JP2004351428A - 超音波溶着装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】超音波溶着装置1は超音波溶着機4とレーザドップラ速度計5と制御装置6を備えている。超音波溶着機4は溶着対象物としてのFFCを挟むチップ9とアンビル10とを備えている。レーザドップラ速度計5はチップ9の速度を検出して制御装置6に向かって出力する。制御装置6はチップ9の速度に基づいてチップ9に加えられた仕事率を算出する。制御装置6は仕事率の変化率を算出する。制御装置6は仕事率の変化率が第1の所定の値以下となった後に第2の所定の値以上となるとチップ9の総変位量を算出しこの総変位量が所定の値を超えると超音波溶着機4を停止する。制御装置6はチップ9の総変位量に基づいて溶着対象物としてのFFCの溶着状況の良否を判定する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、複数の被覆電線などの溶着対象物を溶着する超音波溶着装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
移動体としての自動車には、種々の電子機器が搭載される。前記自動車は、前記電子機器にバッテリなどの電源から電力や制御装置から制御信号などを伝えるためにワイヤハーネスを配索している。前述したワイヤハーネスは、複数の電線などを備えている。
【0003】
これらの電線には、それぞれの芯線に外部からのノイズが侵入することを防止するために、シールド電線が用いられることがある。シールド電線は、導電性を有する編組からなるシールド部を備えている。このシールド部が、前記芯線内にノイズが侵入することを防止する。
【0004】
ここで、近年、前述したワイヤハーネスの低コスト化を図ることが望まれている。このために、前記シールド部を備えない電線を複数本束ね、これらの複数本の電線に薄膜の導体層を有する導体薄膜シートを巻き付けて、ワイヤハーネスを構成することが提案されている。このような構成にすることによって、低コスト化とノイズの侵入防止とを図ることができる。
【0005】
また、このような構成においても、前記ノイズを取り出すために、前記導体層にアース電線または端子などを取り付ける必要がある。アース電線は、導電性の芯線と、絶縁性の被覆部とを備えている。芯線は、複数の導線からなる。被覆部は絶縁性の合成樹脂からなり、前記芯線を被覆している。
【0006】
前記導体層にアース電線などを取り付けるために、導体薄膜シートに孔を開けて、該孔に前述したアース電線などの端部を通した後、ワッシャ、ボルト、ナットなどを用いて導体薄膜シートとアース電線とを固定することが考えられる。
【0007】
この場合、前記アース電線の被覆部の一部を除去するなどの皮むき作業が必要となり、組み立てにかかる工数が増加することが考えられる。また、ワッシャ、ボルト、ナットなどの部品が必要になるので、部品点数が増加する。したがって、コストが高騰することが考えられる。さらに、前述したボルトとナットなどを締め付ける際に、導体層が破損して、確実に前述したアース電線を導体層に接続できないことが考えられる。このため、電線の芯線に侵入しようとするノイズを、外部に逃がすことが困難となる。
【0008】
前述した課題を解決するために、本発明の出願人は、導体薄膜シートとアース電線とを重ねて、これらを近づける方向に加圧した状態で、超音波振動エネルギを付与することを提案している。超音波振動エネルギを付与することにより、前記導体薄膜シートの導体層とアース電線の芯線とを金属結合(接合)する。こうして、導体薄膜シートの導体層とアース電線とを電気的に接続する。この方法では、周知の超音波溶着装置(超音波接合装置又は超音波溶接装置ともいい、例えば、特許文献1参照。)を用いる。
【0009】
前記超音波溶着装置は、チップ(工具ホーンともいう)と、このチップに相対するアンビルと、図示しない圧電振動子などを備えている。超音波溶着装置は、前記チップとアンビルとの間に溶着対象物としての導体薄膜シートとアース電線とを挟む。超音波溶着装置は、圧電振動子を振動させ、この振動をチップを介して溶着対象物に加える。超音波溶着装置は、これらの溶着対象物としての導体薄膜シートとアース電線とを接合する。
【0010】
このとき、超音波溶着装置は、溶着対象物に与えるエネルギに基づいて、前記チップなどの振動状況を制御している。溶着対象物に加える超音波振動エネルギが一定となるように、前記圧電振動子の発振時間即ちチップの振動時間を制御している。超音波振動エネルギとは、発振時間と、チップが溶着対象物に加える仕事率(工率)と、の積である。チップが溶着対象物に加える仕事率(工率)とは、チップの振幅と、チップと溶着対象物との圧力と、の積である。又、チップが溶着対象物に加える仕事率(工率)は、前記圧電振動子に加えられた電力値と同等である。
【0011】
前述した従来の超音波溶着装置では、チップとアンビルとを予め定められる圧力で加圧した状態で、圧電振動子を予め定められる振幅で振動する。そして、この振動をチップを介して、溶着対象物に伝える。圧電振動子の発振時間が、予め定められる時間を超えると、圧電振動子を停止して、溶着対象物の接合を停止する。このように、従来の超音波溶着装置は、圧電振動子の振幅と、圧電振動子の発振時間に基づいて、溶着対象物を接合する。
【0012】
また、前述した従来の超音波溶着装置では、前記発振時間に基づいて、溶着対象物の溶着状況の良否を判定している。即ち、実際に圧電振動子が発振した時間が、予め定められる時間内であるか否かで良否を判定する。
【0013】
前述した従来の超音波溶着装置では、圧電振動子の発振に関する情報を、制御に用いている。実際には、超音波溶着する際に、溶着対象物から異音が発生したり、該溶着対象物が発熱するなどの、圧電振動子が発振して得られた超音波振動エネルギの全てが溶着対象物に加わるわけではない。このため、前述した超音波溶着装置は、溶着対象物を所望の強度で接合できるとはいえないとともに、溶着対象物の溶着状況の良否を正確に判定できない。
【0014】
このため、特開平5−206224号公報に示された超音波溶着装置では、チップが振動する際の振幅を測定している。前述した公報に示された超音波溶着装置は、圧電振動子の発振開始即ち超音波溶着(超音波溶接または超音波接合ともいう)の開始後、チップの振幅が予め定められる振幅を下回ると、圧電振動子の発振即ち超音波溶着を停止する。そして、圧電振動子の発振時間が、予め定められる時間内であるか否かで良否を判定する。
【0015】
超音波溶着では、溶着対象物の形状及び大きさなどによって、時間の経過に対するチップの振幅の変化が種々異なる。このため、前述した公報に記載された超音波溶着装置では、チップの振幅が予め定められる振幅を下回ると超音波溶着を停止するため、溶着対象物に実際に加わった超音波振動エネルギは、溶着対象物の変更により種々変化することとなる。また、圧電振動子の発振時間に基づいて良否を判定するため、溶着対象物の溶着状況を正確に判定できないのは、勿論である。このため、前述した特許文献1に記載の超音波溶着装置は、溶着対象物を所望の強度で接合できるとはいえないとともに、溶着対象物の溶着状況の良否を正確に判定できない。
【0016】
