JP2004357372A - フライホイール蓄電装置及び車両 - Google Patents
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Abstract
【課題】フライホイールを横置きにした場合でも軸受の短寿命化を防ぐことができ且つフライホイールをより高速に回転させることができるようにすること。
【解決手段】ケーシング20の前蓋部22に前部軸受ユニット40が設けられており、後ろ蓋部23に後部軸受ユニット50が設けられている。ケーシング20内には回転体70が配置されており、回転体70は軸受ユニット40,50によって水平に支持されている。軸受ユニット40,50ともに回転体70のシャフト72を支持したすべり軸受43,53と、すべり軸受43,53を支持した転がり軸受42,52とを具備する。また、シャフト72の突端には、シャフト72に直接駆動されてオイル26を循環するダイレクトドライブポンプ45,55が設けられている。
【選択図】 図1
【解決手段】ケーシング20の前蓋部22に前部軸受ユニット40が設けられており、後ろ蓋部23に後部軸受ユニット50が設けられている。ケーシング20内には回転体70が配置されており、回転体70は軸受ユニット40,50によって水平に支持されている。軸受ユニット40,50ともに回転体70のシャフト72を支持したすべり軸受43,53と、すべり軸受43,53を支持した転がり軸受42,52とを具備する。また、シャフト72の突端には、シャフト72に直接駆動されてオイル26を循環するダイレクトドライブポンプ45,55が設けられている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気エネルギーを回転体の回転運動エネルギーに変換すると共に必要に応じて回転体の回転運動エネルギーを電気エネルギーに変換するフライホイール蓄電装置及び該フライホイール蓄電装置を搭載した車両に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電気エネルギーをフライホイールの回転運動エネルギーとして蓄え、必要時にフライホイールの回転運動エネルギーを電気エネルギーに変換して外部に供給するようにしたフライホイール蓄電装置が知られている。このフライホイール蓄電装置として、ほぼ鉛直方向の軸を中心としてフライホイールを回転させるようにしたいわゆる縦型フライホイール蓄電装置があり、フライホイールの回転軸を軸受によって上下の二箇所で支持することが一般的に採用されており、特に軸受としてボールベアリングを用いている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−322533号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、フライホイールを水平方向の軸を中心として回転させるようにした横型のフライホイール蓄電装置が小型車用の蓄電装置として要望されている。しかしながら、フライホイールの回転軸を水平にした場合、ボールベアリングに予期せぬ荷重がかかり、ボールベアリングの寿命が短くなることがある。また、ボールベアリングでは高速回転の長時間運転に寿命の限界があり、頻繁に交換を要する。また、ボールベアリングの寿命を重視するために横型のフライホイールを高速に回転させないと、蓄える電気エネルギーが必ずしも大きくない。
【0005】
そこで、本発明は、上記のような問題点を解決しようとしてなされたものであり、フライホイールを横置きにした場合でも軸受の短寿命化を防ぐことができ且つフライホイールをより高速に回転させることができるようにすることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
シャフトを有する回転体と、鉛直方向に交差する方向の軸回りに回転自在に前記シャフトを支持する軸受ユニットと、前記シャフトと同軸になって前記回転体に取り付けられた永久磁石と、前記永久磁石の外側に配置されたステータと、前記回転体、前記軸受ユニット、前記永久磁石及び前記ステータの外側を覆ったケーシングと、を備え、前記ステータ及び前記永久磁石によって前記ステータの電気エネルギーと前記回転体の回転エネルギーとを可逆的に変換可能に設けられたフライホイール蓄電装置において、
前記軸受ユニットは、前記シャフトのラジアル方向に働く荷重を受けるすべり軸受と、前記すべり軸受のラジアル方向に働く荷重を受ける転がり軸受と、を有することを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明では、低速回転に対して回転抵抗の少ない転がり軸受と高速回転に対して耐久性の高いすべり軸受とで回転体のシャフトを支持するため、二種類の軸受に対するシャフトの荷重と回転速度とを減らして分担することができ、回転体が高速で回転する場合でも長時間にわたり回転体を安定して支持することができる。更に、すべり軸受を転がり軸受で支持しているため、鉛直方向に交差するシャフトを転がり軸受で直接支持する場合よりも予期せぬ荷重が転がり軸受にかかった場合に、すべり軸受で荷重を分担するので、転がり軸受の短寿命化を防ぐことができる。
また、回転体が高速に回転している場合でも、すべり軸受の回転速度はシャフトの回転速度よりも遅くなり、転がり軸受の回転速度はシャフトとすべり軸受との回転速度差よりも更に遅くなる。そのため、回転体が高速で回転する場合でも長時間にわたり、両軸受にかかる回転速度と荷重を低減し、回転体を安定して支持することができる。更に、両軸受に加わる荷重が増大した場合は、すべり軸受の弾性変形によって、転がり軸受に対する荷重の増加分がすべり軸受側に付与されるので、同様の効果を奏する。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のフライホイール蓄電装置において、前記軸受ユニットが前記ケーシングに設けられたハウジングを有し、前記転がり軸受がハウジングに支持され、前記すべり軸受の一部が油膜を介してハウジングに軸支され、前記シャフトの一部が油膜を介して前記すべり軸受に軸支されることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明と同様の作用効果を奏し、回転体が高速で回転する場合でも、長時間にわたり回転体に加わる負荷を低減して、回転体を安定して支持することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のフライホイール蓄電装置において、前記軸受ユニットが二つ設けられ、前記シャフトの一方の端部は一方の軸受ユニットのすべり軸受に軸支され、前記シャフトの他方の端部は他方の軸受ユニットのすべり軸受に軸支されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明では、請求項1に記載の発明と同様の作用効果を奏し、回転体が高速で回転する場合でも、長時間にわたり回転体に加わる負荷を低減して、回転体を安定して支持することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3の何れか一項に記載のフライホイール蓄電装置において、前記シャフトの回転に伴って直接駆動されるダイレクトドライブポンプが前記シャフトの端部に設けられており、前記ダイレクトドライブポンプの駆動によって前記ケーシングの下側に貯留したオイルを吸い上げて前記軸受ユニットに供給するように構成されたことを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明では、オイルがダイレクトドライブポンプによって軸受ユニットに供給されるので、すべり軸受及び転がり軸受に焼き付きが生じず、シャフトを滑らかに回転させることができる。また、ダイレクトドライブポンプは他の動力源によって駆動されるのではなく、シャフトの回転に伴って駆動されるので、他の駆動源を必要としない。つまり、シャフトの回転運動エネルギーを有効利用することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のフライホイール蓄電装置において、前記ケーシングの下側に起動用のオイルポンプが配置され、該オイルポンプは前記シャフトの回転開始時に前記ケーシングの下側に貯留したオイルを前記軸受ユニットに供給するとともに前記シャフトの回転速度が所定以上となった場合にオイルの供給を停止するように設けられたことを特徴とする。
【0015】
シャフトの回転開始時には回転速度も遅く、ダイレクトドライブポンプによるオイルの吸引力も低いから、軸受ユニットに十分なオイルを供給できない恐れがある。しかしながら、請求項5に記載の発明では、シャフトの回転開始時に、ダイレクトドライブポンプとは別に設けたオイルポンプによってオイルが軸受ユニットに供給されるから、シャフトの回転開始時にすべり軸受及び転がり軸受に焼き付きが生じることがない。また、シャフトの回転速度が所定以上になれば、オイルポンプによるオイルの供給が停止するが、ダイレクトドライブポンプの吸引力も高くなり、軸受ユニットに十分なオイルが供給される。ここで、シャフトの回転速度が所定以上になればオイルポンプが停止しているため、オイルポンプの寿命を長くすることができるとともにオイルポンプでの消費エネルギーを減らすことができる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載のフライホイール蓄電装置において、前記軸受ユニットに供給されたオイルが前記ケーシング内に戻るように構成されたことを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の発明では、軸受ユニットに供給されたオイルがケーシング内に戻るため、オイルが循環する。循環中で軸受ユニットがオイルによって冷却されて、暖まったオイルは軸受ユニット以外では自然冷却する。そのため、軸受ユニットを効率よく冷却することができる。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項4から6の何れか一項に記載のフライホイール蓄電装置において、前記軸受ユニットに供給されたオイルが前記ステータに供給されるように構成されたことを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の発明では、軸受ユニットに供給されたオイルがステータに供給されるため、ステータがオイルによって冷却される。
【0020】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載のフライホイール蓄電装置において、前記ステータに供給されたオイルが前記ケーシング内に戻るように構成されたことを特徴とする。
【0021】
請求項8に記載の発明では、ステータに供給されたオイルがケーシング内に戻るため、オイルが循環する。循環中でステータがオイルによって冷却されて、暖まったオイルはステータ及び軸受ユニット以外では自然冷却する。そのため、ステータを効率よく冷却することができる。
【0022】
請求項9に記載の発明は、請求項1から8の何れか一項に記載のフライホイール蓄電装置において、前記回転体が二つ互いに平行に並べて設けられ、一方の回転体の回転向きが他方の回転体の回転向きの反対となるように構成されたことを特徴とする。
