JP2004351553A - 縦型ロータリ研削盤 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡単な制御で任意の方向に工具回転軸を傾斜させ得る縦型ロータリ研削盤を提供する。
【解決手段】砥石駆動装置42は、第1傾動装置18によってピン16回りに回動させられると共に、第2傾動装置52によってピン62回りに回動させられるので、砥石回転軸Cgは、ピン16回りに回動させられることによってそのピン16に垂直な平面内で傾斜させられると共に、ピン62回りに回動させられることによってそのピン62に垂直な平面内でも傾斜させられる。そのため、各々による傾斜が合成された任意の方向および角度で砥石回転軸Cgが傾斜させられることになる。このとき、第1傾動装置18と第2傾動装置52とが別個に備えられ、且つピン16回りの回動とピン62回りの回動がそれぞれで分担して行われることから制御も簡単になる。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術手段】
本発明は、ワークの表面を高平面度で平面研削するための高平面度加工装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば鉛直方向に沿って伸びる回転軸回りにワークを回転駆動するためのワーク回転駆動装置と、円環状の研削面を有する回転研削工具をその軸心回りに回転駆動するための研削工具回転駆動装置とを備え、シリコン・ウェハやガラス等のワークおよび砥石等の回転研削工具をそれぞれ回転させつつ、その研削面をそのワークの一面に押し当てることにより、その一面を平坦に研削する縦型ロータリ研削盤等の研削加工装置が知られている。
【0003】
上記の研削加工装置の一形式に、回転研削工具の軸心をワークの回転軸に対して微小な角度(すなわち、水平に対して微小な角度)だけ傾斜させてワークに押し当てる研削方法に用いられるものがある。このような研削方法によれば、工具軸心がワーク回転軸に平行な場合に比較して研削量が過度となることが抑制されると共に、ワークに押し付けられた際の工具の逃げが抑制されるため、ワーク一面の初期的な凹凸に拘わらず一定の平面度を得ることができる。すなわち、研削加工装置或いは回転研削工具の剛性が不十分であっても、その逃げに起因してワークが局部的に研削されることが抑制されるため平坦な被加工面が得られるのである(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで、上記の特許文献1に記載された研削加工装置では、回転研削工具が取り付けられた支持装置を装置本体フレームにボルト等によって固定しており、そのボルトのねじ込み量を変化させることによって工具軸心を傾斜させている。なお、目的は相違するが、例えば回転研削工具を回転駆動するモータをその端面に周方向に均等配置された例えば4個の圧電素子で支持し、それら4個の圧電素子の各々の歪み量を調節することによって工具軸心を傾斜させる構造も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−245148号公報
【特許文献2】
特開平9−290366号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の特許文献1に記載された傾斜機構では、本体フレームに対する傾斜角度のみが変更可能であるため、工具軸心を所望の方向に傾斜させることができない不都合があった。例えば、シリコン・ウェハの表面研削加工では、ワーク回転軸の過度の研削を防止するために、ワークの外周縁と回転軸との間の位置に研削面外周縁の最下点を押し付けて研削することが望ましいが、上記のような一方向のみの傾斜機構でこのようにすると、回転研削工具の外周縁をワーク回転軸上に位置させるために複雑な位置制御が必要になる。これに対して、特許文献2に記載された傾斜機構では、4個の圧電素子の歪み量の相互関係で傾斜方向や傾斜角度が定まるため任意の方向に傾斜させ得るが、複雑な歪み量制御が必要である。
【0007】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、簡単な制御で任意の方向に工具回転軸を傾斜させ得る縦型ロータリ研削盤を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
斯かる目的を達成するために、本発明の要旨とするところは、(a)回転研削工具が取り付けられる工具回転軸を備えた工具回転駆動装置と、(b)前記工具回転駆動装置を所定の第1回動軸回りの回動可能に支持する第1回動支持装置と、(c)前記第1回動支持装置を前記第1回動軸に非平行な所定の第2回動軸回りの回動可能に支持する第2回動支持装置とを、含むことにある。