このため、本発明の出願人は、チップの総変位量を算出し、この算出したチップの総変位量に基づいて、圧電振動子を制御するとともに溶着対象物の溶着状態の良否を判定する超音波溶着装置(例えば、特許文献2参照。)を提案している。
【0017】
【特許文献1】
特開平5−206224号公報
【特許文献2】
特願2002−143383号
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
また、前述した溶着対象物として、金属からなる導体と、該導体を被覆する合成樹脂とからなる電線などを用いる場合がある。この場合、複数の溶着対象物を重ねて、これらの溶着対象物を接合する際に、まず、合成樹脂が溶けて、導体間から除去される。その後、溶着対象物の導体が相互に超音波溶着する。
【0019】
このように、金属からなる導体と該導体を被覆する合成樹脂とからなる電線などを溶着対象物として超音波溶着すると、溶着対象物に与えた超音波振動エネルギで絶縁体を溶かす。絶縁体を溶かすために用いられる超音波振動エネルギがばらつくことが知られている。このため、前述した特許文献2に記載の超音波溶着装置は、溶着対象物を所望の強度で接合できないのが明らかであるとともに、溶着対象物の溶着状況の良否を正確に判定できないのは明らかである。
【0020】
したがって、本発明の第1の目的は、合成樹脂で被覆された溶着対象物を所望の強度で確実に接合できる超音波溶着装置を提供することにある。第2の目的は、合成樹脂で被覆された溶着対象物の溶着状況の良否を正確に判定できる超音波溶着装置を提供することにある。
【0021】
【課題を解決するための手段】
前述した第1の目的を達成するために、請求項1に記載の本発明の超音波溶着装置は、駆動源により振動されるチップと、前記チップに相対するアンビルと、を備え、前記チップとアンビルとの間に複数の溶着対象物を挟みかつチップとアンビルとを互いに近づける方向に加圧した状態で、前記駆動源によりチップを振動させて該振動を前記溶着対象物に伝えることで、前記溶着対象物を互いに溶着する超音波溶着装置において、前記溶着対象物は、金属からなる導体と、前記導体を被覆する合成樹脂からなる被覆部とからなり、前記チップの振動に関する情報を検出可能な検出手段と、前記溶着対象物に加えられた仕事率を算出する仕事率算出手段と、前記仕事率算出手段が算出した仕事率の変化率を求め、該変化率に基づいて導体間から被覆部が除去されたか否かを判定する変化率判定手段と、前記変化率判定手段が導体間から被覆部が除去されたと判定すると、前記検出手段が検出した振動に関する情報から前記チップの総変位量を算出する算出手段と、前記算出手段が算出した前記チップの総変位量に基づいて、前記チップの振動を制御する制御手段とを備えたことを特徴としている。
【0022】
前述した第1の目的にくわえ、第2の目的を達成するために、請求項2に記載の本発明の超音波溶着装置は、請求項1に記載の超音波溶着装置において、前記算出手段が算出した前記チップの総変位量に関する情報に基づいて、前記溶着対象物の溶着状況の良否を判定する判定手段を備えたことを特徴としている。
【0023】
前述した第2の目的を達成するために、請求項3に記載の本発明の超音波溶着装置は、駆動源により振動されるチップと、前記チップに相対するアンビルと、を備え、前記チップとアンビルとの間に複数の溶着対象物を挟んで、前記駆動源によりチップを振動させて該振動を前記溶着対象物に伝えることで、前記溶着対象物を互いに溶着する超音波溶着装置において、前記溶着対象物は、金属からなる導体と、前記導体を被覆する合成樹脂からなる被覆部とからなり、前記チップの振動に関する情報を検出可能な検出手段と、前記溶着対象物に加えられた仕事率を算出する仕事率算出手段と、前記仕事率算出手段が算出した仕事率の変化率を求め、該変化率に基づいて導体間から被覆部が除去されたか否かを判定する変化率判定手段と、前記変化率判定手段が導体間から被覆部が除去されたと判定すると、前記検出手段が検出した振動に関する情報から前記チップの総変位量を算出する算出手段と、前記算出手段が算出した前記チップの総変位量に関する情報に基づいて、前記溶着対象物の溶着状況の良否を判定する判定手段とを備えたことを特徴としている。
【0024】
請求項4に記載の本発明の超音波溶着装置は、請求項1ないし請求項3に記載の超音波溶着装置のうちいずれか一項に記載の超音波溶着装置において、前記仕事率算出手段は、前記検出手段が検出したチップの振動に関する情報に基づいて、前記溶着対象物に加えられた仕事率を算出することを特徴としている。
【0025】
請求項5に記載の本発明の超音波溶着装置は、請求項1ないし請求項3に記載の超音波溶着装置のうちいずれか一項に記載の超音波溶着装置において、前記駆動源は、圧電振動子であり、前記圧電振動子に与えられる電力に関する情報を検出する第2検出手段を備え、前記仕事率算出手段は、前記第2検出手段が検出した前記圧電振動子に与えられる電力に関する情報に基づいて、前記溶着対象物に加えられた仕事率を算出することを特徴としている。
【0026】
複数の溶着対象物が金属からなる導体と該導体を被覆する合成樹脂からなる被覆部とを備えている場合に、これらの溶着対象物同士を超音波溶着すると、最初に、被覆部が溶けて、該被覆部が導体間から除去されることが知られている。その後、導体同士が接触して、これらの導体同士が超音波溶着されることが知られている。
【0027】
このとき、溶着対象物に加わる仕事率は、図15に示すように、時間の経過とともに変化する。図15中の範囲Aで示す仕事率の変化率が比較的低い間は、被覆部が溶けて、溶けた被覆部が導体間から除去される。そして、導体同士が互いに接触すると、図15中の範囲Bで示すように仕事率が急激に高くなって、該仕事率の変化率が大きくなる。これは、被覆部が溶けて、溶けた被覆部が導体間から除去されて、導体同士が接触するまでは、溶着対象物間の摩擦が低いためと考えられる。また、導体同士が接触すると、溶着対象物間の摩擦が高くなるためと考えられる。
【0028】
また、同じ条件で同じ溶着対象物同士を超音波溶着しても、図16に示すように、時間の経過に対する溶着対象物に加わる仕事率の変化が異なることが知られている。図16中の実線と一点鎖線と二点鎖線と点線は、同じ溶着対象物同士を超音波溶着したときの時間の経過に対する溶着対象物に加わる仕事率の変化を示している。図16中の実線は、1組目の溶着対象物同士を超音波溶着したときを示している。図16中の一点鎖線は、2組目の溶着対象物同士を超音波溶着したときを示している、図16中の二点鎖線は、3組目の溶着対象物同士を超音波溶着したときを示している。図16中の点線は、4組目の溶着対象物同士を超音波溶着したときを示している。
【0029】
同じ条件で同じ溶着対象物同士を超音波溶着しても、図16に示すように、時間の経過に対する溶着対象物に加わる仕事率の変化が異なるため、前記溶着対象物に加わる超音波振動エネルギも異なることとなる。このため、勿論、溶着対象物同士を超音波溶着するときのチップの総変位量も異なり、勿論、溶着後の溶着対象物同士の引張り強度も異なることとなる。
【0030】
したがって、チップの総変位量が同じであっても、同じ条件で同じ溶着対象物同士を超音波溶着したときの溶着対象物同士の引張り強度がばらつくこととなる。さらに、溶着対象物同士の引張り強度が同じであっても、同じ条件で同じ溶着対象物同士を超音波溶着したときのチップの総変位量がばらつくこととなる。これは、被覆部を溶かして導体間から除去するために必要となる超音波振動エネルギがばらつくためと考えられる。
