JP2004347992A - 画像形成装置及びプロセスカートリッジ - Google Patents
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Abstract
【課題】形成する画像の高画質化及び画像形成速度の高速化が容易に実現可能であり、しかも長期にわたり画像形成プロセスを繰り返しても良好な画質の画像を得ることができる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】電子写真感光体12、帯電装置14、露光装置16、現像装置18及び転写装置24を備える画像形成装置であって、露光装置16は、面発光レーザアレイを露光光源として備え、8本以上のレーザビームを前記電子写真感光体上に走査させて前記静電潜像を形成させるマルチビーム方式の露光装置であり、電子写真感光体12の導電性支持体1から最も離れた位置に配置される最外部の層には、フッ素系樹脂7が含有されていることを特徴とする画像形成装置。
【選択図】 図1
【解決手段】電子写真感光体12、帯電装置14、露光装置16、現像装置18及び転写装置24を備える画像形成装置であって、露光装置16は、面発光レーザアレイを露光光源として備え、8本以上のレーザビームを前記電子写真感光体上に走査させて前記静電潜像を形成させるマルチビーム方式の露光装置であり、電子写真感光体12の導電性支持体1から最も離れた位置に配置される最外部の層には、フッ素系樹脂7が含有されていることを特徴とする画像形成装置。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機、プリンター及びファクシミリ等に用いられる画像形成装置及びプロセスカートリッジに関する。
【0002】
【従来の技術】
レーザビームプリンターやデジタル複写機等に用いられる露光手段としては、画像信号に応じたレーザビームを半導体レーザから出力させ、それを回転多面鏡(ポリゴンミラー)に反射させて電子写真感光体表面に照射させることにより静電潜像を形成する方法が挙げられる。
【0003】
このようなレーザビームを用いた露光手段の場合、1本のレーザビームによって出力画像の高精細化(高画質化)、高速化を実現するにはレーザビームの走査速度を速めることが必要となる。しかし、回転多面鏡の回転速度には限界があるため、出力画像の高精細化及び高速化を図ることが困難であった。
【0004】
このような問題を改善するために、複数本のレーザビームを電子写真感光体上に走査させる方法(以下、「マルチビーム方式」という)が提案されている。そして、このマルチビーム方式の画像形成装置は、以下の1)〜3)の利点から、画像形成プロセスの高速化に有効であると考えられている。
【0005】
1)n(nは自然数)本のレーザビームを用いた画像形成装置の場合には、レーザビームの走査速度とプリントスピードとを単一のレーザビームを用いた場合と等しく設定した場合は、走査線の密度をn倍にすることができ、高解像度の画像記録が可能となる。2)レーザビームの走査速度と走査線の密度を単一の場合と等しく設定した場合は、プリントスピードをn倍に高速化することが可能となる。3)プリントスピードとレーザビームの走査密度を単一の場合と等しく設定した場合は、各レーザビームの走査速度を低減すること(つまり、レーザビームを反射して反射ビームを電子写真感光体表面に照射させることにより静電潜像を形成するための回転多面鏡の回転数を1/n倍にすること)ができるため、回転多面鏡を回転駆動するための機構を簡略化してコストダウンが可能となる。
【0006】
このようなマルチビーム方式の画像形成装置としては、半導体基板の基板面に直行する端面よりレーザビームを射出する端面発光レーザを用いた画像形成装置が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。しかしながら、端面発光レーザは、走査線の間隔を微小に調整することが困難であるという問題を有しており、レーザビームの本数を増やすことが容易ではなく、画像の高画質化及び画像形成速度の高速化が不十分であった。
【0007】
そこで、マルチビーム方式の画像形成装置として、複数本のレーザビームを各々偏向して電子写真感光体等の被走査体上で同時に走査させ、1回の主走査で複数本の走査線の走査を行うことで画像を形成する構成の画像形成装置であって、露光装置の光源としてアレイ化が容易な面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Emitting Laser)を用い、同時に走査させるレーザビームの本数(レーザビームによって同時に走査される走査線の本数)を増加させることで、画像の高画質化及び画像形成速度の高速化を目指したものが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0008】
一方、画像形成装置においては、画像の高画質化及び画像形成速度の高速化のみならず、高画質の画像を長期にわたり安定して形成可能とするための長寿命化も要求されている。画像形成装置の寿命は、これに搭載される感光体の寿命に大きく依存する場合が多く、それは電子写真プロセスにおいての、帯電、露光、現像、転写、クリーニングの反復過程で機械的、化学的作用を受け感光体の画像形成特性が徐々に劣化することに起因することが知られている。
【0009】
ここで、化学的劣化による画質低下は、上記反復過程で発生するオゾンによる、感光体中のバインダー樹脂の酸化の進行及び電荷移動物質の酸化の進行により起こることが知られている。また、機械的劣化による画質低下は、上述の電子写真プロセスの反復過程で生じる、堆積物等による感光体の摩耗の進行及び/又は傷の発生により起こることが知られている。特に、画像形成速度の高速化及び装置の小型化を目指すことに伴って感光体が小径化されると、上記反復過程での感光体の使用条件がより厳しくなり機械的劣化による画質低下が顕著になる。
【0010】
例えば、クリーニング部でゴムブレードが使用される場合には、感光体を十分にクリーニングする観点からゴムブレードの当接圧力が大きくなるため、感光体の摩耗の進行が促進され、上記反復過程での感光体の電位変動、感度変動が生じ、これにより異常画像が形成されたり、カラー画像の場合にはその色バランスがくずれて十分な色再現性が得られなくなるという問題が発生していた。
【0011】
このような問題を改善するための方法としては、例えば、感光層の膜厚を厚くすることにより、感光体の摩耗に対する余裕度を高める方法が知られている。
【0012】
【特許文献1】
特開2002−107988号公報
【特許文献2】
特開2002−303997号公報
【特許文献3】
特開平5−294005号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、先に述べた特許文献3に記載の画像形成装置のように露光装置の光源として面発光レーザを用いる画像形成装置では、下記2つの理由により感光体上での光量が低下する欠点があることを本発明者らは見出した。
【0014】
すなわち、一つめの理由は、面発光レーザアレイ自体のキャビティーの容積が小さいために発光点一つ当たりの発光量を十分に得ることができないことである。二つめの理由は、発光点が近接している面発光レーザアレイを利用しつつ同時に感光体上での所望のビーム径を得る観点から、走査光学系中にアパーチャを備える必要があり、そのために光量が低下することである。また、アパーチャを使用する場合、形成する画像の更なる高解像度化を図るためには、より小さなアパーチャを使用しなければならないので、更に光量が低下することとなる。
【0015】
また、先に述べたように感光体の長寿命化を図るために感光層の膜厚を厚くした場合、現在主流となっている電荷発生層及び電荷輸送層からなる積層構造の感光層を備える感光体では、電荷の輸送を担う上記電荷輸送層の膜厚を厚くすると電荷移動の際に電荷が散逸して潜像の乱れが生じ、これに起因して解像度が低下するという問題が発生する。更に、このような方法では膜厚変動に起因する感光体の電位変動、感度変動の発生を防止することが困難であり、加えて、装置の小型化を図ることが困難であった。
【0016】
すなわち、面発光レーザアレイを光源として使用した走査光学系を有する露光装置を搭載した画像形成装置においては、画像の形成速度の高速化ができると同時に、形成する画像の高画質化(高解像度化)を図り、且つ、その画質を長期にわたり良好な状態に保持すること(長寿命化)が困難であった。
【0017】
例えば、高画質化を達成させるためには、感光層は、薄くすることが好ましいが、この場合には長期にわたる繰り返し使用に伴って感光体の摩耗による画像品質の低下が顕著になる。特に、面発光レーザアレイを光源として使用した画像形成装置においては、先に述べたように露光の光量が比較的少なくなるため、感光層の僅かな磨耗が、感光体の電位変動、感度変動、特に低感度化を起こしていた。また、例えば、画像形成装置の小型化を図る観点から感光体の小径化を行うと、接触型の帯電器を使用することが必要になる傾向があること、及び、画像形成のサイクル数が増える傾向があること等から、感光体の摩耗の進行が促進され易く、感光体の寿命が短くなっていた。
【0018】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、形成する画像の高画質化及び画像形成速度の高速化が容易に実現可能であり、しかも長期にわたり画像形成プロセスを繰り返しても良好な画質の画像を得ることができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、搭載する露光装置として、8本以上のレーザビームを電子写真感光体上に走査させることが可能な面発光レーザアレイを有するものを用い、且つ、搭載する上記電子写真感光体として、導電性支持体及び該支持体の上方に配置される感光層を少なくとも有し、前記導電性支持体から最も離れた位置に配置される最外部の層にフッ素系樹脂が含有されてなるものを用いることによって、上述の目的を達成可能な画像形成装置が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0020】
すなわち、本発明は、導電性支持体及び該支持体の上方に配置される感光層を少なくとも有する電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電装置と、前記帯電装置により帯電される前記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光装置と、前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成させる現像装置と、前記トナー像を前記電子写真感光体から被転写媒体に転写する転写装置と、を備える画像形成装置であって、前記露光装置は、面発光レーザアレイを露光光源として備え、8本以上のレーザビームを前記電子写真感光体上に走査させて前記静電潜像を形成させるマルチビーム方式の露光装置であり、前記電子写真感光体の前記導電性支持体から最も離れた位置に配置される最外部の層には、フッ素系樹脂が含有されていることを特徴とする画像形成装置を提供する。
【0021】
かかる画像形成装置によれば、マルチビーム方式の静電潜像を形成する方法、特に、アレイ化が容易な面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Emitting Laser)を光源として用い、同時に走査させるレーザビームの本数を8本以上とすることにより、画質の向上と画像形成速度の高速化とを実現することができる。また、この場合、記録密度を高めることもできる。
【0022】
更に、本発明の画像形成装置における面発光レーザアレイは、主走査方向に3行以上、副走査方向に3列以上のレーザビーム発生源が2次元的に配置された構造を有するものであることが好ましい。これにより、画質の向上と画像形成速度の高速化をより確実に実現することが可能となる傾向がある。
【0023】
また、1つのビームを音響素子により擬似的に複数ビームとすると、電子写真感光体上に形成される静電潜像の中に露光終了までの光ビームの走査回数(照射回数)が異なる領域が混在し、各領域間での照射回数の相違が画像上に筋状の濃度ムラとして視認されることがあるが、面発光レーザアレイを利用することでビーム数を増やしても露光時間は減少することがなく、筋状の濃度ムラを十分に低減し画像の高画質化を図ることができ、同時に画像形成速度の高速化を容易に実現することができる。
【0024】
更に、本発明の画像形成装置によれば、搭載される電子写真感光体において、導電性支持体から最も離れた位置に配置される最外部の層にフッ素系樹脂を含有させることにより、電子写真プロセスにおいての、帯電、露光、現像、転写、クリーニングの反復過程で生じる感光層の摩耗の進行を十分に抑制し、感光体の長寿命化を図ることが可能となる。そして、上述の面発光レーザアレイを用いた際に、その露光の光量が少ないことに起因して顕著となる、感光層の摩耗の進行に伴って発生する感光体の電位変動、感度変動を十分に防止することができ、画像品質の低下を十分に抑制することが可能となる。また、面発光レーザの欠点である、可変光量が少なく制御幅が狭いことを補うことができる。更に、本発明の画像形成装置によれば、感光層を薄膜化することが可能なため、装置の小型化に有用であるとともに、静電潜像形成時の電荷の拡散による画像品質の低下を十分に抑制することができる。
【0025】
したがって、本発明の画像形成装置によれば、形成する画像の高画質化、画像形成速度の高速化、及び装置の小型化が容易に実現可能であり、しかも長期にわたり画像形成プロセスを繰り返しても良好な品質の画像を得ることができる。例えば、本発明の画像形成装置によれば、記録密度1200dot/inch(dpi)以上の高解像度の画像品質を長期にわたり形成することも可能である。
【0026】
また、本発明の効果をより確実に得る観点から、前記フッ素系樹脂は、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、6フッ化エチレンプロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂及び2フッ化2塩化エチレン樹脂からなる群より選択される少なくとも一種の樹脂、及び/又は、4フッ化エチレン、3フッ化塩化エチレン、6フッ化エチレンプロピレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン及び2フッ化2塩化エチレンからなる群より選択される少なくとも二種のモノマーに基づく繰り返し単位を有する共重合体を含有してなるものであることが好ましく、前記帯電装置は、前記電子写真感光体に接触して該電子写真感光体を帯電させる接触帯電装置であることが好ましい。