【0009】
【発明の効果】
このようにすれば、工具回転駆動装置は、第1回動支持装置によって第1回動軸回りに回動させられると共に、第2回動支持装置によって第2回動軸回りに回動させられるので、その工具回転駆動装置に備えられた工具回転軸は、第1回動軸回りに回動させられることによってその第1回動軸に垂直な平面内で傾斜させられると共に、第2回動軸回りに回動させられることによってその第2回動軸に垂直な平面内でも傾斜させられる。そのため、各々による傾斜が合成された任意の方向および角度で工具回転軸が傾斜させられることになる。このとき、第1回動支持装置と第2回動支持装置とが別個に備えられ、且つ第1回動軸回りの回動と第2回動軸回りの回動がそれぞれで分担して行われることから、複数個の圧電素子の歪み量を制御して任意の方向に傾斜させる場合に比較して制御も簡単になる。したがって、簡単な制御で任意の方向に工具回転軸を傾斜させ得る。なお、「非平行」とは、平行以外の種々の態様を含み、例えば直交する位置関係にある場合や、第1回動軸および第2回動軸の各々に平行な平面が直交するようなねじれの位置関係にある場合はもちろん、第1回動軸および第2回同軸の各々に平行な平面が他の任意の角度で交叉する位置関係にある場合も含むものである。
【0010】
【発明の他の態様】
ここで、好適には、前記第1回動支持装置および前記第2回動支持装置は、所定の部材に螺合されたねじ部材と、そのねじ部材をその軸心回りに回転させるためのねじ部材駆動装置とを備え、そのねじ部材のねじ込み量を変化させることにより前記工具回転駆動装置または前記第1回動支持装置を回動させるものである。このようにすれば、ねじ部材のねじ込み量を変化させる機械的な制御で工具回転軸が傾斜させられる。そのため、例えば圧電素子等を用いて電気的な制御で傾斜させる場合における振動等の外乱による歪み量の変動が生じ得ないので、研削加工中に傾斜状態が変動し難い利点がある。一層好適には、前記前記縦型ロータリ研削盤は、前記工具回転駆動装置を所定の回動角度で固定する角度固定装置を含むものである。このようにすれば、ねじ部材駆動装置によってねじ部材のねじ込み量が変更されることで回動角度延いては工具回転軸の傾斜角度を所望の角度に容易に変更できる一方、研削中には角度固定装置によって傾斜角度の変更を禁止できる。そのため、研削中の振動等の外乱による傾斜角度の変化が抑制されるので、加工精度を高めることができる。
【0011】
また、好適には、前記縦型ロータリ研削盤は、前記工具回転駆動装置を所定の回動抵抗が与えられた状態で回動させるための抵抗付与装置と、前記工具回転駆動装置を所定の回動角度で固定する角度固定装置とを含むものである。このようにすれば、所定の角度および方向に傾斜させられた工具回転駆動装置は、回動抵抗によってその傾斜状態からの変化が抑制される。そのため、角度固定装置によって工具回転駆動装置を回動させられた状態で固定するに際して、その固定操作に起因して回動角度延いては工具回転軸の傾斜角度が変化することが好適に抑制される。
【0012】
また、好適には、前記抵抗付与装置は、前記抵抗付与装置は、前記工具回転駆動装置を前記第1回動支持装置に前記第1回動軸回りの回動が許容された状態で締結し得る締結部材と、その回動が許容された締結状態において前記第1回動軸に平行な方向に前記工具回転駆動装置を弾性的に押圧する押圧部材とを含むものである。このようにすれば、押圧部材によって第1回動軸に平行な方向に弾性的に押圧されることにより、回動が許容された状態で第1回動支持装置に締結された工具回転駆動装置に回動抵抗が与えられる。
【0013】
また、好適には、前記ねじ部材駆動装置は、高精度で駆動制御可能な電動機、例えばインバータ・モータ、ステッピング・モータ、サーボ・モータ等である。このようにすれば、これらのモータは汎用モータに比較して高精度で制御できるため、ねじ部材のねじ込み量延いては工具回転軸の傾斜角度を高精度で制御できる。このため、ワークおよび回転研削工具の大きさに応じた最適な傾斜角度で研削を行い得るため、高い平面度を確実に得ることができる。すなわち、工具回転軸を傾斜させる研削方法においては、加工後の平面度がワークおよび回転研削工具の大きさに応じて定められるその傾斜角度によって決定されることから、傾斜角度を高精度で制御することが望まれるのである。例えば手動或いは汎用モータではねじ込み量の調節精度が粗くなることから、理想的な傾斜角度に設定するのは極めて困難であるため、偶発的に高い平面度を得ることができる場合もあるが、平均的には低い平面度に留まる。これに対して、インバータ・モータ等では、ねじ込み量の調節精度が細かくなることから、容易に理想的な傾斜角度に設定できるため、定常的に高い平面度を確保することができるのである。
