JP2004349105A - 透明導電膜用組成物および透明導電膜 - Google Patents

透明導電膜用組成物および透明導電膜 Download PDF

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充 佐藤
Kazuhisa Higuchi
和央 樋口
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Abstract

【課題】比較的低い温度において短時間の加熱で透明導電膜を形成できるようにする。
【解決手段】透明導電膜形成用組成物は、有機インジウム化合物と無機錫化合物とを溶媒に溶解させた溶液からなっている。水と相性の良い無機錫化合物を用いることにより、基板に対する溶液の濡れ性が改善し、乾燥させても溶質の析出などを生じるようなことがなく、均一な膜厚を有する透明導電膜とすることができる。このため、高価な真空装置を必要とせず、比較的安価な装置を用いて透明導電膜を形成することができ、製造コストを大幅に削減することができる。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明導電膜用組成物に係り、特に基板に塗布して焼成することにより透明導電膜を形成する透明導電膜用組成物および透明導電膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
透明導電膜は、液晶表示パネルの電極材料や、接触画面(いわゆるタッチパネル)、太陽電池の透明電極など、多くの分野において利用されている。従来、透明導電膜は、一般にITO(錫をドープした酸化インジウム)などの酸化インジウム(In)系のものが使用されている。これらの金属酸化物系透明導電膜は、従来、スパッタリング法やイオンプレーティング法によって、基板に成膜することにより形成している。これらの成膜は、真空気相プロセスによって行なわれるため、高価な真空装置を必要とし、真空中における処理であるためにランニングコストもかさむ。また、上記の金属酸化物系透明導電膜の形成は、真空気相プロセスであるため、真空チャンバなどの真空装置にも膜が形成される。したがって、従来の透明導電膜の製造においては、真空装置を頻繁に清掃する必要があり、装置の稼働率が低下する。
【0003】
このような背景から、真空気相プロセスによらずに透明導電膜を形成することが研究されている。例えば、有機金属化合物の溶液を基板に塗布し、これを加熱焼成して透明導電膜を形成するものである。このような液体の材料を用いて透明導電膜を形成できれば、高価な真空装置を必要とせず、大面積の透明導電膜も容易に形成することができる。そして、特許文献1には、有機インジウム化合物と有機錫とを有機溶剤に溶解した塗布液を基板に塗布し、これを加熱焼成することにより透明導電膜にする透明導電膜形成用塗布液が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平6−325637号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献1に記載されている透明導電膜形成用の塗布液は、塗布液を焼成する場合、450℃の高温において30分以上加熱しなければ、抵抗値が低く、高い光透過率を有する透明導電膜とすることができない。このため、透明導電膜を形成する基板としてガラスを用いた場合や、基板にアルミニウムからなるパターンが形成されている場合、基板を400℃を超える高温に長時間晒すことになり、基板が軟化して変形するおそれや、アルミニウムのパターンが劣化するおそれがある。
【0006】
また、上記の有機インジウム化合物と有機錫とを溶解した溶液は、例えば溶媒としてアセチルアセトンを使用した場合、基板を酸素プラズマに晒すなどして親液化処理して塗布すると、塗布直後は比較的きれいに濡れ拡がる。ところが、基板に塗布した溶液(塗布膜)は、乾燥の途中において潮が引くように一部に集まる傾向を示し、溶質が析出して粒状や島状になったり、帯状の部分が生じて光透過率を悪化させる。
本発明は、前記従来技術の欠点を解消するためになされたもので、比較的低い温度において短時間の加熱で透明導電膜を形成できるようにすることを目的としている。
