JP2004356544A - 厚膜交換スプリング磁石、その製造方法及び磁石モータ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】パルスレ−ザディポジッション(PLD)によるNd2Fe14B膜の超高速堆積技術により、人工的に制御されたナノ組織を交互に積み上げて交換スプリング磁石を作製する。PLD法を用いたナノ構造のマニュピュレ−ション技術を厚膜交換スプリング磁石に適用できる。
【選択図】 図4
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ミリサイズメ−トル以下の電磁モ−タ、アクチュエ−タ等に適用される高飽和磁化の3d遷移金属合金層(例えば(−Fe、Fe3B相)、及び前記平均膜厚以下の高保磁力の4f希土類合金層(例えばR2TM14B相)を交互に積層した多層構造の厚膜交換スプリング磁石、その製造方法及び磁石モ−タに関する。
【0002】
【従来の技術】
電気電子機器の小型・軽量化に対応して、ミリサイズメ−トル以下の高出力電磁モ−タ、アクチュエ−タ等が求められている。これらの要求に応えるキ−デバイスとしては、膜厚50〜300μmの範囲を中心とした永久磁石材料の高性能化が求められている。現在、バルク磁石で最高の最大エネルギ−積(BH)maxを有するR−TM−B系磁石の(BH)maxを上回る可能性のある有力材料としては交換スプリング磁石が挙げられる。交換スプリング磁石は、高飽和磁化の3d遷移金属合金相(例えば(−Fe、Fe3B相)と高保磁力の4f希土類合金相(例えばR2TM14B相)の2種類のナノメ−トルスケ−ルの相からなる微細結晶組織で構成する磁石で、非特許文献1:Coehoorn等(J.dePhys.vol.49,p669(1988))や非特許文献2:Kneller等(IEEE Trans.Mag.vol.27,p3588(1991))によって提案された。高飽和磁化の3d遷移金属合金相(例えば(−Fe、Fe3B)と高保磁力の4f希土類合金相(例えばR2TM14B)とを組み合わせ、これらを交換相互作用により磁気的に結合させて、高(BH)maxを得ようというものである。このような交換スプリング磁石の保磁力HcJは、4f希土類合金相の磁化が3d遷移金属合金相の磁化を固定して、3d遷移金属合金相の磁化反転を妨げることによって発現する。十分な保磁力HcJを得るには、3d遷移金属合金相と4f希土類合金相が強く交換結合していること、並びに各相の大きさ(粒径)がナノメ−トルスケ−ルであることが必要である。
【0003】
以下に、従来の技術の欄にて示した特許文献及び非特許文献を記載する。また、発明が解決しようとする課題の欄ほかにて引用する特許文献及び非特許文献を記載する。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−237714号公報
【特許文献2】
特開平11−288812号公報
【非特許文献1】
Coehoorn等(J.dePhys.vol.49,p669(1988))
【非特許文献2】
Kneller等(IEEE Trans.Mag.vol.27,p3588(1991))
【非特許文献3】
R.Skomski andJ.M.D.Coey (Phys.Rev.B48(1993)p15812)
【非特許文献4】
J.F.Herbest,“Rare Earth−Iron−Boron Materials;A New Era in Permanent Magnets”Ann.Rev.Sci. Vol−16.(1986)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来、一般的な交換スプリング磁石の製造は、R−TM−B系溶湯合金をメルトスピニングやストリップキャストし、先ずアモルファスリボンを製造し、次いで、熱処理することによって図1に示すような高飽和磁化の3d遷移金属合金相1と高保磁力の4f希土類合金相2とが混合した多結晶集合型組織の交換スプリング磁石粉末を作製する方法が主流である。しかしながら、アモルファスリボンの熱処理によって高飽和磁化の3d遷移金属合金相と高保磁力の4f希土類合金相とを析出させる交換スプリング磁石の形態は厚さ15〜80μmのフレ−クないし塊状の磁石粉末に限定さる。したがって、磁石とするには何らかの手段で当該磁石粉末を特定形状に固定化する必要がある。当該磁石粉末を特定形状に固定化する手段としては、もっぱらエポキシ樹脂のような結合剤と混合したのち、圧縮し、所謂ボンド磁石とすることが行われる。しかしながら、本発明が対象とするミリサイズメ−トル以下の電磁モ−タ、アクチュエ−タ等に適する厚さ50〜300μmのボンド磁石では高い密度と均質な組織、高い寸法精度を確保する必要があるが、それらを満足することが極めて難しいという課題がある。とくに、電磁モ−タやアクチュエ−タを小型化したとき、スケ−リング則により電磁力は「L3」(Lは体格)であるため、可動子寸法(磁石)を1/10としたとき、電磁力は1/1000に減少する。よって、交換スプリング磁石粉末を固定したボンド磁石を可動子とすると実使用の負荷に対応した電磁力が得られない重大な課題がある。
