JP2004353730A - 軸受装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ハウジングと、ハウジングに配設された保持部材と、保持部材に対して相対移動自在に可動部材とを備え、可動部材4が保持部材に対して相対移動する。保持部材及び可動部材4のうちの少なくとも一方に、球状微粒子51を分散させた塗膜50が設けられている。これにより塗膜50の表面に微小凹凸を形成しており、保持部材及び可動部材4は多点接触を図り得る。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電磁弁、モータ等に代表される軸受装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
軸受装置の代表例には電磁弁が知られており、電磁弁を例にとって従来技術を説明する。従来、電磁弁はハウジングの内部に、磁性部と非磁性部を有し、コイルが巻回されたヨーク部材を備え、ヨーク部材の中でプランジャが移動自在な構成となっている。電磁弁はコイルに通電を行って、コイルを励磁させることにより、コイルから磁束が発生し、ヨークおよびプランジャとの間で磁気回路が形成される。その結果、プランジャがコイルの励磁に比例した電磁力によって移動する構成となっている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この場合、プランジャはヨーク部材の中に軸受され、同軸性をもってヨーク部材に対して移動自在に配設される。上記した構成において、コイルで発生した磁界を効率的に磁気回路に伝播させ、プランジャの駆動力に変換するには、ヨーク部材とプランジャとの空隙(エアギャップ)は狭いほど良い。また、ヨーク部材とプランジャとの間の摩擦係数は小さい程、プランジャに発生する駆動力を効率良くプランジャの軸方向における移動力に変換することができる。更に、ヨーク部材とプランジャとの同軸度が高い程、プランジャの移動時におけるヒステリシス特性が小さくなる。
【0004】
ところで、上記した特許文献1に示される構成に代表されるように、プランジャの軸方向における移動を円滑に行わせる為、プランジャとヨーク部材との間に、同軸度を高める目的で、プランジャの軸方向に軸受部材を設ける方法が取られる。
【0005】
この様に別部品としての軸受部材をヨーク部材に設ける場合には、軸受部材を設けるヨーク部材の取り付け部位の加工精度と、軸受部材の軸受寸法(例えば、軸受部材の内径)の加工精度と、軸受部品のヨーク部材への嵌め合い精度に応じて、プランジャの外径と軸受部材の内径との間には、必ず空隙が必要になる。この空隙を小さくするには、上記した加工精度と嵌め合い精度を向上させなければならない。
【0006】
電磁弁においては、強磁性体からヨーク部材やプランジャが形成されている場合、ヨーク部材やプランジャに磁界が印加されると、プランジャには磁気的な吸引力が作用し、移動抵抗となるサイドフォースがプランジャに作用する。つまり、プランジャは、このサイドフォースによって、望ましくない挙動が起こり得る。
【0007】
つまり、プランジャにヨーク部材を介して磁界が印加されると、プランジャとヨーク部材との間に、磁気的な吸引力が作用する。その結果、磁気吸引力がプランジャに対して、サイドフォースとして作用し、サイドフォースの周方向の分力によって、プランジャがヨーク部材側に移動する。このサイドフォースにより、プランジャには軸方向以外の力が発生するので、本来の印加された磁界の大きさに比例した軸方向のリニアな動きになりにくく、前記したようにヒステリシス特性が生じる。また、この磁気的な吸引力は、プランジャとヨーク部材とが吸着してしまう原因ともなり得る。
【0008】
そこで、プランジャとヨーク部材との吸着を防止し、プランジャとヨーク部材との摺接面の摩擦係数を低下させて、プランジャの軸方向への移動効率を良くする為、ヨーク部材の内周面及びプランジャの外周面のいずれか一方に、テフロン系のコーティング処理を施す技術が知られている(例えば、特許文献2)。この様なコーティング処理により成される被膜の形成には、一般的に溶射法、イオンプレーティング法、PVD法、CVD法、塗膜法、メッキ法と言った方法が知られている。
【0009】
【特許文献1】特開2001−336662号公報(図1)
【特許文献2】特開2000−46225号公報(第3頁 第14段落、図1)
【0010】
しかしながら、上記した被膜を形成する方法では、膜厚が薄くなる程、一定の膜厚精度が出しにくいというような問題を持っている。
【0011】
従って、ヨーク部材の内周面及びプランジャの外周面のいずれか一方に、球状粒子を含まないテフロン系のコーティング処理を施す方法では、被膜の密着強度が弱く、均一な膜厚に精度良くすることができないと共に、コーティング膜を一定の膜厚に以下にしにくい。このことから、プランジャとヨーク部材との間の空隙が大きくなり、磁気伝達効率を低下させてしまう。
【0012】
本発明は上記した問題点に鑑みてなされたものであり、摺動性を向上させることができ、しかも軸受部に被膜を形成した場合に膜厚精度が出し易い電磁弁、モータ等に代表される軸受装置を提供することを技術的課題とする。
【0013】
【課題を解決する手段】
(1)第1発明の軸受装置は、ハウジングと、ハウジングに配設された保持部材と、保持部材に軸受され保持部材に対して相対移動自在な可動部材とを備え、可動部材が保持部材に対して相対移動する軸受装置において、
保持部材及び可動部材のうちの少なくとも一方に、球状粒子を分散させた塗膜が設けられ、球状粒子による凹凸を前記塗膜の表面に形成したことを特徴とするものである。
【0014】
(2)第2発明の軸受装置は、ハウジングと、ハウジングに配設されコイルが巻回されたヨーク部材と、ヨーク部材に軸受されヨーク部材に対して相対移動自在なプランジャとを備え、コイルの励磁または消磁により、プランジャがヨーク部材に対して相対移動する軸受装置において、