また、本発明は、基板に対する濡れ性を改善することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明に係る透明導電膜用組成物は、有機インジウム化合物と無機錫化合物とを溶媒に溶解させた溶液からなることを特徴としている。このようになっている本発明は、有機インジウム化合物と無機錫化合物とを溶媒に溶解させたことにより、400℃、10分程度の加熱によって、実用に供するに充分な抵抗値と光透過率とを有する透明導電膜とすることができる。また、水と相性のよい無機錫化合物を用いることにより、基板に対する溶液の濡れ性が改善し、乾燥させても溶質の析出などを生ずるようなことがなく、均一な膜厚を有する透明導電膜とすることができる。そして、本発明に係る透明導電膜用組成物は、溶液であるため、基板に塗布して焼成することにより、透明導電膜を形成することができる。このため、高価な真空装置を必要とせず、比較的安価な装置を用いて透明導電膜を形成することができ、製造コストを大幅に削減することができる。
【0008】
有機インジウム合物は、アセチルアセトンインジウム(インジウムアセチルアセトナート)、蟻酸インジウム、塩基性酢酸インジウム、塩基性2−エチルヘキサン酸インジウム、さらにはインジウムメトキシド、インジウムエトキシドなどのインジウムアルコキシドなどを用いることができる。また、無機錫化合物としては、塩化錫(SnCl)、四塩化錫(SnCl)やフッ化錫(SnF)などのハロゲン化錫が望ましい。ハロゲン化錫は、基板に対する溶液の濡れ性を改善し、乾燥させても塗布膜の膜厚にむらを生ずることがない。したがって、基板に溶液を塗布して乾燥、焼成することにより、一様な膜厚の透明導電膜を得ることができる。溶媒は、有機インジウム化合物と無機錫化合物とを溶解できるものであればよく、例えばメチルエチルケトンなどのケトン類を用いることができる。
【0009】
溶液に含まれるインジウムと錫とは、原子比で0.8:0.2〜0.96:0.04であることが望ましい。インジウムに錫を添加すると透明導電膜に正孔が形成され、電子移動度が向上して導電性が大きくなり、透明導電膜の電気抵抗値を低下させることができ、また光透過率を高めることができる。しかし、錫の量が多くなりすぎると、電気抵抗が増大する。したがって、電気抵抗を実用できる範囲に納めるためには、錫の添加量を、インジウムと錫との総量に対して原子比率で20%以下とするのがよい。また、錫のインジウムに対する添加量が4原子%より少なくなると、形成される正孔の量が少なく、電気抵抗が大きくなる。したがって、錫の添加量は、インジウムと錫との総量に対して4原子%以上とする。
本発明に係る透明導電膜は、上記の透明導電膜用組成物を使用して形成したことを特徴としている。これにより、上記の効果を有する透明導電膜を得ることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係る透明導電膜用組成物の好ましい実施の形態を説明する。
本発明の実施形態に係る透明導電膜用組成物は、有機インジウム化合物と無機錫化合物とを溶媒に溶解させた溶液からなるものである。有機インジウム化合物は、溶媒に溶解可能なものであればよく、例えばアセチルアセトンインジウム(インジウムアセチルアセトナート)、蟻酸インジウム、塩基性酢酸インジウム、塩基性2−エチルヘキサン酸インジウム、さらにはインジウムメトキシド、インジウムエトキシドなどのインジウムアルコキシドなどを用いることができる。また、無機錫化合物は、塩化錫、四塩化錫やフッ化錫などのハロゲン化錫を用いることができる。溶媒は、有機インジウム化合物と無機錫化合物とを溶解できるものであればよく、例えばメチルエチルケトンなどのケトン類を用いることができる。
【0011】
このようになっている実施形態の透明導電膜用組成物(溶液)は、比較的低い温度における短時間の焼成、例えば400℃、10分程度の焼成により、酸化インジウムが形成され、280〜800nmの波長の光に対して透過率が80%以上、また実用上支障のない比較的電気抵抗の小さい透明導電膜とすることができる。したがって、実施形態の溶液を用いて透明導電膜を形成することにより、基板としてガラスを使用した場合、基板が軟化して変形するなどを防ぐことができる。また、基板にアルミニウムによる配線などのパターンが形成されている場合、パターンの劣化を防ぐことができる。そして、実施形態の溶液は、水と相性のよい無機錫化合物を添加したことにより、溶液の基板に対する濡れ性が改善され、乾燥時に潮が引くように溶液が収縮するような現象が発生せず、均一な膜厚を有する透明導電膜を形成することができる。