【0006】
上記の課題を解決する手段の糸口として、特許文献1:特開平9−237714号公報には薄膜R−TM−B系交換スプリング磁石、及びその製造方法が開示されている。すなわち、図2のように高飽和磁化の3d遷移金属合金層1L及び4f希土類合金層2Lを基板3上に交互に積層した薄膜磁石である。
【0007】
上記の薄膜磁石は実際には、2極マグネトロンスパッタ装置を用いてArガス(8×10−1Pa)雰囲気中、4f希土類合金層のNd−Fe−B膜を20nm成膜(膜組成はNd13〜15FebalB7〜11、成膜速度は毎時2.0μm)する。引き続いて、αFeタ−ゲットに高周波電圧を印加してd遷移金属合金(αFe)膜を20nm成膜(成膜速度は毎時0.3μm)する。これらの作業を交互に繰り返すことによって、Nd−Fe−BとαFeとの多層膜を作製し(積層周期5)、最後にNd−Fe−B合金を成膜する。そして、得られたNd−Fe−B合金とαFeとの多層膜を、例えば600℃で30分間、3×10−3Pa以下の真空中で熱処理し、結晶化するものである。このようにして作製された磁石は厚さ200nm程度の薄膜磁石である。しかしながら、スバッタで磁石を作製するには一般に基板を450℃以上に加熱する必要があり、加えて、成膜速度が毎時0.1〜4μmに制限される。とくに、R2TM14B系薄膜磁石では酸化による保磁力HcJの低下を抑制するため、膜厚は5μm未満の薄膜に制限される。
【0008】
また、3d遷移金属合金層1Lと4f希土類合金層2Lの厚さをナノメ−トルスケ−ルで厳密な制御が求められる異種多層構造の薄膜磁石ではスバッタ操作も瀕雑で経済的な整合性も乏しい。そこで、特許文献2:特開平11−288812号公報では基板を加熱することなくスパッタで成膜して、かつ成膜後に熱処理したR−TM−B系薄膜磁石が開示されている。しかしながら、この方法においても成膜速度は4μm/hr以下の低速であるという課題や膜厚が十数μm以下の薄膜に制限されている。したがって、本発明が対象とするミリサイズメ−トル以下の電磁モ−タ、アクチュエ−タ等に適する厚さ50〜300μmの厚膜磁石は得られていない。
【0009】
以上のように、本発明が対象とするミリサイズメ−トル以下の電磁モ−タ、アクチュエ−タ等に適する厚さ50〜300μmの厚膜交換スプリング磁石はメルトスピニングやストリップキャストから作製したアモルファスリボンやスバッタで作製するには課題があった。
【0010】
【課題を解決するための手段】
交換スプリング磁石では、高保磁力の4f希土類合金相と交換結合する高飽和磁化の3d遷移金属合金相があると、逆磁界下で3d遷移金属合金相から先に磁化反転が始まり、磁石全体の保磁力HcJ低下の主要因となる。しかし、3d遷移金属合金相のサイズを磁壁幅以下に抑えると、逆磁界下における不均一磁化反転が抑制される。その結果、磁石全体の保磁力HcJは主に高保磁力の4f希土類合金相の磁気異方性に支配され、その低下が抑えられる。一方、3d遷移金属合金相からより高い磁束を得るには、3d遷移金属合金相の体積比を上げる必要があり、そのためには高保磁力の4f希土類合金相のサイズをできる限り小さくすればよい。4f希土類合金相の大きさはやはり磁壁幅以下であればよいが、あまり狭いと保磁力HcJを維持するのが困難になるため磁壁幅程度に抑えるのが好ましい。磁壁幅はπ(A/K)1/2(A:交換スティッフネス定数、K:磁気異方性エネルギ−)で見積もられるので、例えば、3d遷移金属合金相をFe、4f希土類合金相をNd2Fe14Bとすると、それぞれ60nm及び数nm程度となる。非特許文献3:R.Skomski andJ.M.D.Coey (Phys.Rev.B48(1993)p15812)によると交換スプリング磁石において、(BH)maxが最も大きくなるときの4f希土類合金相の体積比fhは近似的に(1)式で与えられ、このとき(BH)maxは(2)式となる。
【0011】
【数1】
【0012】
【数2】
【0013】
ただし、(1)式、(2)式において、Msは3d遷移金属合金相の磁化、Khは4f希土類合金相の磁気異方性エネルギ−、Mhは4f希土類合金相の磁化である。
【0014】
Sm−CoやNd−Fe−B系磁石の磁気異方性エネルギ−Khは107J/m3程度であるのに対し、Fe等の強磁性体のμ0Ms2/4は106J/m3程度であるので、4f希土類合金相の体積比fhは10%程度でよいことになる。従って、(BH)maxは主に3d遷移金属合金相の磁化に支配され、定量的にはμ0Ms2/4に僅かな補正が加わる形となる。(2)式においてNd2Fe14Bを4f希土類合金相、α−Feを3d遷移金属合金相とした場合には、fh=10%で、(BH)max=0.8MJ/m3(100MGOe)が期待される。以上のような(BH)maxを得るには、4f希土類合金相と3d遷移金属合金相が接触界面で充分な磁気的結合を有し、それぞれの相の厚さを磁壁幅程度に制御する必要がある。詳細な計算機シミュレ−ションによれば、結晶粒径10nm程度の均一ナノ複合組織が形成できれば、異方性交換スプリング磁石では(BH)max=700kJ/m3、等方性磁石では(BH)max=300kJ/m3程度(従来磁石の(BH)maxを大きく上回る)が期待される。しかしながら、異方性磁石は作製されておらず、等方性磁石では(BH)max=200kJ/m3程度しか達成されていない。これは、計算機シミュレ−ションで仮定された理想的なナノ組織が、実際のアモルファスからの結晶化あるいはメルトスピニングの冷却速度制御による方法では実現されていないためである。
