JP2004351489A - 鋳造装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】上部に溶融るつぼと加熱装置からなる溶融部を有し、下部に鋳型からなる凝固部を有する鋳造装置において、前記鋳型をカーボン系の断熱材で覆うとともに、この鋳型上部を保護カバーで覆うことを特徴とする鋳造装置。
【選択図】図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明はシリコンの鋳造装置に関し、例えば太陽電池用半導体基板等の作製に用いられる多結晶シリコンの鋳造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
太陽電池は入射した光エネルギーを電気エネルギーに変換するものである。太陽電池のうち主要なものは使用材料の種類によって結晶系、アモルファス系、化合物系などに分類される。このうち、現在市場で流通しているのはほとんどが結晶系シリコン太陽電池である。この結晶系シリコン太陽電池はさらに単結晶型、多結晶型に分類される。単結晶型のシリコン太陽電池は基板の品質がよいために高効率化が容易であるという長所を有する反面、基板の製造コストが高いという短所を有する。これに対して多結晶型のシリコン太陽電池は基板の品質が劣るために高効率化が難しいという短所はあるものの、低コストで製造できるという長所がある。また、最近では多結晶シリコン基板の品質の向上やセル化技術の進歩により、研究レベルでは18%程度の変換効率が達成されている。
【0003】
一方、量産レベルの多結晶シリコン太陽電池は低コストであったため、従来から市場に流通してきたが、近年環境問題が取りざたされる中でさらに需要が増してきている。
【0004】
多結晶シリコン太陽電池に用いる多結晶シリコン基板は一般的にキャスティング法と呼ばれる方法で製造される。このキャスティング法とは、離型材を塗布した黒鉛などからなる鋳型内のシリコン融液を冷却固化することによってシリコン鋳塊を形成する方法である。このシリコン鋳塊の端部を除去したり所望の大きさに切断して切り出し、切り出した鋳塊を所望の厚みにスライスして太陽電池を形成するための多結晶シリコン基板を得る。
【0005】
このシリコン鋳塊を作製するための一般的なシリコン鋳造装置15を図2に示す。
【0006】
図2において、1は溶解るつぼ、2は原料シリコン、3は保持るつぼ、4は出湯口、5は上部加熱装置、6は側部加熱装置、7は鋳型加熱装置、8は鋳型、9は鋳型断熱材、10はシリコン融液、11は冷却板を示す。
【0007】
シリコン鋳造装置15の上部には原料シリコン2を溶融するための溶解るつぼ1が保持るつぼ3に保持されて配置され、溶解るつぼ1と保持3るつぼ7の底部にはシリコン融液を出湯するための出湯口4が設けられる。また、溶解るつぼ1、保持るつぼ3の側部と上部にはそれぞれ加熱装置5、6が配置され、溶解るつぼ1、保持るつぼ3の下部にはシリコン融液10が注ぎ込まれる鋳型8が配置され、その外側に断熱材9が設けられる。さらに、鋳型8の下部には冷却板11が設けられ、鋳型8の上部にはシリコン融液10の凝固を制御するための鋳型加熱装置7が配置される。
【0008】
溶解るつぼ1は耐熱性能とシリコン融液中に不純物が拡散しないこと等を考慮して例えば高純度の石英などが用いられる。保持るつぼ3は、石英等でできた溶解るつぼ1がシリコンの融点近傍の高温で軟化してその形状を保てなくなるため、これを保持するためのものであり、その材質はグラファイト等が用いられる。加熱装置5、6、7は、抵抗加熱式のヒーターや誘導加熱式のコイル等が用いられる。鋳型8はグラファイトや炭素繊維強化材料などからなり、その内側に窒化珪素などを主成分とする離型材を塗布して用いられる。鋳型断熱材9は抜熱を抑制するためのものであり耐熱性、断熱性等を考慮してカーボン系の材質が用いられる。また冷却板11は鋳型8内に注湯されたシリコン融液10を冷却、固化するためのものである。なお、これらはすべて真空容器(図示せず)内に配置される。
【0009】
鋳造装置15において、シリコン鋳塊を鋳造する場合、鋳型側面からの抜熱が大きいとシリコンが凝固した際の面内方向の温度差が大きくなり、熱応力に起因した結晶欠陥の発生を誘発するほか、最悪ブロックにクラックを発生させてしまうという問題を防ぐため、図2に示すように鋳型断熱材9は側面の鋳型8をよりも大きく、鋳型8を覆うように設けられている。
【0010】
【特許文献1】
特開平09−263489号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の鋳造装置15においては、溶解るつぼ1内で溶解されたシリコン融液を鋳型8内に出湯する際、鋳型8内からのシリコン融液10の飛び跳ねが鋳型断熱材9に付着するという問題が発生していた。
【0012】
