JP2004350540A - 作業車両の昇降制御装置 - Google Patents
作業車両の昇降制御装置 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004350540A JP2004350540A JP2003149843A JP2003149843A JP2004350540A JP 2004350540 A JP2004350540 A JP 2004350540A JP 2003149843 A JP2003149843 A JP 2003149843A JP 2003149843 A JP2003149843 A JP 2003149843A JP 2004350540 A JP2004350540 A JP 2004350540A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- work machine
- control
- work
- frequency
- value
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Granted
Links
Images
Landscapes
- Lifting Devices For Agricultural Implements (AREA)
Abstract
【解決手段】作業機装着装置20を介して作業機40を連結し、作業機昇降手段を制御手段90と接続して、作業機をPID制御により昇降制御する作業車両において、微分項は一次遅れ系と不完全微分とを用いて算出され、高さ検出値の周波数がカットオフ周波数(設定周波数)以下では周波数に略比例し、高さ検出値の周波数がカットオフ周波数(設定周波数)以上では周波数の増加に伴い減少するように構成した。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、作業車両の本機に対して作業機装着装置を介して作業機を連結し、作業機昇降手段により作業機を昇降制御する技術に関する。
詳細には、応答性と安定性の両方に優れた耕深(作業機のロータリの圃場への耕耘深さ)制御を行うことを目的とする、PID制御を用いた耕深制御におけるI動作およびD動作の操作量の決定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、作業機装着装置を介して作業機を連結し、作業機昇降手段により作業機を昇降させる作業車両の技術は公知となっている。
また、作業機後部のリアカバーの上端を作業機に回動可能に枢着するとともに、リアカバーの下端を圃場に接触する方向に付勢し、リアカバーの枢着部における回動角を角度センサで検出して、該回動角に基づき耕深(作業機のロータリの圃場への耕耘深さ)を略一定に保持する技術も公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
【特許文献1】
特公平6−14806号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の作業車両における作業機の耕深制御は、主にP動作(比例動作)とI動作(積分動作)とを組み合わせたPI制御で行っていたが、耕深ダイヤルなどにより設定された設定耕深に実際の作業機の耕深(センサ等により検出された情報に基づいて算出された算出耕深)を短時間で近づけるのは困難であった(すなわち、応答性に問題があった)。
このとき、P動作およびI動作にD動作(微分動作)を加えたPID制御を用いて耕深制御を行うと応答性が向上するが、単にD動作を加えると、周波数応答における高周波数域の場合(短時間で激しく上方または下方に作業機が移動する場合であり、例えば耕耘作業中の作業機のロータリが局部的に圃場表面から浅い位置にある地中の硬い地層に接触して上方に跳ね上げられる場合や、圃場に細かい凹凸が連続する場合など)には、PID制御により作業機に与えられる作業機の上下方向の操作量が過度に大きくなり、作業機が上下方向に揺動(ハンチング)して、耕深制御がかえって不安定になる場合がある。
また、設定耕深と算出耕深との差(偏差)が同一符号で長時間保持される場合(すなわち、応答性が良くない場合)、I動作に係る操作量が大きくなり、これもハンチングの原因となっていた。そこで、従来の耕深制御においてはI動作に係る操作量を所定の周期、または設定耕深から所定の範囲に算出耕深が到達した時点でリセット(積分項をゼロにする)し、リセットした時点から再びI動作に係る操作量の計算に用いられる積分項の算出を行っていた。しかし、この方法はリセットの前後でI動作に係る操作量が大きく変化し、作業機の衝撃(ショック)の発生の原因となる。このようなショックは作業車両の作業者にとって不快であるとともに耕深制御の安定性を低下させる場合がある。
本発明は上記の如き状況に鑑み、PID制御を用いた作業車両の作業機の耕深制御において、応答性を向上させるとともに安定性を確保するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
即ち、請求項1においては、作業機装着装置を介して作業機を連結し、作業機昇降手段を制御手段と接続して、作業機をPI制御またはPID制御により昇降制御する作業車両において、設定手段により設定された目標値と算出手段により算出された算出値(制御出力値)との差である偏差の絶対値が、増加から減少に変化すると、積分項を減算して算出するものである。
【0007】
請求項2においては、作業機装着装置を介して作業機を連結し、作業機昇降手段を制御手段と接続して、作業機をPID制御により昇降制御する作業車両において、
微分項は一次遅れ系と不完全微分とを用いて算出され、高さ検出値の周波数がカットオフ周波数(設定周波数)以下では周波数に略比例し、高さ検出値の周波数がカットオフ周波数(設定周波数)以上では周波数の増加に伴い減少するものである。
【0008】
請求項3においては、作業機装着装置を介して作業機を連結し、作業機昇降手段を制御手段と接続して、作業機をPID制御により昇降制御する作業車両において、設定手段により設定された設定値と検出値との差が、減少傾向または増加傾向のとき、その傾向とアクチュエータの駆動信号の方向が不一致であれば、アクチュエータの出力信号を停止するものである。
【0009】
請求項4においては、作業機装着装置を介して作業機を連結し、作業機昇降手段を制御手段と接続して、作業機をPID制御により昇降制御する作業車両において、設定手段により設定された設定値に近い所定の範囲に入ると、偏差にゲインを乗算して比例項と積分項と微分項の各入力値とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の実施の一形態であるトラクタの左側面図、図2は本発明の実施の一形態であるトラクタの後部および作業機を示す左側面一部断面図、図3は本発明の実施の一形態であるトラクタの後部および作業機を示す平面図、図4は本発明の実施の一形態であるトラクタの油圧回路を示す図、図5は本発明の実施の一形態であるトラクタの制御手段を示すブロック図、図6はリフトアームの回動角の変化と耕深との関係を示す模式図、図7は偏差と時間との関係の一例を示す図、図8は積分項と時間との関係の一例を示す図、図9は微分項と時間との関係の一例を示す図、図10は微分項に係る操作量と時間との関係の一例を示す図、図11は本実施例の微分項の算出に係るブロック線図、図12は本実施例の微分項と入力値の周波数との関係を示す図、図13は不感帯処理の実施例を示す図、図14は不感帯処理の別実施例を示す図、図15は耕深に係る偏差の符号と操作量の符号とに基づく作業機の昇降指令の実施例を示すフローチャート図である。
【0011】
まず、図1を用いて本発明の実施の一形態であるトラクタ201の全体構成について説明する。なお本発明は本実施例のトラクタ201に限らず、作業機昇降手段を備える作業車両に広く適用可能である。
【0012】
トラクタ201本機の前後には前輪1・1および後輪2・2が支承され、前部のボンネット6内部にはエンジン5が配置され、該ボンネット6の後方にはステアリングハンドル10が配設されている。ステアリングハンドル10の後方には座席11が配設され、座席11の側部には主変速レバー、副変速レバー、PTO操作レバー等の操作レバー群が配設されている。これらステアリングハンドル10、座席11および操作レバー群等はキャビン12内の運転部に配置されている。
また、キャビン12内には作業機40の耕深(本実施例においてはロータリ41の圃場への耕耘深さ)を設定する耕深設定手段である耕深ダイヤル30(図5に図示)が設けられている。作業者は耕深ダイヤル30を操作して、所望の耕深を設定する。
【0013】
エンジン5の後部にはクラッチハウジング7が配置され、クラッチハウジング7の後部にミッションケース9が配設され、エンジン5からの駆動力を前輪1・1および後輪2・2に伝達して駆動する。なお、トラクタ201を後輪駆動方式としても、専用のクラッチを介して前輪1・1への駆動力の伝達・遮断を切換可能な方式としても、常に前輪1・1に駆動力を伝達する方式としてもよく、限定されない。
【0014】