【0015】
本発明は、先ず、上記の課題を一新し、電気電子機器の小型・軽量化に対応して、ミリサイズメ−トル以下の高出力電磁モ−タ、アクチュエ−タ等の要求に応えるキ−デバイスとして、膜厚50〜300μmの範囲を中心とした高性能永久磁石の提供を目的とする。
【0016】
本発明では人工的に制御されたナノ組織を103層以上、交互に積み上げて交換スプリング磁石を作製する。スパッタにより人工的に制御された多層構造を作る技術は既存の技術であるが、従来技術は本発明が対照とする電気電子機器の小型・軽量化に対応するミリサイズメ−トル以下の高出力電磁モ−タ、アクチュエ−タ等の要求に応える膜厚50〜300μmの範囲を中心とした高性能永久磁石の作製には、先に述べたように不向きである。しかしながら、パルスレ−ザディポジッション(PLD)によるNd2Fe14B膜の超高速堆積技術を応用することにより、PLD法を用いたナノ構造のマニュピュレ−ション技術を厚膜交換スプリング磁石に適用できることが明らかになった。例えば、0.1mm厚の多層膜交換スプリング磁石を作製するには10nmの膜を104層積む必要がある。しかしながら、パルス周波数30Hz、1パルスあたり1nm程度積層可能なPLD装置を用いれば、1時間程で所望の多層膜が成膜可能である。本発明にかかる前記技術の適用により従来技術では実現できなかった以下の諸点(a)、(b)を実現できる。
【0017】
(a)設計に則したナノ構造の実現による磁気特性の飛躍的改善
(b)従来実現できなかった異方性磁石の実現
従来、薄膜技術を用いて交換スプリング磁石のナノ組織を人工的にマピュレ−ションしようとの発想はなかった。磁石はエネルギ−を蓄える素子であり、薄膜技術では実用的な厚膜磁石は得られないと考えられていたからである。しかしながら、PLD薄膜技術によるナノ構造制御は急冷法、結晶化法等に比べて格段に優れている。この方法での超高速成膜が可能となったことにより、PLD法による厚膜磁石の作製が可能となった。本発明の独創性は、PLD薄膜技術を厚膜交換スプリング磁石に適用し、設計に則したナノ組織を人工的に構成するところにある。すなわち、本発明は(i)交換スプリング磁石の最適ナノ組織の設計、(ii)PLD法によるNd−Fe−B系磁石の超高速成膜技術の開発、(iii)非晶質からの結晶化法を利用した交換スプリング磁石の高性能化の研究を基礎に生まれたのである。
【0018】
以上の課題を解決するための手段の説明をまとめる。
【0019】
本件出願に係る第1の発明は、平均膜厚60nm以下であり、(−Fe,Fe3Bなどの高飽和磁化の3d遷移金属合金層、及び前記平均膜厚以下のR2TM14B、ここでRは10〜20at.%で、Yを含む希土類元素のうち少なくとも1種、Bは5〜20at.%、残部はTMでFeまたはFeの一部をCoで置換したもの、及び不可避的な不純物を含有する高保磁力の4f希土類合金層を交互に成膜した層数103以上の厚膜交換スプリング磁石である。
【0020】
本件出願に係る第2の発明は、第1の発明の厚膜交換スプリング磁石の製造方法であり、成膜法がパルスレ−ザディポジッション(PLD)であり、当該タ−ゲットが(−Fe,Fe3Bなどの3d遷移金属合金と4f希土類合金とから選ばれる異種合金の複合タ−ゲットである。
【0021】
本件出願に係る第3の発明は、第2の発明の厚膜交換スプリング磁石の製造方法において、(−Fe,Fe3Bなどの3d遷移金属合金と4f希土類合金とから選ばれる異種合金の複合タ−ゲットの回転により交互に異種合金を成膜する。
【0022】
本件出願に係る第4の発明は、第3の発明の厚膜交換スプリング磁石の製造方法において、3d遷移金属合金層をFe3Bとした場合、複合タ−ゲットの3d遷移金属合金部の平均組成がFe3Bとなる複数相の微細結晶から構成した合金とする。
【0023】
本件出願に係る第5の発明は、第1の発明又は第2の発明において、Fe3B系3d遷移金属合金層を最表面とした厚膜交換スプリング磁石とその製造方法である。
【0024】
本件出願に係る第6の発明は、第3の発明の厚膜交換スプリング磁石の製造方法において、タ−ゲットを構成する4f希土類合金がRxTM14B(X>2、Rは10〜20at.%で、Yを含む希土類元素のうち少なくとも1種、Bは5〜20at.%、残部は遷移金属TMでFeまたはFeの一部をCoで置換したもの、及び不可避的な不純物を含む)合金である。
【0025】
本件出願に係る第7の発明は、第1の発明又は第2の発明において、R2TM14Bを主相とする高保磁力の4f希土類合金層の平均膜厚が5−20nmである厚膜交換スプリング磁石とその製造方法である。
【0026】