保持部材及び可動部材のうちの少なくとも一方に、球状粒子を分散させた塗膜が設けられ、球状粒子による凹凸を塗膜の表面に形成したことを特徴とするものである。
【0015】
(3)第3発明の軸受装置は、ハウジングと、ハウジングに配設された軸受と、軸受に回転可能に保持されたシャフトとを備えた軸受装置において、
軸受及びシャフトのうちの少なくとも一方に、球状粒子を分散させた塗膜が設けられ、球状粒子による凹凸を塗膜の表面に形成したことを特徴とするものである。
【0016】
(4)第1発明〜第3発明によれば、保持部材(ヨーク部材、軸受等)と可動部材(プランジャ、シャフト等)との間に、球状粒子を混合した薄い塗膜を設け、この球状粒子によって凹凸を形成している。このため塗膜表面の凹凸に基づいて生じる多点接触によって摺動に伴う接触面積を縮減させること可能になる。ひいては保持部材(ヨーク部材、軸受等)と可動部材(プランジャ、シャフト等)との摺動性を向上させることができる。更に塗膜であるため、膜厚が薄いときであっても膜厚精度が確保される。
【0017】
【実施の形態】
保持部材としてはヨーク部材、軸受が例示される。可動部材は保持部材に対して相対移動自在に設けられているものであり、プランジャ、シャフトを例示できる。可動部材の移動方向としては軸方向、周方向のいずれでも良く、要するに保持部材に対して相対的に移動自在に設けられているものであれば良い。
【0018】
各発明によれば、保持部材(ヨーク部材、軸受等)と可動部材(プランジャ、シャフト等)との間に、球状粒子が混入された塗膜が形成されているので、混入された球状粒子の大きさと配合割合に応じて凹凸が形成される。これによって、保持部材と可動部材とは多点接触で摺接され、保持部材と可動部材との摺接面積が縮小し、この結果、保持部材と可動部材との滑り摩擦が低下する。
【0019】
上記した球状粒子が混入された塗膜は、保持部材(ヨーク部材、軸受等)の表面に形成してもよいし、あるいは、可動部材(プランジャ、シャフト等)の表面に形成しても良い。塗膜の厚みは、可動部材、保持部材の種類、摺動部の長さ、球状粒子によっても相違するが、一般的には、上限値としては200μm以下、100μm以下、80μm以下、50μm以下とすることができ、下限値としては、1μm以上とすることができる。
【0020】
上記のように球状粒子を混入することで塗膜の表面に積極的に微小な凹凸状態を形成し、互いに摺接する摺接面積を低減するという性質を利用することで、保持部材と可動部材との空隙を塗膜のみで形成するよりも、滑り摩擦抵抗を低下させることができ、これにより保持部材と可動部材との摺動性を向上させることが可能になる。
球状粒子の平均粒径としては100μm以下を採用でき、80μm以下、50μm以下、20μm以下、10μm以下を例示できる。球状粒子の平均粒径の下限としては0.2μm以上を例示できる。なお本明細書では、球状粒子の平均粒径は粒径分布の最頻度径を意味する。
【0021】
球状粒子としては、金属の球状粒子(銅粒子を含む)、金属酸化物の球状粒子、金属窒化物の球状粒子、金属炭化物の球状粒子などが挙げられる。コスト、硬度、強度、真球度、耐食性等を考慮すると、金属酸化物の微粒子が好ましい。金属酸化物の微粒子としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、マグネシア等を例示できるが、製造コスト等からシリカの微粒子が有利である。塗膜としては、高分子材料であればよく、エポキシ樹脂塗料、フッ素樹脂塗料、シリコーン樹脂塗料を例示できる。
【0022】
ところで、軸受装置の代表例である電磁弁に適用した場合には、プランジャとヨーク部材との空隙は狭い程、プランジャとヨーク部材との磁束の透過効率が高くなる。これによって、磁気回路中で磁束を効率よく伝播させることが可能となる。しかし、プランジャとヨーク部材との空隙が狭くなればなる程、両者が機械的に接触し易くなり、両者の摺接面に傷が付いたり、被膜が剥がされ易くなる不具合が生じる。しかしーク部材とプランジャとは球状粒子で接触し、かつ、球状粒子に対するバインダーとなる塗膜が、球状粒子が受ける摺接時の荷重のクッションとなり得る。
【0023】
これによって、プランジャ等の可動部材とヨーク部材等の保持部材との摺接面では、球状粒子を摺接媒体として滑らかに摺動することが可能となる。また、塗膜は高分子材料を基材とすることから、摺接時に球状粒子が受ける荷重を合成樹脂の塗膜が弾性変形することで吸収する。これによってプランジャ等の可動部材とヨーク部材等の保持部材とは、滑らかな摺動を維持して行うことが可能である。上記した構成では、可動部材の軸受となる軸受部材を廃止することも期待でき、プランジャ等の可動部材とヨーク部材等の保持部材との同軸度の精度を向上させることが可能となる。また、プランジャ等の可動部材とヨーク部材等の保持部材との間の塗膜が合成樹脂の塗膜であれば、塗膜が非磁性となり、また球状粒子が非磁性体であれば、保持部材と可動部材との磁気吸着が抑制される。この場合、合成樹脂の塗膜に混入された球状粒子は、摺接面に存在すると、保持部材と可動部材との間は、多点接触による摺接が形成されるので、合成樹脂の塗膜のみの場合に比べて、摺動磨耗性を向上させることが可能である。
【0024】
ここで、上記の保持部材と可動部材との界面の性質を改質することに適した、球状粒子の適性を、球状粒子に求められる機能から、以下に説明を加える。塗膜に混入する球状粒子は、混入された球状粒子が効率よく塗膜表面に凹凸を形成し、多点接触させることが望ましい。この場合、球状粒子の形状としては真球状に近いものが好ましい。球状粒子の粒径の大きさは、可動部材や保持部材のうち、塗膜が形成される塗布面(塗膜形成前)の表面粗さ以上よりも大きく塗膜の膜厚よりも小さくすることで、球状粒子が塗膜表面に現れる頻度が確保され、球状粒子により効率よく表面に凹凸を形成することが可能になる。
【0025】
