JP2004356034A - 正極活物質及びそれを用いたリチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、二次電池の放電容量及びサイクル特性を向上させることができる正極活物質を提供することを目的としている。
【解決手段】充放電のサイクルを行う二次電池において用いられ、六方晶構造を有する正極活物質であって、
一般式:LiaCo1−bMnbOd
で表わされ、0<a<1.3、0<b≦0.15、1.8<d<2.2であり、且つ、充電前後のc軸格子定数をそれぞれc1、c2としたときに、
(c2−c1)/c1≦0.02
であることを特徴とする正極活物質である。
【選択図】 なし
【解決手段】充放電のサイクルを行う二次電池において用いられ、六方晶構造を有する正極活物質であって、
一般式:LiaCo1−bMnbOd
で表わされ、0<a<1.3、0<b≦0.15、1.8<d<2.2であり、且つ、充電前後のc軸格子定数をそれぞれc1、c2としたときに、
(c2−c1)/c1≦0.02
であることを特徴とする正極活物質である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、充放電のサイクルを行う二次電池において用いられる正極活物質及びそれを用いたリチウムイオン二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
携帯電話などの電子機器の小型化や、電子機器に配信される情報量の増大に伴う消費電力の増大により、エネルギー密度のより高いリチウムイオン二次電池の出現が強く望まれている。
【0003】
リチウムイオン二次電池は、リチウムイオンが正極−負極間を行き来することにより充放電が進行する。一般には、非プロトン性の有機溶媒に電解質を溶解させたものを電解液とし、リチウム遷移金属酸化物(正極活物質)に導電助剤を混合して得られるペーストを塗布した正極と、グラファイトなど炭素系材料を塗布した負極と、セパレータとを一体化して巻き込み、筐体に封入した構成となっている。現在、最も一般的に用いられている正極活物質はLiCoO2であり、高い電圧を発生できることや合成が容易であることなどの利点をもっている。
【0004】
LiCoO2を正極活物質として用いたリチウムイオン二次電池では、充放電サイクル安定性を得るために、充電上限電圧がリチウムに対して4.2V程度、放電下限電圧が3.0V程度となるような電圧範囲でサイクル使用が行われている。この充電上限電圧を4.2Vとする理由としては、現状の有機電解液が安定に存在できる電圧が4.3〜4.4V程度であることや、正極活物質が4.2Vを超えるような高い充電電圧下では不安定な結晶状態になるためである。つまり、充電上限電圧が高くなって正極活物質に含まれるリチウムのデインターカレート量が多くなると、正極活物質の結晶歪みが大きくなるため、充放電サイクル特性が大きく低下するという問題が生じる。さらに、充電上限電圧を4.2V程度とする使い方では、正極活物質に含まれるリチウムの約50%を利用しているに過ぎず、実際の放電容量は、組成式より導かれる理論容量(274mAh/g)の約半分しかないという問題がある。
【0005】
そこで、充放電サイクル特性の向上を目的として、Coの一部を他の元素で置き換えた正極活物質、即ち、LixCo1−yMyO2(M=W、Mn、Ta、Ti、Nb)の組成であるような正極活物質が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
一方、LiCoO2正極活物質が4.2V以上の高い電圧でも安定化するように、LiCoO2合成時にリン又はリン化合物を添加し、LiCoO2の表面をリンで被覆した正極活物質(例えば、特許文献2参照)や、LiCo1−yMyO2(MはIIIB属元素、0<y≦0.2)で表され、粒子表面におけるCoに対するMの原子比率をaとしたとき、aの値が粒子全体のCoに対するMの原子比率の平均値[y/(1−y)]の1.5倍以上であるリチウム含有複合酸化物を正極活物質として用いた非水二次電池が提案されている(例えば、特許文献3参照)。これらはいずれも正極活物質の表面に主組成とは異なる組成の部分を形成し、高い電圧下での安定性を高めようとしている。
【0007】
【特許文献1】
特開平3−201368号公報
【特許文献2】
特開平5−47383号公報
【特許文献3】
特開2002−75356号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のLixCo1−yMyO2(M=W、Mn、Ta、Ti、Nb)の組成であるような正極活物質を二次電池に用いても、単にCoの一部を、例えば、Mnに置換することだけでは充放電サイクルに改善が認められず、更にMn等の置換によって初期放電容量が低下するという問題があった。また、上記の表面に主組成とは異なる組成の部分を形成した正極活物質を二次電池に用いると、電解液/正極活物質界面でのリチウムのインターカレートが著しく阻害されるため、放電容量が大きく低下してしまい、充電終止電圧を上げて放電容量を増大させた効果がキャンセルされ、期待される程の放電容量を得ることができなかった。
従って、本発明の目的は、放電容量が大きく、且つ充放電サイクル特性の優れた正極活物質及びこれを用いたリチウムイオン二次電池を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、乾式法や湿式法、出発原料の種々を組み合わせた合成方法により、Coの一部をMnに置換した正極活物質組成について鋭意検討した結果、特定の組成を有し、且つ充電前後で特定のパラメータを満たす正極活物質を二次電池に用いることにより、放電容量及びサイクル特性を向上させることができることを見出し本発明に至った。
即ち、本発明は、充放電のサイクルを行う二次電池において用いられ、六方晶構造を有する正極活物質であって、
一般式:LiaCo1−bMnbOd
で表わされ、0<a<1.3、0<b≦0.15、1.8<d<2.2であり、且つ、充電前後のc軸格子定数をそれぞれc1、c2としたときに、
(c2−c1)/c1≦0.02
であることを特徴とする正極活物質である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の正極活物質は、六方晶構造を有し、一般式:LiaCo1−bMnbOdで表わされ、0<a<1.3、0<b≦0.15、1.8<d<2.2を満たすものである。さらに、正極充電前後における正極活物質のc軸格子定数をそれぞれc1、c2としたときに、(c2−c1)/c1≦0.02を満たすものである。
【0011】
まず、本発明において、一般式:LiaCo1−bMnbOd(式中、0<a<1.3、0<b≦0.15、1.8<d<2.2)で示される組成の正極活物質に限定した理由を説明する。
正極活物質に含まれるリチウム量aを、0<a<1.3としたのは、aが1.3以上になると過剰のリチウムにより初期放電容量が低下するためである。マンガン置換量bを0<b≦0.15としたのは、bが0.15より大きくなるとCoに対する置換割合が大き過ぎて初期放電容量の低下が著しくなり、充電終止電圧を上げても放電容量を向上させることができなくなるためである。酸素量dを1.8<d<2.2としたのは、dが1.8以下であると結晶構造に欠陥を生じるため初期放電容量が低下し、2.2以上であるとリチウムのインターカレート及びデインターカレートが著しく阻害されるため放電容量が低下するためである。