この付着したシリコン融液は鋳型断熱材9を劣化させ、その耐久性、機械的強度を低下させる。それに伴い、シリコン融液を含みもろくなった上記鋳型断熱材9が鋳型8内のシリコン融液10へと混入してしまうことがあった。鋳型断熱材9を構成するカーボンはシリコン中への固溶度が低く、固溶限度を超えたカーボンは六方型のα−SiCとしてシリコン融液10が冷却固化された際のシリコン鋳塊中に析出し、鋳塊をスライスする際の切削性に悪影響を及ぼす他、太陽電池素子化した際に、特性の低下の要因となってしまう。
【0013】
また、シリコンの熱伝導率は約31.3W/mKであり、カーボンのフェルト成形体の熱伝導率約0.40W/mKに比べて約80倍大きいため、シリコン融液を含んだ鋳型断熱材9は鋳型側面の断熱性を著しく低下させ、結果としてシリコン鋳塊の面内方向の温度勾配を大きくし、太陽電池特性を劣化させる様々な結晶欠陥の発生の原因となる熱応力を発生させてしまう。このように鋳型断熱材9の耐久性の低下はシリコン融液10中へのカーボンの混入を誘発するばかりか鋳型側面の断熱性を低下させ結果としてシリコン鋳塊の品質を低下させてしまう。
【0014】
この問題を回避するためには、シリコン鋳塊を鋳造する毎に鋳型断熱材9を劣化の無い新しいものに交換する必要があるが、工業的な生産を考慮した場合には、断熱材コストの上昇を招いてしまうとともに、それでもなおシリコン融液10の凝固中における断熱性の低下を避けることができない。
【0015】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は構造が簡易で且つシリコン融液10への異物の混入がない、一方向結晶成長性のよいシリコン鋳塊を低コストで生産することができる鋳造装置を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の鋳造装置は、上部に溶融るつぼと加熱装置からなる溶融部を有し、下部に鋳型からなる凝固部を有する鋳造装置において、前記鋳型をカーボン系の断熱材で覆うとともに、この鋳型上部を保護カバーで覆うことを特徴とする。
【0017】
本発明の他の鋳造装置は、前記保護カバーは黒鉛を圧延した層状構造をもつ材料であることを特徴とする。
【0018】
本発明のさらなる他の鋳造装置は、前記保護カバーの厚みは0.2〜10mmであることを特徴とする。
【0019】
【作用】
本発明の鋳造装置によれば、上記構成のように、上部に溶融るつぼ1と加熱装置5、6からなる溶融部を有し、下部に鋳型8からなる凝固部を有する鋳造装置において、前記鋳型8をカーボン系の断熱材9で覆うとともに、この鋳型8の上部を保護カバーで覆ったことで、溶解るつぼ1の出湯口4からシリコン融液10が注湯される際に、シリコン融液が周囲に飛び跳ねても鋳型断熱材9の上部が保護カバー12で覆われているため、飛び跳ねたシリコン融液が鋳型断熱材9に付着し劣化させるという問題が発生することはない。これにより、シリコン融液を含みもろくなった鋳型断熱材9が鋳型8内のシリコン融液10へと混入してしまうという問題を解消でき、また、鋳型断熱材9にシリコン融液が付着することがないので、鋳型断熱材9が充分に断熱性を確保することができ、品質の高いシリコン鋳塊を鋳造できる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る鋳造装置を図面により詳述する。
【0021】
本発明に係る鋳造装置の全体構成は図2に示す鋳造装置と同じである。すなわち、上部には原料シリコン2を溶融するための溶解るつぼ1が保持るつぼ3に保持されて配置され、溶解るつぼ1と保持3るつぼ7の底部にはシリコン融液を出湯するための出湯口4が設けられる。また、溶解るつぼ1、保持るつぼ3の側部と上部にはそれぞれ加熱装置5、6が配置され、溶解るつぼ1、保持るつぼ3の下部にはシリコン融液10が注ぎ込まれる鋳型8が配置され、その外側に断熱材9が設けられる。さらに、鋳型8の下部には冷却板11が設けられ、鋳型8の上部にはシリコン融液10の凝固を制御するための鋳型加熱装置7が配置される。
【0022】
例えば高純度石英などからなる溶解るつぼ1内に入れられたシリコン原料は、抵抗加熱式のヒーターや誘導加熱式のコイル等からなる、上部および側部の加熱装置5、6によって加熱溶融され、シリコン融液となって底部の出湯口4から下部にある鋳型8内に注湯される。このシリコン融液10の入った鋳型8は、カーボンや炭素繊維強化炭素材料などからなり、その内表面は例えば窒化珪素を主成分とする離型材で被覆することによって、シリコン融液10と鋳型8の付着を防止するとともに、冷却固化された鋳塊が鋳型8から離型しやすくなる。また側面を鋳型断熱材9によって断熱するとともに、上部からは鋳型加熱装置7によって加熱し、下部には冷却板11を接触もしくは近づけることによって下部から抜熱し、一方向凝固を実現させる。
【0023】
図1は、本発明に係る鋳造装置を説明するための図であり、凝固部の構造を示した概略断面図である。