【0023】
請求項9に記載の発明では、平行な二つの回転体の回転向きが反対になることによって、モーメントが相殺される。そのため、フライホイール蓄電装置を支える台等の剛性が比較的低くても、フライホイール蓄電装置を安定して支持することができる。また、フライホイール装置を車両等に搭載した場合、回転体によって生じるモーメントが相殺されるので、車両の挙動に悪影響を及ぼすことがない。
【0024】
請求項10に記載の発明は、請求項1から9の何れか一項に記載のフライホイール蓄電装置を搭載した車両である。
【0025】
請求項10に記載の発明では、回転体のシャフトが鉛直方向に交差しているため、フライホイール蓄電装置を車両に搭載した場合でも、車両全体の高さが高くならない。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を用いて本発明の具体的な態様について説明する。ただし、発明の範囲を図示例に限定するものではない。
【0027】
図1には、本発明を適用した横型のフライホイール蓄電装置1を示した断面図である。以下の説明において、水平方向とは、重力の働く鉛直方向に対して直交する方向である。
【0028】
図1に示すように、このフライホイール蓄電装置1はケーシング20を備え、このケーシング20の内側に種々の部材・機構が取り付けられて構成されている。
【0029】
ケーシング20は、略水平に横置きにされた円筒部21と、円筒部21の前側開口部を閉塞した前蓋部22と、円筒部21の後ろ側開口部を閉塞した後ろ蓋部23と、から構成されている。円筒部21、前蓋部22及び後ろ蓋部23によって囲まれた内部空間が形成されている。
【0030】
円筒部21の内側には略水平な仕切り壁24が形成されており、この仕切り壁24によってケーシング20内の内部空間が上側の減圧空気室20aと下側のオイル室20bとに区画されている。仕切り壁24の前後方向の全長は円筒部21の前後方向の全長よりも短く、減圧空気室20aとオイル室20bが通じている。なお、ケーシング20内の内部空間が減圧空気室20aとオイル室20bに区画されていなくても良い。
【0031】
オイル室20bには、潤滑及び冷却のためのオイル26が貯留されている。また、オイル室20bには、起動用のオイルポンプ31が設けられている。更に、オイル室20bには、オイル26の温度を検知するオイルセンサ80が設けられている。
【0032】
円筒部21の前端部の上側には、ケーシング20内の気体を排気してケーシング20内の気圧を減圧する真空ポンプ35が設けられており、この真空ポンプ35によって減圧空気室20a及びオイル室20bの気圧が亜真空圧に保たれるようになっている。この真空ポンプ35には図示しないオイル回収装置が備わっており、このオイル回収装置は排気の気体に含まれた噴霧状のオイルを気体から分離させてオイル室20bに戻すように構成されている。また、真空ポンプ35には減圧空気室20a内の気圧を検知する気圧センサ36が設けられており、この気圧センサ36によって減圧空気室20a及びオイル室20bの気圧が亜真空圧に一定に維持されるようになっている。
【0033】
減圧空気室20aに臨んだ前蓋部22の中央部には、油潤滑式の前部軸受ユニット40が設けられており、減圧空気室20aに臨んだ後ろ蓋部23の中央部には、油潤滑式の後部軸受ユニット50が設けられている。ケーシング20の内側には、オイルポンプ31から前部軸受ユニット40にまで通じた第一のダクト32及びオイルポンプ31から後部軸受ユニット50にまで通じた第二のダクト33が設けられており、オイルポンプ31によってオイル室20b内のオイル26が前部軸受ユニット40及び後部軸受ユニット50に供給されるようになっており、オイル26によって前部軸受ユニット40及び後部軸受ユニット50の潤滑・冷却が行われるようになっている。なお、第一のダクト32及び第二のダクト33は図示しない逆止弁を介してオイル室20bに通じており、これら逆止弁は、オイル室20bからダクト32,33を通じて前部軸受ユニット40、後部軸受ユニット50に向かったオイル26の流れを許容するとともに、オイルポンプ31からダクト32,33を通じてオイル室20bに向かったオイル26の逆流を防止する。
【0034】
断面コ字状の第二仕切り壁25が円筒部21の内面上側から仕切り壁24の上面にかけて円筒部21の周方向に沿って形成されており、円筒部21、仕切り壁24及び第二仕切り壁25によって包囲されたリング状のステータ室20cが前後方向における円筒部21の中央よりやや後ろ側に形成されている。
【0035】
ステータ室20cにはステータ60が配置されている。ステータ60は鉄芯61に導線62をコイル状に巻き付けて構成され、導線62の両端がケーシング20から外に導出されて外部装置に接続されている。また、導線62の一部が電気センサ63に接続されており、この電気センサ63によって導線62の電流、電圧が検知されるようになっている。なお、電気センサ63の代わり、回転速度センサを設け、後述する油ふりきりディスク75の回転をこの回転速度センサで検知しても良い。
【0036】
ケーシング20の内側には、後部軸受ユニット50からステータ室20cにまで通じたダクト37が設けられており、ダクト36を通じてステータ室20c内にオイル26が供給されてステータ60の潤滑・冷却を行うようになっている。第二仕切り壁25には貫通孔25aが形成されており、この貫通孔25aを通じてオイル26がステータ室20cから減圧空気室20a及びオイル室20bに排出されるようになっている。
【0037】
また、円筒部21の外周面には、突出した複数のヒートシンクフィン21a,21a,…が形成されており、フライホイール蓄電装置1全体(特に、オイル室20b内のオイル26やステータ室20c内のオイル26)の自然空冷がヒートシンクフィン21a,21a,…によって効率よく行われるようになっている。
【0038】
減圧空気室20aには、合金材料又は複合繊維材料で形成された横置きの回転体(フライホイール)70が配置されており、この回転体70は前部軸受ユニット40及び後部軸受ユニット50によって水平な前後方向の軸心回りに回転自在となって支持されている。詳細には、回転体70は、略円柱状の本体部71と、本体部71に同心となって本体部71に一体形成されたシャフト72と、シャフト72と同軸となってシャフト72に取り付けられた円筒状の永久磁石73とから構成されたものである。シャフト72の前端部が前部軸受ユニット40によって回転自在となって支持されており、シャフト72の後端部が後部軸受ユニット50によって回転自在となって支持されている。本体部71は、前後方向におけるシャフト72の中央よりやや前側に配置されている。
【0039】
永久磁石73は、前後方向におけるシャフト72の中央よりやや後ろ側であってステータ60に対応する位置に配置され、シャフト72を挿入した状態でシャフト72に固定されている。この永久磁石73が電動発電機のロータとして機能し、永久磁石73の外周側に配置されたステータ60と永久磁石73とから電動発電機が構成されている。
【0040】
図2を参照して前部軸受ユニット40について詳細に説明する。図2は、前部軸受ユニット40の縦断面図である。
図2に示すように、前部軸受ユニット40は、ハウジング41と、転がり軸受42と、すべり軸受43と、から構成されている。
【0041】
ハウジング41は前蓋部22の中央部から減圧空気室20a内に向かって突出形成されており、ハウジング41の中央部には軸受取り付け用孔41aが形成されている。軸受取り付け用孔41aは、前側の内径が小さく且つ後側の内径が大きくなった段状に形成されている。なお、第一のダクト32は軸受取り付け用孔41aまで通じており、オイル26が軸受取り付け用孔41aに供給されるようになっている。
【0042】
転がり軸受42は、軸受取り付け用孔41aの径の大きな部分の底側に嵌め込まれている。この転がり軸受42は、ラジアル方向(半径方向)の荷重を支持するラジアル軸受であり、ラジアル玉軸受であっても良いし、ラジアルころ軸受であっても良い。
【0043】
すべり軸受43は、3円弧等の多円弧円に形成された小筒部43aと、弾性接触片を有する円筒部43bとを一体に形成したものであり、ラジアル方向の荷重を支持するオイル浮動式のジャーナルすべり軸受である。すべり軸受43の小筒部43aが転がり軸受42の内輪に嵌め込まれており、すべり軸受43の円筒部43bが軸受取り付け用孔41aのうち後ろ側の弾性接触片部分に嵌め込まれている。特に、すべり軸受43の円筒部43bは油膜を介してシャフト72の前端部を軸支するとともに、円筒部43bは油膜を介してハウジング41の一部に軸支されている。すべり軸受43が、内周面にティルティングパッドを有したティルティングパッド軸受であっても良いし、内周面に浮動ブッシュを有した浮動ブッシュ軸受であっても良いし、ティルティングパッドのみを有したティルティングパッド軸受であっても良い。
【0044】
また、転がり軸受42の振動を抑制するために、転がり軸受42の内輪をすべり軸受43の外面に固定させて、弾性接触片を内面に設けるか、又は、転がり軸受42の外輪をハウジング41の内面に固定させて、弾性接触片を内面に設けるのが望ましい。勿論、転がり軸受42が油膜を介してハウジング41に軸支されるとともにすべり軸受43が油膜を介して転がり軸受42に軸支されていても良い。
【0045】
シャフト72の前端部は突端側が径の小さい段付き形状に形成されており、シャフト72の前端部の径の小さい部分がすべり軸受43の小筒部43aに挿入され、シャフト72の前端部の径の大きい部分がすべり軸受43の円筒部43bに同様に挿入されている。そして、シャフト72の前端部がすべり軸受43によって軸支されている。
【0046】
シャフト72のラジアル方向に働く荷重はすべり軸受43によって受けられ、すべり軸受43のラジアル方向に働く荷重は転がり軸受42によって受けられるようになっている。特に、シャフト72の荷重が軽荷重の場合には、シャフト72の荷重はすべり軸受43を介して転がり軸受42に受けられ、シャフト72の荷重が高荷重の場合には、シャフト72の荷重はすべり軸受43と転がり軸受42の両方に受けられる。従って、軽荷重の場合には、各軸受42,43の回転速度は低減する。
【0047】
シャフト72の前端には、シャフトと同期して回転するよう構成された定容量式のポンプ(以下、ダイレクトドライブポンプという)45が設けられており、このダイレクトドライブポンプ45は軸受取り付け用孔41aのうち前側の径の小さな部分に配置されている。このダイレクトドライブポンプ45は、シャフト72に直結した駆動マグネット、駆動マグネットに非接触でカップリングした従動マグネット、従動マグネットに直結したインペラ等から構成されている。このダイレクトドライブポンプ45は、シャフト72の回転動作に伴って直接駆動されることによって、第一のダクト32を通じてオイル室20bからオイル26を吸引し、ハウジング41の軸受取り付け用孔41a内に供給するものである。
【0048】
また、図1に示すように、ハウジング41と本体部71との間において、円盤状の溝を有した油ふりきりディスク74がハウジング41に対向するようにシャフト72に取り付けられており、軸受取り付け用孔41aに供給されたオイル26がハウジング41の軸受取り付け用孔41aから油ふりきりディスク74に向かって飛散するようになっている。油ふりきりディスク74に飛散したオイル26は自重によってオイル室20bに至るようになっている。なお、軸受取り付け用孔41aから飛散したオイル26が油ふりきりディスク74で受けられることによって、オイル26が本体71、永久磁石73に付着することが防止でき、回転体70の回転損失を抑えることができる。
