JP2004354185A - ドップラ式超音波流量計に用いる気泡発生装置およびドップラ式超音波流量計 - Google Patents

ドップラ式超音波流量計に用いる気泡発生装置およびドップラ式超音波流量計 Download PDF

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Abstract

【目的】ドップラ式超音波流量計の性能を最大限に引き出すための気泡発生装置を提供する。
【構成】被測定流体内へ照射する超音波パルスの所要周波数に適した気泡を発生させて流体管内へ送り込む気泡発生機能部と、送り込んだ気泡を管内において均一に分散させるための均一分散機能部とを備え、超音波トランスデューサに対して流体配管の上流側に設置した気泡発生装置とする。気泡発生機能部は、気泡を流体管内へ送り込むベンチュリ管を含み、均一分散機能部は、超音波トランスデューサよりも上流側に設置した負圧発生装置を含み、均一分散機能部によって流体管内から引き出される被測定流体は、ベンチュリ管を介して流体管内へ送り込まれる気泡とともに流体管内へ戻す。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、測定領域の流速分布から被測定流体の流量を時間依存で瞬時に測定することが可能なドップラ式超音波流量計およびそれに関連する技術に関する。
【0002】
【先行技術】
特開2000−97742号では、非定常状態の流れであっても時間依存で正確に精度高く非接触で測定可能なドップラ式超音波流量計が開示されている。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−97742号公報
【0004】
ここで開示されるドップラ式超音波流量計は、以下のような構成をなす。すなわち、所要周波数の超音波パルスを超音波トランスジューサから測定線に沿って被測定流体中に入射させる超音波送信手段と、被測定流体に入射された超音波パルスのうち測定領域から反射された超音波エコーを受信し、測定領域における被測定流体の流速分布を測定する流体速度分布測定手段と、上記被測定流体の流速分布に基づいて、積分演算を行う流量演算手段とを備えたものである。そして、流量演算手段は測定領域における被測定流体の流速分布に基づいて流量を計測する。
【0005】
このドップラ式超音波流量計は、配管内を流れる被測定流体の流速分布を測定し、時間的に変動する過渡時の流量を応答性に優れている。また、流体の流れが充分に発達していない箇所や流れが三次元になっている場所、例えばエルボ配管やU字状の反転配管のように曲げられた配管の直後でも、被測定流体の流量を効率的に精度よく瞬時に測定できる。それ以前に提供されていた超音波流量計と比較した場合、実験値や経験値などから割り出された「流量補正係数」がなくても正確な測定が可能であるという特徴があり、大きく評価されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
さて、上述のドップラ式超音波流量計が超音波パルスのドップラー効果を利用して流速分布(流量)を計測する場合、ドップラーシフトを起こすための反射体が流体中に必要である。この反射体が流体中に存在しない場合、計測することは出来ない。また、この反射体が流体中に均一に混入されていない場合、流速分布が欠損し、正確な流速分布を得ることができない。
【0007】
被測定流体が流体(例えば水)の場合、反射体としては音響インピーダンスが大きく異なる空気やヘリウムの様な気体が好ましい。しかし、流体配管内へ挿入したノズルなどを用いて気体を注入したが、被測定流体の内部において測定に用いる超音波の反射に適した大きさとならなければ、十分な反射エコー強度を得ることができなかった。また、超音波パルスの照射方向において気体が均一に分散していなければ、適正な流速分布が得られない。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、被測定流体内へ所要周波数に適した大きさで均一に気泡を注入することによって、反射体を十分に含まない環境下であっても、より正確な流量を計測可能であるようなドップラ式超音波流量計による計測技術を提供することにある。
請求項1から請求項8に記載の発明の目的は、ドップラ式超音波流量計の性能を最大限に引き出すための気泡発生装置を提供することにある。
また、請求項9から請求項11に記載の発明の目的は、性能を最大限に引き出すための気泡発生装置を備えたドップラ式超音波流量計を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記した課題を解決するため、被計測流体が液体である場合に気泡を送り込んで反射体とするアイディアを採用し、そのアイディアを実現するための手段を提供する。