【0031】
請求項1に記載した本発明の超音波溶着装置によれば、仕事率算出手段が算出した仕事率の変化率に基づいて、変化率判定手段が導体間から被覆部が除去されたか否かを判定する。変化率判定手段が導体間から被覆部が除去されたと判定すると、チップの総変位量に基づいて、チップの振動即ち溶着対象物の導体に加わる超音波振動エネルギを制御する。
【0032】
このため、被覆部を溶かして該被覆部を導体間から除去するためにかかる超音波振動エネルギを除いて、チップを介して溶着対象物の導体に実際に加わった超音波振動エネルギに基づいて超音波溶着を制御する。このため、溶着対象物に所望の超音波振動エネルギを確実に付与できる。
【0033】
溶着対象物に加わる仕事率の変化率が第1の所定の値以下となった後に、溶着対象物に加わる仕事率の変化率が第2の所定の値以上となると、変化率判定手段が導体間から被覆部が除去されたと判定するのが望ましい。第1の所定の値は、導体間の被覆部が溶けて、溶けた被覆部が導体間に位置していることを示す値であるのが望ましい。第1の所定の値は、図15中にAで示される範囲の仕事率Wの変化率以上で、かつ図15中にBで示される範囲の仕事率Wの変化率より小さいのが望ましい。
【0034】
また、第2の所定の値は、導体間から溶けた被覆部が除去されて導体同士が接触したことを示す値であるのが望ましい。第2の所定の値は、第1の所定の値より大きく、かつ図15中にBで示される範囲の仕事率Wの変化率以下であるのが望ましい。
【0035】
変化率判定手段が導体間から被覆部が除去されたと判定した後に、チップの総変位量が予め定められる値を超えると、チップの振動を停止するように、制御するのが望ましい。チップの総変位量の予め定められる値とは、溶着対象物の導体同士を所望の接合強度で溶着できる総変位量を示している。このため、チップの総変位量の予め定められる値とは、溶着対象物及び求められる接合強度により、種々変化する。この場合、溶着対象物に所望の超音波振動エネルギをより確実に付与できる。
【0036】
なお、超音波振動エネルギとは、発振時間と、電源が圧電振動子に印加する際の電力値(W:ワット数)と、の積である。しかし、実際に、溶着対象物に加わる超音波振動エネルギとは、溶着対象物同士の挙動に基づくこととなる。図14に示す超音波溶着装置1は、圧電振動子により振動されるチップ9と、このチップ9と相対するアンビル10とを備えている。チップ9とアンビル10との間に溶着対象物2,3を挟み、これらの溶着対象物2,3が互いに近づく方向に加圧した状態でチップ9を矢印Sに沿って振動する。この図14に示された超音波溶着装置1において、チップ9の振幅をA、チップ9の角周波数をω=2πf、チップ9の振動速度をv=ωA=2πf・Aとすると、チップ9の出力(パワー)Wは、以下の式1で示される。なお、fはチップ9の振動の周波数であり、チップ9の出力(パワー)Wは、溶着対象物2,3に加わる仕事率であり、前述したた圧電振動子に印加する際の電力値である。
【0037】
W=μF×v………式1
なお、上記式1において、μは、溶着対象物2,3間の摩擦係数、Fは溶着対象物2,3が互いに近づけられる方向に加圧された荷重値である。
【0038】
前述した式1を用いて、溶着対象物2,3に加わる超音波振動エネルギEを示すと以下の式2のようになる。
E=∫W×dt=∫μF×ωA×dt………式2
【0039】
上記式2において、μFは、溶着対象物2,3間の圧力となり、∫ωA×dtは、チップ9の総変位量となる。このため、溶着対象物2,3に加わる超音波振動エネルギEは、溶着対象物2,3間の圧力と、チップ9の総変位量との積で示すことができる。したがって、チップ9の総変位量に基づいて、超音波溶着することにより所望の超音波振動エネルギを溶着対象物2,3に確実に付与できることが明らかとなった。さらに、チップ9の総変位量に基づいて、良否を判定することにより、溶着対象物2,3の良否を確実に判定できることが明らかとなった。
【0040】
請求項2に記載した本発明の超音波溶着装置によれば、変化率判定手段が導体間から被覆部が除去されたと判定すると、チップの総変位量に基づいて、溶着対象物の溶着状況の良否を判定する。このため、被覆部を溶かして該被覆部を導体間から除去するためにかかる超音波振動エネルギを除いて、チップを介して溶着対象物の導体に実際に加わった超音波振動エネルギに基づいて、溶着対象物の良否を判定できる。このため、前述した請求項1の効果にくわえ、溶着対象物の溶着状況を正確に判定できる。
【0041】
請求項3に記載した本発明の超音波溶着装置によれば、変化率判定手段が導体間から被覆部が除去されたと判定すると、チップの総変位量に基づいて、溶着対象物の溶着状況の良否を判定する。このため、被覆部を溶かして該被覆部を導体間から除去するためにかかる超音波振動エネルギを除いて、チップを介して溶着対象物の導体に実際に加わった超音波振動エネルギに基づいて、溶着対象物の良否を判定できる。このため、溶着対象物の溶着状況を正確に判定できる。
【0042】
請求項4に記載した本発明の超音波溶着装置によれば、チップの振動に関する情報に基づいて、仕事率を算出する。このため、仕事率を確実に算出できる。
【0043】
請求項5に記載した本発明の超音波溶着装置によれば、駆動源に与えられた電力に関する情報に基づいて、仕事率を算出する。このため、仕事率を確実に算出できる。
【0044】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の実施形態にかかる超音波溶着装置を、図1ないし図8を参照して説明する。
【0045】
図1に示す本実施形態の超音波溶着装置1は、図3ないし図5に示す一対のフレキシブルフラットケーブル(Flexible Flat Cable:以下FFCと呼ぶ)20の後述の導体21同士を電気的、機械的に接続する。FFC20は、図3などに示すように、複数の導体21と、これらの導体21を覆う(即ち被覆する)被覆部22と、を備えている。
【0046】
導体21は、それぞれ、断面形状が矩形状に形成されている。導体21は、直線状に延びた帯状に形成されている。これらの導体21は、互いに平行(即ち並行)である。これらの導体21は、一方向に沿って、互いに間隔を存して並べられている。導体21は、それぞれ、導電性の金属からなる。図示例では、導体21は、6本設けられている。
【0047】
被覆部22は、図4及び図5に示すように、一対の絶縁シート22a,22bを備えている。絶縁シート22a,22bは、絶縁性の合成樹脂からなり、帯状に形成されている。このため、被覆部22は、勿論絶縁性を有している。絶縁シート22a,22bは、互いの間に複数の導体21を挟んで、該導体21を被覆している。このため、絶縁シート22a,22b即ち被覆部22は、導体21を被覆する合成樹脂からなる。導体21と被覆部22とは、可撓性を有している。また、FFC20は、図3に示すように、折り曲げられている。
【0048】
こうして、FFC20は、可撓性を有した扁平な帯状に形成されている。FCC20は、本明細書に記した溶着対象物をなしている。また、FFC20は、フラット回路体をなしている。フラット回路体とは、互いに並行な複数の導体と、該導体を被覆する絶縁性の被覆部と、を有し、扁平な帯状に形成されているものを示している。
【0049】
