JP2004353494A - 空燃比検出装置及び空燃比制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】内燃機関の空燃比検出用素子のクラック対策において、クラック発生時の空燃比異常を抑制し、クラック発生検出時の素子の劣化を防止する。
【解決手段】大気側電極38が開放されている大気室38bへは大気用拡散律速層38cを介して大気が導入されている。このため空燃比センサ28にクラックが生じても、排気経路26側へ侵入する酸素量は少なく、排気のリーン化の程度は抑制される。したがって検出された空燃比は実際の空燃比から大きく外れることはなく、クラック発生時の空燃比異常を抑制できる。クラック検出モード時にも大気用拡散律速層38cの存在により酸素の供給が律速されて酸素イオン導電性固体電解質34に大量に電流が流れるのが阻止されるので、酸素イオン導電性固体電解質34の劣化を防止できる。
【選択図】 図1
【解決手段】大気側電極38が開放されている大気室38bへは大気用拡散律速層38cを介して大気が導入されている。このため空燃比センサ28にクラックが生じても、排気経路26側へ侵入する酸素量は少なく、排気のリーン化の程度は抑制される。したがって検出された空燃比は実際の空燃比から大きく外れることはなく、クラック発生時の空燃比異常を抑制できる。クラック検出モード時にも大気用拡散律速層38cの存在により酸素の供給が律速されて酸素イオン導電性固体電解質34に大量に電流が流れるのが阻止されるので、酸素イオン導電性固体電解質34の劣化を防止できる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は内燃機関の空燃比検出装置及び空燃比制御装置において、空燃比を検出するための素子におけるクラック対策に関する。
【0002】
【従来の技術】
三元触媒などの排気浄化触媒により内燃機関の排気を浄化するためには、内燃機関の空燃比を高精度に制御する必要がある。このため排気中の酸素あるいは酸素と反応する成分の濃度を検出することで空燃比を求める空燃比検出装置が知られている。このような空燃比検出装置としては、ジルコニアなどの酸素イオン導電性固体電解質を利用した素子を用いたものが存在する(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この素子においては酸素イオン導電性固体電解質の両側にそれぞれ排気側電極と大気側電極とが設けられ、排気側電極には拡散律速層による拡散律速状態で内燃機関の排気が導入され、大気側電極は拡散律速層を介さずに大気側に開放されている。
【0004】
この構成により、両電極間に一定の電圧(空燃比検出電圧)を印加した時の電流状態の測定により排気の空燃比を検出している。
【0005】
【特許文献1】
特開平4−13961号公報(第3頁、第3図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし何らかの原因で素子にクラックが生じることで、このクラックから排気側に大気が侵入して空燃比の検出が正確にできなくなる場合がある。このような場合には、素子の異常が検出されるまでの間に検出されている空燃比データに基づいて、燃料噴射量などの調節により空燃比を制御した場合には、実際の空燃比が目標空燃比から大きく外れてしまうおそれがある。このため一時的に燃費やエミッションなどの悪化を招くおそれがある。
【0007】
又、このような素子の異常を検出する手法としては、クラックを介して大気側に排気が漏出した状態を、同じ酸素イオン導電性固体電解質を用いて逆方向の電圧(クラック検出電圧)を印加することで測定した大気側の酸素濃度の変化にて検出する手法が考えられる。しかし、このような大気側の酸素濃度を酸素イオン導電性固体電解質にて検出する場合には、大気側は排気側に比較して高濃度の酸素が存在し大量に酸素が酸素イオン導電性固体電解質に供給される状態にあることから、酸素イオン導電性固体電解質内に大量の電流が流れやすくなる。このためクラック発見のために大気側の酸素濃度を検出する毎に酸素イオン導電性固体電解質の劣化が促進されるおそれがある。
【0008】
本発明は、空燃比を検出するための素子におけるクラック対策において、クラック発生時の空燃比異常を抑制し、あるいはクラック発生を検出する際における素子の劣化を防止することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の空燃比検出装置は、酸素イオン導電性固体電解質上に排気側電極と大気側電極とを設け、前記排気側電極に対して拡散律速状態で内燃機関の排気を導入するとともに前記大気側電極を大気側に開放し、前記排気側電極と前記大気側電極との間に空燃比検出電圧を印加した時の電流状態に基づいて排気の空燃比を検出する空燃比検出装置であって、前記大気側電極は大気用拡散律速層を介して大気側に開放されていることを特徴とする。
【0010】
大気側電極は大気用拡散律速層を介して大気側に開放されている。このため、素子にクラックが生じて、大気側から大気が排気側へ侵入しようとしても、素子の大気側へは大気用拡散律速層を介して大気が導入されるため、大気の導入は律速される。したがってクラックから排気側に侵入する大気量も抑制されて、排気のリーン化の程度が抑制されることになる。
【0011】
したがって空燃比検出装置により検出されている空燃比は、実際の空燃比から大きく外れることはなく、クラック発生時の空燃比異常を抑制できる。
更に、同じ酸素イオン導電性固体電解質を用いて、大気側の酸素濃度変化を測定しようとした場合にも、大気側電極へは大気用拡散律速層を介して大気が導入されるため、酸素の供給も律速されて酸素濃度測定時に酸素イオン導電性固体電解質に大量に電流が流れるのが阻止される。このためクラック検出のために大気側の酸素濃度を測定しても酸素イオン導電性固体電解質の劣化が促進されることはなく、素子の劣化を防止できる。
【0012】
請求項2に記載の空燃比検出装置では、請求項1において、前記大気用拡散律速層は多孔質材料により形成されていることを特徴とする。
より具体的には、大気用拡散律速層は多孔質材料により形成されている。このことにより、クラックが発生しても大気が大量に排気側に流れ込むことが阻止されて、排気のリーン化は抑制される。更に、大気側の酸素濃度を測定しようとした場合にも、酸素イオン導電性固体電解質に大量に電流が流れるのが阻止され、素子の劣化を防止できる。