【0049】
図3を参照して後部軸受ユニット50について詳細に説明する。図5は、後部軸受ユニット50の縦断面図である。
図2に示すように、後部軸受ユニット50は、ハウジング51と、転がり軸受52と、すべり軸受53と、から構成されており、前部軸受ユニット40と同様に構成されている。
【0050】
ハウジング51は後ろ蓋部23の中央部から減圧空気室20a内に向かって突出形成されており、ハウジング51の中央部には軸受取り付け用孔51aが形成されている。軸受取り付け用孔51aは、後ろ側の内径が小さく且つ前側の内径が大きくなった段状に形成されている。なお、第二のダクト33は軸受取り付け用孔51aまで通じており、オイル26が軸受取り付け用孔51aに供給されるようになっており、ダクト37は軸取り付け用孔51aからステータ室20cまで通じており、オイル26がステータ室20cに供給されるようになっている。
【0051】
転がり軸受52は、軸受取り付け用孔51aのうち前側の径の大きな部分の底側に嵌め込まれている。この転がり軸受52は、ラジアル方向の荷重を支持するラジアル軸受であり、ラジアル玉軸受であっても良いし、ラジアルころ軸受であっても良い。
【0052】
すべり軸受53は、3円弧等の多円弧円に形成された小筒部53aと、弾性接触片を有する円筒部53bとを一体に形成したものであり、ラジアル方向の荷重を支持するオイル浮動式のジャーナルすべり軸受である。すべり軸受53の小筒部53aが転がり軸受52の内輪に嵌め込まれており、すべり軸受53の円筒部53bが軸受取り付け用孔51aのうち前側の弾性接触片部分に嵌め込まれている。特に、すべり軸受53の円筒部53bは油膜を介してシャフト72の後端部を軸支するとともに、円筒部53bは油膜を介してハウジング51の一部に軸支されている。すべり軸受53は、前側のすべり軸受43と同様にティルティングパッド軸受であっても良いし、浮動ブッシュ軸受であっても良い。
【0053】
また、転がり軸受52の振動を抑制するために、転がり軸受52の内輪をすべり軸受53の外面に固定させて、弾性接触片を内面に設けるか、又は、転がり軸受52の外輪をハウジング51の内面に固定させて、弾性接触片を内面に設けるのが望ましい。勿論、転がり軸受け52が油膜を介してハウジング51に軸支されるとともにすべり軸受53が油膜を介して転がり軸受52に軸支されていても良い。
【0054】
シャフト72の後端部は突端側が径の小さい段付き形状に形成されており、シャフト72の後端部の径の小さい部分がすべり軸受53の小筒部53aに挿入され、シャフト72の後端部の径の大きい部分がすべり軸受53の円筒部53bに同様に挿入されている。シャフト72の後ろ端部がすべり軸受53によって軸支されている。
【0055】
シャフト72のラジアル方向に働く荷重はすべり軸受53によって受けられ、すべり軸受53のラジアル方向に働く荷重は転がり軸受52によって受けられるようになっている。
【0056】
シャフト72の前端には、シャフトと同期して回転するよう構成された低容量式のダイレクトドライブポンプ55が設けられている。このダイレクトドライブポンプ55も、シャフト72に直結した駆動マグネット、駆動マグネットに非接触でカップリングした従動マグネット、従動マグネットに直結したインペラ等から構成されている。このダイレクトドライブポンプ55は、シャフト72の回転動作に伴って直接駆動されることによって、第二のダクト33を通じてオイル室20bからオイル26を吸引し、ハウジング51の軸受取り付け用孔51a内に供給するものである。
【0057】
また、図1に示すように、ハウジング51と本体部71との間において、円盤状の溝を有した油ふりきりディスク75がハウジング51に対向するようにシャフト72に取り付けられており、軸受取り付け用孔51aに供給されたオイル26がハウジング51の軸受取り付け用孔51aから油ふりきりディスク75に向かって飛散するようになっている。なお、軸受取り付け用孔51aから飛散したオイル26が油ふりきりディスク75で受けられることによって、オイル26が本体71、永久磁石73に付着することが防止でき、回転体70の回転損失を抑えることができる。
【0058】
前部軸受ユニット40には、単位時間当たりのシャフト72の回転数(以下、単位時間当たりに回転数を回転速度という。)を検知する回転速度センサ46が設けられており、後部軸受ユニット50には、シャフト72の回転速度を検知する回転速度センサ56が設けられている。なお、回転速度センサ46の代わりに、前部軸受ユニット40中のオイル26の油温を検知する油温センサを設けても良いし、回転速度センサ56の代わりに後部軸受ユニット50中のオイル26の油温を検知する油温センサを設けても良い。
【0059】
図示はしないが、このフライホイール蓄電装置1は全体を制御する制御装置を具備しており、この制御装置は気圧センサ36によって検知された気圧に応じて真空ポンプ35を制御して、減圧空気室20aの気圧を一定の亜真空圧に維持するようになっている。また、この制御装置は、電気センサ63によってゼロより大きい電流・電圧が検知された場合にオイルポンプ31を作動させるとともに、回転速度センサ46,56によって所定以上の回転速度が検知された場合にオイルポンプ31を停止させるようになっている。なお、電気センサ63の代わりに回転速度センサを設けた場合、制御装置は回転速度センサによってシャフト72の回転開始を検知した場合にオイルポンプ31を作動させるとともに、その回転速度センサによって所定以上の回転速度が検知された場合にオイルポンプ31を停止させるようになっている。
【0060】
次に、フライホイール蓄電装置1の動作について説明する。
初期状態では、真空ポンプ35によって減圧空気室20aが亜真空圧に保たれ、回転体70が停止しており、オイルポンプ31も停止している。この状態にある時に外部装置からステータ60の導線62に電圧が印加されると、電気センサ63により電流・電圧が検知され、オイルポンプ31が制御装置により作動させられる。オイルポンプ31の作動によって、オイル26はオイル室20b、第一のダクト32、軸受取り付け用孔41a、オイル室20bの順に循環し、オイル室20b、第二のダクト33、軸取り付け用孔51a、オイル室20bの順にも循環し、更にオイル室20b、第二のダクト33、軸取り付け用孔51a、ダクト37、ステータ室20c、オイル室20bの順にも循環する。
【0061】
軸受取り付け用孔41aにオイル26が供給されると、シャフト72とすべり軸受43との隙間、すべり軸受43と転がり軸受42との隙間、すべり軸受43とハウジング41との隙間、その他の前部軸受ユニット40の隙間にオイル26の油膜が形成される。更に、すべり軸受43が油圧によって転がり軸受42及びハウジング41に対して浮動状態となるとともにシャフト72が油圧によってすべり軸受43に対して浮動状態となる。後部軸受ユニット50でも同様に、すべり軸受53が油圧によって転がり軸受52及びハウジング51に対して浮動状態となるとともにシャフト72が油圧によってすべり軸受53に対して浮動状態となる。
【0062】
一方、導線62に流れた電流により発生したステータ60の磁界と永久磁石73とによって、回転体70が回転するが、シャフト72、すべり軸受43及びすべり軸受53が浮動状態にあるため、摩擦損失が非常に少ない。そのため、すべり軸受43,53、転がり軸受42,52及びシャフト72に焼き付きが生じず、シャフト72を滑らかに回転させることができる。
【0063】
オイルポンプ31によってオイル26が循環した状態で回転体70が加速して回転し、回転体70の回転速度が所定以上になったことが回転速度センサ46,56によって検知されたら、オイルポンプ31が制御装置によって停止される。オイルポンプ31が停止してもダイレクトドライブポンプ45,55が回転体70の回転動作に伴って直接駆動されているので、オイル26の循環は引き続き行われている。このように、ダイレクトドライブポンプ45,55はシャフト72の回転に伴って駆動されるので、シャフト72の回転運動エネルギーをダイレクトドライブポンプ45,55の駆動に有効利用することができる。
【0064】
回転している回転体70は大きな慣性力を有し、ステータ60に供給された電気エネルギーが回転体70の運動エネルギーに変換される。ここで、減圧空気室20aが亜真空圧に保たれている上、回転体70のシャフト72が前部軸受ユニット40及び後部軸受ユニット50によって低摩擦状態で軸支されているから、外部装置から電気の供給が停止されても回転体70を長時間回転し続けることができる。また、シャフト72、すべり軸受43及びすべり軸受53が浮動状態にあるため、シャフト72が高速に回転しても、すべり軸受43及びすべり軸受53がシャフト72より低速に回転し、更に、転がり軸受42及び転がり軸受52の内輪がすべり軸受43及びすべり軸受53よりも低速に回転する。そのため、すべり軸受43,53よりも高速回転に対して損傷しやすい転がり軸受42,52を保護することができ、回転体70をより高速に回転させることができ、より高いエネルギーをフライホイール蓄電装置1に貯蓄することができる。
【0065】
回転体70が回転している時に、外部装置からの電気の供給が停止された場合、回転している永久磁石73によってステータ60に電気エネルギーが発生し、導線62からは電気エネルギーが外部装置に供給される。回転体70が回転し続けている間中、電気エネルギーが外部装置に供給され続け、フライホイール蓄電装置1が発電機として機能する。
【0066】
以上のように、高速回転に対して耐久性の高いすべり軸受43,53で回転体70のシャフト72を支持するため、回転体70が高速で回転する場合でも長時間にわたり回転体70を安定して支持することができる。更に、すべり軸受43,53を転がり軸受42,52で支持しているため、水平なシャフト72を転がり軸受42,52で直接支持する場合よりも予期せぬ荷重が転がり軸受42,52にかかり難く、転がり軸受42,52の短寿命化を防ぐことができる。
【0067】
また、すべり軸受43,53に転がり軸受42,52を併用しているため、すべり軸受43,53の表面の油膜が途切れにくく、大荷重ですべり摩擦が生じても主に転がり軸受42,52によって支持が行われるため、すべり軸受43,53に焼き付けが生じない。
【0068】
また、回転体70の回転開始時には回転速度も遅く、ダイレクトドライブポンプ45,55によるオイル26の吸引力も低いが、回転体70の回転開始時にオイルポンプ31によってオイルが軸受ユニット50,50に供給されるから、回転体70の回転開始時にダイレクトドライブポンプ45,55が低速で動作していても、すべり軸受43,53及び転がり軸受42,52に焼き付きが生じることがない。
即ち、オイルポンプ31は回転体70の低速回転時に不足する油量を補助的に補う。つまり、ダイレクトドライブポンプ45,55の送油量は回転速度に比例し、ダイレクトドライブポンプ45,55だけでは低速回転時には油量が少なく、すべり軸受43,53の潤滑に必要な油量のオイル26を供給できないが、ダイレクトドライブポンプ45,55から十分な油量を回転速度になるまで、オイルポンプ31で不足する油量を補うことができる。