また、前記エンジン5の駆動力はミッションケース9後端から突出したPTO軸15に伝達されて、該PTO軸15から図示しないユニバーサルジョイント等を介して車両後端に作業機装着装置20を介して装着した作業機40を駆動するように構成している。そして、前記座席11前下方のステップ上にはクラッチを断接操作するためのクラッチペダルやブレーキペダル等が配設されている。
【0015】
さらに、本実施例においては、トラクタ201の底面において四つの車輪である前輪1・1および後輪2・2の中心となる位置に超音波センサ等の距離センサ58を取り付け、トラクタ201の底面部と圃場表面との距離Lを測定することが可能であるとともに、トラクタ201の前後方向の傾斜角(傾斜角θ3)を、トラクタ201の機体に設けられた傾斜角検出手段である前後傾斜センサ60(図5に図示)により検出することが可能である。
なお、前記傾斜角θ3は、図1に示す如く、トラクタ201の機体の長手方向と水平方向(重力の作用する方向に垂直な面(水平面)上に機体の長手方向を投影した方向)との成す角度である。そして、水平面に平行な地面にトラクタ201が接地しているときに、機体の長手方向と水平方向とは互いに平行になる。
【0016】
以下では図1、図2および図3を用いて作業機装着装置20について説明する。作業機装着装置20は主に上部リンク21および下部リンク22・22の計三本のリンクからなる。
上部リンク21の一端はミッションケース9の後面に機体後方に向けて突設されたブラケット23に上下回動可能に枢着され、他端は作業機40の前上部に上下回動可能に枢着される。
下部リンク22・22の一端は機体後下端部の左右にそれぞれ上下回動可能に枢着され、他端は作業機40の前下部に上下回動可能に枢着される。
また、トラクタ201の機体後部にはリフトアーム24・24の一端が回動可能に枢着され、リフトアーム24・24の他端にはリフトロッド26・26の一端が回動可能に枢着され、リフトロッド26・26の他端は下部リンク22・22の中途部に回動可能に枢着される。
【0017】
昇降用油圧シリンダ25・25のシリンダ側端部はミッションケース9の後下部左右側面に回動可能に枢着され、昇降用油圧シリンダ25・25のロッド側端部は左右のリフトアーム24・24の中途部に回動可能に枢着される。
昇降用油圧シリンダ25・25を伸縮させるとリフトアーム24・24が回動し、リフトロッド26・26を介して下部リンク22・22が回動する。従って、トラクタ201の機体に対して作業機40を上下方向に昇降させる事が可能である。
このとき、上部リンク21も下部リンク22・22の回動に伴い回動するが、リフトアーム24の長手方向とトラクタ201の機体の前後方向とが成す角度(図1に示すθ1であり、以後「リンク回動角」と呼ぶ)を検知するためのリンク回動角検出手段であるリフトアーム回動角センサ28が、リフトアーム24根元部の回動支点に設けられている。
【0018】
左右のリフトロッド26・26のうち、一方のリフトロッド26(本実施例では、機体左側のリフトロッド26)の中途部には、作業機40を左右方向(トラクタ201の左側方または右側方に傾斜する方向)に回動させるための傾倒用油圧シリンダ27が介装される。
傾倒用油圧シリンダ27を伸縮させることにより、機体左側方の(傾倒用油圧シリンダ27が介装された方の)リフトロッド26の長さが機体右側方のリフトロッド26に対して変化し、作業機40がトラクタ201の機体に対して右側方または左側方に傾斜する。従って、作業機40を用いた作業中において、圃場の状況によりトラクタ201の機体が左側方または右側方に傾斜した場合でも、作業機40を圃場に対して所定の姿勢(例えば、本実施例における作業機40のロータリ41の右端部と左端部の耕深が略同じとなる姿勢)に保持することが可能である。
なお、作業機40の左右側方への傾斜角は、トラクタ201の機体側に設けられた左右傾斜センサ59(図5に図示)の検出値(傾斜角θ4)に基づいて調整される。
【0019】
以下では図1、図2および図3を用いて作業機40について説明する。なお、本実施例の作業機40はロータリ式の耕耘機であるが、これに限定されず、他の形式の耕耘機やプラウ等でも良い。
作業機40は主に、耕耘爪軸と耕耘爪からなるロータリ41、ギアケース42、メインビーム44・44、チェーンケース45、サイドサポート46、アッパーカバー47、リアカバー48、ハンガーロッド49、リンク部材52等で構成される。
作業機40の左右中央上部にはギアケース42が配設される。該ギアケース42の前部には入力軸が突出しており、ユニバーサルジョイント43等の駆動力伝達手段を介してPTO軸15と連結されている。
【0020】
ギアケース42の左右側方にはメインビーム44・44が突設され、左側方に突設されたメインビーム44の左端部にはチェーンケース45、右側方に突設されたメインビーム44の右端部にはサイドサポート46が設けられる。
チェーンケース45とサイドサポート46の間にはロータリ41が横架され、ロータリ41の回転軸の両端がそれぞれチェーンケース45とサイドサポート46に前後回転自在に軸支される。ギアケース42の入力軸に伝達された駆動力は、ギアケース42、左側方に突設されたメインビーム44、およびチェーンケース45内に設けられた駆動力伝達機構(ベベルギアや駆動力伝達軸、スプロケット、チェーンなど)によりロータリ41の回転軸(耕耘爪軸)に伝達され、該ロータリ41を回転駆動する。ロータリ41は圃場を耕耘するためのものであり、回転軸(耕耘爪軸)の半径方向には複数の耕耘爪が植設されている。
【0021】
また、チェーンケース45とサイドサポート46との間にアッパーカバー47が横架される。該アッパーカバー47はちょうどロータリ41の上方を覆う位置に配設され、ロータリ41により耕耘された圃場の土が周囲に飛散しないようにし、前後回動可能に構成されている。そして、アッパーカバー47の後端にはリアカバー48の上端が回動支点47bにて回動可能に枢着される。
【0022】
リアカバー48はロータリ41により耕耘された圃場の土が周囲に飛散しないように覆うとともに、ロータリ41の圃場への耕耘深さ(耕深)を検知する機能を兼ねている。
アッパーカバー47上面に突設されたブラケット47a・47aとリアカバー48上面中途部に形成された枢着部48a・48aとの間には、ハンガーロッド49・49が介装される。該ハンガーロッド49・49は伸縮可能であり、かつ巻きバネ等の付勢部材が外嵌されている。従って、リアカバー48は、回動支点47bを中心として下方に回動し、リアカバー48の下端が圃場表面に接触するよう付勢されている。
【0023】
リアカバー48上面には第一フィードバックロッド50が突設され、該第一フィードバックロッド50の上端には第一フィードバックワイヤ51の一端が取り付けられる。
一方、第一フィードバックワイヤ51の他端はギアケース42の左側面上部に設けられたリンク部材52の第一作動アーム52aの先端部に取り付けられる。該リンク部材52は第一作動アーム52aと第二作動アーム52bの二本の作動アームを備えており、作業機40が作業機装着装置20を介してトラクタ201に連結されているときは、第一作動アーム52aと第二作動アーム52bとは根元部において一体となって回動可能に枢着されている。
【0024】
第二フィードバックワイヤ53の一端は第二作動アーム52bの先端部に取り付けられ、第二フィードバックワイヤ53の他端は第二フィードバックロッド54の先端部に取り付けられる。第二フィードバックロッド54の根元部はリアカバー回動角センサ57の回動軸に固設されている。例えば、耕深が深くなって下端部にて圃場と接触しているリアカバー48が上方に回動すると、第一フィードバックワイヤ51がリアカバー48側に引き寄せられ、該リンク部材52の第一作動アーム52aおよび第二作動アーム52bが後方に回動される。そして、第二フィードバックワイヤ53がリンク部材52側に引き寄せられてリアカバー回動角センサ57の回動軸が後方に回動される。
【0025】
従って、リアカバー48の下端部と回動支点47bとを結ぶ直線と、トラクタ201の機体の前後方向とが成す角度(図1に示すθ2であり、以後「リアカバー回動角」と呼ぶ)を、リアカバー回動角センサ57により検知することが可能である。
なお、作業機40をトラクタ201から取り外す際には、リンク部材52を第一作動アーム52aが作業機40に取り付けられ、第二作動アーム52bが作業機装着装置20に取り付けられた状態に分離することが可能である。
このように構成することにより、作業機40をトラクタ201から着脱する度にフィードバックワイヤの着脱作業およびフィードバックワイヤの作動量の調整作業を行う必要がなく、作業性に優れる。
【0026】
本実施例においては、昇降用油圧シリンダ25・25、昇降用油圧シリンダ25・25を作動させるための油圧回路(図4に図示)、および該昇降用油圧シリンダ25・25の伸縮を制御する制御手段90(図5に図示)等が、作業機40をトラクタ201に対して上下方向に昇降させる「作業機昇降手段」に相当する。
また、本実施例においては、傾倒用油圧シリンダ27、傾倒用油圧シリンダ27を作動させるための油圧回路(図4に図示)、および該傾倒用油圧シリンダ27の伸縮を制御する制御手段90(図5に図示)等が、作業機40をトラクタ201に対して左右方向に傾斜させる「作業機傾斜手段」に相当する。
【0027】
