JP2004353319A - 円筒型タンクの構築方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】人員的、機材的な作業効率を向上させ、コスト及び工程のロスを削減するとともに、仮組み時若しくは溶接後に側壁に十分な強度をもたせることを可能とした円筒型タンクの構築方法を提供する。
【解決手段】所定曲率を有する複数の長方形状側板13を多層溶接して円筒型タンク10の側壁を形成する円筒型タンクの構築方法において、前記長方形状側板13の縦継手を初層溶接14により接合するとともに、該側板の水平継手を仮付け溶接17若しくは治具による仮止めの少なくとも何れか一方により接合しながら複数の前記側板13を最上段まで仮組みした後に、前記縦継手及び水平継手を下方より最上段まで連続的に本溶接15する。
【選択図】 図1
【解決手段】所定曲率を有する複数の長方形状側板13を多層溶接して円筒型タンク10の側壁を形成する円筒型タンクの構築方法において、前記長方形状側板13の縦継手を初層溶接14により接合するとともに、該側板の水平継手を仮付け溶接17若しくは治具による仮止めの少なくとも何れか一方により接合しながら複数の前記側板13を最上段まで仮組みした後に、前記縦継手及び水平継手を下方より最上段まで連続的に本溶接15する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、二重殻タンクの内槽等の平底円筒型タンクを構築する際に側壁を効率良く形成することができる円筒型タンクの構築方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、大容量の平底円筒型タンクは低温液化ガス等の貯蔵用として広く用いられている。地上式の円筒型タンクとしては、金属製の外槽と内槽の二重殻を有する金属二重殻貯槽と、PCコンクリート製の外槽と金属製の内槽の二重殻を有するPC二重殻貯槽等が挙げられる。
一例としてPC二重殻貯槽を現地据付する方法につき、図16に基づいて説明する。まず、コンクリートにより形成された底板から外槽11となるPC側壁を立ち上げ、PC側壁と結合される屋根の据付けを行った後、内槽12である鋼製貯槽の据付けを行う。内槽12は、底部のアニュラー部の板を敷設後に側部の側壁の据付けを実施する。一般的な側壁の構築方法は図16に示されるように、所定曲率を有する長方形状側板13を最下段全周に亘って搬入し、位置決めして据付けた後に周方向に隣接する側板13同士を仮止め治具20により固定し、縦継手の溶接により接合する(a)。このとき、前記治具20は溶接と同時に撤去する。
【0003】
次に、前記側板13を2段目の全周に亘って搬入し、仮止め治具20により最下段の側板13に固定して据付けた後に、1段目と同様に縦継手を溶接する(b)。そして、側板13が環状に接合された環状部材同士を水平継手の溶接により鉛直方向に接合する(c)。さらに、3段目の全周に亘って前記側板13を搬入し、仮止め治具20により据付けた後に縦継手を溶接し(d)、前記2段目の環状部材と3段目の環状部材とを溶接する(e)。同様に、一段毎に縦溶接を完了した後に上段の側板を搬入、仮組みして、二段分の縦溶接完了後にその直下の環状部材との周溶接を実施し、かかる工程を繰り返して最上段までの溶接を行い(f)、内槽側壁を完成させる。
【0004】
このとき、前記溶接工程を効率良く行うことにより工期の短縮と施工費の削減を可能とした方法が特開2003−10968公報(特許文献1)等に開示されている。かかる方法では、前記側板の内、外面両側に溶接機をセットして内外面同時溶接を実施している。
また、特開平10−264990号公報(特許文献2)では、予め工場溶接により接合して組み立てた側板ピースを施工現場に運搬して設置し、該側板ピースを用いて側壁を構築する方法を提案しており、これにより施工現場での溶接作業を低減している。
【0005】
さらに、特開2000−73602公報(特許文献3)には、外槽屋根及び内槽屋根に夫々レールを設置し、内槽側板の内側及び外側に位置するように前記レールにゴンドラを吊り下げ、これらのゴンドラを利用して内槽側板の組み立て、溶接及び検査を行う内槽側板構築方法が記載されている。
かかる方法によれば、煩雑で大掛かりな足場を使用する必要がなく、作業能率よくかつ経済的に内槽側板を構築することが可能となる。
【0006】
【特許文献1】
特開2003−10968公報
【特許文献2】
特開平10−264990号公報
【特許文献3】
特開2000−73602公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
一般に円筒型タンクの側壁は、タンク規模にもよるが周方向に16分割、縦方向に9分割程度となっており、前述したように搬入、仮組みから溶接までの作業ステップを繰り返し実施して側壁を構築している。しかしながら、かかる従来技術の方法によれば、鉄工作業員が仮組み、肌合わせを実施している間は溶接作業員が作業を行うことができず、また溶接作業員が溶接を実施している間は鉄工作業員が作業を行うことができず、さらに溶接機材も使用率が低下するため人員的、機材的な作業効率が非常に悪い。このように、従来の方法ではコスト的、工程的なロスが著しい。
【0008】
さらに特許文献1によれば溶接工程における工期短縮が達成でき、また特許文献3では足場を設置する手間が省けるが、これらの方法では側壁を構築する際に前記搬入、仮組みから溶接までの繰り返し作業を行うことは避けられず、前記と同様の問題点を有する。
さらにまた、特許文献2では側板ピースが大きくかつ複雑な形状となるため、加工工場から施工現場までの運搬が困難となる。また、側板の一部を予め本溶接してしまうため、組立や溶接により生じる歪みを逃がすことができず、永久歪みが発生して強度が低下する惧れがある。
従って、本発明はかかる従来技術の問題に鑑み、人員的、機材的な作業効率を向上させ、コスト及び工程のロスを削減するとともに、仮組み時若しくは溶接後に側壁に十分な強度をもたせることを可能とした円筒型タンクの構築方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、
所定曲率を有する複数の長方形状側板を溶接して円筒型タンクの側壁を形成する円筒型タンクの構築方法において、
複数の前記長方形状側板を仮付け溶接しながら最上段まで仮組みした後に、該側板の縦継手及び水平継手を下方より最上段まで連続的に本溶接することを特徴とする。
【0010】
また、所定曲率を有する複数の長方形状側板を多層溶接して円筒型タンクの側壁を形成する円筒型タンクの構築方法において、
前記長方形状側板の縦継手を初層溶接により接合するとともに、該側板の水平継手を仮付け溶接若しくは治具による仮止めの少なくとも何れか一方により接合しながら複数の前記側板を最上段まで仮組みした後に、前記縦継手及び水平継手を下方より最上段まで連続的に本溶接することを特徴とする。
【0011】
これらの発明では、側板の搬入と仮組みとを一度に実施して、仮組み状態で側板を最上段まで構築した後、下段から連続的に溶接を実施する。これにより、溶接、検査及び治具撤去が同時進行でき、作業効率が大幅に向上する。また、仮組み、肌合わせ工程を最上段まで先行して実施し、その後溶接を集中的に実施しているため、作業員の空き時間をなくし、コスト的、工程的なロスを削減することができる。
また、前記縦継手を初層溶接として側板の積層による荷重に耐え得るようにし、前記水平継手を断続的な仮付け溶接若しくは仮止めとして、特に変形の発生し易い周方向の歪みを逃がすようにすることにより、仮組み時及び溶接後の側壁の強度を向上させることができる。
【0012】
さらに、前記本溶接が、前記側板の縦継手を本溶接して環状部材を形成する第1の溶接工程と、前記環状部材の水平継手を本溶接して接合する第2の工程とを含み、
前記第1の工程と前記第2の工程とを繰り返し行うことにより下方から最上段まで本溶接を行うことを特徴とする。
かかる工程により本溶接を行うことで容易に溶接を実施できるとともに、変形やずれが生じ難く高品質の円筒型タンクを提供することができる。
【0013】
さらにまた、前記仮組みの際に、少なくとも前記側壁の上方に位置する前記長方形状側板に一体的に設けた補強材同士を接合することが好ましい。
仮組み状態では、円筒型タンク上部が開口していることにより上部付近が座屈し易く、また縦継手で角折れ変形をし易いという問題がある。従って、かかる発明のように側壁上部に補強材を設けることにより、仮組み時の側壁の座屈強度が向上し、延いては角折れ変形を防止することが可能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
本実施形態は、LNGタンク等のPC(プレストレスコンクリート)二重殻貯槽の建設工程における内槽工事に適用したものであるが、これに限らず、所定曲率を有する長方形状側板を溶接して側壁が形成される円筒型タンクであれば何れにも適用可能である。
【0015】
図1は本発明の実施形態に係る円筒型タンクの構築方法を示す作業工程図である。図1(f)に示されるように本実施形態に係る二重殻タンク10は、主として外槽11と内槽12とから構成される。前記外槽11は鉄筋コンクリート製の底板とPC側壁とこれに結合する球殻状屋根部とからなり、屋根部および側壁の保冷材を保持する機能を有する。また内槽12はアニュラー部の底板と該底板上に立設した側壁とからなり、地震時の揺動に対しても十分な強度を保持するように設計される。かかる二重殻タンク10がLNGを貯蔵する場合、該内槽12の材料は−162℃で高靭性と高強度を有する9%Ni綱を使用することが好適である。
【0016】
前記二重殻タンク10の構築方法につき図1を参照して説明する。
まず、鉄筋コンクリート製の底板を敷設後にPC側壁を立ち上げ、該PC側壁と結合される屋根部の据付けを実施して外槽11を構築する。
次に、前記外槽11の内部に鋼製底板を敷設し、該底板から側壁の据付けを実施する。側壁は複数の側板13を溶接することにより形成する。タンク規模にもよるが、好適には該タンクを周方向に約16分割、縦方向に約9分割するような鋼製の長方形状側板13を使用する。該側板13は該タンク10の周面を形成するごとく所定曲率を有するものとし、さらにタンク下方より上方に位置するほど肉厚が小さくなるように形成されていることが好ましい。
【0017】
前記側壁の構築における作業工程は、まず側板13を搬入して周方向に隣接する側板同士の縦継手を初層溶接部14のごとく初層溶接し、上下方向に隣接する側板同士の水平継手を仮付け溶接17のごとく仮付け溶接して固定することにより側板13を全段肌合わせ、仮組みする(a)。前記仮付け溶接17は、仮組みの際に十分な強度をもつようなピッチで行う。尚、該仮付け溶接17は治具を用いた仮止めで代替しても良く、また該仮付け溶接17と仮止め治具の両方を用いても良い。
そして、仮組みの状態で1段目(最下段)の縦継手を本溶接部15のごとく本溶接し(b)、1段目の全周に亘って溶接が完了した後に2段目の縦継手を本溶接する(c)。次に、本溶接により1段目と2段目に形成された環状部材の水平継手同士を本溶接により結合し(d)、さらにその上段の縦継手を本溶接する(e)。このように、縦継手と水平継手の本溶接を途中で中断することなく最上段まで連続的に施工して、側壁を構築する(f)。
【0018】
また、前記側壁の構築方法における別の実施形態として、搬入した側板13を仮組みする際に、前記縦継手及び水平継手を仮付け溶接にて固定する方法も適用可能である。この時、前記仮付け溶接間のピッチは、仮組みをした側壁が十分な強度を有するようなピッチとする。
尚、これらの実施形態において、前記仮組みの際に予めスチフナ等の補強材を設けた側壁を上部に配置させ、補強材同士を接合することが好ましい。これにより、側壁の座屈強度が向上することとなる。
【0019】
本実施形態の構築方法による作業工程及び作業期間と、従来技術の作業工程及び作業期間とを図2、図3により比較する。
図2は本実施形態に係る構築方法により、3基分の二重殻タンク10を施工する際の作業工程及び作業期間を示す。図において、aは組立、肌合わせ、bは溶接、RT(非破壊検査:放射線透過試験)、cは足場架設及び搭載、解体搬出、d’は側板1段分の搭載、組立及び肌合わせ、eは側板工事の各工程に要する期間である。
【0020】
これによれば、1段目から最上段の7段目までのa:組立、肌合わせ、及びc:足場架設及び搭載、解体搬出工程を連続的に実施し、その後に連続してb:溶接、RTを実施している。かかる作業工程によれば、第1基目の組立、肌合わせが工事開始後約2ヶ月で終了するため、第1基目の溶接開始と同時に第2基目の組立、肌合わせに着工できる。同様に、第2基目の組立、肌合わせの終了後に直に第3基目の組立、肌合わせを開始することができ、作業員、機材を効率良く配置することが可能となり、作業工程におけるロスの大幅な削減が達成できる。
【0021】
一方、図3に示される従来技術の構築方法では、a:組立、肌合わせとb:溶接、RTを各段毎に交互に実施しており、鉄工作業員と溶接作業員が全工事期間に亘って必要とされるため作業効率が悪い。また、第2基目、第3基目を各一ヶ月遅れで着工した場合、溶接機材、溶接作業員が複数必要となりコスト高となる。
このように、本実施形態における作業工程を経ることにより、溶接、検査及び治具撤去が同時進行でき、作業効率が大幅に向上する。また、仮組み、肌合わせ工程を最上段まで先行して実施し、その後溶接を集中的に実施しているため作業員の空き時間をなくし、コスト的、工程的なロスを削減することが可能となる。
【0022】
ここで、本実施形態を適用した場合の内槽側壁強度につきFEM(有限要素法)解析により検討する。
本実施形態の構築方法を適用した二重殻タンクとして、図4に示されるように、直径φ=77000mm、高さh=32640mmでかつ側板分割数が縦9段、周16分割(22.5°)のタンクを用いる。
かかる二重殻タンクの内槽の構築方法には前述した作業工程を適用し、仮組みの際には縦継手に初層溶接、水平継手に治具による仮止めを用いた。このとき、前記縦継手は弱い回転バネで模擬し、水平継手は剛結としてモデル化し、解析するものとする。
また、本溶接には多層溶接を採用し、前記初層溶接14には図5に示されるように側板13にX開先13c若しくはU開先(不図示)を形成し、ティグ溶接機によりダブルX開先で突き合わせ溶接により接合した。
【0023】
最初に継手のモデル化を行った。既設タンクの測定値から初層、2層目溶接後の仕上げ溶接による熱収縮が最大約1mmであったことに基づき、溶接ひずみとして1.0mmを採用した。方向は溶接線直角方向のみを考慮した。
次に解析結果の概要を図6〜図15に基づき説明する。
図6は1、2段目の縦溶接完了時の溶接変形の表面メッシュを示す線図である。これによれば、縦溶接線上でタンク内側に入り込む変形がみられる。
図8及び図9に、各工程での1、2段目間水平継手の作用力を示す。このとき、図7(a)に示されるケースに対応した側壁条件とし、夫々のベクトルは図7(b)に示す方向とする。
【0024】
図に示されるように、作用力は全周に亘って略同様の分布となっており、ここでは最大となった開口部近傍の値を示した。図には1段目及び2段目の継手位置も示している。作用力は縦継手の位置で大きくなっていることがわかる。
また、自重による値は、Z方向以外は小さい。施工時では2段目溶接(case3)以降変化は殆どないことがわかる。
図10は縦継手の作用力を示し、ここでは最も大きかった地震時の1段目縦継手の値と、1段目溶接時の2段目の値を示している。
【0025】
図11及び図12は水平継手を接合する仮止め治具20の構造及び引張応力を説明する図で、図11に示されるように、かかる仮止め治具20は孔部22を有する治具部材21と矢部24を有する治具部材23よりなる。図12に示されるように、該治具20を隣接する側板13に跨って設置し、前記矢部24を前記孔部22に挿入し、該挿入度合いにより側板13間距離及び段差を調節する。
ここで、水平継手の治具強度を該水平継手の作用力により評価した。作用力に対する最弱断面に対して安全側に最大の節点力をメッシュ幅で割って求めた単位長さ当りの値を、治具ピッチ1mに換算して評価用の値とした。
【0026】
許容応力はLNG地上式指針の内槽地震時許容引張応力の考え方を採用し、200Mpaとした。水平継手にかかる鉛直方向力(Z方向)は図12(a)に記載される矢印のごとく発生し、断面が高さ61.22mm、板厚15mm、断面積918.3mm2である場合、最大作用力は121.8N/mm(Case6)となり、1m当り121800Nとなるから応力σ=133Mpaとなる。
また、面外せん断力(R方向)は図12(b)のごとく発生し、断面が高さ115mm、板厚15mm、断面積1725mm2である場合、最大作用力は21.7N/mm(Case3)となり、1m当り21700Nとなるから応力σ=12.6Mpaとなる。
さらにまた、曲げモーメント(θ−rotation)は図12(c)のごとく発生し、断面が高さ115mm、板厚15mm、I=1901094mm4、Z=33063mm3である場合、最大作用力は919N・mm/mm(Case5)となり、1m当り919000N・mmとなるから応力σ=27.8Mpaとなる。
【0027】
これらの何れにおいても許容応力200Mpa以下となるため、治具20による仮止めにおいて強度的な問題は生じないことがわかる。
また、初層溶接を施した縦継手につき、解析結果の最大節点力をメッシュ幅で割って単位長さ当りの値として初層溶接を厚さ3mmと仮定して応力を算出し、評価した結果、図13に示されるように溶接部の応力は何れも小さく、問題ないことが判明した。
【0028】
次いで、地震時の座屈強度について評価する。仮組み状態で地震荷重(0.3G)を載荷し、弾性座屈固有値を算出した。尚、載荷した地震荷重は完成時に対するものであり、架設時に関しては従来明確な規定はなかった。そこで、施工時の地震荷重については施工期間が供用期間より短いことから地震の発生確率は小さいと考え、施工時地震荷重:設計荷重(完成時)の1/2とした。
また、弾性座屈の場合は、初期不整等により実際の座屈荷重は解析結果より低くなるため、安全係数として、座屈の安全係数:2.0を考慮することとした。
従って、座屈の安全率は解析で求められた座屈固有値Kから、
となれば安全性が保証されるものとする。
【0029】
まず、9段目まで側板を仮組みした状態で座屈強度を算出した結果を図14に示す。これによれば、タンク上部上側が座屈しており、これは上部が開口しており強度が低いためと考えられる。また、縦継手で角折れ変形をしており、初層溶接の縦継手が基点となっていると考えられる。このとき、座屈安全率は0.67となり1以下であった。
【0030】
このように、かかる実施形態の構築方法は、通常状態においては強度が十分であるものの、地震時においては強度的に不安が残る。従って、側板上部に補強材を利用した場合について検討した。本実施形態では予めスチフナを設けた側板を用い、仮組み時に該スチフナを接合して連続化する方法を採用した。これにより、工期が長期化することを防止できる。
前記スチフナを上から2段目中央に配置した場合の解析結果を図15に示す。この場合の座屈安全率は1.9になっており、座屈強度が大幅に向上していることがわかる。
【0031】
このように、本溶接の溶接変形による仮接合部の強度は初層溶接、仮止め治具共に問題ないことが判明した。また、9段目までの仮組み時には地震時座屈強度が不十分であるが、補強材を設けることで座屈強度が向上し、安全性が確保されることがわかった。
従って、本実施形態の作業工程における全段仮組み工程の安全性が確認され、また仮組み時にタンク上部に補強材を設けることにより、地震時等においても強度的な問題が生じないことが判明した。
【0032】
【発明の効果】
以上記載のごとく本発明によれば、側板の搬入と仮組みとを一度に実施して、仮組み状態で側板を最上段まで構築した後、下段から連続的に溶接を実施することにより、溶接、検査及び治具撤去が同時進行でき、作業効率が大幅に向上する。また、仮組み、肌合わせ工程を最上段まで先行して実施し、その後溶接を集中的に実施しているため、作業員の空き時間をなくし、コスト的、工程的なロスを削減することができる。
また、前記縦継手は初層溶接として側板の積層による荷重に耐え得るようにし、前記水平継手は断続的な仮付け溶接若しくは仮止めとして特に変形の発生し易い水平方向の歪みを逃がすようにすることにより、仮組み時及び溶接後の側壁の強度を向上させることができる。
さらに、仮組み時にタンク上部に補強材を設けることにより、地震時等においても安全性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る円筒型タンクの構築方法を示す作業工程図である。
【図2】本実施形態の構築方法による作業工程及び作業期間を示す図である。
【図3】従来の構築方法による作業工程及び作業期間を示す図である。
【図4】円筒型タンクの概略構成図である。
【図5】X開先を初層溶接する際の側板断面図である。
【図6】1、2段目の縦溶接完了時の溶接変形の表面メッシュを示す線図である。
【図7】各ケースに対応した側壁条件の表(a)、作用力のベクトルの向きを示す説明図(b)である。
【図8】水平継手の作用力(直方向)を示すグラフである。
【図9】水平継手の作用力(曲げ)を示すグラフである。
【図10】縦継手の作用力を示すグラフである。
【図11】本実施形態の仮止め治具の構成図である。
【図12】仮止め治具の引張応力を説明する図である。
【図13】地震時の縦継手溶接部応力を示す表(a)、1段目溶接時の2段目縦継手溶接部応力を示す表(b)である。
【図14】仮組み状態における座屈強度を示す線図である。
【図15】補強材を設けた場合の座屈強度を示す線図である。
【図16】従来の円筒型タンクの構築方法を示す作業工程図である。
【符号の説明】
【発明の属する技術分野】
本発明は、二重殻タンクの内槽等の平底円筒型タンクを構築する際に側壁を効率良く形成することができる円筒型タンクの構築方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、大容量の平底円筒型タンクは低温液化ガス等の貯蔵用として広く用いられている。地上式の円筒型タンクとしては、金属製の外槽と内槽の二重殻を有する金属二重殻貯槽と、PCコンクリート製の外槽と金属製の内槽の二重殻を有するPC二重殻貯槽等が挙げられる。
一例としてPC二重殻貯槽を現地据付する方法につき、図16に基づいて説明する。まず、コンクリートにより形成された底板から外槽11となるPC側壁を立ち上げ、PC側壁と結合される屋根の据付けを行った後、内槽12である鋼製貯槽の据付けを行う。内槽12は、底部のアニュラー部の板を敷設後に側部の側壁の据付けを実施する。一般的な側壁の構築方法は図16に示されるように、所定曲率を有する長方形状側板13を最下段全周に亘って搬入し、位置決めして据付けた後に周方向に隣接する側板13同士を仮止め治具20により固定し、縦継手の溶接により接合する(a)。このとき、前記治具20は溶接と同時に撤去する。
【0003】
次に、前記側板13を2段目の全周に亘って搬入し、仮止め治具20により最下段の側板13に固定して据付けた後に、1段目と同様に縦継手を溶接する(b)。そして、側板13が環状に接合された環状部材同士を水平継手の溶接により鉛直方向に接合する(c)。さらに、3段目の全周に亘って前記側板13を搬入し、仮止め治具20により据付けた後に縦継手を溶接し(d)、前記2段目の環状部材と3段目の環状部材とを溶接する(e)。同様に、一段毎に縦溶接を完了した後に上段の側板を搬入、仮組みして、二段分の縦溶接完了後にその直下の環状部材との周溶接を実施し、かかる工程を繰り返して最上段までの溶接を行い(f)、内槽側壁を完成させる。
【0004】
このとき、前記溶接工程を効率良く行うことにより工期の短縮と施工費の削減を可能とした方法が特開2003−10968公報(特許文献1)等に開示されている。かかる方法では、前記側板の内、外面両側に溶接機をセットして内外面同時溶接を実施している。
また、特開平10−264990号公報(特許文献2)では、予め工場溶接により接合して組み立てた側板ピースを施工現場に運搬して設置し、該側板ピースを用いて側壁を構築する方法を提案しており、これにより施工現場での溶接作業を低減している。
【0005】
さらに、特開2000−73602公報(特許文献3)には、外槽屋根及び内槽屋根に夫々レールを設置し、内槽側板の内側及び外側に位置するように前記レールにゴンドラを吊り下げ、これらのゴンドラを利用して内槽側板の組み立て、溶接及び検査を行う内槽側板構築方法が記載されている。
かかる方法によれば、煩雑で大掛かりな足場を使用する必要がなく、作業能率よくかつ経済的に内槽側板を構築することが可能となる。
【0006】
【特許文献1】
特開2003−10968公報
【特許文献2】
特開平10−264990号公報
【特許文献3】
特開2000−73602公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
一般に円筒型タンクの側壁は、タンク規模にもよるが周方向に16分割、縦方向に9分割程度となっており、前述したように搬入、仮組みから溶接までの作業ステップを繰り返し実施して側壁を構築している。しかしながら、かかる従来技術の方法によれば、鉄工作業員が仮組み、肌合わせを実施している間は溶接作業員が作業を行うことができず、また溶接作業員が溶接を実施している間は鉄工作業員が作業を行うことができず、さらに溶接機材も使用率が低下するため人員的、機材的な作業効率が非常に悪い。このように、従来の方法ではコスト的、工程的なロスが著しい。
【0008】
さらに特許文献1によれば溶接工程における工期短縮が達成でき、また特許文献3では足場を設置する手間が省けるが、これらの方法では側壁を構築する際に前記搬入、仮組みから溶接までの繰り返し作業を行うことは避けられず、前記と同様の問題点を有する。
さらにまた、特許文献2では側板ピースが大きくかつ複雑な形状となるため、加工工場から施工現場までの運搬が困難となる。また、側板の一部を予め本溶接してしまうため、組立や溶接により生じる歪みを逃がすことができず、永久歪みが発生して強度が低下する惧れがある。
従って、本発明はかかる従来技術の問題に鑑み、人員的、機材的な作業効率を向上させ、コスト及び工程のロスを削減するとともに、仮組み時若しくは溶接後に側壁に十分な強度をもたせることを可能とした円筒型タンクの構築方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、
所定曲率を有する複数の長方形状側板を溶接して円筒型タンクの側壁を形成する円筒型タンクの構築方法において、
複数の前記長方形状側板を仮付け溶接しながら最上段まで仮組みした後に、該側板の縦継手及び水平継手を下方より最上段まで連続的に本溶接することを特徴とする。
【0010】
また、所定曲率を有する複数の長方形状側板を多層溶接して円筒型タンクの側壁を形成する円筒型タンクの構築方法において、
前記長方形状側板の縦継手を初層溶接により接合するとともに、該側板の水平継手を仮付け溶接若しくは治具による仮止めの少なくとも何れか一方により接合しながら複数の前記側板を最上段まで仮組みした後に、前記縦継手及び水平継手を下方より最上段まで連続的に本溶接することを特徴とする。
【0011】
これらの発明では、側板の搬入と仮組みとを一度に実施して、仮組み状態で側板を最上段まで構築した後、下段から連続的に溶接を実施する。これにより、溶接、検査及び治具撤去が同時進行でき、作業効率が大幅に向上する。また、仮組み、肌合わせ工程を最上段まで先行して実施し、その後溶接を集中的に実施しているため、作業員の空き時間をなくし、コスト的、工程的なロスを削減することができる。
また、前記縦継手を初層溶接として側板の積層による荷重に耐え得るようにし、前記水平継手を断続的な仮付け溶接若しくは仮止めとして、特に変形の発生し易い周方向の歪みを逃がすようにすることにより、仮組み時及び溶接後の側壁の強度を向上させることができる。
【0012】
さらに、前記本溶接が、前記側板の縦継手を本溶接して環状部材を形成する第1の溶接工程と、前記環状部材の水平継手を本溶接して接合する第2の工程とを含み、
前記第1の工程と前記第2の工程とを繰り返し行うことにより下方から最上段まで本溶接を行うことを特徴とする。
かかる工程により本溶接を行うことで容易に溶接を実施できるとともに、変形やずれが生じ難く高品質の円筒型タンクを提供することができる。
【0013】
さらにまた、前記仮組みの際に、少なくとも前記側壁の上方に位置する前記長方形状側板に一体的に設けた補強材同士を接合することが好ましい。
仮組み状態では、円筒型タンク上部が開口していることにより上部付近が座屈し易く、また縦継手で角折れ変形をし易いという問題がある。従って、かかる発明のように側壁上部に補強材を設けることにより、仮組み時の側壁の座屈強度が向上し、延いては角折れ変形を防止することが可能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
本実施形態は、LNGタンク等のPC(プレストレスコンクリート)二重殻貯槽の建設工程における内槽工事に適用したものであるが、これに限らず、所定曲率を有する長方形状側板を溶接して側壁が形成される円筒型タンクであれば何れにも適用可能である。
【0015】
図1は本発明の実施形態に係る円筒型タンクの構築方法を示す作業工程図である。図1(f)に示されるように本実施形態に係る二重殻タンク10は、主として外槽11と内槽12とから構成される。前記外槽11は鉄筋コンクリート製の底板とPC側壁とこれに結合する球殻状屋根部とからなり、屋根部および側壁の保冷材を保持する機能を有する。また内槽12はアニュラー部の底板と該底板上に立設した側壁とからなり、地震時の揺動に対しても十分な強度を保持するように設計される。かかる二重殻タンク10がLNGを貯蔵する場合、該内槽12の材料は−162℃で高靭性と高強度を有する9%Ni綱を使用することが好適である。
【0016】
前記二重殻タンク10の構築方法につき図1を参照して説明する。
まず、鉄筋コンクリート製の底板を敷設後にPC側壁を立ち上げ、該PC側壁と結合される屋根部の据付けを実施して外槽11を構築する。
次に、前記外槽11の内部に鋼製底板を敷設し、該底板から側壁の据付けを実施する。側壁は複数の側板13を溶接することにより形成する。タンク規模にもよるが、好適には該タンクを周方向に約16分割、縦方向に約9分割するような鋼製の長方形状側板13を使用する。該側板13は該タンク10の周面を形成するごとく所定曲率を有するものとし、さらにタンク下方より上方に位置するほど肉厚が小さくなるように形成されていることが好ましい。
【0017】
前記側壁の構築における作業工程は、まず側板13を搬入して周方向に隣接する側板同士の縦継手を初層溶接部14のごとく初層溶接し、上下方向に隣接する側板同士の水平継手を仮付け溶接17のごとく仮付け溶接して固定することにより側板13を全段肌合わせ、仮組みする(a)。前記仮付け溶接17は、仮組みの際に十分な強度をもつようなピッチで行う。尚、該仮付け溶接17は治具を用いた仮止めで代替しても良く、また該仮付け溶接17と仮止め治具の両方を用いても良い。
そして、仮組みの状態で1段目(最下段)の縦継手を本溶接部15のごとく本溶接し(b)、1段目の全周に亘って溶接が完了した後に2段目の縦継手を本溶接する(c)。次に、本溶接により1段目と2段目に形成された環状部材の水平継手同士を本溶接により結合し(d)、さらにその上段の縦継手を本溶接する(e)。このように、縦継手と水平継手の本溶接を途中で中断することなく最上段まで連続的に施工して、側壁を構築する(f)。
【0018】
また、前記側壁の構築方法における別の実施形態として、搬入した側板13を仮組みする際に、前記縦継手及び水平継手を仮付け溶接にて固定する方法も適用可能である。この時、前記仮付け溶接間のピッチは、仮組みをした側壁が十分な強度を有するようなピッチとする。
尚、これらの実施形態において、前記仮組みの際に予めスチフナ等の補強材を設けた側壁を上部に配置させ、補強材同士を接合することが好ましい。これにより、側壁の座屈強度が向上することとなる。
【0019】
本実施形態の構築方法による作業工程及び作業期間と、従来技術の作業工程及び作業期間とを図2、図3により比較する。
図2は本実施形態に係る構築方法により、3基分の二重殻タンク10を施工する際の作業工程及び作業期間を示す。図において、aは組立、肌合わせ、bは溶接、RT(非破壊検査:放射線透過試験)、cは足場架設及び搭載、解体搬出、d’は側板1段分の搭載、組立及び肌合わせ、eは側板工事の各工程に要する期間である。
【0020】
これによれば、1段目から最上段の7段目までのa:組立、肌合わせ、及びc:足場架設及び搭載、解体搬出工程を連続的に実施し、その後に連続してb:溶接、RTを実施している。かかる作業工程によれば、第1基目の組立、肌合わせが工事開始後約2ヶ月で終了するため、第1基目の溶接開始と同時に第2基目の組立、肌合わせに着工できる。同様に、第2基目の組立、肌合わせの終了後に直に第3基目の組立、肌合わせを開始することができ、作業員、機材を効率良く配置することが可能となり、作業工程におけるロスの大幅な削減が達成できる。
【0021】
一方、図3に示される従来技術の構築方法では、a:組立、肌合わせとb:溶接、RTを各段毎に交互に実施しており、鉄工作業員と溶接作業員が全工事期間に亘って必要とされるため作業効率が悪い。また、第2基目、第3基目を各一ヶ月遅れで着工した場合、溶接機材、溶接作業員が複数必要となりコスト高となる。
このように、本実施形態における作業工程を経ることにより、溶接、検査及び治具撤去が同時進行でき、作業効率が大幅に向上する。また、仮組み、肌合わせ工程を最上段まで先行して実施し、その後溶接を集中的に実施しているため作業員の空き時間をなくし、コスト的、工程的なロスを削減することが可能となる。
【0022】
ここで、本実施形態を適用した場合の内槽側壁強度につきFEM(有限要素法)解析により検討する。
本実施形態の構築方法を適用した二重殻タンクとして、図4に示されるように、直径φ=77000mm、高さh=32640mmでかつ側板分割数が縦9段、周16分割(22.5°)のタンクを用いる。
かかる二重殻タンクの内槽の構築方法には前述した作業工程を適用し、仮組みの際には縦継手に初層溶接、水平継手に治具による仮止めを用いた。このとき、前記縦継手は弱い回転バネで模擬し、水平継手は剛結としてモデル化し、解析するものとする。
また、本溶接には多層溶接を採用し、前記初層溶接14には図5に示されるように側板13にX開先13c若しくはU開先(不図示)を形成し、ティグ溶接機によりダブルX開先で突き合わせ溶接により接合した。
【0023】
最初に継手のモデル化を行った。既設タンクの測定値から初層、2層目溶接後の仕上げ溶接による熱収縮が最大約1mmであったことに基づき、溶接ひずみとして1.0mmを採用した。方向は溶接線直角方向のみを考慮した。
次に解析結果の概要を図6〜図15に基づき説明する。
図6は1、2段目の縦溶接完了時の溶接変形の表面メッシュを示す線図である。これによれば、縦溶接線上でタンク内側に入り込む変形がみられる。
図8及び図9に、各工程での1、2段目間水平継手の作用力を示す。このとき、図7(a)に示されるケースに対応した側壁条件とし、夫々のベクトルは図7(b)に示す方向とする。
【0024】
図に示されるように、作用力は全周に亘って略同様の分布となっており、ここでは最大となった開口部近傍の値を示した。図には1段目及び2段目の継手位置も示している。作用力は縦継手の位置で大きくなっていることがわかる。
また、自重による値は、Z方向以外は小さい。施工時では2段目溶接(case3)以降変化は殆どないことがわかる。
図10は縦継手の作用力を示し、ここでは最も大きかった地震時の1段目縦継手の値と、1段目溶接時の2段目の値を示している。
【0025】
図11及び図12は水平継手を接合する仮止め治具20の構造及び引張応力を説明する図で、図11に示されるように、かかる仮止め治具20は孔部22を有する治具部材21と矢部24を有する治具部材23よりなる。図12に示されるように、該治具20を隣接する側板13に跨って設置し、前記矢部24を前記孔部22に挿入し、該挿入度合いにより側板13間距離及び段差を調節する。
ここで、水平継手の治具強度を該水平継手の作用力により評価した。作用力に対する最弱断面に対して安全側に最大の節点力をメッシュ幅で割って求めた単位長さ当りの値を、治具ピッチ1mに換算して評価用の値とした。
【0026】
許容応力はLNG地上式指針の内槽地震時許容引張応力の考え方を採用し、200Mpaとした。水平継手にかかる鉛直方向力(Z方向)は図12(a)に記載される矢印のごとく発生し、断面が高さ61.22mm、板厚15mm、断面積918.3mm2である場合、最大作用力は121.8N/mm(Case6)となり、1m当り121800Nとなるから応力σ=133Mpaとなる。
また、面外せん断力(R方向)は図12(b)のごとく発生し、断面が高さ115mm、板厚15mm、断面積1725mm2である場合、最大作用力は21.7N/mm(Case3)となり、1m当り21700Nとなるから応力σ=12.6Mpaとなる。
さらにまた、曲げモーメント(θ−rotation)は図12(c)のごとく発生し、断面が高さ115mm、板厚15mm、I=1901094mm4、Z=33063mm3である場合、最大作用力は919N・mm/mm(Case5)となり、1m当り919000N・mmとなるから応力σ=27.8Mpaとなる。
【0027】
これらの何れにおいても許容応力200Mpa以下となるため、治具20による仮止めにおいて強度的な問題は生じないことがわかる。
また、初層溶接を施した縦継手につき、解析結果の最大節点力をメッシュ幅で割って単位長さ当りの値として初層溶接を厚さ3mmと仮定して応力を算出し、評価した結果、図13に示されるように溶接部の応力は何れも小さく、問題ないことが判明した。
【0028】
次いで、地震時の座屈強度について評価する。仮組み状態で地震荷重(0.3G)を載荷し、弾性座屈固有値を算出した。尚、載荷した地震荷重は完成時に対するものであり、架設時に関しては従来明確な規定はなかった。そこで、施工時の地震荷重については施工期間が供用期間より短いことから地震の発生確率は小さいと考え、施工時地震荷重:設計荷重(完成時)の1/2とした。