【0014】
また、好適には、前記第1回動支持装置および前記第2回動支持装置には、前記工具回転駆動装置またはその第1回動支持装置を回動するための駆動装置として圧電素子または磁歪素子が備えられる。このようにすれば、前記のようなねじ部材と電動機との組合せで回動させる場合に比較して、回動角度延いては傾斜角度を一層高精度で制御できる。すなわち、ワークを一層高い平面度に研削することができる。
【0015】
また、好適には、前記工具回転駆動装置は、前記第1回動軸に垂直な平板状支持部を介して前記第1回動支持装置に支持されるものであり、その平板状支持部は、その第1回動支持装置にその第1回動軸回りの回動可能に取り付けるためのピンが厚み方向に貫通して刺し通される円形の貫通孔と、その第1回動支持装置に回動不能に固定するための1乃至複数本のボルトが厚み方向に貫通して所定の遊びを以て刺し通される1乃至複数の貫通孔とを備えたものであり、その第1回動支持装置は、前記ねじ部材がその先端が上記平板状支持部材の上端部側面に突き当てられまたは螺合されたものである。このようにすれば、ねじ部材のねじ込み量を変化させることによって平板状支持部材がピンの回りに回動させられることにより、工具回転駆動装置が回動させられ延いては工具回転軸が傾斜させられる。
【0016】
一層好適には、前記ねじ部材は、前記平板状支持部材の上端部の両側面にそれぞれ備えられる。このようにすれば、一対のねじ部材のねじ込み量を相互に呼応して変化させることにより、平板状支持部材がねじ込み量の変化量以上に回動することが好適に抑制され、工具回転軸の傾斜角度の制御が一層容易になる。
【0017】
また、好適には、前記縦型ロータリ研削盤は、所定方向例えば鉛直方向に伸びる回転軸回りの回転可能にワークを支持するワーク支持装置を含むものである。
【0018】
【発明の好適な実施の形態】
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明に用いる図面に関して、各部の寸法比等は必ずしも正確には描かれていない。
【0019】
図1は、本発明の高平面度加工装置の一実施例である縦型ロータリ研削盤10の正面図であり、図2はその側面図である。これらの図において、縦型ロータリ研削盤10は、下部フレーム12と、その下部フレーム12の上面のうち定盤14が載置された残りの部分において、水平軸心方向のピン16まわりの回動が微調節可能に第1傾動装置18により固設された上部フレーム20とを備えている。この第1傾動装置18は、例えば上部フレーム20の下端部において側方に突設された支持部22と、その支持部22を鉛直方向に貫通し或いは螺合して設けられたねじ軸24と、これを軸心回りに回転させる駆動装置26等から成り、そのねじ軸24の一端が下部フレーム12の上端部において側方に突設された受け部28にねじ込まれた或いは先端が突き当てられた状態で取り付けられたものである。
【0020】
上記の駆動装置26は、例えばインバータ・モータやステッピング・モータ、或いはサーボ・モータ等の高精度で回転を制御できるモータから成るものであって、例えば上記の支持部22に取り付けられている。上部フレーム20は、この駆動装置26でねじ軸24を軸心回りに回転させることにより、そのねじ軸24のねじ込み量に応じた角度だけ、図2における紙面に垂直な回動軸(ピン16)回りに傾斜させられる。図1および図2においては、傾斜させていない状態を示している。本実施例においては、上記の第1傾動装置18、ピン16、および下部フレーム12等が第2回動支持装置を構成する。
【0021】
また、上部フレーム20には、鉛直方向に長手状を成す角柱状の一対の支柱30と、鉛直方向案内部材として機能するその支柱30にそれぞれ嵌装されて鉛直方向に案内される一対の鉛直方向静圧気体軸受装置32とが設けられている。それら一対の鉛直方向静圧気体軸受装置32は、連結板34などを介して互いに連結されている。図3は、上記支柱30の断面を示している。
【0022】
また、鉛直方向静圧気体軸受装置32は、たとえば図4にその要部を示すように、支柱30の4つの案内面を取り囲むハウジング36と、そのハウジング36内において上記案内面と対向し且つわずかな隙間を隔てて位置するように設けられた多孔質部材38と、その多孔質部材38の上記案内面側とは反対側に圧縮気体たとえば圧縮空気を供給するための気体供給通路40とを備え、上記支柱30の案内面との間の隙間に多孔質部材38から噴出させた高圧流体圧(静圧)を介在させることにより被接触でハウジング36が支柱30に支持或いは拘束されるようにする。
【0023】