さらにまた、上記の大きさを持つ球状粒子を塗膜に混入する混入率については、球状粒子の種類、可動部材や保持部材の種類等によっても相違するものの、塗膜基材と球状粒子との合計を100%としたとき、球状粒子の混合割合を体積割合で、3%以上以上にすれば、表面に凹凸を効率よく且つ容易に形成することが可能になる。一方、塗膜基材と球状粒子との合計を100%としたとき、体積割合で、球状粒子の混合を30%以下にすることで、球状粒子の多層化を抑制でき、球状粒子と塗膜との良好な結合が得られ易くなる。この結果、熱ストレスを受けても、球状粒子が塗膜から引き剥がされにくくなる利点が得られる。
【0026】
上記した事情を考慮すれば、塗膜基材と球状粒子との合計を100%としたとき、球状粒子の混合割合としては、体積割合で、3%以上とすることができ、または、30%以下とすることができる。
【0027】
保持部材と可動部材との滑り摩擦係数を下げるため、球状粒子による凹凸を形成するだけでなく、塗膜に混入される球状粒子自体はその摩擦係数が小さいことが望ましい。このため、球状粒子は硬質の球から形成されることが好ましい。
【0028】
更にまた、自動車の部品として使用される電磁弁を構成する可動部材や保持部材の表面を改質するために使用される場合では、球状粒子は150℃程度の耐熱性をもつことが好ましい。更に電磁弁が自動車の変速機に組み込まれ、変速機の油路の制御に用いられる場合は、鉱物油に対する化学的安定性を有することが好ましい。これらの性質から、球状粒子を構成する材質としては金属酸化物、殊に、シリカガラスが望ましい。モータ等の他の軸受装置に適用する場合についても同様である。
【0029】
更にまた、球状粒子がより厳しい熱衝撃を受けた際や、より高温の動作時においては、球状粒子と塗膜との接着力をより大きくすることが求められる。このような場合、球状粒子の表面を多孔質にすることで、球状粒子の表面において、球状粒子と塗膜との接着力が向上する。この場合、球状粒子の表面の動摩擦係数を増大することを抑える等のため、球状粒子の表面の微細孔の大きさの平均は、球状粒子の球径の例えば10−2以下、10−3以上にすることができる。
【0030】
次に、上記の球状粒子を分散させる高分子材料を基材とする塗膜の構成を、塗膜に求められる機能から、可動部材に塗膜を形成する場合を例にとって以下に説明を加える。保持部材に塗膜を形成する場合でも同様である。合成樹脂を基材とする塗膜は、可動部材の表面粗さを覆い隠すとともに、出来る限り薄い膜厚をもつ塗膜を形成することで、可動部材と保持部材との間隙を狭めることができ、これによって電磁弁等の軸受装置が形成する磁気回路中の磁気の伝播効率が向上することを期待できる。このため、塗膜の厚みとしては、塗膜を形成する前の塗布面の表面粗さの1.5倍以上で3倍以内(または2.5倍以内)の厚さで塗膜を形成させることが良い。ここで、表面粗さとは谷から山までの大きさをいい、(特異的な谷や山を除く)、Raで求めることができる。
【0031】
一般的に、可動部材を機械加工する場合には、仕上げ加工を不要とする表面の粗さは3.2μm近傍である。従って、安価な構成で、可動部材の表面を球状粒子が混入された合成樹脂を基材とする塗膜で改質するためには、可動部材の表面粗さは3.2μm近傍として考えても実用的には支障が無い。ここでは可動部材の表面の粗さが3.2μm近傍である場合、以下に塗膜を構成する内容について説明する。
【0032】
塗膜の膜厚は、前記で述べたように、塗膜を形成する前の塗布面の表面粗さの1.5倍以上で3倍以内が望ましい。故に、塗布面の表面粗さが3.2μm近傍の場合では、一般的には、塗膜の膜厚は4.8μm以上で9.6μm以下にすることができる。このような薄い膜厚で塗布面の表面に塗膜を形成させるためには、塗料の粘度を低粘度(例えば10cP以下、5cP以下、1cP以下)にすることが好ましい。ここで、1cP=1×10−3Pa・sに相当する。
【0033】
塗布面の表面の粗さを3.2μm近傍とし、塗膜の膜厚を4.8μm以上で9.6μm以下とした場合には、前記の球状粒子の粒径は3.2μm以上で12.8μm以下にすることが好ましい。
【0034】
ところで、可動部材の表面に安価な方法で、略均一な膜厚の塗膜を形成させる代表的な手段として、スピンコートによる方法が例示される。この場合、可動部材を磁気吸着によって塗装装置に固定した後、可動部材を塗料の容器中に浸漬する。この後、可動部材を塗料の容器から引き上げ、可動部材を回転させ、可動部材の表面に付着した塗膜の厚みを均一化させる。この後、可動部材の磁気吸着を開放し、可動部材を塗装装置から取り出す。こうして、少ない塗装回数(例えば一回の塗装)によって可動部材の表面に塗膜を形成させる。
【0035】
塗料中に混入された球状粒子は、密度がほぼ1に近い塗料に対して質量比をもつ。このため、前記の塗料に混入された球状粒子は、自然放置しておくと、質量比によって沈降する。このため、前記塗装装置に固定された可動部材は、塗装装置内でも回転させ、これによって塗料中の球状粒子が攪拌される。塗料中の球状粒子が均一に分散された状態で、可動部材の塗布面に塗料を担持させる。
【0036】
さらにまた、前記の塗料は形成される塗膜の厚みを薄くするため、塗膜となる塗料は溶剤で低粘度(例えば10cP以下、5cP以下、1cP以下)に希釈されていることが好ましい。この場合、塗膜の乾燥時に溶剤が蒸発し、これによって塗膜が収縮し、波を打ったような不均一な膜厚状態が形成されることがある。この場合、せっかく球状粒子を塗料溶液中で分散させ、かつスピンコートで塗膜を均一にさせたことが無駄になるおそれがある。このため、塗料の分散剤を予め混合し、これによって塗膜の乾燥時の収縮を抑えることが好ましい。
【0037】