一対のFFC20は、互いに重ねられ、接合箇所Saにおいて、少なくとも一対の互いに重なる導体21同士が接合している。FFC20は、長手方向が互いに交差する格好で互いに重なっている。図示例では、一方のFFC20の導体21の長手方向と他方のFFC20の導体21の長手方向とが、互いに直交する格好で、FFC20同士が重なっている。
【0050】
接合箇所Saは、図示例では、複数設けられている。接合箇所Saでは、図4及び図5に示すように、互いに重なる導体21同士が金属結合して接合している。また、前記接合箇所Sa及び該接合箇所Saの近傍では、それぞれの被覆部22が一旦溶けて、これらの被覆部22同士が着け合っている。即ち、接合箇所Sa及び該接合箇所Saの近傍では、被覆部22同士が溶着している。
【0051】
接合箇所Saで、導体21同士が接合することによって、FFC20の導体21同士を予め定められるパターンにしたがって電気的に接続する。また、前述したように重ねられたFFC20の任意の導体21を互いに接合しても良いことは勿論である。
【0052】
本実施形態の超音波溶着装置1は、FFC20同士を重ねて、前記接合箇所Saをチップ9とアンビル10との間に挟んで、導体21同士を接合するとともに被覆部22同士を溶着する。
【0053】
超音波溶着装置1は、図1に示すように、超音波溶着機4と、検出手段としてのレーザドップラ速度計5と、制御装置6と、電源ユニット31と、電圧計32を備えている。
【0054】
超音波溶着機4は、図1に示すように、駆動源としての圧電振動子7と、ホーン8と、チップ9(工具ホーンともいう)と、このチップ9に相対するアンビル10と、図示しない加圧機などを備えている。圧電振動子7は、図示しない電源などにより印加されて振動する。
【0055】
ホーン8は、圧電振動子7に取り付けられている。チップ9は、ホーン8の先端部に取り付けられている。このため、圧電振動子7は、ホーン8などを介してチップ9を図1中の矢印Sに沿って振動する。アンビル10は、チップ9との間に、溶着対象物としてのFFC20を挟むことができる。加圧機は、チップ9とアンビル10とを互いに近づける方向に加圧する。加圧機は、チップ9とアンビル10とを加圧する荷重値(圧力値)を変更できる。
【0056】
超音波溶着機4は、チップ9とアンビル10との間に溶着対象物としてのFFC20を挟み、加圧機でこれらのチップ9とアンビル10とを互いに近づける方向に加圧した状態で、圧電振動子7を振動してこの振動をホーン8経由でチップ9に伝える。そして、超音波溶着機4は、チップ9とアンビル10との間に挟んだ溶着対象物としてのFFC20に超音波振動エネルギを与えて該対象物を溶着する。又、前述した電力値は、溶着対象物としてのFFC20に加わる仕事率Wと等しい。
【0057】
また、本明細書でいう超音波振動エネルギとは、超音波溶着装置1が溶着対象物を溶着させる際に、該溶着対象物に与えるエネルギを示している。超音波振動エネルギとは、例えば、電源が圧電振動子7に印加する際の電力値(W:ワット数)に、前記電源が圧電振動子7に印加する時間を、かけて得られるエネルギである。さらに、溶着対象物としてのFFC20に実際に加わる超音波振動エネルギとは、前述した式2に示すように、チップ9の総変位量と、FFC20間の圧力との積である。
【0058】
レーザドップラ速度計5は、レーザ発振器11と、ビームスプリッタ12と、レーザ集光ヘッド13と、反射ミラー14と、検出器15と、光ファイバ16とを備えている。レーザ発振器11は、レーザ光を出射する。ビームスプリッタ12は、レーザ発振器11が出射したレーザ光をレーザ集光ヘッド13に導く。レーザ集光ヘッド13は、レーザ光をチップ9のアンビル10寄りの先端部に向けて出射する。レーザ集光ヘッド13は、チップ9のアンビル10寄りの先端部が反射したレーザ光を受光する。
【0059】
レーザ集光ヘッド13が受光したレーザ光は、ビームスプリッタ12や反射ミラー14を介して検出器15に導かれる。光ファイバ16は、ビームスプリッタ12とレーザ集光ヘッド13とを光学的に接続している。検出器15は、受光したレーザ光のドップラ周波数(周波数変化)などから前述した矢印Sに沿ったチップ9の速度を算出して、この速度に基づいた情報を制御装置6に向かって出力する。
【0060】
こうして、レーザドップラ速度計5は、チップ9の先端部にレーザ光をあてることにより、チップ9の速度に比例した周波数変化(ドップラ周波数)を検出する。レーザドップラ速度計5は、前述した周波数変化(ドップラ周波数)を検出することにより、矢印Sに沿ったチップ9の速度を算出する。こうして、レーザドップラ速度計5は、チップ9の振動に関する情報(チップ9の速度)を検出する。
【0061】
制御装置6は、周知のRAM、ROM、CPUなどを備えたコンピュータであって、前述した超音波溶着機4と、レーザドップラ速度計5とに接続して、これらを制御することにより、超音波溶着装置1全体の制御をつかさどる。制御装置6は、算出手段としての算出部17と、制御手段としての制御部18と、判定手段としての判定部19とを備えている。算出部17は、検出器15に接続している。
【0062】
算出部17は、前記検出器15から入力したチップ9の振動に関する情報としてのチップ9の速度を積分などして、チップ9の変位量を算出する。算出部17は、算出したチップ9の変位量を累積して、超音波溶着開始(一組のFFC20の溶着開始)からのチップ9の総変位量を算出する。算出部17は、算出したチップ9の総変位量に関する情報を制御部18に向かって出力する。
【0063】
制御部18は、チップ9の総変位量が予め定められる所定の値を超えているか否かを判定する。制御部18は、チップ9の総変位量が所定の値を超えていると判定すると、圧電振動子7を停止する。制御部18は、チップ9の総変位量が所定の値を超えていないと判定すると、圧電振動子7をそのまま駆動する。こうして、制御部18は、チップ9の総変位量に基づいて、チップ9の振動を制御する。また、制御部18は、圧電振動子7を停止した時のチップ9の総変位量に関する情報を、判定部19に向かって出力する。
【0064】
なお、総変位量の予め定められる所定の値とは、溶着対象物としてのFFC20を所望の強度で接合できる総変位量であり、FFC20を接合する前に予め定められる値である。さらに、総変位量の予め定められる所定の値とは、溶着対象物や要求される接合強度などにより、種々変化する。
【0065】
判定部19は、圧電振動子7を停止した時のチップ9の総変位量が予め定められる第2の所定の値を超えているか否かを判定する。判定部19は、チップ9の総変位量が第2の所定の値を超えていると判定すると、溶着対象物の溶着状況を不良であると判定する。判定部19は、チップ9の総変位量が第2の所定の値を超えていないと判定すると、溶着対象物の溶着状況を良であると判定する。こうして、判定部19は、チップ9の総変位量に基づいて、溶着対象物の溶着状況の良否を判定する。
【0066】
また、制御装置6は、図1に示すように、算出部17と制御部18と判定部19にくわえ、仕事率算出手段としての仕事率算出部25と、変化率判定手段としての変化率判定部26と、を備えている。仕事率算出部25は、予め溶着対象物としてのFFC20同士の摩擦係数μ(式1に示す)と前述した式1などを記憶している。また、仕事率算出部25には、検出器15からチップ9の振動に関する情報としてのチップ9の速度v(式1に示す)が入力する。