【0012】
次に、本発明において、正極活物質の正極充電前後のc軸格子定数をそれぞれc1、c2としたときに、(c2−c1)/c1≦0.02を満たすものに限定した理由を説明する。
LiCoO2のような六方晶(R3−m構造)結晶は、リチウムがデインターカレートするに伴い、酸素と酸素が静電反発し、結晶のc軸方向が伸張する。従って、このc軸方向の伸びは、電池の充放電サイクル特性に極めて大きな影響を与えると考えられる。そこで、種々の製造方法や出発原料の組み合わせにより合成した一般式:LiaCo1−bMnbOd(式中、0<a<1.3、0<b≦0.15、1.8<d<2.2)を満たす正極活物質のc軸格子定数を粉末X線回折で求めて解析した。その結果、充電終止電圧を従来よりも高くして充電する場合、特にリチウム電位に対して4.2V〜4.5Vまでの充電終止電圧で充電した場合、c軸変化率(c2−c1)/c1(式中、c1は充電前のc軸格子定数、c2は充電後のc軸格子定数を表す)が、0.02以内である正極活物質を用いることにより、電池のサイクル特性を大幅に向上させることができることを見出したためである。
【0013】
本発明において、c軸変化率は、例えば、X線回折により二次電池充電前の正極活物質のc軸格子定数をc1を測定し、次いで、二次電池充電後の正極活物質のc軸格子定数であるc2を測定し、これらc1及びc2から求めることができる。また、このようにして求めたc軸変化率を、正極活物質の製造条件(製法や出発原料等)の良否を判定する基準とすることにより、放電容量が大きく、且つ充放電サイクル特性の優れた正極活物質を効率よく製造することができる。
【0014】
本発明において、正極活物質の平均粒子径は特に限定されないが、好ましくは3〜8μmである。上記範囲内であれば、充電終止電圧を高くして充電しても正極活物質粒子の歪みの絶対量を小さくすることができるため、電気化学的に不活性な部分を少なくすることができ、サイクル特性を向上させることができる。
【0015】
本発明のリチウムイオン二次電池は、上記の正極活物質を含む正極を備えるものである。本発明において、リチウムイオン二次電池の製造方法は特に限定されないが、例えば、上記の正極活物質、導電助剤及びバインダーを混合してペースト化し、これを正極集電材上に塗布し乾燥して正極活物質層を形成した正極を作製し、負極活物質を必要があれば導電助剤とバインダーと共にペースト化し、これを負極集電材に塗布し乾燥して負極活物質層を形成した負極を作製し、これら電極で液状又はポリマー状電解質を染み込ませたセパレータを挟み込む方法が挙げられる。この方法により正極を作製する場合、正極活物質の平均粒子径は3〜8μmであることが望ましい。この範囲内であれば、ペーストを塗布した正極集電材の表面粗さを小さくすることができるので、電池特性を向上させることができる。
【0016】
【実施例】
これまでに述べたように、本発明でパラメータとしている(c2−c1)/c1は、正極活物質の組成が同じであっても製法や選択する原料などにより異なるため、製法や出発原料で一義的に決めることはできない。以下の実施例では、いくつかの製法(原料選択含む)で合成した正極活物質の諸特性について記述するが、これらの製法や原料に限定されるものではない。
【0017】
実施例1.
原料となる炭酸リチウム(99%、高純度化学研究所(株)製)と四三酸化コバルト(99%、和光純薬(株)製)、炭酸マンガン(99%、和光純薬(株)製)をそれぞれの金属イオンモル比で、1.00:0.90:0.10になるように秤量し、ジルコニアボールを用いてボールミル混合を行った。次に、混合物をアルミナ坩堝に入れ、600℃で48時間酸素中加熱する仮焼をおこなった後、取り出して粉砕し、さらに900℃で48時間大気中にて焼成し、炉冷後、粉砕して正極活物質を得た。この正極活物質の製法をAとする。
得られた正極活物質をX線回折により評価したところ、得られたパターンにはLiCoO2のCoの一部がMnに置換されたことによるピークシフトが見られたが、六方晶である空間群R3−mの単一相であることを確認した。さらに、この正極活物質をICPS(誘導結合型プラズマ発光分析装置)で分析したところ、LiCo0.90Mn0.10O2の組成であることがわかった。また、遠心沈降法により粒度分布を測定したところ、平均粒子径は約7.0μmであった。
【0018】
次に、得られた正極活物質を用いてコイン型リチウムイオン二次電池を作製した。図1は、本実施例のコイン型リチウムイオン二次電池の断面図である。
正極活物質、導電助剤となるアセチレンブラック及びバインダー成分となるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を重量比で90:6:4の割合で混合し、N−メチル−ピロリドン(NMP)を加えて混練し、正極活物質層ペーストを調製した。これを正極集電体2である厚さ20μmのアルミニウム薄板上にシート状に塗布し、乾燥・圧延して正極活物質層1を形成した。コークスを焼成して得られた炭素系材料を用い、上記と同様の方法にて混練し、負極活物質層ペーストを調製した。これを負極集電体7である厚さ20μmの銅薄板上に塗布し、乾燥・圧延して負極活物質層6を形成した。電解液には、エチレンカーボネート(EC)及び1,2−ジメトキシエタン(DME)/1.0M過塩素酸リチウムの混合溶液を用い、これを厚さ25μmのポリプロピレン製不織布からなるセパレータ5に染み込ませた後、正極と負極との間に挟み込み、所定の大きさに切断加工後、正極ケース3内に配置し、絶縁ガスケット4で密着して負極ケース8で封じてコイン型リチウムイオン二次電池9を調製した。この電池サンプルをA1とする。
【0019】
この電池を用いて、リチウム電位に対して充電終止電圧4.5V、放電終止電圧3.0Vの電圧範囲で、電流密度0.1mA/cm2の条件の定電流充放電を室温で行った。A1の初期放電容量と100回サイクル後の容量維持率(=100サイクル目の放電容量/初期放電容量×100)を表1に示す。
【0020】
上記電池とは別に充放電を行っていないA1及び4.5Vまでの初回放電のみをおこなったA1を準備し、これをそれぞれ分解して、正極から粉末(正極活物質+導電助剤+バインダー)を剥ぎ取った。この粉末のX線回折を行い、回折ピークシフトから充電前と充電後での正極活物質のa軸及びc軸格子定数をそれぞれ計算した。c軸格子定数の充電前後での変化率を表1に示す。本実施例においては、a軸の変化はほとんどなく、c軸格子定数の変化率は0.015であった。
【0021】
表1から明らかなように、これまではCo系正極活物質の高電圧下での結晶不安定さのために4.2V程度に低く設定しなければならなかった充電終止電圧を、リチウム電位に対して4.5Vまで高めることができるので、インターカレーションに寄与する正極活物質中のリチウムの割合が増え、より大きな放電容量を得ることができた。
【0022】
実施例2.