【0013】
尚、排気用拡散律速層も多孔質材料により形成されていても良いが、多孔質材料以外の拡散律速手法を用いても良い。
請求項3に記載の空燃比検出装置では、請求項1又は2において、前記空燃比検出電圧とは逆方向のクラック検出電圧を前記排気側電極と前記大気側電極との間に印加した時の電流状態に基づいてクラックの有無を検出するクラック検出モードを、内燃機関の限定された運転状態において実行することを特徴とする。
【0014】
このようにクラック検出モードを設けることにより、クラックが生じている場合には排気の大気側侵入により、クラックが生じていない場合に比較して大気側の酸素濃度が低くなるので、クラック有無を検出できる。
【0015】
そしてこのようなクラック検出モードにおいて、酸素イオン導電性固体電解質に大量に電流が流れるのが阻止され、素子の劣化を防止できる。尚、大気用拡散律速層の存在によりクラックが生じていても排気が素子から外部に放出されにくい。このため、酸素濃度にクラックの状態が一層現れやすくなり高精度な検出が可能である。更に排気が外部に放出されにくいことから環境対策にも有利である。
【0016】
請求項4に記載の空燃比検出装置では、請求項1〜3のいずれかにおいて、前記大気側電極は前記大気用拡散律速層との間に大気室を設けていることを特徴とする。
【0017】
このように大気側電極と大気用拡散律速層との間に大気室が存在することにより、クラックが生じていても排気が一旦大気室に蓄積するので、より効果的に排気が外部に放出されにくくなり、環境対策も一層有利なものとなる。
【0018】
請求項5に記載の空燃比制御装置では、請求項1〜4のいずれか記載の空燃比検出装置により検出された空燃比が目標空燃比となるように内燃機関の燃料量あるいは吸入空気量を調節する空燃比フィードバック制御を実行することを特徴とする。
【0019】
前述した空燃比検出装置により検出した空燃比を用いて、空燃比フィードバック制御を実行しているので、空燃比検出装置において素子にクラックが生じても検出された空燃比は実際の空燃比から大きく外れることはない。このため、空燃比フィードバック制御による空燃比異常を抑制できる。したがって燃費やエミッションなどの悪化を招くことがない。
【0020】
しかも空燃比検出装置によるクラック検出モードが行われた場合にはクラック発生が発見でき、確実な対処ができる。しかもこのような、クラック検出モードにおいても空燃比検出装置の素子が劣化しにくいので、長期にわたって安定した空燃比フィードバック制御が可能となる。
【0021】
【発明の実施の形態】
[実施の形態1]
図1は、車両に搭載された内燃機関としてのガソリンエンジン(以下、「エンジン」と略す)2、及び制御装置としての電子制御ユニット(以下、「ECU」と称す)4の概略構成図を示している。尚、エンジン2は4気筒や6気筒などの多気筒エンジンである。
【0022】
エンジン2の出力は変速機を介して最終的に車輪に走行駆動力として伝達される。エンジン2には、燃焼室内の混合気に点火する点火プラグ6が設けられている。各気筒の燃焼室に吸気ポートを介して接続しているインテークマニホールド8には各吸気ポートに向けて燃料を噴射する燃料噴射弁10が設けられている。
そしてインテークマニホールド8はサージタンク12を介して共通の吸気経路14に接続され、この吸気経路14にはモータ16によって開度が調節されるスロットルバルブ18が設けられている。このスロットルバルブ18の開度(スロットル開度TA)により吸入空気量GAが調節される。スロットル開度TAはスロットル開度センサ20により検出されてECU4に読み込まれている。吸入空気量GAはスロットルバルブ18の上流側に設けられた吸入空気量センサ22により検出されてECU4に読み込まれている。
【0023】
エンジン2の燃焼室に接続している排気ポートは排気マニホールド24を介して共通の排気経路26に接続されている。この排気経路26の途中には空燃比を検出する素子として空燃比センサ28が配置され、更に下流には排気浄化用の三元触媒が収納されている三元触媒コンバータ30が配置されている。尚、図1では、空燃比センサ28が配置された部分の排気経路26を拡大して示している。
【0024】
空燃比センサ28は、排気成分から空燃比を検出するものであり、通気性のカバー32内部に、板状の酸素イオン導電性固体電解質34が配置されている。この酸素イオン導電性固体電解質34の両面にはそれぞれ白金電極36,38が設けられて、各電極ライン36a,38aを介してECU4から検出用電圧が印加され、かつECU4にて白金電極36,38間の電流量が検出可能とされている。
【0025】
これらの白金電極36,38の内で、排気経路26内の排気に接触する排気側電極36は、排気用拡散律速層36bに接触状態で覆われている。この排気用拡散律速層36bは多孔質材料、例えば多孔質のセラミックから形成されているものであり、排気は、この排気用拡散律速層36b内を拡散することにより排気側電極36まで導入される。
【0026】
大気側電極38は、ヒータ基板40に覆われ、ヒータ基板40との間には大気室38bが形成されている。この大気室38bは大気用拡散律速層38cを介して外部の大気を導入可能としている。この大気用拡散律速層38cは多孔質材料、例えば多孔質のセラミックから形成されているものであり、外部の大気は、この大気用拡散律速層38c内を拡散することにより大気室38b内に流入することで大気側電極38まで導入される。
【0027】
尚、ヒータ基板40内には加熱用ヒータ40aが設けられて、ECU4による給電制御により活性化温度まで空燃比センサ28は加熱される。
ECU4はデジタルコンピュータを中心として構成されているエンジン制御回路である。このECU4は、上述したスロットル開度センサ20、吸入空気量センサ22、空燃比センサ28以外にもエンジン2の運転状態を検出する各種センサ類から信号を入力している。例えば、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度ACCP)、クランクシャフトの回転からエンジン回転数NE、吸気カムシャフトの回転位相から基準クランク角を決定する基準クランク角信号、エンジン冷却水温THW等の信号を入力している。
