JP2004354526A - グランドピアノの大屋根支持装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】安価かつ単純に構成でき、短時間で開閉できるとともに、大屋根を任意の開放角度で確実に支持することができるグランドピアノの大屋根支持装置を提供する。
【解決手段】側板6に支点5を中心として回動自在に取り付けられた大屋根2を支持するグランドピアノ1の大屋根支持装置11であって、基端部12aが側板6の支点5と反対側に位置する支点7に前後方向の軸線回りに回動自在に取り付けられ、開放された大屋根2を先端部12bで支持する大屋根突き揚げ棒12と、先端部12bに転動自在に設けられ、大屋根突き揚げ棒12で大屋根2を支持した状態において、大屋根2の裏面に当接するローラ15と、を備え、ローラ15には、大屋根2の開放側への回動に伴うローラ15の転動を許容し、大屋根2の閉鎖側への回動に伴うローラ15の転動を阻止するワンウェイクラッチ機構が設けられている。
【選択図】 図4
【解決手段】側板6に支点5を中心として回動自在に取り付けられた大屋根2を支持するグランドピアノ1の大屋根支持装置11であって、基端部12aが側板6の支点5と反対側に位置する支点7に前後方向の軸線回りに回動自在に取り付けられ、開放された大屋根2を先端部12bで支持する大屋根突き揚げ棒12と、先端部12bに転動自在に設けられ、大屋根突き揚げ棒12で大屋根2を支持した状態において、大屋根2の裏面に当接するローラ15と、を備え、ローラ15には、大屋根2の開放側への回動に伴うローラ15の転動を許容し、大屋根2の閉鎖側への回動に伴うローラ15の転動を阻止するワンウェイクラッチ機構が設けられている。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、側板に回動自在に取り付けられた大屋根を支持するためのグランドピアノの大屋根支持装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図6は、従来の一般的な大屋根支持装置を備えたグランドピアノを示している。このグランドピアノ50の大屋根2は、一般にラワン合板などからなり、大屋根後3と、大屋根後3に対して後方に折りたたみ自在の大屋根前(図示せず)とで構成されている。大屋根後3は、その低音側端部が、蝶番5を介して、側板6に回動自在に取り付けられており、裏面の所定位置には、2つの突き揚げ棒受け皿51,51が左右方向に並んで設けられている。一方、側板6は、内蔵したフレームや響板(いずれも図示せず)などとともにピアノ本体を構成しており、高音部側の内面には、互いに異なる長さの大中小の大屋根突き揚げ棒52a,52b,52cの各一端部が、支軸53を介して回動自在に取り付けられている。
【0003】
以上の構成により、例えば、ピアノの非使用時や練習時には、図6(b)に示すように、側板6の内部機構を保護すべく、大屋根突き揚げ棒52a〜52cはすべて折りたたまれ、大屋根2は閉じた状態とされる。一方、演奏会においてピアノを独奏する場合などには、大屋根2の高音部側を持ち上げた状態で、大屋根突き揚げ棒(大)52aを起こし、その先端部を中央よりの突き揚げ棒受け皿51に係合させることによって、大屋根2は、大きな角度で傾斜した大開放位置(同図(a)の位置)に保持される。また、他の楽器とのアンサンブル演奏を行う場合などには、共演者が見えるようにするために、大屋根突き揚げ棒(中)52bまたは大屋根突き揚げ棒(小)52cを、側板6寄りの突き揚げ受け皿51に係合させることによって、大屋根2は、より小さな角度で傾斜した中開放位置または小開放位置に保持される(同図(c)参照)。
【0004】
しかし、上記の従来のグランドピアノでは、大屋根2の端部が蝶番5を介して単純に取り付けられているだけなので、大屋根2を開閉するのに、一方の手で大屋根2を支えながら、他方の手で大屋根突き揚げ棒52a〜52cを操作しなければならない。一方、大屋根2は、面積がかなり大きく、フルコンサートピアノでは総重量が40〜50kgにも及ぶ。このため、女性や子供の力では大屋根2を容易に開閉できないとともに、開閉操作の途中で支えきれなくなることで、大屋根2が自重で勢いよく閉じてしまい、大屋根2や側板6を損傷させるなどの不具合が生じるおそれがある。特に、大屋根2を大開放位置から閉鎖する場合には、その間、大屋根2を片手で持ち続け、ゆっくり閉じながら、大屋根突き揚げ棒(大)52aを折りたたむことが必要になるとともに、大屋根2が高音部側からかなり遠い位置にあって、無理な姿勢で操作することになるため、上記のような不具合が生じやすくなる。
【0005】
このため、このような不具合を解消するための大屋根支持装置が、従来から提案されており、例えば、特許文献1に開示されている。なお、以下の説明では、図6のグランドピアノ50と同一の構成部品については、同じ参照番号を用いるものとする。図7に示すように、この大屋根支持装置はギヤジャッキ61で構成されており、このギヤジャッキ61は、グランドピアノ60のピアノ本体内の支柱62に固定されたジャッキ本体61aと、このジャッキ本体61aから上下方向に延び、外周面にねじ63aが形成され、上端部にローラ64が設けられたロッド63を備えており、ローラ64は大屋根2の裏面に当接している。ジャッキ本体61aの内部には、ロッド63のねじ63aに噛み合う雌ねじ(図示せず)を有し、ジャッキ本体61aに対して回転自在かつ上下方向に移動不能のウオームホイールと、このウオームホイールの外周面に形成した歯と噛み合うウオームが形成された駆動軸(いずれも図示せず)が設けられている。この駆動軸は、演奏者の付近に設けられたハンドル(図示せず)に一体に連結されている。
【0006】