以上の如き構成のトラクタ201においては、図1に示す耕深Hをリフトアーム回動角センサ28により検知されるリンク回動角θ1と、リアカバー回動角センサ57により検知されるリアカバー回動角θ2の二つを変数とする関数F1(θ1、θ2)として表す(H=F1(θ1、θ2))ことが可能である。なお、関数F1(θ1、θ2)に係る情報(耕深Hとリンク回動角θ1とリアカバー回動角θ2の関係に係る情報)は、実験等により予め求められており、後述する制御手段90(より厳密にはデータ記憶部92)に記憶されている。
なお、関数F1(θ1、θ2)は作業車両の種類やリフトアーム24、上部リンク21、下部リンク22・22の形状、作業機の種類等により幾何学的に(計算により)求めることも可能である。
【0028】
以下では、図4を用いて本実施例のトラクタ201の作業機昇降手段に係る油圧回路構成について説明する。
本実施例のトラクタ201においてミッションケース9内の潤滑油を兼ねる作動油は、ミッションケース9の底部9aに貯溜されている。本実施例では該作動油を各種油圧装置に圧送するための油圧ポンプとして、ミッション系油圧ポンプ61およびリフト系油圧ポンプ62の二つが備えられている。
ミッション系油圧ポンプ61はパワーステアリング機構や油圧クラッチで構成される主クラッチ、変速機および四輪駆動時の倍速機構やブレーキに作動油を供給する。
リフト系油圧ポンプ62は作業機40の昇降を行う昇降用油圧シリンダ25および傾倒用油圧シリンダ27に作動油を供給する。
【0029】
ミッションケース9の底部9aに貯溜されている作動油は、リフト系油圧ポンプ62により油圧配管68を経て分流弁64に圧送される。
機外油圧取出部63はリフト系油圧ポンプ62と分流弁64との間における油圧配管68の中途部に設けられ、作業機等(トラクタ201の機体外部)において油圧により駆動力を得たい場合に用いられる。機外油圧取出部63はバルブ65、取出側油圧配管66a、戻り側油圧配管66b、リリーフ弁67等で構成される。
取出側油圧配管66aおよび戻り側油圧配管66bの一端は油圧配管68と連通している。取出側油圧配管66aは戻り側油圧配管66bよりも上流側(リフト系油圧ポンプ62に近い側)に接続され、油圧配管68において取出側油圧配管66aと戻り側油圧配管66bとで挟まれる部分にはバルブ65が設けられる。バルブ65は通常時(作業機等において油圧により駆動力を必要としない時)には開いた状態としておく。
【0030】
作業機等において油圧により駆動力を得たいときは、取出側油圧配管66aの先端と作業機の作動油導入口とを連結し、戻り側油圧配管66bの先端と作業機の作動油戻し口とを連結するとともに、バルブ65を閉じる。
リフト系油圧ポンプ62から圧送されてくる作動油は取出側油圧配管66aを経て作業機に供給されて駆動力を伝達し、戻り側油圧配管66bを経て油圧配管68に戻ってくる。
【0031】
分流弁64まで圧送されてきた作動油の一部は油圧配管69を経て切替弁70に送られるとともに、作動油の残りは油圧配管72を経て油圧ケース73に送られる。
【0032】
切替弁70は電磁式の切替弁であり、「中立位置」、「シリンダ伸長位置」、「シリンダ短縮位置」の三つの位置を取ることができる。
「中立位置」では油圧配管71の一端と油圧配管69とが連通される。油圧配管71の他端はミッションケース9の底部9aと連通している。従って、「中立位置」では傾倒用油圧シリンダ27は作動しない。
「シリンダ伸長位置」では、傾倒用油圧シリンダ27の根元側と連通する油圧配管74aと油圧配管69とが連通されるとともに、傾倒用油圧シリンダ27のロッド側と連通する油圧配管74bと油圧配管71とが連通される。従って、「シリンダ伸長位置」では傾倒用油圧シリンダ27が伸長する。本実施例では傾倒用油圧シリンダ27は機体左側のリフトロッド26に介装されているので、作業機40は傾倒用油圧シリンダ27が伸長するとトラクタ201に対して作業機40の左端が下方に傾斜した姿勢となる。
「シリンダ短縮位置」では、傾倒用油圧シリンダ27の根元側と連通する油圧配管74aと油圧配管71とが連通されるとともに、傾倒用油圧シリンダ27のロッド側と連通する油圧配管74bと油圧配管69とが連通される。従って、「シリンダ短縮位置」では傾倒用油圧シリンダ27が短くなる。本実施例では傾倒用油圧シリンダ27は機体左側のリフトロッド26に介装されているので、作業機40は傾倒用油圧シリンダ27が短くなるとトラクタ201に対して作業機40の右端が下方に傾斜した姿勢となる。
【0033】
油圧配管72を経て圧送されてきた作動油はミッションケース9の上面に設けられた油圧ケース73内に導入される。油圧ケース73の後部はリフトアーム24・24の根元側が回動可能に枢着される。
油圧ケース73上面にはフロートコントロール弁75、作業機上昇用切替弁76、作業機下降用切替弁77、切替弁78および切替弁79の計五個の弁が設けられる。
また、油圧ケース73下部には上記五個の弁のポートや油圧配管群を連通するための油路群が形成される。
【0034】
フロートコントロール弁75は、油圧配管72の端部72aと戻り油圧配管80の端部80aとを連通する位置(ドレン位置)と、油圧配管72の端部72aと戻り油圧配管80の端部80aとが遮断される位置(遮断位置)の二つの位置を取ることが可能である。
【0035】
作業機上昇用切替弁76は電磁式の流量調整弁であり、該作業機上昇用切替弁76を作動させるアクチュエータ(ソレノイド)に入力する電流値を変化させることにより、「非作動位置」と「作動位置」の二つの位置の間で任意の位置を取る(すなわち、作業機上昇用切替弁76を通過する作動油の流量を連続的に変化させる)ことが可能である。
【0036】
作業機下降用切替弁77は電磁式の流量調整弁であり、該作業機下降用切替弁77を作動させるアクチュエータ(ソレノイド)に入力する電流値を変化させることにより、「非作動位置」と「作動位置」の二つの位置の間で任意の位置を取る(すなわち、作業機下降用切替弁77を通過する作動油の流量を連続的に変化させる)ことが可能である。
【0037】
切替弁78は、油圧配管72の端部72bが閉塞される位置(非作動位置)と、油圧配管72の端部72bと油圧配管81の端部81aとを連通する位置(作動位置)の二つの位置を取ることが可能である。
【0038】
切替弁79は油圧配管81の端部81bが閉塞される位置(非作動位置)と、油圧配管81の端部81bと戻り油圧配管82の端部82aとが連通する位置(作動位置)の二つの位置を取ることが可能である。
【0039】
以下では作業機上昇用切替弁76が「非作動位置」を取り、作業機下降用切替弁77が「非作動位置」を取る時の作業機40(昇降用油圧シリンダ25)の挙動について説明する。
作業機上昇用切替弁76が「非作動位置」を取り、作業機下降用切替弁77が「非作動位置」を取る時、油圧配管72の中途部より分岐した油路83の端部83aが閉塞され、切替弁78を非作動位置から作動位置に切り替えるための油路84と、油路83とが遮断される。従って、切替弁78は非作動位置を取り、油圧配管72内の作動油は油圧配管81には圧送されない。よって昇降用油圧シリンダ25は伸長せず、リフトアーム24は上方に回動しない。
また、油圧配管81の端部81a・81b・81cがいずれも閉塞される(厳密には、端部81cと連通する作業機下降用切替弁77内の油路の中途部に設けられた逆止弁により、端部81cは閉塞されたのと略同じ状態となる)とともに、油路83の端部83bが閉塞される。よって、昇降用油圧シリンダ25側の作動油が油圧ケース73内を通過してミッションケース9の底部9aに戻ることがなく、作業機40の自重により昇降用油圧シリンダ25が短くなりリフトアーム24が下方に回動することがない。
すなわち、昇降用油圧シリンダ25の長さは変化せず、作業機40はトラクタ201に対して上昇も下降もしない。
なお、油圧配管72内の油圧が所定値以上となると、フローコントロール弁75が遮断位置からドレン位置に切り替わり、戻り油圧配管80を経て余剰の作動油がミッションケース9の底面9aに戻される。
【0040】
以下では作業機上昇用切替弁76が「作動位置」を取り、作業機下降用切替弁77が「非作動位置」を取る時の作業機40(昇降用油圧シリンダ25)の挙動について説明する。
作業機上昇用切替弁76が「作動位置」を取り、作業機下降用切替弁77が「非作動位置」を取る時、油圧配管72の中途部より分岐した油路83の端部83aと切替弁78を非作動位置から作動位置に切り替えるための油路84とが連通される。また、油圧配管81の端部81a・81b・81cがいずれも閉塞される(厳密には、端部81cと連通する作業機下降用切替弁77内の油路の中途部に設けられた逆止弁により、端部81cは閉塞されたのと略同じ状態となる)とともに、油路83の端部83bが閉塞される。
従って、切替弁78は作動位置を取り、油圧配管72内の作動油は油圧配管81に圧送され、昇降用油圧シリンダ25に供給される。よって昇降用油圧シリンダ25は伸長し、リフトアーム24は上方に回動する。
なお、油圧配管72内の油圧が所定値以上となると、フローコントロール弁75が遮断位置からドレン位置に切り替わり、戻り油圧配管80を経て余剰の作動油がミッションケース9の底面9aに戻される。
【0041】
以下では作業機上昇用切替弁76が「非作動位置」を取り、作業機下降用切替弁77が「作動位置」を取る時の作業機40(昇降用油圧シリンダ25)の挙動について説明する。