【0028】
ECU4は、上述した各センサからの検出内容に基づいて、点火プラグ6、燃料噴射弁10、スロットルバルブ用モータ16に対する制御信号によりエンジン2の点火時期、燃料噴射時期、燃料噴射量、スロットル開度TA等を制御する。
又、空燃比センサ28に対しては、加熱用ヒータ40aからの発熱量を制御して、空燃比センサ28を活性化させ、電極36,38に対する電圧の制御により、排気の空燃比検出や空燃比センサ28のクラック検出を実行する。
【0029】
ECU4により実行される制御の内、空燃比センサ28による検出処理について説明する。空燃比センサ検出処理のフローチャートを図2に示す。本処理は時間周期で繰り返し実行される処理である。尚、個々の処理内容に対応するフローチャート中のステップを「S〜」で表す。
【0030】
本処理が開始されると、まずエンジン2の運転状態においてクラック検出モード実行条件が成立しているか否かが判定される(S100)。ここでクラック検出モード実行条件とは、例えば、空燃比センサ28の活性化後において、アイドル時や燃料カット時にて未だクラック検出モードを実行していないエンジン状態である。アイドル時においては空燃比検出を一時的に停止してもエンジン運転において問題がなく、又、燃料カット時では燃料噴射弁10からの燃料噴射が停止されていて空燃比検出自体が停止されているからである。
【0031】
クラック検出モード実行条件が成立していなければ(S100で「NO」)、次に空燃比検出実行条件が成立しているか否かが判定される(S102)。ここで空燃比検出実行条件とは、例えば、空燃比センサ28の活性化後において、空燃比フィードバック制御により空燃比を目標空燃比に制御する場合のエンジン状態で、かつ前記クラック検出モード実行条件が成立していない場合である。
【0032】
空燃比検出実行条件が成立していなければ(S102で「NO」)、一旦本処理を終了する。
一方、空燃比検出実行条件が成立した場合には(S102で「YES」)、排気の空燃比検出の実行が設定されて(S104)、一旦本処理を終了する。このことにより、大気側電極38をプラス極とし、排気側電極36をマイナス極として一定電圧の空燃比検出電圧を印加して、電極36,38間のセンサ電流量Isを測定する空燃比検出モードが開始され、このセンサ電流量Isにより空燃比λが決定されることになる。
【0033】
すなわち、空燃比センサ28にクラックが生じてない時の空燃比λとセンサ電流量Is(mA)との関係は、図3に実線aにて示すごとくである。この場合には、排気がλ=1(理論空燃比)ではIs=0であり、これよりもリーン側(λ>1)では空燃比λの増加に対応してセンサ電流量Is(>0)は増加し、リッチ側(λ<1)では空燃比λの減少に対応してセンサ電流量Isは逆方向(<0)に流れ、センサ電流量Isの絶対値は増加する。したがって図3の実線に示した関係をマップ化しておくことで、センサ電流量Isの測定から空燃比λを検出することができる。
【0034】
クラック検出モード実行条件が成立した場合には(S100で「YES」)、大気側である大気室38bの酸素濃度検出の実行が設定される(S106)。この大気室38bの酸素濃度検出は、前述した排気の空燃比検出(S104)とは電圧方向を逆転させたクラック検出電圧を印加してセンサ電流量Icを測定する処理である。すなわち大気側電極38をマイナス極とし、排気側電極36をプラス極とする一定電圧のクラック検出電圧を印加して、電極36,38間のセンサ電流量Icを測定し、このセンサ電流量Icにより大気室38b内の酸素濃度Doxを決定する。
【0035】
すなわち、酸素濃度Doxとセンサ電流量Ic(mA)との関係は、図4に実線にて示すごとくである。そして空燃比センサ28にクラックが生じてない時には、センサ電流量Icは大気用拡散律速層38cを介して拡散により導入される大気量に対応しているので、酸素濃度Doxは濃度DA〜濃度DBの領域となる。したがってセンサ電流量Icは電流量IA〜電流量IBの領域となる。
【0036】
空燃比センサ28にクラックが生じている時には、排気経路26内の排気が大気室38b内に侵入するので、酸素濃度Doxは低下し、濃度DAよりも希薄になる。このためセンサ電流量Icも電流量IAより小さくなる。
【0037】
したがって電流量IAをクラック有無の基準判定値として、測定されたセンサ電流量Icのレベルを判定すれば、クラック検出が可能となる。勿論、センサ電流量Icを図4の関係から酸素濃度Doxに換算して、濃度DAをクラック有無の基準判定値として酸素濃度Doxのレベルを判定しても良い。
【0038】
次に検出完了か否かが判定される(S108)。クラック検出電圧の印加開始からセンサ電流量Icが安定化するのを待って、酸素濃度Doxの検出が完了する。このためセンサ電流量Icの安定化までの待機時間が経過したか否かにより、検出完了か否かを判定する。
【0039】
待機時間が経過していなければ(S108で「NO」)、このまま一旦本処理を終了する。
待機時間が経過すると(S108で「YES」)、待機時間経過直後のセンサ電流量Icが正常範囲(電流量IA〜電流量IB)に存在するか否かが判定される(S110)。尚、前述したごとくセンサ電流量Icに基づいて得られる酸素濃度Doxが正常範囲(濃度DA〜濃度DB)か否かにて判定しても良い。
【0040】
ここで図4に電流量I1(酸素濃度D1)にて示すごとく正常範囲で有れば(S110で「YES」)、次にクラック検出モードを終了する設定を行って(S112)、本処理を一旦終了する。この終了設定により、次の制御周期においてはステップS100にて「NO」と判定されるようになり、クラック検出モードはこれ以上継続することはない。したがって同じアイドル状態あるいは燃料カット状態が継続していても、ステップS100において「YES」と判定されることはない。再度新たにアイドル状態が開始されたり、新たに燃料カットが開始されることにより、ステップS100では「YES」と判定されて、クラック検出モードの実行が可能となる。
【0041】