【0010】
(請求項1)
請求項1記載の発明は、所要周波数の超音波パルスを超音波トランスデューサから測定線に沿って流体配管内の被測定流体内へ入射させる超音波送信手段と、
被測定流体に入射された超音波パルスのうち測定領域から反射された超音波エコーを受信し、測定領域における被測定流体の流速分布を測定する流体速度分布測定手段と、 前記被測定流体の流速分布に基づいて、前記測定領域における被測定流体の流量を演算する流量演算手段とを備えて被測定流体の流量を測定するドップラ式超音波流量計に用いる気泡発生装置に係る。
その気泡発生装置は、被測定流体内へ照射する超音波パルスの所要周波数に適した気泡を発生させて流体管内へ送り込む気泡発生機能部と、 送り込んだ気泡を管内において均一に分散させるための均一分散機能部とを備え、 超音波トランスデューサに対して流体配管の上流側に設置される。
【0011】
(用語説明)
「流量演算手段」は、ドップラ式超音波流量計に備えられたものであり、例えば、特開2000−97742号に開示されているドップラ式超音波流量計にいう流量演算手段である。なお、「ドップラシフト法」とは、配管内を流れる流体中に超音波パルスを放射すると、流体中の反射体(気泡)によって反射されて超音波エコーとなり、この超音波エコーの周波数が流速に比例した大きさだけ周波数シフトする原理を応用し、流速を測定する方法である。被測定流体の流速分布信号は、流量演算手段としてのコンピュータに送られ、ここで流速分布信号を配管の半径方向に積分し、被測定流体の流量を時間依存で求めることができる。
【0012】
「気泡発生装置」が流体管内へ送り込む「気泡」は、通常の大気が一般的であるが、被測定流体の種類や計測の種類に応じて、水素など他の気体を採用する場合もある。また、反射体として機能した後には不要となるので、被測定流体に溶けてしまう気体を採用する場合もある。
「被測定流体内へ照射する超音波パルスの所要周波数に適した気泡」とは、気泡の大きさ、単位時間当たりの送り込み量、ベンチュリ管の寸法などについて、超音波パルスの反射体として適した範囲に収まった気泡のことである。例えば、図4の表に、適正値となった組合せを示している。
【0013】
(作用)
気泡発生機能部が、被測定流体内へ照射する超音波パルスの所要周波数に適した気泡を発生させて流体管内へ送り込む。送り込まれた気泡は、均一分散機能部によって管内において均一に分散する。
気泡発生装置は超音波トランスデューサに対して流体配管の上流側に設置されているので、流体管内に送り込まれ均一に分散した気泡は、超音波トランスデューサが被測定流体内へ照射する超音波パルスの反射体として機能する。このため、被測定流体内に適切な反射体が存在しなかったり、反射体が不十分であっても、ドップラ式超音波流量計を使用することができる。
【0014】
以下、ドップラ式超音波流量計による被測定流体の流量測定について説明する。超音波送信手段がトランスデューサによって超音波パルスを測定線に沿って流体配管内の被測定流体内へ入射させると、均一に分散した気泡はその超音波の反射体となり、超音波エコーを発信することとなる。流体速度分布測定手段は、その超音波エコーを受信し、測定領域における被測定流体の流速分布を測定する。前記被測定流体の流速分布に基づいて、前記測定領域における被測定流体の流量を流量演算手段が演算し、被測定流体の流量を測定する。
【0015】
(請求項2)
請求項2記載の発明は、請求項1記載の気泡発生装置を限定したものであり、
気泡発生機能部は、気泡を流体管内へ送り込むベンチュリ管を含み、 均一分散機能部は、超音波トランスデューサよりも上流側に設置した負圧発生装置を含み、 均一分散機能部によって流体管内から引き出される被測定流体は、ベンチュリ管を介して流体管内へ送り込まれる気泡とともに流体管内へ戻すこととした気泡発生装置に係る。
【0016】
(用語説明および作用)
「負圧発生装置」は、被測定流体を引き出すことによって流体管内に送り込まれる気泡を均一に分散させる役割を果たすが、被測定流体を引き出したままでは、被測定流体の流速を遅めてしまうこととなる。一方、気泡発生機能部においては、被測定流体へ空気など気泡の材料となる気体のみを送り込むのは、気泡を適正な大きさにすることが困難である。
そこで、気泡発生機能部には、長手方向の中央付近で流路が狭められる形状をなしている「ベンチュリ管」を採用する。流路が狭められることによって発生する圧力差が、液体中の気泡の大きさを均一化するのに役立つ。また、ベンチュリ管を介して流体管内へ送り込まれる気泡とともに流体管内へ戻すこととした。そのため、ベンチュリ管にて液体と気体とを混合し、気泡発生機能部が気泡を混入した液体として被測定流体へ気泡を送り込むと共に、送り込む液体を負圧発生装置が引き出した被測定流体とすることによって、被測定流体の流速変化への影響を最小限にしている。