作業機上昇用切替弁76が「非作動位置」を取り、作業機下降用切替弁77が「作動位置」を取る時、油圧配管72の中途部より分岐した油路83の端部83aが閉塞され、切替弁78を非作動位置から作動位置に切り替えるための油路84と、油路83とが遮断される。従って、切替弁78は非作動位置を取り、油圧配管72内の作動油は油圧配管81には圧送されない。また、フロートコントロール弁75を遮断位置側に付勢するとともに切替弁79を作動位置に切り替えるための油路85の端部85aと油路83の端部83aとが連通し、戻り油圧配管82の端部82bと油圧配管81の端部81cとが連通するので、昇降用油圧シリンダ25側の作動油が油圧ケース73内を通過して、戻り油圧配管82を経てミッションケース9の底部9aに戻る。
すなわち、作業機40の自重により昇降用油圧シリンダ25内の作動油がミッションケース9の底部9aに圧送されて昇降用油圧シリンダ25が短くなり、リフトアーム24が下方に回動する。
なお、油圧配管72内の油圧が所定値以上となると、フローコントロール弁75が遮断位置からドレン位置に切り替わり、戻り油圧配管80を経て余剰の作動油がミッションケース9の底面9aに戻される。
【0042】
以下では、図5を用いて本実施例のトラクタ201に係る制御手段90について説明する。
制御手段90はトラクタ201に設けられた各種センサ(より具体的には、リフトアーム回動角センサ28、リアカバー回動角センサ57、前後傾斜センサ60、距離センサ58、左右傾斜センサ59)からの入力信号に基づいて作業機40の耕深を算出し(以後、算出された耕深を「算出耕深」と呼ぶ)、耕深ダイヤル30により設定された耕深の設定値(以後、「設定耕深」と呼ぶ)と比較して、作業機40の耕深が目標耕深を精度良く保持するように作業機40の昇降および左右傾倒を行うものであり、主にCPU91とデータ記憶部92とで構成される。
CPU91は各種入力信号およびデータ記憶部92に記憶された各種データを基に算出耕深等を算出するための演算処理を行う。
データ記憶部92には、前記関数F1(θ1、θ2)に係る情報(耕深Hとリンク回動角θ1とリアカバー回動角θ2の関係に係る情報)が記憶される。
なお、本実施例では該データ記憶部92としてEEPROM(Electrionically Erasable and Programmable Read Only Memory:不揮発性半導体メモリの一種で、電気的に内容を書き込み可能な読み出し専用記憶装置)を用いたが、その他の形式のROMや他の記憶媒体などでも良い。また、制御手段90は、トラクタ201を構成する他の構成部材を制御するための別の制御手段と別体としても、一体としても良い。
【0043】
CPU91への入力信号としては、リフトアーム回動角センサ28により検出されたリンク回動角θ1に関する信号、リアカバー回動角センサ57により検出されたリアカバー回動角θ2に関する信号、前後傾斜センサ60により検出された傾斜角θ3に関する信号、距離センサ58により検出された距離Lに関する信号、左右傾斜センサ59により検出された傾斜角θ4に関する信号、耕深ダイヤル30により設定された設定耕深に関する信号、等が挙げられる。
【0044】
一方、CPU91からの出力信号としては、昇降用油圧シリンダ25・25(より厳密には、作業機上昇用切替弁76または作業機下降用切替弁77)を作動させるための信号、傾倒用油圧シリンダ27(より厳密には、切替弁70)を作動させるための信号、等が挙げられる。
【0045】
以上の如き構成の本実施例のトラクタ201は以下の如き利点を有する。
すなわち、従来の作業車両においては、耕深Hをリアカバー回動角θ2のみを用いて求めていたが、作業車両に対して作業機が昇降する(リンク回動角θ1が変化する)と、作業機装着装置は平行リンクではないため作業機の作業車両に対する前後方向の傾きが変化する(作業機が機体に対して前下がりまたは後下がりの姿勢となる)。従って、同じリアカバー回動角θ2であっても耕深Hが変化する場合がある。
つまり、リアカバー回動角センサ57はリアカバー48のアッパーカバー47に対する回動角θ2を検知する構造となっているため、図6に示すように、リフトアーム24・24の回動角がα1でリアカバー48の回動角がβ1の時の耕深をH1とした時、作業機40を上昇させてリフトアーム24・24の回動角がα2となった時にも、リアカバー48の回動角がβ1となる位置が存在する。このとき、耕深はH2となり、リアカバー48の回動角が同じβ1であるにもかかわらず前記耕深H1よりも深くなる(H1<H2となる)。そこで、リフトアーム24・24の角度に対してリアカバー48の角度と耕深との関係をマップ状のデータとしてデータ記憶部92に記憶させておくのである。
すなわち、本実施例のトラクタ201は作業機装着装置20を介して作業機40を連結し、作業機昇降手段により作業機40を昇降させる構成であり、作業機装着装置20のリフトアーム24の回動角を検出するリフトアーム回動角センサ28と、作業機40のリアカバー48の回動角を検出するリアカバー回動角センサ57とを備え、リフトアーム回動角センサ28により検出されたリンク回動角θ1と、リアカバー回動角センサ57により検出されたリアカバー回動角θ2と、に基づいて耕深H(作業機40の圃場に対する高さと略同じ)を制御手段90で算出するようにしたので、作業機40が昇降しても耕深Hを精度良く把握することが可能であり、耕耘作業時の耕深制御の精度が向上する。
なお、上記の耕深制御は、耕耘作業以外の目的で使用される作業機においても、圃場に対する高さ制御を行う場合に広く適用可能である。
【0046】
また、前記左右傾斜センサ59により求められるトラクタ201の前後方向の傾斜角度(傾斜角θ3)を併用して、耕深Hをリンク回動角θ1、リアカバー回動角θ2、傾斜角θ3の三つを変数とする関数F2(θ1、θ2、θ3)として求めることも可能である。
例えば、トラクタ201の前輪1・1が耕盤の凸部に乗り上げて機体が後ろ下がりに傾斜した場合、前記リンク回動角θ1とリアカバー回動角θ2とにより制御していると、機体後方が下がるので、耕深は深くなってしまう。そこで、機体の前後方向の傾斜角θ3を検出して、その前後方向の傾斜角θ3に応じて耕深が設定値となるリアカバー回動角度を演算し、該リフトアーム24の回動角度を制御するのである。具体的には、機体前部が上がればリフトアーム24をその分上昇させ、機体後部が上昇すればその分リフトアーム24を下降させるのである。
すなわち、本実施例のトラクタ201は作業機装着装置20を介して作業機40を連結し、作業機昇降手段により作業機40を昇降させる構成であり、作業機装着装置20のリフトアーム24の回動角を検出するリフトアーム回動角センサ28と、作業機40のリアカバー48の回動角を検出するリアカバー回動角センサ57と、トラクタ201の前後方向の傾斜角を検出する前後傾斜センサ60とを備え、リフトアーム回動角センサ28により検出されたリンク回動角θ1と、リアカバー回動角センサ57により検出されたリアカバー回動角θ2と、前後傾斜センサ60により検出された傾斜角θ3と、に基づいて耕深H(作業機40の圃場に対する高さと略同じ)を算出するので、圃場の凹凸によりトラクタ201の前後方向の傾きが変化して、作業機40の前後方向の傾斜角度が変化しても、耕深Hを精度良く把握することが可能であり、耕耘作業時の耕深制御の精度をより向上することができる。
【0047】
さらに、図1に示す如く、トラクタ201の底面部と圃場表面との距離Lを耕深制御に用いて、耕深Hをリンク回動角θ1、リアカバー回動角θ2、距離Lの三つを変数とする関数F3(θ1、θ2、L)として求めることも可能である。例えば、硬い圃場に対して軟弱な圃場の作業では作業車両本機は沈んで走行することになるため、同じ耕深作業を行う場合、作業機の位置は本機に対して硬い圃場よりも軟弱な圃場の場合の方が高くなるので、リフトアーム24の回動角もリアカバー48の回動角も沈む量に応じて変更する必要がある。この沈む量を距離センサ58で検知して、その沈む量に応じて耕深の設定値のリアカバー角度を演算し、リフトアーム24の回動角度を制御するのである。
すなわち、本実施例のトラクタ201は作業機装着装置20を介して作業機40を連結し、作業機昇降手段により作業機40を昇降させる構成であり、
作業機装着装置20のリフトアーム24の回動角を検出するリフトアーム回動角センサ28と、作業機40のリアカバー48の回動角を検出するリアカバー回動角センサ57と、トラクタ201底面と圃場との距離を検出する距離センサ58とを備え、リフトアーム回動角センサ28により検出されたリンク回動角θ1と、リアカバー回動角センサ57により検出されたリアカバー回動角θ2と、距離センサ58により検出されたトラクタ201の底面と圃場との距離Lと、に基づいて耕深H(作業機40の圃場に対する高さと略同じ)を算出するので、作業機40が昇降しても、圃場の状況(例えば、圃場の凸部に前輪1・1が乗り上げて後下がりになっているとか、圃場の凹部に後輪2・2がはまり込んで後下がりになっているなど)が変化しても、耕深Hを精度良く把握することが可能であり、耕耘作業時の耕深制御の精度が向上する。
【0048】
さらにまた、図1に示す如く、トラクタ201の底面部と圃場表面との距離Lを耕深制御に用いて、耕深Hをリンク回動角θ1、リアカバー回動角θ2、傾斜角θ3、距離Lの四つを変数とする関数F4(θ1、θ2、θ3、L)として求めることも可能である。