一方、空燃比センサ28にクラックが発生して、センサ電流量Icが電流量IAより小さくなると、あるいは酸素濃度Doxが濃度DAより希薄となると(S110で「NO」)、次に異常時処理が実行される(S114)。この異常時処理は、例えば、車両のドライバーにディスプレイやランプにより空燃比センサ28の異常を知らせ、この異常をECU4内の不揮発性メモリに記憶すると共に、空燃比センサ28による空燃比検出を停止して空燃比フィードバック制御によらない退避走行用のエンジン運転に切り替える処理である。
【0042】
以上説明した本実施の形態1によれば、以下の効果が得られる。
(イ).大気側電極38が開放されている大気室38bへは大気用拡散律速層38cを介して大気が導入されている。このため空燃比センサ28において、例えば酸素イオン導電性固体電解質34やヒータ基板40あるいはこれらの境界部分でクラックが生じて、このクラックを介して排気経路26側へ大気側から大気が侵入したとしても、大気室38bへの大気導入は律速されたものとなっている。したがってクラックから排気経路26側へ侵入する酸素量も少なく、図3に一点鎖線bで示すごとくクラック発生時の排気のリーン化の程度は抑制される。これに比較して、従来のごとく大気用拡散律速層38cがなく単に大気室38bへの大気通路が形成されているのみであると、図3に破線cで示すごとく大きくリーン化して実際の空燃比状態(実線a)から大きく離れてしまう。
【0043】
したがって本実施の形態によれば、空燃比センサ28にクラックが生じてもECU4により検出される空燃比は、実際の空燃比から大きく外れることはなく、クラック発生時の空燃比異常を抑制できる。
【0044】
ECU4は、前述したごとく空燃比センサ28を用いることで空燃比検出装置として空燃比を検出し、この検出された空燃比データを利用して空燃比制御装置として燃料噴射量を調節して空燃比フィードバック制御を実行している。このような空燃比フィードバック制御を実行していても、クラック発生によっても検出空燃比は実際の空燃比から大きく外れることはないので、空燃比フィードバック制御による空燃比異常を抑制できる。このようにして燃費やエミッションなどの悪化を抑制することができる。
【0045】
(ロ).クラック検出モード時に、同じ酸素イオン導電性固体電解質34を用いて大気室38b内の酸素濃度を検出しようとした場合にも、大気用拡散律速層38cの存在により酸素の供給も律速されて酸素イオン導電性固体電解質34に大量に電流が流れるのが阻止される。このためクラック検出のために大気室38b内の酸素濃度を検出しても図5に実線aで示すごとくセンサ電流量Icは低く抑えられ、酸素イオン導電性固体電解質34の劣化を防止できる。尚、図5のタイミングチャートでは時刻t0に空燃比検出モードからクラック検出モードに切り替わった状態を示している。
【0046】
大気用拡散律速層38cがなく、単に大気室38bへの大気通路が形成されているのみであると、図5に破線cで示すごとくクラック検出モードに切り替わった時に酸素イオン導電性固体電解質34に流れる電流量Icが急激に増加する。
そして待機時間後も、図4に示すごとくの高酸素濃度DXに対応する大電流量IXの電流が継続し、酸素イオン導電性固体電解質34の劣化を招いてしまう。
【0047】
尚、図5の実線aはクラックが発生していない場合であるが、一点鎖線bは本実施の形態の構成においてクラック発生時の電流量Icを示している。このように電流量Ic<IAとなることによりクラックが検出できる。
【0048】
(ハ).上述したごとく大気室38bは大気用拡散律速層38cを介して外部と連絡されているので、空燃比センサ28にクラックが生じていても排気は外部に放出されにくい。このため大気室38b内の酸素濃度にクラックの状態が、より現れやすくなり高精度なクラック検出が可能となる。
【0049】
更に、このように大気用拡散律速層38cが存在し、かつ大気側電極38と大気用拡散律速層38cとの間に大気室38bが存在することにより、クラックが生じていても排気は一旦大気室38b内に蓄積するので、排気が外部に放出されにくくなり、環境対策上も有利なものとなる。
【0050】
[その他の実施の形態]
(a).前記実施の形態においては、大気室38bを大気側電極38と大気用拡散律速層38cとの間に設けたが、大気室38bを設けずに、大気用拡散律速層38cを直接、大気側電極38上に配置しても良い。
【0051】
(b).前記実施の形態においては、排気側電極36を排気用拡散律速層36bにて直接覆ったが、これ以外に、大気側電極38側と同様に排気側電極36と排気用拡散律速層36bとの間に空間を設けても良い。又、このように空間を設ける場合には、排気用拡散律速層36bを用いずに、拡散孔を設けて、この拡散孔から排気を拡散により空間内へ導入するようにしても良い。
【0052】
(c).前記実施の形態での空燃比の検出においては、大気側電極38をプラス極とし排気側電極36をマイナス極として一定電圧の空燃比検出電圧を印加していたが、この一定電圧の空燃比検出電圧と共に逆方向への電圧印加による一定電流量での酸素ポンプ処理とを周期的に実行して空燃比を検出しても良い。
【0053】
(d).前記実施の形態ではECU4は燃料噴射弁10から噴射される燃料噴射量により空燃比を調節していたが、スロットル開度TAの調節により吸入空気量GA側にて空燃比を調節しても良い。又、燃料噴射量と吸入空気量GAとの両方により空燃比を調節しても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1のエンジン及びECUの概略構成図。
【図2】上記ECUが実行する空燃比センサ検出処理のフローチャート。
【図3】センサ電流量Isと空燃比λとの関係を示すグラフ。
【図4】センサ電流量Icと酸素濃度Doxとの関係を示すグラフ。
【図5】空燃比検出モードからクラック検出モードに切り替わった時のセンサ電流量Icの変化を示すタイミングチャート。
【符号の説明】
2…エンジン、4…ECU、6…点火プラグ、8…インテークマニホールド、10…燃料噴射弁、12…サージタンク、14…吸気経路、16…スロットルバルブ用モータ、18…スロットルバルブ、20…スロットル開度センサ、22…吸入空気量センサ、24…排気マニホールド、26…排気経路、28…空燃比センサ、30…三元触媒コンバータ、32…カバー、34…酸素イオン導電性固体電解質、36…排気側電極、36a,38a…電極ライン、36b…排気用拡散律速層、38…大気側電極、38b…大気室、38c…大気用拡散律速層、40…ヒータ基板、40a…加熱用ヒータ。