以上の構成により、ハンドルを一方の方向に回すと、駆動軸が回転するのに伴い、ウオームホイールが回転することで、ロッド63が上昇し、ローラ64を介して大屋根2を突き揚げることによって、大屋根2が開放される。また、ハンドルを開放時とは逆方向に回すことにより、ロッド63が下降し、大屋根2が閉鎖される。したがって、大屋根2を任意の角度に開放できるとともに、大屋根2が開閉の途中で、自重によって勢い良く閉じることがなくなる。また、ギヤジャッキ61のウオームおよびウオームホイールによって減速されるため、ハンドルを小さな操作力で回すことができる。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−195055号公報(第3頁、第2〜3図)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このように、特許文献1に記載の従来の大屋根支持装置によれば、ギヤジャッキ61による減速によって、ハンドルを小さな操作力で回しながら大屋根2を開放することができる。しかし、この減速によって、大屋根2を前述した大開放位置まで開放するには、ハンドルを何度も回す必要があり、時間を要してしまう。このような不具合を解消するために、例えばギヤジャッキ61を蝶番5により近い位置に配置することによって、大開放位置までのロッド63のストロークを短くし、ハンドルを回す回数を減少させることが考えられる。しかし、その場合には、大屋根2の支点に近い部分を突き揚げるため、ハンドルの操作力が大きくなってしまう。また、図6に示したような一般的なグランドピアノでは、大屋根突き揚げ棒52a〜52cが斜めの状態で大屋根2を支持するのに対し、この従来の大屋根支持装置では、ロッド63が上方にまっすぐ突出するため、観客が違和感を生じるなど、外観が損なわれる。また、ギヤジャッキ61が多くの部品を有し、構成も複雑であるため、製造コストが上昇する。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、安価かつ単純に構成でき、短時間で開閉できるとともに、大屋根を任意の開放角度で確実に支持することができるグランドピアノの大屋根支持装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、請求項1に係る発明は、側板に支点を中心として回動自在に取り付けられた大屋根を開放状態で支持するためのグランドピアノの大屋根支持装置であって、基端部が側板の支点と反対側に位置する支点に前後方向の軸線回りに回動自在に取り付けられ、開放された大屋根を先端部で支持するための大屋根突き揚げ棒と、大屋根突き揚げ棒の先端部に転動自在に設けられ、大屋根突き揚げ棒で大屋根を支持した状態において、大屋根の裏面に当接するローラと、を備え、ローラには、大屋根の開放側への回動に伴うローラの転動を許容し、大屋根の閉鎖側への回動に伴うローラの転動を阻止するワンウェイクラッチ機構が設けられていることを特徴とする。
【0011】
このグランドピアノの大屋根支持装置によれば、一方の手で大屋根を持ち上げると同時に他方の手で大屋根突き揚げ棒を持ち上げ、大屋根の裏面にローラを当接させた状態を保ちながら、大屋根および大屋根突き揚げ棒を持ち上げることによって、大屋根を開放する。その際、ローラが大屋根の裏面上を転動する。したがって、大屋根を持ち上げる力の一部を大屋根突き揚げ棒で支持しながら、大屋根を開放するので、大屋根を容易に開放することができる。また、このローラは、大屋根が閉鎖側に回動する際には、ローラの転動がワンウェイクラッチ機構によって阻止されるので、大屋根突き揚げ棒が下方へ回動できなくなり、それに伴い、大屋根突き揚げ棒に支持された大屋根もまた閉鎖側へ回動できなくなる。したがって、大屋根の開放の途中または閉鎖の途中で大屋根突き揚げ棒または大屋根を支える力を緩めたり、手を離したりしても、その角度で大屋根を係止できるため、大屋根が自重によって急激に閉じてしまうことがなくなり、これに起因する大屋根や側板などの損傷を防止することができる。
【0012】
さらに、大屋根を所望の角度まで開放した後、大屋根および大屋根突き揚げ棒から手を離すことによって、大屋根を所望の任意の角度で開放することができる。また、従来の大屋根突き揚げ棒の先端部にローラを設けただけの単純な構成であるため、安価に製造できる。さらに、ギヤジャッキを用いる従来の大屋根支持装置と異なり、大屋根および大屋根突き揚げ棒を手で直接持ち上げるため、大屋根を短時間で開放することができる。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のグランドピアノの大屋根支持装置において、大屋根突き揚げ棒の支点付近に設けられ、大屋根突き揚げ棒の下方への回動を制動するロータリーダンパをさらに備えることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、ローラが大屋根から大きく離れた場合や、ローラの破損によってワンウェイクラッチ機構の機能が損なわれた場合においても、ロータリーダンパによって、大屋根突き揚げ棒が制動されることで、大屋根突き揚げ棒が緩やかに下方に回動するので、大屋根は急激に閉じることがなくなり、大屋根や側板の損傷を確実に防止することができる。