次に、塗膜は、塗膜を形成した塗布面におけるアンカー効果によって、接着強度が図られる。このため、塗布面の表面粗さが3.2μm近傍等のように小さいときであっても、塗料の表面張力が小さく、塗料が塗布面の表面の凹凸に入り込むことが好ましい。液体の表面張力は、基本的にはモル体積比の2/3に反比例することがエトヴェシュの法則として知られている。使用する塗料の粘度を低粘度(5cP以下、1cP以下)のまで溶剤で希釈されることで、塗料の密度も低下し、この結果、塗料の表面張力が低下し、塗布面の表面の小さな凹凸にも塗料が入り込むことが可能になる。上記は塗布面が可動部材の表面である場合について説明したが、これに限らず、保持部材の表面であっても同様である。
【0038】
上記で説明した塗膜を構成する塗料として、流動性に優れ、かつ200℃の耐熱性をもち、吸湿性が重量増加率で低い(例えば、僅か0.1wt%未満)である高分子材料を採用することが好ましい。また、アルコール等の汎用的な溶剤に溶けやすく、また、溶剤による溶解度が幅広く設定でき、これによって塗料の粘度を幅広く設定できる。この高分子材料として、ラダーシリコーンと呼ばれるラダー型の構造を有する高分子材料がある。従来のシリコーン樹脂の構造が、鎖のような直線構造であるのに対し、ラダーシリコーンは、はしごのような構造をしている。化1〜化4はラダーシリコンの構造の例を示す。化1〜化4ではシロキサン結合(Si−O結合)の側鎖の酸素の代わりに、メチル基(CH3)及びフェニル基(C6H5)のうちの一方または双方が結合している。化1では側鎖にメチル基(CH3)及びフェニル基(C6H5)の双方が結合しているが、メチル基(CH3)はフェニル基(C6H5)よりも多い。化2では側鎖にメチル基(CH3)が結合している。化3では側鎖にメチル基(CH3)及びフェニル基(C6H5)の双方が結合しているが、メチル基(CH3)よりもフェニル基(C6H5)が多い。化4では側鎖にフェニル基(C6H5)が結合している。上記のようにラダー構造のシリコーン樹脂は4種類の分子構造をもつが、耐熱性の薄い膜を形成させるためには、側鎖のメチル基(CH3)とフェニル基(C6H5)とのモル比が2対1で ある構造をもつもの(化1)が適している。
【0039】
【化1】
【0040】
【化2】
【0041】
【化3】
【0042】
【化4】
【0043】
上記のラダーシリコーン樹脂を高分子材料として用いることができる。これを目標とする粘度まで溶剤(例えば、イソプロピルアルコールのようなアルコール)で希釈することが好ましい。また、ラダーシリコーンの分散剤としては、シリコーンオイルを用いることができる。文献によれば、ラダー構造のシリコーン・オリゴマーは引張り強さが250kgf/cm2、圧縮強さが2100kgf/cm2、曲げ強さが350kgf/cm2の値をもち、引張り応力に比べて圧縮応力と曲げ応力に強い性質をもち、球状粒子のクッション剤として適性な性質をもつ。
【0044】
表1は、上記した球状粒子の性質、球状粒子に求められる機能、球状粒子の適性をまとめて示す。また表1は、上記した塗膜の性質、塗膜に求められる機能、塗膜の適性をまとめて示す。
【0045】
【表1】
【0046】
【実施例】
以下、本発明の実施例について、図1、図2を参照して説明する。本実施例は軸受装置の代表例である電磁弁に適用した場合である。
【0047】
図1は、本実施例のアクチュエータである電磁弁1の構成を示す。電磁弁1は、ハウジング11と、ハウジング11に配設され励磁用のコイル13が巻回され内孔1bをもつ強磁性を有する材料で形成された保持部材としての金属製のヨーク部材5と、ヨーク部材5の内孔1bの中で移動自在な強磁性を有する材料で形成された可動部材としての金属製のプランジャ4とを備えている。
【0048】
本実施例においては、ヨーク1aの周囲に巻回されたコイル13まで含めたものをヨーク部材5としている。ヨーク部材5は保持部材として機能できる。プランジャ4は可動部材として機能できる。
【0049】
ヨーク部材5の内孔1bはヨーク部材5の径方向の中央に形成されている。外部から電流をコイル13に流してコイル13を励磁させると、ヨーク部材5の内孔1bに沿ってプランジャ4は軸方向に沿って矢印X1,X2方向に移動する。
【0050】
ヨーク1aは強磁性体(例えば、純鉄 SUYB φ8.9)から形成されており、軸方向における中央が凹部1cとなった中空円筒状を呈する。ヨーク1aには、軸方向における中央が磁気を絶縁する非磁性部7が形成され、その両側に磁性絶縁性部(磁性部)6が形成されている。ヨーク1aは、軸方向両端が径方向に延在する円周状のフランジ1eを有する。このフランジ1eによって形成される中央の凹部1cには、絶縁層(例えばボビン)12を介して、コイル13が巻回された構成となっている。
【0051】
ヨーク1aの中央に形成されている内孔1bは、小径孔1sと大径孔1rを有しており、軸方向に沿って貫通するように形成されている。小径孔1aと大径孔1rに軸受された状態で、プランジャ(例えば鉄系 ELC H2 φ8.89)4が軸方向につまり矢印X1,X2方向に移動自在に挿通されている。
【0052】
次に、上記した構成の電磁弁1の作動について説明を加える。図示しないコネクタから励磁用のコイル13に対して通電がなされる。コイル13に通電がなされると、コイル13は励磁される。励磁によりコイル13に発生した磁界に基づく磁束は、ヨーク1a(例えば、図1に示す左側)から、ヨーク1aの内周面とプランジャ4の外周面との間の空隙(エアギャップ)を介してプランジャ4に伝搬される。そしてその磁束は、プランジャ14からヨーク(例えば、図1に示す右側)1aを通って、再度、コイル13に戻り、ハウジング11内で閉ループの磁気回路が形成される。
【0053】
この場合、コイル13に通電した電流に比例する磁界が生じる。その結果、プランジャ4には駆動力が作用し、プランジャ4は磁気的な吸引力によって、軸方向に引かれて、ヨーク1aの内孔1bの内壁に沿って軸方向に移動する。
【0054】
上記した構成の電磁弁1において、プランジャ4とヨーク部材5との摺接面9に位置するように、球状粒子を分散させた塗膜50がプランジャ4の表面に被覆されており、塗膜50の表面に微小凹凸を形成している。