【0027】
また、本発明は、導電性支持体及び該支持体の上方に配置される感光層を少なくとも有する電子写真感光体と、帯電装置、現像装置、転写装置及びクリーニング装置のうちの少なくとも一つの装置と、を一体に有し、露光装置を備える画像形成装置に着脱自在であるプロセスカートリッジであって、前記露光装置は、面発光レーザアレイを有し、8本以上のレーザビームを前記電子写真感光体上に走査させて前記静電潜像を形成させるマルチビーム方式の露光装置であり、前記電子写真感光体の前記導電性支持体から最も離れた位置に配置される最外部の層には、フッ素系樹脂が含有されていることを特徴とするプロセスカートリッジを提供する。
【0028】
かかるプロセスカートリッジは、上記面発光レーザアレイを有する露光装置が搭載された画像形成装置に装着され、上記構成を有する電子写真感光体を搭載していることにより、画像の高画質化、画像形成速度の高速化及び装置の小型化が容易に実現可能であり、しかも長期にわたり画像形成プロセスを繰り返しても良好な品質の画像を得ることができる。
【0029】
また、画像の高画質化及び画像形成速度の高速化をより確実に実現する観点から、本発明のプロセスカートリジが搭載されるべき画像形成装置における面発光レーザアレイは、主走査方向に3行以上、副走査方向に3列以上のレーザビーム発生源が2次元的に配置された構造を有するものであることが好ましい。
【0030】
更に、本発明の効果をより確実に得る観点から、前記フッ素系樹脂は、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、6フッ化エチレンプロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂及び2フッ化2塩化エチレン樹脂からなる群より選択される少なくとも一種の樹脂、及び/又は、4フッ化エチレン、3フッ化塩化エチレン、6フッ化エチレンプロピレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン及び2フッ化2塩化エチレンからなる群より選択される少なくとも二種のモノマーに基づく繰り返し単位を有する共重合体を含有してなるものであることが好ましく、前記帯電装置は、前記電子写真感光体に接触して該電子写真感光体を帯電させる接触帯電装置であることが好ましい。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0032】
(画像形成装置)
まず、本発明の画像形成装置の好適な一実施形態について説明する。図1は、本発明の画像形成装置の好適な一実施形態を示す概略構成図である。
【0033】
図1に示した画像形成装置10は電子写真感光体12を備えるもので、電子写真感光体12は、駆動装置(図示せず)により所定の回転速度で矢印Aの向きに回転可能となっている。電子写真感光体12の略上方には、電子写真感光体12の外周面を帯電させる帯電器14が設けられている。
【0034】
また、帯電器14の略上方には露光装置(レーザビーム走査装置)16が配置されている。詳細は後述するが、露光装置16は、光源から射出される複数本のレーザビームを、形成すべき画像に応じて変調すると共に、主走査方向に偏向し、帯電器14により帯電した電子写真感光体12の外周面上を電子写真感光体12の軸線と平行に走査させる。
【0035】
電子写真感光体12の側方には現像装置18が配置されている。現像装置18は回転可能に配置されたローラ状の収容体を備えている。この収容体の内部には4個の収容部が形成されており、各収容部には現像器18Y,18M,18C,18Kが設けられている。現像器18Y,18M,18C,18Kは各々現像ローラ20を備え、内部に各々イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)の各色のトナーを貯留している。
【0036】
また、電子写真感光体12の略下方には無端の中間転写ベルト24が配設されている。中間転写ベルト24はローラ26,28,30に巻掛けられており、外周面が電子写真感光体12の外周面に接触するように配置されている。ローラ26〜30はモータ(図示せず)の駆動力が伝達されて回転し、中間転写ベルト24を矢印Bの向きに回転させる。
【0037】
中間転写ベルト24を挟んで電子写真感光体12の反対側には転写器32が配置されている。電子写真感光体12の外周面上に形成されたトナー像は転写器32によって中間転写ベルト24の画像形成面に転写される。
【0038】
中間転写ベルト24よりも下方側にはトレイ34が配置されており、トレイ34内には記録材料としての用紙Pが多数枚積層された状態で収容されている。図1におけるトレイ34の左斜め上方には取り出しローラ36が配置されており、取り出しローラ36による用紙Pの取り出し方向下流側にはローラ対38、ローラ40が順に配置されている。積層状態で最も上方に位置している記録紙は、取り出しローラ36が回転されることによりトレイ34から取り出され、ローラ対38、ローラ40によって搬送される。
【0039】
また、中間転写ベルト24を挟んでローラ30の反対側には転写器42が配置されている。ローラ対38、ローラ40によって搬送された用紙Pは、中間転写ベルト24と転写器42の間に送り込まれ、中間転写ベルト24の画像形成面に形成されたトナー像が転写器42によって転写される。転写器42よりも用紙Pの搬送方向下流側には、定着ローラ対を備えた定着器44が配置されており、トナー像が転写された用紙Pは、転写されたトナー像が定着器44によって溶融定着された後に画像形成装置10の機体外へ排出され、排紙トレイ(図示せず)上に載置される。
【0040】
また、電子写真感光体12を挟んで現像装置18の反対側には、電子写真感光体12の外周面を除電する機能及び外周面上に残留している不要トナーを除去する機能を備えた除電・清掃器22が配置されている。電子写真感光体12の外周面上に形成されたトナー像が中間転写ベルト24に転写されると、電子写真感光体12の外周面のうち転写されたトナー像を担持していた領域は、除電・清掃器22によって清掃される。
【0041】
図1に示した画像形成装置10では、電子写真感光体12が4回転する回転過程においてフルカラー画像の形成が行われる。すなわち、電子写真感光体12が4回転する間、帯電器14は電子写真感光体12の外周面の帯電、除電・清掃器22は外周面の除電を継続し、露光装置16は、形成すべきカラー画像を表すY,M,C,Kの画像データのうちの何れかに応じて変調したレーザビームを電子写真感光体12の外周面上で走査させることを、電子写真感光体12が1回転する毎にレーザビームの変調に用いる画像データを切替えながら繰り返す。また、現像装置18は、現像器18Y,18M,18C,18Kの何れかの現像ローラ20が電子写真感光体12の外周面に対応している状態で、外周面に対応している現像器を作動させ、電子写真感光体12の外周面に形成された静電潜像を特定の色に現像し、電子写真感光体12の外周面上に特定色のトナー像を形成させることを、電子写真感光体12が1回転する毎に、静電潜像の現像に用いる現像器が切り替わるように収容体を回転させながら繰り返す。
【0042】
これにより、電子写真感光体12が1回転する毎に、電子写真感光体12の外周面上には、Y,M,C,Kのトナー像が互いに重なるように順次形成されることになり、電子写真感光体12が4回転した時点で電子写真感光体12の外周面上にフルカラーのトナー像が形成されることになる。
【0043】
このように、複数本のレーザビームを電子写真感光体上に走査させて静電潜像を形成させるマルチビーム方式の露光装置14と共に、先に述べた構成を有する電子写真感光体12を用いることによって、画像の画質の向上、画像形成速度の高速化、及び装置の小型化が容易に実現可能であり、しかも長期にわたり画像形成プロセスを繰り返しても良好な画質の画像を得ることができる。
【0044】
次に、電子写真感光体12の好ましい例について詳述する。
【0045】
図2〜5は、それぞれ電子写真感光体12の好適な一例を示す模式断面図であり、導電性支持体1と感光層4との積層方向に沿って電子写真感光体12を切断したときの部分断面図である。
【0046】
図2〜5に示す電子写真感光体12は、電荷発生材料を含有する層(電荷発生層2)と電荷輸送材料を含有する層(電荷輸送層3)とに機能が分離された感光層4を備えるものである。
【0047】
図2に示す電子写真感光体12は、導電性支持体1上に電荷発生層2、電荷輸送層3が順次積層された構造を有するものである。
【0048】
図3に示す電子写真感光体12は、導電性支持体1上に下引層5、電荷発生層2、電荷輸送層3が順次積層された構造を有するものである。
【0049】
図4に示す電子写真感光体12は、導電性支持体1上に電荷発生層2、電荷輸送層3、保護層6が順次積層された構造を有するものである。
【0050】
図5に示す電子写真感光体12は、導電性支持体1上に下引層5、電荷発生層2、電荷輸送層3、保護層6が順次積層された構造を有するものである。
【0051】
そして、電子写真感光体12において導電性支持体1から最も離れた位置に配置されている最外部の層(図2及び3に示す感光体では電荷輸送層3、図4及び5に示す感光体では保護層6)には、フッ素系樹脂7が含有されている。
【0052】
以下、このような電子写真感光体12を構成する各要素について詳述する。
【0053】
まず、導電性支持体12について説明する。導電性支持体12の材質としては、導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼等の金属類;アルミニウム、チタニウム、ニッケル、クロム、ステンレス、金、バナジウム、酸化錫、酸化インジウム、ITO(酸化インジウムスズ)等の薄膜を設けたプラスチックフィルム;導電性付与剤を塗布又は含浸させた紙又はプラスチックフィルム、等が挙げられる。これらの導電性支持体の形状としては特に制限されないが、例えば、ドラム状、シート状、プレート状等の形状で使用される。
【0054】
また、導電性支持体1として金属パイプを用いる場合、金属パイプは素管のまま用いてもよいが、予め鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニング、着色処理等の処理を施したものを用いることが好ましい。表面処理により基材表面を粗面化することで、レーザビームのような可干渉光源を用いた場合に発生しうる感光体内での干渉光による木目状の濃度斑を防止することができる。
【0055】
次に、下引層5について説明する。下引層5は、積層構造を有する感光層4の帯電の際に、導電性支持体1から感光層4への電荷の注入を阻止するとともに、感光層4を導電性支持体1に対して一体的に接着保持せしめる接着層としての作用を有するものである、また、下引層5は、場合によっては導電性支持体1の光の反射防止作用等示すことができる。かかる効果を有し、高画質な画像を維持する観点から、本発明にかかる電子写真感光体12は、下引層5を備えていることが好ましい。
【0056】
下引層5の材料としては、ポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂等の高分子樹脂化合物、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等が挙げられる。また、電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂等を用いることができる。これらの化合物は単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いることができる。中でも上層(例えば、電荷発生層2)形成用塗布液に含まれる溶剤に不溶な樹脂が好ましく用いられ、特にフェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。更に、ジルコニウムキレート化合物、シランカップリング剤は残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少ないなど性能上優れている。
【0057】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらの中でも、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシシラン)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。
【0058】
ジルコニウムキレート化合物としては、例えば、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
【0059】
チタニウムキレート化合物としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0060】
アルミニウムキレート化合物としては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0061】
下引層5中には、感光体特性向上のために、導電性物質を含有させることができる。導電性物質としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫等の金属酸化物等が挙げられるが、所望の感光体特性が得られるのであれば、公知のいかなるものでも使用することができる。
【0062】
これらの金属酸化物には表面処理を施すことができる。表面処理を施すことで、抵抗値の制御、分散性制御、感光体特性向上を図ることができる。表面処理剤としては、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料を用いることができる。これらの化合物は単独あるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いることができる。中でもシランカップリング剤は残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少ない、画質特性に優れるなど性能上優れている。
【0063】
シランカップリング剤、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物の例としては前述した例と同じ物質が挙げられる。