【0017】
(請求項3)
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2のいずれかに記載の気泡発生装置を限定したものであり、
気泡発生機能部および均一分散機能部は、流体管の長手方向に垂直な一断面に対して配置し、 気泡発生機能部のベンチュリ管の軸方向は流体管の軸方向と垂直とし、且つ流体管の中心線と交差するように形成したことを特徴とする。
【0018】
(用語説明および作用)
被測定流体に対して流体管の外から気泡を混入させるという機能を追加するためには、流体管の継ぎ目部分へ気泡発生装置を設置することが合理的である。一方、気泡発生機能部および均一分散機能部を異なる継ぎ目部分へ設置することができるほど、短い区間で複数の継ぎ目を有する流体管は稀である。
そこで、気泡発生機能部および均一分散機能部を、流体管の長手方向に垂直な一断面に対して配置することとし、流体管におけるひとつの継ぎ目にて気泡発生装置を設置することができるようにした。また、ベンチュリ管の軸方向を、流体管の軸方向と垂直とし、且つ流体管の中心線と交差するようにすることにより、ベンチュリ管の設置作業を簡単で正確に行えるようにした。
【0019】
(請求項4)
請求項4記載の発明は、請求項3記載の気泡発生装置を限定したものであり、
気泡発生機能部および均一分散機能部の組合せは、複数組とするとともに、その組合せは、配管を中心に対象な位置としたことを特徴とする。
【0020】
(用語説明および作用)
被測定流体の流れる流体管の管径が大きいと、単数の気泡発生機能部では、気泡を管内において均一に分散させることは困難である。そこで、気泡発生機能部および均一分散機能部をそれぞれ複数且つ同数設け、各組合せは、配管を中心に対象な位置となるように形成する。これにより、流体管の管径が大きくても気泡を管内において均一に分散させやすくなる。
なお、管内径が150mm程度では、3組あれば4組以上とした場合に比べて遜色ない測定結果が得られたが、管内径が300mm以上の場合には、5組程度がより望ましいことが、実験的に把握されている。
【0021】
(請求項5)
請求項5記載の発明は、請求項4記載の気泡発生装置を限定したものであり、
気泡発生機能部のベンチュリ管の種類を複数種類としたことを特徴とする。
【0022】
(作用)
ベンチュリ管の種類を複数種類としたことにより、被測定流体の種類や流速、管径などの条件に応じて、適切なベンチュリ管を選択したり組み合わせたりして、流量測定に適した気泡を発生させることが可能となる。
【0023】
(請求項6)
請求項6記載の発明は、請求項1から請求項5に記載の気泡発生装置を限定したものであり、
気泡発生機能部は、気泡を流体管内へ送り込むベンチュリ管を含み、 そのベンチュリ管には、管内径を拡大させた微細気泡発生領域と、 その微細気泡発生領域から流体管に向かって連続して形成した気泡成長領域とを備えた気泡発生装置に係る。
【0024】
(作用)
ベンチュリ管においては、管内径が拡大する範囲において微細気泡が発生し、その微細気泡が発生する領域から流体管に向かう領域(通常は管内径が一定または緩やかに拡大する領域)において気泡が拡大するという事実を、高速度カメラによって本発明者は確認した。このことから、管内径が拡大する微細気泡領域の長さと気泡成長領域の長さとを、流量測定に適した気泡に合わせて選択することができる。
【0025】
(請求項7)
請求項7記載の発明は、請求項6記載の気泡発生装置を限定したものであり、
気泡成長領域は、ベンチュリ管の軸方向長さを変化させることができる可変長構造にて形成した気泡発生装置に係る。
「可変長構造」とは、例えば、気泡成長領域を相対移動可能な二重構造の管として形成し、当該二重構造を相対的に移動させることによってベンチュリ管の軸方向長さを変化させ、気泡成長領域の長短を変化させる構造をいう。
【0026】
(作用)
可変長構造を用いてベンチュリ管の軸方向長さを変化させ、気泡成長領域の長さを変えることができる。そのことにより、流量測定に適した気泡に調整することができる。
【0027】
(請求項8)
請求項8記載の発明は、請求項7記載の気泡発生装置を限定したものであり、
気泡成長領域の軸方向長さデータと、ドップラ式超音波流量計の測定した流体速度分布データまたは流量の計測結果データとを記憶するデータ記憶手段と、 そのデータ記憶手段に基づいて最適軸方向長さを算出する最適長さ演算手段と、