【0055】
プランジャ4について更に説明を加える。プランジャ4は、鉄系の金属材料からなる円柱状の構造体と、その表面に形成された合成樹脂を基材とする塗膜50からなる。図2に示すように、塗膜50は、ラダーシリコーン樹脂を基材として形成されており、真球状のシリカガラスの多数の球状粒子51を分散させている。プランジャ4は、基本的には、円柱形状のφ8.9×17.8mmの寸法を有する。但しこの寸法に限定されるものではない。
【0056】
このプランジャ4の外周面を含む表面には、ラダーシリコーンを基材とする塗膜50が被覆されている。塗膜50の基材であるラダーシリコーンは、塗布時における流動性に優れ、かつ耐熱性をもち、吸湿性が低い高分子材料である。
【0057】
図2は、プランジャ4の表面に形成された塗膜50の内部構造を模式化して示す。プランジャ4の表面は3.2μmの表面粗さh1を持つ。この表面に、5μmの厚み(t1)でラダーシリコーン樹脂を基材とする塗膜50が形成されている。ラダーシリコーン樹脂からなる塗膜50には、多数のシリカガラスの球状粒子51が混入されており、球状粒子51が塗膜50の表面から部分的に露出している。シリカガラスの球状粒子51は、粒径が3.2μmから5.0μmの大きさを持つ微粒子が、微粒子全体の約50%の割合を占める粒径分布から構成されている。
【0058】
図3は、プランジャ4の表面に形成する塗膜50の製作プロセスの例を示す。図3に示すように、最初に、ラダーシリコーン樹脂と分散剤との合計を100%としたとき、ラダーシリコーン樹脂に分散剤(シリコーンオイル)を3%から10%の体積割合で混入し、混合物を形成する。その後、混合物を攪拌し、母材であるシリコーン樹脂に分散剤を均一に分散させる。
【0059】
この後、ラダーシリコーン樹脂を所定の粘度まで、溶剤である希釈剤(イソプロピルアルコール)で希釈し、攪拌する。5μmの膜厚で塗膜50を形成させる場合には、ラダーシリコーン樹脂と分散剤と希釈剤とを100%としたとき、体積割合で、希釈剤(イソプロピルアルコール)が90%を占めるように、ラダーシリコーン樹脂の塗料を希釈させる。
【0060】
次に、ラダーシリコーン樹脂と分散剤と希釈剤と球状粒子との合計を100%としたとき、希釈した塗料に球状粒子51(シリカガラス球)を5%の重量割合(体積割合で13%に該当する)で混入し、攪拌する。ここで用いるシリカガラス球は、珪酸ソーダ法によって作成された真球状のアモルファスシリカの微小な一次粒子を加圧し、これを昇温してアモルファスシリカの微小な一次粒子を接合したガラス球(図8,図9参照)である。即ち、珪酸ソーダ法によって形成されたアモルファスシリカは、モノケイ酸2Si(OH)4をジケイ酸(OH)3SiOSi(OH)3と水H2Oに分解して得られるジケイ酸を重合させて、3〜30ナノメートルの球状の1次粒子を作成し、更に、この1次粒子を縮合させて、粒径が2〜200μmの2次粒子を作成する。いわゆるシリカゲルと呼ばれるアモルファスシリカである。ここで、重合時間を変えることにより、重合の結果生成される1次粒子の大きさが自由に変えられる。更に、縮合時間を変えることにより、縮合の結果生成される2次粒子の大きさが自由に変えられる。これによって、2次粒子の大きさや孔の大きさを自由に変えられるという特長を有するアモルファスシリカとなり、形成する塗膜の厚みに応じてアモルファスシリカの粒子の大きさを選択することができる。
【0061】
次に、球状粒子51(シリカガラス球)が混入されたラダーシリコーン樹脂の希釈塗料に、プランジャ4を浸漬する。プランジャ4の表面に平坦な塗膜50を形成させるため、ここではスピンコート法によって塗膜50を形成する。
【0062】
ここでスピンコートによる塗膜50の形成ついて説明を加える。最初に、プランジャ4を磁気吸着で塗膜形成装置の冶具に固定する。この後、その冶具を所定の回転数(300rpm程度)で回転させ、これによってプランジャ4を回転させながら塗料の容器に10秒間程度浸漬する。その後、プランジャ4を塗料の容器から引き上げ、さらにプランジャ4を所定時間(10秒間程度)回転させ、プランジャ4の表面の塗膜50の膜厚を均一化させる。この後、プランジャ4の塗膜50を形成しない面を下にして、冶具からプランジャを引き離し、所定の温度(85℃程度)に昇温された乾燥炉にプランジャ4を所定時間(1分程度)入れる。
【0063】
この後、プランジャ4上のラダーシリコーン樹脂を180℃の温度に10分放置して固化させる。ラダーシリコーン樹脂は、シリコーンの鎖の末端にアルコキシル基(RO−)をもち、これを熱反応させることで硬化させる。こうして、プランジャ4の表面にラダーシリコーン樹脂を基材とする塗膜50が形成される。
【0064】
ラダーシリコーン樹脂の希釈剤として用いたイソプロピルアルコールの沸点は82.4℃であるので、乾燥炉に入ったプランジャ4の表面から瞬時に溶剤であるイソプロピルアルコールは蒸発する。よって、塗膜50には、固形物のラダーシリコーン樹脂と、樹脂中に混入されたシリカガラスの球状粒子51が分散された状態で形成される。
【0065】
塗料中に含まれる希釈剤としてのイソプロピルアルコールは体積割合で90%に及ぶので、イソプロピルアルコールが蒸発した後には、球状粒子51(シリカガラス球)の表面には、数十ナノメーターの厚みのラダーシリコーンの塗膜部分が形成される。この塗膜部分は球状粒子51(シリカガラス球)を結合する。
【0066】
また、体積割合で90%に及ぶ希釈剤のイソプロピルアルコールが瞬時に蒸発することで、ラダーシリコーン樹脂が凝集するおそれがある。これを防ぐために、予めラダーシリコーン樹脂の塗料には、前述したように、分散剤としてのシリコーンオイルを混入させている。
【0067】
こうして塗膜50表面には、塗布した塗料の厚みと、球状粒子51(シリカガラス球)の大きさと、球状粒子51(シリカガラス球)の塗料への混入割合に応じた微小な凹凸が形成される。この塗膜50の表面の凹凸の形成状態に応じて、多点接触が確保され、プランジャ4とヨーク部材5との摺接面積が決まり、この結果、両者の間の摺動摩擦抵抗が決まる。