【0064】
表面処理方法は公知の方法であればいかなる方法でも使用可能であるが、乾式法あるいは湿式法を用いることができる。
【0065】
乾式法により表面処理を施す場合、金属酸化物微粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、シランカップリング剤を直接又は有機溶媒に溶解させて滴下し、それらの混合物を乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させることによって、均一な表面処理が行われる。シランカップリング剤の滴下及び混合物の噴霧は、使用する溶剤の沸点以下の温度で行うことが好ましい。滴下又は噴霧を溶剤の沸点以上の温度で行うと、均一に攪拌される前に溶剤が蒸発し、シランカップリング剤が局部的に凝集して均一な処理ができにくくなる傾向がある。
【0066】
このようにして表面処理された金属酸化物粒子について、更に100℃以上で焼き付けを行うことができる。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。湿式法としては、金属酸化物微粒子を溶剤中に攪拌、超音波、サンドミルやアトライター、ボールミル等を用いて分散し、シランカップリング剤溶液を添加して、攪拌又は分散した後、溶剤を除去することで均一に処理される。溶剤は蒸留により留去することが好ましい。なお、ろ過による除去方法では未反応のシランカップリング剤が流出しやすく、所望の特性を得るためのシランカップリング剤量をコントロールしにくくなる傾向がある。溶剤除去後には更に100℃以上で焼き付けを行うことができる。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。湿式法においては金属酸化物微粒子含有水分除去法として表面処理に用いる溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法等を用いることもできる。
【0067】
下引層5中の金属酸化物微粒子に対するシランカップリング剤の量は、所望の電子写真特性が得られる量であればいかなる量でも用いることができる。また、下引層5中に用いられる金属酸化物微粒子と樹脂との割合は、所望の電子写真特性が得られる割合であれば任意に設定できる。
【0068】
下引層5中には、光散乱性の向上等の目的により、各種の有機もしくは無機微粉末を混合することができる。かかる微粉末の好ましい例としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、リトポン等の白色顔料や、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の体質顔料としての無機顔料や、テフロン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、スチレン樹脂粒子等が挙げられる。これらの微粉末の粒径は、0.01〜2μmであることが好ましい。微粉末は必要に応じて添加される成分であるが、添加する場合の配合量は、下引層5に含まれる固形分に対して、質量比で10〜80質量%であることが好ましく、30〜70質量%であることがより好ましい。
【0069】
また、下引層5の形成に用いられる塗布液(下引層形成用塗布液)には、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加物を用いることができる。添加物としては、クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物等の電子輸送性物質、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料等が挙げられる。
【0070】
下引層形成用塗布液を調製するに際し、前述の導電性物質や光散乱物質等の微粉末を混入させる場合には、樹脂成分を溶解した溶液中に微粉末を添加して分散処理が行うことが好ましい。微粉末を樹脂中に分散させる方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー等の方法を用いることができる。
【0071】
また、下引層形成用塗布液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0072】
下引層5の膜厚は、好ましくは0.01〜50μm、より好ましくは0.05〜30μmである。
【0073】
次に、電荷発生層2について説明する。電荷発生層2は、電荷発生材料及び結着樹脂を含んで構成される。
【0074】
かかる電荷発生材料としては、公知の電荷発生材料を特に制限なく使用することができるが、中でも金属及び無金属フタロシアニン顔料が好ましく用いられ、特定の結晶を有するヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ジクロロスズフタロシアニン、チタニルフタロシアニンが特に好ましく用いられる。
【0075】
電荷発生層2において好ましく用いられる電荷発生材料は、公知の方法で製造される顔料結晶を、自動乳鉢、遊星ミル、振動ミル、CFミル、ローラーミル、サンドミル、及びニーダー等を用いて機械的に乾式粉砕するか、乾式粉砕後、溶剤と共にボールミル、乳鉢、サンドミル、及びニーダー等を用いて湿式粉砕処理を行うことによって製造することができる。
【0076】
湿式粉砕処理において使用される溶剤は、芳香族類(トルエン、クロロベンゼン等)、アミド類(ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等)、脂肪族アルコール類(メタノール、エタノール、ブタノール等)、脂肪族多価アルコール類(エチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等)、芳香族アルコール類(ベンジルアルコール、フェネチルアルコール等)、エステル類(酢酸エステル、酢酸ブチル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、ジメチルスルホキシド、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、又はこれらの数種の混合系、あるいは水とこれら有機溶剤との混合系が挙げられる。
【0077】
これら溶剤の使用量は、顔料結晶1質量部に対して1〜200質量部、好ましくは10〜100質量部が望ましい。また、湿式粉砕処理における処理温度は、0℃以上溶剤の沸点以下、好ましくは10〜60℃である。また、粉砕の際に食塩、ぼう硝等の磨砕助剤を用いてもよい。磨砕助剤は、顔料に対して0.5〜20倍、好ましくは1〜10倍(いずれも質量換算値)用いればよい。
【0078】
また、公知の方法で製造される顔料結晶について、アシッドペースティング又はアシッドペースティングと前述したような乾式粉砕又は湿式粉砕との組み合わせによって結晶制御することもできる。アシッドペースティングに用いる酸としては、硫酸が好ましく、この硫酸の濃度は70〜100%、好ましくは95〜100%の濃度のものが使用される。この濃硫酸の量は、顔料結晶の質量に対して、1〜100倍、好ましくは3〜50倍(いずれも質量換算値)の範囲に設定される。また、溶解温度は、−20〜100℃、好ましくは0〜60℃の範囲に設定される。結晶を酸から析出させる際の溶剤としては、水、或いは水と有機溶剤の混合溶剤を任意の量で使用できる。析出させる温度については特に制限はないが、発熱を防ぐために、氷等で冷却することが好ましい。
【0079】
これらの電荷発生材料は、加水分解性基を有する有機金属化合物又はシランカップリング剤で被覆処理してもよい。かかる被覆処理によって電荷発生材料の分散性や電荷発生層用塗布液の塗布性が向上し、平滑で分散均一性の高い電荷発生層2を容易に且つ確実に成膜することができ、その結果、カブリやゴースト等の画質欠陥が防止され、画質維持性を向上させることができる。また、電荷発生層用塗布液の保存性も著しく向上するので、ポットライフの延長の点でも効果的であり、感光体のコストダウンも可能となる。
【0080】
上記加水分解性基を有する有機金属化合物は、下記一般式(I):
Rp−M−Yq (I)
で表される化合物である。なお、式中、Rは有機基を表し、Mはアルカリ金属以外の金属原子又はケイ素原子を表し、Yは加水分解性基を表し、p及びqはそれぞれ1〜4の整数であり、pとqとの和はMの原子価に相当する。
【0081】
一般式(I)中、Rで表される有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアリールアルキル基、スチリル基等のアリールアルケニル基、フリル基、チエニル基、ピロリジニル基、ピリジル基、イミダゾリル基等の複素環残基等が挙げられる。これらの有機基は1または2種以上の各種の置換基を有していてもよい。
【0082】
また、一般式(I)中、Yで表される加水分解性基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、シクロヘキシルオキシ基、フェノキシ基、ベンジロキシ基等のエーテル基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、ベンゾイルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基、ベンジロキシカルボニル基等のエステル基、塩素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
【0083】
また、一般式(I)中、Mはアルカリ金属以外であれば特に制限されるものではないが、好ましくはチタン原子、アルミニウム原子、ジルコニウム原子又はケイ素原子である。すなわち、本発明に係る感光体においては、上記の有機基や加水分解性の官能基を置換した有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物、有機ジルコニウム化合物、さらにはシランカップリング剤が好ましく用いられる。
【0084】
また、上記シランカップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシシラン)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ。
【0085】
これらの中でも、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシランがより好ましい。
【0086】
また、上記の有機金属化合物及びシランカップリング剤の加水分解生成物も使用することができる。この加水分解生成物としては、上記一般式(I)で示される有機金属化合物のM(アルカリ金属以外の金属原子又はケイ素原子)に結合するY(加水分解性基)やR(有機基)に置換する加水分解性基が加水分解したものが挙げられる。なお、有機金属化合物及びシランカップリング剤が加水分解性基を複数含有する場合は、必ずしも全ての官能基を加水分解する必要はなく、部分的に加水分解された生成物であってもよい。また、これらの有機金属化合物及びシランカップリング剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
【0087】
上記の加水分解性基を有する有機金属化合物及び/又はシランカップリング剤(以下、単に「有機金属化合物」という)を用いてフタロシアニン顔料を被覆処理する方法としては、フタロシアニン顔料の結晶を整える過程で該フタロシアニン顔料を被覆処理する方法、フタロシアニン顔料を結着樹脂に分散する前に被覆処理する方法、フタロシアニン顔料の結着樹脂への分散時に有機金属化合物を混合処理する方法、フタロシアニン顔料の結着樹脂への分散後に有機金属化合物で更に分散処理する方法等が挙げられる。
【0088】
より具体的には、顔料の結晶を整える過程で予め被覆処理する方法としては、有機金属化合物と結晶が整う前のフタロシアニン顔料とを混合した後加熱する方法、有機金属化合物を結晶が整う前のフタロシアニン顔料に混合し機械的に乾式粉砕する方法、有機金属化合物の水または有機溶剤中の混合液を結晶が整う前のフタロシアニン顔料に混合し湿式粉砕処理方法等が挙げられる。
【0089】
また、フタロシアニン顔料を結着樹脂に分散する前に被覆処理する方法としては、有機金属化合物、水又は水と有機溶剤との混合液、並びにフタロシアニン顔料を混合して加熱する方法、有機金属化合物をフタロシアニン顔料に直接噴霧する方法、有機金属化合物をフタロシアニン顔料と混合しミリングする方法等がある。
【0090】
また、分散時に混合処理する方法としては、分散溶剤に有機金属化合物、フタロシアニン顔料、結着樹脂を順次添加しながら混合する方法、これらの電荷発生層2形成成分を同時に添加し混合する方法等が挙げられる。
【0091】
また、フタロシアニン顔料を結着樹脂中に分散した後に有機金属化合物で更に分散処理する方法としては、例えば溶剤で希釈した有機金属化合物を分散液に添加し攪拌しながら分散する方法が挙げられる。また、かかる分散処理の際、より強固にフタロシアニン顔料に付着させるために、触媒として硫酸、塩酸、トリフルオロ酢酸等の酸を添加してもよい。
【0092】
これらの中でも、フタロシアニン顔料の結晶を整える過程で予め被覆処理する方法、又はフタロシアニン顔料を結着樹脂に分散する前に被覆処理する方法が好ましい。
【0093】
電荷発生層2に用いる結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択することができる。また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーから選択することもできる。好ましい結着樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノールAとフタル酸との重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等の絶縁性樹脂を挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの結着樹脂は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。電荷発生材料と結着樹脂との配合比(質量比)は、10:1〜1:10の範囲が好ましい。
【0094】