【0015】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載のグランドピアノの大屋根支持装置において、ローラの外周部は、摩擦性を有する材料で構成されていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、ローラが有する高い摩擦性によって、ローラが大屋根に対して滑りにくくなるので、大屋根の開閉の際、大屋根突き揚げ棒による大屋根の支持および係止を、より安定した状態で確実に行うことができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1実施形態による大屋根支持装置を含むグランドピアノ1を示している。同図に示すように、大屋根2は、従来と同様、大屋根後3と、大屋根後3に対して後方に折りたたみ自在の大屋根前4で構成されている。また、大屋根2は、ラワン合板などで構成されており、その表面には、例えばポリエステル樹脂による塗装が施されている。一方、側板6は、これに内蔵されたフレームや響板(いずれも図示せず)などとともに、ピアノ本体を構成している。大屋根後3は、その低音側端部において、支点としての前後の蝶番5(1つのみ図示)を介して、側板6の内側面の所定の位置に回動自在に取り付けられている。ピアノ本体には、大屋根2を開放状態で支持するための大屋根支持装置11が設けられている。
【0018】
図2および図3に示すように、本発明に係る大屋根支持装置11は、大屋根突き揚げ棒12、ローラ機構13およびロータリーダンパ14を備えている。大屋根突き揚げ棒12は、その基端部12aにおいて、側板6の高音部側の内側面に取り付けられたロータリーダンパ14の支軸7(支点)を介して、前後方向の軸線回りに回動自在に取り付けられており、この基端部12aから先端部12bに向かって延びている。
【0019】
大屋根突き揚げ棒12の先端部12bには、ローラ機構13が取り付けられている。このローラ機構13は、一対のローラ15,15およびT字形の取付部材16で構成されている。この取付部材16は、前後方向に延びるローラ軸部16aと、その中央から垂直に延びる連結部16bで構成されており、この連結部16bが、大屋根突き揚げ棒12の先端部12bの端面に形成された開口(図示せず)に差し込まれた状態で、これに固定されている。ローラ15,15は、貫通した孔15aを有するリング状のものであり、この孔15aを介して、ローラ軸部16aの両側部にそれぞれ嵌め込まれている。また、各ローラ15の外周面には、高摩擦性部材17が巻かれており、この高摩擦性部材17は、高い摩擦性を有する材料(例えばシリコンゴム、ウレタンゴムまたはネオプレンゴム)で構成されている。
【0020】
また、ローラ15は、ワンウェイクラッチ機構(図示せず)を内蔵した市販のものである。このワンウェイクラッチ機構は、ローラ軸部16aに対するローラ15の所定の一方向への回転を許容する一方、逆方向への回転を阻止するように構成されており、各ローラ15は、ローラ軸部16aに、図2(a)のA方向には回転可能で、B方向には回転不能になるように取り付けられている。
【0021】
ロータリーダンパ14は、例えば市販の油圧式のものであり、図3(b)に示すように、円筒形のケーシング18と、このケーシング18から突出する支軸7と、ケーシング18に対して一体のつば状の取付部19で構成されている。支軸7は、ケーシング18に回転自在に取り付けられており、楕円形の断面を有している。取付部19には、取付用の2つの孔(図示せず)が形成されている。ケーシング18の内部には、オイル(図示せず)が充填されており、ロータリーダンパ14は、このオイルの油圧によって、支軸7が所定の一方向に回転するときのみ制動を加え、逆方向への回転に対しては制動を行わない、すなわち無負荷になるように構成されている。
【0022】
一方、側板6の高音部側の内側面には、取付板20が金具(図示せず)などによって取り付けられている。また、この取付板20の後ろ側の側面には、円形の凹部21が形成されている。そして、ロータリーダンパ14は、ケーシング18を凹部21に嵌め込んだ状態で、ねじ22,22を取付部19の孔を介して取付板20にねじ込むことによって、取付板20に固定されている。また、大屋根突き揚げ棒12の基端部12aの前側の側面には、支軸7に対応する楕円形の軸穴12cが形成されており、大屋根突き揚げ棒12は、この軸穴12cを支軸7に嵌め込むことによって、支軸7に回動不能に連結されている。ロータリーダンパ14は、大屋根突き揚げ棒12が図3(a)のC方向に回動するときのみ制動を加えるように、取り付けられている。
【0023】
また、側板6の高音部側の内側面には、押え板23が、取付板20との間に大屋根突き揚げ棒12を挟持するように、金具(図示せず)などによって取り付けられている。この押え板23には、前後方向に貫通した孔24が形成されるとともに、支持具25が設けられている。また、大屋根突き揚げ棒12の基端部12aの後ろ側の側面には、軸穴12dが、軸穴12cと同心状に形成されている。支持具25は、ヘッド25aおよびこのヘッド25aから突出する支軸25bで構成されており、ヘッド25aには、取付用の2つの孔(図示せず)が形成されている。
【0024】
そして、支持具25は、その支軸25bを孔24および軸穴12dに嵌め込んだ状態で、ねじ26,26をヘッド25aの孔を介して押え板23にねじ込むことによって、押え板23に固定されている。これにより、大屋根突き揚げ棒12は、支持具25の支軸25bに板止め状態で回動自在に支持されている。なお、大屋根突き揚げ棒12は、大屋根2の大きな重量を支えるため、高い剛性を有する材料、例えば金属で補強した木材などで構成することが好ましい。
【0025】
次に、上記の構成の大屋根支持装置11による大屋根2の開閉動作を、図4を参照しながら説明する。同図(a)に示すように、大屋根2が閉鎖した状態では、大屋根突き揚げ棒12はフレーム(図示せず)の上に水平に載置されている。この閉鎖状態から大屋根2を開放する場合には、一方の手で大屋根2の高音部側を持ち上げると同時に他方の手で大屋根突き揚げ棒12を持ち上げ、大屋根2の裏面にローラ15を当接させた状態を保ち、ローラ15を転動させながら、大屋根2および大屋根突き揚げ棒12を持ち上げる(同図(b)のD方向およびE方向)。このように、ローラ15を転動させながら大屋根2および大屋根突き揚げ棒12を持ち上げることによって、大屋根2を開放するので、大屋根2を持ち上げる力の一部を大屋根突き揚げ棒12で支持しながら、大屋根2を開放することができる。したがって、大屋根2を容易に開放することができる。