その最適長さ演算手段が算出した最適軸方向長さに基づいて可変長構造におけるベンチュリ管の軸方向長さを制御する最適長さ制御手段とを備えた気泡発生装置に係る。
【0028】
(用語説明)
データ記憶手段は、最適長さ演算手段による演算のために一時的に記憶するRAM(ランダムアクセスメモリ)のみでもよいが、データ蓄積を行うためにハードディスクのように不揮発性のメモリをRAMの他に備えていてもよい。
【0029】
(作用)
気泡成長領域の軸方向長さデータと、ドップラ式超音波流量計の測定した流体速度分布データまたは流量の計測結果データとをデータ記憶手段が記憶する。そのデータ記憶手段に基づいて最適軸方向長さを最適長さ演算手段が算出し、その最適軸方向長さに基づいて可変長構造におけるベンチュリ管の軸方向長さを最適長さ制御部が制御する。
このことによって、流量測定に適した気泡を、自動的に得ることができる。
【0030】
(請求項9)
請求項9記載の発明は、請求項1に記載の気泡発生装置を備えたドップラ式超音波流量計に係る。
すなわち、所要周波数の超音波パルスを超音波トランスデューサから測定線に沿って流体配管内の被測定流体内へ入射させる超音波送信手段と、 被測定流体に入射された超音波パルスのうち測定領域から反射された超音波エコーを受信し、測定領域における被測定流体の流速分布を測定する流体速度分布測定手段と、
前記被測定流体の流速分布に基づいて、前記測定領域における被測定流体の流量を演算する流量演算手段と、 前記超音波トランスデューサの上流側において、被測定流体内へ均一に所要周波数に適した気泡を発生させる気泡発生機能部および送り込んだ気泡を管内において均一に分散させるための均一分散機能部を備えた気泡発生装置とを備え、 その気泡発生装置によって発生させた気泡を用いて流速分布を測定し、被測定流体の流量を測定するドップラ式超音波流量計である。
【0031】
なお、請求項2に記載の気泡発生装置を備えたドップラ式超音波流量計、請求項3に記載の気泡発生装置を備えたドップラ式超音波流量計、請求項4に記載の気泡発生装置を備えたドップラ式超音波流量計、および請求項5に記載の気泡発生装置を備えたドップラ式超音波流量計を提供することは、当然可能である。
念のため、以下に記述する。
【0032】
請求項2に記載の気泡発生装置を備えたドップラ式超音波流量計とは、 気泡発生機能部は、気泡を流体管内へ送り込むベンチュリ管を含み、 均一分散機能部は、超音波トランスデューサよりも上流側に設置した負圧発生装置を含み、 均一分散機能部によって流体管内から引き出される被測定流体は、ベンチュリ管を介して流体管内へ送り込まれる気泡とともに流体管内へ戻すこととしたドップラ式超音波流量計である。
【0033】
請求項3に記載の気泡発生装置を備えたドップラ式超音波流量計とは、 気泡発生機能部および均一分散機能部は、流体管の長手方向に垂直な一断面に対して配置し、 気泡発生機能部のベンチュリ管の軸方向は流体管の軸方向と垂直とし、且つ流体管の中心線と交差するように形成したドップラ式超音波流量計である。
【0034】
請求項4に記載の気泡発生装置を備えたドップラ式超音波流量計とは、 気泡発生機能部および均一分散機能部の組合せは、複数組とするとともに、 その組合せは、配管を中心に対象な位置としたドップラ式超音波流量計である。
【0035】
請求項5に記載の気泡発生装置を備えたドップラ式超音波流量計とは、気泡発生機能部のベンチュリ管の種類を複数種類としたドップラ式超音波流量計である。
【0036】
(請求項10)
請求項10記載の発明は、請求項9に記載のドップラ式超音波流量計を限定したものである。
すなわち、超音波トランスデューサよりも下流側には、気泡発生機能部によって流体管内へ送り込まれる気泡を捕捉する気泡捕捉部を備えたドップラ式超音波流量計に係る。
【0037】
(請求項11)
請求項11記載の発明は、請求項9または請求項10の何れかに記載のドップラ式超音波流量計を限定したものであり、
気泡発生機能部は、気泡を流体管内へ送り込むベンチュリ管を含み、
そのベンチュリ管には、管内径を拡大させた微細気泡発生領域と、
その微細気泡発生領域から流体管に向かって連続して形成した気泡成長領域とを備えた気泡発生装置としたドップラ式超音波流量計に係る。
【0038】
ベンチュリ管については、ベンチュリ管の軸方向長さを変化させることができる可変長構造にて形成した記法成長領域を備えてもよい。また、請求項8に記載するように、最適長さ演算手段や可変長構造におけるベンチュリ管の軸方向長さを制御する最適長さ制御部を備えて形成してもよい。
【0039】
(用語説明および作用)