本件出願に係る第8の発明は、第1の発明又は第2の発明において、R2TM14Bを主相とする高保磁力の4f希土類合金層と高飽和磁化の3d遷移金属合金層の平均膜厚がともに5−20nmである厚膜交換スプリング磁石とその製造方法である。
【0027】
本件出願に係る第9の発明は、第1の発明又は第2の発明において、パルス周波数30Hz以上、1パルスあたり1nm以上の成膜能を有するパルスレーザディポジッション(PLD)装置を用いた厚膜交換スプリング磁石とその製造方法である。
【0028】
本件出願に係る第10の発明は、第1の発明又は第2の発明において、高飽和磁化の3d遷移金属合金層が(−Fe、Fe3Bの1種または2種、高保磁力の4f希土類合金層主相のR2TM14Bが磁気的に等方性である厚膜交換スプリング磁石とその製造方法である。
【0029】
本件出願に係る第11の発明は、第1の発明又は第2の発明において、高飽和磁化相が(−Fe、Fe3Bの1種または2種、高保磁力の4f希土類合金層のNd2Fe14Bを熱間塑性変形によって磁気的に異方化した厚膜交換スプリング磁石とその製造方法である。
【0030】
本件出願に係る第12の発明は、第1の発明又は第2の発明において、パルスレーザディポジッション(PLD)基板表面にTaを配した構成の厚膜交換スプリング磁石とその製造方法である。
【0031】
本件出願に係る第13の発明は、第1の発明又は第2の発明において、パルスレーザディポジッション(PLD)基板がTaをバッファ−とした高飽和磁化の3d遷移金属合金である厚膜交換スプリング磁石とその製造方法である。
【0032】
本件出願に係る第14の発明は、第1の発明又は第2の発明において、パルスレーザディポジッション(PLD)成膜速度が≧50μm/hrである厚膜交換スプリング磁石とその製造方法である。
【0033】
本件出願に係る第15の発明は、第1の発明又は第2の発明において、パルスレーザディポジッション(PLD)成膜時の雰囲気が≦10−6Torrである厚膜交換スプリング磁石とその製造方法である。
【0034】
本件出願に係る第16の発明は、第1の発明又は第2の発明において、最高到達温度650〜750℃で熱処理し、4f希土類合金層の保磁力を6kOe以上とした厚膜交換スプリング磁石とその製造方法である。
【0035】
本件出願に係る第17の発明は、第1の発明又は第2の発明において、多層膜の厚さ方向へ加圧しながら直接通電し、そのジュ−ル熱で4f希土類合金層合金層主相のNd2Fe14B結晶の析出と同時に多層膜表面を表面粗度10μm以下に平滑化する厚膜交換スプリング磁石とその製造方法である。
【0036】
本件出願に係る第18の発明は、第17の発明において、多層膜を複数積層し、厚さ方向へ加圧しながら直接通電し、そのジュ−ル熱で4f希土類合金層合金層主相のNd2Fe14B結晶の析出と同時に多層膜積層磁石とする厚膜交換スプリング磁石とその製造方法。
【0037】
本件出願に係る第19の発明は、第17の発明において、直接通電加熱が加熱速度≧9℃/sec、圧力200〜400kgf/cm2,≦1Torrで行われ、保磁力を10kOe以上とした厚膜交換スプリング磁石とその製造方法である。
【0038】
本件出願に係る第20の発明は、第1の発明又は第2の発明に係る厚膜交換スプリング磁石と回転軸とで構成した可動子、及び前記可動子と空隙を介して対向する固定子とを備えた軸方向空隙型磁石モータである。
【0039】
本件出願に係る第21の発明は、第1の発明又は第2の発明に係る平板状の可動子及び平板状の固定子で構成した第16の発明の磁石モ−タである。
【0040】
本件出願に係る第22の発明は、回転子枠の内壁にカ−リング後、熱処理により結晶化した第1の発明又は第2の発明に係る厚膜交換スプリング磁石と回転軸とで構成した可動子、及び前記可動子と空隙を介して対向する固定子とを備えた径方向空隙型磁石モ−タである。
【0041】
【発明の実施の形態】
以下に本件出願に係る発明について説明する。
【0042】
(作用)
先ず、本発明は平均膜厚60nm以下、高飽和磁化の3d遷移金属合金層(例えば(−Fe、Fe3B)、及び前記平均膜厚以下の高保磁力の4f希土類合金層(例えばR2TM14B、ここでRは10〜20at.%で、Yを含む希土類元素のうち少なくとも1種、Bは5〜20at.%,残部はTMでFeまたはFeの一部をCoで置換したもの、及び不可避的な不純物を含む)を交互に成膜した層数103以上の厚膜交換スプリング磁石であり、当該多層膜の成膜をパルスレ−ザディポジッション(PLD)により、かつ当該タ−ゲットが3d遷移金属合金(例えば(−Fe、Fe3B)と4f希土類合金(例えば、Nd2Fe14B)とから選ばれる異種合金の複合タ−ゲットとする厚膜交換スプリング磁石の製造方法である。
【0043】
具体的には、図3に示すように、3d遷移金属合金(例えば(−Fe、Fe3B)と4f希土類合金(例えば、Nd2Fe14B)とから選ばれる異種合金の複合タ−ゲットの回転により交互に異種合金を成膜するもので、仮に3d遷移金属合金層をFe3Bとした場合、当該部位は平均組成がFe3Bとなる複数相の微細結晶から構成した合金とするもので、磁石の耐食性のために必要に応じて適宜Fe3B系3d遷移金属合金層を最表面とすることもできる。また、一方のタ−ゲットを構成する4f希土類合金はRxTM14B(X>2、Rは10〜20at.%で、Yを含む希土類元素のうち少なくとも1種、Bは5〜20at.%、残部は遷移金属TMでFeまたはFeの一部をCoで置換したもの、及び不可避的な不純物を含む)合金とすると高い保磁力HcJを得ることができる。
