JP2004353757A - ダブルコグドvベルト - Google Patents
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Abstract
【課題】ダブルコグドVベルトにおいて、伝動能力を低下を防ぎながら、コンパクト化と曲げ剛性の低下とを図る。
【解決手段】ダブルコグドVベルトBは心線埋設部10と下コグ形成部20と上コグ形成部30とからなる。上コグ形成部30にはベルト長手方向に沿って上コグ34が形成されている。隣接した上コグ34,34間にはベルトの幅方向に延びる溝35が形成されている。下コグ形成部20にはベルト長手方向に沿って下コグ24が形成されている。隣接した下コグ24,24の間にはベルトの幅方向に延びる溝25が形成されている。ベルトの厚さ方向に関して、下コグ24の間に形成された溝25の底部から心線12までの距離bはb=1.9mmで、下コグ24の間に形成された溝25の底部から上コグ34の間に形成された溝35の底部までの距離eはe=3.7mmである。
【選択図】 図1
【解決手段】ダブルコグドVベルトBは心線埋設部10と下コグ形成部20と上コグ形成部30とからなる。上コグ形成部30にはベルト長手方向に沿って上コグ34が形成されている。隣接した上コグ34,34間にはベルトの幅方向に延びる溝35が形成されている。下コグ形成部20にはベルト長手方向に沿って下コグ24が形成されている。隣接した下コグ24,24の間にはベルトの幅方向に延びる溝25が形成されている。ベルトの厚さ方向に関して、下コグ24の間に形成された溝25の底部から心線12までの距離bはb=1.9mmで、下コグ24の間に形成された溝25の底部から上コグ34の間に形成された溝35の底部までの距離eはe=3.7mmである。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ダブルコグドVベルトに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、中・低排気量のエンジンを有する2輪車・バギー・スノーモービル等の変速機に用いられる変速ベルトとして、ゴム製のダブルコグドVベルトが知られている(例えば、特許文献1)。このダブルコグドVベルトは、内周(底部面)の長手方向に沿って下コグが一定のピッチで形成されるとともに、外周(背面)の長手方向に沿って上コグが一定のピッチで形成されている。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−31192号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、エンジンの4サイクル化によりトルク変動が大きくなったこと、あるいは、車両の重量が増加したこと等に伴い、上述の2輪車・バギー・スノーモービル等に用いられるダブルコグドVベルトに対して、高い伝動能力と高い伝動効率とが求められている。その中でも特にベルトの伝動効率の向上が望まれている。これらの要求に応えるために、これらの車両に対して、大排気量エンジン用のダブルコグドVベルトを適用することが考えられる。この大排気量エンジン用のベルトは総厚(全体の厚さ)が大きい(例えば、15mm)ため、ベルトの伝動能力は向上する。しかしながら、総厚が大きいゆえ、ベルトのコンパクト化の妨げとなり、また、ベルトの曲げ剛性が大きくなり、その結果、ベルトの伝動効率が低下する。
【0005】
そこで、ダブルコグドVベルトにおいて、伝動能力の低下を防ぎながら、コンパクト化と曲げ剛性の低下とを図ることのできる技術を開発することが望まれていた。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ダブルコグドVベルトにおける寸法構造を指定することにより、そのベルトの伝動能力の低下を防ぎながら、コンパクト化と曲げ剛性の低下とを図る技術を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ベルト長手方向に延びる心線が埋設された心線埋設部と、該心線埋設部の内周側に設けられ且つベルト長手方向に沿って一定のピッチで形成された下コグを有する下コグ形成部と、上記心線埋設部の外周側に設けられ且つベルト長手方向に沿って一定のピッチで形成された上コグを有する上コグ形成部とを備えたダブルコグドVベルトであって、上記ベルトの厚さ方向に関して、隣り合う下コグの間に形成された溝の底部から心線までの距離が0.4mm以上且つ2mm以下であることを特徴とするものである。
【0008】
これにより、ダブルコグドVベルトの伝動能力の低下を防ぎながら、ダブルコグドVベルトのコンパクト化と曲げ剛性の低下とを図ることができる。
【0009】
本発明は、ベルト長手方向に延びる心線が埋設された心線埋設部と、該心線埋設部の内周側に設けられ且つベルト長手方向に沿って一定のピッチで形成された下コグを有する下コグ形成部と、上記心線埋設部の外周側に設けられ且つベルト長手方向に沿って一定のピッチで形成された上コグを有する上コグ形成部とを備えたダブルコグドVベルトであって、上記ベルトの厚さ方向に関して、隣り合う上コグの間に形成された溝の底部から隣り合う下コグの間に形成された溝の底部までの距離が1.5mm以上且つ4mm以下であることを特徴とするものである。
