JP6396150B2 - インホイールモータ駆動装置 - Google Patents

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Description

本発明は、インホイールモータ駆動装置に関する。
従来のインホイールモータ駆動装置が、例えば下記の特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されたインホイールモータ駆動装置100は、図10に示すように、駆動力を発生させるモータ部103と、車輪を回転自在に支持する車輪用軸受部104と、モータ部103の回転を減速して車輪用軸受部104に伝達する減速機部105とを備え、これらは懸架装置(サスペンション)を介して車体に取り付けられるケーシング101に保持されている。
インホイールモータ駆動装置100では、装置のコンパクト化を図るため、モータ部103に高回転の小型モータが採用されている。このモータ部103は、ケーシング101に固定されたステータ106と、ステータ106の径方向内側に対向配置されたロータ107と、ロータ107を外周に保持し、ロータ107と一体回転するモータ回転軸108とを備える。モータ回転軸108はその一端および他端のそれぞれに配された転がり軸受109a,109bによりケーシング101に対して回転自在に支持されている。ケーシング101は、転がり軸受109bを内径端部に保持した円環状の隔壁102を有し、この隔壁102により、ケーシング101の内部空間は、モータ部103を収容したモータ室101Aと減速機部105を収容した減速機室101Bとに区分されている。
車輪用軸受部104は車輪を駆動するために大きなトルクを必要とする。そこで、減速機部105には、コンパクトで高い減速比が得られるサイクロイド減速機が採用されている。サイクロイド減速機は、一対の偏心部110a,110bを有する減速機入力軸110と、偏心部110a,110bの外周に回転自在に保持され、減速機入力軸110の回転に伴ってその回転軸心を中心とする公転運動を行う一対の曲線板111a,111bと、公転運動中の曲線板111a,111bの外周部と係合して曲線板111a,111bに自転運動を生じさせる複数の外ピン112と、曲線板111a,111bの自転運動を車輪用軸受部104に連結された減速機出力軸114に伝達する複数の内ピン113とを備える。
上記のインホイールモータ駆動装置100は、モータ部103および減速機部105の各所を潤滑・冷却するための潤滑機構を備える。潤滑機構は、モータ部103(モータ回転軸108)と同期回転する回転ポンプ121と、ケーシング101の壁部内に設けられた油路122と、モータ回転軸108に設けられた油路123と、減速機入力軸110に設けられた油路124と、ケーシング101の下方に設けられ、潤滑油を貯留した油タンク125と、油タンク125に貯留された潤滑油を回転ポンプ121に供給する油路126と、減速機室101B内の潤滑油(減速機室101Bの底部に溜まった潤滑油)を油タンク125に排出する排油路とを主な構成としている。図示例の排油路は、隔壁102の両面に開口し、モータ室101Aと減速機室101Bを連通させる排油口127と、ケーシング101の底壁両面に開口し、モータ室101Aと油タンク125を連通させる排油口128とを含んで構成される。なお、図10中に示す白抜き矢印は、潤滑油の流れを示している。
上記構成の潤滑機構において、モータ部103の駆動に伴って回転ポンプ121が駆動されると、油タンク125に貯留された潤滑油は、油路126を介して回転ポンプ121に吸い込まれ、その後、モータ部103および減速機部105の各所に供給される。具体的に述べると、回転ポンプ121から圧送された潤滑油は、ケーシング101の油路122を介して主にモータ回転軸108の油路123に流入する。油路123を流通する潤滑油の一部は、ポンプ圧力および遠心力の影響を受けて外径側に移動し、これにより、モータ部103のうち、特にロータ107およびステータ106が冷却される。一方、油路123を流通する潤滑油の残部は減速機入力軸110の油路124に流入し、油路124を流通する潤滑油がポンプ圧力や遠心力の影響を受けて減速機部105内に吐出されることにより、減速機部105の各所が潤滑および冷却される。そして、モータ部103の各所を冷却した潤滑油は、自由落下によりモータ室101Aの底部に到達した後、排油口128を介して油タンク125に排出される。また、減速機部105の各所を潤滑および冷却した潤滑油は、自由落下により減速機室101Bの底部に到達した後、排油口127,128を介して油タンク125に排出される。
特開2011−189919号公報
ところで、インホイールモータ駆動装置は、装置全体がホイールの内部に収容され、あるいはホイール近傍に配置される関係上、その重量や大きさが車両のばね下重量(走行性能)や客室スペースの広さに影響を及ぼすことから、できるだけ軽量・コンパクトにする必要がある。そのため、上記のインホイールモータ駆動装置100において、潤滑機構を構成する油タンク125としては、比較的小型のものを用いざるを得ない。しかしながらこの場合、油タンク125のみではモータ部103および減速機部105の各所を十分に冷却し得るだけの潤滑油量を確保するのが難しくなる。そこで、モータ室101Aや減速機室101Bにも潤滑油が貯留される場合があり、このとき、両室101A,101Bにおける潤滑油の貯留量(モータ部103の停止時における潤滑油の貯留量)は、ロータ107の一部が浸漬する程度とされる(図10中に示す、潤滑油の油面Mを参照)。