超音波ドップラ式流量計にとっては、気泡発生機能部によって送り込まれた気泡は、超音波の反射体として機能した以後は何ら役に立たない。被測定流体を移動させるために機能している流体管にとっては、存在しない方がよい場合や、存在しては困る場合もある。そこで、反射体として機能した後の気泡を捕捉する気泡捕捉部を備えたのである。
なお、気泡捕捉部は、従来から提供されている流体中から気泡を取り除く技術のうち、送り込まれた気泡の種類、被測定流体の性質などを勘案して適宜選択する。
【0040】
【発明の実施の形態】
本発明に係る気泡発生装置、ドップラ式超音波流量計の実施の形態について、添付図面を参照させながら説明する。ここで使用する図面は、図1ないし図9である。図1ないし図3は、本願発明に係る実施形態の構成を示す概念図である。図4は、ベンチュリ管の流量、ガスの流量及び被測定流体の流量についての測定結果を示す表である。図5は、被測定流体の流速分布について画面出力を示す図である。図6は、具体的なベンチュリ管の断面図である。図7は、ベンチュリ管の役割を示す概念図である。図8は、ベンチュリ管に付加機能を持たせた場合の断面図である。図9は、ベンチュリ管の付加機能に対する制御機構を示す概念図である。
【0041】
(図1)
図1には、上半分に、内径150mmの流体管に被測定流体として工業用水が流れている場合について、超音波ドップラ式流量計と気泡発生装置とを取り付けた場合を示し、下半分に、気泡発生装置の詳細を示している。
図1上部分に示すように、気泡発生装置は、超音波ドップラ式流量計における超音波トランスデューサよりも、主流方向において上流側に位置させている。超音波ドップラ式流量計については、特開2000−97742号に開示されているドップラ式超音波流量計を採用することとし、詳細な説明は省略する。このドップラ式超音波流量計は、周波数選択設定手段によって超音波トランスジューサから発振される超音波の基本周波数を、200kHzから数MHz(例えば、2MHz)まで、5kHz刻みに自動的に調整設定できる。
【0042】
超音波トランスジューサは、パルス電気信号の印加により基本周波数f0の超音波パルスが測定線に沿って発振できる超音波パルスは、例えばパルス幅5mm程度で拡がりをほとんど持たない直進性のビームである。送受信器を兼ねることができる超音波トランスジューサにおいては、発振した超音波パルスが流体中の反射体(気泡)に当って反射される超音波エコーを受信するようになっている。
【0043】
図1に示すように、気泡発生装置は、流体管の軸方向に垂直な断面に取り付けられ、流体管の断面中心点に対して対称に配置した一組の気泡発生機能部および均一分散機能部を備える。
気泡発生機能部とは、被測定流体内へ照射する超音波パルスの所要周波数に適した気泡をベンチュリ管によって発生させて流体管内へ送り込む機能をなすものである。図示するように、気泡の材料である空気を高圧にて供給するためのガスボンベ、そのガスボンベから供給される空気を減圧する減圧弁、およびベンチュリ管を備えている。ガスボンベおよび減圧弁の代わりに、エアコンプレッサ、そのエアコンプレッサから供給される空気を調整するためのレギュレータ、第一のニードルバルブ、供給する空気の流量を計測するガス流量計、ベンチュリ管へ供給する空気の量を調整するための第二のニードルバルブを備えることとしてもよい。ベンチュリ管の軸方向は流体管の軸方向と垂直とし、且つ流体管の中心線と交差するように形成し、ガスボンベから供給されたガスを流体管の被測定流体に対して吐出する。
そのベンチュリ管を覆うように二重管を設置し、ポンプを介してその二重管の内側とベンチュリ管の外側との間から流体管内の流体を吸い込む。これによって、ベンチュリ管から吐出した気泡を均一に分散させることとなる。
【0044】
(図6)
ベンチュリ管の本体としては、図6に示すようなものを採用した。すなわち、全長130mm、内径6mm であり、両端から45mmの箇所から狭められ、長手方向の中心付近で最も内径を小さくした(内径2mm)ガラス製のベンチュリ管である。内径の変化によって圧力差が生じることにより、送り込まれる気泡は均一に、細かくなる。具体的には、ミクロンオーダーの微細な気泡となる。
【0045】
(均一分散機能部)
均一分散機能部は、負圧発生装置としてのポンプを用いて流体管内の被測定流体を吸い込み、気泡発生機能部が送り込んだ気泡を管内において均一に分散させる機能部をなすものである。均一分散機能部によって流体管内から引き出される被測定流体は、流体管内へ送り込まれる気泡とともにベンチュリ管を介して流体管内へ戻すこととしている。図1では図示を省略しているが、前記のポンプによる被測定流体の吸い込み量を制御するなどのためのバルブ、被測定流体の吸い込み量を測定するための流量計をも備えている。
【0046】