電荷発生層2は、例えば、電荷発生材料及び結着樹脂を含む塗布液の塗布により形成される。塗布液の溶媒としては、結着樹脂を溶解することが可能であれば特に制限なく使用することができ、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を単独で又は2種以上混合して用いることができる。
【0095】
電荷発生材料及び結着樹脂を溶媒に分散させる方法としては、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の通常の方法を用いることができるが、この際、分散によって電荷発生材料の結晶型が変化しない条件で行うことが好ましい。また、この分散の際、電荷発生材料を好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.3μm以下、更に好ましくは0.15μm以下の粒子サイズにすることが有効である。
【0096】
また、かかる塗布液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法が挙げられる。
【0097】
電荷発生層2の膜厚は、好ましくは0.1〜5μm、より好ましくは0.2〜2.0μmである。
【0098】
次に、電荷輸送層3について説明する。電荷輸送層3は、電荷輸送材料及び結着樹脂を含み、電子写真感光体12が保護層6を有さない場合には、先に述べたようにフッ素系樹脂7を更に含んで構成されるものである。
【0099】
かかるフッ素系樹脂7としては、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、6フッ化プロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、2フッ化2塩化エチレン樹脂及びこれらの樹脂を構成する単量体の2種以上からなる共重合体からなる群から選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。
【0100】
本発明にかかるフッ素系樹脂7は、通常、粒子形状を有しているが、その平均一次粒径としては、好ましくは0.05〜1μmであり、より好ましくは0.1〜0.5μmである。平均一次粒径が0.05μm未満では、分散時の凝集が起こりやすくなる傾向があり、1μmを超えると、形成する画像の画質欠陥が発生し易くなる傾向がある。
【0101】
更に、電荷輸送層3中のフッ素系樹脂7の含有量は、電荷輸送層3に含まれる固形分全量を基準として、0.1〜40質量%であることが好ましく、1〜30質量%であることがより好ましい。含有量が1質量%未満では、フッ素系樹脂7による改質効果が不十分となり、感光体の長寿命化が不十分となる傾向があり、40質量%を越えると、光通過性が低下や繰返し使用による残留電位の上昇が起こりやすくなる傾向がある。
【0102】
電荷輸送層3に用いる電荷輸送材料としては、例えば、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、トリ(p−メチルフェニル)アミニル−4−アミン、ジベンジルアニリン等の芳香族第3級アミノ化合物、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4’−ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4’−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジン等の1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリン等のキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N−ジフェニルアニリン等のα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体等の正孔輸送物質;クロラニル、ブロアントラキノン等のキノン系化合物、テトラアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物等の電子輸送物質;あるいは上記化合物から水素原子等を除いた残基を主鎖又は側鎖に有する重合体等が挙げられる。これらの電荷輸送材料は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0103】
電荷輸送層3に用いる結着樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリアリレート、ポリエステル樹脂、ビスフェノールAタイプ或いはビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリスルホン、ポリアクリルアミド、ポリアミド、塩素ゴム等の絶縁性樹脂、およびポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等の有機光導電性ポリマー等が挙げられる。これらの結着樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0104】
電荷輸送層3は、上記の電荷輸送材料及び結着樹脂を所定の溶媒に溶解及び/又は分散させ、そこに上記のフッ素系樹脂7を加えて分散させた塗布液を塗布し乾燥することによって形成することができる。塗布液に用いる溶媒としては、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n―ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状又は直鎖状エーテル系溶剤、あるいはこれらの混合溶剤等を用いることができる。電荷輸送材料と結着樹脂との配合比(質量比)は10:1〜1:5が好ましい。
【0105】
塗布液を調製する際にフッ素系樹脂7を分散させる方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、高圧ホモジナイザー、超音波分散機、コロイドミル、衝突式メディアレス分散機、貫通式メディアレス分散機等の方法を用いることができる。
【0106】
また、塗布液を調製する際に、フッ素系樹脂7の分散安定性を向上させ、且つ塗膜形成時の凝集を防止する観点から、分散助剤を更に添加することが好ましい。かかる分散助剤としては、フッ素系界面活性剤、フッ素系ポリマー、シリコーン系ポリマー、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0107】
このような塗布液を塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、スプレー塗布法、ロールコータ塗布法、グラビアコータ塗布法等が挙げられる。また、電荷輸送層3の膜厚は、5〜50μmであることが好ましく、10〜35μmであることがより好ましい。
【0108】
また、電子写真感光体12においては、通常、導電性支持体1から近い順に電荷発生層2、電荷輸送層3が積層されているが、これらの層の順序は逆であってもよい。この場合には、電子写真感光体12において導電性支持体1から最も離れた位置に配置される最外部の層が電荷発生層2となるため、上記フッ素系樹脂7は該電荷発生層2に含有させることになる。このとき、電荷発生層2におけるフッ素系樹脂7の含有量や分散方法等については、上述した電荷輸送層3に含有させる場合と同様の条件を採用することが好ましい。また、フッ素系樹脂7は、電荷発生層2及び電荷輸送層3の両方に含有させていてもよい。更に、電荷発生層2と電荷輸送層3との間に他の層が存在していてもよい。
【0109】
また、本発明にかかる電子写真感光体12において、感光層4は電荷輸送材料及び電荷発生材料を同一の層に含有する単層構造を有するものであってもよい。この場合には、当該感光層4にフッ素系樹脂7を含有させればよく、このときのフッ素系樹脂7の含有量や分散方法等についても、上述した電荷輸送層3に含有させる場合と同様の条件を採用することが好ましい。なお、本発明にかかる電子写真感光体12においては、保護層6が設けられている場合、最外部の層、すなわち、保護層6にフッ素系樹脂7を含有させる必要がある。
【0110】
次に、保護層6について説明する。保護層6は、必要に応じて設けられる層であり、かかる層を設けることにより、積層構造を有する感光層4の帯電の際に、電荷輸送層3の化学的変化を防止したり、感光層4の機械的強度を向上することができる傾向がある。
【0111】
この保護層6としては、例えば、電荷輸送機能を有する高分子にシリコーンハードコート剤をハイブリッドさせたもの、高分子化合物中に金属酸化物等の微粒子を分散させたもの、導電性高分子化合物等の保護層6を形成する基材となる材料に、上述したフッ素系樹脂7を分散させたものが挙げられる。このときの保護層6におけるフッ素系樹脂7の含有量や分散方法等については、上述した電荷輸送層3に含有させる場合と同様の条件を採用することが好ましい。また、保護層6の膜厚は、好ましくは0.05〜20μmである。
【0112】
本発明にかかる電子写真感光体12においては、画像形成装置10中で発生するオゾンやNOX、あるいは光や熱による感光体の劣化を防止する目的で、感光層4、保護層6等に酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等の添加剤を添加することができる。
【0113】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノンおよびそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機リン化合物等が挙げられる。
【0114】
光安定剤としては、ベンゾフェノン、ベンゾアゾール、ジチオカルバメート、テトラメチルピペン等の誘導体が挙げられる。
【0115】
また、電子写真感光体12の表面の平滑性を向上させる目的で、電子写真感光体12における最外部の層中にシリコーンオイル等のレベリング剤を添加することができる。
【0116】
次に、図6を参照し、露光装置16について説明する。露光装置16はm本(mは少なくとも8以上)のレーザビームを射出する面発光レーザアレイ50を備えている。なお、図6では簡略化のためにレーザビームを3本のみ示しているが、面発光レーザをアレイ化してなる面発光レーザアレイ50は、例えば数十本のレーザビームを射出するように構成することができ、また、面発光レーザの配列(面発光レーザアレイ50から射出されるレーザビームの配列)についても、1列に配列する以外に、2次元的に(例えばマトリクス状に)配列することも可能である。
【0117】
図7は、発光点(レーザビーム発生源)51が2次元的に配列されたレーザアレイ50を示す平面図である。図示の通り、レーザアレイ50には、所定の間隔で、主走査方向に3行、副走査方向に3列の計9個の発光点51が2次元的に配置されている。また、主走査方向に並んだ発光点51は、副走査方向に隣り合う発光点51との距離を4等分した距離を1ステップとし、副走査方向に1ステップずつ段階的にずれるように配置されている。すなわち、副走査方向に限ってみれば、1ステップ毎に発光点51が配置されていることになる。このように副走査方向に段階的にずらして発光点51を配置することにより、全ての発光点51が異なる走査線を走査することができるようになっている。これにより、レーザアレイ50は9本の走査線を同時に走査することができる。
【0118】
また、面発光レーザアレイ50の発光点は、上述のように3行以上×3列以上に並んでいることが好ましく、4行以上×4列以上に並んでいることがより好ましく、6行以上×6列以上に並んでいることが特に好ましい。これにより、形成する画像の高画質化(高解像度化)及び画像形成速度の高速化をより確実に実現することが可能となる傾向がある。
【0119】
更に、露光装置16は、上述の通り8本以上のレーザビームをそれぞれ独立に電子写真感光体12上に走査させるものであることが必要であるが、上記効果(高画質化及び高速化)をより有効に得る観点から、ビーム数を16本以上とすることが好ましく、32本以上とすることがより好ましい。
【0120】
図6に戻り、面発光レーザアレイ50のレーザビーム射出側には、コリメートレンズ52、ハーフミラー54が順に配置されている。面発光レーザアレイ50から射出されたレーザビームは、コリメートレンズ52によって略平行光束とされた後にハーフミラー54に入射され、ハーフミラー54によって一部が分離・反射される。ハーフミラー54のレーザビーム反射側にはレンズ56、光量センサ58が順に配置されており、ハーフミラー54によって主レーザビーム(露光に用いるレーザビーム)から分離・反射された一部のレーザビームは、レンズ56を透過して光量センサ58へ入射され、光量センサ58によって光量が検出される。
【0121】
なお、面発光レーザは、露光に用いるレーザビームが射出される側と反対側からはレーザビームが射出されない(端面発光レーザでは両側から射出される)ため、レーザビームの光量を検出・制御するためには、上記のように露光に用いるレーザビームの一部を分離して光量検出に供することが必要になる。
【0122】
ハーフミラー54の主レーザビーム射出側には、アパーチャ60、副走査方向にのみパワーを有するシリンダレンズ62、折り返しミラー64が順に配置されており、ハーフミラー54から射出された主レーザビームは、アパーチャ60によって整形された後に、回転多面鏡66の反射面近傍で主走査方向に長い線状に結像するようにシリンダレンズ62によって屈折され、折り返しミラー64によって回転多面鏡66側へ反射される。なお、パーチャ60は複数本のレーザビームを均等に整形するために、コリメートレンズ52の焦点位置近傍に配置することが望ましい。
【0123】
回転多面鏡66は、図示しないモータの駆動力が伝達されて図6中の矢印C方向に回転され、折り返しミラー64によって反射されて入射されたレーザビームを主走査方向に沿って偏向・反射する。回転多面鏡66のレーザビーム射出側には主走査方向にのみパワーを有するFθレンズ68,70が配置されており、回転多面鏡66によって偏向・反射されたレーザビームは、電子写真感光体12の外周面上を略等速で移動し、且つ主走査方向の結像位置が電子写真感光体12の外周面上に一致するようにFθレンズ68,70によって屈折される。
【0124】