すなわち、本実施例のトラクタ201は作業機装着装置20を介して作業機40を連結し、作業機昇降手段により作業機40を昇降させる構成であり、
作業機装着装置20のリフトアーム24の回動角を検出するリフトアーム回動角センサ28と、作業機40のリアカバー48の回動角を検出するリアカバー回動角センサ57と、トラクタ201の前後方向の傾斜角を検出する前後傾斜センサ60と、トラクタ201底面と圃場との距離を検出する距離センサ58とを備え、リフトアーム回動角センサ28により検出されたリンク回動角θ1と、リアカバー回動角センサ57により検出されたリアカバー回動角θ2と、前後傾斜センサ60により検出された傾斜角θ3と、距離センサ58により検出されたトラクタ201の底面と圃場との距離Lと、に基づいて耕深H(作業機40の圃場に対する高さと略同じ)を算出するので、作業機40が昇降しても、圃場の凹凸によりトラクタ201の前後方向の傾きが変化して、作業機40の前後方向の傾斜角度が変化しても、圃場の状況(例えば、圃場の凸部に前輪1・1が乗り上げて後下がりになっているとか、圃場の凹部に後輪2・2がはまり込んで後下がりになっているなど)が変化しても、耕深Hを精度良く把握することが可能であり、耕耘作業時の耕深制御の精度が向上する。
【0049】
なお、本実施例では、リンク回動角検出手段としてリフトアーム回動角センサ28をリフトアーム24とトラクタ201の機体との回動支点に設けて、リフトアーム24の回動角を検出したが、リフトアーム回動角センサ28の取付位置は他の場所でも良く、限定されない。また、上部リンク21または下部リンク22・22の回動角を検出してこれをリンク回動角θ1として用いても良い。さらに、昇降用油圧シリンダ25・25の長さをリニアスケールやロータリエンコーダで検出し、これをリンク回動角θ1の代用としても良い。
【0050】
また、本実施例では、リアカバー回動角検出手段であるリアカバー回動角センサ57はトラクタ201の機体側に取り付けられていたが、リアカバー回動角センサ57を作業機40に取り付けても良い。
【0051】
さらに、本実施例では、傾斜角検出手段である左右傾斜センサ59はトラクタ201の機体側に取り付けられていたが、左右傾斜センサ59を作業機40側に取り付けても良い。
【0052】
また、本実施例においては四つの車輪である前輪1・1および後輪2・2の中心となる位置に一個の距離センサ58を設けたが、距離センサを複数設けても良く、個数は限定されない。また、作業車両底面部における距離センサの配設位置も四つの車輪である前輪1・1および後輪2・2の中心に限定されず、機体前部や機体後部に距離センサ58を配設しても良い。
【0053】
さらに、本実施例では、作業機40はトラクタ201の後部に配置されているが、作業車両前部にPTO軸および作業機装着装置を設け、作業車両前部に作業機を連結する構成としても良い。
【0054】
以下では、図7から図15を用いて制御手段90にて行われる作業機40の耕深制御方法の実施例について説明する。
【0055】
従来の作業車両における作業機の耕深制御は、主にP動作(比例動作)とI動作(積分動作)とを組み合わせたPI制御で行っていたが、応答性に問題があった(算出耕深Hcを設定耕深Hsに短時間で近づけるのが困難であった)ので、本実施例においてはP動作およびI動作にD動作(微分動作)を加えたPID制御を用いて耕深制御を行うこととした。
ただし、単にD動作を加えると応答性が向上する反面、周波数応答における周波数が高くなる場合(例えば耕耘作業中の作業機のロータリが局部的に圃場表面から浅い位置にある地中の硬い地層に接触して上方に跳ね上げられる場合や、圃場表面に細かい凹凸が連続する場合など)には、PID制御により作業機に与えられる作業機の上下方向の操作量が過度に大きくなり、作業機が上下方向に揺動(ハンチング)して、耕深制御がかえって不安定になる場合がある。
そこで、本実施例のトラクタ201の耕深制御においては、D動作(微分動作)の高周波数域における操作量を小さくして、作業機の応答性を向上させつつ、耕深制御の安定性(ハンチング防止)を確保することとした。
【0056】
また、設定耕深と算出耕深との差(偏差)が同一符号で長時間保持される場合(すなわち、応答性が良くない場合)、I動作を耕深制御に用いると、I動作に係る操作量が大きくなり、これも作業機のハンチングの原因となっていた。そこで、従来の耕深制御においてはI動作に係る操作量を所定の周期、または設定耕深から所定の範囲に算出耕深が到達した時点でリセット(積分項をゼロにする)し、リセットした時点から再び積分項の算出を行っていた。しかし、この方法はリセットした時点で操作量が大きく変化し、作業機の昇降による衝撃(ショック)が発生するため、作業車両の作業者にとって不快であるとともに耕深制御の安定性を低下させる原因となっていた。
そこでI動作における操作量の算出方法を変更し、I動作に係る操作量をリセットしたときのショックを軽減し、耕深制御の安定性を向上させることとした。
【0057】
まず、ある時刻tにおいて、リフトアーム回動角センサ28により検出されたリンク回動角θ1、リアカバー回動角センサ57により検出されたリアカバー回動角θ2、前後傾斜センサ60により検出された傾斜角θ3、距離センサ58により検出されたトラクタ201の底面と圃場との距離Lに基づいて、算出耕深(以後Hc(t)と表記する)が求められる。Hc(t)の算出方向については前記関数F1(θ1、θ2)、関数F2(θ1、θ2、θ3)、関数F3(θ1、θ2、L)、関数F4(θ1、θ2、θ3、L)のいずれを用いても良い。また、他の方法で算出耕深を求めても良い。
次に、耕深ダイヤル30からの入力信号に基づき、ある時刻tにおける設定耕深(以後Hs(t)と表す)が設定される。
【0058】
次に、設定耕深Hs(t)と算出耕深Hc(t)との偏差E(t)を求める。なお、設定耕深Hs(t)と算出耕深Hc(t)と偏差E(t)との間には、E(t)=Hs(t)−Hc(t)が成立する。
この偏差E(t)は本実施例の作業機40の耕深制御におけるP動作の操作量Upを決めるものであり、該操作量Upは以下の(式1)で表される。
Up=Kp×E(t) (式1)
ここで、Kpは比例ゲインと呼ばれる係数であり、作業車両の種類、作業機の種類および作業の方法や圃場の状況に応じて適宜設定される。
【0059】
以下では、図7から図9を用いて本実施例の耕深制御におけるI動作の操作量Uiを決める積分項(以後、A(t)と表記する)の算出方法について説明する。
なお、以後の説明では本実施例におけるD動作の操作量Udを決める微分項をB(t)と表記する。
【0060】
図7から図9は、スタート時刻から時刻t4までの偏差E(t)、積分項A(t)、微分項B(t)の変化の一例を示している。偏差E(t)は、スタート時刻ではゼロであり、スタート時刻から時刻t1までは増加し、時刻t1から時刻t4までは減少し、時刻t4で再びゼロとなった場合を想定している。
なお、「偏差E(t)が正の値を取る」とは、設定耕深Hsよりも算出耕深Hcの方が小さい、すなわち作業機40のロータリ41の圃場への耕耘深さが浅いことを意味し、作業者が耕深ダイヤル30により設定している位置よりも、作業機40が圃場に対して上がり気味になった状態である。
また、時刻t2および時刻t3においては作業機40が外力により一時的に上方に移動(例えば、耕耘作業中の作業機のロータリが局部的に圃場表面から浅い位置にある地中の硬い地層に接触して上方に跳ね上げられる場合など)している。
【0061】
従来のPID制御で用いられる積分項はスタート時刻から時刻tまでの偏差を時間により積分したものであり、従来のPID制御で用いられる積分項(図8中の点線で示す)は、偏差E(t)の絶対値の大小に関わらず、偏差E(t)が正の値を取っている間は単調増加する。
このような従来の積分項は、偏差E(t)が正の値から長時間かけてゼロ近傍となった時点で大きな値となっている場合があり、設定耕深Hsを越えて逆方向に作業機40を昇降させる(ハンチング)原因となる場合がある。また、このようなハンチングを防止する目的で積分項を所定の周期、または設定耕深Hsから所定の範囲(例えば、後述する不感帯)に算出耕深Hcが到達した時点でリセットする(積分項をゼロにする)場合、大きな絶対値を持つ積分項をゼロにリセットすると、P動作に係る操作量Up、I動作に係る操作量UiおよびD動作に係る操作量Udの総和であり、制御手段90が算出する作業機40の昇降を行うための操作量であるUtotalがリセットの前後で大きく変化し、作業機40のショックの原因となる。
【0062】
そこで、PI制御またはPID制御により昇降制御する作業車両において、設定手段により設定された目標値と算出手段により算出された算出値(制御出力値)との差である偏差の絶対値が、増加から減少に変化すると、積分項を減算して算出する。つまり、本実施例における積分項A(t)は、図8中の実線で示す如く、偏差E(t)と後述する微分項B(t)の符号が逆になるとき(図8中の時刻t1からt4の領域)は積分項A(t)の絶対値が小さくなるように算出する。
より具体的には、本実施例の積分項A(t)は、微小時間Δtを用いて、A(t)=A(t−Δt)+{(E(t)/B(t))/(|E(t)/B(t)|)}×{E(t)×Δt}と表される。