【0044】
次に、本発明にかかる厚膜交換スプリング磁石のナノ構造としては、R2TM14Bを主相とする高保磁力の4f希土類合金層の平均膜厚が5−20nm、更に好ましくは、4f希土類合金層と高飽和磁化の3d遷移金属合金層の平均膜厚をともに5−20nmとする。各層の厚さは図3の複合タ−ゲット回転速度及び基盤とターゲットの間の距離を制御することにより調整することができる。また、各層の膜厚比(平均組成を変化させることに相当)及び各層の膜厚(交換相互作用の相対的強度を変えることに相当)を変化させ、最適ナノ構造を微調整することができる。
【0045】
以上、本発明にかかるミリサイズメ−トルの高出力電磁モ−タ、アクチュエ−タ等に適用される膜厚50〜300μmを中心とした高性能永久磁石は、かかるモ−タ設計思想に合わせて、パルスレーザディポジッション(PLD)基板表面にTaを配した構成、スパッタ等による薄膜Taバッファー付加、速度≧50μm/hrの高速成膜、雰囲気≦10−6Torrなどを適宜選択することにより成膜する。なお、4f希土類合金層の成膜時の酸化を抑制するためには硬磁性層は室温付近の基板温度で成膜することが好ましい。この場合R−TM−B系合金からなる硬磁性層はアモルファスとなっており保磁力HcJは発現しない。この場合、R2TM14Bの多結晶を得るために熱処理が必要である。熱処理温度は773K(500℃)以下にするとR2TM14Bが結晶化しないので保磁力HcJが発現せず、1073K(800℃)以上にすると保磁力HcJが急激に減少する。したがって、熱処理温度は773K(500℃)から1073K(800℃)が適当であるが、熱処理中の拡散による積層構造の乱れが少なく、かつ硬磁性層の主相のR2TM14Bが十分生成する773K(550℃)から923K(650℃)が望ましい。このような熱処理では図4の模式図のように磁気的に等方性の多層厚膜交換スプリング磁石が得られる。ただし、図4中、1Lは3d遷移金属合金層、2Lは4f希土類合金層、2L isotropicはR2TM14B相の磁化容易軸(C軸)がランダムな方向であることを示している。
【0046】
一方、Nd2Fe14Bと(−FeあるいはFe3Bから構成されるメルトスピニングやストリップキャスト法などの超急冷リボンから出発した交換スプリング磁石は、実用的な圧力では塑性変形が起こらず異方化が実現していない。しかしながら、本発明にかかる積層構造交換スプリング磁石は図5に示すようにNd2Fe14B層は(−FeあるいはFe3Bと混合していない。ただし、図4中、1Lは3d遷移金属合金層、2Lは4f希土類合金層、2L anisotropicはR2TM14B相の磁化容易軸(C軸)が一定な方向であることを示している。したがって、例えば単相Nd2Fe14B磁石と同様に塑性変形による異方化が可能である。単相Nd2Fe14B磁石の異方化は、非特許文献4:J.F.Herbest,“Rare Earth−Iron−Boron Materials;A New Era in Permanent Magnets”Ann.Rev.Sci. Vol−16.(1986)に記載されているように、Nd2Fe14B相の結晶化温度以上での熱間塑性変形により、圧縮応力と同方向にNd2Fe14B結晶の磁化容易軸を配列した異方性磁石とすることができる。なお、この手法では塑性変形後の各層の厚さを最適化する必要がある。各層の厚さ比及び各層の厚さを変化させるとともに塑性変形率、塑性変形温度を変化させて最適化することができる。
【0047】
上記、塑性変形後の各層の厚さを最適化や各層の厚さ比及び各層の厚さを変化させるとともに塑性変形率、塑性変形温度を制御するためには、多層膜の厚さ方向へ加圧しながら直接通電し、そのジュ−ル熱で塑性変形させることが好ましい。また、その際、WC−Co合金電極等の電極表面粗度を10μm以下とすると厚膜交換スプリング磁石表面の平滑化と異方化、あるいは多層膜を複数積層した多層膜複合異方性磁石を適宜作製することができる。このような、直接通電加熱について説明する。ただし、系外への熱放散を無視し、1(W)=0.2389(cal/sec)を考慮すれば、通電による昇温速度dT/dt(℃/sec)は0.2389ΔI2(ρ/SC)となる。ここで、ΔIは電流密度(A/cm2)、ρは電気比抵抗(Ωcm)、Cは比熱(cal/℃・g)、Sは比重(C×Sは体積比熱)である。すなわち昇温速度dT/dt(℃/sec)は電流密度の二乗と電気比抵抗ρに比例し、体積比熱に反比例し、電極間距離には無関係となる。用いたTiN/Si3N4電極の室温におけるρ/SCは約10−4(Ωcm4・deg/cal)であるから電流密度ΔIを300、400A/cm2とすれば、それぞれ9、及び16℃/secの高速加熱が可能である。直接通電加熱においては、加熱速度≧10℃/sec、圧力200〜400kgf/cm2、≦1Torrで行うことが望ましい。