なお、ベンチュリ管を三本、すなわち(a)、(b)、(c)を用意するとともに、図1に示した二重管による吸引ではなく、ベンチュリ管の対角位置に吸引口を設けることとして補助的に実験してみた結果を、以下に記す。ベンチュリ管(a)の対角位置にあるポンプが吸引した被測定流体はベンチュリ管(c)へ、ベンチュリ管(c)の対角位置にあるポンプが吸引した被測定流体はベンチュリ管(a)へ、それぞれ被測定流体を循環させる。ベンチュリ管の対角位置にあるポンプが吸引した被測定流体は、対角位置にあるベンチュリ管へ循環させることが望ましい場合もあるが、複数のポンプがほぼ同一の吸引量にて運転されていれば、気泡を均一に分散させるという機能は果たすことができる。実験的にも、どのポンプがどこから吸引し、どのベンチュリ管へ循環させているかということによる差は認められなかった。
【0047】
以下、上述の気泡発生装置および超音波ドップラ式流量計の作用について説明する。
気泡発生機能部のベンチュリ管が、均一分散機能部のポンプによって一旦引き出された被測定流体と共に被測定流体内へ照射する超音波パルスの所要周波数に適した気泡を発生させ、流体管内へ送り込む。送り込まれた気泡は、均一分散機能部のポンプに吸引されることによって、管内において均一に分散する。
気泡発生装置は超音波トランスデューサに対して流体配管の上流側に設置されているので、流体管内に送り込まれ均一に分散した気泡は、超音波トランスデューサが被測定流体内へ照射する超音波パルスの反射体として機能する。このため、被測定流体内に適切な反射体が存在しなかったり、反射体が不十分であっても、ドップラ式超音波流量計を使用することができる。
【0048】
以下、ドップラ式超音波流量計による被測定流体の流量測定について説明する。超音波送信手段がトランスデューサによって超音波パルスを測定線に沿って流体配管内の被測定流体内へ入射させると、均一に分散した気泡はその超音波の反射体となり、超音波エコーを発信することとなる。流体速度分布測定手段は、その超音波エコーを受信し、測定領域における被測定流体の流速分布を測定する。前記被測定流体の流速分布に基づいて、前記測定領域における被測定流体の流量を流量演算手段が演算し、被測定流体の流量を測定する。
【0049】
(図4)
測定結果について、図4を参照させながら説明する。
図4では、ベンチュリ管を通過する水量、ベンチュリ管にて混入される空気の量、および被測定流体の流量の関係を示している。超音波トランスデューサは、1MHz、2MHzの波長の超音波を発振して、それぞれ3回測定した。
流量が毎分約1272リットルの場合、ベンチュリ管を通過する水量が毎分1.91〜2.17リットル、混入される空気は、0.31Mpaにて毎分65ccである場合には、精度の高い測定が行えた。
流量が毎分約1276リットルの場合、ベンチュリ管を通過する水量が毎分2.06〜2.17リットル、混入される空気は、0.3Mpaにて毎分76ccである場合には、精度の高い測定が行えた。
流量が毎分約950リットルの場合、ベンチュリ管を通過する水量が毎分2.1〜2.36リットル、混入される空気は、0.34Mpaにて毎分78ccである場合には、精度の高い測定が行えた。
流量が毎分約632リットルの場合、ベンチュリ管を通過する水量が毎分2.1〜2.21リットル、混入される空気は、0.34Mpaにて毎分75ccである場合には、精度の高い測定が行えた。
【0050】
(図5)
図5には、管内径150mmにおける測定線上の流速分布を示している。測定条件は、混入するガス流量を0.3Mpaおよび毎分76ccとした場合である。
反射体としての気泡がほぼ均一に分散しているため、測定点にムラがなく、きれいな波形を得ることができたことが把握できる。なお、画面右上の表示において、流量が1287.9L/mと表示されているのは、流量が時々刻々と変化しているため、図4に示す数値と異なっているのである。
【0051】
(図2)
図2に示す実施形態は、図1に示す実施形態と異なり、気泡発生機能部のベンチュリ管および吸引用の二重管による組合せを二種類用意している。すなわち、ベンチュリ管につき、寸法や形状の異なるものを二種類(α、β)用意し、それに組み合わせて二重管も設置する。そして、管内径や被測定流体の流速などの条件に応じて選択して使用できるようにしている。
図2中では、ベンチュリ管(β)ではなく、ベンチュリ管(α)を選択して、被測定流体の流速を測定している。
【0052】
(図3)
図3に示す実施形態は、超音波トランスデューサよりも下流側には、気泡発生機能部によって流体管内へ送り込まれる気泡を捕捉する気泡捕捉部を備えたドップラ式超音波流量計に係る。