【0026】
そして、所望の開放角度に達したときに、大屋根2および大屋根突き揚げ棒12から手を離す(同図(c)参照)。それにより、大屋根2は重力によって閉鎖側に回動しようとするが、その場合、ローラ15のワンウェイクラッチ機構によって、大屋根2に対するローラ15の転動が阻止されるので、大屋根突き揚げ棒12が下方に回動できなくなり、それに伴い、大屋根突き揚げ棒12に支持された大屋根2もまた閉鎖側に回動できなくなる。したがって、大屋根2および大屋根突き揚げ棒12を所望の角度まで開放した後、手を離すことによって、大屋根2をその開放角度に保持することができる。
【0027】
次に、大屋根2を閉鎖する場合には、一方の手で大屋根突き揚げ棒12を支えた状態で、他方の手で大屋根2をわずかに持ち上げることによって、ローラ15による大屋根2の係止状態を解除し、大屋根突き揚げ棒12を少し下方に回動させ、その後再び大屋根2をローラ15に当接させる。このような操作を繰り返すことによって、大屋根2を容易に閉鎖することができる。
【0028】
また、大屋根2の開閉の途中で、大屋根2および大屋根突き揚げ棒12を支える力を緩めたり、手を離したりしても、ローラ15のワンウェイクラッチ機構により、その角度で大屋根2を係止することができる。これにより、大屋根2が自重によって急激に閉じてしまうことがなくなり、これに起因する大屋根2および側板6の損傷を防止することができる。
【0029】
さらに、高摩擦性部材17による高い摩擦性によって、ローラ15は大屋根2の裏面に対して滑りにくくなるので、大屋根2の開閉の際、大屋根突き揚げ棒12の支持および係止を、より安定した状態で確実に行うことができる。また、ローラ15のワンウェイクラッチ機構の機能が損なわれた場合や、ローラ15が大屋根2から大きく離れた場合でも、ロータリーダンパ14の作用によって、大屋根突き揚げ棒12は緩やかに下方に回動するため、大屋根2が急激に閉じることがなくなり、大屋根2や側板6の損傷を確実に防止することができる。
【0030】
また、従来一般の大屋根突き揚げ棒に市販のロータリーダンパ14およびローラ15を取り付けただけの単純な構成であるため、安価に製造できる。さらに、ギヤジャッキ61を用いる従来の大屋根支持装置と異なり、大屋根2および大屋根突き揚げ棒12を手で直接持ち上げるので、大屋根2を短時間で開放することができる。
【0031】
図5は、本発明の第2実施形態による大屋根支持装置31を示している。同図において、第1実施形態と同じ構成の部分については、同じ符号を用いて示している。この大屋根支持装置31は、第1実施形態と比較して、大屋根突き揚げ棒32の先端部33の形状およびローラ15の個数が異なるものである。同図に示すように、この大屋根突き揚げ棒32の先端部33には二股状の腕部34,34が設けられており、各腕部34には貫通した孔34aが形成されている。この孔34a,34aに、ローラ軸35の両端部が嵌め込まれ、これに固定されている。ローラ軸35の中央には、ローラ15が嵌め込まれている。このローラ15は、第1実施形態で用いたのと同様に構成されており、ワンウェイクラッチ機構を有するものである。
【0032】
したがって、本発明の第2実施形態においても、前述した第1実施形態による効果を同様に得ることができる。これに加えて、大屋根突き揚げ棒32の先端部33に1つのローラ15が取り付けられているので、2つのローラ15,15を使用する第1実施形態よりも、製造コストを削減することができる。
【0033】
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、説明した実施形態は、ローラ15付きの大屋根突き揚げ棒12,32を一本だけ用いた例であるが、大屋根2を低角度において確実に支持するために、従来の突き揚げ棒受け皿51および大屋根突き揚げ棒(小)52cを併用してもよく、さらに、大屋根突き揚げ棒(小)52cにローラ15やロータリーダンパ14を取り付けてもよい。また、大屋根2をより確実に支持するために、ローラ軸部16aを軸線方向に延ばし、これに3個以上のローラ15を取り付けてもよい。また、実施形態は、本発明をグランドピアノに適用した例であるが、本発明を、大屋根を有するグランドピアノ型の電子ピアノに適用してもよい。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
【0034】
【発明の効果】
以上のように、本発明のグランドピアノの大屋根支持装置によれば、安価かつ単純に構成でき、短時間で開閉できるとともに、大屋根を任意の開放角度で確実に支持することができるなどの効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態による大屋根支持装置を含むグランドピアノを示す斜視図ある。
【図2】第1実施形態による大屋根突き揚げ棒の先端部の構成を示す(a)斜視図および(b)側面図である。
【図3】図2の大屋根突き揚げ棒の基端部付近の構成を示す(a)正面図および(b)部分破断平面図である。
【図4】図1のグランドピアノの(a)閉鎖状態、(b)開放操作の途中の状態、および(c)開放状態を示す正面図である。
【図5】本発明の第2実施形態による大屋根突き揚げ棒の先端部の構成を示す(a)正面図および(b)側面図である。
【図6】従来の一般的なグランドピアノの大屋根支持装置を、大屋根の(a)大開放状態、(b)閉鎖状態、および(c)小開放状態において示す正面図である。
【図7】ギヤジャッキを使用した従来の大屋根支持装置を概略的に示す正面図である。
【符号の説明】
1 グランドピアノ
2 大屋根
5 蝶番(側板の支点)
6 側板