【0067】
仕事率算出部25は、検出器15から入力したチップ9の振動に関する情報としてのチップ9の速度vと、前述した摩擦係数μと、チップ9とアンビル10との間に挟んで互いに近づける方向にFFC20を加圧する力F(式1に示す)と、前述した式1とに基づいて、FFC20に加わった仕事率W(上記式1に示し、チップ9の出力ともいう)を算出する。仕事率算出部25は、算出した仕事率Wを、変化率判定部26に向かって出力する。
【0068】
変化率判定部26は、仕事率算出部25から入力した仕事率Wを時間で微分して、仕事率Wの変化率を算出する。変化率判定部26は、仕事率Wの変化率が、第1の所定の値以下であるか否かを判定する。変化率判定部26は、仕事率Wの変化率が第1の所定の値以下であると判定するまで、仕事率Wの変化率が第1の所定の値以下であるか否かを判定する。
【0069】
変化率判定部26は、仕事率Wの変化率が第1の所定の値以下であると判定すると、仕事率Wの変化率が第2の所定の値以上であるか否かを判定する。変化率判定部26は、仕事率Wの変化率が第2の所定の値以上であると判定するまで、仕事率Wの変化率が第2の所定の値以上であるか否かを判定する。変化率判定部26は、仕事率Wの変化率が第2の所定の値以上であると判定すると、仕事率Wの変化率が第2の所定の値以上であることを示す情報を算出部17に向かって出力する。
【0070】
また、変化率判定部26は、仕事率Wの変化率が第1の所定の値以下であると判定すると、一度、仕事率Wの変化率が第1の所定の値以下となったことを記憶しておく。そして、変化率判定部26は、一度の超音波溶着作業で、仕事率Wの変化率が一度第1の所定の値以下となったことを記憶した状態では、仕事率Wの変化率が第1の所定の値以下であるか否かを判定せずに、仕事率Wの変化率が第2の所定の値以上であるか否かを判定する。こうして、変化率判定部26は、仕事率Wの変化率が第1の所定の値以下となった後、仕事率Wの変化率が第2の所定の値以上となったか否かを判定する。
【0071】
第1の所定の値は、一対のFFC20の導体21間の被覆部22が溶けて、溶けた被覆部22が導体21間に位置していることを示す値であるのが望ましい。第1の所定の値は、図15中にAで示される範囲の仕事率Wの変化率以上で、かつ図15中にBで示される範囲の仕事率Wの変化率より小さいのが望ましい。また、第2の所定の値は、一対のFFC20の導体21間から溶けた被覆部22が除去されて導体21同士が接触したことを示す値であるのが望ましい。第2の所定の値は、第1の所定の値より大きく、かつ図15中にBで示される範囲の仕事率Wの変化率以下であるのが望ましい。
【0072】
前述した変化率判定部26は、溶着対象物としてのFFC20に加わる仕事率Wの変化率が第1の所定の値以下となった後に、FFC20に加わる仕事率Wの変化率が第2の所定の値以上となると、一対のFFC20の導体21間から被覆部22が除去されたと判定する。こうして、変化率判定部26は、溶着対象物としてのFFC20に加わる仕事率Wの変化率に基づいて、一対のFFC20の導体21間から被覆部22が除去されたか否かを判定する。
【0073】
本実施形態の制御装置6の算出部17は、変化率判定部26から仕事率Wの変化率が第2の所定の値以上であることを示す情報と、検出器15からチップ9の振動に関する情報としてのチップ9の速度vが入力する。算出部17は、変化率判定部26から仕事率Wの変化率が第2の所定の値以上であることを示す情報が入力してくると、検出器15からのチップ9の速度vを積分などして、チップ9の変位量を算出する。算出部17は、算出したチップ9の変位量を累積して、第2の所定の値以上であることを示す情報が入力してからのチップ9の総変位量を算出する。算出部17は、算出したチップ9の総変位量に関する情報を制御部18に向かって出力する。
【0074】
制御部18は、チップ9の総変位量に基づいて、チップ9の振動を制御する。制御部18には、電圧計32が接続しており、該電圧計32から圧電振動子7に印加される電圧値が入力する。制御部18は、電圧計32からの電圧値に基づいて、電源ユニット31の後述の出力制御ユニット34を介して電源33から圧電振動子7に印加される電圧値を制御する。
【0075】
制御部18は、チップ9の総変位量が予め定められる所定の値を超えているか否かを判定する。制御部18は、チップ9の総変位量が所定の値を超えていると判定すると、圧電振動子7を停止する。制御部18は、チップ9の総変位量が所定の値を超えていないと判定すると、圧電振動子7をそのまま駆動する。また、制御部18は、圧電振動子7を停止した時のチップ9の総変位量に関する情報を、判定部19に向かって出力する。
【0076】
判定部19は、チップ9の総変位量に基づいて、溶着対象物の溶着状況の良否を判定する。判定部19は、圧電振動子7を停止した時のチップ9の総変位量が予め定められる第2の所定の値を超えているか否かを判定する。判定部19は、チップ9の総変位量が第2の所定の値を超えていると判定すると、溶着対象物の溶着状況を不良であると判定する。判定部19は、チップ9の総変位量が第2の所定の値を超えていないと判定すると、溶着対象物の溶着状況を良であると判定する。
【0077】
電源ユニット31は、電源33と出力制御ユニット34とを備えている。電源33は、圧電振動子7に電力を供給する。出力制御ユニット34は、制御装置6の制御部18からの命令どおりに、圧電振動子7に電源33から供給される電力の電圧値などを制御する。
【0078】
電圧計32は、圧電振動子7に加えられる電圧値を測定して、測定した電圧値を制御装置6の制御部18に向かって出力する。
【0079】
前述した構成の超音波溶着装置1を用いて、溶着対象物としてのFFC20同士を溶着して接合箇所Saを形成する際は、まず、図6に示すように、チップ9とアンビル10との間に一対のFFC20を挟む。そして、図2中のステップS1において、加圧機で所望の荷重値(圧力)でチップ9とアンビル10とを近づける方向に加圧して、圧電振動子7を振動させて、ステップS2に進む。すると、チップ9が矢印Sに沿って振動するとともに、チップ9寄りの一方のFFC20が矢印Sに沿って振動する。
【0080】
一対のFFC20間に、前述した振動が生じて、まず、チップ9とアンビル10との間に位置する被覆部22が溶ける。チップ9とアンビル10とが互いに近づく方向に加圧されているので、被覆部22が溶けると、チップ9とアンビル10との間から溶けた被覆部22が徐々に抜け出ようとする。
【0081】
ステップS2では、レーザドップラ速度計5がチップ9の速度を検出して、ステップS2aに進む。ステップS2aでは、仕事率算出部25が前述した式1などに基づいて、FFC20に加わった仕事率Wを算出して、ステップS2bに進む。
【0082】
ステップS2bでは、変化率算出部26が仕事率Wの変化率を算出する。変化率算出部26は、仕事率Wの変化率が第1の所定の値以下であるか否かを判定する。変化率算出部26は、仕事率Wの変化率が第1の所定の値以下であると判定すると、仕事率Wの変化率が第1の所定の値以下となったことを記憶するとともに、仕事率Wの変化率が第2の所定の値以上であるか否かを判定する。仕事率Wの変化率が第2の所定の値以上であると判定すると、ステップS3に進み、仕事率Wの変化率が第2の所定の値以上でないと判定すると、ステップS1に戻り、ステップS1からステップS2bを繰り返す。