酸化リチウム(99.9%、和光純薬(株)製)、炭酸コバルト(99.5%、和光純薬(株)製、炭酸マンガン(99.9%、高純度化学研究所(株)製)を金属イオンモル比で1.00:0.88:0.12となるように秤量・混合した後、500℃、24時間大気中で仮焼し、取り出して粉砕した。その後、さらに950℃で48時間大気中で焼成し、炉冷後、軽く粉砕し正極活物質を得た。X線回折を行い、得られた正極活物質が六方晶の空間群R3−mをもつ単一相であることを確認した。さらに、この正極活物質をICPSで組成分析したところ、LiCo0.88Mn0.12O2の組成であることがわかった。また、遠心沈降法による粒度分布を測定したところ、平均粒子径は約8.0μmであった。
【0023】
実施例1と同様の方法でコイン型リチウムイオン二次電池を作製し、4.5−3.0Vの電圧範囲で充放電試験を実施した。この電池サンプルをA2とする。得られた初期放電容量と100回サイクル後の容量維持率を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
表1より明らかなように、実施例1に比べて、Mn置換量が増加したので初期放電容量は低下したが、容量維持率はさらに向上しており、リチウムが安定にインターカレートを繰り返していることがわかる。同様に上記電池とは別に充放電を行っていないA2及び4.5Vまでの初回放電のみをおこなったA2を準備し、これをそれぞれ分解して、正極から粉末(正極活物質+導電助剤+バインダー)を剥ぎ取り、粉末のX線回折を行って、回折ピークシフトから充電前と充電後での正極活物質のa軸及びc軸格子定数をそれぞれ計算した。c軸格子定数の充電前後での変化率を表1に示す。本実施例においても、a軸の変化はほとんどなく、c軸格子定数の変化率は0.007であった。
【0026】
実施例3.
塩化リチウム(99.9%、和光純薬(株)製)、塩化コバルト(99.5%、和光純薬(株)製、塩化マンガン(99.5%、和光純薬(株)製をそれぞれ0.2Mの濃度となるように調整した水溶液を作製した。これを金属イオンモル比で1.00:0.86:0.14となるように水溶液を秤量・混合した後、蒸発乾固して前駆体を得た。次に、前駆体をアルミナ坩堝に入れ、900℃で10時間酸素中焼成した。炉冷後、軽く粉砕し正極活物質を得た。X線回折を行い、得られた正極活物質が六方晶の空間群R3−mをもつ単一相であることを確認した。さらに、この正極活物質をICPSで組成分析したところ、LiCo0.86Mn0.14O2の組成であることがわかった。また、遠心沈降法による粒度分布を測定したところ、平均粒子径は3.0μmであった。
【0027】
実施例1と同様の方法でコイン型リチウムイオン二次電池を作製し、4.5−3.0Vの電圧範囲で充放電試験を実施した。この電池サンプルをA3とする。得られた初期放電容量と100回サイクル後の容量維持率を表1に示す。
【0028】
表1より明らかなように、実施例1に比べて、Mn置換量が増加したので初期容量は低下したが、容量維持率はさらに向上しており、リチウムが安定にインターカレートを繰り返していることがわかる。同様に上記電池とは別に充放電を行っていないA3及び4.5Vまでの初回放電のみをおこなったA3を準備し、これをそれぞれ分解して、正極活物質電極から粉末(正極活物質+導電助剤+バインダー)を剥ぎ取り、粉末のX線回折を行って、回折ピークシフトから充電前と充電後での正極活物質のa軸及びc軸格子定数をそれぞれ計算した。c軸格子定数の充電前後での変化率を表1に示す。本実施例においても、a軸の変化はほとんどなく、c軸格子定数の変化率は0.005であった。
【0029】
実施例4.
硝酸リチウム(99.9%、高純度化学研究所(株)製)、硝酸コバルト(99.9%、高純度化学研究所(株)製)、硝酸マンガン六水和物(99.9%、和光純薬(株)製)、クエン酸一水和物(99.5%、和光純薬)をそれぞれ0.2Mの濃度となるように調整した水溶液を作製した。これを金属イオンモル比で1.00:0.93:0.07となるように水溶液を秤量・混合し、これら金属カチオンに配位する量のクエン酸水溶液を添加した後、200℃で噴霧乾燥することにより、反応活性の高い前駆体を得た。次に、前駆体をアルミナ坩堝に入れ、850℃で10時間酸素中焼成し、炉冷後、軽く粉砕し正極活物質を得た。X線回折を行い、得られた正極活物質が六方晶の空間群R3−mをもつ単一相であることを確認した。さらに、この正極活物質をICPSで組成分析したところ、LiCo0.93Mn0.07O2の組成であることがわかった。また、遠心沈降法による粒度分布を測定したところ、平均粒子径は約5.0μmであった。
【0030】
実施例1と同様の方法でコイン型リチウムイオン二次電池を作製し、4.5−3.0Vの電圧範囲で充放電試験を実施した。この電池サンプルをA4とする。得られた初期放電容量と100回サイクル後の放電容量維持率を表1に示す。
【0031】
表1より明らかなように、実施例1及び2に比べて、Mn置換量が減少したので初期放電容量は向上し、リチウムが安定にインターカレートを繰り返していることがわかる。同様に上記電池とは別に充放電を行っていないA4、および4.5Vまでの初回放電のみをおこなったA4を準備し、これをそれぞれ分解して、正極から粉末(正極活物質+導電助剤+バインダー)を剥ぎ取り、粉末のX線回折を行って、回折ピークシフトから充電前と充電後での正極活物質のa軸及びc軸格子定数をそれぞれ計算した。c軸格子定数の充電前後での変化率を表1に示す。本実施例においても、a軸格子定数の変化はほとんどなく、c軸格子定数の変化率は0.018であった。
【0032】
実施例5.
炭酸リチウム(99.99%、高純度化学研究所(株)製)、炭酸コバルト(99.9%、高純度化学研究所(株)製)及び酸化マンガン(99.99%、半井化学(株)製)を金属イオンモル比で1.00:0.85:0.15となるように混合した後、アルミナ坩堝に入れ、900℃で10時間大気中で焼成した。炉冷後、軽く粉砕し正極活物質を得た。X線回折を行い、得られた正極活物質が六方晶の空間群R3−mをもつ単一相であることを確認した。さらに、この正極活物質をICPSで組成分析したところ、LiCo0.85Mn0.15O2の組成であることがわかった。また、遠心沈降法による粒度分布を測定したところ、平均粒子径は約6.0μmであった。
【0033】
実施例1と同様の方法でコイン型リチウムイオン二次電池を作製し、4.5−3.0Vの電圧範囲で充放電試験を実施した。この電池サンプルをA5とする。得られた初期放電容量と100回サイクル後の放電容量維持率を表1に示す。
【0034】
表1より明らかなように、実施例1及び2に比べて、Mn置換量が減少したので初期放電容量は向上し、リチウムが安定にインターカレートを繰り返していることがわかる。同様に上記電池とは別に充放電を行っていないA5及び4.5Vまでの初回充放電のみをおこなったA5を準備し、これをそれぞれ分解して、正極から粉末(正極活物質+導電助剤+バインダー)を剥ぎ取り、粉末のX線回折を行って、回折ピークシフトから充電前と充電後での正極活物質のa軸格子定数及びc軸格子定数をそれぞれ計算した。c軸格子定数の充電前後での変化率を表1に示す。本実施例においても、a軸格子定数の変化は殆どなく、c軸格子定数の変化率は0.02であった。
【0035】
比較例1.