ここで、ケーシング101の内部空間をモータ室101Aと減速機室101Bとに区分する隔壁102は、インホイールモータ駆動装置100の構造部材であるため、隔壁102に設ける排油口127の大きさ(流路断面積)には限界がある。強度上差し支えない程度の排油口127の大きさを確保した場合、減速機部105を潤滑および冷却した潤滑油は、自由落下により減速機室101Bの底部に到達した後、排油口127を介してモータ室101Aに排出される。このとき、排油口127を流通する潤滑油量が少なければ、排油口127を介して減速機室101Bとモータ室101Aとの間で空気を行き来させることができるため、減速機室101B内の潤滑油を、モータ室101A、さらには油タンク125に円滑に排出することができる。しかしながら、排油口127を流通する潤滑油量が多い時には、減速機室101Bに潤滑油が滞留し始め、最終的には排油口127が潤滑油で塞がれてしまう。この場合、減速機室101B内の潤滑油の排出効率が低下する。
また、モータ部103の回転に伴ってモータ室101Aの室温が高まるとともに気圧が高まり、モータ室101Aと減速機室101Bとの間に気圧差が生じる可能性がある。このような気圧差の発生は、減速機室101B内の潤滑油の排出効率を一層低下させることになる。
そして、減速機室101Bからの排油効率が低下すると、減速機室101B内の潤滑油量が多くなるため、粘性流体である潤滑油と減速機部105の回転側(曲線板111a,111b、内ピン113等)との間に作用する荷重(潤滑油の撹拌抵抗)が増加し、減速機部105における動力伝達効率が低下する可能性が高まる。また、減速機室101Bからの排油効率が低下すると、油タンク125への潤滑油の流入量が減少するため、回転ポンプ121が駆動されるのに伴って油タンク125内の貯油量が減少することになる。その結果、回転ポンプ121から圧送される潤滑油量が減少し、モータ部103および減速機部105を適切に潤滑・冷却することが難しくなる。
なお、モータ室101Aと減速機室101Bとの間に生じる気圧差は、例えば、モータ回転軸108を支持する転がり軸受109bの軸受隙間や、転がり軸受109bの嵌め合い隙間を介して両室101A,101B間で空気を行き来させることで解消できるとも考えられる。しかしながら、モータ部103の駆動時には熱膨張等の影響により上記隙間が減少するため、両室101A,101B間の気圧差を解消するには至らない。また、例えば、減速機室101B内の潤滑油を強制的に排出するためのポンプを別途設置すれば、上述の問題発生を可及的に回避できるとも考えられるが、インホイールモータ駆動装置の重量化や大型化を招来するため得策ではない。
上記の実情に鑑み、本発明の課題は、減速機室からの排油効率を改善し、もって高品質で耐久性に優れたインホイールモータ駆動装置を提供することにある。
上記の課題を解決するために創案された本発明は、モータ部、減速機部および車輪用軸受部を保持したケーシングと、ケーシングの下方側に配置され、ケーシングの内部空間と連通した油タンクに貯留された潤滑油をモータ部および減速機部に供給する潤滑機構とを備え、ケーシングが、その内部空間を、モータ部を収容したモータ室と、減速機部を収容した減速機室とに区分する隔壁を有し、潤滑機構が、減速機室内の潤滑油を油タンクに排出する排油路を有するインホイールモータ駆動装置において、隔壁に、モータ室と減速機室との間で空気を行き来させるための通気路を設けたことを特徴とする。
上記構成によれば、潤滑機構を構成する上記の排油路が潤滑油で満たされている状況下においても、隔壁に設けた通気路を介してモータ室と減速機室との間で空気を行き来させることができる。そのため、モータ部の回転に伴う発熱が生じた場合でも、減速機室とモータ室との間で気圧差が生じることを防止できる。これにより、減速機室からの排油効率の低下、さらにはこれに起因した種々の問題発生を防止することができる。
通気路は、隔壁のうち、モータ部の回転軸の軸線(を通って延びる水平面)よりも上側の領域に設けるのが好ましい。このようにすれば、モータ部および減速機部の潤滑・冷却に必要な潤滑油量を確保することを目的として、潤滑油が、油タンクのみならず、モータ室や減速機室内に貯留されている場合でも、潤滑油によって通気路が塞がれてしまうのを効果的に防止することができる。なお、通気路は、モータ部の回転軸の軸線よりも下側の領域に追加的に設けても構わないが、通気路の断面積が増すほど、隔壁の強度が低下する。従って、通気路は、隔壁のうち、モータ部の回転軸の軸線よりも上側の領域のみに設けるのが好ましい。
上記構成のインホイールモータ駆動装置は、減速機部の静止側を減速機室内で支持する支持手段を有し、この支持手段は、隔壁に設けた孔部と、孔部に一端が嵌合された支持部材とを備えたものとすることができる。この場合、通気路は、例えば、上記孔部をモータ室および減速機室に開口した貫通孔に形成し、この貫通孔を利用して形成することができる。また、孔部を隔壁の周方向に離間して複数設け、通気路を、周方向で隣り合う孔部間に設けられ、モータ室および減速機室に開口した貫通孔で構成しても良い。
隔壁は、円環状に形成され、その内径端部に前記モータ部の回転軸を支持する転がり軸受を保持するものとすることができる。
以上の構成において、減速機部は、偏心部を有し、モータ部の回転軸とトルク伝達可能に連結された減速機入力軸と、偏心部の外周に回転自在に保持され、減速機入力軸の回転に伴ってその回転軸心を中心とする公転運動を行う曲線板と、公転運動中の曲線板の外周部と係合して曲線板に自転運動を生じさせる複数の外ピンと、曲線板の自転運動を車輪用軸受部に連結された減速機出力軸の回転運動に変換する運動変換機構とを備えた、いわゆるサイクロイド減速機を採用することができる。
以上より、本発明によれば、ケーシングに区画形成された減速機室からの排油効率を改善することができるので、高品質で耐久性に優れたインホイールモータ駆動装置を提供することができる。