なお、前記式の{(E(t)/B(t))/(|E(t)/B(t)|)}の部分は、偏差E(t)と微分項B(t)の符号(同符号か異符号か)を判定するものであり、偏差E(t)と微分項B(t)が同符号の時は1、異符号の時は−1の値を取り、E(t)またはB(t)がゼロの時は{(E(t)/B(t))/(|E(t)/B(t)|)}=0とみなす。また、微小時間Δtは制御部90にて適宜設定可能である。
さらに、本実施例では、積分項A(t)においては{(E(t)/B(t))/(|E(t)/B(t)|)}により偏差E(t)と微分項B(t)の符号を判定していたがこれに限定されず、例えば制御部90にて偏差E(t)と微分項B(t)の値を比較し、偏差E(t)と微分項B(t)が同符号の時はk=1、異符号の時はk=−1として、A(t)=A(t−Δt)+k×{E(t)×Δt}という式に基づいて積分項A(t)を求めても良い。
【0063】
この積分項A(t)が本実施例の作業機40の耕深制御におけるI動作の操作量Uiを決めるものであり、操作量Uiは以下の(式2)で表される。
Ui=Ki×A(t) (式2)
ここで、Kiは積分ゲインと呼ばれる係数であり、作業車両の種類、作業機の種類および作業の方法や圃場の状況に応じて適宜設定される。
【0064】
以下では、図7から図12を用いて本実施例の耕深制御におけるD動作の操作量Udの算出方法について説明する。
【0065】
従来のPID制御で用いられる微分項(図9中の点線で示す)はある時刻tにおける偏差E(t)の微分値を示すものである。
微分項B(t)は、本実施例の作業機40の耕深制御におけるD動作の操作量Udを決めるものであり、操作量Udは以下の(式3)で表される。
Ud=Kd×B(t) (式3)
ここで、Kdは微分ゲインと呼ばれる係数であり、作業車両の種類、作業機の種類および作業の方法や圃場の状況に応じて適宜設定される。従来の微分ゲインKdは通常は定数(正の値)であり、従来のD動作における操作量Udは微分項に比例する。
このような微分項は、時刻t2および時刻t3に示す如く、例えば、耕耘作業中の作業機のロータリが局部的に圃場表面から浅い位置にある地中の硬い地層に接触して上方に跳ね上げられる場合や、圃場表面に細かい凹凸がある場合には、微分項の値が一時的に大きく変動する。このとき、PID制御により作業機に与えられる作業機の上下方向の操作量が過度に大きくなり、作業機が上下方向に揺動(ハンチング)して、耕深制御がかえって不安定になる場合がある。
【0066】
リフトアーム回動角センサ28、リアカバー回動角センサ57、前後傾斜角センサ60、距離センサ58等から、算出耕深Hcを算出するために制御手段90に入力される信号(入力値)には、種々の周波数成分が含まれる。微分値(出力値)の算出は各周波数成分の信号の位相を90度進ませることにより算出されるが、その振幅は周波数が高くなるにつれて大きくなる(すなわち、微分項は入力値の周波数に略比例する)。従って、微分値をそのまま本実施例における微分項として用いると、耕深制御が不安定になる場合がある。
そこで、本実施例では、図11で示す如く、まず、入力値の高周波成分を除去するフィルタ(一次遅れフィルタ)をかけ、さらに、不完全微分(カットオフ周波数ωc以上の周波数については、入力値が大きくなっても出力値を略一定の値とする)を行うフィルタ(不完全微分フィルタ)をかける。本実施例においては、このようにして得られる出力信号を微分項B(t)として用いる。すなわち、微分項B(t)を一次遅れ系と不完全微分とを用いて算出する。
図12に示す如く、微分項B(t)は、入力値の周波数がカットオフ周波数以下の領域では周波数に略比例して大きくなり、入力値の周波数がカットオフ周波数ωc以上の領域では周波数が大きくなるのに伴って小さくなる。
【0067】
以下では、微分項B(t)の計算方法の一例を示す。
不完全微分の周波数領域での出入力値の関係を表す式(伝達関数)G(s)は、G(s)=(2×π×ωc×s)/(s+2×π×ωc)で表される。ここで、sはラプラス演算子、ωcはカットオフ周波数を表す。
制御手段90にてこれを行うためには、伝達関数G(s)を時間領域の式に直す必要がある。そこで、G(s)を離散化して差分方程式で表すと、以下の式で表される。
X1(n)=u1(n)−(2×π×ωc×dt−1)×X1(n−1)
Y1(n)=2×π×ωc×{X1(n)−X1(n−1)}
ここで、u1(n)は時刻nにおける入力値、X1(n)は時刻nにおける中間変数、dtはサンプリング時間(制御周期:制御手段90内で計算を実行する周期)、X1(n−1)は1サンプリング前(時刻n−dt)の中間変数、Y1(n)は時刻nにおける微分値を表す。
一方、一次遅れフィルタにおける周波数領域での出入力値の関係を表す式(伝達関数)Gfilter(s)は、Gfilter(s)=(2×π×ωc)/(s+2×π×ωc)で表される。同様にGfilter(s)を離散化して差分方程式で表すと、以下の式で表される。
X2(n)=u2(n)−(2×π×ωc×dt−1)×X2(n−1)
Y2(n)=2×π×ωc×dt×X2(n−1)
ここで、u2(n)は時刻nにおける入力値、X2(n)は時刻nにおける中間変数、dtはサンプリング時間(制御周期:制御手段90内で計算を実行する周期)、X2(n−1)は1サンプリング前(時刻n−dt)の中間変数、Y2(n)は時刻nにおける微分値を表す。
【0068】
本実施例の場合、まずu2(n)を偏差E(t)としてY2(n)を求め、次に該Y2(n)をu1(n)としてY1(n)を求める。このようにして求められたY1(n)が微分項B(t)となる。
なお、微分項B(t)の計算方法は上記方法に限定されず、入力値の高周波成分を減衰させて微分項B(t)を算出するものであればよい。
また、カットオフ周波数ωcの値については、実験等により、作業機やトラクタの種類、作業内容等に応じて適宜選択される。
【0069】
以上の如く、P動作に係る操作量Ud、I動作に係る操作量Ui、D動作に係る操作量Udを用いて、制御手段90が算出する作業機40の昇降を行うための操作量Utotalは、以下の(式4)で表される。
Utotal=Up+Ui+Ud (式4)
ここで、操作量Utotalは、作業機40の昇降を行う昇降用油圧シリンダ25・25に作動油を供給する作業機上昇用切替弁76、または昇降用油圧シリンダ25・25から作動油を戻す作業機下降用切替弁77、の弁体を作動させるアクチュエータ(ソレノイド)への出力信号(電流値)の大きさである。
なお、操作量Utotalは本実施例の如く作業機上昇用切替弁76または作業機下降用切替弁77の弁体を作動させるための出力信号(電流値)の大きさに限定されず、該作業機上昇用切替弁76または作業機下降用切替弁77の弁の開度や作動油の流量あるいは昇降用油圧シリンダ25・25の伸縮量としても良い。
【0070】
また、場合によっては前記操作量Utotalにより昇降用油圧シリンダ25・25を作動させる方向が、偏差E(t)の絶対値を大きくする方向となること、すなわち、作業機が設定より上方に位置しているにもかかわらず作業機を上昇させる信号が発せられる(E(t)>0かつUtotal<0)こと、または作業機が設定より下方に位置しているにもかかわらず作業機を下降させる信号が発せられる(E(t)<0かつUtotal>0)ことが起こり得る。このような場合には、図15に示す如く、Utotal=0とみなす(すなわち、昇降用油圧シリンダ25・25を作動させない)ように制御部90を構成しても良い。このように構成することにより、耕深制御の安定性(ハンチング防止)が向上する。
【0071】
以上の如く構成することにより、本実施例のトラクタ201における耕深制御は、以下の利点を有する。
PI制御またはPID制御により昇降制御する作業車両において、設定手段により設定された目標値と算出手段により算出された算出値(制御出力値)との差である偏差の絶対値が、増加から減少に変化すると、積分項を減算して算出する、より具体的には、作業機装着装置20を介して作業機40を連結し、作業機昇降手段により作業機40を昇降させるトラクタ201において、耕深設定手段である耕深ダイヤル30により設定された設定耕深Hsと耕深算出手段(リフトアーム回動角センサ28、リアカバー回動角センサ57、前後傾斜センサ60、距離センサ58等のセンサ群と、制御部90等で構成される)により算出された算出耕深Hcとの差である偏差E(t)により定められる操作量Upと、偏差E(t)の時間による積分項A(t)により定められる操作量Uiと、偏差E(t)の時間による微分項B(t)により定められる操作量Udと、に基づいて作業機昇降手段の昇降量を決定し、該積分項A(t)は、微小時間Δtと偏差E(t)との積に、偏差E(t)と微分項B(t)とが互いに同符号の時は1、偏差E(t)と微分項B(t)とが互いに異符号の時は−1を掛けた値を、微小時間Δt前の積分項A(t―Δt)に加算して算出するので、PI制御またはPID制御を用いた作業機の耕深制御において、I動作に係る操作量が他の操作量(P動作に係る操作量およびD動作に係る操作量)に比べて過度に大きくなることに起因する作業機のハンチングを防止し、耕深制御の安定性が向上する。また、耕深制御中にPI制御またはPID制御に係るI動作の操作量をリセットする場合にも作業機の昇降量の急激な変化による衝撃(ショック)が軽減され、耕深制御の安定性が向上する。