Mnの置換量を0.00、すなわち、LiCoO2組成とすること以外は実施例1と同様の方法にて、正極活物質を合成し、同様の評価を行った。また、遠心沈降法による粒度分布を測定したところ、平均粒子径は約8.0μmであった。
この正極活物質を用いて実施例1と同様にしてコイン型リチウムイオン二次電池を作製した。この電池サンプルをR1とする。4.5−3.0Vの電圧範囲で充放電試験を実施し、得られた初期放電容量と100回サイクル後の放電容量維持率を表1に示す。これとは別に充放電を行っていないR1及び4.5Vまでの初回放電のみをおこなったR1を準備し、実施例1と同様の方法にてこれをそれぞれ分解して、充電前と充電後での正極活物質のa軸格子定数及びc軸格子定数をそれぞれ計算した。c軸格子定数の充電前後での変化率を表1に示す。本比較例においては、a軸格子定数の変化はほとんどなく、c軸格子定数の変化率は0.045であった。
【0036】
比較のため、上記R1を従来の4.2−3.0V電圧範囲で充放電試験を行ったところ、充電終止電圧を4.5Vとした場合と比べて、100回サイクル後の放電容量維持率は80.0%と高いものの、初期放電容量は153.5となり低下した。
【0037】
比較例2.
前述の特許文献1(特開平3−201368号公報)の実施例1の記載に従って、正極活物質を作製した。得られた正極活物質を用いて、コイン型リチウムイオン二次電池を作製し、この電池の充放電試験を実施した。詳細を以下に示す。
炭酸リチウム(99.99%、高純度化学研究所(株)製)、炭酸コバルト(99.9%、高純度化学研究所(株)製)及び酸化マンガン(99.99%、半井化学(株)製)を金属イオンモル比で1.00:0.90:0.10となるように混合した後、アルミナ坩堝に入れ、900℃で10時間大気中で焼成した。炉冷後、軽く粉砕し正極活物質を得た。X線回折を行い、得られた正極活物質が六方晶の空間群R3−mをもつ単一相であることを確認した。さらに、この正極活物質をICPSで組成分析したところ、LiCo0.90Mn0.10O2の組成であることがわかった。また、遠心沈降法による粒度分布を測定したところ、平均粒子径は約6.0μmであった。
【0038】
この正極活物質を用いて実施例1と同様にしてコイン型リチウムイオン二次電池を作製した。この電池サンプルをR2とする。4.5−3.0Vの電圧範囲で充放電試験を実施し、得られた初期放電容量と100回サイクル後の放電容量維持率を表1に示す。これとは別に充放電を行っていないR2及び4.5Vまでの初回放電のみをおこなったR2を準備し、実施例1と同様の方法にてこれをそれぞれ分解して、充電前と充電後での正極活物質のa軸格子定数及びc軸格子定数をそれぞれ計算した。c軸格子定数の充電前後での変化率を表1に示す。本比較例においては、a軸格子定数の変化はほとんどなく、c軸格子定数の変化率は0.050であった。
【0039】
比較例3.
Mn置換量を0.3とすること以外は実施例4と同様の方法にて、正極活物質を合成し、同様の評価を行った。この正極活物質の粒度分布を遠心沈降法により測定したところ、平均粒子径は約4.0μmであった。
【0040】
この正極活物質を用いて実施例1と同様にしてコイン型リチウムイオン二次電池を作製した。この電池サンプルをR3とする。4.5−3.0Vの電圧範囲で充放電試験を実施し、得られた初期容量と100回サイクル後の放電容量維持率を表1に示す。これとは別に充放電を行っていないR3及び4.5Vまでの初回放電のみをおこなったR3を準備し、実施例1と同様の方法にてこれをそれぞれ分解して、充電前と充電後での正極活物質のa軸格子定数及びc軸長をそれぞれ計算した。c軸格子定数の充電前後での変化率を表1に示す。本比較例においては、a軸格子定数の変化はほとんどなく、c軸格子定数の変化率は0.015であった。
【0041】
比較例4.
四三酸化コバルト(99%、和光純薬(株)製)の代わりに、炭酸コバルト(99.5%、和光純薬(株)製)を用いる以外は実施例1と同様の方法にて、正極活物質を合成し、同様の評価を行った。また、遠心沈降法による粒度分布を測定したところ、平均粒子径は約5.0μmであった。得られた正極活物質組成は実施例1で得られたそれと同じであった。
【0042】
この正極活物質を用いて実施例1と同様にしてコイン型リチウムイオン二次電池を作製した。この電池サンプルをR4とする。4.5−3.0Vの電圧範囲で充放電試験を実施し、得られた初期放電容量と100回サイクル後の放電容量維持率を表1に示す。これとは別に充放電を行っていないR4及び4.5Vまでの初回放電のみをおこなったR4を準備し、実施例1と同様の方法にてこれをそれぞれ分解して、充電前と充電後での正極活物質のa軸格子定数及びc軸格子定数をそれぞれ計算した。c軸格子定数の充電前後での変化率を同じく表1に示す。本比較例においては、a軸格子定数の変化はほとんどなく、c軸格子定数の変化率は0.030であった。
【0043】
比較例5.
Mnの置換量が0.20であること以外は実施例1と同様の方法にて、正極活物質を合成し、同様の評価を行った。また、遠心沈降法による粒度分布を測定したところ、平均粒子径は約5.0μmであった。
【0044】
この正極活物質を用いて実施例1と同様にしてコイン型リチウムイオン二次電池を作製した。この電池サンプルをR5とする。4.5−3.0Vの電圧範囲で充放電試験を実施し、得られた初期放電容量と100回サイクル後の放電容量維持率を表1に示す。これとは別に充放電を行っていないR5、及び4.5Vまでの初回放電のみをおこなったR5を準備し、実施例1と同様の方法にてこれをそれぞれ分解して、充電前と充電後での正極活物質のa軸格子定数及びc軸格子定数をそれぞれ計算した。c軸格子定数の充電前後での変化を表1に示す。本比較例においては、a軸格子定数の変化はほとんどなく、c軸格子定数の変化率は0.009であった。
【0045】
比較例6.