7 支軸(大屋根突き揚げ棒の支点)
11 大屋根支持装置
12 大屋根突き揚げ棒
12a 基端部
12b 先端部
14 ロータリーダンパ
15 ローラ
17 高摩擦性部材(摩擦性を有する材料)
【発明の属する技術分野】
本発明は、側板に回動自在に取り付けられた大屋根を支持するためのグランドピアノの大屋根支持装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図6は、従来の一般的な大屋根支持装置を備えたグランドピアノを示している。このグランドピアノ50の大屋根2は、一般にラワン合板などからなり、大屋根後3と、大屋根後3に対して後方に折りたたみ自在の大屋根前(図示せず)とで構成されている。大屋根後3は、その低音側端部が、蝶番5を介して、側板6に回動自在に取り付けられており、裏面の所定位置には、2つの突き揚げ棒受け皿51,51が左右方向に並んで設けられている。一方、側板6は、内蔵したフレームや響板(いずれも図示せず)などとともにピアノ本体を構成しており、高音部側の内面には、互いに異なる長さの大中小の大屋根突き揚げ棒52a,52b,52cの各一端部が、支軸53を介して回動自在に取り付けられている。
【0003】
以上の構成により、例えば、ピアノの非使用時や練習時には、図6(b)に示すように、側板6の内部機構を保護すべく、大屋根突き揚げ棒52a〜52cはすべて折りたたまれ、大屋根2は閉じた状態とされる。一方、演奏会においてピアノを独奏する場合などには、大屋根2の高音部側を持ち上げた状態で、大屋根突き揚げ棒(大)52aを起こし、その先端部を中央よりの突き揚げ棒受け皿51に係合させることによって、大屋根2は、大きな角度で傾斜した大開放位置(同図(a)の位置)に保持される。また、他の楽器とのアンサンブル演奏を行う場合などには、共演者が見えるようにするために、大屋根突き揚げ棒(中)52bまたは大屋根突き揚げ棒(小)52cを、側板6寄りの突き揚げ受け皿51に係合させることによって、大屋根2は、より小さな角度で傾斜した中開放位置または小開放位置に保持される(同図(c)参照)。
【0004】
しかし、上記の従来のグランドピアノでは、大屋根2の端部が蝶番5を介して単純に取り付けられているだけなので、大屋根2を開閉するのに、一方の手で大屋根2を支えながら、他方の手で大屋根突き揚げ棒52a〜52cを操作しなければならない。一方、大屋根2は、面積がかなり大きく、フルコンサートピアノでは総重量が40〜50kgにも及ぶ。このため、女性や子供の力では大屋根2を容易に開閉できないとともに、開閉操作の途中で支えきれなくなることで、大屋根2が自重で勢いよく閉じてしまい、大屋根2や側板6を損傷させるなどの不具合が生じるおそれがある。特に、大屋根2を大開放位置から閉鎖する場合には、その間、大屋根2を片手で持ち続け、ゆっくり閉じながら、大屋根突き揚げ棒(大)52aを折りたたむことが必要になるとともに、大屋根2が高音部側からかなり遠い位置にあって、無理な姿勢で操作することになるため、上記のような不具合が生じやすくなる。
【0005】
このため、このような不具合を解消するための大屋根支持装置が、従来から提案されており、例えば、特許文献1に開示されている。なお、以下の説明では、図6のグランドピアノ50と同一の構成部品については、同じ参照番号を用いるものとする。図7に示すように、この大屋根支持装置はギヤジャッキ61で構成されており、このギヤジャッキ61は、グランドピアノ60のピアノ本体内の支柱62に固定されたジャッキ本体61aと、このジャッキ本体61aから上下方向に延び、外周面にねじ63aが形成され、上端部にローラ64が設けられたロッド63を備えており、ローラ64は大屋根2の裏面に当接している。ジャッキ本体61aの内部には、ロッド63のねじ63aに噛み合う雌ねじ(図示せず)を有し、ジャッキ本体61aに対して回転自在かつ上下方向に移動不能のウオームホイールと、このウオームホイールの外周面に形成した歯と噛み合うウオームが形成された駆動軸(いずれも図示せず)が設けられている。この駆動軸は、演奏者の付近に設けられたハンドル(図示せず)に一体に連結されている。
【0006】
以上の構成により、ハンドルを一方の方向に回すと、駆動軸が回転するのに伴い、ウオームホイールが回転することで、ロッド63が上昇し、ローラ64を介して大屋根2を突き揚げることによって、大屋根2が開放される。また、ハンドルを開放時とは逆方向に回すことにより、ロッド63が下降し、大屋根2が閉鎖される。したがって、大屋根2を任意の角度に開放できるとともに、大屋根2が開閉の途中で、自重によって勢い良く閉じることがなくなる。また、ギヤジャッキ61のウオームおよびウオームホイールによって減速されるため、ハンドルを小さな操作力で回すことができる。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−195055号公報(第3頁、第2〜3図)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このように、特許文献1に記載の従来の大屋根支持装置によれば、ギヤジャッキ61による減速によって、ハンドルを小さな操作力で回しながら大屋根2を開放することができる。しかし、この減速によって、大屋根2を前述した大開放位置まで開放するには、ハンドルを何度も回す必要があり、時間を要してしまう。このような不具合を解消するために、例えばギヤジャッキ61を蝶番5により近い位置に配置することによって、大開放位置までのロッド63のストロークを短くし、ハンドルを回す回数を減少させることが考えられる。しかし、その場合には、大屋根2の支点に近い部分を突き揚げるため、ハンドルの操作力が大きくなってしまう。また、図6に示したような一般的なグランドピアノでは、大屋根突き揚げ棒52a〜52cが斜めの状態で大屋根2を支持するのに対し、この従来の大屋根支持装置では、ロッド63が上方にまっすぐ突出するため、観客が違和感を生じるなど、外観が損なわれる。