【0048】
以上により作製した本発明にかかる厚膜交換スプリング磁石は回転軸と可動子を構成し、前記可動子と空隙を介して対向する固定子とを備えた図4に示すような軸方向空隙型ミリメ−トルサイズ磁石モータ、平板状の可動子及び平板状の固定子で構成したミリメ−トルサイズ磁石モ−タ、更には回転子枠の内壁にカーリング後、熱処理により結晶化した本発明に掛かる厚膜交換スプリング磁石と回転軸とで構成した可動子、及び前記可動子と空隙を介して対向する固定子とを備えた径方向空隙型ミリメ−トルサイズ磁石モ−タなどに適用することができる。ただし、図6において、1は本発明にかかる厚膜交換スプリング磁石、2は回転軸、3は固定子、4は軸受である。
【0049】
【実施例】
本発明を実施例により更に詳しく説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。先ず、図7に本発明にかかる成膜装置の要部構成図を示す。図中1はレ−ザ−、2は複合タ−ゲットで21はαFe、22はR−TM−B系合金である。3はプリュ−ム、4は25mm×25mm、厚さ10μmまたは100μmTa、W、Mo、SiO2、Fe、Taイオン注入したFeなどの一種からなる基板、5はタ21または22から成膜した多層膜である。タ−ゲット2から基板4の距離は7mmとしている。それらは、真空チャンバ−内にあり、5×10−7〜2×10−6Torrの真空中でタ−ゲット4に240〜340mJのエネルギ−をもつエキシマレーザ、またはYAGレーザ1を10〜180min照射し、多層成膜もしくは単層成膜した。
【0050】
(実施例の説明1、タ−ゲット組成におけるNd量の最適化)
タ−ゲットに含まれるNd量が磁気特性に及ぼす影響を調べ、その最適化を検討した。タ−ゲット組成は、NdxFe14B(X=2.0,2.2,2.4,2.6,3.0,4.0)とした。各タ−ゲットより作製したNdFeB膜の保磁力及び残留磁化の平均値を表1、X線回折図を図8に示す。更に、ここでは磁化の値を評価する際、飽和磁化の測定が困難であったため、印加磁界1.6MA/mにおける磁化の値をM16として評価した。タ−ゲットに含まれるNd量の増加に伴い、作製した膜のα−Feのピ−クは減少し、保磁力HcJは増加した。これは、Nd量の増加に従い、膜に含まれるα−Feが充分なNdと結合しNd2Fe14B相を形成するとともに、Nd単相ならびにその酸化物等の非磁性相が増加し、Nd2Fe14B相間の交換結合を弱くしたためと考えられる。加えて、X=4.0のタ−ゲット組成により作製した試料のM16は、上述した多量の非磁性のため小さくなり、併せて残留磁化Mrも小さくなったものと考えられる。X=2.0,2.2のタ−ゲット組成により作製した試料においては、保磁力HcJが著しく小さく、永久磁石としての応用は困難である。これは膜中にα−Feが多く存在するためと考えられる。X=2.4〜3.0のターゲット組成により作製した膜の保磁力HcJ、残留磁化Mrともに比較的良好な特性を示した。そこで、各試料の(BH)maxの測定を通じて、これらの試料を更に詳細に評価した。結果を図9に示す。ただし、ここでの結果は同条件で作製した試料2、3個の平均値である。図9の結果とM−H曲線の角型性などから考慮し、本実施例では、Nd量の最適値はX=2.6と考えられる。そこで、これ以降に示す試料のターゲット組成はNd2.6Fe14Bに固定する。
【0051】
【表1】
【0052】
(実施例の説明2、Fe基板上への成膜)
厚さ0.1mmのFe基板上に直接成膜をしたM−H曲線を図10に示す。ただし、熱処理温度は650℃、昇温速度は150℃/minであり、その磁気特性は(BH)max=42kJ/m3,Mr=0.62T,Hc=700kA/mであり、Ta基板上に成膜した値に比べ特性が劣化した。そこで、鉄基板とNdFeB膜の間にTaバッファ層を挿入することを試みた。Fe基板上に、RFスパッタによりTaバッファ層を成膜し、その上にNdFeB膜を作製した。その結果、図11のM−H曲線のように(BH)max=53kJ/m3,Mr=0.55T、HcJ=1MA/mとなり、Fe基板上に直接成膜した試料に比べ特性が改善でき、4f希土類合金相(例えばR2TM14B)と3d遷移金属合金相(例えば(−Fe、Fe3B)が接触界面で充分な磁気的結合を確保し得ることが明らかになった。
【0053】
(実施例の説明3、レ−ザシステムの影響)
代表的なレ−ザシステムであるエキシマレ−ザとYAGレ−ザを比較すると、エキシマレ−ザは同波長のレ−ザに対し(1)高いエネルギーを実現できる、(2)高い繰り返し周波数を実現できるなど利点を有する。しかしながら、近年のYAGレ−ザの高性能化を考慮すると、これまでの本実施例の条件内では、上述したエキシマレ−ザの優位性はさほど大きくない。そこで、(1)高価なガスの使用、(2)腐食性のガスの使用に伴うチェンバの定期的なクリ−ニングの必要性などランニングコストに欠点を有するエキシマレーザに変わり、ここではYAGレ−ザを使用したNdFeB膜の作製を試みた。図12にM−H曲線を示す。成膜条件及び熱処理条件は、2節において最も良好な特性の得られたものとした。この試料の磁気特性は(BH)max=46.8kJ/m3,Mr=0.53T,Hc=937kA/mであり、エキシマレ−を用いて作製した試料と同等の特性が得られている。