【0012】
有機インジウム化合物は、酢酸以外の溶媒に比較的溶けにくい。そこで、例えば溶媒としてアセチルアセトンを使用した場合、有機インジウムの溶解度は、室温で0.1mol/L程度である。そこで、有機インジウム化合物を溶解したアセチルアセトンの溶液を加熱し、溶媒の一部を蒸発させて濃縮するとよい。これにより、0.3mol/L程度の濃度を有する溶液とすることができる。そして、濃縮した溶液を使用することにより、溶液の塗布膜が厚くなり、所望の厚さの透明導電膜を形成する時間を短縮することができる。なお、濃度が0.3mol/Lの溶液を親液処理したガラス基板にディップコートして焼成すると、約100オングストローム(10nm)の厚さの透明導電膜を形成することができる。
【0013】
溶液に含まれるインジウムと錫とは、原子比で0.8:0.2〜0.96:0.04であることが望ましい。インジウムに錫を添加すると、正孔が形成されて導電性が向上して電気抵抗を小さくすることができる。この電気抵抗は、図1にシート抵抗として示したように、インジウムと錫との原子比が0.925:0.075の付近において最小となる。すなわち、インジウムが約92.5原子%、錫が約7.5原子%のときに、電気抵抗が最小となり、錫の量がこれより少なくても多くても電気抵抗が増大する。そして、錫の量が4原子%より少なくなると、生ずる正孔の量が少なくなって電気抵抗が大きくなる。また、錫の量が20原子%を超えると、電気抵抗が実用的な値より大きくなる。
【0014】
なお、図1は、アセチルアセトンにアセチルアセトンインジウムと塩化錫とを溶解した溶液をガラス基板に塗布し、これを400℃において10分間焼成して得た透明導電膜の表面抵抗を測定したものである。また、図1は、横軸が錫とインジウムとの原子比(単位:原子%)、縦軸が透明導電膜のシート抵抗(単位:オーム/□)である。
【0015】
実施形態の透明導電膜用組成物(溶液)を使用して透明導電膜を形成する場合、溶液をガラスなどの基板に塗布する。溶液の塗布は、基板を溶液に浸漬するいわゆるディップコート、基板を回転させて塗布するスピンコート、またはスリットコートなどによって行なってよい。そして、溶液の塗布膜を乾燥させ、これを焼成することにより透明導電膜とすることができる。焼成は、大気中で行なってよい。また、焼成温度は、使用する有機インジウム化合物によって異なり、有機インジウム化合物の熱分解温度以上である。例えば、有機インジウム化合物がアセチルアセトンインジウムである場合、この熱分解温度が250℃付近であるので、焼成温度は250℃以上にする。
なお、基板は、溶液を塗布する前に表面の親液処理をすることが望ましい。親液処理は、紫外線の照射や、真空中または大気中において酸素プラズマに晒すなどによって行なうことができる。
【0016】
【実施例】
実施形態に係る有機インジウム化合物と無機錫化合物とを溶媒に溶解した溶液(実施例溶液)と、従来の有機インジウム化合物と有機錫化合物とを溶媒に溶解した溶液(比較例溶液)とを用いて透明導電膜を形成し、両者の比較を行なった。使用した有機インジウム化合物は、いずれもアセチルアセトンインジウムであり、溶媒はアセチルアセトンである。また、実施形態の無機錫化合物は、塩化錫水和物(SnCl・HO)である。そして、比較例の有機錫化合物は、DBTDA(ジ−n‐ブチル錫ジアセタート)である。
【0017】
まず、アセチルアセトンインジウムをアセチルアセトンに溶解した。その後、この溶液をアセチルアセトンの沸点(約140℃)の近傍付近の温度で約1時間加熱して濃縮し、アセチルアセトンインジウムの濃度が0.3mol/Lの溶液にした。その後、濃縮した溶液に上記の塩化錫水和物を溶解し、インジウムと錫との原子比をIn/Sn=0.925/0.075に調整した実施例溶液を作成した。
【0018】
また、上記と同様にしてアセチルアセトンインジウムをアセチルアセトンに溶解し、その後、この溶液をアセチルアセトンの沸点近傍付近の温度で約1時間加熱して濃縮し、アセチルアセトンインジウムの濃度が0.3mol/Lの溶液にした。その後、濃縮した溶液にDBTDAを溶解し、インジウムと錫との原子比をIn/Sn=0.925/0.075に調整した比較例溶液を作成した。