Fθレンズ68,70のレーザビーム射出側には、副走査方向にのみパワーを有するシリンダミラー72,74が順に配置されており、Fθレンズ68,70を透過したレーザビームは、副走査方向の結像位置が電子写真感光体12の外周面に一致するようにシリンダミラー72,74によって反射され、電子写真感光体12の外周面上に照射される。なお、シリンダミラー72,74は回転多面鏡66と電子写真感光体12の外周面を副走査方向において共役にする面倒れ補正機能も有している。
【0125】
また、シリンダミラー72のレーザビーム射出側には、レーザビームの走査範囲のうち走査開始側の端部(SOS:Start Of Scan)に相当する位置にピックアップミラー76が配置されており、ピックアップミラー76のレーザビーム射出側にはビーム位置検出センサ78が配置されている。面発光レーザアレイ50から射出されたレーザビームは、回転多面鏡66の各反射面のうちのレーザビームを反射している面が、入射ビームをSOSに相当する方向へ反射する向きとなったときに、ピックアップミラー76で反射されてビーム位置検出センサ78に入射される(図6の想像線も参照)。
【0126】
ビーム位置検出センサ78から出力された信号は、回転多面鏡66の回転に伴って電子写真感光体12の外周面上を走査されるレーザビームを変調して静電潜像を形成するにあたり、各回の主走査における変調開始タイミングの同期をとるために用いられる。
【0127】
また、本実施形態にかかる露光装置16では、コリメートレンズ52とシリンダレンズ62、2枚のシリンダミラー72,74が各々副走査方向においてアフォーカルになる様に配置されている。これは、複数本のレーザビームの走査線湾曲(BOW)の差と複数本のレーザビームによる走査線間隔の変動を抑制するためである。
【0128】
続いて、画像形成装置10の制御装置のうち、露光装置16の面発光レーザアレイ50からのレーザビームの射出を制御する部分(以下、この部分を制御部80と称する)の構成について、図8を参照して説明する。制御装置は、画像形成装置10によって形成すべき画像を表す画像データを記憶するための記憶部82を内蔵しており、記憶部82に記憶された画像データは、画像形成装置10によって画像が形成される際に制御部80の変調信号生成手段84に入力される。
【0129】
図示は省略するが、変調信号生成手段84にはビーム位置検出センサ78が接続されている。変調信号生成手段84は、記憶部82から入力された画像データを、面発光レーザアレイ50から射出されるm本のレーザビームの何れかに各々対応するm個の画像データに分解し、分解したm個の画像データに基づき、ビーム位置検出センサ78から入力された信号によって検知されるSOSのタイミングを基準として、面発光レーザアレイ50から射出されるm本のレーザビームの各々をオンオフさせるタイミングを規定するm個の変調信号を生成し、レーザ駆動回路(LDD)86に出力する。
【0130】
LDD86には駆動量制御手段88が接続されており、面発光レーザアレイ50から射出されるm本のレーザビームを、変調信号生成手段84から入力された変調信号に応じたタイミングでオンオフすると共に、オン時のレーザビームの光量を、駆動量制御手段88から入力される駆動量設定信号に対応する光量にするためのm個の駆動電流を生成し、面発光レーザアレイ50のm個の面発光レーザに各々供給する。
【0131】
これにより、面発光レーザアレイ50からは、変調信号に応じたタイミングでオンオフされると共に、オン時の光量が駆動量設定信号に対応する光量とされたm本のレーザビームが射出され、このm本のレーザビームが電子写真感光体12の外周面上を各々走査・露光されることで、電子写真感光体12の外周面上に静電潜像が形成される。この静電潜像が現像装置18によりトナー像として現像され、このトナー像が転写器32,42による転写を経て用紙Pに転写され、定着器44によって用紙Pに溶融定着されることで、用紙Pに画像が記録されることになる。
【0132】
一方、画像形成装置10は、電子写真感光体12の外周面上に形成されたトナー像、中間転写ベルト24の外周面上に転写されたトナー像、及び用紙Pに記録された画像の何れかの濃度を検出する濃度センサ(図示省略)を備えており、この濃度センサは制御部80に接続されている。なお、本実施形態のように多数本(m本)のレーザビームを電子写真感光体12の外周面上で同時に走査・露光して画像(詳しくは静電潜像)を形成する場合、各回の主走査におけるm本のレーザビームによる走査領域の境界付近ではレーザビームが2回照射(露光)される。
【0133】
なお、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、帯電装置14として、図1に示すように、コロトロンやスコロトロン等の非接触方式の帯電装置を用いてもよいが、帯電ローラや帯電ブラシを備える接触帯電方式の帯電装置を用いてもよい。かかる接触帯電方式の帯電装置は、画像形成装置10の小型化を図る観点から好ましい。本発明においては、電子写真感光体12が優れた機械的強度を有しているため、かかる接触帯電方式を用いた場合であっても、優れた耐久性を示すことができる。
【0134】
この接触帯電方式は、電子写真感光体12の表面に接触させた導電性部材に電圧を印加することにより電子写真感光体12の表面を帯電させるものである。導電性部材の形状としては、ブラシ状、ブレード状、ピン電極状、ローラ状等が挙げられるが、中でもローラ状であることが好ましい。通常、ローラ状部材は外側から抵抗層とそれらを支持する弾性層と芯材から構成される。更に、必要に応じて抵抗層の外側に保護層を設けることができる。
【0135】
ローラ状部材は、感光体に接触させることにより特に駆動手段を有しなくとも感光体と同じ周速度で回転し、帯電手段として機能する。しかし、ローラ部材に何らかの駆動手段を取り付け、感光体とは異なる周速度で回転させ、帯電させても良い。
【0136】
芯材の材質としては、導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、鉄、銅、真鍮、ステンレス、アルミニウム、ニッケル等が挙げられる。また、導電性粒子等を分散した樹脂成形品等を用いることもできる。
【0137】
弾性層の材質としては、導電性あるいは半導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、ゴム材に導電性粒子あるいは半導電性粒子を分散したものが挙げられる。ゴム材としては、EPDM、ポリブタジエン、天然ゴム、ポリイソブチレン、SBR、CR、NBR、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、SBS、熱可塑性エラストマー、ノルボーネンゴム、フロロシリコーンゴム、エチレンオキシドゴム等が用いられる。導電性粒子あるいは半導電性粒子としては、カーボンブラック、亜鉛、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、クロム、チタニウム等の金属、ZnO−Al2O3、SnO2−Sb2O3、In2O3−SnO2、ZnO−TiO2、MgO−Al2O3、FeO−TiO2、TiO2、SnO2、Sb2O3、In2O3、ZnO、MgO等の金属酸化物を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0138】
抵抗層及び保護層は、結着樹脂に導電性粒子又は半導電性粒子を分散させ、その抵抗を制御したもので、電気抵抗値が、103〜1014Ωcmであることが好ましく、105〜1012Ωcmであることがより好ましく、107〜1012Ωcmであることが更に好ましい。また、膜厚はそれぞれ、0.01〜1000μmであること好ましく、0.1〜500μmであることがより好ましく、0.5〜100μmであることが更に好ましい。
【0139】
抵抗層及び保護層における結着樹脂としては、アクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、メトキシメチル化ナイロン、エトキシメチル化ナイロン、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリチオフェン樹脂、PFA、FEP、PET等のポリオレフィン樹脂、スチレンブタジエン樹脂等が用いられる。
【0140】
抵抗層及び保護層における導電性粒子又は半導電性粒子としては、弾性層と同様のカーボンブラック、金属、金属酸化物等が用いられる。また必要に応じてヒンダードフェノール、ヒンダードアミン等の酸化防止剤、クレー、カオリン等の充填剤や、シリコーンオイル等の潤滑剤を添加することができる。これらの層を形成する手段としてはブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等を用いることができる。
【0141】
これらの導電性部材を用いて感光体を帯電させる際に、導電性部材に印加する電圧は、直流電圧又は直流電圧に交流電圧を重畳したものであることが好ましい。また、印加する電圧の範囲は、直流電圧の場合には要求される感光体帯電電位に応じて正又は負の50〜2,000Vが好ましく、100〜1,500Vがより好ましい。交流電圧を重畳する場合には、ピーク間電圧が400〜1,800Vであることが好ましく、800〜1,600Vであることがより好ましく、1,200〜1,600Vであることが更に好ましい。また、交流電圧の周波数は、好ましくは50〜20,000Hz、より好ましくは100〜5,000Hzである。
【0142】
本発明の画像形成装置で用いられる現像剤は、一成分系、二成分系のいずれであってもよく、また、正規現像剤、反転現像剤のいずれであってもよい。
【0143】
また、本発明の画像形成装置は、電子写真感光体上のトナー像を被転写媒体に直接転写するものであってもよく、電子写真感光体上のトナー像を中間転写体に転写した後、さらに被転写媒体に転写する中間転写方式のものであってもよい。なお、中間転写体としては、図1に示した画像形成装置10では中間転写体としてベルト形状の中間転写ベルト24を用いているが、ドラム形状等の中間転写体を用いてもよい。
【0144】
更に、図1に示した画像形成装置10は、電子写真感光体12を少なくとも含んで構成されるプロセスカートリッジを備えるものであってもよい。かかるプロセスカートリッジを用いることによって、メンテナンスをより簡便に行うことができる。
【0145】
また、本発明の画像形成装置は、図1に示したものの他、白黒画像用の画像形成装置やタンデム式のカラー画像形成装置としてもよい。次に、タンデム式のカラー画像形成装置について説明する。なお、「タンデム式画像形成装置」とは、以下の画像形成ユニットを2以上有する画像形成装置をという。
【0146】
図9は、本発明の画像形成装置の好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。図6に示す画像形成装置200は、帯電装置402a〜402dが接触帯電装置であり、転写装置が中間転写方式を採用する構成を有しており、且つ、帯電装置402a〜402d、露光装置403、及び現像装置404a〜404dを少なくとも備える画像形成ユニットを2以上有するタンデム式画像形成装置である。
【0147】
より具体的には、このタンデム式画像形成装置200は、ハウジング400内において4つの電子写真感光体401a〜401d(例えば、電子写真感光体401aがイエロー、電子写真感光体401bがマゼンタ、電子写真感光体401cがシアン、電子写真感光体401dがブラックの色からなる画像をそれぞれ形成可能である)が中間転写ベルト409に沿って相互に並列に配置されている。また、この画像形成装置200には、さらに、クリーニング手段415a〜415dが備わっている。
【0148】
ここで、画像形成装置200に搭載されている電子写真感光体401a〜401dは、それぞれ先に述べた本発明の電子写真感光体の構成を有するものである。
【0149】
電子写真感光体401a〜401dのそれぞれは所定の方向(紙面上は反時計回り)に回転可能であり、その回転方向に沿って帯電ロール402a〜402d(電子写真感光体を帯電させる接触帯電装置)、現像装置404a〜404d(露光装置により形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置)、1次転写ロール410a〜410d{現像装置により形成されたトナー像を後述の中間転写ベルト409(中間転写体)に1次転写するための転写装置}、クリーニングブレード415a〜415d(クリーニング手段)が配置されている。現像装置404a〜404dのそれぞれにはトナーカートリッジ405a〜405dに収容されたブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色のトナーが供給可能であり、また、1次転写ロール410a〜410dはそれぞれ中間転写ベルト409(1次転写像を被転写媒体500に転写する中間転写体)を介して電子写真感光体401a〜401dに当接している。
【0150】
更に、ハウジング400内の所定の位置にはレーザ光源となる露光装置403(帯電装置により帯電される電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光装置)が配置されており、レーザ光源403から出射されたレーザ光を帯電後の電子写真感光体401a〜401dの表面に照射することが可能となっている。なお、この露光装置403は図2〜図5を用いて説明した露光装置16と同様の構成を有するものである。
【0151】
これにより、電子写真感光体401a〜401dの回転工程において帯電、露光、現像、1次転写、クリーニングの各工程が順次行われ、各色のトナー像が中間転写ベルト409上に重ねて転写される。
【0152】
上記帯電装置(帯電用部材)402a〜402dは、ローラ状の接触帯電部材を備えるもので、感光体401a〜401dの表面に接触するように配置され、感光体に電圧を均一に印加し、感光体表面を所定の電位に帯電させるものである。帯電装置にはアルミニウム、鉄、銅等の金属、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性高分子材料、ポリウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴム、フッソゴム、スチレンーブタジエンゴム、ブタジエンゴム等のエラストマー材料にカーボンブラック、沃化銅、沃化銀、硫化亜鉛、炭化ケイ素、金属酸化物等の金属酸化物粒子を分散したもの等を用いることができる。
【0153】
この金属酸化物の例としてはZnO、SnO2、TiO2、In2O3、MoO3等、あるいはこれらの複合酸化物が挙げられる。また、帯電装置402a〜402dにはエラストマー材料中に過塩素酸塩を含有させて導電性を付与したものを使用しても良い。