上記鉛直方向静圧気体軸受装置32には、ガラス板、半導体ウエハなどの被研磨体である板状のワークWの一面(上面)を研削するために略鉛直方向(後述するように方向可変)の回転軸まわりに研削砥石Gを回転駆動する砥石駆動装置42が連結され固定されている。この砥石駆動装置42は、たとえばカップ砥石のような回転研削工具である研削砥石Gを回転駆動するための研磨工具回転駆動装置として機能している。従って、支柱30およびそれにより案内される鉛直方向静圧気体軸受装置32は、砥石駆動装置42を鉛直方向に移動可能に支持するための砥石駆動装置支持装置として機能している。上記砥石駆動装置42は、鉛直方向静圧気体軸受装置32により鉛直方向への移動可能に支持されている。砥石駆動装置42は、軸(下)端に研削砥石Gが固定された回転軸44と、その回転軸44を回転駆動するモータ46が固定された固定板48と、そのモータ46に固定され、上記回転軸44を静圧気体を介して回転可能に支持する静圧気体回転軸受装置50とを備えている。この静圧気体回転軸受装置50は、回転軸44の外周面に対向する多孔質部材から吹き出させた高圧流体圧(静圧)を介在させた状態でその回転軸44を無接触で支持するものである。
【0024】
また、上記の固定板48の上端部近傍には、一対の第2傾動装置52,52が鉛直方向静圧気体軸受装置32に固定されることにより設けられている。これら第2傾動装置52,52は、何れも、例えばハウジング36の一面に固定された支持部材54,54に螺合されたねじ軸56,56と、それらねじ軸56,56を水平方向に伸びるその軸心回りにそれぞれ回転させるための駆動装置58,58等から成り、それらねじ軸56,56が固定板48の側端面に突き当たられ或いはねじ込まれた状態で取り付けられたものである。この駆動装置58も、例えばインバータ・モータやステッピング・モータ、或いはサーボ・モータ等の高精度で回転を制御できるモータから成るものであって、例えば支持部材54,54に取り付けられており、図示しない制御装置によってそれらの駆動方向が相互に反対と成り且つ駆動量が相互に一致するように制御されている。本実施例においては、上記の第2傾動装置52,52、上部フレーム20、鉛直方向静圧気体軸受装置32等が第1回動支持装置を構成している。
【0025】
これら駆動装置58,58でねじ軸56,56が軸心回りに回転させられると、それらねじ軸56,56の一方が固定板48に向かって接近させられると共に他方が後退させられるので、接近側においては固定板48の上端部が押圧され、後退側においてはねじ軸56がねじ込まれている場合には引張られ、突き当てられている場合には押圧力が低下させられる。図5に拡大して示すように、固定板48にはその裏面側(すなわちハウジング36側)に開口する有底穴60が設けられており、ハウジング36にはその有底穴60に先端部が挿入させられたピン62が突設されている。これら有底穴60およびピン62は、図1における紙面に垂直な方向が軸心方向となるように相互に略同一の直径に形成されたものであって、軸心回りの相対回転が許容される程度の僅かな隙間を以て嵌め合わされている。そのため、駆動装置58,58で回転駆動してねじ軸56,56の一方を前進させ他方を後退させると、固定板48は、それらのねじ込み量の変化に応じた角度だけピン62回りに回動させられ、鉛直方向に対して傾斜させられる。図1および図2においては、傾斜させていない状態を示している。
【0026】
このように固定板48が回動させられると、これに固定されたモータ46の回転軸44は、図1における紙面に垂直な回動軸回りにその固定板48の回動角度だけ回動させられ、鉛直軸に対して傾斜させられる。また、前記の第1傾動装置18によって上部フレーム20が回動させられた場合には、図2に示される構成から明らかなように固定板48が共にピン16回りに回動させられるので、これに取り付けられているモータ46も同時に図2における紙面に垂直な回動軸回りに回動させられる。そのため、モータ46の回転軸44すなわち研削砥石Gの回転軸Cgは、図1における紙面に垂直な回動軸および図2における紙面に垂直な回動軸、すなわち砥石回転軸Cgに非平行且つ相互に非平行の2つの回動軸回りにそれぞれ回動させられ得るようになっている。
【0027】
また、固定板48は、図1および図2に示されるように例えば6本の六角穴付ボルト64を用いてハウジング36に固定されている。また、上記の図5に示されるように、ハウジング36には雌ねじ穴66が設けられると共に、固定板48には貫通穴68が設けられており、6本のボルト64はそれぞれ座金70を介してそのハウジング36に締め付けられることにより、固定板48をそのハウジング36に固定している。図6に示されるように、上記の貫通穴68は、図1における左右方向に伸びる長穴であって、短径方向においてもボルト64のねじ部直径よりも十分に大径に構成されたものである。そのため、ボルト64は、固定板48の長穴68に比較的大きな遊びを以て嵌め入れられている。