超音波ドップラ式流量計にとっては、気泡発生機能部によって送り込まれた気泡は、超音波の反射体として機能した以後は何ら役に立たない。被測定流体を移動させるために機能している流体管にとっては、存在しない方がよい場合や、存在しては困る場合もある。そこで、反射体として機能した後の気泡を捕捉する気泡捕捉部を備えているのである。
【0053】
(理論に関する補足説明)
一般論として、比較的大きな気泡を流体中に混入した場合には、その気泡には浮力や抵抗があるために被測定流体とは一緒に流れない場合があり得る(「スリップ」)。その場合には、混入された気泡によって実測される流速が真の流速よりも襲い値として現れることとなる。しかし、上述の実施形態にて説明したような気泡発生装置によって発生させる気泡はミクロンオーダーであり、被測定流体と同一の速度で流れると考えて良い。
また、混入する気泡量が比較的多くなると流量が増加して流速が速くなる。しかし、上述の実施形態においては、混入する気泡量は被測定流体の0.1%以下であり、測定精度に影響を与えるほどではない。
更に、気泡発生装置のポンプが循環させる流量が被測定流体の流量との比較において大きくなると、実測値に影響を与えるおそれがあるが、上述の実施形態においては、ポンプが循環させる流量は被測定流体の流量に比べて十分に小さいため、測定精度に影響を与えるほどではない。
【0054】
(図7)
図7は、ベンチュリ管の内部の気泡を高速度カメラによって撮影して発見した事実を描いたものである。
ベンチュリ管における長手方向の中心付近で最も内径を小さくなる。内径が最も小さくなる付近が最も圧力が大きいのであるが、最も小さな気泡は、その直後における内径が拡大している付近において発生していた。そして、内径が拡大しきって一定の内径をなす領域において徐々に気泡が大きくなっていった。小さな気泡が発生した領域を「微細気泡発生箇所」と図示するとともに、一定の内径をなす領域を「気泡成長領域」と図示している。
このように、ベンチュリ管の内径変化によって送り込まれる気泡は一旦小さな微細気泡となり、気泡成長領域においてほぼ均一に、且つ徐々に大きくなる。
【0055】
(図8)
図8に示す実施形態は、被測定流体が流れる流体管に対して、その流れに垂直なベンチュリ管を連結するための固定配管を固定するとともに、その固定配管の内径寸法を外形寸法とするベンチュリ管を連結している。ベンチュリ管における固定配管への埋め込み部分には、外周に溝を二本形成するとともにそれらの溝にはオーリングを固定している。このことによって、気泡成長領域の長さを変化させることができる。
【0056】
(図9)
図9は、気泡成長領域の長さを変化させることができる図8に示した実施形態を制御するための機構を示す実施形態を概念的に示している。
その制御機構は、気泡成長領域の軸方向長さデータと、ドップラ式超音波流量計の測定した流量の計測結果データとを記憶するデータ記憶手段と、そのデータ記憶手段に基づいて最適軸方向長さを算出する最適長さ演算手段と、その最適長さ演算手段が算出した最適軸方向長さに基づいて可変長構造におけるベンチュリ管の軸方向長さを制御する最適長さ制御手段とを備える。
【0057】
気泡成長領域の軸方向長さデータと、ドップラ式超音波流量計の測定した流量の計測結果データとをデータ記憶手段が記憶する。そのデータ記憶手段に基づいて最適軸方向長さを最適長さ演算手段が算出し、その最適軸方向長さに基づいて可変長構造におけるベンチュリ管の軸方向長さを最適長さ制御部が制御する。
このことによって、流量測定に適した気泡を、自動的に得ることができる。
【0058】
実験結果は単純であった。すなわち、気泡体積比を一定(例えば100ppm)とした場合において気泡径および気泡数が適していない場合には、反射エコー(例えば1MHz)が得られないため流量の計測が不能となり、気泡径および気泡数が適している場合には、流量の計測が可能であった。
流量の計測が不能の場合には、ベンチュリ管の軸方向長さを最適長さ制御部が制御することによって流量の計測が可能となるようにする。
なお、気泡体積比は最小で20ppmでの計測が可能であった。また、気泡体積比が大きい場合には、気泡径は大きい方が流量の計測には適していることが経験的に把握できた。
【0059】
【発明の効果】
請求項1から請求項8に記載の発明によれば、ドップラ式超音波流量計の性能を最大限に引き出すための気泡発生装置を提供することができた。
また、請求項9から請求項11に記載の発明によれば、性能を最大限に引き出すための気泡発生装置を備えたドップラ式超音波流量計を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】第一の実施形態の構成を示す概念図である。
【図2】第二の実施形態の構成を示す概念図である。
【図3】第三の実施形態の構成を示す概念図である。
【図4】ベンチュリ管の流量、ガスの流量及び被測定流体の流量についての測定結果を示す表である。