本発明の一実施形態に係るインホイールモータ駆動装置を示す図である。 図1のP−P線矢視断面図である 曲線板に作用する荷重を示す説明図である。 回転ポンプの横断面図である。 図1のQ−Q線矢視断面図である。 他の実施形態に係るインホイールモータ駆動装置の軸直交断面図である。 (a)図は、図6に示す実施形態で採用される通気路の一例を示す図、(b)図は、図6に示す実施形態で採用される通気路の変形例を示す図である。 電気自動車の概略平面図である。 図8の電気自動車を後方から見た概略断面図である。 従来のインホイールモータ駆動装置を示す図である。
図8および図9に基づいてインホイールモータ駆動装置を搭載した電気自動車11の概要を説明する。図8に示すように、電気自動車11は、シャシー12と、操舵輪として機能する一対の前輪13と、駆動輪として機能する一対の後輪14と、左右の後輪14のそれぞれを駆動するインホイールモータ駆動装置21とを備える。図9に示すように、後輪14は、シャシー12のホイールハウジング12aの内部に収容され、懸架装置(サスペンション)12bを介してシャシー12の下部に固定されている。
懸架装置12bは、左右に延びるサスペンションアームによって後輪14を支持すると共に、コイルスプリングとショックアブソーバとを含むストラットによって、後輪14が路面から受ける振動を吸収してシャシー12の振動を抑制する。さらに、左右のサスペンションアームの連結部分には、旋回時等の車体の傾きを抑制するスタビライザが設けられる。懸架装置12bは、路面の凹凸に対する追従性を向上し、後輪14の駆動力を効率よく路面に伝達するために、左右の車輪を独立して上下させることができる独立懸架式とするのが望ましい。
この電気自動車11では、左右のホイールハウジング12aの内部に、左右の後輪14それぞれを回転駆動させるインホイールモータ駆動装置21が組み込まれるので、シャシー12上にモータ、ドライブシャフトおよびデファレンシャルギヤ機構等を設ける必要がなくなる。そのため、この電気自動車11は、客室スペースを広く確保でき、しかも、左右の後輪14の回転をそれぞれ制御することができるという利点を備えている。
電気自動車11の走行安定性およびNVH特性を向上するためには、ばね下重量を抑える必要がある。また、電気自動車11の客室スペースを拡大するためには、インホイールモータ駆動装置21を小型化する必要がある。そこで、図1に示すように、本発明の一実施形態に係るインホイールモータ駆動装置21を採用する。
本発明の実施形態に係るインホイールモータ駆動装置21を図1〜図7に基づいて説明する。図1に示すように、インホイールモータ駆動装置21は、駆動力を発生させるモータ部Aと、モータ部Aの回転を減速して出力する減速機部Bと、減速部Bからの出力を後輪14(図8,9参照)に伝達する車輪用軸受部Cとを備え、これらはケーシング22に保持されている。モータ部Aと減速部Bはケーシング22に収納された状態で電気自動車11のホイールハウジング12a(図9参照)内に取り付けられる。ケーシング22は円環状の隔壁22Aを有しており、この隔壁22Aによりケーシング22の内部空間が、モータ部Aを収容したモータ室R1と、減速機部Bを収容した減速機室R2とに区分されている。
モータ部Aは、ケーシング22に固定されているステータ23aと、ステータ23aの内側に径方向の隙間を介して対向配置されたロータ23bと、外周にロータ23bを装着した中空構造の回転軸(モータ回転軸)24とを備えるラジアルギャップモータであり、モータ回転軸24は15000min-1程度の回転速度で回転可能とされている。
モータ回転軸24は、その軸方向一方側(図1の右側であり、以下「インボード側」ともいう)および他方側(図1の左側であり、以下「アウトボード側」ともいう)の端部にそれぞれ配置された転がり軸受(図示例は、深溝玉軸受)36,36によってケーシング22に対して回転自在に支持されており、アウトボード側の端部に配置された転がり軸受36は、ケーシング22を構成する隔壁22Aの内径端部に保持されている。
車輪用軸受部Cは、中空構造のハブ輪32と、ハブ輪32をケーシング22に対して回転自在に支持する車輪用軸受33とを備える。ハブ輪32は、減速機部Bを構成する減速機出力軸28の軸部28bに連結された円筒状の中空部32aと、中空部32aのアウトボード側の端部から径方向外向きに延びたフランジ部32bとを一体に有する。フランジ部32bにはボルト32cによって後輪14(図8,9参照)が連結固定される。従って、ハブ輪32の回転時には後輪14がハブ輪32と一体回転する。
車輪用軸受33は、ハブ輪32の外径面に形成された内側軌道面33fおよび外径面の小径段部に嵌合された内輪33aを有する内方部材と、ケーシング22の内径面に嵌合固定された外輪33bと、内方部材と外輪33bの間に配置された複数のボール33cと、ボール33cを周方向に離間した状態で保持する保持器33dと、車輪用軸受33の軸方向両端部を密封するシール部材33e,33eとを備えた複列アンギュラ玉軸受である。
減速部Bは、モータ部Aにより回転駆動される減速機入力軸25と、減速機入力軸25と同軸に配置された減速機出力軸28と、減速機入力軸25の回転を減速した上で減速機出力軸28に伝達する減速機構とを備える。減速機出力軸28は、減速機構により減速された減速機入力軸25の回転を車輪用軸受部Cのハブ輪32に伝達する。
減速機入力軸25は、そのインボード側の端部外周に形成したスプライン25g(セレーションを含む。以下同じ。)を、モータ回転軸24のアウトボード側の端部内周に形成したスプラインに嵌合する、いわゆるスプライン嵌合によってモータ回転軸24とトルク伝達可能に連結されている。
減速機入力軸25の軸方向二箇所には、軸心が減速機入力軸25の回転軸心に対して偏心した偏心部25a,25bが設けられており、本実施形態ではこれら2つの偏心部25a,25bが減速機入力軸25と一体に設けられている。2つの偏心部25a,25bは、偏心運動による遠心力を互いに打ち消し合うために、位相を180°異ならせて設けられている。