【0068】
図2は、プランジャ4の望ましい表面状態を模式的に示す。ラダーシリコーン樹脂の塗料に混入した球状粒子(シリカガラス球)を、プランジャ4の表面に凹凸として効率よく形成させるためには、適切な球状粒子(シリカガラス球)の大きさと、球状粒子(シリカガラス球)の塗料への適切な配合を行うことが好ましい。
【0069】
球状粒子51(シリカガラス球)の粒径は、塗膜50の厚みt1よりも小さくすることで、球状粒子51(シリカガラス球)を塗膜50に埋設させつつ、球状粒子51の一部が塗膜50の表面に現れる頻度が増し、プランジャ4の表面に微小な凹凸を形成する。ここで図2に示すように、塗膜50の厚みt1は、塗膜50の表面からプランジャ4の粗さの谷までの距離相当である。
【0070】
また図2から理解できるように、球状粒子51(シリカガラス球)の粒径は、塗膜50の厚みt1からプランジャ4の表面粗さh1を引いた分の大きさより大きくすることで、球状粒子51(シリカガラス球)の一部が塗膜50の表面から露出する頻度が高くなり、プランジャ4の表面に微小な凹凸を効率よく形成することができる。更に球状粒子51(シリカガラス球)が塗膜50中に分散される間隔は、プランジャ4の表面粗さのピッチPより狭くすることで、上記の粒径を持つ球状粒子51(シリカガラス球)はその一部が、塗膜50の表面から露出する頻度が増加する。
【0071】
また球状粒子51(シリカガラス球)が塗膜50中に分散される間隔は、プランジャ4の表面粗さのピッチPの2分の1より広げることで、上記の粒径を持つ球状粒子51(シリカガラス球)はその一部が、塗膜50の表面から露出する頻度が増加する。ここで本例のプランジャ4の表面粗さのピッチは、表面粗さの略2倍である。
【0072】
また、球状粒子51(シリカガラス球)は真球状に近いほど、塗膜50の表面にその一部を露出する球状粒子51とヨーク部材5とが摺接する面積が小さくなり、これによってプランジャ4とヨーク部材5との摩擦抵抗が低下する。なお、真球状に近い球状粒子51は、基本的には、珪酸ソーダ法によるもの、ゾルゲル法によるもののいずれでも良いが、製造コストから珪酸ソーダ法が有利である。
【0073】
さて、球状のミクロンオーダーの微粒子は、一般的には、金属粒子と金属酸化物粒子とに大別される。金属酸化物に比べ、金属は硬度が低く、動摩擦係数が大きい。金属酸化物の微粒子として、アルミナ、ジルコニア、シリカ、マグネシア等の材質から成る球状粒子があるが、製造コストからシリカの微粒子が有利である。更にシリカの中で、珪酸ソーダ法によるシリカガラスが最も製造コストが低い。本実施例で用いる球状粒子51を形成するシリカガラスは、重量比で99.5%以上がシリカからなる。球状粒子の動摩擦係数は、一般的には0.3から0.6の数値を持つ。
【0074】
さらに、珪酸ソーダ法によるシリカガラス球は、無孔質のものと、表面に微細孔をもつ多孔質のものとがある。多孔質のシリカガラス球は、一般的には、微細孔の大きさが20〜1000オングストローム、または、50〜300オングストロームである。多孔質の球状粒子は無孔質の球状粒子に比べ、微細孔によって高分子材料であるラダーシリコーン樹脂との結合が良好になされるので、熱衝撃や高温動作時に受ける温度ストレスに対して有利になる。一方で、微細孔の大きさが相対的に大きくなると、動摩擦係数が増える。このような考えから、上記した微細孔を持つ多孔質のシリカガラス球を用いることができる。但し、無孔質のシリカガラス球を用いても良い。
【0075】
(第2実施例)
図4及び図5は第2実施例を示す。本実施例はアクチュエータとしてのモータに適用した例である。本実施例においても、第1実施例と基本的には同様の塗膜50が形成されている。図4に示すように、モータ9Aは、ハウジング90と、ハウジング90に固定される固定子としてのステータ91と、ステータ91に保持された励磁巻線92と、ハウジング90に配設される保持部材として機能できる軸受93と、軸受93に回転可能に保持された可動部材として機能できるシャフト94と、シャフト94に一体的に回転するようにシャフト94に保持された回転子として機能できるロータ95とを備えている。図5に示すように、シャフト94の外周面には、球状粒子51(シリカガラス球)を分散させた塗膜50が設けられ、塗膜50の表面に球状粒子51の一部が露出し、微小凹凸を形成している。従って、塗膜50は、ラダ―構造のシリコーン樹脂をバインダーとして球状粒子51(シリカガラス球)を分散させることにより形成されている。
【0076】
本実施例によれば、前述同様に、塗膜50の表面の凹凸によって摺動に伴う接触面積を縮減させること可能になり、軸受93の内周面とシャフト94の外周面との摺動性を向上させることができる。
【0077】
また球状粒子81は球状であるため、摺接部を多点接触によって摺接させることが可能となり、軸受93の内周面とシャフト94の外周面との間における摩擦力を低減させることが出来る。さらに球状粒子51が硬度の高いシリカガラス球であれば、摺接面の動摩擦係数を下げるのに有利となる。また、シャフト94の外周面のように、摺動機能が必要となる部位に直接に塗膜50を形成している。このため軸受93とシャフト94との同軸度が要請されるときであっても、同軸度の精度を確保することができる。なお本実施例によれば、シャフト94の外周面には、球状粒子51(シリカガラス球)を分散させた塗膜50が設けられているが、これに限らず、軸受93の内周面に、球状粒子51(シリカガラス球)を分散させた塗膜50が設けられている構成としても良い。
【0078】
(評価)