また、作業機装着装置を介して作業機を連結し、作業機昇降手段を制御手段と接続して、作業機をPID制御により昇降制御する作業車両において、微分項B(t)は一次遅れ系と不完全微分とを用いて算出され、高さ検出値の周波数がカットオフ周波数ωc以下では周波数に略比例し、高さ検出値の周波数がカットオフ周波数ωc以上では周波数の増加に伴い減少するので、微分項B(t)の値が一時的に大きく変動しても、操作量Udは大きく変動することがなく、耕深制御の安定性(ハンチングの防止)を保持しつつ応答性(短時間で偏差の絶対値を小さくし、算出耕深を設定耕深に近づける)が向上する。
【0072】
なお、上記説明ではトラクタ201の作業機40の耕深制御をPID制御を用いて行う場合について説明したが本発明はこれに限定されない。例えば、PI制御を用いて耕深制御を行う場合に、上記積分項A(t)を用いてI動作の操作量Uiを算出し、これに基づいて制御手段90が算出する作業機40の昇降を行うための操作量Utotal(=Up+Ui)を算出しても良い。
また、PD制御を用いて耕深制御を行う場合に、上記微分ゲインKdを用いてD動作の操作量Udを算出し、これに基づいて制御手段90が算出する作業機40の昇降を行うための操作量Utotal(=Up+Ud)を算出しても良い。
さらに、PID制御を用いて耕深制御を行う場合に、I動作の操作量Uiを算出するときには本実施例の積分項A(t)を用いるとともに、D動作の操作量Udを算出するときには従来の微分ゲイン(縦軸に微分項、縦軸に入力値の周波数を取ったときに傾きが正の値を持つ一次関数となる)を用いて制御手段90が算出する作業機40の昇降を行うための操作量Utotalを算出しても良い。
さらにまた、PID制御を用いて耕深制御を行う場合に、I動作の操作量Uiを算出するときには従来の積分項を用いるとともに、D動作の操作量Udを算出するときには図12に示す微分項B(t)を用いて制御手段90が算出する作業機40の昇降を行うための操作量Utotalを算出しても良い。
【0073】
以下では、図13および図14を用いて偏差E(t)に施される「不感帯処理」および「ゲイン付き不感帯処理」について説明する。なお、ゲイン付き不感帯処理は、不感帯処理の一種である。
「不感帯処理」とは、図13に実線で示す如く、縦軸を補正後(不感帯処理後)の偏差E(t)、横軸を補正前(不感帯処理前)の偏差E(t)としたときに、補正前の偏差E(t)がゼロを挟んだ不感帯の範囲にあるときは、補正後の偏差E(t)をゼロとして制御手段90が算出する作業機40の昇降を行うための操作量Utotalを算出するものである。なお、図13に示す不感帯はゼロを挟んで左右対称となる位置に配置されるが、該不感帯を補正前の偏差E(t)の正側または負側にずれた位置に配置しても良い。
「ゲイン付き不感帯処理」とは、図14に実線で示す如く、縦軸を補正後(不感帯処理後)の偏差E(t)、横軸を補正前(不感帯処理前)の偏差E(t)としたときに、補正前の偏差E(t)がゼロを挟んだ不感帯の範囲にあるときは、補正後の偏差E(t)は補正前の偏差E(t)よりも小さくする(図14の不感帯における直線の傾きが1よりも小さくなる)ものである。なお、図14に示す不感帯はゼロを挟んで左右対称となる位置に配置されるが、該不感帯を補正前の偏差E(t)の正側または負側にずれた位置に配置しても良い。
【0074】
以上の如く、偏差E(t)に不感帯処理またはゲイン付き不感帯処理を施した後、P動作の操作量Upの算出に用いることにより、算出耕深Hcが設定耕深Hs近傍にあるときの作業機40のハンチングが低減され、耕深制御の安定性が向上する。
なお、上記不感帯処理およびゲイン付き不感帯処理は偏差E(t)だけでなく、積分項A(t)や微分項B(t)に対しても行うことが可能である。積分項A(t)や微分項B(t)に不感帯処理またはゲイン付き不感帯処理を施した場合も、算出耕深Hcが設定耕深Hs近傍にあるときの作業機40のハンチングが低減され、耕深制御の安定性が向上する。
また、不感帯処理またはゲイン付き不感帯処理を施した後の偏差E(t)に基づいて積分項A(t)に係る操作量Uiや微分項B(t)に係る操作量Udを算出しても略同様の効果を奏する。
【0075】
【発明の効果】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示すような効果を奏する。
【0076】
即ち、請求項1に示す如く、作業機装着装置を介して作業機を連結し、作業機昇降手段を制御手段と接続して、作業機をPI制御またはPID制御により昇降制御する作業車両において、設定手段により設定された目標値と算出手段により算出された算出値(制御出力値)との差である偏差の絶対値が、増加から減少に変化すると、積分項を減算して算出するので、PI制御またはPID制御を用いた作業機の耕深制御において、I動作に係る操作量が他の操作量(P動作に係る操作量およびD動作に係る操作量)に比べて過度に大きくなることに起因する作業機のハンチングを防止し、耕深制御の安定性が向上する。また、耕深制御中にPI制御またはPID制御に係るI動作の操作量をリセットする場合にも作業機の昇降量の急激な変化による衝撃(ショック)が軽減され、耕深制御の安定性が向上する。
【0077】
請求項2に示す如く、作業機装着装置を介して作業機を連結し、作業機昇降手段を制御手段と接続して、作業機をPID制御により昇降制御する作業車両において、微分項は一次遅れ系と不完全微分とを用いて算出され、高さ検出値の周波数がカットオフ周波数(設定周波数)以下では周波数に略比例し、高さ検出値の周波数がカットオフ周波数(設定周波数)以上では周波数の増加に伴い減少するので、PID制御を用いた作業機の耕深制御において、微分項の値が一時的に大きく変動しても、D動作に係る操作量は大きく変動することがなく、耕深制御の安定性(ハンチングの防止)を保持しつつ応答性(短時間で偏差の絶対値を小さくし、算出耕深を設定耕深に近づける)が向上する。
【0078】
請求項3に示す如く、作業機装着装置を介して作業機を連結し、作業機昇降手段を制御手段と接続して、作業機をPID制御により昇降制御する作業車両において、設定手段により設定された設定値と検出値との差が、減少傾向または増加傾向のとき、その傾向とアクチュエータの駆動信号の方向が不一致であれば、アクチュエータの出力信号を停止するので、PID制御を用いた作業機の耕深制御において、作業機の耕深が設定手段により設定された設定耕深近傍にあるときの作業機のハンチングが低減され、耕深制御の安定性が向上する。
【0079】
請求項4に示す如く、作業機装着装置を介して作業機を連結し、作業機昇降手段を制御手段と接続して、作業機をPID制御により昇降制御する作業車両において、設定手段により設定された設定値に近い所定の範囲に入ると、偏差にゲインを乗算して比例項と積分項と微分項の各入力値とするので、PID制御を用いた作業機の耕深制御において、作業機の耕深が設定手段により設定された設定耕深近傍にあるときの作業機のハンチングが低減され、耕深制御の安定性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態であるトラクタの左側面図。
【図2】本発明の実施の一形態であるトラクタの後部および作業機を示す左側面一部断面図。
【図3】本発明の実施の一形態であるトラクタの後部および作業機を示す平面図。
【図4】本発明の実施の一形態であるトラクタの油圧回路を示す図。
【図5】本発明の実施の一形態であるトラクタの制御手段を示すブロック図。
【図6】リフトアームの回動角の変化と耕深との関係を示す模式図。
【図7】偏差と時間との関係の一例を示す図。
【図8】積分項と時間との関係の一例を示す図。
【図9】微分項と時間との関係の一例を示す図。
【図10】微分項に係る操作量と時間との関係の一例を示す図。
【図11】本実施例の微分項の算出に係るブロック線図。
【図12】本実施例の微分項と入力値の周波数との関係を示す図。
【図13】不感帯処理の実施例を示す図。
【図14】不感帯処理の別実施例を示す図。
【図15】耕深に係る偏差の符号と操作量の符号とに基づく作業機の昇降指令の実施例を示すフローチャート図。
【符号の説明】
20 作業機装着手段
40 作業機
201 トラクタ
Claims (4)
- 作業機装着装置を介して作業機を連結し、作業機昇降手段を制御手段と接続して、作業機をPI制御またはPID制御により昇降制御する作業車両において、
設定手段により設定された目標値と算出手段により算出された算出値(制御出力値)との差である偏差の絶対値が、増加から減少に変化すると、積分項を減算して算出することを特徴とする作業車両の昇降制御装置。 - 作業機装着装置を介して作業機を連結し、作業機昇降手段を制御手段と接続して、作業機をPID制御により昇降制御する作業車両において、
微分項は一次遅れ系と不完全微分とを用いて算出され、高さ検出値の周波数がカットオフ周波数(設定周波数)以下では周波数に略比例し、高さ検出値の周波数がカットオフ周波数(設定周波数)以上では周波数の増加に伴い減少することを特徴とする作業車両の昇降制御装置。 - 作業機装着装置を介して作業機を連結し、作業機昇降手段を制御手段と接続して、作業機をPID制御により昇降制御する作業車両において、
設定手段により設定された設定値と検出値との差が、減少傾向または増加傾向のとき、その傾向とアクチュエータの駆動信号の方向が不一致であれば、アクチュエータの出力信号を停止することを特徴とする作業車両の昇降制御装置。 - 作業機装着装置を介して作業機を連結し、作業機昇降手段を制御手段と接続して、作業機をPID制御により昇降制御する作業車両において、