減速機入力軸25は、軸方向の二箇所に離間して配置された転がり軸受37a,37bによって減速機出力軸28に対して回転自在に支持されている。一方の転がり軸受37aは、減速機入力軸25の軸方向略中央部を支持し、他方の転がり軸受37bは、減速機入力軸25のアウトボード側の端部を支持している。
減速機出力軸28は、軸部28bとフランジ部28aとを有する。フランジ部28aは、後述する内ピン31のアウトボード側の端部が嵌合固定された孔部(図示例は貫通孔)を有し、孔部は、減速機出力軸28の回転軸心を中心とする円周上に等間隔で複数形成されている。軸部28bは、車輪用軸受部Cを構成するハブ輪32にスプライン嵌合によって連結されている。減速機出力軸28は、軸方向の二箇所に離間して配置された転がり軸受48,48を介して外ピンハウジング60に回転自在に支持されている。
減速機構(サイクロイド減速機)は、偏心部25a,25bの外周に回転自在に保持され、減速機入力軸25の回転に伴ってその回転軸心を中心とする公転運動を行う曲線板26a,26bと、(公転運動中の)曲線板26a,26bの外周部と係合して曲線板26a,26bに自転運動を生じさせる複数の外ピン27と、曲線板26a,26bの自転運動を減速機出力軸28の回転運動に変換する運動変換機構と、偏心部25a,25bの軸方向外側に隣接配置されたカウンタウェイト29,29とを備える。カウンタウェイト29は略扇形状で、減速機入力軸25の外周に嵌合固定されている。各カウンタウェイト29は、曲線板26a,26bの回転によって生じる不釣合い慣性偶力を打ち消すために、軸方向に隣接する偏心部25a(又は25b)と180°位相を変えて配置される。
図2に示すように、曲線板26aは、その外周部にエピトロコイド等のトロコイド系曲線で構成される複数の波形を有する。また、曲線板26aは、その両端面に開口する軸方向の貫通孔30a,30bを有する。貫通孔30aは、曲線板26aの自転軸心を中心とする円周上に等間隔で複数設けられており、後述する内ピン31を1本ずつ受け入れる。貫通孔30bは、曲線板26aの中心に設けられており、偏心部25aの外周に転がり軸受40を介して嵌合される。
図2に示すように、転がり軸受40は、外径面に内側軌道面41を有し、偏心部25aの外径面に嵌合した内輪42と、曲線板26aの内径面(貫通孔30bを画成する内壁面)に直接形成された外側軌道面43と、内側軌道面41と外側軌道面43の間に介在する複数の円筒ころ44と、円筒ころ44を保持する保持器(図示せず)と、内輪42に一体的に設けられ、円筒ころ44の軸方向外側に隣接配置された円環状の鍔部46,46とを備える円筒ころ軸受である。この転がり軸受40においては、例えば、偏心部25aの外径面に内側軌道面41を直接形成することで内輪42を省略してもよい。このようにすれば、転がり軸受40、ひいては減速機部Bを軽量・コンパクト化することができる。
詳細な説明は省略するが、曲線板26bは、曲線板26aと同様の構造を有しており、かつ曲線板26aを支持する転がり軸受40と同様の転がり軸受40を介して偏心部25bに対して回転自在に支持されている。
外ピン27は、減速機入力軸25の回転軸心を中心とする円周上に等間隔で複数設けられている。減速機入力軸25が回転するのに伴って曲線板26a,26bが公転運動すると、曲線板26a,26bの外周部と外ピン27とが係合し、曲線板26a,26bに自転運動を生じさせる。各外ピン27は、図1に示すように、その軸方向両端部に配された一対の転がり軸受(針状ころ軸受)61,61、および一対の針状ころ軸受61,61を内周に保持した外ピンハウジング60を介してケーシング22に回転自在に支持されている。かかる構成により、外ピン27と曲線板26a,26bとの間の接触抵抗が低減される。
外ピンハウジング60は、減速機部Bの静止側を構成しており、その軸方向両側に設けた複数の支持手段70によってケーシング22に対して回り止め状態で支持されている。各支持手段70は、ケーシング22(外ピンハウジング60のインボード側に設けた支持手段70では、厳密には隔壁22A)および外ピンハウジング60の対向二面にそれぞれ設けた孔部72,73と、一端および他端が孔部72,73にそれぞれ嵌合・支持された軸状(ピン状)の支持部材71とを備え、支持手段70(支持部材71、並びにその一端および他端が嵌合された孔部72,73等)は、図2および図5に示すように、円周方向に所定間隔で複数設けられる。なお、本実施形態において、隔壁22Aに設けた孔部72は、モータ室R1には開口していない窪み状の形態をなしている。
ケーシング22の孔部72には、径方向に弾性変形可能な円筒状の弾性ブッシュ74が嵌合されている。従って、支持部材71の一端は、弾性ブッシュ74を介して孔部72に支持されている。このような構成を採用することにより、減速機入力軸25の回転時に減速機部B内で発生する振動を弾性ブッシュ74で吸収することができるので、インホイールモータ駆動装置21の静粛性を向上することができる。弾性ブッシュ74は、孔部72との嵌め合いがすきま嵌めとされる一方、支持部材71との嵌め合いがしまり嵌めとされるものを用いても良いし、孔部72との嵌め合いがしまり嵌めとされる一方、支持部材71との嵌め合いがすきま嵌めとされるものを用いても良い。これにより、弾性ブッシュ74が脱落等するのを可及的に防止しつつ、孔部72および支持部材71に対する嵌め合いが何れもしまり嵌めとされる弾性ブッシュ74を用いる際に懸念される組立性の低下を可及的に防止することができる。
以上のような弾性支持機能を有する支持手段70を採用すれば、外ピン27およびこれを保持した外ピンハウジング60がケーシング22に対して非接触の状態(フローティング状態)で支持されるので、車両の旋回や急加減速等によって生じる大きなラジアル荷重やモーメント荷重を回り止め手段で吸収することができる。これにより、曲線板26a,26bの自転運動を減速機出力軸28の回転運動に変換する運動変換機構の構成部品の破損が可及的に防止される。