【0028】
また、上記の座金70は、ボルト64を僅かに緩めた状態を図7に示すように、皿バネ座金等から成るものである。そのため、ボルト64が締め付けられることによって弾性的に変形させられる(すなわち平坦化される)ので、図示の状態においても、座金70は固定板48をハウジング36に向かって押圧している。
【0029】
図1および図2に戻って、上部フレーム20には、ワークWの研磨に際して砥石GをワークWに向かって所定の切込み量で送り込むために、その砥石GをワークWに向かってその回転軸に平行な方向すなわち略鉛直方向へ送り込む砥石送り駆動装置72が設けられている。砥石送り駆動装置72は、位置固定の上部フレーム20に設けられた送りねじ装置74と、その送りねじ装置74により送られる可動部材76と前記鉛直方向静圧気体軸受装置32に連結された連結板34との間に設けられ、その鉛直方向静圧気体軸受装置32をその可動部材76の移動方向と平行な方向に移動させる圧電アクチュエータ78とを備えたものである。送りねじ装置74は、鉛直方向の回転軸まわりに回転可能に上部フレーム20に設けられた送りねじ80と、その送りねじ80に連結されて上部フレーム20に設けられたモータ82とを備え、モータ82により回転駆動される送りねじ80の回転に伴ってそれに螺合した可動部材76が鉛直方向に位置決めする。また、上記圧電アクチュエータ78は、たとえば板状の圧電セラミックスが積層されたものであり、印加されたるされた駆動電圧に応じてその全長がたとえば200(μm)ストローク内で高精度で変化させられ、たとえば6(kN)の出力が得られるものである。
【0030】
また、上記上部フレーム20には、鉛直方向静圧気体軸受装置32により片持ち状に支持された砥石駆動装置42の荷重に起因して前記支柱30の案内面における面圧分布の偏在を緩和するための荷重平衡装置84が設けられている。荷重平衡装置84は、上記砥石駆動装置42と略同等の荷重を備えて上部フレーム20内に上下方向の移動が可能に配置された平衡錘86と、その平衡錘86と砥石駆動装置42との間を連結し、且つローラ88により逆U字状に案内されたケーブル90とを備え、上記砥石駆動装置42にそれを引上げる方向の推力を付与することによりその荷重をその上下位置に拘わらず軽減する。
【0031】
また、前記下部フレーム12上には、ワークWの上面を研磨するためにそのワークWを鉛直方向の回転軸Cwまわりに回転駆動するワーク回転駆動装置92が、定盤14、三分力動力計94、およびワーク回転駆動装置支持装置96を介して設けられている。ワーク回転駆動装置支持装置96は、上記ワーク回転駆動装置92を水平方向に移動可能に支持するためのものであって、その水平方向に延びる水平方向案内部材98と、上記ワーク回転駆動装置92が連結され、その水平方向案内部材98の案内面との間に静圧気体を介在させた状態でその水平方向案内部材98により一水平方向に案内される水平方向静圧気体軸受装置100とを備えている。図5に位置関係を示すように、上記ワーク回転駆動装置92に固定されたワークWは、前記研削砥石Gと鉛直方向において、ワークWの半径程度重複するように設定されている。
【0032】
上記ワーク回転駆動装置92は、前記ワークWが着脱可能に取り付けられる吸着盤102が固定された図示しない回転軸と、その回転軸を回転駆動するモータ104と、そのモータ104に固定され、その回転軸を静圧気体を介して支持する静圧気体回転軸受装置106とを備えたものである。この静圧気体回転軸受装置106は、上記図示しない回転軸の外周面に対向する多孔質部材から吹き出させた高圧流体圧(静圧)を介在させた状態でその回転軸44を無接触で支持するものである。また、上記水平方向静圧気体軸受装置100は、前記鉛直方向静圧気体軸受装置32と同様に、水平方向案内部材98の案内面を取り囲むハウジング108と、そのハウジング108内において上記案内面と対向し且つわずかな隙間を隔てて位置するように設けられた図示しない多孔質部材と、その多孔質部材の上記案内面側とは反対側に圧縮気体たとえば圧縮空気を供給するための気体通路とを備え、上記水平方向案内部材98の案内面との間の隙間に多孔質部材から噴出させた高圧流体圧(静圧)を介在させることにより被接触でハウジング108が水平方向案内部材98の案内方向以外の移動が拘束されるようにする。ハウジング108は、たとえばリニヤモータのような水平方向駆動装置110或いは手動操作によって水平方向すなわち図1における左右方向に往復移動させられる。