【0010】
これにより、ダブルコグドVベルトの伝動能力の低下を防ぎながら、ダブルコグドVベルトのコンパクト化と曲げ剛性の低下とを図ることのできる。
【0011】
【発明の効果】
本発明によれば、ダブルコグドVベルトの厚さ方向に関して、隣り合う下コグの間に形成された溝の底部から心線までの距離を0.4mm以上且つ2mm以下にすることにより、ダブルコグドVベルトの伝動能力の低下を防ぎながら、ダブルコグドVベルトのコンパクト化と曲げ剛性の低下とを図ることができる。
【0012】
また、ダブルコグドVベルトの厚さ方向に関して、隣り合う上コグの間に形成された溝の底部から隣り合う下コグの間に形成された溝の底部までの距離を1.5mm以上且つ4mm以下にすることにより、ダブルコグドVベルトの伝動能力の低下を防ぎながら、ダブルコグドVベルトのコンパクト化と曲げ剛性の低下とを図ることのできる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
本実施形態に係るダブルコグドVベルトBは、例えば、中・低排気量のエンジンを有する2輪車・バギー・スノーモービル等の車両での変速機の変速ベルトとして用いられるものである。
【0015】
図1及び図2に示すように、このダブルコグドVベルトBは、心線埋設部10と、心線埋設部10の内周(底部面)側に一体に設けられた下コグ形成部20と、心線埋設部10の外周(背面)側に一体に設けられた上コグ形成部30とからなる。本実施形態に係るダブルコグドVベルトBの総厚Hは、例えばH=12.0mmである。
【0016】
心線埋設部10は、心線埋設部本体11と、ベルト長手方向に延び且つベルトの幅方向に所定ピッチで並ぶように心線埋設部本体11にらせん状に埋設された心線12とからなる。
【0017】
心線埋設部本体11は、クロロプレンゴム(CR)、エチレン・プロピレン・ジエン・ターポリマーゴム(EPDM)、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレンゴム(ACSM)、水素添加NBR(H−NBR)等のゴム組成物で形成されている。
【0018】
心線12は、ポリエステル(PET)繊維、アラミド繊維、レーヨン繊維、PBO繊維等の撚り糸から形成されている。本実施形態に係る心線12の外径dは、例えばd=1.2mmである。
【0019】
上記下コグ形成部20は、下コグ形成部本体22と、その表面を覆う帆布23とからなる。本実施形態に係る下コグ形成部20の厚さは、例えば7.4mmである。
【0020】
下コグ形成部本体22は、クロロプレンゴム(CR)、エチレン・プロピレン・ジエン・ターポリマーゴム(EPDM)、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレンゴム(ACSM)、水素添加NBR(H−NBR)等のゴム組成物で形成されている。
【0021】
下コグ形成部本体22には、ベルトの幅方向に配向した短繊維21が混合されている(図1を参照)。短繊維21は、高強力ポリビニルアルコール(PVA)繊維、パラ系アラミド繊維、ナイロン繊維、芳香族ポリエステル繊維、ヘテロ環含有芳香族繊維等で形成されている。
【0022】
帆布23はナイロン繊維、綿、それらの混合繊維、綿とポリエステル繊維との混合繊維、アラミド繊維等からなり、伸性を有する織布である。
【0023】
下コグ形成部20には、ベルト長手方向に沿って一定のピッチP1(本実施形態においては、例えばP1=9.5mm)で下コグ24が形成されている。隣接した下コグ24,24の間には、ベルトの幅方向に延びる溝25が形成されている。
【0024】
下コグ24の縦断面の外形は所定のコグ高さh1(本実施形態においては、例えばh1=5.5mm)の略正弦波形に形成され、その頂部が所定の半径R1(本実施形態においては、例えばR1 =2.7mm)の円弧状に形成されている。溝25の縦断面の外形は、所定の半径R2(本実施形態においては、例えばR2=1.5mm)の円弧状に形成されている。
【0025】
上記上コグ形成部30は、クロロプレンゴム(CR)、エチレン・プロピレン・ジエン・ターポリマーゴム(EPDM)、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレンゴム(ACSM)、水素添加NBR(H−NBR)等のゴム組成物で形成されている。本実施形態に係る上コグ形成部30の厚さは、例えば3.4mmである。
【0026】
上コグ形成部30には、ベルトの幅方向に配向した短繊維31が混合されている(図1を参照)。短繊維31は、高強力ポリビニルアルコール(PVA)繊維、パラ系アラミド繊維、ナイロン繊維、芳香族ポリエステル繊維、ヘテロ環含有芳香族繊維等で形成されている。
【0027】
上コグ形成部30には、ベルト長手方向に沿って一定のピッチP2(本実施形態においては、例えばP2=6.3mm)で上コグ34が形成されている。隣接した上コグ34,34の間には、ベルトの幅方向に延びる溝35が形成されている。
【0028】
上コグ34の縦断面の外形は所定のコグ高さh2(本実施形態においては、例えばh2=2.8mm)の略正弦波形に形成され、その頂部が所定の半径R3(本実施形態においては、例えばR3=1.5mm)の円弧状に形成されている。溝35の縦断面の外形は所定の半径R4(本実施形態においては、例えばR4=1.5mm)の円弧状に形成されている。