【0019】
次に、2枚のガラス基板を大気圧酸素プラズマによって親液処理したのち、それぞれに上記の実施例溶液と比較例溶液とを別々に塗布した。溶液の塗布は、ディップコータを用いて行なった。そして、それぞれのガラス基板を室温で10分間乾燥し、塗布膜を顕微鏡で観察して両者のガラス基板に対する濡れ性を比較した。その結果、実施例溶液は、ガラス基板に良好に濡れ、乾燥したのちもほぼ均一な塗布膜を形成していた。これに対して、比較例溶液は、塗布時には良好に濡れ拡がるが、時間の経過とともに溶液が収縮するような弾き現象が生じ、溶質が析出して塗布膜が島状になった部分や、帯状になった部分が発生した。
【0020】
次に、上記の実施例溶液と比較例溶液とを用いてガラス基板に透明性導電膜を形成し、両者の比抵抗を測定した。透明導電膜の形成は、ガラス基板に溶液をディップコートしたのち、400℃において10分間の焼成を行なった。また、透明導電膜の膜厚を厚くするために、前記の焼成処理をして比抵抗を測定したのち、再び基板に溶液をディップコートし、400℃、10分間の焼成処理を行ない、比抵抗を測定する、という工程を複数回繰り返して透明導電膜の厚さを次第に厚くしていった。図2は、その結果を示したものである。図2の横軸は透明導電膜の厚さ(単位:nm)であり、縦軸は比抵抗(単位:Ω・cm)である。また、図2中、◆印は実施例の測定結果であり、●は比較例の測定結果である。
【0021】
図2に示されているように、実施例溶液によって形成した透明導電膜は、膜厚が10nm程度であっても比抵抗の測定が可能となり、約7×10−1Ω・cmの抵抗値を示す。これに対して、比較例溶液により形成した透明導電膜は、膜厚が10nm程度の場合、測定された比抵抗の値が無限大を示し、絶縁体であった。また、実施例の透明導電膜は、膜厚が85nm程度で比抵抗が5×10−2Ω・cm程度であった。しかし、比較例の透明導電膜においては、膜厚が90nm程度における比抵抗が7×10Ω・cm程度であった。したがって、塩化錫を添加した実施形態の透明導電膜は、DBTDAを添加した比較例の透明導電膜に対して、3桁程度比抵抗を小さくすることができる。
【0022】
さらに、実施例溶液と比較例溶液とを用いて厚さ1000オングストローム(100nm)の透明導電膜をガラス基板に形成し、それぞれの光透過率を測定した。膜厚1000オングストロームの透明導電膜の形成は、上記と同様にしてガラス基板に溶液をディップコートし、これを400℃、10分間焼成する工程を繰り返すことにより形成した。280〜800nmの光に対する透過率の測定結果を次に示す。
Figure 2004349105
このように、実施形態に係る透明導電膜は、可視光線の波長領域における光透過率が81%を示し、実用に支障がないことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】錫とインジウムとの量とシート抵抗との関係を示す図である。
【図2】実施例と従来例との比抵抗の比較図である。

Claims (4)

  1. 有機インジウム化合物と無機錫化合物とを溶媒に溶解させた溶液からなることを特徴とする透明導電膜用組成物。
  2. 請求項1に記載の透明導電膜用組成物において、前記無機錫化合物は、ハロゲン化錫であることを特徴とする透明導電膜用組成物。
  3. 請求項1または2に記載の透明導電膜用組成物において、前記溶液は、インジウムと錫とを原子比で0.8:0.2〜0.96:0.04含んでいることを特徴とする透明導電膜用組成物。
  4. 請求項1ないし3のいずれかに記載の透明導電膜用組成物を用いて形成したことを特徴とする透明導電膜。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2011102350A1 (ja) * 2010-02-17 2011-08-25 住友金属鉱山株式会社 透明導電膜の製造方法及び透明導電膜、それを用いた素子、透明導電基板並びにそれを用いたデバイス

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