【0069】
また、オイル26が循環されているので、軸受ユニット40,50及びステータ60を効率よく冷却することができる。
【0070】
次に、フライホイール蓄電装置1の利用方法について説明する。フライホイール蓄電装置1は、エネルギー貯蔵時には電気エネルギーを回転体70の回転運動エネルギーに変換し、エネルギー供給時には回転体70の回転運動エネルギーを電気エネルギーに変換するものであるから、このようなフライホイール蓄電装置1を自動車、電車等の車両に設けることによってエネルギーの有効活用が実現される。
【0071】
図4は、二つのフライホイール蓄電装置1,1を搭載した車両101を示した図面である。図4に示すように、フライホイール蓄電装置1,1が車両101の後部座席102の下方に搭載されている。フライホイール蓄電装置1,1と、後部座席102の後方に配置された燃料タンク103と、フロントのエンジンルームにあるエンジン104との配置位置関係によって、車両101の重量配分のバランスが良くなっている。また、フライホイール蓄電装置1,1は上述したように横置きであり、フライホイール蓄電装置1,1は回転体70の回転軸心が実質的に水平となるように車両101に搭載されている。フライホイール蓄電装置1,1が横置きであるため、車両101の高さが低く、車両101を安定して走行させることができる。
【0072】
ここで、図5は、車両101に搭載されたフライホイール蓄電装置1,1のうち回転体70の本体部71及びシャフト72を主に示したものであるが、二つの回転体70,70の回転軸心が互いに平行となるようにフライホイール蓄電装置1,1が車両101に搭載されている。回転体70,70の回転軸心が車両101の進行方向に対して直交するようにフライホイール蓄電装置1,1が車両101に搭載されており、従ってシャフト72,72が車両101の左右方向に延在している。また、車両101の左右方向の重量バランスが良くなるように、二つの本体部71、71が左右に互い違いとなっており、一方のフライホイール蓄電装置1の前部軸受ユニット40が車両101の右側に配置され、他方のフライホイール蓄電装置1の前部軸受ユニット40が車両101の左側に配置されている。
【0073】
また、一方のフライホイール蓄電装置1の回転体70の回転向きは他方のフライホイール蓄電装置1の回転体70の回転向きに対して反対となるように設けられている。二つの回転体70,70の回転向きが相反することによって、モーメント(ジャイロモーメント)が相殺され、回転体70,70の回転が車両101の挙動に大きな影響を与えなくなり、車両101の剛性が低くてもフライホイール蓄電装置1,1を支持することができる。
【0074】
また、二つの回転体70,70の回転向きが相反することによって、ジャイロモーメントが相殺され外部に作用しないが、それぞれの回転体70,70を支えている軸受ユニット40,50にはジャイロモーメントの力を直接支持しなければならないので、軸受ユニット40,50に過大な負荷がかかりやすい。しかしながら、本実施形態では軸受ユニット40,50に、すべり軸受43,53と転がり軸受42,52とを併用しているため、すべり軸受43,53の表面の油膜が途切れにくく、大荷重ですべり摩擦が増大すると主に転がり軸受42,52によって支持が行われるため、すべり軸受43,53に焼き付けが生じない。
【0075】
車両101の使用方法としては、車両101の運行前にフライホイール蓄電装置1,1に電気を供給して、所定の回転速度で回転をさせる。回転体70,70が所定の回転速度になったところで、電気の供給を停止することにより、フライホイール蓄電装置1,1は貯蔵された運動エネルギーを用いた発電機として作動することとなる。この発電機として作動するフライホイール蓄電装置1,1で発電した電気は、車両101の発進時に必要なエネルギーの補助として利用され、発進した後にも車両101の加速時に必要なエネルギーの補助として利用される。このように、フライホイール蓄電装置1,1で発電した電気を車両101の発進時あるいは加速時のエネルギーとして利用した場合、回転体70,70の回転運動エネルギーが車両の発進時あるいは加速時のエネルギーに変換されることになるため、回転体70,70の回転速度が下がることになる。
【0076】
次に、走行している車両101を減速させる場合には、車両101に備えられた回生ブレーキ(図示略)により減速させる。この回生ブレーキは、摩擦ブレーキのように摩擦力によって車両101を減速させるものではなく、車両101の走行のエネルギーを電気エネルギーに変換することにより、車両101を減速させるものである。この回生ブレーキによって発電された電気をフライホイール蓄電装置1,1に供給することにより、回転体70,70の下がった回転速度が再び上がることとなる。このように、減速する際のエネルギーが回転体70,70の回転運動エネルギーに変換されて貯蔵されることとなる。
【0077】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行っても良い。
【0078】
例えば、二つのフライホイール蓄電装置1,1を車両101に搭載するに際して、ケーシング20を共通しても良い。つまり、一つのケーシング20の減圧空気室20aに二つの回転体70、70を配置させ、それぞれの回転体70に対してステータ60、前部軸受ユニット40、後部軸受ユニット50を上述したように設ける。この場合であっても、二つの回転体70,70の回転軸心を互いに平行とし、回転体70,70の回転軸心を車両の進行方向に対して直交させ、更に、二つの回転体70,70の回転向きを相反させる。
【0079】
また、電車の車両にフライホイール蓄電装置1,1を搭載する場合も、図4の四輪自動車の場合と同様に、二つの回転体70,70の回転軸心を互いに平行とし、回転体70,70の回転軸心を車両の進行方向に対して直交させ、更に、二つの回転体70,70の回転向きを相反させる。
【0080】
【発明の効果】
以上のように、請求項1に記載の発明によれば、鉛直方向に交差するシャフトを転がり軸受で直接支持する場合よりも予期せぬ荷重が転がり軸受にかかり難く、転がり軸受の短寿命化を防ぐことができる。また、回転体が高速に回転している場合でも、すべり軸受の回転速度はシャフトの回転速度よりも遅くなり、転がり軸受の回転速度はすべり軸受の回転速度よりも更に遅くなるから、回転体が高速で回転する場合でも長時間にわたり回転体を安定して支持することができる。
また、すべり軸受と転がり軸受を採用しているため、すべり軸受と転がり軸受との間に生じたすべり摩擦が大きくなっても、転がり軸受によって支持が行われるため、軸受ユニットに焼き付けが生じない。
【0081】
請求項2に記載の発明によれば、回転体が高速で回転する場合でも長時間にわたり回転体を安定して支持することができる。
【0082】
請求項3に記載の発明によれば、回転体が高速で回転する場合でも長時間にわたり回転体を安定して支持することができる。
【0083】
請求項4に記載の発明によれば、すべり軸受及び転がり軸受に焼き付きが生じず、シャフトを滑らかに回転させることができ、ダイレクトドライブポンプを駆動するための他の駆動源を必要としない。
【0084】
請求項5に記載の発明によれば、回転開始時においてシャフトの回転速度が遅くとも、オイルポンプによってオイルが軸受ユニットに供給されるから、シャフトの回転開始時にすべり軸受及び転がり軸受に焼き付きが生じることがない。また、シャフトの回転速度が所定以上になればオイルポンプが停止するため、オイルポンプを長く用いることができるとともにオイルポンプでの消費エネルギーを減らすことができる。
【0085】
請求項6に記載の発明によれば、オイルが循環し、軸受ユニットをオイルで効率よく冷却することができる。
【0086】
請求項7に記載の発明によれば、ステータがオイルによって冷却される。
【0087】
請求項8に記載の発明によれば、オイルが循環し、ステータをオイルで効率よく冷却することができる。
【0088】
請求項9に記載の発明によれば、平行な二つの回転体のモーメントが相殺され、フライホイール蓄電装置を支える台等の剛性が比較的低くても、フライホイール蓄電装置を安定して支持することができる。
【0089】
請求項10に記載の発明によれば、フライホイール蓄電装置を車両に搭載した場合でも、車両全体の高さが高くならない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用されたフライホイール蓄電装置を示した断面図である。
【図2】図1のフライホイール蓄電装置に備わった前部軸受ユニットを示した断面図である。
【図3】図1のフライホイール蓄電装置に備わった後部軸受ユニットを示した断面図である。
【図4】図1のフライホイール蓄電装置を搭載した車両を示した側面図である。
【図5】二つのフライホイール蓄電装置を搭載した状態を示した図面である。
【符号の説明】
1 … フライホイール蓄電装置
20 … ケーシング
31 … オイルポンプ
36 … 気圧センサ
40 … 前部軸受ユニット
42、52 … 転がり軸受
43、53 … すべり軸受
45、55 … ダイレクトドライブポンプ
50 … 後部軸受ユニット
60 … ステータ
63 … 回転センサ
70 … 回転体
72 … シャフト
73 … 永久磁石
74 … 油ふりきりディスク
75 … 油ふりきりディスク
80 … 油温センサ
101 … 車両
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気エネルギーを回転体の回転運動エネルギーに変換すると共に必要に応じて回転体の回転運動エネルギーを電気エネルギーに変換するフライホイール蓄電装置及び該フライホイール蓄電装置を搭載した車両に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電気エネルギーをフライホイールの回転運動エネルギーとして蓄え、必要時にフライホイールの回転運動エネルギーを電気エネルギーに変換して外部に供給するようにしたフライホイール蓄電装置が知られている。このフライホイール蓄電装置として、ほぼ鉛直方向の軸を中心としてフライホイールを回転させるようにしたいわゆる縦型フライホイール蓄電装置があり、フライホイールの回転軸を軸受によって上下の二箇所で支持することが一般的に採用されており、特に軸受としてボールベアリングを用いている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−322533号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、フライホイールを水平方向の軸を中心として回転させるようにした横型のフライホイール蓄電装置が小型車用の蓄電装置として要望されている。しかしながら、フライホイールの回転軸を水平にした場合、ボールベアリングに予期せぬ荷重がかかり、ボールベアリングの寿命が短くなることがある。また、ボールベアリングでは高速回転の長時間運転に寿命の限界があり、頻繁に交換を要する。また、ボールベアリングの寿命を重視するために横型のフライホイールを高速に回転させないと、蓄える電気エネルギーが必ずしも大きくない。
【0005】