【0029】
本実施形態に係るダブルコグドVベルトBは、ベルトの厚さ方向に関して、隣り合う上コグ34,34の間に形成された溝35の底部から心線12までの距離aがa=0.6mmである。また、ベルトの厚さ方向に関して、隣り合う下コグ24,24の間に形成された溝25の底部から心線12までの距離bがb=1.9mmである。さらに、ベルトの厚さ方向に関して、隣り合う下コグ24,24の間に形成された溝25の底部から隣り合う上コグ34,34の間に形成された溝35の底部までの距離eがe=3.7mmである。
【0030】
なお、本実施形態では、ベルトの厚さ方向に関して、隣接する下コグ24,24の間に形成された溝25の底部から心線12までの距離bがb=1.9mmであるが、距離bの値が0.4mm以上且つ2mm以下であればよい。さらに、距離bの値が0.4mm以上且つ1.9mm以下であることがより好ましい。
【0031】
ここで、距離bの値が0.4mm以上であるのは、以下の理由による。まず、コグ底から心線までの距離が小さすぎると多角形現象が発生し、そのため、心線の疲労が急激に大きくなり、これは耐久性の観点から好ましくない。また、底ゴム層が薄くなると、伝動トルクによりコグが引っ張られた際における底ゴム層の弾性による応力の緩和が小さくなり、その結果、ベルトの亀裂が早期に発生したり、あるいは、心線とゴムとの間で剥離が生じ、これも耐久性の観点から好ましくない。以上により、距離bの値は少なくとも0.4mm以上であることが好ましく、さらに、1.0mm以上であることがより好ましい。
【0032】
また、本実施形態では、ベルトの厚さ方向に関して、隣接する下コグ24,24の間に形成された溝25の底部から隣接する上コグ34,34の間に形成された溝35の底部までの距離eがe=3.7mmであるが、距離eの値が1.5mm以上且つ4mm以下であればよい。さらに、距離eの値が1.5mm以上且つ3.7mm以下であることがより好ましい。
【0033】
−ダブルコグドVベルトの製造方法−
ここで、ダブルコグドVベルトBの製造方法について簡単に説明する。
【0034】
まず、ベルトの幅方向に配向する短繊維が混合されたシート状のゴム組成物と、心線12と、帆布23とを円筒状金型の外周に巻き付けて加硫する。この加硫成形されたものを所定幅に幅切りにする。それにより、ダブルコグドVベルトBが製造される。
【0035】
ところで、本実施形態に係るダブルコグドVベルトBの上記距離b及び上記距離eの値は、以下の試験結果に基づいて決定されている。
【0036】
(試験用ベルト)
試験用ダブルコグドVベルト及び試験用シングルコグベルトとして、ベルト1〜5を準備した。それぞれの構成は後述の表1にも示されている。
【0037】
<ベルト1>
ベルト1は、本発明に係るダブルコグドVベルトである。ベルト1は、総厚HがH=12.0mmで、隣接する上コグ34,34の間に形成された溝35の底部から心線12までの距離aがa=0.6mmで、隣接する下コグ24,24の間に形成された溝25の底部から心線12までの距離bがb=1.9mmで、下コグ24のコグ高さh1がh1=5.5mmで、隣接する下コグ24,24の間に形成された溝25の底部から隣接する上コグ34,34の間に形成された溝35の底部までの距離eがe=3.7mmで、下コグ24のピッチP1がP1=9.5mmである。下コグ形成部本体22及び上コグ形成部30のゴム硬度は88度である。また、ベルト1の総厚Hは、ダブルコグドVベルトからなる後述のベルト2〜4の総厚Hに比べて小さい。
【0038】
<ベルト2>
ベルト2は、従来の大排気量エンジン用のダブルコグドVベルトを改良したものである。ベルト2は、総厚HがH=15.0mmで、距離aがa=0.6mmで、距離bがb=2.3mmで、コグ高さh1がh1=7.1mmで、距離eがe=4.1mmで、P1がP1=11.0mmである。その他の点に関しては、ベルト1とほぼ同様である。
【0039】
<ベルト3>
ベルト3は、従来の大排気量エンジン用のダブルコグドVベルトを改良したものである。ベルト3は、総厚HがH=15.0mmで、距離aがa=0.6mmで、距離bがb=2.3mmで、コグ高さh1がh1=7.1mmで、距離eがe=4.1mmで、P1がP1=11.0mmである。また、下コグ形成部本体22及び上コグ形成部30のゴム硬度は93度である。その他の点に関しては、ベルト1とほぼ同様である。
【0040】
<ベルト4>
ベルト4は、従来の大排気量エンジン用のダブルコグドVベルトである。ベルト4は、総厚HがH=13.8mmで、距離aがa=1.5mmで、距離bがb=2.4mmで、コグ高さh1がh1=6.5mmで、距離eがe=5.1mmで、P1がP1=11.0mmである。その他の点に関しては、ベルト1とほぼ同様である。
【0041】
<ベルト5>
ベルト5は、底部面側のみにコグが形成された従来のシングルコグドVベルトである。ベルト5は、総厚HがH=10.6mmで、隣り合うコグの間に形成された溝の底部から心線までの距離bがb=2.3mmで、コグ高さh1がh1=5.0mmで、P1がP1=9.5mmである。
【0042】
(試験方法)
上述のベルト1〜5に対して、以下に示すベルト曲げ剛性試験とベルト伝動能力試験とを行った。