【0054】
(実施例の説明4、厚膜交換スプリング磁石の作製)
本発明にかかる厚膜交換スプリング磁石のナノ構造としては、R2TM14Bを主相とする高保磁力の4f希土類合金層の平均膜厚が5−20nm、更に好ましくは、4f希土類合金層と高飽和磁化の3d遷移金属合金層の平均膜厚をともに5−20nmとする。各層の厚さは複合タ−ゲット回転速度及び基盤とターゲットの間の距離を制御することにより調整することができる。また、各層の膜厚比(平均組成を変化させることに相当)、及び各層の膜厚(交換相互作用の相対的強度を変えることに相当)を変化させ、最適ナノ構造を微調整することができる。図11は、Nd2.6Fe14B、Ta、Fe3Bの3種複合タ−ゲットからTaバッファ−層を設けながら、層数103以上の4f希土類合金層(Nd2Fe14B)と3d遷移金属合金層(Fe3B)を交互に積層した多層厚膜を作製し、昇温速度150℃/min、最高到達温度650℃で結晶化した。図13は当該試料の走査電子顕微鏡写真を示す。図から明らかなように、ナノメ−トルサイズの粒子が交互に積層した多層厚膜となっており、図中の番号で示した4f希土類合金層付近でのNdの存在は表2のように、Nd2Fe14B化学量論組成に近い値を示した。図14はNd2.6Fe14BとFe3BとのM−H曲線を示す。保磁力HcJは0.75MA/mを示し、4f希土類合金層と3d遷移金属合金層が、それぞれの層の厚さを磁壁幅程度に制御できることも明らかである。
【0055】
【表2】
【0056】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明では人工的に制御されたナノ組織を103層以上、交互に積み上げて交換スプリング磁石を作製する。スパッタにより人工的に制御された多層構造を作る技術は既存の技術であるが、従来技術は本発明が対照とする電気電子機器の小型・軽量化に対応するミリサイズメ−トル以下の高出力電磁モ−タ、アクチュエ−タ等の要求に応える膜厚50〜300μmの範囲を中心とした高性能永久磁石の作製には、先に述べたように不向きである。しかしながら、パルスレ−ザディポジッション(PLD)によるNd2Fe14B膜の超高速堆積技術により、PLD法を用いたナノ構造のマニュピュレ−ション技術を厚膜交換スプリング磁石に適用できることが明らかになった。例えば、100μm厚の多層膜交換スプリング磁石を作製するには10nmの膜を104層積む必要がある。しかしながら、パルス周波数30Hz、1パルスあたり1nm程度積層可能なPLD装置を用いれば、1時間程で所望の多層膜が成膜可能である。本発明にかかる前記技術の適用により従来技術では実現できなかった以下の諸点(a)、(b)を実現できる。
【0057】
(a)設計に則したナノ構造の実現による磁気特性の飛躍的改善
(b)従来実現できなかった異方性磁石の実現
従来、薄膜技術を用いて交換スプリング磁石のナノ組織を人工的にマピュレ−ションしようとの発想はなかった。磁石はエネルギ−を蓄える素子であり、薄膜技術では実用的な厚膜磁石は得られないと考えられていたからである。しかしながら、PLD薄膜技術によるナノ構造制御は急冷法、結晶化法等に比べて格段に優れている。この方法での超高速成膜が可能となったことにより、PLD法による厚膜磁石の作製が可能となった。本発明の独創性は、PLD薄膜技術を厚膜交換スプリング磁石に適用し、設計に則したナノ組織を人工的に構成するところにある。すなわち、本発明は(i)交換スプリング磁石の最適ナノ組織の設計、(ii)PLD法によるNd−Fe−B系磁石の超高速成膜技術の開発、(iii)非晶質からの結晶化法を利用した交換スプリング磁石の高性能化の研究を基礎に生まれたのである。これにより、電気電子機器の小型・軽量化に対応したミリサイズメ−トル以下の高出力電磁モ−タ、アクチュエ−タ等に適合した膜厚50〜300μmを中心とした高性能永久磁石材料、及びそのモ−タが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】多結晶集合型組織交換スプリング磁石の模式図
【図2】高飽和磁化層と4f希土類合金層を基板上に交互に積層した薄膜磁石の模式図
【図3】3d遷移金属合金と4f希土類合金で構成した異種合金の複合タ−ゲットの模式図
【図4】磁気的に等方性の多層厚膜交換スプリング磁石の模式図
【図5】磁気的に異方性の多層厚膜交換スプリング磁石の模式図
【図6】ミリメ−トルサイズ磁石モ−タの構成図
【図7】成膜装置の要部構成図
【図8】NdxFe14B(X=2.4〜3.0)膜のX線回折図
【図9】NdxFe14B(X=2.4〜3.0)膜と(BH)maxの関係を示す特性図
【図10】3d遷移金属合金(Fe)に直接4f希土類合金(Nd2Fe14B)を成膜したM−H特性図
【図11】3d遷移金属合金(Fe)にTaバッファを介して4f希土類合金(Nd2Fe14B)を成膜したM−H特性図
【図12】YAGレ−ザによる膜のM−H特性図