そこで、本発明は、上記のような問題点を解決しようとしてなされたものであり、フライホイールを横置きにした場合でも軸受の短寿命化を防ぐことができ且つフライホイールをより高速に回転させることができるようにすることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
シャフトを有する回転体と、鉛直方向に交差する方向の軸回りに回転自在に前記シャフトを支持する軸受ユニットと、前記シャフトと同軸になって前記回転体に取り付けられた永久磁石と、前記永久磁石の外側に配置されたステータと、前記回転体、前記軸受ユニット、前記永久磁石及び前記ステータの外側を覆ったケーシングと、を備え、前記ステータ及び前記永久磁石によって前記ステータの電気エネルギーと前記回転体の回転エネルギーとを可逆的に変換可能に設けられたフライホイール蓄電装置において、
前記軸受ユニットは、前記シャフトのラジアル方向に働く荷重を受けるすべり軸受と、前記すべり軸受のラジアル方向に働く荷重を受ける転がり軸受と、を有することを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明では、低速回転に対して回転抵抗の少ない転がり軸受と高速回転に対して耐久性の高いすべり軸受とで回転体のシャフトを支持するため、二種類の軸受に対するシャフトの荷重と回転速度とを減らして分担することができ、回転体が高速で回転する場合でも長時間にわたり回転体を安定して支持することができる。更に、すべり軸受を転がり軸受で支持しているため、鉛直方向に交差するシャフトを転がり軸受で直接支持する場合よりも予期せぬ荷重が転がり軸受にかかった場合に、すべり軸受で荷重を分担するので、転がり軸受の短寿命化を防ぐことができる。
また、回転体が高速に回転している場合でも、すべり軸受の回転速度はシャフトの回転速度よりも遅くなり、転がり軸受の回転速度はシャフトとすべり軸受との回転速度差よりも更に遅くなる。そのため、回転体が高速で回転する場合でも長時間にわたり、両軸受にかかる回転速度と荷重を低減し、回転体を安定して支持することができる。更に、両軸受に加わる荷重が増大した場合は、すべり軸受の弾性変形によって、転がり軸受に対する荷重の増加分がすべり軸受側に付与されるので、同様の効果を奏する。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のフライホイール蓄電装置において、前記軸受ユニットが前記ケーシングに設けられたハウジングを有し、前記転がり軸受がハウジングに支持され、前記すべり軸受の一部が油膜を介してハウジングに軸支され、前記シャフトの一部が油膜を介して前記すべり軸受に軸支されることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明と同様の作用効果を奏し、回転体が高速で回転する場合でも、長時間にわたり回転体に加わる負荷を低減して、回転体を安定して支持することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のフライホイール蓄電装置において、前記軸受ユニットが二つ設けられ、前記シャフトの一方の端部は一方の軸受ユニットのすべり軸受に軸支され、前記シャフトの他方の端部は他方の軸受ユニットのすべり軸受に軸支されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明では、請求項1に記載の発明と同様の作用効果を奏し、回転体が高速で回転する場合でも、長時間にわたり回転体に加わる負荷を低減して、回転体を安定して支持することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3の何れか一項に記載のフライホイール蓄電装置において、前記シャフトの回転に伴って直接駆動されるダイレクトドライブポンプが前記シャフトの端部に設けられており、前記ダイレクトドライブポンプの駆動によって前記ケーシングの下側に貯留したオイルを吸い上げて前記軸受ユニットに供給するように構成されたことを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明では、オイルがダイレクトドライブポンプによって軸受ユニットに供給されるので、すべり軸受及び転がり軸受に焼き付きが生じず、シャフトを滑らかに回転させることができる。また、ダイレクトドライブポンプは他の動力源によって駆動されるのではなく、シャフトの回転に伴って駆動されるので、他の駆動源を必要としない。つまり、シャフトの回転運動エネルギーを有効利用することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のフライホイール蓄電装置において、前記ケーシングの下側に起動用のオイルポンプが配置され、該オイルポンプは前記シャフトの回転開始時に前記ケーシングの下側に貯留したオイルを前記軸受ユニットに供給するとともに前記シャフトの回転速度が所定以上となった場合にオイルの供給を停止するように設けられたことを特徴とする。
【0015】
シャフトの回転開始時には回転速度も遅く、ダイレクトドライブポンプによるオイルの吸引力も低いから、軸受ユニットに十分なオイルを供給できない恐れがある。しかしながら、請求項5に記載の発明では、シャフトの回転開始時に、ダイレクトドライブポンプとは別に設けたオイルポンプによってオイルが軸受ユニットに供給されるから、シャフトの回転開始時にすべり軸受及び転がり軸受に焼き付きが生じることがない。また、シャフトの回転速度が所定以上になれば、オイルポンプによるオイルの供給が停止するが、ダイレクトドライブポンプの吸引力も高くなり、軸受ユニットに十分なオイルが供給される。ここで、シャフトの回転速度が所定以上になればオイルポンプが停止しているため、オイルポンプの寿命を長くすることができるとともにオイルポンプでの消費エネルギーを減らすことができる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載のフライホイール蓄電装置において、前記軸受ユニットに供給されたオイルが前記ケーシング内に戻るように構成されたことを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の発明では、軸受ユニットに供給されたオイルがケーシング内に戻るため、オイルが循環する。循環中で軸受ユニットがオイルによって冷却されて、暖まったオイルは軸受ユニット以外では自然冷却する。そのため、軸受ユニットを効率よく冷却することができる。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項4から6の何れか一項に記載のフライホイール蓄電装置において、前記軸受ユニットに供給されたオイルが前記ステータに供給されるように構成されたことを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の発明では、軸受ユニットに供給されたオイルがステータに供給されるため、ステータがオイルによって冷却される。
【0020】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載のフライホイール蓄電装置において、前記ステータに供給されたオイルが前記ケーシング内に戻るように構成されたことを特徴とする。
【0021】
請求項8に記載の発明では、ステータに供給されたオイルがケーシング内に戻るため、オイルが循環する。循環中でステータがオイルによって冷却されて、暖まったオイルはステータ及び軸受ユニット以外では自然冷却する。そのため、ステータを効率よく冷却することができる。
【0022】
請求項9に記載の発明は、請求項1から8の何れか一項に記載のフライホイール蓄電装置において、前記回転体が二つ互いに平行に並べて設けられ、一方の回転体の回転向きが他方の回転体の回転向きの反対となるように構成されたことを特徴とする。
【0023】
請求項9に記載の発明では、平行な二つの回転体の回転向きが反対になることによって、モーメントが相殺される。そのため、フライホイール蓄電装置を支える台等の剛性が比較的低くても、フライホイール蓄電装置を安定して支持することができる。また、フライホイール装置を車両等に搭載した場合、回転体によって生じるモーメントが相殺されるので、車両の挙動に悪影響を及ぼすことがない。
【0024】
請求項10に記載の発明は、請求項1から9の何れか一項に記載のフライホイール蓄電装置を搭載した車両である。
【0025】
請求項10に記載の発明では、回転体のシャフトが鉛直方向に交差しているため、フライホイール蓄電装置を車両に搭載した場合でも、車両全体の高さが高くならない。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を用いて本発明の具体的な態様について説明する。ただし、発明の範囲を図示例に限定するものではない。
【0027】
図1には、本発明を適用した横型のフライホイール蓄電装置1を示した断面図である。以下の説明において、水平方向とは、重力の働く鉛直方向に対して直交する方向である。
【0028】
図1に示すように、このフライホイール蓄電装置1はケーシング20を備え、このケーシング20の内側に種々の部材・機構が取り付けられて構成されている。
【0029】
ケーシング20は、略水平に横置きにされた円筒部21と、円筒部21の前側開口部を閉塞した前蓋部22と、円筒部21の後ろ側開口部を閉塞した後ろ蓋部23と、から構成されている。円筒部21、前蓋部22及び後ろ蓋部23によって囲まれた内部空間が形成されている。
【0030】
円筒部21の内側には略水平な仕切り壁24が形成されており、この仕切り壁24によってケーシング20内の内部空間が上側の減圧空気室20aと下側のオイル室20bとに区画されている。仕切り壁24の前後方向の全長は円筒部21の前後方向の全長よりも短く、減圧空気室20aとオイル室20bが通じている。なお、ケーシング20内の内部空間が減圧空気室20aとオイル室20bに区画されていなくても良い。
【0031】
オイル室20bには、潤滑及び冷却のためのオイル26が貯留されている。また、オイル室20bには、起動用のオイルポンプ31が設けられている。更に、オイル室20bには、オイル26の温度を検知するオイルセンサ80が設けられている。
【0032】
円筒部21の前端部の上側には、ケーシング20内の気体を排気してケーシング20内の気圧を減圧する真空ポンプ35が設けられており、この真空ポンプ35によって減圧空気室20a及びオイル室20bの気圧が亜真空圧に保たれるようになっている。この真空ポンプ35には図示しないオイル回収装置が備わっており、このオイル回収装置は排気の気体に含まれた噴霧状のオイルを気体から分離させてオイル室20bに戻すように構成されている。また、真空ポンプ35には減圧空気室20a内の気圧を検知する気圧センサ36が設けられており、この気圧センサ36によって減圧空気室20a及びオイル室20bの気圧が亜真空圧に一定に維持されるようになっている。
【0033】