【0043】
<ベルト曲げ剛性試験>
図3に示すベルト曲げ剛性測定装置40を用いて、ベルト1〜5の曲げ剛性を算出した。このベルト曲げ剛性測定装置40は、上下に可動自在に構成された上側プレート41と、ロードセルに接続された下側プレート42とを備えている。そして、ベルトの曲げ剛性を測定するときには、上側及び下側プレート41,42のそれぞれにベルトの上コグが接するように、上側及び下側プレート41,42でベルトを挟み込む。それから、上側プレート41を下方に移動させ、そのときの荷重Wをロードセルで検知する。そして、下記の関係式からベルトの曲げ剛性を算出する。なお、ベルトの巻き掛け径hは、上側プレート41側のベルトの心線の中心と下側プレート42側のベルトの心線の中心との間の距離である。
【0044】
【数1】
【0045】
<ベルト伝動能力試験>
図4に示す走行試験機を用いて、ベルト1〜5の伝動能力を求めた。走行試験機はプーリ径68.8mmの駆動プーリ61と、プーリ径112mmの従動プーリ62とを備えている。そして、ベルトの伝動能力を求めるときには、駆動プーリ61と従動プーリ62との間にベルトを巻き掛け、ベルトの側面に125kgf(1226N)の推力を与えた。それから、室温下で駆動プーリ61を2000rpmで回転させた。そのとき、駆動プーリ61及び従動プーリ62の回転数を計測し、伝達トルクを変えたときにおける見掛けのスリップ率(ベルトの変形によるベルトのプーリ内側への落ち込み及びベルトの伸びによるスリップ率を含むもの)を求めた。そして、伝達トルクと、理論駆動プーリ径(心線中心位置でのベルト幅(ベルトピッチ幅)が変化しないと仮定して、そのベルト幅と同一のプーリ幅を有する位置でのプーリ径)と、レイアウトとから下記関係式で定義されるST値をベルトの伝動能力指標として求めた。なお、この伝動能力、すなわち、ST値は、スリップ率が4%のときのものとした。
【0046】
【数2】
【0047】
また、同様にして、図5に示すプーリ径127.4mmの駆動プーリ61とプーリ径105.8mmの従動プーリ62とを備えた走行試験機を用いて、ベルト1〜5の伝動能力を求めた。そして、ベルトの伝動能力を求めるときには、駆動プーリ61と従動プーリ62との間にベルトを巻き掛け、ベルトの側面に105kgf(1030N)の推力を与えた。それから、室温下で駆動プーリ61を2000rpmで回転させた。そのとき、駆動プーリ61及び従動プーリ62の回転数を計測し、伝達トルクを変えたときにおける見掛けのスリップ率を求めた。そして、伝達トルクと理論駆動プーリ径とレイアウトとから上述の関係式で定義されるST値をベルトの伝動能力指標として求めた。なお、この伝動能力は、スリップ率が2%のときのものとした。
【0048】
(試験結果)
表1は、ベルト1〜5に対して行った上述の試験の結果を示している。
【0049】
【表1】
【0050】
また、図6〜8はそれぞれ、ベルトの距離bとベルトの曲げ剛性との関係、ベルトの距離eとベルトの曲げ剛性との関係及びベルトの曲げ剛性とスリップ率4%のときにおけるベルトの伝動能力との関係を示している。
【0051】
表1、図6及び図7から明らかなように、ベルト1の曲げ剛性は、他のベルトの曲げ剛性に比べて低い。具体的には、ベルト2の曲げ剛性の値を100と仮定すると、ベルト1の曲げ剛性の、ベルト2の曲げ剛性に対する比率は72.7である。
【0052】
また、表1及び図8から明らかなように、スリップ率4%のときにおけるベルト1の伝動能力は、スリップ率4%時における他のベルトの伝動能力に比べて低くない。具体的には、スリップ率4%時におけるベルト2の伝動能力の値を100と仮定すると、スリップ率4%時におけるベルト1の伝動能力の、スリップ率4%時におけるベルト2の伝動能力に対する比率は97.5である。
【0053】
また、表1から明らかなように、スリップ率2%のときにおけるベルト2の伝動能力は、スリップ率2%時における他のベルトの伝動能力に比べて低くない。具体的には、スリップ率2%時におけるベルト2の伝動能力の値を100と仮定すると、スリップ率2%時におけるベルト1の伝動能力の、スリップ率2%時におけるベルト2の伝動能力に対する比率は91.1である。
【0054】
以上により、本実施形態に係るダブルコグドVベルトBによれば、ベルトBの伝動能力の低下を防ぎながら、ベルトBのコンパクト化と曲げ剛性の低下とを図ることができる。
【0055】
なお、本実施形態では、ダブルコグドVベルトBが中・低排気量のエンジンを有する2輪車等の変速機の変速ベルトとして用いられると記載しているが、本実施形態に係るダブルコグドVベルトBが2輪車等以外の他の車両における変速機の変速ベルトとして用いられてもよい。さらに、車両以外の他の装置に用いられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係るダブルコグドVベルトの斜視図である。
【図2】実施形態に係るダブルコグドVベルトの縦断面図である。
【図3】実施形態に係るベルト曲げ剛性測定装置の構成図である。
【図4】ベルトの伝動能力を求める走行試験のレイアウト図である。
【図5】ベルトの伝動能力を求める走行試験のレイアウト図である。
【図6】ベルトの距離bとベルトの曲げ剛性との関係を示した図である。
【図7】ベルトの距離eとベルトの曲げ剛性との関係を示した図である。