【発明の属する技術分野】
本発明は内燃機関の空燃比検出装置及び空燃比制御装置において、空燃比を検出するための素子におけるクラック対策に関する。
【0002】
【従来の技術】
三元触媒などの排気浄化触媒により内燃機関の排気を浄化するためには、内燃機関の空燃比を高精度に制御する必要がある。このため排気中の酸素あるいは酸素と反応する成分の濃度を検出することで空燃比を求める空燃比検出装置が知られている。このような空燃比検出装置としては、ジルコニアなどの酸素イオン導電性固体電解質を利用した素子を用いたものが存在する(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この素子においては酸素イオン導電性固体電解質の両側にそれぞれ排気側電極と大気側電極とが設けられ、排気側電極には拡散律速層による拡散律速状態で内燃機関の排気が導入され、大気側電極は拡散律速層を介さずに大気側に開放されている。
【0004】
この構成により、両電極間に一定の電圧(空燃比検出電圧)を印加した時の電流状態の測定により排気の空燃比を検出している。
【0005】
【特許文献1】
特開平4−13961号公報(第3頁、第3図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし何らかの原因で素子にクラックが生じることで、このクラックから排気側に大気が侵入して空燃比の検出が正確にできなくなる場合がある。このような場合には、素子の異常が検出されるまでの間に検出されている空燃比データに基づいて、燃料噴射量などの調節により空燃比を制御した場合には、実際の空燃比が目標空燃比から大きく外れてしまうおそれがある。このため一時的に燃費やエミッションなどの悪化を招くおそれがある。
【0007】
又、このような素子の異常を検出する手法としては、クラックを介して大気側に排気が漏出した状態を、同じ酸素イオン導電性固体電解質を用いて逆方向の電圧(クラック検出電圧)を印加することで測定した大気側の酸素濃度の変化にて検出する手法が考えられる。しかし、このような大気側の酸素濃度を酸素イオン導電性固体電解質にて検出する場合には、大気側は排気側に比較して高濃度の酸素が存在し大量に酸素が酸素イオン導電性固体電解質に供給される状態にあることから、酸素イオン導電性固体電解質内に大量の電流が流れやすくなる。このためクラック発見のために大気側の酸素濃度を検出する毎に酸素イオン導電性固体電解質の劣化が促進されるおそれがある。
【0008】
本発明は、空燃比を検出するための素子におけるクラック対策において、クラック発生時の空燃比異常を抑制し、あるいはクラック発生を検出する際における素子の劣化を防止することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の空燃比検出装置は、酸素イオン導電性固体電解質上に排気側電極と大気側電極とを設け、前記排気側電極に対して拡散律速状態で内燃機関の排気を導入するとともに前記大気側電極を大気側に開放し、前記排気側電極と前記大気側電極との間に空燃比検出電圧を印加した時の電流状態に基づいて排気の空燃比を検出する空燃比検出装置であって、前記大気側電極は大気用拡散律速層を介して大気側に開放されていることを特徴とする。
【0010】
大気側電極は大気用拡散律速層を介して大気側に開放されている。このため、素子にクラックが生じて、大気側から大気が排気側へ侵入しようとしても、素子の大気側へは大気用拡散律速層を介して大気が導入されるため、大気の導入は律速される。したがってクラックから排気側に侵入する大気量も抑制されて、排気のリーン化の程度が抑制されることになる。
【0011】
したがって空燃比検出装置により検出されている空燃比は、実際の空燃比から大きく外れることはなく、クラック発生時の空燃比異常を抑制できる。
更に、同じ酸素イオン導電性固体電解質を用いて、大気側の酸素濃度変化を測定しようとした場合にも、大気側電極へは大気用拡散律速層を介して大気が導入されるため、酸素の供給も律速されて酸素濃度測定時に酸素イオン導電性固体電解質に大量に電流が流れるのが阻止される。このためクラック検出のために大気側の酸素濃度を測定しても酸素イオン導電性固体電解質の劣化が促進されることはなく、素子の劣化を防止できる。
【0012】
請求項2に記載の空燃比検出装置では、請求項1において、前記大気用拡散律速層は多孔質材料により形成されていることを特徴とする。
より具体的には、大気用拡散律速層は多孔質材料により形成されている。このことにより、クラックが発生しても大気が大量に排気側に流れ込むことが阻止されて、排気のリーン化は抑制される。更に、大気側の酸素濃度を測定しようとした場合にも、酸素イオン導電性固体電解質に大量に電流が流れるのが阻止され、素子の劣化を防止できる。
【0013】
尚、排気用拡散律速層も多孔質材料により形成されていても良いが、多孔質材料以外の拡散律速手法を用いても良い。
請求項3に記載の空燃比検出装置では、請求項1又は2において、前記空燃比検出電圧とは逆方向のクラック検出電圧を前記排気側電極と前記大気側電極との間に印加した時の電流状態に基づいてクラックの有無を検出するクラック検出モードを、内燃機関の限定された運転状態において実行することを特徴とする。
【0014】
このようにクラック検出モードを設けることにより、クラックが生じている場合には排気の大気側侵入により、クラックが生じていない場合に比較して大気側の酸素濃度が低くなるので、クラック有無を検出できる。
【0015】
そしてこのようなクラック検出モードにおいて、酸素イオン導電性固体電解質に大量に電流が流れるのが阻止され、素子の劣化を防止できる。尚、大気用拡散律速層の存在によりクラックが生じていても排気が素子から外部に放出されにくい。このため、酸素濃度にクラックの状態が一層現れやすくなり高精度な検出が可能である。更に排気が外部に放出されにくいことから環境対策にも有利である。
【0016】
請求項4に記載の空燃比検出装置では、請求項1〜3のいずれかにおいて、前記大気側電極は前記大気用拡散律速層との間に大気室を設けていることを特徴とする。
【0017】