図2に示すように、本実施形態の運動変換機構は、複数の内ピン31と、曲線板26a,26bに設けられた複数の貫通孔30aとで構成される。貫通孔30aは、複数の内ピン31それぞれに対応する位置に設けられている。内ピン31は、減速機出力軸28の回転軸心を中心とする円周上に等間隔に配置されており、そのアウトボード側の端部が減速機出力軸28のフランジ部28aに設けた孔部に固定されている。減速機出力軸28は減速機入力軸25と同軸上に配置されているので、曲線板26a,26bの自転運動は、減速機入力軸25の回転軸心を中心とする回転運動に変換された上で減速機出力軸28に伝達される。また、内ピン31と曲線板26a,26bとの摩擦抵抗を低減するため、曲線板26a,26bの貫通孔30aに挿入された内ピン31の外周には針状ころ軸受31aが設けられている。貫通孔30aの内径寸法は、内ピン31の外径寸法(「針状ころ軸受31aを含む最大外径」を指す。以下同じ。)よりも所定寸法大きく設定されている。
図1に示すように、減速機部Bは、各内ピン31のインボード側の端部を固定したスタビライザ31bをさらに有する。これにより、モータ部Aの駆動時(減速機入力軸25の回転時)に曲線板26a,26bから一部の内ピン31に負荷される荷重はフランジ部28aおよびスタビライザ31bを介して全ての内ピン31によって支持される。
ここで、モータ部Aの駆動時に、曲線板26a、さらには減速機入力軸25に作用する荷重の状態を図3に基づいて説明する。なお、モータ部Aの駆動時には、曲線板26bにも以下に説明するのと同様にして荷重が作用する。
減速機入力軸25に設けられた偏心部25aの軸心O2は、減速機入力軸25の軸心(回転軸心)Oから偏心量eだけ偏心している。偏心部25aの外周には転がり軸受40を介して曲線板26aが保持され、偏心部25a(転がり軸受40)は曲線板26aを回転自在に支持するので、軸心O2は曲線板26aの軸心でもある。曲線板26aの外周部は波形曲線で形成され、径方向に窪んだ凹部34を周方向等間隔に有する。曲線板26aの周囲には、凹部34と係合する外ピン27が、軸心Oを中心として周方向に複数配設されている。
図3において、モータ部Aが駆動されて減速機入力軸25が紙面上で反時計周りに回転すると、偏心部25aおよびその外周に保持された曲線板26aは軸心Oを中心とする公転運動を行うので、曲線板26aの外周部に形成された凹部34が外ピン27と周方向に順次当接する。この結果、曲線板26aは、複数の外ピン27から図中矢印で示すような荷重Fiを受けて時計回りに自転する。
また、曲線板26aには貫通孔30aが軸心O2を中心として周方向に複数配設されており、各貫通孔30aには、軸心O(減速機入力軸25)と同軸配置された減速機出力軸28に対して固定的に設けられた内ピン31が挿通されている。貫通孔30aの内径は内ピン31の外径よりも所定寸法大きいため、内ピン31は、曲線板26aの公転運動の障害とはならず、自転している曲線板26aの貫通孔30aの内壁面と摺動接触することによって曲線板26aの自転運動を取り出し、減速機出力軸28を回転させる(減速機出力軸28の回転運動に変換する)。このとき、減速機出力軸28は、減速機入力軸25よりも高トルクかつ低回転数になり、曲線板26aは、複数の内ピン31から図中矢印で示すような荷重Fjを受ける。これらの複数の荷重Fi、Fjの合力Fsが減速機入力軸25にかかる。
合力Fsの方向は、曲線板26aの外周部の形状や凹部34の数などの幾何学的条件の他、遠心力の影響により変化する。具体的には、自転軸心O2と軸心Oとを結ぶ直線Yと直角であって自転軸心O2を通過する基準線Xと、合力Fsとの角度αは概ね30°〜60°で変動する。上記の複数の荷重Fi、Fjは、減速機入力軸25が1回転する間に荷重の方向や大きさが変化し、その結果、減速機入力軸25に作用する合力Fsも荷重の方向や大きさが変動する。そして、減速機入力軸25が1回転すると、曲線板26aの凹部34が減速されて1ピッチ時計回りに回転し、図3の状態になり、これを繰り返す。
上記のインホイールモータ駆動装置21は、さらに、潤滑機構を有する。この潤滑機構は、モータ部Aおよび減速機部Bの各所に潤滑油を供給するものであって、図1に示すように、モータ回転軸24に設けた油路24a,24bと、減速機入力軸25に設けた油路25c,25d,25eと、スタビライザ31bに設けた油路(図示せず)と、内ピン31に設けた油路(図示せず)と、ケーシング22の下方に配置され、潤滑油を(一時的に)貯留する油タンク22dと、ケーシング22に設けた油路22a,22eと、ケーシング22に設けた排油口22b,22cと、回転ポンプ51とを備える。図1中に示した白抜き矢印は潤滑油の流れる方向を示している。なお、本実施形態では、モータ部Aの停止時にロータ23bの下端部が浸漬する程度の潤滑油がケーシング22内に貯留されている(図1中に示す油面Nを参照)。
油路24aは、モータ回転軸24の内部を軸方向に沿って延びており、この油路24aには、減速機入力軸25の内部を軸方向に沿って延びた油路25cが接続されている。油路25dは、油路25cから減速機入力軸25の外径面に向かって径方向に延びており、図示例の油路25dの外径端部は偏心部25a,25bの外径面に開口している。油路25eは、油路25cのアウトボード側の端部から軸方向に延び、減速機入力軸25のアウトボード側の外端面に開口している。なお、径方向に延びる油路25dの形成位置はこれに限らず、減速機入力軸25の軸方向の任意の位置に設けることができる。
