)ゴムは天然ゴム(NR)とスチレン・ブタジエンゴム(SBR)のブレンドとし、硬さは60(JIS k6253 タイプA)であった。
【0026】
周壁(1)の高さはベース部(4)を含めてつま先の壁面を25mmとし、踵部の後部壁面を34mmとし、踵部からつま先部にかけて順次低くした。
【0027】
発泡樹脂体(5)として、EVA樹脂を使用し、発泡剤と過酸化物架橋剤を配合して加熱・加圧により加硫を行い発泡体を得た。
その物性は、比重0.31、硬さ70(JIS K6253 タイプE)であった。発泡樹脂体(5)としての厚みは9mmを使用した。
【0028】
EVA発泡樹脂体(5)を外底(2)の畝部(10)に戴置し、外底(2)の畝部(10)とクロロプレン系の接着剤を使用し接着した。接着処方は常法どおりデスモジュールRF(バイエル社製)を5%混合したものを用いて接合させ靴底部品と成した。
【0029】
次に、ラスト(図示せず)に甲被(6)をプレスボードの中底(7)と共に吊り込み、その上に、1mm厚みの底形の充実ゴム中底シート(8)を接着剤で貼りつけ、更に外底(2)と発泡樹脂体(5)が接着一体化した前記靴底部品を接着剤で貼り合わせ、最後に靴底部の周囲に外底(2)の周壁(1)の幅より広い幅の未加硫の廻しテープ(9)を密着周設した。中底にプレスボートを使用したが、中底の素材はプレスボードに限定するものではない。例えば、フェルトや中底スポンジ等であってもよい。
接着剤はクロロプレン系の接着剤を使用し接着した。接着処方は常法どおりデスモジュールRF(バイエル社製)を5%混合したものを用いた。
【0030】
前記未加硫の廻しテープ(9)の幅は、前記発泡樹脂体(5)の雰囲気を密閉するのに十分な38mm幅の、厚み2mmの表面に意匠を有するテープで全周貼り巡らした。
【0031】
次に、加硫缶加硫にて靴の成形を行った。加硫条件は間接加硫で、空気圧3kg/cm2、130℃×45分(ライズ時間は含まず)の条件とした。
発泡剤配合により形成され、加硫温度以下の融点を有する発泡樹脂体(5)の雰囲気を密閉し、加硫することにより、熱可塑性の発泡樹脂体が軟化流動と同時に完全に発泡し、発泡樹脂体の体積収縮が生じない軽量厚底の加硫靴が得られた。
【0032】
【発明の効果】
厚底靴の製作において、靴底部に気体の出入りが抑制された密閉空間を設け、その空間に軽量化のため、発泡樹脂体を内蔵させ、加硫缶による加熱・加圧による靴成形の条件下でも、前記発泡樹脂体の体積収縮が生じない製造方法を提供することにより、軽量な厚底靴を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る周壁を有する充実ゴムの外底の外観斜視図である。
【図2】本発明に係る厚底靴の断面図である。
【符号の説明】
1 周壁
2 外底
3 盗み部
4 ベース部
5 発泡樹脂体
6 甲被
7 中底
8 ゴム中底シート
9 廻しテープ
10 畝部
Claims (2)
- 厚底靴の靴底部において、周壁を有する充実ゴムの外底と中底の裏面に設置した充実ゴム中底シートと靴底の側面飾りとなる未加硫の廻しテープとに囲まれ、気体の出入りが抑制された密閉空間に、熱可塑性の発泡樹脂体が内蔵され、加硫缶にて加熱・加圧することにより、未加硫の廻しテープが加硫し、前記熱可塑性の発泡樹脂体が軟化流動と同時に完全に発泡し、前記発泡樹脂体の体積収縮が生じないことを特徴とする軽量厚底の加硫靴。
- 周壁を有する充実ゴムの外底の窪みに熱可塑性の発泡樹脂体を貼り付け靴底部品と成し、次に、ラストに甲被を中底と共に吊り込み、その中底裏面に充実ゴム中底シートを貼り、更に前記靴底部品を組み込み接着一体化した後、靴底部の周囲に未加硫の廻しテープを密着周設し、その後加硫缶にて間接加硫することを特徴とする軽量厚底靴の製造方法。
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JP4897878B2 (ja) * | 2006-05-26 | 2012-03-14 | ナイキ インターナショナル リミテッド | 軽量ソールアセンブリを有する履物物品 |
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