【0033】
以上のように構成された縦型ロータリ研削盤10でシリコン・ウェハ等のワークWの表面を研削するに際しては、先ず、第1傾動装置18および第2傾動装置52を駆動して、上部フレーム20をピン16回りに回動させると共に、固定板48をピン62回りに回動させることにより、砥石回転軸Cgを鉛直方向に対して予め定められた角度だけ傾斜させる。傾斜角度は、例えば、図1における右回り方向に0.03°程度、図2における左回り方向に0.03°程度である。この結果、研削砥石Gは、図8(a)に示されるように、正面視において上面が僅かに手前側を向き且つ全体として左端側が低くなるように傾斜させられた状態になっている。また、図8(b)に平面視における位置関係を示すように、研削砥石Gは、その外周縁がワークWの回転軸Cw上を通り且つその下面(すなわち研削面)の最下点PがワークWの回転中心と外周縁との間の位置、例えばその回転中心から半径の1/2の長さだけ離隔した位置にある。本実施例においては、このような傾斜状態を実現する目的で互いに直交する2平面内でそれぞれ砥石回転軸Cgを傾斜させるための第1傾動装置18および第2傾動装置52が備えられている。なお、研削砥石Gの下面において、この最下点Pと図示しない最上点との高さの差は、例えば20(μm)程度である。また、研削砥石Gは、例えば円筒状の下端面にその周方向に沿って多数の砥石部材が固着されたものであるが、図においては全体を円板状に簡略化して描いている。
【0034】
上記のようにピン16,62回りに回動させるに際して、前者においては、上部フレーム20およびこれに直接或いは間接的に取り付けられた各部材の重量の総和である大荷重が回動角度を小さくする方向(すなわち図2における右回り方向)に作用するので、その回動角度は、第1傾動装置18のねじ軸24のねじ込み量の設定値に応じた値で安定し、外乱による変動が生じ難い。これに対して後者では、砥石駆動装置42、静圧気体回転軸受装置50、および研削砥石Gが取り付けられている固定板48は、回動角度を小さくするほうこうに作用する荷重が比較的小さいので、研削砥石GにワークWから作用する負荷で回動角度の変動が生じ易くなる。すなわち、ねじ軸56のねじ込み量の設定値に応じた回動角度で安定し難い。
【0035】
そこで、本実施例では、第2傾動装置52で固定板48を設定角度だけ傾動させた後、その傾動状態を維持するためにボルト64を締め付けてハウジング36に固定板48を固定する必要がある。このとき、固定板48の傾動動作は、前記の図7に示されるように、ボルト64が完全には締め付けられていないが、座金70が弾性的に変形させられた状態、すなわち固定板48が復元しようとする座金70から作用する押圧力でハウジング36に押し付けられた状態(すなわち半固定状態)で行われる。そのため、ボルト64を締め付けた際に固定板48がその締め付けトルクの作用でピン62回りに回動することが、その座金70の押圧力によって好適に抑制される。これにより、高精度で固定板48を回動させる駆動装置58の制御精度が回動角度に好適に反映されるので、何れの方向においても所望の回動角度を実現することができ、砥石回転軸Cgを所望の傾斜角度に設定することができる。したがって、本実施例においては、ボルト64が締結部材に、座金70が介挿部材にそれぞれ相当し、ボルト64および座金70によって抵抗付与装置が構成されている。
【0036】
なお、上記のように第2傾動装置52による傾動は座金70による押圧力が作用した状態で行われるため、駆動装置58の駆動能力は、その押圧力に基づいて固定板48とハウジング36との間に生ずる回動抵抗よりも十分に大きいことが必要になる。本実施例においては、上記駆動能力が例えば上記半固定状態における負荷の20倍程度に設定されており、上記押圧力に拘わらず固定板48を回動させることが可能となっている。
【0037】
また、固定板48に設けられている前記の長穴68は、予め設定された回動角度だけ固定板48の回動を許容し得るようにその形状が定められたものである。前述したように、ボルト64と長穴68との間に遊びが設けられていることから、ボルト64が上記のように半固定状態まで締め付けられていても固定板48を傾動させる際の妨げとなることは無く、また、その長穴68の水平方向の長さに応じた角度だけ固定板48の傾動が可能となっている。
【0038】