焼成温度を750℃にすること以外は実施例1と同様の方法で正極活物質を合成したところ、平均粒子径が約2.0μmの正極活物質が得られた。
【0046】
この正極活物質を用いて実施例1と同様にしてコイン型リチウムイオン二次電池を作製した。この電池サンプルをR6とする。4.5−3.0Vの電圧範囲で充放電試験を実施し、得られた初期放電容量と100回サイクル後の放電容量維持率を表1に示す。これとは別に充放電を行っていないR6、及び4.5Vまでの初回放電のみをおこなったR6を準備し、実施例1と同様の方法にてこれをそれぞれ分解して、充電前と充電後での正極活物質のa軸格子定数及びc軸格子定数をそれぞれ計算した。c軸格子定数の充電前後での変化率を表1に示す。本比較例においては、a軸格子定数の変化はほとんどなく、c軸格子定数の変化率は0.090であった。
【0047】
以上のように、正極活物質の放電容量、100回サイクル後の放電容量維持率、及び4.5V充放電前後でのc軸格子定数の変化率を比較すると、Mn置換量が0.15を越えると容量が大きく低下するという問題があり、さらには、c軸格子定数の変化率が(c2−c1)/c1≦0.02であるときに、充電終止電圧を4.5Vとしてもサイクル特性は良好であり、Mn置換量や平均粒子径、製法、原料などさまざまな要因がc軸格子定数の変化率に影響を与えていることが分かる。
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、特定の組成を有し、且つ充電前後で特定のパラメータを満たす正極活物質を二次電池に用いることにより、放電容量が大きく、且つ充放電サイクル特性の優れた二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のコイン型リチウムイオン二次電池の一実施形態の断面図である。
【符号の説明】
1 正極活物質層、2 正極集電体、3 正極ケース、4 絶縁ガスケット、5 セパレータ、6 負極活物質層、7 負極集電体、8 負極ケース、9 コイン型リチウムイオン二次電池。
【発明の属する技術分野】
本発明は、充放電のサイクルを行う二次電池において用いられる正極活物質及びそれを用いたリチウムイオン二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
携帯電話などの電子機器の小型化や、電子機器に配信される情報量の増大に伴う消費電力の増大により、エネルギー密度のより高いリチウムイオン二次電池の出現が強く望まれている。
【0003】
リチウムイオン二次電池は、リチウムイオンが正極−負極間を行き来することにより充放電が進行する。一般には、非プロトン性の有機溶媒に電解質を溶解させたものを電解液とし、リチウム遷移金属酸化物(正極活物質)に導電助剤を混合して得られるペーストを塗布した正極と、グラファイトなど炭素系材料を塗布した負極と、セパレータとを一体化して巻き込み、筐体に封入した構成となっている。現在、最も一般的に用いられている正極活物質はLiCoO2であり、高い電圧を発生できることや合成が容易であることなどの利点をもっている。
【0004】
LiCoO2を正極活物質として用いたリチウムイオン二次電池では、充放電サイクル安定性を得るために、充電上限電圧がリチウムに対して4.2V程度、放電下限電圧が3.0V程度となるような電圧範囲でサイクル使用が行われている。この充電上限電圧を4.2Vとする理由としては、現状の有機電解液が安定に存在できる電圧が4.3〜4.4V程度であることや、正極活物質が4.2Vを超えるような高い充電電圧下では不安定な結晶状態になるためである。つまり、充電上限電圧が高くなって正極活物質に含まれるリチウムのデインターカレート量が多くなると、正極活物質の結晶歪みが大きくなるため、充放電サイクル特性が大きく低下するという問題が生じる。さらに、充電上限電圧を4.2V程度とする使い方では、正極活物質に含まれるリチウムの約50%を利用しているに過ぎず、実際の放電容量は、組成式より導かれる理論容量(274mAh/g)の約半分しかないという問題がある。
【0005】
そこで、充放電サイクル特性の向上を目的として、Coの一部を他の元素で置き換えた正極活物質、即ち、LixCo1−yMyO2(M=W、Mn、Ta、Ti、Nb)の組成であるような正極活物質が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
一方、LiCoO2正極活物質が4.2V以上の高い電圧でも安定化するように、LiCoO2合成時にリン又はリン化合物を添加し、LiCoO2の表面をリンで被覆した正極活物質(例えば、特許文献2参照)や、LiCo1−yMyO2(MはIIIB属元素、0<y≦0.2)で表され、粒子表面におけるCoに対するMの原子比率をaとしたとき、aの値が粒子全体のCoに対するMの原子比率の平均値[y/(1−y)]の1.5倍以上であるリチウム含有複合酸化物を正極活物質として用いた非水二次電池が提案されている(例えば、特許文献3参照)。これらはいずれも正極活物質の表面に主組成とは異なる組成の部分を形成し、高い電圧下での安定性を高めようとしている。
【0007】
【特許文献1】
特開平3−201368号公報
【特許文献2】
特開平5−47383号公報
【特許文献3】
特開2002−75356号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のLixCo1−yMyO2(M=W、Mn、Ta、Ti、Nb)の組成であるような正極活物質を二次電池に用いても、単にCoの一部を、例えば、Mnに置換することだけでは充放電サイクルに改善が認められず、更にMn等の置換によって初期放電容量が低下するという問題があった。また、上記の表面に主組成とは異なる組成の部分を形成した正極活物質を二次電池に用いると、電解液/正極活物質界面でのリチウムのインターカレートが著しく阻害されるため、放電容量が大きく低下してしまい、充電終止電圧を上げて放電容量を増大させた効果がキャンセルされ、期待される程の放電容量を得ることができなかった。
従って、本発明の目的は、放電容量が大きく、且つ充放電サイクル特性の優れた正極活物質及びこれを用いたリチウムイオン二次電池を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、乾式法や湿式法、出発原料の種々を組み合わせた合成方法により、Coの一部をMnに置換した正極活物質組成について鋭意検討した結果、特定の組成を有し、且つ充電前後で特定のパラメータを満たす正極活物質を二次電池に用いることにより、放電容量及びサイクル特性を向上させることができることを見出し本発明に至った。
即ち、本発明は、充放電のサイクルを行う二次電池において用いられ、六方晶構造を有する正極活物質であって、
一般式:LiaCo1−bMnbOd
で表わされ、0<a<1.3、0<b≦0.15、1.8<d<2.2であり、且つ、充電前後のc軸格子定数をそれぞれc1、c2としたときに、
(c2−c1)/c1≦0.02
であることを特徴とする正極活物質である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の正極活物質は、六方晶構造を有し、一般式:LiaCo1−bMnbOdで表わされ、0<a<1.3、0<b≦0.15、1.8<d<2.2を満たすものである。さらに、正極充電前後における正極活物質のc軸格子定数をそれぞれc1、c2としたときに、(c2−c1)/c1≦0.02を満たすものである。
【0011】
まず、本発明において、一般式:LiaCo1−bMnbOd(式中、0<a<1.3、0<b≦0.15、1.8<d<2.2)で示される組成の正極活物質に限定した理由を説明する。
正極活物質に含まれるリチウム量aを、0<a<1.3としたのは、aが1.3以上になると過剰のリチウムにより初期放電容量が低下するためである。マンガン置換量bを0<b≦0.15としたのは、bが0.15より大きくなるとCoに対する置換割合が大き過ぎて初期放電容量の低下が著しくなり、充電終止電圧を上げても放電容量を向上させることができなくなるためである。酸素量dを1.8<d<2.2としたのは、dが1.8以下であると結晶構造に欠陥を生じるため初期放電容量が低下し、2.2以上であるとリチウムのインターカレート及びデインターカレートが著しく阻害されるため放電容量が低下するためである。
【0012】
次に、本発明において、正極活物質の正極充電前後のc軸格子定数をそれぞれc1、c2としたときに、(c2−c1)/c1≦0.02を満たすものに限定した理由を説明する。
LiCoO2のような六方晶(R3−m構造)結晶は、リチウムがデインターカレートするに伴い、酸素と酸素が静電反発し、結晶のc軸方向が伸張する。従って、このc軸方向の伸びは、電池の充放電サイクル特性に極めて大きな影響を与えると考えられる。そこで、種々の製造方法や出発原料の組み合わせにより合成した一般式:LiaCo1−bMnbOd(式中、0<a<1.3、0<b≦0.15、1.8<d<2.2)を満たす正極活物質のc軸格子定数を粉末X線回折で求めて解析した。その結果、充電終止電圧を従来よりも高くして充電する場合、特にリチウム電位に対して4.2V〜4.5Vまでの充電終止電圧で充電した場合、c軸変化率(c2−c1)/c1(式中、c1は充電前のc軸格子定数、c2は充電後のc軸格子定数を表す)が、0.02以内である正極活物質を用いることにより、電池のサイクル特性を大幅に向上させることができることを見出したためである。
【0013】
本発明において、c軸変化率は、例えば、X線回折により二次電池充電前の正極活物質のc軸格子定数をc1を測定し、次いで、二次電池充電後の正極活物質のc軸格子定数であるc2を測定し、これらc1及びc2から求めることができる。また、このようにして求めたc軸変化率を、正極活物質の製造条件(製法や出発原料等)の良否を判定する基準とすることにより、放電容量が大きく、且つ充放電サイクル特性の優れた正極活物質を効率よく製造することができる。
【0014】
本発明において、正極活物質の平均粒子径は特に限定されないが、好ましくは3〜8μmである。上記範囲内であれば、充電終止電圧を高くして充電しても正極活物質粒子の歪みの絶対量を小さくすることができるため、電気化学的に不活性な部分を少なくすることができ、サイクル特性を向上させることができる。
【0015】
本発明のリチウムイオン二次電池は、上記の正極活物質を含む正極を備えるものである。本発明において、リチウムイオン二次電池の製造方法は特に限定されないが、例えば、上記の正極活物質、導電助剤及びバインダーを混合してペースト化し、これを正極集電材上に塗布し乾燥して正極活物質層を形成した正極を作製し、負極活物質を必要があれば導電助剤とバインダーと共にペースト化し、これを負極集電材に塗布し乾燥して負極活物質層を形成した負極を作製し、これら電極で液状又はポリマー状電解質を染み込ませたセパレータを挟み込む方法が挙げられる。この方法により正極を作製する場合、正極活物質の平均粒子径は3〜8μmであることが望ましい。この範囲内であれば、ペーストを塗布した正極集電材の表面粗さを小さくすることができるので、電池特性を向上させることができる。
【0016】
【実施例】
これまでに述べたように、本発明でパラメータとしている(c2−c1)/c1は、正極活物質の組成が同じであっても製法や選択する原料などにより異なるため、製法や出発原料で一義的に決めることはできない。以下の実施例では、いくつかの製法(原料選択含む)で合成した正極活物質の諸特性について記述するが、これらの製法や原料に限定されるものではない。
【0017】
実施例1.