このように大気側電極と大気用拡散律速層との間に大気室が存在することにより、クラックが生じていても排気が一旦大気室に蓄積するので、より効果的に排気が外部に放出されにくくなり、環境対策も一層有利なものとなる。
【0018】
請求項5に記載の空燃比制御装置では、請求項1〜4のいずれか記載の空燃比検出装置により検出された空燃比が目標空燃比となるように内燃機関の燃料量あるいは吸入空気量を調節する空燃比フィードバック制御を実行することを特徴とする。
【0019】
前述した空燃比検出装置により検出した空燃比を用いて、空燃比フィードバック制御を実行しているので、空燃比検出装置において素子にクラックが生じても検出された空燃比は実際の空燃比から大きく外れることはない。このため、空燃比フィードバック制御による空燃比異常を抑制できる。したがって燃費やエミッションなどの悪化を招くことがない。
【0020】
しかも空燃比検出装置によるクラック検出モードが行われた場合にはクラック発生が発見でき、確実な対処ができる。しかもこのような、クラック検出モードにおいても空燃比検出装置の素子が劣化しにくいので、長期にわたって安定した空燃比フィードバック制御が可能となる。
【0021】
【発明の実施の形態】
[実施の形態1]
図1は、車両に搭載された内燃機関としてのガソリンエンジン(以下、「エンジン」と略す)2、及び制御装置としての電子制御ユニット(以下、「ECU」と称す)4の概略構成図を示している。尚、エンジン2は4気筒や6気筒などの多気筒エンジンである。
【0022】
エンジン2の出力は変速機を介して最終的に車輪に走行駆動力として伝達される。エンジン2には、燃焼室内の混合気に点火する点火プラグ6が設けられている。各気筒の燃焼室に吸気ポートを介して接続しているインテークマニホールド8には各吸気ポートに向けて燃料を噴射する燃料噴射弁10が設けられている。
そしてインテークマニホールド8はサージタンク12を介して共通の吸気経路14に接続され、この吸気経路14にはモータ16によって開度が調節されるスロットルバルブ18が設けられている。このスロットルバルブ18の開度(スロットル開度TA)により吸入空気量GAが調節される。スロットル開度TAはスロットル開度センサ20により検出されてECU4に読み込まれている。吸入空気量GAはスロットルバルブ18の上流側に設けられた吸入空気量センサ22により検出されてECU4に読み込まれている。
【0023】
エンジン2の燃焼室に接続している排気ポートは排気マニホールド24を介して共通の排気経路26に接続されている。この排気経路26の途中には空燃比を検出する素子として空燃比センサ28が配置され、更に下流には排気浄化用の三元触媒が収納されている三元触媒コンバータ30が配置されている。尚、図1では、空燃比センサ28が配置された部分の排気経路26を拡大して示している。
【0024】
空燃比センサ28は、排気成分から空燃比を検出するものであり、通気性のカバー32内部に、板状の酸素イオン導電性固体電解質34が配置されている。この酸素イオン導電性固体電解質34の両面にはそれぞれ白金電極36,38が設けられて、各電極ライン36a,38aを介してECU4から検出用電圧が印加され、かつECU4にて白金電極36,38間の電流量が検出可能とされている。
【0025】
これらの白金電極36,38の内で、排気経路26内の排気に接触する排気側電極36は、排気用拡散律速層36bに接触状態で覆われている。この排気用拡散律速層36bは多孔質材料、例えば多孔質のセラミックから形成されているものであり、排気は、この排気用拡散律速層36b内を拡散することにより排気側電極36まで導入される。
【0026】
大気側電極38は、ヒータ基板40に覆われ、ヒータ基板40との間には大気室38bが形成されている。この大気室38bは大気用拡散律速層38cを介して外部の大気を導入可能としている。この大気用拡散律速層38cは多孔質材料、例えば多孔質のセラミックから形成されているものであり、外部の大気は、この大気用拡散律速層38c内を拡散することにより大気室38b内に流入することで大気側電極38まで導入される。
【0027】
尚、ヒータ基板40内には加熱用ヒータ40aが設けられて、ECU4による給電制御により活性化温度まで空燃比センサ28は加熱される。
ECU4はデジタルコンピュータを中心として構成されているエンジン制御回路である。このECU4は、上述したスロットル開度センサ20、吸入空気量センサ22、空燃比センサ28以外にもエンジン2の運転状態を検出する各種センサ類から信号を入力している。例えば、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度ACCP)、クランクシャフトの回転からエンジン回転数NE、吸気カムシャフトの回転位相から基準クランク角を決定する基準クランク角信号、エンジン冷却水温THW等の信号を入力している。
【0028】
ECU4は、上述した各センサからの検出内容に基づいて、点火プラグ6、燃料噴射弁10、スロットルバルブ用モータ16に対する制御信号によりエンジン2の点火時期、燃料噴射時期、燃料噴射量、スロットル開度TA等を制御する。
又、空燃比センサ28に対しては、加熱用ヒータ40aからの発熱量を制御して、空燃比センサ28を活性化させ、電極36,38に対する電圧の制御により、排気の空燃比検出や空燃比センサ28のクラック検出を実行する。
【0029】
ECU4により実行される制御の内、空燃比センサ28による検出処理について説明する。空燃比センサ検出処理のフローチャートを図2に示す。本処理は時間周期で繰り返し実行される処理である。尚、個々の処理内容に対応するフローチャート中のステップを「S〜」で表す。
【0030】
本処理が開始されると、まずエンジン2の運転状態においてクラック検出モード実行条件が成立しているか否かが判定される(S100)。ここでクラック検出モード実行条件とは、例えば、空燃比センサ28の活性化後において、アイドル時や燃料カット時にて未だクラック検出モードを実行していないエンジン状態である。アイドル時においては空燃比検出を一時的に停止してもエンジン運転において問題がなく、又、燃料カット時では燃料噴射弁10からの燃料噴射が停止されていて空燃比検出自体が停止されているからである。
【0031】