上記のようにして砥石回転軸Cgを傾斜させた後、ワークWが吸着盤102に固定されると、研削砥石GおよびワークWが各々の回転軸Cg、Cw回りの所定の方向に回転駆動されるとともに図示しない研削液が供給されつつ、その研削砥石GがワークWに接触する直前まで送りねじ装置74により下降させられる。すなわち、研削砥石Gは、その回転軸Cgがワーク回転軸Cwに対して傾斜させられた状態で回転させられる。前記の図8(a)は、この段階における位置関係を表している。次いで、圧電アクチュエータ78により研削砥石GがワークWに切り込まれることにより、ワークWの上面の全面に研削加工が行われる。このとき、研削砥石Gは、上述したように傾斜させられ且つ最下点PがワークWの半径の中央に位置させられていることから、実際に研削に寄与するのは図8(b)において太線で表された範囲のみとなる。すなわち、研削砥石GはワークWの半径部分のみに接触させられる。しかしながら、ワークWはその回転軸Cw回りに回転させられ、研削砥石Gもその回転軸Cg回りに回転させられるので、ワークWの全面が研削砥石Gの全周を用いて研削されることになる。
【0039】
上記のようにして予め定められた厚さ寸法まで研削した後、研削砥石GおよびワークWを継続的に回転させつつ、例えば定盤14をワークWの回転軸Cw回りの左回り方向に予め定められた角度θだけ回動させる。すなわち、水平方向静圧気体軸受装置100によるワークWの移動方向を傾斜させる。この後、水平方向駆動装置110によってハウジング108が水平方向案内部材98上で前後に往復移動させられると、最下点Pが回転軸CwとワークWの外周縁とを通る範囲で、その回転軸Cwに垂直な水平方向に移動させられる。これにより、水平方向の相対位置が固定されていた段階では研削量が小さくされていたワークWの回転中心近傍と外周縁近傍とが最下点Pで研削され、ワークWの被研削面が平坦化される。この往復移動を適当な回数例えば1回行った後、研削砥石GがワークWから上方に向かって離隔させられ、更に、定盤14が初期の位置に復帰させられると共に、ワークWが吸着盤102から取り外されることにより、1枚のワークWの研削加工が終了する。このようにして研削されたワークWの表面は、例えば1(μm)程度以下の高い平面度になる。
【0040】
上述のように本実施例によれば、砥石駆動装置42は、第1傾動装置18によってピン16回りに回動させられると共に、第2傾動装置52によってピン62回りに回動させられるので、その砥石駆動装置42に備えられた砥石回転軸Cgは、ピン16回りに回動させられることによってそのピン16に垂直な平面内で傾斜させられると共に、ピン62回りに回動させられることによってそのピン62に垂直な平面内でも傾斜させられる。そのため、各々による傾斜が合成された任意の方向および角度で砥石回転軸Cgが傾斜させられることになる。このとき、第1傾動装置18と第2傾動装置52とが別個に備えられ、且つピン16回りの回動とピン62回りの回動がそれぞれで分担して行われることから制御も簡単になる。したがって、簡単な制御で任意の方向に砥石回転軸Cgを傾斜させ得る縦型ロータリ研削盤が得られる。
【0041】
また、本実施例によれば、第1傾動装置18および第2傾動装置52は、モータ等の駆動装置26,58とねじ軸24,56とをそれぞれ備えていることから、ねじ軸24,56のねじ込み量を変化させる機械的な制御で砥石回転軸Cgが傾斜させられる。そのため、研削加工中に振動等の外乱による傾斜状態の変動が生じ難い利点がある。しかも、第2傾動装置52で回動させられる固定板48は、ボルト64によって回動状態で固定されるため、研削中に傾斜角度の変更が禁止される。そのため、研削中の振動等の外乱による傾斜角度の変化が一層抑制される。
【0042】
また、本実施例においては、固定板48が座金70に押圧されることによって回動抵抗が与えられた状態で回動させられることから、ボルト64を締め付ける際にその締め付けトルクに起因して回動角度が変化することが抑制されるので、一層高精度に傾斜角度を設定することができる。
【0043】
また、本実施例においては、回動角度を変更するためのねじ軸24,56が高精度で駆動制御可能なインバータ・モータ、ステッピング・モータ、或いはサーボ・モータ等で回転駆動されることから、ねじ軸24,56のねじ込み量延いては砥石回転軸Cgの傾斜角度を一層高精度に制御できる。このため、ワークWおよび研削砥石Gの大きさに応じた最適な傾斜角度で研削を行い得るため、一層高い平面度を得ることができる。
【0044】