【0154】
更に、帯電装置402a〜402dにはその表面に被覆層を設けてもよい。被覆層を形成する材料としては、N−アルコキシメチル化ナイロン、セルロース樹脂、ビニルピリジン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、メラミン等が単独、あるいは併用して用いられる。また、エマルジョン樹脂系材料、たとえば、アクリル樹脂エマルジョン、ポリエステル樹脂エマルジョン、ポリウレタン、特にソープフリーのエマルジョン重合により合成されたエマルジョン樹脂を用いることも出来る。
【0155】
これらの樹脂にはさらに抵抗率を調整するために、導電剤粒子を分散してもよいし、劣化を防止するために酸化防止剤を含有させることもできる。また、被覆層を形成する時の成膜性を向上させるために、エマルジョン樹脂にレベリング剤または界面活性剤を含有させることもできる。また、この接触帯電用部材の形状としては、ローラ状、ブレード状、ベルト状、ブラシ状等が挙げられる。
【0156】
更に、帯電装置402a〜402dの電気抵抗値は、好ましくは102〜1014Ωcm、さらに好ましくは102〜1012Ωcmの範囲が良い。また、この接触帯電用部材への印加電圧は、直流、交流いずれも用いることができる。又、直流+交流の形(直流電圧と交流電圧とを重畳したもの)で印加することもできる。
【0157】
また、転写装置410a〜410dとしては、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等、が挙げられる。
【0158】
また、上記現像装置404a〜404dとしては、一成分系、二成分系等の正規または反転現像剤を用いた従来公知の現像装置等を用いることができる。このような現像剤のうち画質の向上という理由から、二成分現像剤を用いる二成分現像方式を用いて行うことが好ましい。この場合、静電潜像の可視化のために用いる現像剤は、トナーとキャリアとで構成される。また、使用されるトナーの形状は特に制限されず、例えば粉砕法による不定形トナーや重合法による球形トナーが好適に使用される。
【0159】
また、上記クリーニング手段415a〜415dは、転写工程後の電子写真感光体401a〜401dの表面に付着する残存トナーを除去するためのもので、これにより清浄面化された電子写真感光体401a〜401dは上記の画像形成プロセスに繰り返し供される。クリーニング手段415a〜415dとしては、クリーニングブレード、ブラシクリーニング、ロールクリーニング等を用いることができるが、これらの中でもクリーニングブレードを用いることが好ましい。また、クリーニングブレードの材質としてはウレタンゴム、ネオプレンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。
【0160】
また、上記中間転写ベルト409は以下の手順で製造することができる。すなわち、略等モルのテトラカルボン酸二無水物或いはその誘導体とジアミンとを所定の溶媒中で重合反応させてポリアミド酸溶液を得る。このポリアミド酸溶液を円筒状金型に供給・展開して膜(層)形成を行った後、さらにイミド転化を行うことによって、ポリイミド樹脂からなる中間転写ベルト409を得ることができる。
【0161】
かかるテトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物等が例示される。
【0162】
また、ジアミンの具体例としては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジメチル4,4’−ビフェニルジアミン、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、2,4−ビス(β−アミノ第三ブチル)トルエン、ビス(p−β−アミノ−第三ブチルフェニル)エーテル、ビス(p−β−メチル−δ−アミノフェニル)ベンゼン、ビス−p−(1,1−ジメチル−5−アミノ−ベンチル)ベンゼン、1−イソプロピル−2,4−m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、ジ(p−アミノシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ジアミノプロピルテトラメチレン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、1,2−ビス−3−アミノプロボキシエタン、2,2−ジメチルプロピレンジアミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,17−ジアミノエイコサデカン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,10−ジアミノ−1,10−ジメチルデカン、12−ジアミノオクタデカン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ピペラジン、H2N(CH2)3O(CH2)2O(CH2)NH2、H2N(CH2)3S(CH2)3NH2、H2N(CH2)3N(CH3)2(CH2)3NH2等が挙げられる。
【0163】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンを重合反応させる際の溶媒としては、溶解性等の点から極性溶媒が好ましい。極性溶媒としては、N,N−ジアルキルアミド類が好ましく、中でもN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホン等の低分子量のものがより好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0164】
また、中間転写ベルト409の膜抵抗を調整するために、ポリイミド樹脂中にカーボンを分散してもよい。カーボンの種類は特に限定されないが、カーボンブラックの酸化処理によりその表面に酸素含有官能基(カルボキシル基、キノン基、ラクトン基、水酸基等)が形成された酸化処理カーボンブラックを用いることが好ましい。ポリイミド樹脂中に酸化処理カーボンブラックを分散すると、電圧を印可したときに酸化処理カーボンブラックに過剰な電流が流れるため、ポリイミド樹脂が繰返しの電圧印加による酸化の影響を受けにくくなる。また、酸化処理カーボンブラックはその表面に形成された酸素含有官能基によりポリイミド樹脂中への分散性が高いので、抵抗バラツキを小さくすることができると共に電界依存性も小さくなり、転写電圧による電界集中が起こりにくくなる。従って、転写電圧による抵抗低下を防止し、電気抵抗の均一性を改善し、電界依存性が少なく、さらに環境による抵抗の変化の少ない、用紙走行部が白く抜けること等の画質欠陥の発生が抑制された高画質を得ることができる中間転写ベルトを得ることができる。
【0165】
酸化処理カーボンブラックは、カーボンブラックを高温雰囲気下で空気と接触、反応させる空気酸化法、常温下で窒素酸化物やオゾン等と反応させる方法、高温下での空気酸化後、低温下でオゾン酸化する方法等により得ることができる。
【0166】
また、酸化処理カーボンとしては、三菱化学製のMA100(pH3.5、揮発分1.5%)、同,MA100R(pH3.5、揮発分1.5%)、同MA100S(pH3.5、揮発分1.5%)、同#970(pH3.5、揮発分3.0%)、同MA11(pH3.5、揮発分2.0%)、同#1000(pH3.5、揮発分3.0%)、同#2200(pH3.5,揮発分3.5%)、同MA230(pH3.0、揮発分1.5%)、同MA220(pH3.0、揮発分1.0%)、同#2650(pH3.0、揮発分8.0%)、同MA7(pH3.0、揮発分3.0%)、同MA8(pH3.0、揮発分3.0%)、同OIL7B(pH3.0、揮発分6.0%)、同MA77(pH2.5、揮発分3.0%)、同#2350(pH2.5、揮発分7.5%)、同#2700(pH2.5、揮発分10.0%)、同#2400(pH2.5、揮発分9.0%);デグサ社製のプリンテックス150T(pH4.5、揮発分10.0%)、同スペシャルブラック350(pH3.5、揮発分2.2%)、同スペシャルブラック100(pH3.3、揮発分2.2%)、同スペシャルブラック250(pH3.1、揮発分2.0%)、同スペシャルブラック5(pH3.0、揮発分15.0%)、同スペシャルブラック4(pH3.0、揮発分14.0%)、同スペシャルブラック4A(pH3.0、揮発分14.0%)、同スペシャルブラック550(pH2.8、揮発分2.5%)、同スペシャルブラック6(pH2.5、揮発分18.0%)、同カラーブラックFW200(pH2.5、揮発分20.0%)、同カラーブラックFW2(pH2.5、揮発分16.5%)、同カラーブラックFW2V(pH2.5、揮発分16.5%);キャボット社製MONARCH1000(pH2.5、揮発分9.5%)、同MONARCH1300(pH2.5、揮発分9.5%)、同MONARCH1400(pH2.5、揮発分9.0%)、同MOGUL−L(pH2.5、揮発分5.0%)、同REGAL400R(pH4.0、揮発分3.5%)、等の市販品を用いてもよい。また、このような酸化処理カーボンとしては、pH4.5以下であり、揮発分1.0%以上であるものが好ましい。
【0167】
上記の酸化処理カーボンは、例えば酸化処理の度合い、DBP吸油量、窒素吸着を利用したBET法による比表面積等の物性の相違により導電性が異なるがこれらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよいが、実質的に導電性の異なるものを2種以上組み合わせて用いることが好ましい。このように物性の異なる2種類以上のカーボンブラックを添加する場合、例えば高い導電性を発現するカーボンブラックを優先的に添加した後、導電率の低いカーボンブラックを添加して表面抵抗率を調整すること等が可能である。
【0168】
これら酸化処理カーボンブラックの含有量は、ポリイミド樹脂に対して10〜50質量%が好ましく、より好ましくは12〜30質量%である。当該含有量が10質量%未満であると、電気抵抗の均一性が低下し、耐久使用時の表面抵抗率の低下が大きくなる場合があり、一方、50質量%を超えると、所望の抵抗値が得られにくく、また、成型物として脆くなるため好ましくない。
【0169】
2種類以上の酸化処理カーボンブラックを分散させたポリアミド酸溶液の製造方法としては、溶媒中に2種類以上の酸化処理カーボンブラックを予め分散した分散液中に上記酸二無水物成分及びジアミン成分を溶解・重合する方法、2種類以上の酸化処理カーボンブラックを各々溶媒中に分散させ2種類以上のカーボンブラック分散液を作製し、この分散液に酸無水物成分及びジアミン成分を溶解・重合させた後、各々のポリアミド酸溶液を混合する方法、等が挙げられる。
【0170】
中間転写ベルト409は、このようにして得られたポリアミド酸溶液を円筒状金型内面に供給・展開して被膜とし、加熱によりポリアミド酸をイミド転化させることにより得られる。かかるイミド転化の際には、所定の温度で0.5時間以上保持することによって、良好な平面度を有する中間転写ベルトを得ることができる。
【0171】
ポリアミド酸溶液を円筒状金型内面に供給する際の供給方法としては、ディスペンサーによる方法、ダイスによる方法等が挙げられる。ここで、円筒上金型としては、その内周面が鏡面仕上げされたものを用いることが好ましい。
【0172】
また、金型に供給されたポリアミド酸溶液から被膜を形成する方法としては、加熱しながら遠心成形する方法、弾丸状走行体を用いて成形する方法、回転成形する方法等が挙げられ、これらの方法により均一な膜厚の被膜が形成される。
【0173】
このようにして形成された被膜をイミド転化させて中間転写ベルトを成形する方法としては、(i)金型ごと乾燥機中に入れ、イミド転化の反応温度まで昇温する方法、(ii)ベルトとして形状を保持できるまで溶媒の除去を行った後、金型内面から被膜を剥離して金属製シリンダ外面に差し替えた後、このシリンダごと加熱してイミド転化を行う方法等が挙げられる。本発明においては、得られる中間転写ベルトの表面のダイナミック硬度が上記の条件を満たせば上記(i)、(ii)のいずれの方法でイミド転化を行ってもよいが、方法(ii)によりイミド転化を行うと、平面度及び外表面精度が良好な中間転写体を効率よく且つ確実に得ることができるので好ましい。以下、方法(ii)について詳述する。
【0174】
方法(ii)において、溶媒を除去する際の加熱条件は、溶媒を除去できれば特に制限されないが、加熱温度は80〜200℃であることが好ましく、加熱時間は0.5〜5時間であることが好ましい。このようにしてベルトとしてそれ自身形状を保持することができるようになった成形物は金型内周面から剥離されるが、かかる剥離の際に金型内周面に離型処理を施してもよい。
【0175】
次いで、ベルト形状として保持できるまで加熱・硬化させた成形物を、金属製シリンダ外面に差し替え、差し替えたシリンダごと加熱することにより、ポリアミド酸のイミド転化反応を進行させる。かかる金属製シリンダとしては、線膨張係数がポリイミド樹脂よりも大きいものが好ましく、また、シリンダの外径をポリイミド成形物の内径より所定量小さくすることで、ヒートセットを行うことができ均一な膜厚でムラのない無端ベルトを得ることができる。また、金属製シリンダ外面の表面粗度(Ra)は、1.2〜2.0μmであることが好ましい。金属製シリンダ外面の表面粗度(Ra)が1.2μm未満であると、金属製シリンダ自身が平滑過ぎるため、得られる中間転写ベルトにおいてベルトの軸方向に対する収縮による滑りが発生しないため、延伸がこの工程で行われ、膜厚のバラツキや平面度の精度の低下が発生する傾向にある。また、金属製シリンダ外面の表面粗度(Ra)が2.0μmを超えると、金属製シリンダ外面がベルト状中間転写体の内面に転写し、さらには外面に凹凸を発生させ、これにより画像不良が発生しやすくなる傾向にある。なお、本実施形態でいう表面粗度とはJIS B601に準じて測定されるRaをいう。
【0176】
また、イミド転化の際の加熱条件としては、ポリイミド樹脂の組成にもよるが、加熱温度が220〜280℃、加熱時間0.5〜2時間であることが好ましい。このような加熱条件でイミド転化を行うと、ポリイミド樹脂の収縮量がより大きくなるため、ベルトの軸方向についての収縮を緩やかに行うことにより、膜厚バラツキや平面度の精度の低下を防ぐことができる。
【0177】