また、ギヤジャッキ61が多くの部品を有し、構成も複雑であるため、製造コストが上昇する。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、安価かつ単純に構成でき、短時間で開閉できるとともに、大屋根を任意の開放角度で確実に支持することができるグランドピアノの大屋根支持装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、請求項1に係る発明は、側板に支点を中心として回動自在に取り付けられた大屋根を開放状態で支持するためのグランドピアノの大屋根支持装置であって、基端部が側板の支点と反対側に位置する支点に前後方向の軸線回りに回動自在に取り付けられ、開放された大屋根を先端部で支持するための大屋根突き揚げ棒と、大屋根突き揚げ棒の先端部に転動自在に設けられ、大屋根突き揚げ棒で大屋根を支持した状態において、大屋根の裏面に当接するローラと、を備え、ローラには、大屋根の開放側への回動に伴うローラの転動を許容し、大屋根の閉鎖側への回動に伴うローラの転動を阻止するワンウェイクラッチ機構が設けられていることを特徴とする。
【0011】
このグランドピアノの大屋根支持装置によれば、一方の手で大屋根を持ち上げると同時に他方の手で大屋根突き揚げ棒を持ち上げ、大屋根の裏面にローラを当接させた状態を保ちながら、大屋根および大屋根突き揚げ棒を持ち上げることによって、大屋根を開放する。その際、ローラが大屋根の裏面上を転動する。したがって、大屋根を持ち上げる力の一部を大屋根突き揚げ棒で支持しながら、大屋根を開放するので、大屋根を容易に開放することができる。また、このローラは、大屋根が閉鎖側に回動する際には、ローラの転動がワンウェイクラッチ機構によって阻止されるので、大屋根突き揚げ棒が下方へ回動できなくなり、それに伴い、大屋根突き揚げ棒に支持された大屋根もまた閉鎖側へ回動できなくなる。したがって、大屋根の開放の途中または閉鎖の途中で大屋根突き揚げ棒または大屋根を支える力を緩めたり、手を離したりしても、その角度で大屋根を係止できるため、大屋根が自重によって急激に閉じてしまうことがなくなり、これに起因する大屋根や側板などの損傷を防止することができる。
【0012】
さらに、大屋根を所望の角度まで開放した後、大屋根および大屋根突き揚げ棒から手を離すことによって、大屋根を所望の任意の角度で開放することができる。また、従来の大屋根突き揚げ棒の先端部にローラを設けただけの単純な構成であるため、安価に製造できる。さらに、ギヤジャッキを用いる従来の大屋根支持装置と異なり、大屋根および大屋根突き揚げ棒を手で直接持ち上げるため、大屋根を短時間で開放することができる。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のグランドピアノの大屋根支持装置において、大屋根突き揚げ棒の支点付近に設けられ、大屋根突き揚げ棒の下方への回動を制動するロータリーダンパをさらに備えることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、ローラが大屋根から大きく離れた場合や、ローラの破損によってワンウェイクラッチ機構の機能が損なわれた場合においても、ロータリーダンパによって、大屋根突き揚げ棒が制動されることで、大屋根突き揚げ棒が緩やかに下方に回動するので、大屋根は急激に閉じることがなくなり、大屋根や側板の損傷を確実に防止することができる。
【0015】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載のグランドピアノの大屋根支持装置において、ローラの外周部は、摩擦性を有する材料で構成されていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、ローラが有する高い摩擦性によって、ローラが大屋根に対して滑りにくくなるので、大屋根の開閉の際、大屋根突き揚げ棒による大屋根の支持および係止を、より安定した状態で確実に行うことができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1実施形態による大屋根支持装置を含むグランドピアノ1を示している。同図に示すように、大屋根2は、従来と同様、大屋根後3と、大屋根後3に対して後方に折りたたみ自在の大屋根前4で構成されている。また、大屋根2は、ラワン合板などで構成されており、その表面には、例えばポリエステル樹脂による塗装が施されている。一方、側板6は、これに内蔵されたフレームや響板(いずれも図示せず)などとともに、ピアノ本体を構成している。大屋根後3は、その低音側端部において、支点としての前後の蝶番5(1つのみ図示)を介して、側板6の内側面の所定の位置に回動自在に取り付けられている。ピアノ本体には、大屋根2を開放状態で支持するための大屋根支持装置11が設けられている。
【0018】
図2および図3に示すように、本発明に係る大屋根支持装置11は、大屋根突き揚げ棒12、ローラ機構13およびロータリーダンパ14を備えている。大屋根突き揚げ棒12は、その基端部12aにおいて、側板6の高音部側の内側面に取り付けられたロータリーダンパ14の支軸7(支点)を介して、前後方向の軸線回りに回動自在に取り付けられており、この基端部12aから先端部12bに向かって延びている。
【0019】