図9は、固定板48および上部フレーム20を回動させるための駆動手段毎に得られ得る平均的な平面度を評価したものである。図において、「手動」はねじ軸24,56に代えてボルトを用い、その締め付け量を手動で調節するものである。また、「汎用モータ」乃至「サーボ・モータ」は、それぞれ駆動装置26,58としてそれらのモータを用いた場合である。また、「ピエゾ、磁歪素子」は、ねじ軸24,56,駆動装置26,58に代えてピエゾ素子或いは磁歪素子を用いて回動させた場合である。図に示されるように、手動調節の場合には5(μm)程度の平面度しか得られず、汎用モータを用いた場合でも3(μm)±1(μm)程度の平面度に留まるが、インバータ・モータを用いれば1.5(μm)±0.5(μm)程度、すなわち2(μm)以下、ステッピング・モータを用いた場合には0.5(μm)±0.1(μm)程度、サーボ・モータを用いた場合には0.1(μm)±0.01(μm)程度、すなわち1(μm)以下の極めて高い平面度を得ることができる。また、ピエゾ素子や磁歪素子を用いれば、更に高い平面度、例えば0.05(μm)±0.001(μm)程度が得られる。
【0045】
因みに、手動調節では回動角度の調節誤差が著しく大きくなる。また、汎用モータを用いて位置決め精度を高くするためには、減速比を大きくすることが考えられるが、減速比を大きくするほど減速機のバックラッシによって精度が低下することになるので、結局、高い位置決め精度は得られない。
【0046】
これに対して、インバータ・モータを用いた場合には、5×10−5(rad)程度の精度で砥石回転軸Cgの傾斜角度を調節でき、ステッピング・モータを用いた場合には、6×10−6(rad)程度、サーボ・モータを用いた場合には3.14×10−6(rad)程度の精度で傾斜角度を調節できる。更に、ピエゾ素子や磁歪素子を用いた場合には、1×10−8(rad)程度の精度で傾斜角度を調節できる。この結果、理想的な傾斜角度で研削を実施し得るので、高い平面度が得られるのである。
【0047】
なお、上記のような高い位置決め精度を実現するためには、傾斜角度の外部変動要因(外乱)を極力排除する必要がある。本実施例によれば、2方向の傾斜が別々の場所に設置された異なる装置で実現されている結果、駆動精度に係る相互の影響が排除されるので、極めて高い傾斜制御が可能となる。
【0048】
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、更に別の態様においても実施される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高平面度加工装置の一実施例である縦型ロータリ研削盤を示す正面図である。
【図2】図1の縦型ロータリ研削盤の側面図である。
【図3】図1のIII−III視断面において支柱の断面を示す図である。
【図4】図1の縦型ロータリ研削盤に備えられた垂直方向静圧気体軸受け装置の構成の要部を説明する断面図である。
【図5】図2の一部を拡大して第2傾動装置を示す側面図である。
【図6】第2傾動装置への固定板の取付構造を説明するための図5におけるIV矢視図である。
【図7】第2傾動装置の回動抵抗付与構造を説明するための図5の一部を拡大して示す図である。
【図8】図1の縦型ロータリ研削盤の研削中における研削砥石の傾斜状態を説明するための(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図9】回動角度を調整するための駆動方法と加工後のワークの平面度との関係を説明する図である。
【符号の説明】
10:縦型ロータリ研削盤
18:第1傾動装置
42:砥石駆動装置
52:第2傾動装置
W:ワーク
G:研削砥石
Cg:研削砥石回転軸
Cw:ワーク回転軸

Claims (4)

  1. 回転研削工具が取り付けられる工具回転軸を備えた工具回転駆動装置と、
    前記工具回転駆動装置を所定の第1回動軸回りの回動可能に支持する第1回動支持装置と、
    前記第1回動支持装置を前記第1回動軸に非平行な所定の第2回動軸回りの回動可能に支持する第2回動支持装置と
    を、含むことを特徴とする縦型ロータリ研削盤。
  2. 前記第1回動支持装置および前記第2回動支持装置は、所定の部材に螺合されたねじ部材と、そのねじ部材をその軸心回りに回転させるためのねじ部材駆動装置とを備え、そのねじ部材のねじ込み量を変化させることにより前記工具回転駆動装置または前記第1回動支持装置を回動させるものである請求項1の縦型ロータリ研削盤。
  3. 前記工具回転駆動装置を所定の回動抵抗が与えられた状態で回動させるための抵抗付与装置と、
    前記工具回転駆動装置を所定の回動角度で固定する角度固定装置と
    を、含むものである請求項1の縦型ロータリ研削盤。
  4. 前記抵抗付与装置は、前記工具回転駆動装置を前記第1回動支持装置に前記第1回動軸回りの回動が許容された状態で締結し得る締結部材と、その回動が許容された締結状態において前記第1回動軸に平行な方向に前記工具回転駆動装置を弾性的に押圧する押圧部材とを含むものである請求項3の縦型ロータリ研削盤。
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