減圧空気室20aに臨んだ前蓋部22の中央部には、油潤滑式の前部軸受ユニット40が設けられており、減圧空気室20aに臨んだ後ろ蓋部23の中央部には、油潤滑式の後部軸受ユニット50が設けられている。ケーシング20の内側には、オイルポンプ31から前部軸受ユニット40にまで通じた第一のダクト32及びオイルポンプ31から後部軸受ユニット50にまで通じた第二のダクト33が設けられており、オイルポンプ31によってオイル室20b内のオイル26が前部軸受ユニット40及び後部軸受ユニット50に供給されるようになっており、オイル26によって前部軸受ユニット40及び後部軸受ユニット50の潤滑・冷却が行われるようになっている。なお、第一のダクト32及び第二のダクト33は図示しない逆止弁を介してオイル室20bに通じており、これら逆止弁は、オイル室20bからダクト32,33を通じて前部軸受ユニット40、後部軸受ユニット50に向かったオイル26の流れを許容するとともに、オイルポンプ31からダクト32,33を通じてオイル室20bに向かったオイル26の逆流を防止する。
【0034】
断面コ字状の第二仕切り壁25が円筒部21の内面上側から仕切り壁24の上面にかけて円筒部21の周方向に沿って形成されており、円筒部21、仕切り壁24及び第二仕切り壁25によって包囲されたリング状のステータ室20cが前後方向における円筒部21の中央よりやや後ろ側に形成されている。
【0035】
ステータ室20cにはステータ60が配置されている。ステータ60は鉄芯61に導線62をコイル状に巻き付けて構成され、導線62の両端がケーシング20から外に導出されて外部装置に接続されている。また、導線62の一部が電気センサ63に接続されており、この電気センサ63によって導線62の電流、電圧が検知されるようになっている。なお、電気センサ63の代わり、回転速度センサを設け、後述する油ふりきりディスク75の回転をこの回転速度センサで検知しても良い。
【0036】
ケーシング20の内側には、後部軸受ユニット50からステータ室20cにまで通じたダクト37が設けられており、ダクト36を通じてステータ室20c内にオイル26が供給されてステータ60の潤滑・冷却を行うようになっている。第二仕切り壁25には貫通孔25aが形成されており、この貫通孔25aを通じてオイル26がステータ室20cから減圧空気室20a及びオイル室20bに排出されるようになっている。
【0037】
また、円筒部21の外周面には、突出した複数のヒートシンクフィン21a,21a,…が形成されており、フライホイール蓄電装置1全体(特に、オイル室20b内のオイル26やステータ室20c内のオイル26)の自然空冷がヒートシンクフィン21a,21a,…によって効率よく行われるようになっている。
【0038】
減圧空気室20aには、合金材料又は複合繊維材料で形成された横置きの回転体(フライホイール)70が配置されており、この回転体70は前部軸受ユニット40及び後部軸受ユニット50によって水平な前後方向の軸心回りに回転自在となって支持されている。詳細には、回転体70は、略円柱状の本体部71と、本体部71に同心となって本体部71に一体形成されたシャフト72と、シャフト72と同軸となってシャフト72に取り付けられた円筒状の永久磁石73とから構成されたものである。シャフト72の前端部が前部軸受ユニット40によって回転自在となって支持されており、シャフト72の後端部が後部軸受ユニット50によって回転自在となって支持されている。本体部71は、前後方向におけるシャフト72の中央よりやや前側に配置されている。
【0039】
永久磁石73は、前後方向におけるシャフト72の中央よりやや後ろ側であってステータ60に対応する位置に配置され、シャフト72を挿入した状態でシャフト72に固定されている。この永久磁石73が電動発電機のロータとして機能し、永久磁石73の外周側に配置されたステータ60と永久磁石73とから電動発電機が構成されている。
【0040】
図2を参照して前部軸受ユニット40について詳細に説明する。図2は、前部軸受ユニット40の縦断面図である。
図2に示すように、前部軸受ユニット40は、ハウジング41と、転がり軸受42と、すべり軸受43と、から構成されている。
【0041】
ハウジング41は前蓋部22の中央部から減圧空気室20a内に向かって突出形成されており、ハウジング41の中央部には軸受取り付け用孔41aが形成されている。軸受取り付け用孔41aは、前側の内径が小さく且つ後側の内径が大きくなった段状に形成されている。なお、第一のダクト32は軸受取り付け用孔41aまで通じており、オイル26が軸受取り付け用孔41aに供給されるようになっている。
【0042】
転がり軸受42は、軸受取り付け用孔41aの径の大きな部分の底側に嵌め込まれている。この転がり軸受42は、ラジアル方向(半径方向)の荷重を支持するラジアル軸受であり、ラジアル玉軸受であっても良いし、ラジアルころ軸受であっても良い。
【0043】
すべり軸受43は、3円弧等の多円弧円に形成された小筒部43aと、弾性接触片を有する円筒部43bとを一体に形成したものであり、ラジアル方向の荷重を支持するオイル浮動式のジャーナルすべり軸受である。すべり軸受43の小筒部43aが転がり軸受42の内輪に嵌め込まれており、すべり軸受43の円筒部43bが軸受取り付け用孔41aのうち後ろ側の弾性接触片部分に嵌め込まれている。特に、すべり軸受43の円筒部43bは油膜を介してシャフト72の前端部を軸支するとともに、円筒部43bは油膜を介してハウジング41の一部に軸支されている。すべり軸受43が、内周面にティルティングパッドを有したティルティングパッド軸受であっても良いし、内周面に浮動ブッシュを有した浮動ブッシュ軸受であっても良いし、ティルティングパッドのみを有したティルティングパッド軸受であっても良い。
【0044】
また、転がり軸受42の振動を抑制するために、転がり軸受42の内輪をすべり軸受43の外面に固定させて、弾性接触片を内面に設けるか、又は、転がり軸受42の外輪をハウジング41の内面に固定させて、弾性接触片を内面に設けるのが望ましい。勿論、転がり軸受42が油膜を介してハウジング41に軸支されるとともにすべり軸受43が油膜を介して転がり軸受42に軸支されていても良い。
【0045】
シャフト72の前端部は突端側が径の小さい段付き形状に形成されており、シャフト72の前端部の径の小さい部分がすべり軸受43の小筒部43aに挿入され、シャフト72の前端部の径の大きい部分がすべり軸受43の円筒部43bに同様に挿入されている。そして、シャフト72の前端部がすべり軸受43によって軸支されている。
【0046】
シャフト72のラジアル方向に働く荷重はすべり軸受43によって受けられ、すべり軸受43のラジアル方向に働く荷重は転がり軸受42によって受けられるようになっている。特に、シャフト72の荷重が軽荷重の場合には、シャフト72の荷重はすべり軸受43を介して転がり軸受42に受けられ、シャフト72の荷重が高荷重の場合には、シャフト72の荷重はすべり軸受43と転がり軸受42の両方に受けられる。従って、軽荷重の場合には、各軸受42,43の回転速度は低減する。
【0047】
シャフト72の前端には、シャフトと同期して回転するよう構成された定容量式のポンプ(以下、ダイレクトドライブポンプという)45が設けられており、このダイレクトドライブポンプ45は軸受取り付け用孔41aのうち前側の径の小さな部分に配置されている。このダイレクトドライブポンプ45は、シャフト72に直結した駆動マグネット、駆動マグネットに非接触でカップリングした従動マグネット、従動マグネットに直結したインペラ等から構成されている。このダイレクトドライブポンプ45は、シャフト72の回転動作に伴って直接駆動されることによって、第一のダクト32を通じてオイル室20bからオイル26を吸引し、ハウジング41の軸受取り付け用孔41a内に供給するものである。
【0048】
また、図1に示すように、ハウジング41と本体部71との間において、円盤状の溝を有した油ふりきりディスク74がハウジング41に対向するようにシャフト72に取り付けられており、軸受取り付け用孔41aに供給されたオイル26がハウジング41の軸受取り付け用孔41aから油ふりきりディスク74に向かって飛散するようになっている。油ふりきりディスク74に飛散したオイル26は自重によってオイル室20bに至るようになっている。なお、軸受取り付け用孔41aから飛散したオイル26が油ふりきりディスク74で受けられることによって、オイル26が本体71、永久磁石73に付着することが防止でき、回転体70の回転損失を抑えることができる。
【0049】
図3を参照して後部軸受ユニット50について詳細に説明する。図5は、後部軸受ユニット50の縦断面図である。
図2に示すように、後部軸受ユニット50は、ハウジング51と、転がり軸受52と、すべり軸受53と、から構成されており、前部軸受ユニット40と同様に構成されている。
【0050】
ハウジング51は後ろ蓋部23の中央部から減圧空気室20a内に向かって突出形成されており、ハウジング51の中央部には軸受取り付け用孔51aが形成されている。軸受取り付け用孔51aは、後ろ側の内径が小さく且つ前側の内径が大きくなった段状に形成されている。なお、第二のダクト33は軸受取り付け用孔51aまで通じており、オイル26が軸受取り付け用孔51aに供給されるようになっており、ダクト37は軸取り付け用孔51aからステータ室20cまで通じており、オイル26がステータ室20cに供給されるようになっている。
【0051】
転がり軸受52は、軸受取り付け用孔51aのうち前側の径の大きな部分の底側に嵌め込まれている。この転がり軸受52は、ラジアル方向の荷重を支持するラジアル軸受であり、ラジアル玉軸受であっても良いし、ラジアルころ軸受であっても良い。
【0052】
すべり軸受53は、3円弧等の多円弧円に形成された小筒部53aと、弾性接触片を有する円筒部53bとを一体に形成したものであり、ラジアル方向の荷重を支持するオイル浮動式のジャーナルすべり軸受である。すべり軸受53の小筒部53aが転がり軸受52の内輪に嵌め込まれており、すべり軸受53の円筒部53bが軸受取り付け用孔51aのうち前側の弾性接触片部分に嵌め込まれている。特に、すべり軸受53の円筒部53bは油膜を介してシャフト72の後端部を軸支するとともに、円筒部53bは油膜を介してハウジング51の一部に軸支されている。すべり軸受53は、前側のすべり軸受43と同様にティルティングパッド軸受であっても良いし、浮動ブッシュ軸受であっても良い。
【0053】
また、転がり軸受52の振動を抑制するために、転がり軸受52の内輪をすべり軸受53の外面に固定させて、弾性接触片を内面に設けるか、又は、転がり軸受52の外輪をハウジング51の内面に固定させて、弾性接触片を内面に設けるのが望ましい。勿論、転がり軸受け52が油膜を介してハウジング51に軸支されるとともにすべり軸受53が油膜を介して転がり軸受52に軸支されていても良い。
【0054】
シャフト72の後端部は突端側が径の小さい段付き形状に形成されており、シャフト72の後端部の径の小さい部分がすべり軸受53の小筒部53aに挿入され、シャフト72の後端部の径の大きい部分がすべり軸受53の円筒部53bに同様に挿入されている。シャフト72の後ろ端部がすべり軸受53によって軸支されている。
【0055】
シャフト72のラジアル方向に働く荷重はすべり軸受53によって受けられ、すべり軸受53のラジアル方向に働く荷重は転がり軸受52によって受けられるようになっている。
【0056】