大屋根突き揚げ棒12の先端部12bには、ローラ機構13が取り付けられている。このローラ機構13は、一対のローラ15,15およびT字形の取付部材16で構成されている。この取付部材16は、前後方向に延びるローラ軸部16aと、その中央から垂直に延びる連結部16bで構成されており、この連結部16bが、大屋根突き揚げ棒12の先端部12bの端面に形成された開口(図示せず)に差し込まれた状態で、これに固定されている。ローラ15,15は、貫通した孔15aを有するリング状のものであり、この孔15aを介して、ローラ軸部16aの両側部にそれぞれ嵌め込まれている。また、各ローラ15の外周面には、高摩擦性部材17が巻かれており、この高摩擦性部材17は、高い摩擦性を有する材料(例えばシリコンゴム、ウレタンゴムまたはネオプレンゴム)で構成されている。
【0020】
また、ローラ15は、ワンウェイクラッチ機構(図示せず)を内蔵した市販のものである。このワンウェイクラッチ機構は、ローラ軸部16aに対するローラ15の所定の一方向への回転を許容する一方、逆方向への回転を阻止するように構成されており、各ローラ15は、ローラ軸部16aに、図2(a)のA方向には回転可能で、B方向には回転不能になるように取り付けられている。
【0021】
ロータリーダンパ14は、例えば市販の油圧式のものであり、図3(b)に示すように、円筒形のケーシング18と、このケーシング18から突出する支軸7と、ケーシング18に対して一体のつば状の取付部19で構成されている。支軸7は、ケーシング18に回転自在に取り付けられており、楕円形の断面を有している。取付部19には、取付用の2つの孔(図示せず)が形成されている。ケーシング18の内部には、オイル(図示せず)が充填されており、ロータリーダンパ14は、このオイルの油圧によって、支軸7が所定の一方向に回転するときのみ制動を加え、逆方向への回転に対しては制動を行わない、すなわち無負荷になるように構成されている。
【0022】
一方、側板6の高音部側の内側面には、取付板20が金具(図示せず)などによって取り付けられている。また、この取付板20の後ろ側の側面には、円形の凹部21が形成されている。そして、ロータリーダンパ14は、ケーシング18を凹部21に嵌め込んだ状態で、ねじ22,22を取付部19の孔を介して取付板20にねじ込むことによって、取付板20に固定されている。また、大屋根突き揚げ棒12の基端部12aの前側の側面には、支軸7に対応する楕円形の軸穴12cが形成されており、大屋根突き揚げ棒12は、この軸穴12cを支軸7に嵌め込むことによって、支軸7に回動不能に連結されている。ロータリーダンパ14は、大屋根突き揚げ棒12が図3(a)のC方向に回動するときのみ制動を加えるように、取り付けられている。
【0023】
また、側板6の高音部側の内側面には、押え板23が、取付板20との間に大屋根突き揚げ棒12を挟持するように、金具(図示せず)などによって取り付けられている。この押え板23には、前後方向に貫通した孔24が形成されるとともに、支持具25が設けられている。また、大屋根突き揚げ棒12の基端部12aの後ろ側の側面には、軸穴12dが、軸穴12cと同心状に形成されている。支持具25は、ヘッド25aおよびこのヘッド25aから突出する支軸25bで構成されており、ヘッド25aには、取付用の2つの孔(図示せず)が形成されている。
【0024】
そして、支持具25は、その支軸25bを孔24および軸穴12dに嵌め込んだ状態で、ねじ26,26をヘッド25aの孔を介して押え板23にねじ込むことによって、押え板23に固定されている。これにより、大屋根突き揚げ棒12は、支持具25の支軸25bに板止め状態で回動自在に支持されている。なお、大屋根突き揚げ棒12は、大屋根2の大きな重量を支えるため、高い剛性を有する材料、例えば金属で補強した木材などで構成することが好ましい。
【0025】
次に、上記の構成の大屋根支持装置11による大屋根2の開閉動作を、図4を参照しながら説明する。同図(a)に示すように、大屋根2が閉鎖した状態では、大屋根突き揚げ棒12はフレーム(図示せず)の上に水平に載置されている。この閉鎖状態から大屋根2を開放する場合には、一方の手で大屋根2の高音部側を持ち上げると同時に他方の手で大屋根突き揚げ棒12を持ち上げ、大屋根2の裏面にローラ15を当接させた状態を保ち、ローラ15を転動させながら、大屋根2および大屋根突き揚げ棒12を持ち上げる(同図(b)のD方向およびE方向)。このように、ローラ15を転動させながら大屋根2および大屋根突き揚げ棒12を持ち上げることによって、大屋根2を開放するので、大屋根2を持ち上げる力の一部を大屋根突き揚げ棒12で支持しながら、大屋根2を開放することができる。したがって、大屋根2を容易に開放することができる。
【0026】
そして、所望の開放角度に達したときに、大屋根2および大屋根突き揚げ棒12から手を離す(同図(c)参照)。それにより、大屋根2は重力によって閉鎖側に回動しようとするが、その場合、ローラ15のワンウェイクラッチ機構によって、大屋根2に対するローラ15の転動が阻止されるので、大屋根突き揚げ棒12が下方に回動できなくなり、それに伴い、大屋根突き揚げ棒12に支持された大屋根2もまた閉鎖側に回動できなくなる。したがって、大屋根2および大屋根突き揚げ棒12を所望の角度まで開放した後、手を離すことによって、大屋根2をその開放角度に保持することができる。
【0027】
次に、大屋根2を閉鎖する場合には、一方の手で大屋根突き揚げ棒12を支えた状態で、他方の手で大屋根2をわずかに持ち上げることによって、ローラ15による大屋根2の係止状態を解除し、大屋根突き揚げ棒12を少し下方に回動させ、その後再び大屋根2をローラ15に当接させる。このような操作を繰り返すことによって、大屋根2を容易に閉鎖することができる。
【0028】
また、大屋根2の開閉の途中で、大屋根2および大屋根突き揚げ棒12を支える力を緩めたり、手を離したりしても、ローラ15のワンウェイクラッチ機構により、その角度で大屋根2を係止することができる。これにより、大屋根2が自重によって急激に閉じてしまうことがなくなり、これに起因する大屋根2および側板6の損傷を防止することができる。
【0029】