このようにして得られたポリイミド樹脂からなる中間転写ベルトの外面の表面粗度(Ra)は、1.5μm以下であることが好ましい。中間転写体の表面粗度(Ra)が1.5μmを超えるとがさつき等の画像欠陥が発生しやすくなる傾向にある。なお、がさつきの発生は、転写の際に印加される電圧や剥離放電による電界がベルト表面の凸部に局所的に集中して凸部表面が変質することによって、新たな導電経路の発現により抵抗が低下し、その結果得られる画像の濃度低下が起こることに起因すると本発明者らは推察する。
【0178】
このようにして得られる中間転写ベルト409はシームレスベルトであることが好ましい。このシームレスベルトの場合、中間転写ベルト409の厚さはその使用目的に応じて適宜決定しうるが、強度や柔軟性等の機械的特性の点から、20〜500μmが好ましく、50〜200μmがより好ましい。また、中間転写ベルト409の表面抵抗は、その表面抵抗率(Ω/□)の常用対数値が8〜15(logΩ/□)であることが好ましく、11〜13(logΩ/□)であることがより好ましい。なお、ここでいう表面抵抗率とは、22℃、55%RH環境下で100Vの電圧を印加し、電圧印可開始時から10秒後に測定される電流値に基づいて得られる値をいう。ここで、「表面抵抗[Ω/□]」とは、「薄膜ハンドブック(オーム社刊)」p.896に記載の「表面抵抗」と同義であり、面状の抵抗体を正方形に切り出して対向する2辺間の抵抗で表わしたものを示す。この表面抵抗は、抵抗分布が一様ならば正方形の寸法に無関係である。
【0179】
中間転写ベルト409は駆動ロール406、バックアップロール408及びテンションロール407により所定の張力をもって指示されており、これらのロールの回転によりたわみを生じることなく回転可能となっている。また、2次転写ロール413は、中間転写ベルト409を介してバックアップロール408と当接するように配置されている。バックアップロール408と2次転写ロール413との間を通った中間転写ベルト409はクリーニングブレード416により清浄面化された後、次の画像形成プロセスに繰り返し供される。
【0180】
また、ハウジング400内の所定の位置にはトレイ(被転写媒体トレイ)411が設けられており、トレイ411内の紙等の被転写媒体500が移送ロール412により中間転写ベルト409と2次転写ロール413との間、さらには相互に当接する2個の定着ロール414の間に順次移送された後、ハウジング400の外部に排紙される。
【0181】
このように電子写真感光体401a〜401dの回転工程において、帯電、露光、現像、転写、クリーニングの各工程を順次行うことによって画像形成が繰り返し行われる。ここで、電子写真感光体401a〜401dは、上述した電子写真感光体1であり、リーク防止性と電気特性との双方が充分に高水準で達成されたものであるため、接触帯電装置402a〜402dと共に用いた場合であってもかぶり等の画質欠陥を生じることなく良好な画像品質を得ることが可能となる。従って、本実施形態により、長期にわたり繰り返し使用される場合であっても、感光体におけるピンホールリークの発生が充分に防止され、画像品質の優れたカラー画像を高速で形成できる画像形成装置200が実現される。
【0182】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、図9に示した装置は、電子写真感光体401a〜401dと接触帯電装置402a〜402dとを含んで構成されるプロセスカートリッジを備えるものであってもよい。かかるプロセスカートリッジを用いることによって、メンテナンスをより簡便に行うことができる。
【0183】
また、本発明の画像形成装置はイレース光照射装置等の除電装置をさらに備えていてもよい。これにより、電子写真感光体が繰り返し使用される場合に、電子写真感光体の残留電位が次のサイクルに持ち込まれる現象が防止されるので、画像品質をより高めることができる。
【0184】
(プロセスカートリッジ)
次に、本発明のプロセスカートリッジについて説明する。図10は、本発明のプロセスカートリッジの好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。プロセスカートリッジ300は、電子写真感光体307とともに、帯電装置308、現像装置311、中間転写体320(中間転写装置)、クリーニング装置313、露光のための開口部318、及び、除電露光のための開口部317を取り付けレール316を用いて組み合わせ、そして一体化したものである。また、プロセスカートリッジ300は、転写装置312の転写方式が、トナー像を中間転写体320を介して被転写媒体500に転写する中間転写方式を採用する構成を有している。なお、電子写真感光体307は、上述した本発明にかかる電子写真感光体の構成を有するものである。
【0185】
そして、このプロセスカートリッジ300は、転写装置312と、定着装置315と、図示しない他の構成部分とからなる画像形成装置本体に対して着脱自在としたものであり、画像形成装置本体とともに画像形成装置を構成するものである。
【0186】
なお、本発明のプロセスカートリッジにおいて、帯電装置308(帯電用部材)は、帯電ロール、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電チューブ等による接触帯電方式を採用することができる。接触帯電方式は、感光体表面に接触させた導電性部材に電圧を印加することにより感光体表面を帯電させるものである。導電性部材の形状はブラシ状、ブレード状、ピン電極状、或いはローラ状等何れでもよいが、特にローラ状部材が好ましい。通常、ローラ状部材は外側から抵抗層とそれらを支持する弾性層と芯材から構成される。更に必要に応じて抵抗層の外側に保護層を設けることができる。
【0187】
上述した本発明のプロセスカートリッジに使用される現像装置311について具体的に説明すると、現像装置311としては、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、一成分系現像剤又は二成分系現像剤をブラシ、ローラ等を用い接触或いは非接触させて現像する公知の現像器等が挙げられる。また、トナーとしては、機械的な粉砕方や化学重合で作られる。トナーの形状としては不定形なものから球形のものが挙げられる。
【0188】
上述した本発明のプロセスカートリッジに使用される中間転写装置320について具体的に説明すると、中間転写装置320としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。これらの中でも、転写帯電補償能力に優れる点で接触型転写帯電器が好ましい。なお、本発明においては、上記転写帯電器の他、剥離帯電器等を併用することもできる。
【0189】
上述した本発明のプロセスカートリッジに使用されるクリーニング装置313について具体的に説明すると、クリーニング装置313としては、特に制限はなく、それ自体公知のクリーニング装置等を用いればよい。例えば、ウレタン製のブレードやクリーニングブラシ等が挙げられる。
【0190】
上述した本発明のプロセスカートリッジに使用される除電装置(光除電装置)について具体的に説明すると、光除電装置としては、例えば、タングステンランプ、LED等が挙げられ、該光除電プロセスに用いる光質としては、例えば、タングステンランプ等の白色光、LED光等の赤色光等が挙げられる。該光除電プロセスにおける照射光強度としては、通常、電子写真感光体の半減露光感度を示す光量の数倍乃至30倍程度になるよう出力設定される。本実施形態においては、開口部317からこのような光除電装置からの光を取り込み、感光体を除電する。
【0191】
このような本発明のプロセスカートリッジは、先に述べた面発光レーザアレイを有する露光装置が搭載された画像形成装置に装着されるものであり、上記電子写真感光体を搭載していることにより、画像の高画質化、画像形成速度の高速化、並びに、感光体の長寿命化を達成することができる。
【0192】
【実施例】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0193】
[実施例1]
(電子写真感光体の作製)
ポリビニルブチラール樹脂(エスレックBM−S、積水化学社製)4質量部を溶解したn−ブチルアルコール溶液170質量部に、有機ジルコニウム化合物(アセチルアセトンジルコニウムブチレート)30質量部及び有機シラン化合物(γ−アミノプロピルトリメトキシシラン)3質量部を添加し、混合撹拌して下引層形成用塗布液を得た。得られた塗布液を、ホーニング処理により外周面が粗面化された外径84mm、長さ340mm、肉厚1mmのアルミニウム支持体上に浸漬塗布し、室温で5分間風乾を行った後、支持体を10分間で50℃に昇温し、50℃、85%RH(露点47℃)の恒温恒湿槽中に入れて、20分間加湿硬化促進処理を行った。更に、処理後の支持体を熱風乾燥機に入れて、170℃で10分間乾燥を行い、膜厚1μmの下引層を形成した。
【0194】
次に、電荷発生材料として塩化ガリウムフタロシアニン15質量部、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニオンカーバイト社製)10質量部及びn−ブチルアルコール300質量部からなる混合物をサンドミルにて4時間分散処理し、電荷発生層形成用塗布液を得た。得られた塗布液を、上記下引層上に浸漬塗布し、100℃で10分間乾燥させて、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0195】
次に、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン40質量部と、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量40,000)60質量部とを、テトロヒドロフラン280質量部及びトルエン120質量部に十分に溶解混合した後、平均一次粒径0.2μmの4フッ化エチレン樹脂粒子10質量部を加えて更に混合した。その後、ガラスビーズを用いたサンドグラインダーにより3時間分散処理を行い、4フッ化エチレン樹脂粒子が分散した電荷輸送層形成用塗布液を得た。得られた塗布液を上記電荷発生層の上に浸漬塗布し、130℃で60分間乾燥させて、膜厚30μmの電荷輸送層を形成し、目的の電子写真感光体を得た。
【0196】
(画像形成装置の作製)
得られた電子写真感光体を用いて、帯電装置が接触帯電装置であり、転写方式が中間転写方式であるタンデム式画像形成装置を作製した。なお、画像形成装置の構成は、露光装置部分を以下の構成に改造した以外はカラータンデム複写機DocuCentre C400(富士ゼロックス社製)と同様の構成とした。すなわち、露光装置に、面発光レーザアレイ(発光点が6×6の二次元に配列、レーザビーム数が32本)を備え、その走査線数を2400dpiに改造した。
【0197】
ここで、面発光レーザアレイの発光点(6×6の二次元に配列)に対して、レーザビーム数が36本ではなく32本であるのは、6×6マトリックスは36個の素子を配列しているが、実際に使用する場合にはコンピュータでの制御条件の制約[2のn乗(この場合は25)]による。そのため、36本ではなく、32本を使用している。
【0198】
[実施例2]
以下の手順により作製した電荷輸送層形成用塗布液を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2のタンデム式画像形成装置を作製した。
【0199】
すなわち、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン40質量部と、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量40,000)60質量部とを、テトロヒドロフラン280質量部及びトルエン120質量部に十分に溶解混合した後、平均一次粒径0.2μmのフッ化ビニリデン樹脂粒子10質量部を加えて更に混合した。その後、ガラスビーズを用いたサンドグラインダーにより3時間分散処理を行い、フッ化ビニリデン樹脂粒子が分散した電荷輸送層形成用塗布液を作製した。
【0200】
[実施例3]
以下の手順により下引層を形成した以外は実施例1と同様にして、実施例3のタンデム式画像形成装置を作製した。
【0201】
すなわち、酸化亜鉛(平均粒径70nm、テイカ社製試作品)100質量部をトルエン500質量部と攪拌混合し、これにシランカップリング剤(KBM603、信越化学社製)1.5質量部を添加して2時間攪拌した。その後、トルエンを減圧蒸留にて留去し、150℃で2時間焼き付けを行った。得られた表面処理後の酸化亜鉛60質量部と、硬化剤(ブロック化イソシアネート スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製)15質量部と、ブチラール樹脂(BM−1、積水化学社製)15質量部とを、メチルエチルケトン85質量部に溶解させて混合液を得た。この混合液38質量部とメチルエチルケトン25質量部とを混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散処理を行うことで分散液を得た。得られた分散液に、触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005質量部を添加して下引層形成用塗布液を得た。得られた塗布液を外径30mm、長さ340mm、肉厚1mmのアルミニウム支持体上に浸漬塗布し、160℃で100分間の乾燥硬化を行い、膜厚20μmの下引層を形成した。
【0202】
[比較例1]
以下の手順により作製した電荷輸送層形成用塗布液を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1のタンデム式画像形成装置を作製した。
【0203】
すなわち、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン40質量部と、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量40,000)60質量部とを、テトロヒドロフラン280質量部及びトルエン120質量部に十分に溶解混合して、電荷輸送層形成用塗布液を作製した。
【0204】
[比較例2]
以下の手順により作製した電荷輸送層形成用塗布液を用い、形成した電荷輸送層の膜厚を38μmとした以外は実施例1と同様にして、比較例2のタンデム式画像形成装置を作製した。
【0205】