【0083】
ステップS2bで、仕事率Wの変化率が第2の所定の値以上であると判定すると、図7に示すように、一対のFFC20の導体21間から溶けた被覆部22が完全に除去されて、一対のFFC20の導体21が互いに接触する。一対のFFC20の導体21が互いに接触すると、これらの導体21が溶融しない状態で固相のまま互いに徐々に金属結合する。こうして、導体21は、いわゆる超音波溶着(超音波溶接または超音波接合ともいう)によって互いに接合される。
【0084】
ステップS3では、制御装置6の算出部17がチップ9の総変位量を算出して、ステップS4に進む。ステップS4では、制御部18がチップ9の総(累積)変位量が所定の値を超えているか否かを判定する。チップ9の総変位量が所定の値を超えていないとステップS1に戻り、ステップS1からステップS4を繰り返す。チップ9の総変位量が所定の値を超えるとステップS5に進む。
【0085】
なお、ステップS2bでは、一度仕事率Wの変化率が第1の所定の値以下であると判定したことを記憶していると、変化率判定部26は、仕事率Wの変化率が第1の所定の値以下であるか否かを判定せずに、仕事率Wの変化率が第2の所定の値以上であるか否かを判定する。こうして、ステップS2bでは、変化率判定部26が、仕事率Wの変化率が第1の所定の値以下となった後、仕事率Wの変化率が第2の所定の値以上となったか否かを判定する。
【0086】
ステップS2bで変化率判定部26が、仕事率Wの変化率が第1の所定の値以下となった後、仕事率Wの変化率が第2の所定の値以上となったと判定すると、ステップS3に進む。ステップS2bで変化率判定部26が、仕事率Wの変化率が第1の所定の値以下となった後、仕事率Wの変化率が第2の所定の値以上でないと判定すると、ステップS1に戻る。
【0087】
ステップS5では、圧電振動子7を停止して、ステップS6に進む。ステップS6では、判定部19がチップ9の総変位量が第2の所定の値を超えているか否かを判定する。チップ9の総変位量が第2の所定の値を超えていると溶着対象物の溶着状況を不良品と判定する。チップ9の総変位量が第2の所定の値を超えていないと溶着対象物の溶着状況を良品と判定する。こうして、一対のFFC20は、接合箇所Saで導体21同士が所謂超音波溶着によって、互いに接合されるとともに、被覆部22が互いに溶着される。
【0088】
本実施形態によれば、仕事率算出部25が算出した仕事率Wの変化率を前述した第1及び第2の所定の値に基づいて判定することで、変化率判定部26が導体21間から被覆部22が除去されたか否かを判定する。変化率判定部25が導体21間から被覆部22が除去されたと判定すると、制御部18がチップ9の総変位量に基づいて、チップ9の振動即ち溶着対象物の導体21に加わる超音波振動エネルギを制御する。
【0089】
このため、チップ9を介して溶着対象物の導体21に実際に加わった超音波振動エネルギに基づいて、超音波溶着を制御する。このため、溶着対象物の導体21に所望の超音波振動エネルギを確実に付与できる。したがって、所望の接合強度が得られるように溶着対象物を溶着できる。
【0090】
変化率判定部26が導体21間から被覆部22が除去されたと判定すると、判定部19がチップ9の総変位量に基づいて、溶着対象物の溶着状況の良否を判定する。このため、チップ9を介して溶着対象物の導体21に実際に加わった超音波振動エネルギに基づいて、溶着対象物の良否を判定できる。したがって、溶着対象物の導体21の溶着状況を正確に判定できる。
【0091】
また、チップ9の速度を検出し、チップ9の総変位量を算出することで、溶着対象物としてのFFC20に加わった仕事率Wを算出している。このため、仕事率Wを確実に算出できる。
【0092】
次に、本発明の発明者らは、前述した本実施形態の超音波溶着装置1と、従来から周知の超音波溶着装置で、種々のFFC20同士を種々の条件で溶着した。そして、これらの溶着対象物としてのFFC20の導体21の接合強度(図中には引張り強度と記す)と、チップ9の総変位量との関係を調べた。結果を図8及び図9に示す。
【0093】
図9は、従来より周知の超音波溶着装置でFFC20の導体21同士を接合したときの圧電振動子7の振動開始から即ち超音波溶着の開始から終了までのチップ9の総変位量と、FFC20の導体21同士の接合強度(図中には引張り強度と示す)との関係を示している。図8は、本実施形態の超音波溶着装置1でFFC20の導体21同士を接合したときの変位量判定部26が仕事率Wの変化率が第2の所定の値以上であると判定してから即ちFFC20の導体21同士が接触してから終了までのチップ9の総変位量と、FFC20の導体21同士の接合強度(図中には引張り強度と示す)との関係を示している。
【0094】
図9では、チップ9の総変位量とFFC20の導体21同士の接合強度との間には、何ら相対的な関係を導き出すことができない。このため、FFC20のように導体21が合成樹脂からなる被覆部22で被覆された溶着対象物を溶着した際には、溶着開始からのチップ9の総変位量を基にしても、超音波溶着の制御が困難であることが明らかとなった。さらに、溶着開始からのチップ9の総変位量を基にしても、溶着対象物の溶着状況の良否を判定することが困難であることが明らかとなった。
【0095】
図8では、チップ9の総変位量とFFC20の導体21同士の接合強度との間には、符号P5で示す回帰曲線(期間内データの中心を通る曲線)を導き出すことができる。このため、FFC20のように導体21が合成樹脂からなる被覆部22で被覆された溶着対象物を溶着した場合でも、導体21同士が互いに接触してからの総変位量を基にすることで、超音波溶着の制御が可能であることが明らかとなった。さらに、導体21同士が互いに接触してからの総変位量を基にすることで、溶着対象物の溶着状況の良否を判定することが可能であることが明らかとなった。
【0096】
次に、本発明の第2の実施形態にかかる超音波溶着装置1を、図10及び図11を参照して説明する。前述した第1の実施形態と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0097】
本実施形態の超音波溶着装置1は、図10に示すように、第2検出手段としての電圧計32と、第2検出手段としての電流計35を備えている。電圧計32は、圧電振動子7に印加される電圧値を測定して、該測定した電圧値を制御装置6の制御部18と、仕事率算出部25との双方に出力する。電圧計32は、圧電振動子7に与えられる電力に関する情報としての前述した電圧値を測定する。
【0098】
電流計35は、圧電振動子7に流れる電流値を測定して、該測定した電流値を仕事率算出部25に出力する。電流計35は、圧電振動子7に与えられる電力に関する情報としての前述した電流値を測定する。
【0099】
本実施形態の仕事率算出部25は、電圧計32からの圧電振動子7に与えられる電力に関する情報としての電圧値と、電流計35からの圧電振動子7に与えられる電力に関する情報としての電流値とを掛けて、圧電振動子7に与えられる電力値を算出する。この電圧値は、溶着対象物としてのFFC20に与えられた仕事率Wと同等である。このように、仕事率算出部25は、電圧計32からの圧電振動子7に与えられる電力に関する情報としての電圧値と、電流計35からの圧電振動子7に与えられる電力に関する情報としての電流値とに基づいて、溶着対象物としてのFFC20に与えられた仕事率Wを算出する。仕事率算出部25は、前述した第1の実施形態と同様に、算出した仕事率Wを、変化率判定部26に向かって出力する。
【0100】
前述した構成の超音波溶着装置1を用いて、溶着対象物としてのFFC20同士を溶着して接合箇所Saを形成する際は、まず、チップ9とアンビル10との間に一対のFFC20を挟む。そして、図11中のステップS1において、加圧機で所望の荷重値(圧力)でチップ9とアンビル10とを近づける方向に加圧して、圧電振動子7を振動させて、ステップS2に進む。すると、チップ9が矢印Sに沿って振動するとともに、チップ9寄りの一方のFFC20が振動する。
【0101】
一対のFFC20間に、前述した振動が生じて、まず、チップ9とアンビル10との間に位置する被覆部22が溶ける。チップ9とアンビル10とが互いに近づく方向に加圧されているので、被覆部22が溶けると、チップ9とアンビル10との間から溶けた被覆部22が徐々に抜け出ようとする。
【0102】
ステップS2では、電圧計32が圧電振動子7に与えられる電圧値を測定して、該測定した電圧値を仕事率算出部25と制御部18に向かって出力する。電流計35が圧電振動子7に与えられる電流値を測定して、該測定した電流値を仕事率算出部25に向かって出力する。ステップS2aでは、電圧計32からの電圧値と電流計35からの電流値とを掛けて、仕事率算出部25がFFC20に加わった仕事率Wを算出して、ステップS2bに進む。
【0103】
ステップS2bでは、変化率算出部26が仕事率Wの変化率を算出する。変化率算出部26は、仕事率Wの変化率が第1の所定の値以下であるか否かを判定する。変化率算出部26は、仕事率Wの変化率が第1の所定の値以下であると判定すると、仕事率Wの変化率が第1の所定の値以下となったことを記憶するとともに、仕事率Wの変化率が第2の所定の値以上であるか否かを判定する。仕事率Wの変化率が第2の所定の値以上であると判定すると、ステップS3に進み、仕事率Wの変化率が第2の所定の値以上でないと判定すると、ステップS1に戻り、ステップS1からステップS2bを繰り返す。
【0104】
ステップS2bで、仕事率Wの変化率が第2の所定の値以上であると判定すると、一対のFFC20の導体21間から溶けた被覆部22が完全に除去されて、一対のFFC20の導体21が互いに接触する。一対のFFC20の導体21が互いに接触すると、これらの導体21が溶融しない状態で固相のまま互いに徐々に金属結合する。こうして、導体21は、いわゆる超音波溶着(超音波溶接または超音波接合ともいう)によって互いに接合される。
【0105】
ステップS3では、制御装置6の算出部17がレーザドップラ速度計5からのチップ9の速度に基づいて、チップ9の総変位量を算出して、ステップS4に進む。ステップS4では、制御部18がチップ9の総(累積)変位量が所定の値を超えているか否かを判定する。チップ9の総変位量が所定の値を超えていないとステップS1に戻り、ステップS1からステップS4を繰り返す。チップ9の総変位量が所定の値を超えるとステップS5に進む。
【0106】
なお、ステップS2bでは、一度仕事率Wの変化率が第1の所定の値以下であると判定したことを記憶していると、変化率判定部26は、仕事率Wの変化率が第1の所定の値以下であるか否かを判定せずに、仕事率Wの変化率が第2の所定の値以上であるか否かを判定する。こうして、ステップS2bでは、変化率判定部26が、仕事率Wの変化率が第1の所定の値以下となった後、仕事率Wの変化率が第2の所定の値以上となったか否かを判定する。
【0107】
ステップS2bで変化率判定部26が、仕事率Wの変化率が第1の所定の値以下となった後、仕事率Wの変化率が第2の所定の値以上となったと判定すると、ステップS3に進む。ステップS2bで変化率判定部26が、仕事率Wの変化率が第1の所定の値以下となった後、仕事率Wの変化率が第2の所定の値以上でないと判定すると、ステップS1に戻る。
【0108】
ステップS5では、圧電振動子7を停止して、ステップS6に進む。ステップS6では、判定部19がチップ9の総変位量が第2の所定の値を超えているか否かを判定する。チップ9の総変位量が第2の所定の値を超えていると溶着対象物の溶着状況を不良品と判定する。チップ9の総変位量が第2の所定の値を超えていないと溶着対象物の溶着状況を良品と判定する。こうして、一対のFFC20は、接合箇所Saで導体21同士が所謂超音波溶着によって、互いに接合されるとともに、被覆部22が互いに溶着される。
【0109】
本実施形態によれば、仕事率算出部25が算出した仕事率Wの変化率を前述した第1及び第2の所定の値に基づいて判定することで、変化率判定部26が導体21間から被覆部22が除去されたか否かを判定する。変化率判定部25が導体21間から被覆部22が除去されたと判定すると、制御部18がチップ9の総変位量に基づいて、チップ9の振動即ち溶着対象物の導体21に加わる超音波振動エネルギを制御する。
【0110】
このため、チップ9を介して溶着対象物の導体21に実際に加わった超音波振動エネルギに基づいて、超音波溶着を制御する。このため、溶着対象物の導体21に所望の超音波振動エネルギを確実に付与できる。したがって、所望の接合強度が得られるように溶着対象物を溶着できる。
【0111】
変化率判定部26が導体21間から被覆部22が除去されたと判定すると、判定部19がチップ9の総変位量に基づいて、溶着対象物の溶着状況の良否を判定する。このため、チップ9を介して溶着対象物の導体21に実際に加わった超音波振動エネルギに基づいて、溶着対象物の良否を判定できる。したがって、溶着対象物の導体21の溶着状況を正確に判定できる。
【0112】
また、圧電振動子7に加えられた電流値と電圧値を検出し、圧電振動子7に加えられた電力値を算出することで、溶着対象物としてのFFC20に加わった仕事率Wを算出している。このため、仕事率Wを確実に算出できる。
【0113】
また、前述した第1及び第2の実施形態では、一対のFFC20同士を接合していることを示している。しかしながら、本実施形態では、図12及び図13に示す一対の電線27同士を超音波溶着しても良く、フレキシブルプリントサーキット(Flexible Printed Circuit:FPC)同士などを超音波溶着しても良い。電線27とFPCなどは、本明細書に記した溶着対象物に相当する。
【0114】
図12及び図13に示す電線27は、導体としての導電性の芯線29と、絶縁性の被覆部30とを備えている。芯線29は、複数の素線からなる。素線は、金属からなる。芯線29は、断面丸形に形成されている。被覆部30は、絶縁性の合成樹脂からなり円管状に形成されている。図12及び図13に示す場合では、接合箇所Saで芯線29同士が超音波溶着により互いに接合されている。また、接合箇所Sa及び接合箇所Saの近傍で、被覆部30同士が溶着している。
【0115】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明によれば、仕事率算出手段が算出した仕事率の変化率に基づいて、変化率判定手段が導体間から被覆部が除去されたか否かを判定する。変化率判定手段が導体間から被覆部が除去されたと判定すると、チップの総変位量に基づいて、チップの振動即ち溶着対象物の導体に加わる超音波振動エネルギを制御する。
【0116】
このため、被覆部を溶かして該被覆部を導体間から除去するためにかかる超音波振動エネルギを除いて、チップを介して溶着対象物の導体に実際に加わった超音波振動エネルギに基づいて超音波溶着を制御する。このため、溶着対象物の導体に所望の超音波振動エネルギを確実に付与できる。したがって、所望の接合強度が得られるように合成樹脂で被覆された溶着対象物を溶着できる。
【0117】
請求項2に記載の本発明によれば、変化率判定手段が導体間から被覆部が除去されたと判定すると、チップの総変位量に基づいて、溶着対象物の溶着状況の良否を判定する。このため、被覆部を溶かして該被覆部を導体間から除去するためにかかる超音波振動エネルギを除いて、チップを介して溶着対象物の導体に実際に加わった超音波振動エネルギに基づいて、溶着対象物の良否を判定できる。このため、所望の接合強度が得られるように合成樹脂で被覆された溶着対象物を溶着できることにくわえ、合成樹脂で被覆された溶着対象物の溶着状況を正確に判定できる。
【0118】
請求項3に記載の本発明によれば、変化率判定手段が導体間から被覆部が除去されたと判定すると、チップの総変位量に基づいて、溶着対象物の溶着状況の良否を判定する。このため、被覆部を溶かして該被覆部を導体間から除去するためにかかる超音波振動エネルギを除いて、チップを介して溶着対象物の導体に実際に加わった超音波振動エネルギに基づいて、溶着対象物の良否を判定できる。このため、合成樹脂で被覆された溶着対象物の溶着状況を正確に判定できる。
【0119】
請求項4に記載の本発明によれば、チップの振動に関する情報に基づいて、仕事率を算出する。このため、仕事率を確実に算出できる。
【0120】
請求項5に記載の本発明によれば、駆動源に与えられた電力に関する情報に基づいて、仕事率を算出する。このため、仕事率を確実に算出できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる超音波溶着装置の概略の構成を示す説明図である。
【図2】図1に示された超音波溶着装置が超音波溶着を行う際のフローチャートである。
【図3】図1に示された超音波溶着装置で超音波溶着された溶着対象物としての一対のFFCを示す平面図である。
【図4】図3中のX−X線に沿った断面図である。
【図5】図3中のXI−XI線に沿った断面図である。
【図6】図3に示されたFFCをチップとアンビルとの間に挟んだ状態を示す断面図である。
【図7】図6に示されたFFCの導体同士を接合した状態を示す断面図である。
【図8】図1に示された超音波溶着装置で溶着対象物を溶着した際の導体同士が接触してからのチップの総変位量と接合強度との関係を示す説明図である。
【図9】従来より周知の超音波溶着装置で圧電振動子を振動させてからのチップの総変位量と接合強度との関係を示す説明図である。
【図10】本発明の第2の実施形態にかかる超音波溶着装置の概略の構成を示す説明図である。
【図11】図10に示された超音波溶着装置が超音波溶着を行う際のフローチャートである。
【図12】本発明の超音波溶着装置で超音波溶着された溶着対象物の他の例としての一対の電線を示す斜視図である。
【図13】図12中のXVII−XVII線に沿った断面図である。
【図14】この発明の超音波溶着装置で溶着対象物を溶着する状態を模式的に示す説明図である。
【図15】導体とこの導体を被覆する被覆部を備えた溶着対象物を超音波溶着装置で溶着した時の溶着対象物に加わった仕事率の変化を示す説明図である。
【図16】導体とこの導体を被覆する被覆部を備えた同一の溶着対象物を、複数回、超音波溶着装置で溶着した時の溶着対象物に加わった仕事率の変化を示す説明図である。
【符号の説明】
1 超音波溶着装置
2,3 溶着対象物
5 レーザドップラ速度計(検出手段)
7 圧電振動子(駆動源)
9 チップ
10 アンビル
17 算出部(算出手段)
18 制御部(制御手段)
19 判定部(判定手段)
20 FFC(溶着対象物)
21 導体
22 被覆部
25 仕事率算出部(仕事率算出手段)
26 変化率判定部(変化率判定手段)
27 電線(溶着対象物)
29 芯線(導体)
30 被覆部
Claims (5)
- 駆動源により振動されるチップと、前記チップに相対するアンビルと、を備え、前記チップとアンビルとの間に複数の溶着対象物を挟みかつチップとアンビルとを互いに近づける方向に加圧した状態で、前記駆動源によりチップを振動させて該振動を前記溶着対象物に伝えることで、前記溶着対象物を互いに溶着する超音波溶着装置において、
前記溶着対象物は、金属からなる導体と、前記導体を被覆する合成樹脂からなる被覆部とからなり、
前記チップの振動に関する情報を検出可能な検出手段と、
前記溶着対象物に加えられた仕事率を算出する仕事率算出手段と、
前記仕事率算出手段が算出した仕事率の変化率を求め、該変化率に基づいて導体間から被覆部が除去されたか否かを判定する変化率判定手段と、
前記変化率判定手段が導体間から被覆部が除去されたと判定すると、前記検出手段が検出した振動に関する情報から前記チップの総変位量を算出する算出手段と、
前記算出手段が算出した前記チップの総変位量に基づいて、前記チップの振動を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする超音波溶着装置。 - 前記算出手段が算出した前記チップの総変位量に関する情報に基づいて、前記溶着対象物の溶着状況の良否を判定する判定手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の超音波溶着装置。
- 駆動源により振動されるチップと、前記チップに相対するアンビルと、を備え、前記チップとアンビルとの間に複数の溶着対象物を挟んで、前記駆動源によりチップを振動させて該振動を前記溶着対象物に伝えることで、前記溶着対象物を互いに溶着する超音波溶着装置において、
前記溶着対象物は、金属からなる導体と、前記導体を被覆する合成樹脂からなる被覆部とからなり、
前記チップの振動に関する情報を検出可能な検出手段と、
前記溶着対象物に加えられた仕事率を算出する仕事率算出手段と、
前記仕事率算出手段が算出した仕事率の変化率を求め、該変化率に基づいて導体間から被覆部が除去されたか否かを判定する変化率判定手段と、
前記変化率判定手段が導体間から被覆部が除去されたと判定すると、前記検出手段が検出した振動に関する情報から前記チップの総変位量を算出する算出手段と、
前記算出手段が算出した前記チップの総変位量に関する情報に基づいて、前記溶着対象物の溶着状況の良否を判定する判定手段と、
を備えたことを特徴とする超音波溶着装置。 - 前記仕事率算出手段は、前記検出手段が検出したチップの振動に関する情報に基づいて、前記溶着対象物に加えられた仕事率を算出することを特徴とする請求項1ないし請求項3のうちいずれか一項に記載の超音波溶着装置。
- 前記駆動源は、圧電振動子であり、
前記圧電振動子に与えられる電力に関する情報を検出する第2検出手段を備え、
前記仕事率算出手段は、前記第2検出手段が検出した前記圧電振動子に与えられる電力に関する情報に基づいて、前記溶着対象物に加えられた仕事率を算出することを特徴とする請求項1ないし請求項3のうちいずれか一項に記載の超音波溶着装置。
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