原料となる炭酸リチウム(99%、高純度化学研究所(株)製)と四三酸化コバルト(99%、和光純薬(株)製)、炭酸マンガン(99%、和光純薬(株)製)をそれぞれの金属イオンモル比で、1.00:0.90:0.10になるように秤量し、ジルコニアボールを用いてボールミル混合を行った。次に、混合物をアルミナ坩堝に入れ、600℃で48時間酸素中加熱する仮焼をおこなった後、取り出して粉砕し、さらに900℃で48時間大気中にて焼成し、炉冷後、粉砕して正極活物質を得た。この正極活物質の製法をAとする。
得られた正極活物質をX線回折により評価したところ、得られたパターンにはLiCoO2のCoの一部がMnに置換されたことによるピークシフトが見られたが、六方晶である空間群R3−mの単一相であることを確認した。さらに、この正極活物質をICPS(誘導結合型プラズマ発光分析装置)で分析したところ、LiCo0.90Mn0.10O2の組成であることがわかった。また、遠心沈降法により粒度分布を測定したところ、平均粒子径は約7.0μmであった。
【0018】
次に、得られた正極活物質を用いてコイン型リチウムイオン二次電池を作製した。図1は、本実施例のコイン型リチウムイオン二次電池の断面図である。
正極活物質、導電助剤となるアセチレンブラック及びバインダー成分となるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を重量比で90:6:4の割合で混合し、N−メチル−ピロリドン(NMP)を加えて混練し、正極活物質層ペーストを調製した。これを正極集電体2である厚さ20μmのアルミニウム薄板上にシート状に塗布し、乾燥・圧延して正極活物質層1を形成した。コークスを焼成して得られた炭素系材料を用い、上記と同様の方法にて混練し、負極活物質層ペーストを調製した。これを負極集電体7である厚さ20μmの銅薄板上に塗布し、乾燥・圧延して負極活物質層6を形成した。電解液には、エチレンカーボネート(EC)及び1,2−ジメトキシエタン(DME)/1.0M過塩素酸リチウムの混合溶液を用い、これを厚さ25μmのポリプロピレン製不織布からなるセパレータ5に染み込ませた後、正極と負極との間に挟み込み、所定の大きさに切断加工後、正極ケース3内に配置し、絶縁ガスケット4で密着して負極ケース8で封じてコイン型リチウムイオン二次電池9を調製した。この電池サンプルをA1とする。
【0019】
この電池を用いて、リチウム電位に対して充電終止電圧4.5V、放電終止電圧3.0Vの電圧範囲で、電流密度0.1mA/cm2の条件の定電流充放電を室温で行った。A1の初期放電容量と100回サイクル後の容量維持率(=100サイクル目の放電容量/初期放電容量×100)を表1に示す。
【0020】
上記電池とは別に充放電を行っていないA1及び4.5Vまでの初回放電のみをおこなったA1を準備し、これをそれぞれ分解して、正極から粉末(正極活物質+導電助剤+バインダー)を剥ぎ取った。この粉末のX線回折を行い、回折ピークシフトから充電前と充電後での正極活物質のa軸及びc軸格子定数をそれぞれ計算した。c軸格子定数の充電前後での変化率を表1に示す。本実施例においては、a軸の変化はほとんどなく、c軸格子定数の変化率は0.015であった。
【0021】
表1から明らかなように、これまではCo系正極活物質の高電圧下での結晶不安定さのために4.2V程度に低く設定しなければならなかった充電終止電圧を、リチウム電位に対して4.5Vまで高めることができるので、インターカレーションに寄与する正極活物質中のリチウムの割合が増え、より大きな放電容量を得ることができた。
【0022】
実施例2.
酸化リチウム(99.9%、和光純薬(株)製)、炭酸コバルト(99.5%、和光純薬(株)製、炭酸マンガン(99.9%、高純度化学研究所(株)製)を金属イオンモル比で1.00:0.88:0.12となるように秤量・混合した後、500℃、24時間大気中で仮焼し、取り出して粉砕した。その後、さらに950℃で48時間大気中で焼成し、炉冷後、軽く粉砕し正極活物質を得た。X線回折を行い、得られた正極活物質が六方晶の空間群R3−mをもつ単一相であることを確認した。さらに、この正極活物質をICPSで組成分析したところ、LiCo0.88Mn0.12O2の組成であることがわかった。また、遠心沈降法による粒度分布を測定したところ、平均粒子径は約8.0μmであった。
【0023】
実施例1と同様の方法でコイン型リチウムイオン二次電池を作製し、4.5−3.0Vの電圧範囲で充放電試験を実施した。この電池サンプルをA2とする。得られた初期放電容量と100回サイクル後の容量維持率を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
表1より明らかなように、実施例1に比べて、Mn置換量が増加したので初期放電容量は低下したが、容量維持率はさらに向上しており、リチウムが安定にインターカレートを繰り返していることがわかる。同様に上記電池とは別に充放電を行っていないA2及び4.5Vまでの初回放電のみをおこなったA2を準備し、これをそれぞれ分解して、正極から粉末(正極活物質+導電助剤+バインダー)を剥ぎ取り、粉末のX線回折を行って、回折ピークシフトから充電前と充電後での正極活物質のa軸及びc軸格子定数をそれぞれ計算した。c軸格子定数の充電前後での変化率を表1に示す。本実施例においても、a軸の変化はほとんどなく、c軸格子定数の変化率は0.007であった。
【0026】
実施例3.