設定手段により設定された設定値に近い所定の範囲に入ると、偏差にゲインを乗算して比例項と積分項と微分項の各入力値とすることを特徴とする作業車両の昇降制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003149843A JP4416437B2 (ja) | 2003-05-27 | 2003-05-27 | トラクタに装着したロータリ耕耘機の耕深制御装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003149843A JP4416437B2 (ja) | 2003-05-27 | 2003-05-27 | トラクタに装着したロータリ耕耘機の耕深制御装置 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004350540A true JP2004350540A (ja) | 2004-12-16 |
JP4416437B2 JP4416437B2 (ja) | 2010-02-17 |
Family
ID=34045832
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003149843A Expired - Fee Related JP4416437B2 (ja) | 2003-05-27 | 2003-05-27 | トラクタに装着したロータリ耕耘機の耕深制御装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4416437B2 (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012235701A (ja) * | 2011-05-09 | 2012-12-06 | Yanmar Co Ltd | 作業車両 |
US20210120725A1 (en) * | 2019-10-23 | 2021-04-29 | Cnh Industrial America Llc | Method and system for controlling the height of an agricultural implement relative to the ground |
JP2021151202A (ja) * | 2020-03-24 | 2021-09-30 | 株式会社クボタ | 作業車両 |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR101877062B1 (ko) * | 2012-11-06 | 2018-07-11 | 엘에스엠트론 주식회사 | 트랙터의 쟁기 경심 제어 장치 및 방법 |
KR101778982B1 (ko) * | 2015-08-19 | 2017-09-18 | 성균관대학교산학협력단 | 경운 트랙터 |
-
2003
- 2003-05-27 JP JP2003149843A patent/JP4416437B2/ja not_active Expired - Fee Related
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012235701A (ja) * | 2011-05-09 | 2012-12-06 | Yanmar Co Ltd | 作業車両 |
US20210120725A1 (en) * | 2019-10-23 | 2021-04-29 | Cnh Industrial America Llc | Method and system for controlling the height of an agricultural implement relative to the ground |
US11659785B2 (en) * | 2019-10-23 | 2023-05-30 | Cnh Industrial America Llc | Method and system for controlling the height of an agricultural implement relative to the ground |
JP2021151202A (ja) * | 2020-03-24 | 2021-09-30 | 株式会社クボタ | 作業車両 |
JP7317757B2 (ja) | 2020-03-24 | 2023-07-31 | 株式会社クボタ | 作業車両 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP4416437B2 (ja) | 2010-02-17 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JPWO2018038266A1 (ja) | 作業車両および作業車両の制御方法 | |
JP2006345805A (ja) | 農作業機械 | |
JP2004350540A (ja) | 作業車両の昇降制御装置 | |
JPS6358522B2 (ja) | ||
JP3797902B2 (ja) | トラクタの耕深制御装置 | |
JP5943852B2 (ja) | 作業車 | |
JP2007129918A (ja) | 耕深制御装置 | |
JP4895260B2 (ja) | 姿勢制御装置 | |
JP7474021B2 (ja) | ショベル | |
JP2004350565A (ja) | 作業車両の昇降制御装置 | |
JP2004313132A (ja) | 作業車両 | |
JP2004350566A (ja) | 作業車両 | |
JP4863347B2 (ja) | 姿勢制御装置 | |
JP4733422B2 (ja) | 作業機の姿勢制御装置 | |
JP4863349B2 (ja) | 昇降制御装置 | |
JP5002935B2 (ja) | トラクタ作業機 | |
JP5524753B2 (ja) | 作業車両 | |
JP4863348B2 (ja) | 耕深制御装置 | |
JP3916555B2 (ja) | 農作業機のローリング制御装置 | |
JP4033831B2 (ja) | トラクタの操作装置 | |
JP2006340621A (ja) | 農作業機の耕耘制御装置 | |
JP4594922B2 (ja) | 農作業機のローリング制御装置 | |
JP3669936B2 (ja) | 作業車の姿勢制御装置 | |
JP2001269019A (ja) | 農用作業車 | |
WO2018180919A1 (ja) | 水田作業車両 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20060427 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20080827 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20080902 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20081020 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20090512 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20090703 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20091117 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20091124 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121204 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121204 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131204 Year of fee payment: 4 |
|
S531 | Written request for registration of change of domicile |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131204 Year of fee payment: 4 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131204 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20141204 Year of fee payment: 5 |
|
S531 | Written request for registration of change of domicile |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |