JP2004352690A - 魚類冷水病ワクチン - Google Patents
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Abstract
【解決手段】フラボバクテリウム サイクロフィラムの菌体又は菌体由来リポ多糖類とウサギ赤血球膜との複合体を有効成分とする魚類冷水病ワクチン。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、魚類冷水病ワクチン及びこれを用いた魚類冷水病の予防法に関する。
【0002】
【従来の技術】
冷水病は、フラボバクテリウム サイクロフィラム Flavobacterium psychrophilum (フレキシバクター サイクロフィルス又はサイトファーガー サイクロフィルスと呼ばれることもある)を原因菌とし、サケ、マス、アユ、フナ等の魚類に低水温期に発病する病気である。もともとは北米のマス類の病気で、低水温期の稚魚に発生し、死亡率は20〜50%であり、死亡しない魚でも体表に潰瘍などの後遺症が残るという問題がある。
【0003】
斯かる冷水病の治療手段としては、これまでに、スルフィソゾールナトリウム等の抗菌剤の経口投与や、水温を上昇させる等が行われているが、薬物投与は食用魚としては好ましくなく、水温を25℃以上に上昇させるのは経済的に負担が大きすぎる。従って、魚類の冷水病への対処法としては、ワクチンの投与、特に手間や経済性の点から浸漬ワクチンによる予防治療が重用視されている。
しかしながら、冷水病に対するワクチンは現在まで開発されていない。
【0004】
一方、魚類の表皮は粘液により物理的に処理される他、微生物を洗い流す作用もあると考えられ、浸漬ワクチンにおけるワクチンの侵入門戸となる体表粘液中には様々な生体防御関連タンパク質が知られている。例えば、アユの体表粘液中にはウサギ赤血球のみを認識して凝集するレクチン様物質やVibrio anguillarumのリポ多糖に対する親和性物質が存在することが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
しかしながら、フラボバクテリウム サイクロフィラムの菌体や当該菌体由来リポ多糖類と魚類の体表粘液との親和性については何ら報告されていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、安全性及び経済性に優れた魚類冷水病ワクチンを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、浸漬投与が可能で、上記課題を解決できる魚類冷水病ワクチンを得るべく、魚類の体表粘液とフラボバクテリウム サイクロフィラム菌体との親和性について種々検討した結果、フラボバクテリウム サイクロフィラム菌体又は当該菌体由来リポ多糖類がウサギ赤血球膜に対して高い親和性を有し、フラボバクテリウム サイクロフィラムの菌体又は菌体由来リポ多糖類とウサギ赤血球膜との複合体が浸漬投与においても高いワクチン効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、フラボバクテリウム サイクロフィラムの菌体又は菌体由来リポ多糖類とウサギ赤血球膜との複合体を有効成分とする魚類冷水病ワクチンを提供するものである。
【0008】
また本発明は、フラボバクテリウム サイクロフィラムの菌体又は菌体由来リポ多糖類とウサギ赤血球膜との複合体を含有する魚類冷水病ワクチン組成物を提供するものである。
【0009】
さらに本発明は、上記ワクチン又はワクチン組成物を懸濁させた水中に魚類を浸漬することを特徴とする魚類冷水病の予防法を提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のワクチンは、フラボバクテリウム サイクロフィラムの菌体又は菌体由来リポ多糖類とウサギ赤血球膜との複合体を有効成分とするものである。
フラボバクテリウム サイクロフィラムの菌体又は菌体由来リポ多糖類には、後記実施例1に示すようにウサギ赤血球又は赤血球膜に対して凝集活性を有することが示され、ウサギ赤血球又は赤血球膜と親和性があることが見出された。従って、ワクチン中にウサギ赤血球膜を共存させることによって、フラボバクテリウム サイクロフィラムの菌体又は菌体由来リポ多糖類の魚類体表面への吸着が可能となる。
【0011】
本発明で用いられるフラボバクテリウム サイクロフィラムの菌体は、培養した菌体を生菌のまま使用してもよいが、加熱、紫外線照射等の物理的処理、ホルマリン、クロロホルム、フェノール、ベータプロピオンラクトン、チメロサール等の化学的処理を施して不活化させてから投与するのが好ましい。
また菌体は、ワクチン活性の点から、対数増殖期に採取したものを使用するのが好ましい。
【0012】
フラボバクテリウム サイクロフィラム菌体由来リポ多糖類は、培養した菌体から、フェノール・水抽出法等の常法に従って抽出・精製すればよい。
例えば、菌体を培養後、集菌して、pH6.8〜7.8のリン酸緩衝食塩水等を用いて、遠心洗浄(8,000〜10,000rpm、20〜40分間)し、洗浄後、遠心管に菌体を量り取り、蒸留水とフェノール(1:1)を加え混合し、60〜70℃で、5〜15分間インキュベートし、インキュベート後、氷中で冷却し、2,000〜4,000rpm、20〜40分間遠心する。遠心後、上澄みをパスツールピペットで取り出し、蒸留水を加えて遠心洗浄を繰り返した後、上澄みを2〜6℃、3〜5日間透析し、凍結乾燥することにより粗リポ多糖を得ることができる。
【0013】
本発明のリポ多糖類は、魚類中で、冷水病に対して特異的な防御免疫反応を誘導できるものであればよく、上記のように粗精製リポ多糖類の他、更に精製を行った精製リポ多糖類、更にはこれらの免疫原性断片でもよい。
【0014】
尚、フラボバクテリウム サイクロフィラム菌の培養は、当該菌を適当な培地に接種し常法に従って培養すればよい。培地中には、資化し得る炭素源及び窒素源を適当量含有させておくのが好ましい。この炭素源及び窒素源については特に制限はないが、その例としては、窒素源としてトリプトン、各種動物血清、コーングルテンミール、大豆粉、コーンスチープリカー、カザミノ酸、酵母エキス、ファーマメディア、イワシミール、肉エキス、ペプトン、ハイプロ、アジパワー、コーンミール、ソイビーンミール、コーヒー粕、綿実油粕、カルチベータ、アミフレックス及びアジプロン、ゼスト、アジックスなどが挙げられる。また、炭素源としては、資化し得る炭素源、例えば、アラビノース、キシロース、グルコース、マンノース、蔗糖、麦芽糖、可溶性デンプン、乳糖、廃糖蜜や資化し得る有機酸、例えば酢酸等が挙げられる。また、その他、リン酸、Mg2+,Ca2+,Mn2+,Zn2+,Co2+,Na+,K+などの無機塩や、必要であれば、無機、有機微量栄養源を培地中に適宜添加することもできる。またTY培地、サイトファーガー(CYT)培地等の市販の培地、改変サイトファーガー(MCYT)培地、及びこれらに牛胎児血清を添加した培地を用いることもできる。
培養条件は、pH6.8〜7.8、4〜20℃で、特に15〜18℃が好ましい。
【0015】
本発明で用いられるウサギ赤血球膜は、通常行われる赤血球膜の調製法に従って調製したものを用いればよい。例えば、ウサギ耳静脈から採取した血液、市販のウサギ保存血液又は脱繊維素血液を蒸留水や低張液等を用いて溶血させながら遠心洗浄(2,000〜4,000rpm、10〜20分間)し、上澄みを除去した後、残った沈殿物をホモジナイズして蒸留水で遠心洗浄を繰り返し行うことにより得ることができる。なお、遠心処理した赤血球膜をさらに超音波破壊処理して用いてもよい。
【0016】
本発明のワクチンは、上記のフラボバクテリウム サイクロフィラムの菌体又は菌体由来リポ多糖類とウサギ赤血球膜との複合体が用いられるが、当該複合体は、フラボバクテリウム サイクロフィラムの菌体又は菌体由来リポ多糖類と、ウサギ赤血球膜とを任意の割合で混合して調製されるものである。好ましくは、ウサギ赤血球膜1に対して、フラボバクテリウム サイクロフィラムの菌体又は菌体由来リポ多糖類を0.03〜3の割合で混合するのが好ましい。
【0017】
フラボバクテリウム サイクロフィラムの菌体又は菌体由来リポ多糖類とウサギ赤血球膜との複合体は、そのままワクチンとして使用してもよいが、薬学的に許容される液状又は固体状の担体とともにワクチン組成物として使用してもよい。
また、斯かるワクチン組成物には、必要に応じてフロイントの完全アジュバント、フロイントの不完全アジュバント等の鉱物オイル、植物オイル、動物オイル等の公知のアジュバントを添加するのが好ましい。
【0018】
当該ワクチン組成物の形態としては、経口投与用組成物、注射用組成物、魚類浸漬用組成物、飼料組成物等が挙げられる。液状の担体としては水、生理食塩水等が挙げられる固体状の担体としては、タルク、シュークロースなどの賦形剤が挙げられる。飼料組成物とするには、通常の魚類の飼料に本菌の不活化菌体又はその成分を混合すればよい。
【0019】
本発明のワクチン又はワクチン組成物の魚類への投与は、経口、浸漬、腹腔内筋肉内等、限定されないが、特に飼育水のような水中にワクチンを懸濁させ魚類を浸漬する浸漬投与が好ましい。ここで、水は対象となる魚類が生育できる水であればよく、淡水又は海水の何れでもよい。
【0020】
本発明のワクチン又はワクチン組成物の対象魚類としては、本菌による冷水病になる魚類であれば制限されず、例えばアユ、フナ、ヤマメ、ニジマス、ギンザケ等のサケマス類等が挙げられる。
【0021】
投与する魚齢は特に限定されないが、冷水病に羅患する前、例えば稚魚の段階が好ましい。その投与量は、体重1kgあたり菌体若しくは菌体由来リポ多糖類として約1mg〜100mgが好ましい。投与回数は1回でもよいが、複数回、例えば2〜10回が好ましく、また毎日投与でもよいが、1〜14日間隔をあけて投与してもよい。尚、浸漬投与においては、1Lの水中に、菌体若しくは菌体由来リポ多糖類として約0.1mg〜0.1gを添加し、0.5〜6時間魚類を泳がせて浸漬するのが好ましい。また、魚を入れ替えることによって、同じワクチンを数回繰り返して使用することができる。
【0022】
【実施例】
参考例1 アユ体表粘液の凝集活性
(1)供試魚
供試魚は岡山県津山市の岡山県水産試験場魚病指導センターから平均体重6.6gのアユを用いた。供試魚は水温15℃で流水飼育して用いた。
【0023】
(2)アユ体表粘液の採取及び調製
アユ体表粘液は供試魚5尾をバットの上に乗せ、スライドガラスを用い両面の体表から60μLかき集めた。採取した粘液をマイクロチューブに移し、PBS240μLで希釈した。希釈した後、ホモジナイズし4℃、5,000rpm、5分間遠心洗浄を行った。洗浄後、上澄みを取り出し使用時まで氷水で保存した。
【0024】
(3)供試菌
岡山県水産試験場魚病指導センターから分与されたF. psychrophilum PH0003、PH0004、PH0007、PH0010、PH9304、OH0016、ZH0001、A−2株、及び共立製薬から分与されたF. psychrophilumホルマリン不活化菌(FKC)SG 990302株を用いた。供試菌株を表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
(4)培地の作製
改変サイトファーガ培地及び改変サイトファーガ液体培地を用いた。なお改変サイトファーガ培地はトリプトン(Difco)2.0g、酵母エキス(Difco)0.5g、魚肉エキス(和光純薬)0.2g、酢酸ナトリウム(和光純薬)0.2g、塩化カルシウム・2水和物(和光純薬)0.26g、寒天(和光純薬)15.0gを蒸留水1,000mLに溶解したものをオートクレイブで滅菌し、シャーレに20mLずつ分注した。改変サイトファーガ培地はトリプトン(Difco)2.0g、酵母エキス(Difco)0.5g、魚肉エキス(和光純薬)0.2g、酢酸ナトリウム(和光純薬)0.2g、塩化カルシウム・2水和物(和光純薬)0.26gを蒸留水1,000mLに溶解後、坂口フラスコに200mLに分注し、オートクレイブで滅菌した。
【0027】
(5)F. psychrophilum LPSの粗精製及び調製
フェノール・水抽出法を用いてLPSの粗精製を行った。供試菌は改変サイトファーガ液体培地を用いて15℃、110rpm、100時間振とう培養を行った。培養後、高速冷却遠心機で4℃、7,500rpm、30分間遠心し、集菌した。集菌後、リン酸二水素ナトリウム・12水(和光純薬)3.0g、リン酸二水素カリウム(和光純薬)0.7g、塩化ナトリウム(和光純薬)6.4gを蒸留水1,000mLに懸濁し、pHを7.0に調節したPBSを用いて4℃、10,000rpm、30分間遠心洗浄を3回行った。洗浄後、ガラスの遠心管に菌体を1g量り取り蒸留水17.5gとフェノール(和光純薬)17.5gを加え混合し、ウォーターバスインキュベーターを用いて65℃、10分間インキュベートした。インキュベート後、氷中で冷却し4℃、3,000rpm、30分間遠心した。遠心後、上澄みをパスツールピペットで取り出し、同量の蒸留水を加え再度遠心した。この操作を三回繰り返した後、それぞれ取り出した上澄みをセルロースチューブに詰め、4℃で5日間透析した。透析後、OD260に調整した凝集活性試験に用いた。また共立製薬から分与されたF. psychrophilum FKC SG 990302からも同様の方法を用いて精製した。
【0028】
(6)各種動物赤血球浮遊液の調製
市販のガチョウ、モルモット、ウマ、ウシ、ウサギ、ヒツジ保存血(日本バイオテスト研究所)を用いた。各種動物保存血は、PBSを用いて2,000rpm、5分間で遠心洗浄を三回行った。洗浄後、赤血球が2%になるようにPBSを用いて希釈しこれを赤血球浮遊液とした。
【0029】
(7)ウサギ赤血球膜の精製及び調製
ウサギ耳静脈から採取した血液30mLを蒸留水を用いて溶血させながら遠心洗浄し、上澄みを除去した。残った沈殿物をホモジナイズし、蒸留水で遠心洗浄を行った。この操作を沈殿物が肉眼的に白くなるまで繰り返した後、30mLの蒸留水に懸濁しこれをウサギ赤血球膜とした。
【0030】
(8)各種動物赤血球に対するアユ体表粘液の凝集活性試験
凝集活性試験はマイクロタイター法を用いて行った。96穴V型マイクロプレート全てのウェルにドロッパーを用いて、希釈液としてPBSを1滴ずつ加えた。ダイリュウターをバーナーの炎で熱した後、蒸留水で冷却し先端を調整したアユ体表粘液に浸して25μLとり、左端のウェルに入れて20〜30回転させダイリュウターの先端部がウェルの側壁に触れないように引き上げ、右のウェルに移り同様の手順を繰り返し2倍希釈系列を作製した。なお右端はバックグラウンドとするためこの手順を行わない。粘液希釈を行ったウェルにガチョウ、モルモット、ウマ、ウシ、ウサギ、ヒツジ赤血球浮遊液をドロッパーを用いて1滴加え、プレートを振とうさせ十分混合させた後、37℃、2時間反応させ4℃に24時間放置し凝集の有無を判定した。
【0031】
(9)ウサギ赤血球膜に対するアユ体表粘液の凝集活性試験
凝集活性試験はマイクロタイター法を用いて前述と同様の方法で行った。なお、希釈液はPBSを用いて粘液の2倍希釈系列を作製し、ウェルにはウサギ赤血球膜を一滴加えた。
【0032】
(10)F. psychrophilum粗LPSに対するアユ体表粘液の凝集活性試験
凝集活性試験はマイクロタイター法を用いて前述と同様の方法で行った。なお、希釈液はPBSを用いて粘液の2倍希釈系列を作製し、ウェルには粗LPSを一滴加えた。
【0033】
(11)結果
各種動物赤血球に対するアユ体表粘液の凝集活性試験の結果を表2に示す。
すなわち、アユ体表粘液の凝集能はウサギ赤血球とのみ64倍の反応が認められ、他の動物赤血球との凝集は検出限界以下だった。
【0034】
【表2】
【0035】
ウサギ赤血球膜に対するアユ体表粘液の凝集活性試験の結果を表3に示す。
すなわち、アユ体表粘液の凝集能はウサギ赤血球膜に対して32倍であった。
【0036】
【表3】
【0037】
F. psychrophilum粗LPSに対するアユ体表粘液の凝集活性試験を表4に示す。
すなわち、SG 990302で16倍、PH0007、ZH0001及びA−2で8倍、PH0003、PH0004及びPH9304で4倍、OH0016で2倍であった。
【0038】
【表4】
【0039】
実施例1 F. psychrophilum菌体及び粗リポ多糖の凝集活性
(1)供試菌、培地の作製、F. psychrophilum菌液の調製、F. psychrophilum LPSの粗精製及び調製、各種動物赤血球浮遊液の調製、ウサギ赤血球膜の精製及び調製は、参考例1と同様に行った。
【0040】
(2)各種動物赤血球に対するF. psychrophilum菌体の凝集活性試験
凝集活性試験はマイクロタイター法を用いて参考例1と同様の方法で行った。なお、希釈液にはPBSを用いて、F. psychrophilum菌体の2倍希釈系列を作製し、ウェルにはガチョウ、モルモット、ウマ、ウシ、ウサギ、ヒツジ赤血球浮遊液を一滴加えた。
【0041】
(3)ウサギ赤血球に対するF. psychrophilum粗LPS凝集活性試験
凝集活性試験はマイクロタイター法を用いて前述と同様の方法で行った。なお、希釈液はPBSを用いてF. psychrophilum粗LPSの2倍希釈系列を作製し、ウェルにはウサギ赤血球浮遊液を一滴加えた。
【0042】
(4)ウサギ赤血球膜に対するF. psychrophilum菌体の凝集活性試験
凝集活性試験はマイクロタイター法を用いて前述と同様の方法で行った。なお、希釈液はPBSを用いてF. psychrophilum菌体の2倍希釈系列を作製し、ウェルにはウサギ赤血球膜を一滴加えた。
【0043】
(5)ウサギ赤血球膜に対するF. psychrophilum粗LPSの凝集活性試験
凝集活性試験はマイクロタイター法を用いて前述と同様の方法で行った。なお、希釈液は蒸留水を用いて、F. psychrophilum粗LPSの2倍希釈系列を作製し、ウェルにはウサギ赤血球膜を一滴加えた。
【0044】
(6)結果
各種動物赤血球に対するF. psychrophilum菌体の凝集活性試験の結果を表5に示す。
すなわち、F. psychrophilum菌体は菌株ごとに差があるがウサギ赤血球とのみ強い反応が認められ、他の動物赤血球との凝集は検出限界以下だった。
【0045】
【表5】
【0046】
ウサギ赤血球に対するF. psychrophilum粗LPSの凝集活性試験の結果を表6に示す。
すなわち、PH0004、PH0007、PH0010、OH0016及びSG 990302で128倍の強い凝集活性を示し、以下PH0003、ZH0001、A−2で64倍、PH9304で32倍であった。
【0047】
【表6】
【0048】
ウサギ赤血球膜に対するF. psychrophilum菌体の凝集活性試験の結果を表7に示す。
すなわち、OH0016、ZH0001、A−2で16倍の強い凝集活性を示し、以下PH0003、PH0004、PH0007、PH0010の8倍、PH9304の順であった
【0049】
【表7】
【0050】
ウサギ赤血球膜に対するF. psychrophilum粗LPSの凝集活性試験の結果を表8に示す。
すなわち、SG 990302及びPH0010株で64倍の強い凝集活性を示し、以下PH0007、A−2株で32倍、PH0003、PH9304、ZH0001株で16倍、PH0004、OH0016株で8倍であった。
【0051】
【表8】
【0052】
実施例2 ウサギ赤血球膜混合F. psychrophilum粗LPSの免疫応答及び感染防御効果
(1)供試魚
供試魚は岡山県津山市の岡山県水産試験場指導センターで免疫を行った平均体重9.51gのアユを用いた。供試魚は200 l容パンライト水槽を用いて、水温15℃で流水飼育した。
【0053】
(2)F. psychrophilum LPSの粗精製及び調製
供試菌株にはF. psychrophilum FKC SG 990302を用いた。参考例1と同様の方法を用いてから精製し、抽出1〜3回目を全て混合し蒸留水を用いて30mLにメスアップし、免疫処理に用いた。
【0054】
(3)ウサギ赤血球膜の精製及び調製
参考例1と同様の方法を用いて精製及び調製した。
【0055】
(4)ウサギ赤血球膜混合F. psychrophilum粗LPSの調製
抽出1〜3回目を全て混合した粗LPSをウサギ赤血球膜を用いて30mLにメスアップし、免疫処理に用いた。