【0024】
図1において8は鋳型、9は鋳型断熱材、10はシリコン融液、11は冷却板、12は保護カバーを示す。このようにすることによって、溶解るつぼ1の出湯口4からシリコン融液10が注湯される際に、シリコン融液が周囲に飛び跳ねても鋳型断熱材9の上部が保護カバー12で覆われているため、飛び跳ねたシリコン融液が鋳型断熱材9に付着し劣化させるという問題が発生することはない。
【0025】
このとき保護カバー12は黒鉛を圧延した層状構造をもつ材料であることが望ましい。黒鉛は工業的に広く一般的に使用されているものであり、安価に製造することが出来るため、シリコン鋳塊を鋳造する毎に鋳型断熱材9を劣化の無い新しいものに交換するよりも、保護カバーを新しいものに交換するほうがコスト的に大きなメリットを持つ。また、圧延加工を施し、シート状にすることで表面からの粉塵の発生を防止でき鋳型内への異物混入を抑制する効果をもつ。また流体の透過率の低い層状構造になっているため、飛び跳ねたシリコン融液は保護カバー12の下の鋳型断熱材9に浸透していくことを更に効果的に抑止することができる。
【0026】
さらに保護カバー12の厚みは0.2〜10mmの範囲にあることが望ましい。本発明者らが繰り返し行なった実験結果によると、その厚みが0.2mm以下であれば、飛び跳ねたシリコン融液が鋳型断熱材に浸透していくことを防止できないという問題が発生し適当ではない。また10mm以上であれば、保護カバー12が鋳型加熱装置7によって加熱される鋳型8の上部と冷却板11によって冷却される鋳型8の下部との温度分布を変えてしまい、形成される多結晶シリコン基板の品質に悪い影響を与えるため不適である。
【0027】
その後、鋳型内へのシリコン融液の注湯が終了した時点で、上部および側部加熱装置5、6の出力を切って冷却板11を鋳型8の底部に押し当てるなどして冷却しながら鋳型加熱装置7の出力を調整してシリコン融液10を底部から上部に向かって一方向凝固させることによってシリコン鋳塊を得ることができる。
【0028】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明による鋳造装置によれば、上部に溶融るつぼ1と加熱装置5、6からなる溶融部を有し、下部に鋳型8からなる凝固部を有する鋳造装置において、前記鋳型8をカーボン系の断熱材9で覆うとともに、前記鋳型8の上部を保護カバー12で覆うことで、溶解るつぼ1の出湯口4からシリコン融液10が注湯される際に、シリコン融液が周囲に飛び跳ねても鋳型断熱材9の上部が保護カバー12で覆われているため、飛び跳ねたシリコン融液が鋳型断熱材9に付着し劣化させるという問題が発生することはない。これにより、シリコン融液を含みもろくなった鋳型断熱材9が鋳型8内のシリコン融液10へと混入してしまうという問題を解消し、シリコン鋳塊中にカーボンが析出するための発生するスライス歩留まりの低下や太陽電池素子化した際の特性低下を引き起こす要因を未然に防ぐことができる。
【0029】
また、鋳型断熱材9にシリコン融液が付着することがないので、鋳型断熱材9が充分に断熱性を確保することができ、品質の高いシリコン鋳塊を鋳造できるようになる。
【0030】
このとき前記保護カバーに黒鉛を圧延した層状構造をもつ材料を使用することによって、安価な材料で粉塵の発生を防止でき鋳型内への異物混入を抑制することができる。また流体の透過率の低い層状構造になっているため、飛び跳ねたシリコン融液は保護カバー12の下の鋳型断熱材9に浸透していくことを更に効果的に抑止することができ、品質の高いシリコン鋳塊を鋳造できるようになる。
【0031】
また保護カバー12の厚みを0.2〜10mmにすることによって、鋳型断熱材9へのシリコン融液の付着を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る鋳造装置を説明するための図であり、凝固部の構造を示した概略断面図である。
【図2】従来技術における鋳造装置の構造を説明するための概略断面図である。
【符号の説明】
1・・・溶解るつぼ
2・・・原料シリコン
3・・・保持るつぼ
4・・・出湯口
5・・・上部加熱装置
6・・・側部加熱装置
7・・・鋳型加熱装置
8・・・鋳型
9・・・鋳型断熱材
10・・・シリコン融液
11・・・冷却板
12・・・保護カバー
Claims (3)
- 上部に溶融るつぼと加熱装置からなる溶融部を有し、下部に鋳型からなる凝固部を有する鋳造装置において、前記鋳型をカーボン系の断熱材で覆うとともに、この鋳型上部を保護カバーで覆うことを特徴とする鋳造装置。
- 前記保護カバーは黒鉛を圧延した層状構造をもつ材料であることを特徴とする請求項1記載の鋳造装置。
- 前記保護カバーの厚みは0.2〜10mmであることを特徴とする請求項1または2記載の鋳造装置。
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