さらに、高摩擦性部材17による高い摩擦性によって、ローラ15は大屋根2の裏面に対して滑りにくくなるので、大屋根2の開閉の際、大屋根突き揚げ棒12の支持および係止を、より安定した状態で確実に行うことができる。また、ローラ15のワンウェイクラッチ機構の機能が損なわれた場合や、ローラ15が大屋根2から大きく離れた場合でも、ロータリーダンパ14の作用によって、大屋根突き揚げ棒12は緩やかに下方に回動するため、大屋根2が急激に閉じることがなくなり、大屋根2や側板6の損傷を確実に防止することができる。
【0030】
また、従来一般の大屋根突き揚げ棒に市販のロータリーダンパ14およびローラ15を取り付けただけの単純な構成であるため、安価に製造できる。さらに、ギヤジャッキ61を用いる従来の大屋根支持装置と異なり、大屋根2および大屋根突き揚げ棒12を手で直接持ち上げるので、大屋根2を短時間で開放することができる。
【0031】
図5は、本発明の第2実施形態による大屋根支持装置31を示している。同図において、第1実施形態と同じ構成の部分については、同じ符号を用いて示している。この大屋根支持装置31は、第1実施形態と比較して、大屋根突き揚げ棒32の先端部33の形状およびローラ15の個数が異なるものである。同図に示すように、この大屋根突き揚げ棒32の先端部33には二股状の腕部34,34が設けられており、各腕部34には貫通した孔34aが形成されている。この孔34a,34aに、ローラ軸35の両端部が嵌め込まれ、これに固定されている。ローラ軸35の中央には、ローラ15が嵌め込まれている。このローラ15は、第1実施形態で用いたのと同様に構成されており、ワンウェイクラッチ機構を有するものである。
【0032】
したがって、本発明の第2実施形態においても、前述した第1実施形態による効果を同様に得ることができる。これに加えて、大屋根突き揚げ棒32の先端部33に1つのローラ15が取り付けられているので、2つのローラ15,15を使用する第1実施形態よりも、製造コストを削減することができる。
【0033】
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、説明した実施形態は、ローラ15付きの大屋根突き揚げ棒12,32を一本だけ用いた例であるが、大屋根2を低角度において確実に支持するために、従来の突き揚げ棒受け皿51および大屋根突き揚げ棒(小)52cを併用してもよく、さらに、大屋根突き揚げ棒(小)52cにローラ15やロータリーダンパ14を取り付けてもよい。また、大屋根2をより確実に支持するために、ローラ軸部16aを軸線方向に延ばし、これに3個以上のローラ15を取り付けてもよい。また、実施形態は、本発明をグランドピアノに適用した例であるが、本発明を、大屋根を有するグランドピアノ型の電子ピアノに適用してもよい。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
【0034】
【発明の効果】
以上のように、本発明のグランドピアノの大屋根支持装置によれば、安価かつ単純に構成でき、短時間で開閉できるとともに、大屋根を任意の開放角度で確実に支持することができるなどの効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態による大屋根支持装置を含むグランドピアノを示す斜視図ある。
【図2】第1実施形態による大屋根突き揚げ棒の先端部の構成を示す(a)斜視図および(b)側面図である。
【図3】図2の大屋根突き揚げ棒の基端部付近の構成を示す(a)正面図および(b)部分破断平面図である。
【図4】図1のグランドピアノの(a)閉鎖状態、(b)開放操作の途中の状態、および(c)開放状態を示す正面図である。
【図5】本発明の第2実施形態による大屋根突き揚げ棒の先端部の構成を示す(a)正面図および(b)側面図である。
【図6】従来の一般的なグランドピアノの大屋根支持装置を、大屋根の(a)大開放状態、(b)閉鎖状態、および(c)小開放状態において示す正面図である。
【図7】ギヤジャッキを使用した従来の大屋根支持装置を概略的に示す正面図である。
【符号の説明】
1 グランドピアノ
2 大屋根
5 蝶番(側板の支点)
6 側板
7 支軸(大屋根突き揚げ棒の支点)
11 大屋根支持装置
12 大屋根突き揚げ棒
12a 基端部
12b 先端部
14 ロータリーダンパ
15 ローラ
17 高摩擦性部材(摩擦性を有する材料)
Claims (3)
- 側板に支点を中心として回動自在に取り付けられた大屋根を開放状態で支持するためのグランドピアノの大屋根支持装置であって、
基端部が前記側板の前記支点と反対側に位置する支点に前後方向の軸線回りに回動自在に取り付けられ、開放された前記大屋根を先端部で支持するための大屋根突き揚げ棒と、
当該大屋根突き揚げ棒の前記先端部に転動自在に設けられ、当該大屋根突き揚げ棒で前記大屋根を支持した状態において、当該大屋根の裏面に当接するローラと、を備え、
当該ローラには、前記大屋根の開放側への回動に伴う前記ローラの転動を許容し、前記大屋根の閉鎖側への回動に伴う前記ローラの転動を阻止するワンウェイクラッチ機構が設けられていることを特徴とするグランドピアノの大屋根支持装置。 - 前記大屋根突き揚げ棒の前記支点付近に設けられ、前記大屋根突き揚げ棒の下方への回動を制動するロータリーダンパをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のグランドピアノの大屋根支持装置。
- 前記ローラの外周部は、摩擦性を有する材料で構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のグランドピアノの大屋根支持装置。
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