排油口22bは、図5に示すように、ケーシング22の隔壁22Aの底部付近に2つ設けられ、モータ室R1および減速機室R2の底側領域に開口している。また、排油口22cは、ケーシング22のモータ室R1を画成する底壁に設けられ、モータ室R1および油タンク22dに開口している。油タンク22dは、車両のサスペンション構成、車両の加減速時の慣性による潤滑油の偏り、および登坂時の油面変化等に対応するため、ケーシング22の下方位置で車両の前進方向とは反対側(図5では右側)に配置されている。油路22e(図1参照)は、油タンク22dに貯留された潤滑油を回転ポンプ51に供給する(還流させる)役割を担う。
回転ポンプ51は、図1に示すように、ケーシング22の隔壁22A内、より具体的には、ケーシング22の油路22aと油路22eとの間に設けられている。回転ポンプ51をケーシング22内に配置することによって、インホイールモータ駆動装置21が全体として大型化するのを防止することができる。本実施形態の回転ポンプ51は、図4に示すように、減速機出力軸28(モータ回転軸24)の回転を利用して回転するインナーロータ52と、インナーロータ52の回転に伴って従動回転するアウターロータ53と、両ロータ52,53間の空間に設けられた複数のポンプ室54と、潤滑油路22eに連通する吸入口55と、ケーシング22の油路22aに連通する吐出口56とを備えるサイクロイドポンプである。インナーロータ52は、回転中心c1を中心として回転し、アウターロータ53は、インナーロータ52の回転中心c1とは異なる回転中心c2を中心として回転する。そのため、ポンプ室54の容積は連続的に変化する。これにより、吸入口55からポンプ室54に流入した潤滑油は吐出口56からケーシング22の油路22aに圧送される。
潤滑機構は、主に以上の構成を有しており、以下のようにしてモータ部Aおよび減速機部Bの各所を潤滑・冷却する。
まず、図1に示すように、モータ部Aのうち、ロータ23bおよびステータ23aへの潤滑油の供給は、主に、ケーシング22の油路22aを介してモータ回転軸24の油路24aに供給された潤滑油の一部が、モータ回転軸24の回転に伴って生じる遠心力および回転ポンプ51の圧力の影響を受けて油路24bの外径側開口部から吐出されることにより行われる。すなわち、油路24bの外径側開口部から吐出された潤滑油はロータ23bに供給され、その後、ステータ23aに供給される。また、モータ回転軸24のインボード側の端部を支持する転がり軸受36は、主に、油路22aを流れる潤滑油の一部がケーシング22とモータ回転軸24との間から滲み出ることにより潤滑される。さらに、モータ回転軸24のアウトボード側の端部を支持する転がり軸受36は、主に、油路24bから吐出され、隔壁22Aのアウトボード側の内壁面を伝い落ちてきた潤滑油により潤滑される。
次に、モータ回転軸24の油路24aを経由して減速機入力軸25の油路25cに流入した潤滑油は、減速機入力軸25の回転に伴う遠心力および回転ポンプ51の圧力の影響を受けて油路25d,25eの開口部から減速機室R2内に吐出される。吐出された潤滑油は、主に遠心力により減速機部Bの各所に供給されて減速機部Bの各所を潤滑・冷却する。
以上のようにしてモータ部Aおよび減速機部Bの各所を潤滑・冷却した潤滑油は、ケーシング22の内壁面を伝って重力により下方(ケーシング22の底部側)に移動する。モータ室R1の底部側へ移動した潤滑油は、排油口22cを介して油タンク22dに流入する。また、減速機室R2の底部側へ移動した潤滑油は、排油口22bを介してモータ室R1に流入し、モータ室R1内の潤滑油と共に排油口22cを介して油タンク22dに流入する。すなわち、本実施形態において、本発明でいう「排油路」は、排油口22b、モータ室R1の底側領域および排油口22cで構成される。以上のようにして油タンク22dに流入した潤滑油は、一時的に油タンク22dで貯留され、再度(繰り返し)モータ部Aおよび減速機部Bの潤滑・冷却に利用される。このように、油タンク22dが設けられているので、特に高速回転時などに回転ポンプ51によって排出しきれない潤滑油が一時的に発生しても、その潤滑油を油タンク22dに貯留しておくことができる。その結果、減速部Bの各所における発熱やトルク損失の増加を防止することができる。一方、特に低速回転時などには、排油口22bに到達する潤滑油量が少なくなるが、このような場合であっても、油タンク22dに貯留されている潤滑油を油路24a,25cに還流することができるので、モータ部Aおよび減速機部Bに安定して潤滑油を供給することができる。
インホイールモータ駆動装置21の全体構造は前述したとおりであり、本実施形態のインホイールモータ駆動装置21は、以下に示すような特徴的な構成を有する。
図5に示すように、本実施形態のインホイールモータ駆動装置21では、ケーシング22の内部空間をモータ室R1と減速機室R2とに区分する円環状の隔壁22Aに、両室R1,R2間で空気を行き来させるための通気路80を設けている。本実施形態では、減速機部Bの静止側(外ピンハウジング60)を減速機室R2内で回り止め状態で支持するために、隔壁22Aの周方向に離間して設けた支持手段70,70(孔部72,72)間に貫通孔を形成し、この貫通孔で通気路80を構成している。通気路80は、隔壁22Aのうち、モータ回転軸24の軸線よりも上側の領域(のみ)に複数(図示例では6つ)設けている。
このような構成によれば、図1に示すように、減速機室R2内の潤滑油を油タンク22dに排出するための排油路(排油口22b、モータ室R1の底側領域および排油口22c)が潤滑油で満たされている状況下(図1中の潤滑油の油面N位置を参照)においても、隔壁22Aに設けた通気路80を介してモータ室R1と減速機室R2との間で空気を行き来させることができる。そのため、モータ部Aの回転に伴う発熱が生じた場合でも、減速機室R2とモータ室R1との間で気圧差が生じることを防止できる。これにより、減速機室R2からの排油効率の低下、さらにはこれに起因した減速機部Bにおける動力伝達効率の低下、モータ部Aおよび減速機部Bにおける潤滑不良を可及的に防止することができる。