【図13】多層膜の4f希土類合金(Nd2Fe14B)部分の組織図を示す電子顕微鏡写真
【図14】多層膜のM−H特性図
【符号の説明】
1L 3d遷移金属合金層
2L 4f希土類合金層
Claims (22)
- 平均膜厚60nm以下、高飽和磁化の3d遷移金属合金層(例えば(−Fe、Fe3B)、及び前記平均膜厚以下の高保磁力の4f希土類合金層(例えばR2TM14B、ここでRは10〜20at.%で、Yを含む希土類元素のうち少なくとも1種、Bは5〜20at.%、残部はTMでFeまたはFeの一部をCoで置換したもの、及び不可避的な不純物を含む)を交互に成膜した層数103以上の厚膜交換スプリング磁石。
- 成膜法がパルスレ−ザディポジッション(PLD)であり、当該タ−ゲットが3d遷移金属合金(例えば(−Fe、Fe3B)と4f希土類合金とから選ばれる異種合金の複合タ−ゲットである請求項1記載の厚膜交換スプリング磁石の製造方法。
- 3d遷移金属合金(例えば(−Fe、Fe3B)と4f希土類合金とから選ばれる異種合金の複合タ−ゲットの回転により交互に異種合金を成膜する請求項2記載の厚膜交換スプリング磁石の製造方法。
- 3d遷移金属合金層をFe3Bとした場合、複合タ−ゲットの3d遷移金属合金部の平均組成がFe3Bとなる複数相の微細結晶から構成した合金とする請求項3記載の厚膜交換スプリング磁石の製造方法。
- Fe3B系3d遷移金属合金層を最表面とした請求項1または請求項2記載の厚膜交換スプリング磁石の製造方法。
- タ−ゲットを構成する4f希土類合金がRxTM14B(X>2、Rは10〜20at.%で、Yを含む希土類元素のうち少なくとも1種、Bは5〜20at.%、残部は遷移金属TMでFeまたはFeの一部をCoで置換したもの、及び不可避的な不純物を含む)合金である請求項3記載の厚膜交換スプリング磁石の製造方法。
- R2TM14Bを主相とする高保磁力の4f希土類合金層の平均膜厚が5−20nmである請求項1または請求項2記載の厚膜交換スプリング磁石とその製造方法。
- R2TM14Bを主相とする高保磁力の4f希土類合金層と高飽和磁化の3d遷移金属合金層の平均膜厚がともに5−20nmである請求項1または請求項2記載の厚膜交換スプリング磁石とその製造方法。
- パルス周波数30Hz以上、1パルスあたり1nm以上の成膜能を有するパルスレーザディポジッション(PLD)装置を用いた請求項1または請求項2記載の厚膜交換スプリング磁石とその製造方法。
- 高飽和磁化の3d遷移金属合金層が(−Fe、Fe3Bの1種または2種、高保磁力の4f希土類合金層主相のR2TM14Bが磁気的に等方性である請求項1または請求項2記載の厚膜交換スプリング磁石とその製造方法。
- 高飽和磁化相が(−Fe、Fe3Bの1種または2種、高保磁力の4f希土類合金層のNd2Fe14Bを熱間塑性変形によって磁気的に異方化した請求項1または請求項2記載の厚膜交換スプリング磁石とその製造方法。
- パルスレーザディポジッション(PLD)基板表面にTaを配した構成の請求項1または請求項2記載の厚膜交換スプリング磁石とその製造方法。
- パルスレーザディポジッション(PLD)基板がTaをバッファ−とした高飽和磁化の3d遷移金属合金である請求項1または請求項2記載の厚膜交換スプリング磁石とその製造方法。
- パルスレーザディポジッション(PLD)成膜速度が≧50μm/hrである請求項1または請求項2記載の厚膜交換スプリング磁石とその製造方法。
- パルスレーザディポジッション(PLD)成膜時の雰囲気が≦10−6Torrである請求項1または請求項2記載の厚膜交換スプリング磁石とその製造方法。
- 最高到達温度650〜750℃で熱処理し、4f希土類合金層の保磁力を6kOe以上とした請求項1または請求項2記載の厚膜交換スプリング磁石とその製造方法。
- 多層膜の厚さ方向へ加圧しながら直接通電し、そのジュ−ル熱で4f希土類合金層合金層主相のNd2Fe14B結晶の析出と同時に多層膜表面を表面粗度10μm以下に平滑化する請求項1または請求項2記載の厚膜交換スプリング磁石とその製造方法。
- 多層膜を複数積層し、厚さ方向へ加圧しながら直接通電し、そのジュ−ル熱で4f希土類合金層合金層主相のNd2Fe14B結晶の析出と同時に多層膜積層磁石とする請求項17記載の厚膜交換スプリング磁石とその製造方法。
- 直接通電加熱が加熱速度≧9℃/sec、圧力200〜400kgf/cm2,≦1Torrで行われ、保磁力を10kOe以上とした請求項17記載の厚膜交換スプリング磁石とその製造方法。
- 請求項1または請求項2に掛かる厚膜交換スプリング磁石と回転軸とで構成した可動子、及び前記可動子と空隙を介して対向する固定子とを備えた軸方向空隙型磁石モータ。
- 請求項1または請求項2に掛かる平板状の可動子及び平板状の固定子で構成した請求項16記載の磁石モ−タ。
- 回転子枠の内壁にカ−リング後、熱処理により結晶化した請求項1または請求項2に掛かる厚膜交換スプリング磁石と回転軸とで構成した可動子、及び前記可動子と空隙を介して対向する固定子とを備えた径方向空隙型磁石モ−タ。
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