シャフト72の前端には、シャフトと同期して回転するよう構成された低容量式のダイレクトドライブポンプ55が設けられている。このダイレクトドライブポンプ55も、シャフト72に直結した駆動マグネット、駆動マグネットに非接触でカップリングした従動マグネット、従動マグネットに直結したインペラ等から構成されている。このダイレクトドライブポンプ55は、シャフト72の回転動作に伴って直接駆動されることによって、第二のダクト33を通じてオイル室20bからオイル26を吸引し、ハウジング51の軸受取り付け用孔51a内に供給するものである。
【0057】
また、図1に示すように、ハウジング51と本体部71との間において、円盤状の溝を有した油ふりきりディスク75がハウジング51に対向するようにシャフト72に取り付けられており、軸受取り付け用孔51aに供給されたオイル26がハウジング51の軸受取り付け用孔51aから油ふりきりディスク75に向かって飛散するようになっている。なお、軸受取り付け用孔51aから飛散したオイル26が油ふりきりディスク75で受けられることによって、オイル26が本体71、永久磁石73に付着することが防止でき、回転体70の回転損失を抑えることができる。
【0058】
前部軸受ユニット40には、単位時間当たりのシャフト72の回転数(以下、単位時間当たりに回転数を回転速度という。)を検知する回転速度センサ46が設けられており、後部軸受ユニット50には、シャフト72の回転速度を検知する回転速度センサ56が設けられている。なお、回転速度センサ46の代わりに、前部軸受ユニット40中のオイル26の油温を検知する油温センサを設けても良いし、回転速度センサ56の代わりに後部軸受ユニット50中のオイル26の油温を検知する油温センサを設けても良い。
【0059】
図示はしないが、このフライホイール蓄電装置1は全体を制御する制御装置を具備しており、この制御装置は気圧センサ36によって検知された気圧に応じて真空ポンプ35を制御して、減圧空気室20aの気圧を一定の亜真空圧に維持するようになっている。また、この制御装置は、電気センサ63によってゼロより大きい電流・電圧が検知された場合にオイルポンプ31を作動させるとともに、回転速度センサ46,56によって所定以上の回転速度が検知された場合にオイルポンプ31を停止させるようになっている。なお、電気センサ63の代わりに回転速度センサを設けた場合、制御装置は回転速度センサによってシャフト72の回転開始を検知した場合にオイルポンプ31を作動させるとともに、その回転速度センサによって所定以上の回転速度が検知された場合にオイルポンプ31を停止させるようになっている。
【0060】
次に、フライホイール蓄電装置1の動作について説明する。
初期状態では、真空ポンプ35によって減圧空気室20aが亜真空圧に保たれ、回転体70が停止しており、オイルポンプ31も停止している。この状態にある時に外部装置からステータ60の導線62に電圧が印加されると、電気センサ63により電流・電圧が検知され、オイルポンプ31が制御装置により作動させられる。オイルポンプ31の作動によって、オイル26はオイル室20b、第一のダクト32、軸受取り付け用孔41a、オイル室20bの順に循環し、オイル室20b、第二のダクト33、軸取り付け用孔51a、オイル室20bの順にも循環し、更にオイル室20b、第二のダクト33、軸取り付け用孔51a、ダクト37、ステータ室20c、オイル室20bの順にも循環する。
【0061】
軸受取り付け用孔41aにオイル26が供給されると、シャフト72とすべり軸受43との隙間、すべり軸受43と転がり軸受42との隙間、すべり軸受43とハウジング41との隙間、その他の前部軸受ユニット40の隙間にオイル26の油膜が形成される。更に、すべり軸受43が油圧によって転がり軸受42及びハウジング41に対して浮動状態となるとともにシャフト72が油圧によってすべり軸受43に対して浮動状態となる。後部軸受ユニット50でも同様に、すべり軸受53が油圧によって転がり軸受52及びハウジング51に対して浮動状態となるとともにシャフト72が油圧によってすべり軸受53に対して浮動状態となる。
【0062】
一方、導線62に流れた電流により発生したステータ60の磁界と永久磁石73とによって、回転体70が回転するが、シャフト72、すべり軸受43及びすべり軸受53が浮動状態にあるため、摩擦損失が非常に少ない。そのため、すべり軸受43,53、転がり軸受42,52及びシャフト72に焼き付きが生じず、シャフト72を滑らかに回転させることができる。
【0063】
オイルポンプ31によってオイル26が循環した状態で回転体70が加速して回転し、回転体70の回転速度が所定以上になったことが回転速度センサ46,56によって検知されたら、オイルポンプ31が制御装置によって停止される。オイルポンプ31が停止してもダイレクトドライブポンプ45,55が回転体70の回転動作に伴って直接駆動されているので、オイル26の循環は引き続き行われている。このように、ダイレクトドライブポンプ45,55はシャフト72の回転に伴って駆動されるので、シャフト72の回転運動エネルギーをダイレクトドライブポンプ45,55の駆動に有効利用することができる。
【0064】
回転している回転体70は大きな慣性力を有し、ステータ60に供給された電気エネルギーが回転体70の運動エネルギーに変換される。ここで、減圧空気室20aが亜真空圧に保たれている上、回転体70のシャフト72が前部軸受ユニット40及び後部軸受ユニット50によって低摩擦状態で軸支されているから、外部装置から電気の供給が停止されても回転体70を長時間回転し続けることができる。また、シャフト72、すべり軸受43及びすべり軸受53が浮動状態にあるため、シャフト72が高速に回転しても、すべり軸受43及びすべり軸受53がシャフト72より低速に回転し、更に、転がり軸受42及び転がり軸受52の内輪がすべり軸受43及びすべり軸受53よりも低速に回転する。そのため、すべり軸受43,53よりも高速回転に対して損傷しやすい転がり軸受42,52を保護することができ、回転体70をより高速に回転させることができ、より高いエネルギーをフライホイール蓄電装置1に貯蓄することができる。
【0065】
回転体70が回転している時に、外部装置からの電気の供給が停止された場合、回転している永久磁石73によってステータ60に電気エネルギーが発生し、導線62からは電気エネルギーが外部装置に供給される。回転体70が回転し続けている間中、電気エネルギーが外部装置に供給され続け、フライホイール蓄電装置1が発電機として機能する。
【0066】
以上のように、高速回転に対して耐久性の高いすべり軸受43,53で回転体70のシャフト72を支持するため、回転体70が高速で回転する場合でも長時間にわたり回転体70を安定して支持することができる。更に、すべり軸受43,53を転がり軸受42,52で支持しているため、水平なシャフト72を転がり軸受42,52で直接支持する場合よりも予期せぬ荷重が転がり軸受42,52にかかり難く、転がり軸受42,52の短寿命化を防ぐことができる。
【0067】
また、すべり軸受43,53に転がり軸受42,52を併用しているため、すべり軸受43,53の表面の油膜が途切れにくく、大荷重ですべり摩擦が生じても主に転がり軸受42,52によって支持が行われるため、すべり軸受43,53に焼き付けが生じない。
【0068】
また、回転体70の回転開始時には回転速度も遅く、ダイレクトドライブポンプ45,55によるオイル26の吸引力も低いが、回転体70の回転開始時にオイルポンプ31によってオイルが軸受ユニット50,50に供給されるから、回転体70の回転開始時にダイレクトドライブポンプ45,55が低速で動作していても、すべり軸受43,53及び転がり軸受42,52に焼き付きが生じることがない。
即ち、オイルポンプ31は回転体70の低速回転時に不足する油量を補助的に補う。つまり、ダイレクトドライブポンプ45,55の送油量は回転速度に比例し、ダイレクトドライブポンプ45,55だけでは低速回転時には油量が少なく、すべり軸受43,53の潤滑に必要な油量のオイル26を供給できないが、ダイレクトドライブポンプ45,55から十分な油量を回転速度になるまで、オイルポンプ31で不足する油量を補うことができる。
【0069】
また、オイル26が循環されているので、軸受ユニット40,50及びステータ60を効率よく冷却することができる。
【0070】
次に、フライホイール蓄電装置1の利用方法について説明する。フライホイール蓄電装置1は、エネルギー貯蔵時には電気エネルギーを回転体70の回転運動エネルギーに変換し、エネルギー供給時には回転体70の回転運動エネルギーを電気エネルギーに変換するものであるから、このようなフライホイール蓄電装置1を自動車、電車等の車両に設けることによってエネルギーの有効活用が実現される。
【0071】
図4は、二つのフライホイール蓄電装置1,1を搭載した車両101を示した図面である。図4に示すように、フライホイール蓄電装置1,1が車両101の後部座席102の下方に搭載されている。フライホイール蓄電装置1,1と、後部座席102の後方に配置された燃料タンク103と、フロントのエンジンルームにあるエンジン104との配置位置関係によって、車両101の重量配分のバランスが良くなっている。また、フライホイール蓄電装置1,1は上述したように横置きであり、フライホイール蓄電装置1,1は回転体70の回転軸心が実質的に水平となるように車両101に搭載されている。フライホイール蓄電装置1,1が横置きであるため、車両101の高さが低く、車両101を安定して走行させることができる。
【0072】
ここで、図5は、車両101に搭載されたフライホイール蓄電装置1,1のうち回転体70の本体部71及びシャフト72を主に示したものであるが、二つの回転体70,70の回転軸心が互いに平行となるようにフライホイール蓄電装置1,1が車両101に搭載されている。回転体70,70の回転軸心が車両101の進行方向に対して直交するようにフライホイール蓄電装置1,1が車両101に搭載されており、従ってシャフト72,72が車両101の左右方向に延在している。また、車両101の左右方向の重量バランスが良くなるように、二つの本体部71、71が左右に互い違いとなっており、一方のフライホイール蓄電装置1の前部軸受ユニット40が車両101の右側に配置され、他方のフライホイール蓄電装置1の前部軸受ユニット40が車両101の左側に配置されている。
【0073】
また、一方のフライホイール蓄電装置1の回転体70の回転向きは他方のフライホイール蓄電装置1の回転体70の回転向きに対して反対となるように設けられている。二つの回転体70,70の回転向きが相反することによって、モーメント(ジャイロモーメント)が相殺され、回転体70,70の回転が車両101の挙動に大きな影響を与えなくなり、車両101の剛性が低くてもフライホイール蓄電装置1,1を支持することができる。
【0074】
また、二つの回転体70,70の回転向きが相反することによって、ジャイロモーメントが相殺され外部に作用しないが、それぞれの回転体70,70を支えている軸受ユニット40,50にはジャイロモーメントの力を直接支持しなければならないので、軸受ユニット40,50に過大な負荷がかかりやすい。しかしながら、本実施形態では軸受ユニット40,50に、すべり軸受43,53と転がり軸受42,52とを併用しているため、すべり軸受43,53の表面の油膜が途切れにくく、大荷重ですべり摩擦が増大すると主に転がり軸受42,52によって支持が行われるため、すべり軸受43,53に焼き付けが生じない。
【0075】