【図8】ベルトの曲げ剛性とベルトの伝動能力との関係を示した図である。
【符号の説明】
B ダブルコグドVベルト
10 心線埋設部
20 下コグ形成部
30 上コグ形成部
40 ベルト曲げ剛性測定装置
61 駆動プーリ
62 従動プーリ
【発明の属する技術分野】
本発明は、ダブルコグドVベルトに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、中・低排気量のエンジンを有する2輪車・バギー・スノーモービル等の変速機に用いられる変速ベルトとして、ゴム製のダブルコグドVベルトが知られている(例えば、特許文献1)。このダブルコグドVベルトは、内周(底部面)の長手方向に沿って下コグが一定のピッチで形成されるとともに、外周(背面)の長手方向に沿って上コグが一定のピッチで形成されている。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−31192号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、エンジンの4サイクル化によりトルク変動が大きくなったこと、あるいは、車両の重量が増加したこと等に伴い、上述の2輪車・バギー・スノーモービル等に用いられるダブルコグドVベルトに対して、高い伝動能力と高い伝動効率とが求められている。その中でも特にベルトの伝動効率の向上が望まれている。これらの要求に応えるために、これらの車両に対して、大排気量エンジン用のダブルコグドVベルトを適用することが考えられる。この大排気量エンジン用のベルトは総厚(全体の厚さ)が大きい(例えば、15mm)ため、ベルトの伝動能力は向上する。しかしながら、総厚が大きいゆえ、ベルトのコンパクト化の妨げとなり、また、ベルトの曲げ剛性が大きくなり、その結果、ベルトの伝動効率が低下する。
【0005】
そこで、ダブルコグドVベルトにおいて、伝動能力の低下を防ぎながら、コンパクト化と曲げ剛性の低下とを図ることのできる技術を開発することが望まれていた。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ダブルコグドVベルトにおける寸法構造を指定することにより、そのベルトの伝動能力の低下を防ぎながら、コンパクト化と曲げ剛性の低下とを図る技術を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ベルト長手方向に延びる心線が埋設された心線埋設部と、該心線埋設部の内周側に設けられ且つベルト長手方向に沿って一定のピッチで形成された下コグを有する下コグ形成部と、上記心線埋設部の外周側に設けられ且つベルト長手方向に沿って一定のピッチで形成された上コグを有する上コグ形成部とを備えたダブルコグドVベルトであって、上記ベルトの厚さ方向に関して、隣り合う下コグの間に形成された溝の底部から心線までの距離が0.4mm以上且つ2mm以下であることを特徴とするものである。
【0008】
これにより、ダブルコグドVベルトの伝動能力の低下を防ぎながら、ダブルコグドVベルトのコンパクト化と曲げ剛性の低下とを図ることができる。
【0009】
本発明は、ベルト長手方向に延びる心線が埋設された心線埋設部と、該心線埋設部の内周側に設けられ且つベルト長手方向に沿って一定のピッチで形成された下コグを有する下コグ形成部と、上記心線埋設部の外周側に設けられ且つベルト長手方向に沿って一定のピッチで形成された上コグを有する上コグ形成部とを備えたダブルコグドVベルトであって、上記ベルトの厚さ方向に関して、隣り合う上コグの間に形成された溝の底部から隣り合う下コグの間に形成された溝の底部までの距離が1.5mm以上且つ4mm以下であることを特徴とするものである。
【0010】
これにより、ダブルコグドVベルトの伝動能力の低下を防ぎながら、ダブルコグドVベルトのコンパクト化と曲げ剛性の低下とを図ることのできる。
【0011】
【発明の効果】
本発明によれば、ダブルコグドVベルトの厚さ方向に関して、隣り合う下コグの間に形成された溝の底部から心線までの距離を0.4mm以上且つ2mm以下にすることにより、ダブルコグドVベルトの伝動能力の低下を防ぎながら、ダブルコグドVベルトのコンパクト化と曲げ剛性の低下とを図ることができる。
【0012】
また、ダブルコグドVベルトの厚さ方向に関して、隣り合う上コグの間に形成された溝の底部から隣り合う下コグの間に形成された溝の底部までの距離を1.5mm以上且つ4mm以下にすることにより、ダブルコグドVベルトの伝動能力の低下を防ぎながら、ダブルコグドVベルトのコンパクト化と曲げ剛性の低下とを図ることのできる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
本実施形態に係るダブルコグドVベルトBは、例えば、中・低排気量のエンジンを有する2輪車・バギー・スノーモービル等の車両での変速機の変速ベルトとして用いられるものである。
【0015】
図1及び図2に示すように、このダブルコグドVベルトBは、心線埋設部10と、心線埋設部10の内周(底部面)側に一体に設けられた下コグ形成部20と、心線埋設部10の外周(背面)側に一体に設けられた上コグ形成部30とからなる。本実施形態に係るダブルコグドVベルトBの総厚Hは、例えばH=12.0mmである。