塩化リチウム(99.9%、和光純薬(株)製)、塩化コバルト(99.5%、和光純薬(株)製、塩化マンガン(99.5%、和光純薬(株)製をそれぞれ0.2Mの濃度となるように調整した水溶液を作製した。これを金属イオンモル比で1.00:0.86:0.14となるように水溶液を秤量・混合した後、蒸発乾固して前駆体を得た。次に、前駆体をアルミナ坩堝に入れ、900℃で10時間酸素中焼成した。炉冷後、軽く粉砕し正極活物質を得た。X線回折を行い、得られた正極活物質が六方晶の空間群R3−mをもつ単一相であることを確認した。さらに、この正極活物質をICPSで組成分析したところ、LiCo0.86Mn0.14O2の組成であることがわかった。また、遠心沈降法による粒度分布を測定したところ、平均粒子径は3.0μmであった。
【0027】
実施例1と同様の方法でコイン型リチウムイオン二次電池を作製し、4.5−3.0Vの電圧範囲で充放電試験を実施した。この電池サンプルをA3とする。得られた初期放電容量と100回サイクル後の容量維持率を表1に示す。
【0028】
表1より明らかなように、実施例1に比べて、Mn置換量が増加したので初期容量は低下したが、容量維持率はさらに向上しており、リチウムが安定にインターカレートを繰り返していることがわかる。同様に上記電池とは別に充放電を行っていないA3及び4.5Vまでの初回放電のみをおこなったA3を準備し、これをそれぞれ分解して、正極活物質電極から粉末(正極活物質+導電助剤+バインダー)を剥ぎ取り、粉末のX線回折を行って、回折ピークシフトから充電前と充電後での正極活物質のa軸及びc軸格子定数をそれぞれ計算した。c軸格子定数の充電前後での変化率を表1に示す。本実施例においても、a軸の変化はほとんどなく、c軸格子定数の変化率は0.005であった。
【0029】
実施例4.
硝酸リチウム(99.9%、高純度化学研究所(株)製)、硝酸コバルト(99.9%、高純度化学研究所(株)製)、硝酸マンガン六水和物(99.9%、和光純薬(株)製)、クエン酸一水和物(99.5%、和光純薬)をそれぞれ0.2Mの濃度となるように調整した水溶液を作製した。これを金属イオンモル比で1.00:0.93:0.07となるように水溶液を秤量・混合し、これら金属カチオンに配位する量のクエン酸水溶液を添加した後、200℃で噴霧乾燥することにより、反応活性の高い前駆体を得た。次に、前駆体をアルミナ坩堝に入れ、850℃で10時間酸素中焼成し、炉冷後、軽く粉砕し正極活物質を得た。X線回折を行い、得られた正極活物質が六方晶の空間群R3−mをもつ単一相であることを確認した。さらに、この正極活物質をICPSで組成分析したところ、LiCo0.93Mn0.07O2の組成であることがわかった。また、遠心沈降法による粒度分布を測定したところ、平均粒子径は約5.0μmであった。
【0030】
実施例1と同様の方法でコイン型リチウムイオン二次電池を作製し、4.5−3.0Vの電圧範囲で充放電試験を実施した。この電池サンプルをA4とする。得られた初期放電容量と100回サイクル後の放電容量維持率を表1に示す。
【0031】
表1より明らかなように、実施例1及び2に比べて、Mn置換量が減少したので初期放電容量は向上し、リチウムが安定にインターカレートを繰り返していることがわかる。同様に上記電池とは別に充放電を行っていないA4、および4.5Vまでの初回放電のみをおこなったA4を準備し、これをそれぞれ分解して、正極から粉末(正極活物質+導電助剤+バインダー)を剥ぎ取り、粉末のX線回折を行って、回折ピークシフトから充電前と充電後での正極活物質のa軸及びc軸格子定数をそれぞれ計算した。c軸格子定数の充電前後での変化率を表1に示す。本実施例においても、a軸格子定数の変化はほとんどなく、c軸格子定数の変化率は0.018であった。
【0032】
実施例5.
炭酸リチウム(99.99%、高純度化学研究所(株)製)、炭酸コバルト(99.9%、高純度化学研究所(株)製)及び酸化マンガン(99.99%、半井化学(株)製)を金属イオンモル比で1.00:0.85:0.15となるように混合した後、アルミナ坩堝に入れ、900℃で10時間大気中で焼成した。炉冷後、軽く粉砕し正極活物質を得た。X線回折を行い、得られた正極活物質が六方晶の空間群R3−mをもつ単一相であることを確認した。さらに、この正極活物質をICPSで組成分析したところ、LiCo0.85Mn0.15O2の組成であることがわかった。また、遠心沈降法による粒度分布を測定したところ、平均粒子径は約6.0μmであった。
【0033】
実施例1と同様の方法でコイン型リチウムイオン二次電池を作製し、4.5−3.0Vの電圧範囲で充放電試験を実施した。この電池サンプルをA5とする。得られた初期放電容量と100回サイクル後の放電容量維持率を表1に示す。
【0034】
表1より明らかなように、実施例1及び2に比べて、Mn置換量が減少したので初期放電容量は向上し、リチウムが安定にインターカレートを繰り返していることがわかる。同様に上記電池とは別に充放電を行っていないA5及び4.5Vまでの初回充放電のみをおこなったA5を準備し、これをそれぞれ分解して、正極から粉末(正極活物質+導電助剤+バインダー)を剥ぎ取り、粉末のX線回折を行って、回折ピークシフトから充電前と充電後での正極活物質のa軸格子定数及びc軸格子定数をそれぞれ計算した。c軸格子定数の充電前後での変化率を表1に示す。本実施例においても、a軸格子定数の変化は殆どなく、c軸格子定数の変化率は0.02であった。
【0035】
比較例1.
Mnの置換量を0.00、すなわち、LiCoO2組成とすること以外は実施例1と同様の方法にて、正極活物質を合成し、同様の評価を行った。また、遠心沈降法による粒度分布を測定したところ、平均粒子径は約8.0μmであった。
この正極活物質を用いて実施例1と同様にしてコイン型リチウムイオン二次電池を作製した。この電池サンプルをR1とする。4.5−3.0Vの電圧範囲で充放電試験を実施し、得られた初期放電容量と100回サイクル後の放電容量維持率を表1に示す。これとは別に充放電を行っていないR1及び4.5Vまでの初回放電のみをおこなったR1を準備し、実施例1と同様の方法にてこれをそれぞれ分解して、充電前と充電後での正極活物質のa軸格子定数及びc軸格子定数をそれぞれ計算した。c軸格子定数の充電前後での変化率を表1に示す。本比較例においては、a軸格子定数の変化はほとんどなく、c軸格子定数の変化率は0.045であった。
【0036】
比較のため、上記R1を従来の4.2−3.0V電圧範囲で充放電試験を行ったところ、充電終止電圧を4.5Vとした場合と比べて、100回サイクル後の放電容量維持率は80.0%と高いものの、初期放電容量は153.5となり低下した。
【0037】
比較例2.