クラック検出モード実行条件が成立していなければ(S100で「NO」)、次に空燃比検出実行条件が成立しているか否かが判定される(S102)。ここで空燃比検出実行条件とは、例えば、空燃比センサ28の活性化後において、空燃比フィードバック制御により空燃比を目標空燃比に制御する場合のエンジン状態で、かつ前記クラック検出モード実行条件が成立していない場合である。
【0032】
空燃比検出実行条件が成立していなければ(S102で「NO」)、一旦本処理を終了する。
一方、空燃比検出実行条件が成立した場合には(S102で「YES」)、排気の空燃比検出の実行が設定されて(S104)、一旦本処理を終了する。このことにより、大気側電極38をプラス極とし、排気側電極36をマイナス極として一定電圧の空燃比検出電圧を印加して、電極36,38間のセンサ電流量Isを測定する空燃比検出モードが開始され、このセンサ電流量Isにより空燃比λが決定されることになる。
【0033】
すなわち、空燃比センサ28にクラックが生じてない時の空燃比λとセンサ電流量Is(mA)との関係は、図3に実線aにて示すごとくである。この場合には、排気がλ=1(理論空燃比)ではIs=0であり、これよりもリーン側(λ>1)では空燃比λの増加に対応してセンサ電流量Is(>0)は増加し、リッチ側(λ<1)では空燃比λの減少に対応してセンサ電流量Isは逆方向(<0)に流れ、センサ電流量Isの絶対値は増加する。したがって図3の実線に示した関係をマップ化しておくことで、センサ電流量Isの測定から空燃比λを検出することができる。
【0034】
クラック検出モード実行条件が成立した場合には(S100で「YES」)、大気側である大気室38bの酸素濃度検出の実行が設定される(S106)。この大気室38bの酸素濃度検出は、前述した排気の空燃比検出(S104)とは電圧方向を逆転させたクラック検出電圧を印加してセンサ電流量Icを測定する処理である。すなわち大気側電極38をマイナス極とし、排気側電極36をプラス極とする一定電圧のクラック検出電圧を印加して、電極36,38間のセンサ電流量Icを測定し、このセンサ電流量Icにより大気室38b内の酸素濃度Doxを決定する。
【0035】
すなわち、酸素濃度Doxとセンサ電流量Ic(mA)との関係は、図4に実線にて示すごとくである。そして空燃比センサ28にクラックが生じてない時には、センサ電流量Icは大気用拡散律速層38cを介して拡散により導入される大気量に対応しているので、酸素濃度Doxは濃度DA〜濃度DBの領域となる。したがってセンサ電流量Icは電流量IA〜電流量IBの領域となる。
【0036】
空燃比センサ28にクラックが生じている時には、排気経路26内の排気が大気室38b内に侵入するので、酸素濃度Doxは低下し、濃度DAよりも希薄になる。このためセンサ電流量Icも電流量IAより小さくなる。
【0037】
したがって電流量IAをクラック有無の基準判定値として、測定されたセンサ電流量Icのレベルを判定すれば、クラック検出が可能となる。勿論、センサ電流量Icを図4の関係から酸素濃度Doxに換算して、濃度DAをクラック有無の基準判定値として酸素濃度Doxのレベルを判定しても良い。
【0038】
次に検出完了か否かが判定される(S108)。クラック検出電圧の印加開始からセンサ電流量Icが安定化するのを待って、酸素濃度Doxの検出が完了する。このためセンサ電流量Icの安定化までの待機時間が経過したか否かにより、検出完了か否かを判定する。
【0039】
待機時間が経過していなければ(S108で「NO」)、このまま一旦本処理を終了する。
待機時間が経過すると(S108で「YES」)、待機時間経過直後のセンサ電流量Icが正常範囲(電流量IA〜電流量IB)に存在するか否かが判定される(S110)。尚、前述したごとくセンサ電流量Icに基づいて得られる酸素濃度Doxが正常範囲(濃度DA〜濃度DB)か否かにて判定しても良い。
【0040】
ここで図4に電流量I1(酸素濃度D1)にて示すごとく正常範囲で有れば(S110で「YES」)、次にクラック検出モードを終了する設定を行って(S112)、本処理を一旦終了する。この終了設定により、次の制御周期においてはステップS100にて「NO」と判定されるようになり、クラック検出モードはこれ以上継続することはない。したがって同じアイドル状態あるいは燃料カット状態が継続していても、ステップS100において「YES」と判定されることはない。再度新たにアイドル状態が開始されたり、新たに燃料カットが開始されることにより、ステップS100では「YES」と判定されて、クラック検出モードの実行が可能となる。
【0041】
一方、空燃比センサ28にクラックが発生して、センサ電流量Icが電流量IAより小さくなると、あるいは酸素濃度Doxが濃度DAより希薄となると(S110で「NO」)、次に異常時処理が実行される(S114)。この異常時処理は、例えば、車両のドライバーにディスプレイやランプにより空燃比センサ28の異常を知らせ、この異常をECU4内の不揮発性メモリに記憶すると共に、空燃比センサ28による空燃比検出を停止して空燃比フィードバック制御によらない退避走行用のエンジン運転に切り替える処理である。
【0042】
以上説明した本実施の形態1によれば、以下の効果が得られる。
(イ).大気側電極38が開放されている大気室38bへは大気用拡散律速層38cを介して大気が導入されている。このため空燃比センサ28において、例えば酸素イオン導電性固体電解質34やヒータ基板40あるいはこれらの境界部分でクラックが生じて、このクラックを介して排気経路26側へ大気側から大気が侵入したとしても、大気室38bへの大気導入は律速されたものとなっている。したがってクラックから排気経路26側へ侵入する酸素量も少なく、図3に一点鎖線bで示すごとくクラック発生時の排気のリーン化の程度は抑制される。これに比較して、従来のごとく大気用拡散律速層38cがなく単に大気室38bへの大気通路が形成されているのみであると、図3に破線cで示すごとく大きくリーン化して実際の空燃比状態(実線a)から大きく離れてしまう。
【0043】
したがって本実施の形態によれば、空燃比センサ28にクラックが生じてもECU4により検出される空燃比は、実際の空燃比から大きく外れることはなく、クラック発生時の空燃比異常を抑制できる。
【0044】