【0016】
心線埋設部10は、心線埋設部本体11と、ベルト長手方向に延び且つベルトの幅方向に所定ピッチで並ぶように心線埋設部本体11にらせん状に埋設された心線12とからなる。
【0017】
心線埋設部本体11は、クロロプレンゴム(CR)、エチレン・プロピレン・ジエン・ターポリマーゴム(EPDM)、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレンゴム(ACSM)、水素添加NBR(H−NBR)等のゴム組成物で形成されている。
【0018】
心線12は、ポリエステル(PET)繊維、アラミド繊維、レーヨン繊維、PBO繊維等の撚り糸から形成されている。本実施形態に係る心線12の外径dは、例えばd=1.2mmである。
【0019】
上記下コグ形成部20は、下コグ形成部本体22と、その表面を覆う帆布23とからなる。本実施形態に係る下コグ形成部20の厚さは、例えば7.4mmである。
【0020】
下コグ形成部本体22は、クロロプレンゴム(CR)、エチレン・プロピレン・ジエン・ターポリマーゴム(EPDM)、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレンゴム(ACSM)、水素添加NBR(H−NBR)等のゴム組成物で形成されている。
【0021】
下コグ形成部本体22には、ベルトの幅方向に配向した短繊維21が混合されている(図1を参照)。短繊維21は、高強力ポリビニルアルコール(PVA)繊維、パラ系アラミド繊維、ナイロン繊維、芳香族ポリエステル繊維、ヘテロ環含有芳香族繊維等で形成されている。
【0022】
帆布23はナイロン繊維、綿、それらの混合繊維、綿とポリエステル繊維との混合繊維、アラミド繊維等からなり、伸性を有する織布である。
【0023】
下コグ形成部20には、ベルト長手方向に沿って一定のピッチP1(本実施形態においては、例えばP1=9.5mm)で下コグ24が形成されている。隣接した下コグ24,24の間には、ベルトの幅方向に延びる溝25が形成されている。
【0024】
下コグ24の縦断面の外形は所定のコグ高さh1(本実施形態においては、例えばh1=5.5mm)の略正弦波形に形成され、その頂部が所定の半径R1(本実施形態においては、例えばR1 =2.7mm)の円弧状に形成されている。溝25の縦断面の外形は、所定の半径R2(本実施形態においては、例えばR2=1.5mm)の円弧状に形成されている。
【0025】
上記上コグ形成部30は、クロロプレンゴム(CR)、エチレン・プロピレン・ジエン・ターポリマーゴム(EPDM)、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレンゴム(ACSM)、水素添加NBR(H−NBR)等のゴム組成物で形成されている。本実施形態に係る上コグ形成部30の厚さは、例えば3.4mmである。
【0026】
上コグ形成部30には、ベルトの幅方向に配向した短繊維31が混合されている(図1を参照)。短繊維31は、高強力ポリビニルアルコール(PVA)繊維、パラ系アラミド繊維、ナイロン繊維、芳香族ポリエステル繊維、ヘテロ環含有芳香族繊維等で形成されている。
【0027】
上コグ形成部30には、ベルト長手方向に沿って一定のピッチP2(本実施形態においては、例えばP2=6.3mm)で上コグ34が形成されている。隣接した上コグ34,34の間には、ベルトの幅方向に延びる溝35が形成されている。
【0028】
上コグ34の縦断面の外形は所定のコグ高さh2(本実施形態においては、例えばh2=2.8mm)の略正弦波形に形成され、その頂部が所定の半径R3(本実施形態においては、例えばR3=1.5mm)の円弧状に形成されている。溝35の縦断面の外形は所定の半径R4(本実施形態においては、例えばR4=1.5mm)の円弧状に形成されている。
【0029】
本実施形態に係るダブルコグドVベルトBは、ベルトの厚さ方向に関して、隣り合う上コグ34,34の間に形成された溝35の底部から心線12までの距離aがa=0.6mmである。また、ベルトの厚さ方向に関して、隣り合う下コグ24,24の間に形成された溝25の底部から心線12までの距離bがb=1.9mmである。さらに、ベルトの厚さ方向に関して、隣り合う下コグ24,24の間に形成された溝25の底部から隣り合う上コグ34,34の間に形成された溝35の底部までの距離eがe=3.7mmである。
【0030】
なお、本実施形態では、ベルトの厚さ方向に関して、隣接する下コグ24,24の間に形成された溝25の底部から心線12までの距離bがb=1.9mmであるが、距離bの値が0.4mm以上且つ2mm以下であればよい。さらに、距離bの値が0.4mm以上且つ1.9mm以下であることがより好ましい。
【0031】
ここで、距離bの値が0.4mm以上であるのは、以下の理由による。まず、コグ底から心線までの距離が小さすぎると多角形現象が発生し、そのため、心線の疲労が急激に大きくなり、これは耐久性の観点から好ましくない。また、底ゴム層が薄くなると、伝動トルクによりコグが引っ張られた際における底ゴム層の弾性による応力の緩和が小さくなり、その結果、ベルトの亀裂が早期に発生したり、あるいは、心線とゴムとの間で剥離が生じ、これも耐久性の観点から好ましくない。以上により、距離bの値は少なくとも0.4mm以上であることが好ましく、さらに、1.0mm以上であることがより好ましい。