前述の特許文献1(特開平3−201368号公報)の実施例1の記載に従って、正極活物質を作製した。得られた正極活物質を用いて、コイン型リチウムイオン二次電池を作製し、この電池の充放電試験を実施した。詳細を以下に示す。
炭酸リチウム(99.99%、高純度化学研究所(株)製)、炭酸コバルト(99.9%、高純度化学研究所(株)製)及び酸化マンガン(99.99%、半井化学(株)製)を金属イオンモル比で1.00:0.90:0.10となるように混合した後、アルミナ坩堝に入れ、900℃で10時間大気中で焼成した。炉冷後、軽く粉砕し正極活物質を得た。X線回折を行い、得られた正極活物質が六方晶の空間群R3−mをもつ単一相であることを確認した。さらに、この正極活物質をICPSで組成分析したところ、LiCo0.90Mn0.10O2の組成であることがわかった。また、遠心沈降法による粒度分布を測定したところ、平均粒子径は約6.0μmであった。
【0038】
この正極活物質を用いて実施例1と同様にしてコイン型リチウムイオン二次電池を作製した。この電池サンプルをR2とする。4.5−3.0Vの電圧範囲で充放電試験を実施し、得られた初期放電容量と100回サイクル後の放電容量維持率を表1に示す。これとは別に充放電を行っていないR2及び4.5Vまでの初回放電のみをおこなったR2を準備し、実施例1と同様の方法にてこれをそれぞれ分解して、充電前と充電後での正極活物質のa軸格子定数及びc軸格子定数をそれぞれ計算した。c軸格子定数の充電前後での変化率を表1に示す。本比較例においては、a軸格子定数の変化はほとんどなく、c軸格子定数の変化率は0.050であった。
【0039】
比較例3.
Mn置換量を0.3とすること以外は実施例4と同様の方法にて、正極活物質を合成し、同様の評価を行った。この正極活物質の粒度分布を遠心沈降法により測定したところ、平均粒子径は約4.0μmであった。
【0040】
この正極活物質を用いて実施例1と同様にしてコイン型リチウムイオン二次電池を作製した。この電池サンプルをR3とする。4.5−3.0Vの電圧範囲で充放電試験を実施し、得られた初期容量と100回サイクル後の放電容量維持率を表1に示す。これとは別に充放電を行っていないR3及び4.5Vまでの初回放電のみをおこなったR3を準備し、実施例1と同様の方法にてこれをそれぞれ分解して、充電前と充電後での正極活物質のa軸格子定数及びc軸長をそれぞれ計算した。c軸格子定数の充電前後での変化率を表1に示す。本比較例においては、a軸格子定数の変化はほとんどなく、c軸格子定数の変化率は0.015であった。
【0041】
比較例4.
四三酸化コバルト(99%、和光純薬(株)製)の代わりに、炭酸コバルト(99.5%、和光純薬(株)製)を用いる以外は実施例1と同様の方法にて、正極活物質を合成し、同様の評価を行った。また、遠心沈降法による粒度分布を測定したところ、平均粒子径は約5.0μmであった。得られた正極活物質組成は実施例1で得られたそれと同じであった。
【0042】
この正極活物質を用いて実施例1と同様にしてコイン型リチウムイオン二次電池を作製した。この電池サンプルをR4とする。4.5−3.0Vの電圧範囲で充放電試験を実施し、得られた初期放電容量と100回サイクル後の放電容量維持率を表1に示す。これとは別に充放電を行っていないR4及び4.5Vまでの初回放電のみをおこなったR4を準備し、実施例1と同様の方法にてこれをそれぞれ分解して、充電前と充電後での正極活物質のa軸格子定数及びc軸格子定数をそれぞれ計算した。c軸格子定数の充電前後での変化率を同じく表1に示す。本比較例においては、a軸格子定数の変化はほとんどなく、c軸格子定数の変化率は0.030であった。
【0043】
比較例5.
Mnの置換量が0.20であること以外は実施例1と同様の方法にて、正極活物質を合成し、同様の評価を行った。また、遠心沈降法による粒度分布を測定したところ、平均粒子径は約5.0μmであった。
【0044】
この正極活物質を用いて実施例1と同様にしてコイン型リチウムイオン二次電池を作製した。この電池サンプルをR5とする。4.5−3.0Vの電圧範囲で充放電試験を実施し、得られた初期放電容量と100回サイクル後の放電容量維持率を表1に示す。これとは別に充放電を行っていないR5、及び4.5Vまでの初回放電のみをおこなったR5を準備し、実施例1と同様の方法にてこれをそれぞれ分解して、充電前と充電後での正極活物質のa軸格子定数及びc軸格子定数をそれぞれ計算した。c軸格子定数の充電前後での変化を表1に示す。本比較例においては、a軸格子定数の変化はほとんどなく、c軸格子定数の変化率は0.009であった。
【0045】
比較例6.
焼成温度を750℃にすること以外は実施例1と同様の方法で正極活物質を合成したところ、平均粒子径が約2.0μmの正極活物質が得られた。
【0046】
この正極活物質を用いて実施例1と同様にしてコイン型リチウムイオン二次電池を作製した。この電池サンプルをR6とする。4.5−3.0Vの電圧範囲で充放電試験を実施し、得られた初期放電容量と100回サイクル後の放電容量維持率を表1に示す。これとは別に充放電を行っていないR6、及び4.5Vまでの初回放電のみをおこなったR6を準備し、実施例1と同様の方法にてこれをそれぞれ分解して、充電前と充電後での正極活物質のa軸格子定数及びc軸格子定数をそれぞれ計算した。c軸格子定数の充電前後での変化率を表1に示す。本比較例においては、a軸格子定数の変化はほとんどなく、c軸格子定数の変化率は0.090であった。
【0047】
以上のように、正極活物質の放電容量、100回サイクル後の放電容量維持率、及び4.5V充放電前後でのc軸格子定数の変化率を比較すると、Mn置換量が0.15を越えると容量が大きく低下するという問題があり、さらには、c軸格子定数の変化率が(c2−c1)/c1≦0.02であるときに、充電終止電圧を4.5Vとしてもサイクル特性は良好であり、Mn置換量や平均粒子径、製法、原料などさまざまな要因がc軸格子定数の変化率に影響を与えていることが分かる。
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、特定の組成を有し、且つ充電前後で特定のパラメータを満たす正極活物質を二次電池に用いることにより、放電容量が大きく、且つ充放電サイクル特性の優れた二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のコイン型リチウムイオン二次電池の一実施形態の断面図である。
【符号の説明】
1 正極活物質層、2 正極集電体、3 正極ケース、4 絶縁ガスケット、5 セパレータ、6 負極活物質層、7 負極集電体、8 負極ケース、9 コイン型リチウムイオン二次電池。
Claims (3)
- 充放電のサイクルを行う二次電池において用いられ、六方晶構造を有する正極活物質であって、
一般式:LiaCo1−bMnbOd
で表わされ、0<a<1.3、0<b≦0.15、1.8<d<2.2であり、且つ、充電前後のc軸格子定数をそれぞれc1、c2としたときに、
(c2−c1)/c1≦0.02
であることを特徴とする正極活物質。 - 平均粒子径が3〜8μmであることを特徴とする請求項1項に記載の正極活物質。
- 請求項1又は2に記載の正極活物質を含む正極を備えたことを特徴とするリチウムイオン二次電池。
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