ECU4は、前述したごとく空燃比センサ28を用いることで空燃比検出装置として空燃比を検出し、この検出された空燃比データを利用して空燃比制御装置として燃料噴射量を調節して空燃比フィードバック制御を実行している。このような空燃比フィードバック制御を実行していても、クラック発生によっても検出空燃比は実際の空燃比から大きく外れることはないので、空燃比フィードバック制御による空燃比異常を抑制できる。このようにして燃費やエミッションなどの悪化を抑制することができる。
【0045】
(ロ).クラック検出モード時に、同じ酸素イオン導電性固体電解質34を用いて大気室38b内の酸素濃度を検出しようとした場合にも、大気用拡散律速層38cの存在により酸素の供給も律速されて酸素イオン導電性固体電解質34に大量に電流が流れるのが阻止される。このためクラック検出のために大気室38b内の酸素濃度を検出しても図5に実線aで示すごとくセンサ電流量Icは低く抑えられ、酸素イオン導電性固体電解質34の劣化を防止できる。尚、図5のタイミングチャートでは時刻t0に空燃比検出モードからクラック検出モードに切り替わった状態を示している。
【0046】
大気用拡散律速層38cがなく、単に大気室38bへの大気通路が形成されているのみであると、図5に破線cで示すごとくクラック検出モードに切り替わった時に酸素イオン導電性固体電解質34に流れる電流量Icが急激に増加する。
そして待機時間後も、図4に示すごとくの高酸素濃度DXに対応する大電流量IXの電流が継続し、酸素イオン導電性固体電解質34の劣化を招いてしまう。
【0047】
尚、図5の実線aはクラックが発生していない場合であるが、一点鎖線bは本実施の形態の構成においてクラック発生時の電流量Icを示している。このように電流量Ic<IAとなることによりクラックが検出できる。
【0048】
(ハ).上述したごとく大気室38bは大気用拡散律速層38cを介して外部と連絡されているので、空燃比センサ28にクラックが生じていても排気は外部に放出されにくい。このため大気室38b内の酸素濃度にクラックの状態が、より現れやすくなり高精度なクラック検出が可能となる。
【0049】
更に、このように大気用拡散律速層38cが存在し、かつ大気側電極38と大気用拡散律速層38cとの間に大気室38bが存在することにより、クラックが生じていても排気は一旦大気室38b内に蓄積するので、排気が外部に放出されにくくなり、環境対策上も有利なものとなる。
【0050】
[その他の実施の形態]
(a).前記実施の形態においては、大気室38bを大気側電極38と大気用拡散律速層38cとの間に設けたが、大気室38bを設けずに、大気用拡散律速層38cを直接、大気側電極38上に配置しても良い。
【0051】
(b).前記実施の形態においては、排気側電極36を排気用拡散律速層36bにて直接覆ったが、これ以外に、大気側電極38側と同様に排気側電極36と排気用拡散律速層36bとの間に空間を設けても良い。又、このように空間を設ける場合には、排気用拡散律速層36bを用いずに、拡散孔を設けて、この拡散孔から排気を拡散により空間内へ導入するようにしても良い。
【0052】
(c).前記実施の形態での空燃比の検出においては、大気側電極38をプラス極とし排気側電極36をマイナス極として一定電圧の空燃比検出電圧を印加していたが、この一定電圧の空燃比検出電圧と共に逆方向への電圧印加による一定電流量での酸素ポンプ処理とを周期的に実行して空燃比を検出しても良い。
【0053】
(d).前記実施の形態ではECU4は燃料噴射弁10から噴射される燃料噴射量により空燃比を調節していたが、スロットル開度TAの調節により吸入空気量GA側にて空燃比を調節しても良い。又、燃料噴射量と吸入空気量GAとの両方により空燃比を調節しても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1のエンジン及びECUの概略構成図。
【図2】上記ECUが実行する空燃比センサ検出処理のフローチャート。
【図3】センサ電流量Isと空燃比λとの関係を示すグラフ。
【図4】センサ電流量Icと酸素濃度Doxとの関係を示すグラフ。
【図5】空燃比検出モードからクラック検出モードに切り替わった時のセンサ電流量Icの変化を示すタイミングチャート。
【符号の説明】
2…エンジン、4…ECU、6…点火プラグ、8…インテークマニホールド、10…燃料噴射弁、12…サージタンク、14…吸気経路、16…スロットルバルブ用モータ、18…スロットルバルブ、20…スロットル開度センサ、22…吸入空気量センサ、24…排気マニホールド、26…排気経路、28…空燃比センサ、30…三元触媒コンバータ、32…カバー、34…酸素イオン導電性固体電解質、36…排気側電極、36a,38a…電極ライン、36b…排気用拡散律速層、38…大気側電極、38b…大気室、38c…大気用拡散律速層、40…ヒータ基板、40a…加熱用ヒータ。
Claims (5)
- 酸素イオン導電性固体電解質上に排気側電極と大気側電極とを設け、前記排気側電極に対して拡散律速状態で内燃機関の排気を導入するとともに前記大気側電極を大気側に開放し、前記排気側電極と前記大気側電極との間に空燃比検出電圧を印加した時の電流状態に基づいて排気の空燃比を検出する空燃比検出装置であって、
前記大気側電極は大気用拡散律速層を介して大気側に開放されていることを特徴とする空燃比検出装置。 - 請求項1において、前記大気用拡散律速層は多孔質材料により形成されていることを特徴とする空燃比検出装置。
- 請求項1又は2において、前記空燃比検出電圧とは逆方向のクラック検出電圧を前記排気側電極と前記大気側電極との間に印加した時の電流状態に基づいてクラックの有無を検出するクラック検出モードを、内燃機関の限定された運転状態において実行することを特徴とする空燃比検出装置。
- 請求項1〜3のいずれかにおいて、前記大気側電極は前記大気用拡散律速層との間に大気室を設けていることを特徴とする空燃比検出装置。
- 請求項1〜4のいずれか記載の空燃比検出装置により検出された空燃比が目標空燃比となるように内燃機関の燃料量あるいは吸入空気量を調節する空燃比フィードバック制御を実行することを特徴とする空燃比制御装置。
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