特に、通気路80を、モータ回転軸24の軸線よりも上側の領域に設けておけば、モータ部Aおよび減速機部Bの潤滑・冷却に必要な潤滑油量を確実に確保することを目的として、潤滑油が、油タンク22dのみならず、モータ室R1内に貯留されている場合でも、潤滑油によって通気路80が塞がれることがなくなる。通気路80は、隔壁22Aのうち、モータ回転軸24の軸線よりも下側の領域に追加的に設けても構わないが、通気路80の断面積が増すほど、隔壁22Aの強度が低下するため、インホイールモータ駆動装置21の耐久性が低下する可能性がある。この点、本実施形態では、通気路80を、モータ回転軸24の軸線よりも上側の領域のみに設けているので、隔壁22Aの強度低下を可及的に回避しつつ、両室R1,R2間における気圧差が生じることを防止できる。
なお、通気路80は、以上のように、支持部材71が嵌合される孔部72とは別に設けた貫通孔で構成することができる他、図6に示すように、孔部72を利用して構成することもできる。より具体的に述べると、孔部72を隔壁22Aのインボード側およびアウトボード側の壁面(モータ室R1および減速機室R2)に開口した貫通孔に形成し、その上で、貫通孔(孔部72)と弾性ブッシュ74の間に連通孔75を形成する[図7(a)参照]、あるいは、支持部材71の外径面と弾性ブッシュ74の内径面との間に連通孔75を形成する[図7(b)参照]ことで構成することもできる。図7(a)では、孔部72の内壁面に溝部76を設けることで連通孔75を形成しているが、弾性ブッシュ74の外径面に溝部を設けることで連通孔75を形成しても良い。また、図7(b)では、支持部材71の外径面の周方向一部領域に切欠き部77(例えばDカット)を設けることで連通孔75を形成しているが、弾性ブッシュ74の内径面に溝部を設けることで連通孔75を形成しても良い。さらに、図示は省略するが、孔部72と弾性ブッシュ74との間、および支持部材71と弾性ブッシュ74の間の双方に連通孔75を設けても良い。
図6および図7(a)(b)に示すように、支持手段70を構成する孔部72を利用して通気路80を形成すれば、図5に示すように、隔壁22Aに別途設けた貫通孔で通気路80を形成する場合に比べて、隔壁22Aに対する加工コストを減じることができる。なお、図6に示す実施形態においても、通気路80は、隔壁22Aのうち、モータ回転軸24の軸線よりも上側の領域のみに複数(図示例では5つ)設けている。
以上の構成を有するインホイールモータ駆動装置21の全体的な作動原理を、図1および図2を参照しながら説明する。
モータ部Aでは、例えば、ステータ23aのコイルに交流電流を供給することによって生じる電磁力を受けて、永久磁石又は磁性体によって構成されるロータ23bが回転する。これに伴って、モータ回転軸24に連結された減速機入力軸25が回転すると、曲線板26a、26bは減速機入力軸25の回転軸心を中心として公転運動する。このとき、外ピン27は、曲線板26a,26bの外周部に設けられた曲線形状の波形と周方向で係合し、曲線板26a、26bを減速機入力軸25の回転方向とは逆向きに自転回転させる。
貫通孔30aに挿通された内ピン31は、曲線板26a,26bの自転運動に伴って貫通孔30aの内壁面と当接する。これにより、曲線板26a,26bの公転運動が内ピン31に伝わらず、曲線板26a,26bの自転運動のみが減速機出力軸28を介して車輪用軸受部Cに伝達される。このとき、減速機入力軸25の回転が減速機部Bによって減速された上で減速機出力軸28に伝達される。
上記構成の減速機部Bの減速比は、外ピン27の数をZA、曲線板26a,26bの外周部に設けた波形(凹部34)の数をZBとすると、(ZA−ZB)/ZBで算出される。本実施形態では、図2に示すように、ZA=12、ZB=11であるので、減速比は1/11と非常に大きな減速比を得ることができる。
このように、多段構成とすることなく大きな減速比を得ることができる減速機部Bを採用することにより、コンパクトで高減速比のインホイールモータ駆動装置21を得ることができる。大きな減速比を得ることができるので、低トルク、高回転型で小型のモータ部Aを採用した場合でも、駆動輪(後輪)14に必要なトルクを伝達することが可能となる。また、外ピン27および内ピン31を回転自在に支持する転がり軸受(針状ころ軸受)61,31aを設けたことにより、曲線板26a,26bと外ピン27および内ピン31との間の摩擦抵抗が低減されるので、この点からも減速機部Bにおける動力伝達効率が向上する。
上述したように、本実施形態のインホイールモータ駆動装置21は、装置全体として軽量・コンパクト化が図られている。そのため、このインホイールモータ駆動装置21を電気自動車11に搭載すれば、ばね下重量を抑えることができるので、走行安定性およびNVH特性に優れた電気自動車11を実現することができる。
以上、本発明の一実施形態に係るインホイールモータ駆動装置21について説明を行ったが、インホイールモータ駆動装置21には、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
例えば、以上の実施形態では、減速機室R2内の潤滑油を油タンク22dに排出するための排油路を、排油口22b、モータ室R1の底側領域および排油口22cで構成したインホイールモータ駆動装置21に本発明を適用したが、本発明は、排油路が、減速機室R2と油タンク22dの双方に開口した孔のみで構成されたインホイールモータ駆動装置21(図示せず)に適用することも可能である。
また、以上では、潤滑機構を構成する回転ポンプ51としてサイクロイドポンプを採用したが、これに限ることなく、減速機出力軸28の回転を利用して駆動するあらゆる回転ポンプを採用することができる。また、回転ポンプ51は、必ずしも隔壁22A(ケーシング22)内に設ける必要はなく、ケーシング22の外部に配置しても良い。