【0056】
(5)F. psychrophilum FKC(Fomalin Killed Cells)の作製及び調製
F. psychrophilum PH0007株を15℃、110rpm、100h振とう培養した。振とう培養後、菌液に対して1%のホルムアルデヒド(和光純薬)を加え撹拌し、4℃、24h放置した。放置後、高速冷却遠心機で4℃、7,500rpm、30分間遠心分離し、集菌した菌をPBSを用いて遠心洗浄を三回行った。洗浄後、PBSで菌体を10mg/mLに調製した。
【0057】
(6)免疫
供試魚はF. psychrophilum粗LPS及びウサギ赤血球膜混合F. psychrophilum粗LPSを蒸留水を用いて2Lにメスアップした希釈液に30分間浸漬し、一週間後にもう一度30分間浸漬した。また対照区として無処理のアユを用いた。
【0058】
(7)抗血清の作製
採血はアユ尾部の血管より1mL容注射器を用いて行った。採血後、3,000rpm、10分間遠心により血漿を分離した。
【0059】
(8)凝集反応法による血中抗体価の測定
凝集活性試験はマイクロタイター法を用いて参考例1の方法で行った。なお、希釈液としてPBSを用いて抗血清の2倍希釈系列を作製し、ウェルにはF. psychrophilum FKCを一滴加えた。また、補体の非動化は抗血清を44℃で20分間インキュベートし行った。
【0060】
(9)結果
凝集反応法による血中抗体価の測定結果を図1に示す。
すなわち、ウサギ赤血球膜混合粗LPS浸漬区で1:3.272、F. psychrophilum粗LPS浸漬区で1:2.667、対照区で1:1.552であった。
【0061】
実施例3 実験的感染による感染防御効果
(1)供試魚、免疫
実施例2と同様方法で免疫を行った。
【0062】
(2)浸漬攻撃試験法による実験的感染
免疫処理2週間後、浸漬攻撃試験は供試魚を飼育していたパンライト水槽の飼育水と冷水病羅病魚を飼育したパンライト水槽の飼育水と入れ換え行った。攻撃試験後22日間における生存率を求めた。
【0063】
(3)結果
感染実験後の生存率は、ウサギ赤血球膜混合粗LPS浸漬区で90%と高く、F. psychrophilum粗LPS浸漬区は77.5%、対照区(無処理)は32.5%であった。
【0064】
【発明の効果】
本発明魚類冷水病ワクチンは、浸漬投与が可能であることから、これを用いれば、サケ、マス、アユ等の魚類冷水病を安全且つ経済的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、凝集反応法による血中抗体価の測定結果を示したグラフである。
A:F. psychrophilum粗LPS浸漬区、B:ウサギ赤血球膜混合粗LPS浸漬区、C:対照区
Claims (5)
- フラボバクテリウム サイクロフィラムの菌体又は菌体由来リポ多糖類とウサギ赤血球膜との複合体を有効成分とする魚類冷水病ワクチン。
- 浸漬ワクチンである請求項1記載の魚類冷水病ワクチン。
- フラボバクテリウム サイクロフィラムの菌体又は菌体由来リポ多糖類とウサギ赤血球膜との複合体を含有する魚類冷水病ワクチン組成物。
- 浸漬用のワクチン組成物である請求項3記載の魚類冷水病ワクチン組成物。
- 請求項2記載のワクチン又は請求項4記載のワクチン組成物を懸濁させた水中に魚類を浸漬することを特徴とする魚類冷水病の予防法。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2008531610A (ja) * | 2005-03-02 | 2008-08-14 | リームザー アルツナイミッテル アーゲー | 魚の治療のための経口投与可能な医薬製剤、その製造方法及びその使用 |
WO2024048430A1 (ja) * | 2022-08-31 | 2024-03-07 | 滋賀県 | ワクチン製剤及びその製造方法、並びに魚類細菌感染症の予防方法 |
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