車両101の使用方法としては、車両101の運行前にフライホイール蓄電装置1,1に電気を供給して、所定の回転速度で回転をさせる。回転体70,70が所定の回転速度になったところで、電気の供給を停止することにより、フライホイール蓄電装置1,1は貯蔵された運動エネルギーを用いた発電機として作動することとなる。この発電機として作動するフライホイール蓄電装置1,1で発電した電気は、車両101の発進時に必要なエネルギーの補助として利用され、発進した後にも車両101の加速時に必要なエネルギーの補助として利用される。このように、フライホイール蓄電装置1,1で発電した電気を車両101の発進時あるいは加速時のエネルギーとして利用した場合、回転体70,70の回転運動エネルギーが車両の発進時あるいは加速時のエネルギーに変換されることになるため、回転体70,70の回転速度が下がることになる。
【0076】
次に、走行している車両101を減速させる場合には、車両101に備えられた回生ブレーキ(図示略)により減速させる。この回生ブレーキは、摩擦ブレーキのように摩擦力によって車両101を減速させるものではなく、車両101の走行のエネルギーを電気エネルギーに変換することにより、車両101を減速させるものである。この回生ブレーキによって発電された電気をフライホイール蓄電装置1,1に供給することにより、回転体70,70の下がった回転速度が再び上がることとなる。このように、減速する際のエネルギーが回転体70,70の回転運動エネルギーに変換されて貯蔵されることとなる。
【0077】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行っても良い。
【0078】
例えば、二つのフライホイール蓄電装置1,1を車両101に搭載するに際して、ケーシング20を共通しても良い。つまり、一つのケーシング20の減圧空気室20aに二つの回転体70、70を配置させ、それぞれの回転体70に対してステータ60、前部軸受ユニット40、後部軸受ユニット50を上述したように設ける。この場合であっても、二つの回転体70,70の回転軸心を互いに平行とし、回転体70,70の回転軸心を車両の進行方向に対して直交させ、更に、二つの回転体70,70の回転向きを相反させる。
【0079】
また、電車の車両にフライホイール蓄電装置1,1を搭載する場合も、図4の四輪自動車の場合と同様に、二つの回転体70,70の回転軸心を互いに平行とし、回転体70,70の回転軸心を車両の進行方向に対して直交させ、更に、二つの回転体70,70の回転向きを相反させる。
【0080】
【発明の効果】
以上のように、請求項1に記載の発明によれば、鉛直方向に交差するシャフトを転がり軸受で直接支持する場合よりも予期せぬ荷重が転がり軸受にかかり難く、転がり軸受の短寿命化を防ぐことができる。また、回転体が高速に回転している場合でも、すべり軸受の回転速度はシャフトの回転速度よりも遅くなり、転がり軸受の回転速度はすべり軸受の回転速度よりも更に遅くなるから、回転体が高速で回転する場合でも長時間にわたり回転体を安定して支持することができる。
また、すべり軸受と転がり軸受を採用しているため、すべり軸受と転がり軸受との間に生じたすべり摩擦が大きくなっても、転がり軸受によって支持が行われるため、軸受ユニットに焼き付けが生じない。
【0081】
請求項2に記載の発明によれば、回転体が高速で回転する場合でも長時間にわたり回転体を安定して支持することができる。
【0082】
請求項3に記載の発明によれば、回転体が高速で回転する場合でも長時間にわたり回転体を安定して支持することができる。
【0083】
請求項4に記載の発明によれば、すべり軸受及び転がり軸受に焼き付きが生じず、シャフトを滑らかに回転させることができ、ダイレクトドライブポンプを駆動するための他の駆動源を必要としない。
【0084】
請求項5に記載の発明によれば、回転開始時においてシャフトの回転速度が遅くとも、オイルポンプによってオイルが軸受ユニットに供給されるから、シャフトの回転開始時にすべり軸受及び転がり軸受に焼き付きが生じることがない。また、シャフトの回転速度が所定以上になればオイルポンプが停止するため、オイルポンプを長く用いることができるとともにオイルポンプでの消費エネルギーを減らすことができる。
【0085】
請求項6に記載の発明によれば、オイルが循環し、軸受ユニットをオイルで効率よく冷却することができる。
【0086】
請求項7に記載の発明によれば、ステータがオイルによって冷却される。
【0087】
請求項8に記載の発明によれば、オイルが循環し、ステータをオイルで効率よく冷却することができる。
【0088】
請求項9に記載の発明によれば、平行な二つの回転体のモーメントが相殺され、フライホイール蓄電装置を支える台等の剛性が比較的低くても、フライホイール蓄電装置を安定して支持することができる。
【0089】
請求項10に記載の発明によれば、フライホイール蓄電装置を車両に搭載した場合でも、車両全体の高さが高くならない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用されたフライホイール蓄電装置を示した断面図である。
【図2】図1のフライホイール蓄電装置に備わった前部軸受ユニットを示した断面図である。
【図3】図1のフライホイール蓄電装置に備わった後部軸受ユニットを示した断面図である。
【図4】図1のフライホイール蓄電装置を搭載した車両を示した側面図である。
【図5】二つのフライホイール蓄電装置を搭載した状態を示した図面である。
【符号の説明】
1 … フライホイール蓄電装置
20 … ケーシング
31 … オイルポンプ
36 … 気圧センサ
40 … 前部軸受ユニット
42、52 … 転がり軸受
43、53 … すべり軸受
45、55 … ダイレクトドライブポンプ
50 … 後部軸受ユニット
60 … ステータ
63 … 回転センサ
70 … 回転体
72 … シャフト
73 … 永久磁石
74 … 油ふりきりディスク
75 … 油ふりきりディスク
80 … 油温センサ
101 … 車両
Claims (10)
- シャフトを有する回転体と、鉛直方向に交差する方向の軸回りに回転自在に前記シャフトを支持する軸受ユニットと、前記シャフトと同軸になって前記回転体に取り付けられた永久磁石と、前記永久磁石に対応して配置されたステータと、前記回転体、前記軸受ユニット、前記永久磁石及び前記ステータの外側を覆ったケーシングと、を備え、前記ステータ及び前記永久磁石によって前記ステータの電気エネルギーと前記回転体の回転エネルギーとを可逆的に変換可能に設けられたフライホイール蓄電装置において、
前記軸受ユニットは、前記シャフトのラジアル方向に働く荷重を受けるすべり軸受と、前記すべり軸受のラジアル方向に働く荷重を受ける転がり軸受と、を有することを特徴とするフライホイール蓄電装置。 - 前記軸受ユニットが前記ケーシングに設けられたハウジングを有し、前記転がり軸受がハウジングに支持され、前記すべり軸受の一部が油膜を介してハウジングに軸支され、前記シャフトの一部が油膜を介して前記すべり軸受に軸支されることを特徴とする請求項1に記載のフライホイール蓄電装置。
- 前記軸受ユニットが二つ設けられ、前記シャフトの一方の端部は一方の軸受ユニットのすべり軸受に軸支され、前記シャフトの他方の端部は他方の軸受ユニットのすべり軸受に軸支されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のフライホイール蓄電装置。
- 前記シャフトの回転に伴って直接駆動されるダイレクトドライブポンプが前記シャフトの端部に設けられており、前記ダイレクトドライブポンプの駆動によって前記ケーシングの下側に貯留したオイルを吸い上げて前記軸受ユニットに供給するように構成されたことを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のフライホイール蓄電装置。
- 前記ケーシングの下側に起動用のオイルポンプが配置され、該オイルポンプは前記シャフトの回転開始時に前記ケーシングの下側に貯留したオイルを前記軸受ユニットに供給するとともに前記シャフトの回転速度が所定以上となった場合にオイルの供給を停止するように設けられたことを特徴とする請求項4に記載のフライホイール蓄電装置。
- 前記軸受ユニットに供給されたオイルが前記ケーシング内に戻るように構成されたことを特徴とする請求項4又は5に記載のフライホイール蓄電装置。
- 前記軸受ユニットに供給されたオイルが前記ステータに供給されるように構成されたことを特徴とする請求項4から6の何れか一項に記載のフライホイール蓄電装置。
- 前記ステータに供給されたオイルが前記ケーシング内に戻るように構成されたことを特徴とする請求項7に記載のフライホイール蓄電装置。
- 前記回転体が二つ互いに平行に並べて設けられ、一方の回転体の回転向きが他方の回転体の回転向きの反対となるように構成されたことを特徴とする請求項1から8の何れか一項に記載のフライホイール蓄電装置。
- 請求項1から9の何れか一項に記載のフライホイール蓄電装置を搭載した車両。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003149838A JP2004357372A (ja) | 2003-05-27 | 2003-05-27 | フライホイール蓄電装置及び車両 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003149838A JP2004357372A (ja) | 2003-05-27 | 2003-05-27 | フライホイール蓄電装置及び車両 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004357372A true JP2004357372A (ja) | 2004-12-16 |
Family
ID=34045829
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003149838A Pending JP2004357372A (ja) | 2003-05-27 | 2003-05-27 | フライホイール蓄電装置及び車両 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004357372A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006266404A (ja) * | 2005-03-24 | 2006-10-05 | Tottori Univ | ハイブリッド型直動案内装置 |
JP2015186992A (ja) * | 2013-12-30 | 2015-10-29 | ユニバーシティー プトラ マレーシアUniversiti Putra Malaysia | 電気エンジン |
JP2018166403A (ja) * | 2010-08-25 | 2018-10-25 | クリーン ウェーブ テクノロジーズ, インコーポレイテッド | 電気機械及び電気機械の冷却方法 |
-
2003
- 2003-05-27 JP JP2003149838A patent/JP2004357372A/ja active Pending
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