【0032】
また、本実施形態では、ベルトの厚さ方向に関して、隣接する下コグ24,24の間に形成された溝25の底部から隣接する上コグ34,34の間に形成された溝35の底部までの距離eがe=3.7mmであるが、距離eの値が1.5mm以上且つ4mm以下であればよい。さらに、距離eの値が1.5mm以上且つ3.7mm以下であることがより好ましい。
【0033】
−ダブルコグドVベルトの製造方法−
ここで、ダブルコグドVベルトBの製造方法について簡単に説明する。
【0034】
まず、ベルトの幅方向に配向する短繊維が混合されたシート状のゴム組成物と、心線12と、帆布23とを円筒状金型の外周に巻き付けて加硫する。この加硫成形されたものを所定幅に幅切りにする。それにより、ダブルコグドVベルトBが製造される。
【0035】
ところで、本実施形態に係るダブルコグドVベルトBの上記距離b及び上記距離eの値は、以下の試験結果に基づいて決定されている。
【0036】
(試験用ベルト)
試験用ダブルコグドVベルト及び試験用シングルコグベルトとして、ベルト1〜5を準備した。それぞれの構成は後述の表1にも示されている。
【0037】
<ベルト1>
ベルト1は、本発明に係るダブルコグドVベルトである。ベルト1は、総厚HがH=12.0mmで、隣接する上コグ34,34の間に形成された溝35の底部から心線12までの距離aがa=0.6mmで、隣接する下コグ24,24の間に形成された溝25の底部から心線12までの距離bがb=1.9mmで、下コグ24のコグ高さh1がh1=5.5mmで、隣接する下コグ24,24の間に形成された溝25の底部から隣接する上コグ34,34の間に形成された溝35の底部までの距離eがe=3.7mmで、下コグ24のピッチP1がP1=9.5mmである。下コグ形成部本体22及び上コグ形成部30のゴム硬度は88度である。また、ベルト1の総厚Hは、ダブルコグドVベルトからなる後述のベルト2〜4の総厚Hに比べて小さい。
【0038】
<ベルト2>
ベルト2は、従来の大排気量エンジン用のダブルコグドVベルトを改良したものである。ベルト2は、総厚HがH=15.0mmで、距離aがa=0.6mmで、距離bがb=2.3mmで、コグ高さh1がh1=7.1mmで、距離eがe=4.1mmで、P1がP1=11.0mmである。その他の点に関しては、ベルト1とほぼ同様である。
【0039】
<ベルト3>
ベルト3は、従来の大排気量エンジン用のダブルコグドVベルトを改良したものである。ベルト3は、総厚HがH=15.0mmで、距離aがa=0.6mmで、距離bがb=2.3mmで、コグ高さh1がh1=7.1mmで、距離eがe=4.1mmで、P1がP1=11.0mmである。また、下コグ形成部本体22及び上コグ形成部30のゴム硬度は93度である。その他の点に関しては、ベルト1とほぼ同様である。
【0040】
<ベルト4>
ベルト4は、従来の大排気量エンジン用のダブルコグドVベルトである。ベルト4は、総厚HがH=13.8mmで、距離aがa=1.5mmで、距離bがb=2.4mmで、コグ高さh1がh1=6.5mmで、距離eがe=5.1mmで、P1がP1=11.0mmである。その他の点に関しては、ベルト1とほぼ同様である。
【0041】
<ベルト5>
ベルト5は、底部面側のみにコグが形成された従来のシングルコグドVベルトである。ベルト5は、総厚HがH=10.6mmで、隣り合うコグの間に形成された溝の底部から心線までの距離bがb=2.3mmで、コグ高さh1がh1=5.0mmで、P1がP1=9.5mmである。
【0042】
(試験方法)
上述のベルト1〜5に対して、以下に示すベルト曲げ剛性試験とベルト伝動能力試験とを行った。
【0043】
<ベルト曲げ剛性試験>
図3に示すベルト曲げ剛性測定装置40を用いて、ベルト1〜5の曲げ剛性を算出した。このベルト曲げ剛性測定装置40は、上下に可動自在に構成された上側プレート41と、ロードセルに接続された下側プレート42とを備えている。そして、ベルトの曲げ剛性を測定するときには、上側及び下側プレート41,42のそれぞれにベルトの上コグが接するように、上側及び下側プレート41,42でベルトを挟み込む。それから、上側プレート41を下方に移動させ、そのときの荷重Wをロードセルで検知する。そして、下記の関係式からベルトの曲げ剛性を算出する。なお、ベルトの巻き掛け径hは、上側プレート41側のベルトの心線の中心と下側プレート42側のベルトの心線の中心との間の距離である。
【0044】
【数1】
【0045】
<ベルト伝動能力試験>
図4に示す走行試験機を用いて、ベルト1〜5の伝動能力を求めた。走行試験機はプーリ径68.8mmの駆動プーリ61と、プーリ径112mmの従動プーリ62とを備えている。そして、ベルトの伝動能力を求めるときには、駆動プーリ61と従動プーリ62との間にベルトを巻き掛け、ベルトの側面に125kgf(1226N)の推力を与えた。それから、室温下で駆動プーリ61を2000rpmで回転させた。そのとき、駆動プーリ61及び従動プーリ62の回転数を計測し、伝達トルクを変えたときにおける見掛けのスリップ率(ベルトの変形によるベルトのプーリ内側への落ち込み及びベルトの伸びによるスリップ率を含むもの)を求めた。そして、伝達トルクと、理論駆動プーリ径(心線中心位置でのベルト幅(ベルトピッチ幅)が変化しないと仮定して、そのベルト幅と同一のプーリ幅を有する位置でのプーリ径)と、レイアウトとから下記関係式で定義されるST値をベルトの伝動能力指標として求めた。なお、この伝動能力、すなわち、ST値は、スリップ率が4%のときのものとした。