また、弾性座屈の場合は、初期不整等により実際の座屈荷重は解析結果より低くなるため、安全係数として、座屈の安全係数:2.0を考慮することとした。
従って、座屈の安全率は解析で求められた座屈固有値Kから、
となれば安全性が保証されるものとする。
【0029】
まず、9段目まで側板を仮組みした状態で座屈強度を算出した結果を図14に示す。これによれば、タンク上部上側が座屈しており、これは上部が開口しており強度が低いためと考えられる。また、縦継手で角折れ変形をしており、初層溶接の縦継手が基点となっていると考えられる。このとき、座屈安全率は0.67となり1以下であった。
【0030】
このように、かかる実施形態の構築方法は、通常状態においては強度が十分であるものの、地震時においては強度的に不安が残る。従って、側板上部に補強材を利用した場合について検討した。本実施形態では予めスチフナを設けた側板を用い、仮組み時に該スチフナを接合して連続化する方法を採用した。これにより、工期が長期化することを防止できる。
前記スチフナを上から2段目中央に配置した場合の解析結果を図15に示す。この場合の座屈安全率は1.9になっており、座屈強度が大幅に向上していることがわかる。
【0031】
このように、本溶接の溶接変形による仮接合部の強度は初層溶接、仮止め治具共に問題ないことが判明した。また、9段目までの仮組み時には地震時座屈強度が不十分であるが、補強材を設けることで座屈強度が向上し、安全性が確保されることがわかった。
従って、本実施形態の作業工程における全段仮組み工程の安全性が確認され、また仮組み時にタンク上部に補強材を設けることにより、地震時等においても強度的な問題が生じないことが判明した。
【0032】
【発明の効果】
以上記載のごとく本発明によれば、側板の搬入と仮組みとを一度に実施して、仮組み状態で側板を最上段まで構築した後、下段から連続的に溶接を実施することにより、溶接、検査及び治具撤去が同時進行でき、作業効率が大幅に向上する。また、仮組み、肌合わせ工程を最上段まで先行して実施し、その後溶接を集中的に実施しているため、作業員の空き時間をなくし、コスト的、工程的なロスを削減することができる。
また、前記縦継手は初層溶接として側板の積層による荷重に耐え得るようにし、前記水平継手は断続的な仮付け溶接若しくは仮止めとして特に変形の発生し易い水平方向の歪みを逃がすようにすることにより、仮組み時及び溶接後の側壁の強度を向上させることができる。
さらに、仮組み時にタンク上部に補強材を設けることにより、地震時等においても安全性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る円筒型タンクの構築方法を示す作業工程図である。
【図2】本実施形態の構築方法による作業工程及び作業期間を示す図である。
【図3】従来の構築方法による作業工程及び作業期間を示す図である。
【図4】円筒型タンクの概略構成図である。
【図5】X開先を初層溶接する際の側板断面図である。
【図6】1、2段目の縦溶接完了時の溶接変形の表面メッシュを示す線図である。
【図7】各ケースに対応した側壁条件の表(a)、作用力のベクトルの向きを示す説明図(b)である。
【図8】水平継手の作用力(直方向)を示すグラフである。
【図9】水平継手の作用力(曲げ)を示すグラフである。
【図10】縦継手の作用力を示すグラフである。
【図11】本実施形態の仮止め治具の構成図である。
【図12】仮止め治具の引張応力を説明する図である。
【図13】地震時の縦継手溶接部応力を示す表(a)、1段目溶接時の2段目縦継手溶接部応力を示す表(b)である。
【図14】仮組み状態における座屈強度を示す線図である。
【図15】補強材を設けた場合の座屈強度を示す線図である。
【図16】従来の円筒型タンクの構築方法を示す作業工程図である。
【符号の説明】
Claims (4)
- 所定曲率を有する複数の長方形状側板を溶接して円筒型タンクの側壁を形成する円筒型タンクの構築方法において、
複数の前記長方形状側板を仮付け溶接しながら最上段まで仮組みした後に、該側板の縦継手及び水平継手を下方より最上段まで連続的に本溶接することを特徴とする円筒型タンクの構築方法。 - 所定曲率を有する複数の長方形状側板を多層溶接して円筒型タンクの側壁を形成する円筒型タンクの構築方法において、
前記長方形状側板の縦継手を初層溶接により接合するとともに、該側板の水平継手を仮付け溶接若しくは治具による仮止めの少なくとも何れか一方により接合しながら複数の前記側板を最上段まで仮組みした後に、前記縦継手及び水平継手を下方より最上段まで連続的に本溶接することを特徴とする円筒型タンクの構築方法。 - 前記本溶接が、前記側板の縦継手を本溶接して環状部材を形成する第1の溶接工程と、前記環状部材の水平継手を本溶接して接合する第2の工程とを含み、
前記第1の工程と前記第2の工程とを繰り返し行うことにより下方から最上段まで本溶接を行うことを特徴とする請求項1若しくは2記載の円筒型タンクの構築方法。 - 前記仮組みの際に、少なくとも前記側壁の上方に位置する前記長方形状側板に一体的に設けた補強材同士を接合することを特徴とする請求項1若しくは2記載の円筒型タンクの構築方法。
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- 2003-05-29 JP JP2003152801A patent/JP2004353319A/ja not_active Withdrawn
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