【図5】コンピュータのモニタへ出力された流速分布を示す画面である。
【図6】具体的なベンチュリ管を示す断面図である。
【図7】ベンチュリ管の役割を示す概念図である。
【図8】ベンチュリ管に付加機能を持たせた場合の断面図である。
【図9】ベンチュリ管の付加機能に対する制御機構を示す概念図である。

Claims (11)

  1. 所要周波数の超音波パルスを超音波トランスデューサから測定線に沿って流体配管内の被測定流体内へ入射させる超音波送信手段と、
    被測定流体に入射された超音波パルスのうち測定領域から反射された超音波エコーを受信し、測定領域における被測定流体の流速分布を測定する流体速度分布測定手段と、
    前記被測定流体の流速分布に基づいて、前記測定領域における被測定流体の流量を演算する流量演算手段とを備えて被測定流体の流量を測定するドップラ式超音波流量計に用いる気泡発生装置であって、
    被測定流体内へ照射する超音波パルスの所要周波数に適した気泡を発生させて流体管内へ送り込む気泡発生機能部と、
    送り込んだ気泡を管内において均一に分散させるための均一分散機能部とを備え、
    超音波トランスデューサに対して流体配管の上流側に設置した気泡発生装置。
  2. 気泡発生機能部は、気泡を流体管内へ送り込むベンチュリ管を含み、
    均一分散機能部は、超音波トランスデューサよりも上流側に設置した負圧発生装置を含み、
    均一分散機能部によって流体管内から引き出される被測定流体は、ベンチュリ管を介して流体管内へ送り込まれる気泡とともに流体管内へ戻すこととした請求項1記載の気泡発生装置。
  3. 気泡発生機能部および均一分散機能部は、流体管の長手方向に垂直な一断面に対して配置し、
    気泡発生機能部のベンチュリ管の軸方向は流体管の軸方向と垂直とし、且つ流体管の中心線と交差するように形成した請求項1または請求項2のいずれかに記載の気泡発生装置。
  4. 気泡発生機能部および均一分散機能部の組合せは、複数組とするとともに、
    その組合せは、配管を中心に対象な位置とした請求項3に記載の気泡発生装置。
  5. 気泡発生機能部のベンチュリ管の種類を複数種類とした請求項4に記載の気泡発生装置。
  6. 気泡発生機能部は、気泡を流体管内へ送り込むベンチュリ管を含み、
    そのベンチュリ管には、管内径を拡大させた微細気泡発生領域と、
    その微細気泡発生領域から流体管に向かって連続して形成した気泡成長領域とを備えた請求項1から請求項5に記載の気泡発生装置。
  7. 気泡成長領域は、ベンチュリ管の軸方向長さを変化させることができる可変長構造にて形成した請求項6記載の気泡発生装置。
  8. 気泡成長領域の軸方向長さデータと、ドップラ式超音波流量計の測定した流体速度分布データまたは流量の計測結果データとを記憶するデータ記憶手段と、
    そのデータ記憶手段に基づいて最適軸方向長さを算出する最適長さ演算手段と、
    その最適長さ演算手段が算出した最適軸方向長さに基づいて可変長構造におけるベンチュリ管の軸方向長さを制御する最適長さ制御手段とを備えた請求項7記載の気泡発生装置。
  9. 所要周波数の超音波パルスを超音波トランスデューサから測定線に沿って流体配管内の被測定流体内へ入射させる超音波送信手段と、
    被測定流体に入射された超音波パルスのうち測定領域から反射された超音波エコーを受信し、測定領域における被測定流体の流速分布を測定する流体速度分布測定手段と、
    前記被測定流体の流速分布に基づいて、前記測定領域における被測定流体の流量を演算する流量演算手段と、
    前記超音波トランスデューサの上流側において、被測定流体内へ均一に所要周波数に適した気泡を発生させる気泡発生機能部および送り込んだ気泡を管内において均一に分散させるための均一分散機能部を備えた気泡発生装置とを備え、
    その気泡発生装置によって発生させた気泡を用いて流速分布を測定し、被測定流体の流量を測定するドップラ式超音波流量計。
  10. 超音波トランスデューサよりも下流側には、気泡発生機能部によって流体管内へ送り込まれる気泡を捕捉する気泡捕捉部を備えた請求項9に記載のドップラ式超音波流量計。
  11. 気泡発生機能部は、気泡を流体管内へ送り込むベンチュリ管を含み、
    そのベンチュリ管には、管内径を拡大させた微細気泡発生領域と、
    その微細気泡発生領域から流体管に向かって連続して形成した気泡成長領域とを備えた気泡発生装置とした請求項9または請求項10の何れかに記載のドップラ式超音波流量計。
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