【0046】
【数2】
【0047】
また、同様にして、図5に示すプーリ径127.4mmの駆動プーリ61とプーリ径105.8mmの従動プーリ62とを備えた走行試験機を用いて、ベルト1〜5の伝動能力を求めた。そして、ベルトの伝動能力を求めるときには、駆動プーリ61と従動プーリ62との間にベルトを巻き掛け、ベルトの側面に105kgf(1030N)の推力を与えた。それから、室温下で駆動プーリ61を2000rpmで回転させた。そのとき、駆動プーリ61及び従動プーリ62の回転数を計測し、伝達トルクを変えたときにおける見掛けのスリップ率を求めた。そして、伝達トルクと理論駆動プーリ径とレイアウトとから上述の関係式で定義されるST値をベルトの伝動能力指標として求めた。なお、この伝動能力は、スリップ率が2%のときのものとした。
【0048】
(試験結果)
表1は、ベルト1〜5に対して行った上述の試験の結果を示している。
【0049】
【表1】
【0050】
また、図6〜8はそれぞれ、ベルトの距離bとベルトの曲げ剛性との関係、ベルトの距離eとベルトの曲げ剛性との関係及びベルトの曲げ剛性とスリップ率4%のときにおけるベルトの伝動能力との関係を示している。
【0051】
表1、図6及び図7から明らかなように、ベルト1の曲げ剛性は、他のベルトの曲げ剛性に比べて低い。具体的には、ベルト2の曲げ剛性の値を100と仮定すると、ベルト1の曲げ剛性の、ベルト2の曲げ剛性に対する比率は72.7である。
【0052】
また、表1及び図8から明らかなように、スリップ率4%のときにおけるベルト1の伝動能力は、スリップ率4%時における他のベルトの伝動能力に比べて低くない。具体的には、スリップ率4%時におけるベルト2の伝動能力の値を100と仮定すると、スリップ率4%時におけるベルト1の伝動能力の、スリップ率4%時におけるベルト2の伝動能力に対する比率は97.5である。
【0053】
また、表1から明らかなように、スリップ率2%のときにおけるベルト2の伝動能力は、スリップ率2%時における他のベルトの伝動能力に比べて低くない。具体的には、スリップ率2%時におけるベルト2の伝動能力の値を100と仮定すると、スリップ率2%時におけるベルト1の伝動能力の、スリップ率2%時におけるベルト2の伝動能力に対する比率は91.1である。
【0054】
以上により、本実施形態に係るダブルコグドVベルトBによれば、ベルトBの伝動能力の低下を防ぎながら、ベルトBのコンパクト化と曲げ剛性の低下とを図ることができる。
【0055】
なお、本実施形態では、ダブルコグドVベルトBが中・低排気量のエンジンを有する2輪車等の変速機の変速ベルトとして用いられると記載しているが、本実施形態に係るダブルコグドVベルトBが2輪車等以外の他の車両における変速機の変速ベルトとして用いられてもよい。さらに、車両以外の他の装置に用いられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係るダブルコグドVベルトの斜視図である。
【図2】実施形態に係るダブルコグドVベルトの縦断面図である。
【図3】実施形態に係るベルト曲げ剛性測定装置の構成図である。
【図4】ベルトの伝動能力を求める走行試験のレイアウト図である。
【図5】ベルトの伝動能力を求める走行試験のレイアウト図である。
【図6】ベルトの距離bとベルトの曲げ剛性との関係を示した図である。
【図7】ベルトの距離eとベルトの曲げ剛性との関係を示した図である。
【図8】ベルトの曲げ剛性とベルトの伝動能力との関係を示した図である。
【符号の説明】
B ダブルコグドVベルト
10 心線埋設部
20 下コグ形成部
30 上コグ形成部
40 ベルト曲げ剛性測定装置
61 駆動プーリ
62 従動プーリ
Claims (2)
- ベルト長手方向に延びる心線が埋設された心線埋設部と、該心線埋設部の内周側に設けられ且つベルト長手方向に沿って一定のピッチで形成された下コグを有する下コグ形成部と、上記心線埋設部の外周側に設けられ且つベルト長手方向に沿って一定のピッチで形成された上コグを有する上コグ形成部とを備えたダブルコグドVベルトであって、
上記ベルトの厚さ方向に関して、隣り合う下コグの間に形成された溝の底部から心線までの距離が0.4mm以上且つ2mm以下であることを特徴とするダブルコグドVベルト。 - ベルト長手方向に延びる心線が埋設された心線埋設部と、該心線埋設部の内周側に設けられ且つベルト長手方向に沿って一定のピッチで形成された下コグを有する下コグ形成部と、上記心線埋設部の外周側に設けられ且つベルト長手方向に沿って一定のピッチで形成された上コグを有する上コグ形成部とを備えたダブルコグドVベルトであって、
上記ベルトの厚さ方向に関して、隣り合う上コグの間に形成された溝の底部から隣り合う下コグの間に形成された溝の底部までの距離が1.5mm以上且つ4mm以下であることを特徴とするダブルコグドVベルト。
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