また、以上では、減速機入力軸25の軸方向二箇所に偏心部25a,25bを設けたが、偏心部の設置個数は任意に設定することができる。例えば、偏心部は、減速機入力軸25の軸方向三箇所に設けることができ、この場合、各偏心部は、減速機入力軸25の回転に伴って生じる遠心力を打ち消し合うように120°位相を変えて設けるのが好ましい。
また、以上では、主に、曲線板26a,26bに設けた貫通孔30aと、貫通孔30aの内壁面と摺動可能に減速機出力軸28のフランジ部28aに固定された内ピン31とで運動変換機構を構成したが、運動変換機構は、これに限らず、曲線板26a,26bの自転運動を車輪用軸受部Cのハブ輪32に伝達可能な任意の構成とすることができる。また、以上では減速機部Bにサイクロイド減速機構を採用した例を示したが、減速機部Bには、遊星歯車減速機構や平行ニ軸減速機構等、その他の減速機構を採用してもよい。
本実施形態における作動の説明は、各部材の回転に着目して行ったが、実際にはトルクを含む動力がモータ部Aから後輪14に伝達される。したがって、上述のように減速された動力は高トルクに変換されたものとなっている。
また、モータ部Aに電力を供給してモータ部Aを駆動させ、モータ部Aからの動力を後輪14に伝達させる場合を示したが、これとは逆に、車両が減速したり坂を下ったりするようなときは、後輪14側からの動力を減速部Bで高回転低トルクの回転に変換してモータ部Aに伝達し、モータ部Aで発電するように構成することもできる。さらに、ここで発電した電力は、バッテリーに蓄電しておき、モータ部Aの駆動用電力や、車両に備えられた他の電動機器の作動用電力として活用することもできる。
また、以上では、モータ部Aにラジアルギャップモータを採用した構成に本発明を適用したが、本発明は、モータ部Aに、ステータとロータとを軸方向の隙間を介して対向させるアキシャルギャップモータを採用した場合にも好ましく適用できる。
さらに、本発明に係るインホイールモータ駆動装置21は、後輪14を駆動輪とした後輪駆動タイプの電気自動車11のみならず、前輪13を駆動輪とした前輪駆動タイプの電気自動車や、前輪13および後輪14を駆動輪とした4輪駆動タイプの電気自動車に適用することもできる。なお、本明細書中で「電気自動車」とは、電力から駆動力を得る全ての自動車を含む概念であり、例えば、ハイブリッドカーや燃料電池車等をも含む。
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々の形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
21 インホイールモータ駆動装置
22 ケーシング
22A 隔壁
22b,22c 排油口(排油路)
25 減速機入力軸
25a,25b 偏心部
26a,26b 曲線板
27 外ピン
28 減速機出力軸
70 支持手段
71 支持部材
72 孔部
80 通気路
A モータ部
B 減速機部
C 車輪用軸受部
R1 モータ室
R2 減速機室

Claims (6)

  1. モータ部、減速機部および車輪用軸受部を保持したケーシングと、該ケーシングの下方側に配置され、前記ケーシングの内部空間と連通した油タンクに貯留された潤滑油を前記モータ部および前記減速機部に供給する潤滑機構とを備え、
    前記ケーシングが、その内部空間を、前記モータ部を収容したモータ室と、前記減速機部を収容した減速機室とに区分する隔壁を有し、前記潤滑機構が、前記減速機室内の潤滑油を前記油タンクに排出する排油路を有するインホイールモータ駆動装置において、
    前記隔壁に、前記モータ室と前記減速機室との間で空気を行き来させるための通気路を設けたことを特徴とするインホイールモータ駆動装置。
  2. 前記通気路を、前記隔壁のうち、前記モータ部の回転軸の軸線よりも上側の領域に設けたことを特徴とする請求項1に記載のインホイールモータ駆動装置。
  3. 前記減速機部の静止側を前記減速機室内で支持した支持手段を有し、該支持手段は、前記隔壁に設けた孔部と、該孔部に一端が嵌合された支持部材とを備え、
    前記孔部を前記モータ室および前記減速機室に開口した貫通孔に形成し、該貫通孔を利用して前記通気路を形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載のインホイールモータ駆動装置。
  4. 前記減速機部の静止側を前記減速機室内で支持した支持手段を有し、該支持手段は、前記隔壁に設けた孔部と、該孔部に一端が嵌合された支持部材とを備え、
    前記孔部を前記隔壁の周方向に離間して複数設け、前記通気路を、周方向で隣り合う前記孔部間に設けられ、前記モータ室および前記減速機室に開口した貫通孔で構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載のインホイールモータ駆動装置。
  5. 前記隔壁は、円環状に形成され、その内径端部に前記モータ部の回転軸を支持する転がり軸受を保持することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のインホイールモータ駆動装置。
  6. 前記減速機部が、偏心部を有し、前記モータ部の回転軸とトルク伝達可能に連結された減速機入力軸と、前記偏心部の外周に回転自在に保持され、前記減速機入力軸の回転に伴ってその回転軸心を中心とする公転運動を行う曲線板と、公転運動中の前記曲線板の外周部と係合して前記曲線板に自転運動を生じさせる複数の外ピンと、前記曲線板の自転運動を前記車輪用軸受部に連結された減速機出力軸の回転運動に変換する運動変換機構とを備えることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のインホイールモータ駆動装置。
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