上記した実施例の効果を確認するため、鉄系の材料ELC H2材からなる厚さ5mmで直径20mmの円板を試料80とした。各試料80の片面に7種類の表面状態を形成し、表面状態を評価した。図6は、各試料80の表面状態の性能を評価する装置である。図6に示すように、前述の塗膜50を形成した試料80を、評価装置の滑らかな評価板84の上に塗膜50が摺接面になるように載せる。この試料80の上に所定の重量を持つ錘81を載せる。次に荷重計測装置83を説明する。荷重計測装置83は、試料80に対し印加する荷重の大きさが連続的に変えられ荷重発生機構と、試料80に印加する荷重が棒状体83aを介して試料80に伝えられる荷重伝達手段と、この荷重伝達手段を所定の長さだけ連続的に移動延長できるストローク機構とをもち、かつ、このストローク機構のストロークの変化量を計測するストローク計測手段と、このストローク機構が作動しているかを監視するストローク監視手段と、荷重伝達手段から試料80に伝達される荷重量が計測できる荷重計測手段とをもつ。
【0079】
なお評価板84は、作成した試料80と同様の鉄系材料ELC H2材からなる厚さ5mmで幅が40mmの平板であり、各試料80と摺接する表面は表面粗さが0.8μmの鏡面仕上げになっている。
【0080】
上記の評価装置においては、荷重発生手段から荷重が発生され、この荷重が伝達棒を介して各試料80に伝達される。各試料80は、その表面状態に応じて試料が動き出す。この各試料が動き出すときの荷重の値が、最大静止摩擦力に相当する(図7参照)。
【0081】
試料80が動き出した時点でストローク監視機構が働いて、試料80に加える荷重を低減させる。このストローク監視機構によって、試料80が再度動き出すまで連続的に荷重を低減させる。このようにして、ストローク監視機構によって常時、試料80が動く状態を作りながら、荷重発生手段からは試料80を連続的に動かすのに必要となる最低荷重が、連続的に荷重量を変えながら荷重発生手段から発生する。試料80が連続的に評価板上を移動する際に発生する荷重が滑り摩擦力に相当する。
【0082】
【表2】
【0083】
【表3】
【0084】
表2に上記した各試料80の構成内容を整理して示す。各試料80の構成について説明する。試料1は、前記円板の片面を鏡面仕上げした比較試料で、表面粗さを1.6μmに鏡面仕上げしたものであり、シリカガラス球及びラダ―シリコーン樹脂を含んでいない。試料2は、5μmの厚みで前記円板の片面にラダーシリコーン樹脂の塗膜50を形成した比較試料であり、シリカガラス球を含んでいない。
【0085】
試料3は、塗膜基材と球状粒子と合計を100wt%としたとき、ラダ―シリコーン樹脂の塗料に5wt%の割合で無孔質のシリカガラス球を配合し、この塗料を5μmの厚みで前記円板の片面に塗膜として形成したものである。
【0086】
試料4は、ラダ―シリコーン樹脂の塗料に10wt%の割合で無孔質のシリカガラス球を配合し、この塗料を5μmの厚みで前記円板の片面に塗膜として形成したものである。
【0087】
試料5は、50オングストロームの大きさの微細孔をもつ多孔質のシリカガラス球をラダ―シリコーン樹脂の塗料に5wt%の割合で前記のシリカガラス球を配合し、この塗料を5μmの厚みで前記円板の片面に塗膜50として形成したものである。試料6は、試料5におけるシリカガラス球に代えて、微細孔が130オングストロームの大きさをもつ多孔質のシリカガラス球を用いたものである。
【0088】
試料7は、ラダーシリコーン樹脂の塗料に銅粒子を分散させたものである。銅粉は、溶液還元法で作成された球状の粒子で、粒子の大きさは3〜5μmの大きさの粒子が全体の半数の割合を占める。塗膜基材と銅粒子との合計を100%としたとき、銅粒子の塗料中への配合割合は、体積割合で10wt%強であり、略シリカガラス球の体積混合割合と同様である。
【0089】
試料2〜試料7までについては、各試料の評価対象となる面の鉄板の表面はいずれも3.2μmの表面粗さになっている。
【0090】
なお、塗膜50の基材と球状粒子51とを100%としたときにおける球状粒子51の体積割合としては、試料3については13%、試料4については26%、試料5については13%、試料6については13%、試料7については12%である。
【0091】
前記の試料1〜試料7について、図6に示した評価装置を用いて各試料の滑り摩擦抵抗を測定した。結果を表3に示す。表3の結果は、試料1における摩擦力を1とした場合の相対的な値として示す。試料1の結果と試料2の結果とを比較すると、ラダーシリコーン樹脂のみの塗膜(試料2)では、表面粗さ1.6μmの金属表面(試料1)に比べて、最大静止摩擦力と滑り摩擦力のいずれもが大きい値を持ち、必ずしも充分ではないことがわかる。
【0092】
試料2の結果と試料3の結果とを比較すると、試料2よりも試料3の方が優れており、ラダーシリコーン樹脂の塗膜表面にシリカガラス球によって凹凸を形成した効果が現れていることが分かる。
【0093】
更に、試料1の結果と試料3の結果とを比較すると、真球に近いシリカガラス球で摺接面に凹凸を形成することで、表面状態が1.6μmの表面粗さに近い摩擦力まで低下することが分かる。従って、仕上加工(鏡面加工)を廃止することも期待できる。
【0094】
シリカガラス球の分散度が相対的に低い試料3の結果と、シリカガラス球の分散度が相対的に高い試料4の結果とを比較すると、シリカガラス球の塗膜50中への分散状態によって、多少表面の摩擦力が変わることがわかる。必要以上にシリカガラス球を混入すると、多点接触における接触点が過剰に増加し、摩擦力が増大する。
【0095】
試料5と試料6との結果を比較すると、微細孔をもつ多孔質のシリカガラス球を用いた場合、シリカガラス球の微細孔の大きさが大きくなると、シリカガラス球の表面状態が変わり、摩擦力が増大することが分かる。
【0096】
試料7の結果と試料3〜試料6までの結果とを比較すると、銅の微粒子の混入によって表面に凹凸が形成され、試料2に比較して摩擦抵抗が小さい。但しシリカガラスに比べて硬度が低くかつ真球度が低いために、摩擦抵抗を下げる効果が小さい。
【0097】
上記の結果から、塗膜基材とシリカガラス球との合計を100%としたとき、真球状に近い硬度の高い球状粒子を、重量割合で3%から15%の割合で塗膜に混入分散させ、これによって表面に凹凸を形成することで、面加工に近い摩擦抵抗まで下げることが可能になる。
【0098】
(球状粒子)
上記した球状粒子としてはアモルファスシリカガラス球が用いられている。このアモルファスシリカガラス球は、超微粒子状のアモルファスシリカ球状粒子を生成し、このアモルファスシリカ球状粒子を多数結合させることにより形成されている。熱処理により無孔質化したアモルファスシリカ球状粒子が得られる。熱処理しないとき、または熱処理が充分でないときには、多孔質のシリカ球状粒子となる。結晶性のシリカガラスに比較してアモルファス構造のシリカガラスは 人体に対する安全性が高い。
【0099】
図8は無孔質のシリカガラス球を示す。このシリカガラス球によれば、形状は真球度が高く、平均粒径が3μm、比表面積が40m2/g、給油量が30ml/100gとされている。
【0100】
図9は多孔質のシリカガラス球を示す。平均粒径が3μm、比表面積が700m2/g、微細孔径が250オングストローム、給油量が300ml/100gとされている。ここで平均粒径は粒径分布における最頻度値を示す。
【0101】
(その他)
その他、本発明は上記した実施例のみに限定されるものではなく、例えば、シリカガラス球の物性値は上記したものに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できるものである。発明の実施の形態、実施例に記載の語句は一部であっても、請求項に記載できるものである。
【0102】
【発明の効果】
本発明によれば、保持部材(ヨーク部材、軸受部材等)と可動部材(プランジャ、シャフト等)との間に、球状粒子を混合した薄い塗膜を設け、この球状粒子によって微小な凹凸を形成している。このため、塗膜表面の微小な凹凸に基づいて生じる多点接触によって摺動に伴う接触面積を縮減させること可能になる。ひいては保持部材(ヨーク部材、軸受部材等)と可動部材(プランジャ、シャフト等)との摺動性を向上させることができる。
【0103】
また球状粒子の真球度が高い場合には、摺接部を多点接触によって摺接させることが一層容易となり、保持部材(ヨーク部材、軸受部材等)と可動部材(プランジャ、シャフト等)との間における摩擦力を一層低減させることが出来る。さらに球状粒子が硬度の高い球状粒子(例えばシリカガラス球)であれば、摺接面の動摩擦係数を下げるのに一層有利となる。
【0104】
また本発明によれば、保持部材(ヨーク部材、軸受部材等)と可動部材(プランジャ、シャフト等)の少なくとも一方のうち摺動機能が必要となる部位に、直接に塗膜を形成する。このため、保持部材(ヨーク部材、軸受部材等)と可動部材(プランジャ、シャフト等)との境界の隙間を小さくするのに有利となる。更に、保持部材(ヨーク部材、軸受部材等)と可動部材(プランジャ、シャフト等)との同軸度が要請されるときであっても、同軸度の精度を向上させることができる。更に塗膜が非磁性の場合には、保持部材(ヨーク部材、軸受部材等)と可動部材(プランジャ、シャフト等)との吸着を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】電磁弁の要部の断面図である。
【図2】電磁弁の要素であるプランジャの表面に形成した、球状粒子をもつ塗膜の内部構造を模式化した状態の断面図である。
【図3】塗膜の形成方法のプロセスを示すフローチャートである。
【図4】モータの斜視図である。
【図5】モータのシャフトの表面に形成した、球状粒子をもつ塗膜の内部構造を模式化した状態の断面図である。
【図6】評価実験を行う概念図である。
【図7】評価実験における特性を示すグラフである。
【図8】無孔質のシリカガラス球を示す写真である。
【図9】多孔質のシリカガラス球を示す写真である。
【符号の説明】
図中、1は電磁弁、11はハウジング、4はプランジャ(可動部材)、5はヨーク部材(保持部材)、9Aはモータ、90はハウジング、91はステータ、93は軸受(保持部材)、94はシャフト(可動部材)、50は塗膜、51は球状粒子を示す。
Claims (5)
- ハウジングと、
前記ハウジングに配設された保持部材と、
前記保持部材に軸受され前記保持部材に対して相対移動自在な可動部材とを備え、
前記可動部材が前記保持部材に対して相対移動する軸受装置において、
前記保持部材及び前記可動部材のうちの少なくとも一方に、球状粒子を分散させた塗膜が設けられ、前記球状粒子による凹凸を前記塗膜の表面に形成したことを特徴とする軸受装置。 - ハウジングと、
前記ハウジングに配設されコイルが巻回されたヨーク部材と、
該ヨーク部材に軸受され該ヨーク部材に対して相対移動自在なプランジャとを備え、
前記コイルの励磁または消磁により、前記プランジャが前記ヨーク部材に対して相対移動する軸受装置において、
前記保持部材及び前記可動部材のうちの少なくとも一方に、球状粒子を分散させた塗膜が設けられ、前記球状粒子による凹凸を前記塗膜の表面に形成したことを特徴とする軸受装置。 - ハウジングと、
前記ハウジングに配設された軸受と、
前記軸受に回転可能に保持されたシャフトとを備えた軸受装置において、
前記軸受及び前記シャフトのうちの少なくとも一方に、球状粒子を分散させた塗膜が設けられ、前記球状粒子による凹凸を前記塗膜の表面に形成したことを特徴とする軸受装置。 - 請求項1〜請求項3のうちのいずれか一項において、球状粒子の材質は金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物のいずれかであることを特徴とする軸受装置。
- 請求項1〜請求項4のうちのいずれか一項において、前記塗膜はラダー構造のシリコーン樹脂を基材としていることを特徴とする軸受装置。
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