すなわち、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン40質量部と、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量40,000)60質量部とを、テトロヒドロフラン280質量部及びトルエン120質量部に十分に溶解混合して、電荷輸送層形成用塗布液を作製した。
【0206】
[比較例3]
実施例1と同様にして作製した電子写真感光体を、改造を行っていないカラータンデム複写機DocuCentre C400(富士ゼロックス社製、露光装置のレーザビーム数が2本、走査線数が1200×600dpi)に装着することにより比較例3の画像形成装置を作製した。
【0207】
[比較例4]
比較例1と同様にして作製した電子写真感光体を、改造を行っていないカラータンデム複写機DocuCentre C400に装着することにより比較例4の画像形成装置を作製した。
【0208】
<画像形成装置の性能評価試験>
実施例1〜3及び比較例1〜4の画像形成装置について、それぞれの性能を以下のように評価した。
【0209】
高温高湿(28℃、80%RH)環境下、以下の(a)〜(c)からなる一連の工程を1サイクル(cycle)とする画像形成プロセスを300,000サイクル(30万回)繰り返して画像を連続的に紙(30万枚)に印刷した。なお、連続印刷用の紙としては、富士ゼロックス社製PPC用紙(L、A4)を用いた。
【0210】
(a)グリッド印加電圧−700Vのスコロトロン帯電器で各電子写真感光体を帯電させた。(b)780nmの半導体レーザを用いて、(a)の工程で帯電させてから0.25秒後の各電子写真感光体に10mJ/m2の光を照射して放電を行わせた。(c)放電させてから0.75秒後、各電子写真感光体に50mJ/m2の赤色LED光を照射して除電を行った。
【0211】
そして、画像形成装置ごとに、1サイクル終了後{(c)工程終了後}の各電子写真感光体の表面の電位A[V]と、300,000サイクル終了後{(c)工程終了後}の各電子写真感光体の表面の電位B[V]とを測定し、その変動量(B−A)を測定した。そして、画像形成装置ごとの変動量(B−A)の相加平均値を算出した。
【0212】
また、画像形成装置ごとに、はじめの各電子写真感光体の厚さと、300,000サイクル終了後の各電子写真感光体の厚さとを測定して「摩耗により減少した感光体の厚さ」(以下、「摩耗しろ」という)を算出した。また、この摩耗しろに基づいて、各電子写真感光体の摩耗レート[nm/kcycle]を算出した。そして、画像形成装置ごとの摩耗レートの相加平均値を算出した。ここで、1kcycleは1,000cycleを意味する。
【0213】
また、画像形成装置ごとの電子写真感光体について、電荷輸送層の残膜厚が約15μmになる時点を感光体の寿命とした。これ以下の膜厚では摩耗による電位変動や、かぶり等の画質欠陥が顕著になり実使用上問題となるレベルである。(a)〜(c)からなる一連の工程を繰り返し、上記の水準に達する工程の回数[Kcycle]を「感光体寿命」として測定した。
【0214】
また、画像形成装置ごとの電子写真感光体上の潜像解像度について以下のようにして求めた。すなわち、画像形成装置において、電子写真感光体を−650Vに均一に帯電させた後、表1記載の走査線記録密度で電子写真感光体表面に露光を行い、感光体表面上に静電潜像を形成した。さらに、この静電潜像に対し、トナー像の現像を行い、現像したトナー像を粘着テープに転写し、このテープを光学顕微鏡で観察し解像度を求めた。
【0215】
上述の各測定結果を表1に示す。
【表1】
【0216】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、形成する画像の高画質化、画像形成速度の高速化、及び装置の小型化が容易に実現可能であり、しかも長期にわたり画像形成プロセスを繰り返しても良好な画質の画像を得ることができる画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像形成装置の好適な一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明の画像形成装置に搭載される電子写真感光体の一例を示す模式断面図である。
【図3】本発明の画像形成装置に搭載される電子写真感光体の一例を示す模式断面図である。
【図4】本発明の画像形成装置に搭載される電子写真感光体の一例を示す模式断面図である。
【図5】本発明の画像形成装置に搭載される電子写真感光体の一例を示す模式断面図である。
【図6】本発明にかかる露光装置の一例を示す概略構成図である。
【図7】発光点が2次元的に配列されたレーザアレイを示す平面図である。
【図8】本発明にかかる制御装置の一例を示す概略構成図である。
【図9】本発明の画像形成装置の他の好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。
【図10】本発明のプロセスカートリッジの好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
1…導電性支持体、2…電荷発生層、3…電荷輸送層、4…感光層、5…下引層、6…保護層、7…フッ素系樹脂、10…画像形成装置、12…電子写真感光体、14…帯電器、16…露光装置、18…現像装置、24…中間転写ベルト、32、42…転写器、44…定着器、50…面発光レーザアレイ、51…発光点、52…コリメートレンズ、54…ハーフミラー、56…レンズ、58…光量センサ、60…アパーチャ、62…シリンダレンズ、64…折り返しミラー、66…回転多面鏡、68、70…Fθレンズ、72、74…シリンダミラー、76…ピックアップミラー、78…ビーム位置検出センサ、80…制御部、82…記憶部、84…変調信号生成手段、88…駆動量制御手段、90…光量設定部、92…レベル変更手段、200…画像形成装置、300…プロセスカートリッジ、307…電子写真感光体、308…帯電装置、311…現像装置、312…中間転写装置、313…クリーニング装置、315…定着装置、316…取り付けレール、317…除電露光のための開口部、318…露光のための開口部、400…ハウジング、401a〜401d…電子写真感光体、402a〜402d…帯電装置、403…露光装置、404a〜404d…現像装置、405a〜405d…トナーカートリッジ、406…駆動ロール、407…テンションロール、408…バックアップロール、409…中間転写ベルト、410a〜410d…1次転写ロール、411…トレイ(被転写体トレイ)、412…移送ロール、413…2次転写ロール、414…定着ロール、416…クリーニングブレード、500…被転写媒体。
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機、プリンター及びファクシミリ等に用いられる画像形成装置及びプロセスカートリッジに関する。
【0002】
【従来の技術】
レーザビームプリンターやデジタル複写機等に用いられる露光手段としては、画像信号に応じたレーザビームを半導体レーザから出力させ、それを回転多面鏡(ポリゴンミラー)に反射させて電子写真感光体表面に照射させることにより静電潜像を形成する方法が挙げられる。
【0003】
このようなレーザビームを用いた露光手段の場合、1本のレーザビームによって出力画像の高精細化(高画質化)、高速化を実現するにはレーザビームの走査速度を速めることが必要となる。しかし、回転多面鏡の回転速度には限界があるため、出力画像の高精細化及び高速化を図ることが困難であった。
【0004】
このような問題を改善するために、複数本のレーザビームを電子写真感光体上に走査させる方法(以下、「マルチビーム方式」という)が提案されている。そして、このマルチビーム方式の画像形成装置は、以下の1)〜3)の利点から、画像形成プロセスの高速化に有効であると考えられている。
【0005】
1)n(nは自然数)本のレーザビームを用いた画像形成装置の場合には、レーザビームの走査速度とプリントスピードとを単一のレーザビームを用いた場合と等しく設定した場合は、走査線の密度をn倍にすることができ、高解像度の画像記録が可能となる。2)レーザビームの走査速度と走査線の密度を単一の場合と等しく設定した場合は、プリントスピードをn倍に高速化することが可能となる。3)プリントスピードとレーザビームの走査密度を単一の場合と等しく設定した場合は、各レーザビームの走査速度を低減すること(つまり、レーザビームを反射して反射ビームを電子写真感光体表面に照射させることにより静電潜像を形成するための回転多面鏡の回転数を1/n倍にすること)ができるため、回転多面鏡を回転駆動するための機構を簡略化してコストダウンが可能となる。
【0006】
このようなマルチビーム方式の画像形成装置としては、半導体基板の基板面に直行する端面よりレーザビームを射出する端面発光レーザを用いた画像形成装置が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。しかしながら、端面発光レーザは、走査線の間隔を微小に調整することが困難であるという問題を有しており、レーザビームの本数を増やすことが容易ではなく、画像の高画質化及び画像形成速度の高速化が不十分であった。
【0007】
そこで、マルチビーム方式の画像形成装置として、複数本のレーザビームを各々偏向して電子写真感光体等の被走査体上で同時に走査させ、1回の主走査で複数本の走査線の走査を行うことで画像を形成する構成の画像形成装置であって、露光装置の光源としてアレイ化が容易な面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Emitting Laser)を用い、同時に走査させるレーザビームの本数(レーザビームによって同時に走査される走査線の本数)を増加させることで、画像の高画質化及び画像形成速度の高速化を目指したものが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0008】
一方、画像形成装置においては、画像の高画質化及び画像形成速度の高速化のみならず、高画質の画像を長期にわたり安定して形成可能とするための長寿命化も要求されている。画像形成装置の寿命は、これに搭載される感光体の寿命に大きく依存する場合が多く、それは電子写真プロセスにおいての、帯電、露光、現像、転写、クリーニングの反復過程で機械的、化学的作用を受け感光体の画像形成特性が徐々に劣化することに起因することが知られている。
【0009】
ここで、化学的劣化による画質低下は、上記反復過程で発生するオゾンによる、感光体中のバインダー樹脂の酸化の進行及び電荷移動物質の酸化の進行により起こることが知られている。また、機械的劣化による画質低下は、上述の電子写真プロセスの反復過程で生じる、堆積物等による感光体の摩耗の進行及び/又は傷の発生により起こることが知られている。特に、画像形成速度の高速化及び装置の小型化を目指すことに伴って感光体が小径化されると、上記反復過程での感光体の使用条件がより厳しくなり機械的劣化による画質低下が顕著になる。
【0010】
例えば、クリーニング部でゴムブレードが使用される場合には、感光体を十分にクリーニングする観点からゴムブレードの当接圧力が大きくなるため、感光体の摩耗の進行が促進され、上記反復過程での感光体の電位変動、感度変動が生じ、これにより異常画像が形成されたり、カラー画像の場合にはその色バランスがくずれて十分な色再現性が得られなくなるという問題が発生していた。
【0011】
このような問題を改善するための方法としては、例えば、感光層の膜厚を厚くすることにより、感光体の摩耗に対する余裕度を高める方法が知られている。
【0012】
【特許文献1】
特開2002−107988号公報
【特許文献2】
特開2002−303997号公報
【特許文献3】
特開平5−294005号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、先に述べた特許文献3に記載の画像形成装置のように露光装置の光源として面発光レーザを用いる画像形成装置では、下記2つの理由により感光体上での光量が低下する欠点があることを本発明者らは見出した。
【0014】
すなわち、一つめの理由は、面発光レーザアレイ自体のキャビティーの容積が小さいために発光点一つ当たりの発光量を十分に得ることができないことである。二つめの理由は、発光点が近接している面発光レーザアレイを利用しつつ同時に感光体上での所望のビーム径を得る観点から、走査光学系中にアパーチャを備える必要があり、そのために光量が低下することである。また、アパーチャを使用する場合、形成する画像の更なる高解像度化を図るためには、より小さなアパーチャを使用しなければならないので、更に光量が低下することとなる。
【0015】
また、先に述べたように感光体の長寿命化を図るために感光層の膜厚を厚くした場合、現在主流となっている電荷発生層及び電荷輸送層からなる積層構造の感光層を備える感光体では、電荷の輸送を担う上記電荷輸送層の膜厚を厚くすると電荷移動の際に電荷が散逸して潜像の乱れが生じ、これに起因して解像度が低下するという問題が発生する。更に、このような方法では膜厚変動に起因する感光体の電位変動、感度変動の発生を防止することが困難であり、加えて、装置の小型化を図ることが困難であった。
【0016】
すなわち、面発光レーザアレイを光源として使用した走査光学系を有する露光装置を搭載した画像形成装置においては、画像の形成速度の高速化ができると同時に、形成する画像の高画質化(高解像度化)を図り、且つ、その画質を長期にわたり良好な状態に保持すること(長寿命化)が困難であった。
【0017】
例えば、高画質化を達成させるためには、感光層は、薄くすることが好ましいが、この場合には長期にわたる繰り返し使用に伴って感光体の摩耗による画像品質の低下が顕著になる。特に、面発光レーザアレイを光源として使用した画像形成装置においては、先に述べたように露光の光量が比較的少なくなるため、感光層の僅かな磨耗が、感光体の電位変動、感度変動、特に低感度化を起こしていた。また、例えば、画像形成装置の小型化を図る観点から感光体の小径化を行うと、接触型の帯電器を使用することが必要になる傾向があること、及び、画像形成のサイクル数が増える傾向があること等から、感光体の摩耗の進行が促進され易く、感光体の寿命が短くなっていた。
【0018】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、形成する画像の高画質化及び画像形成速度の高速化が容易に実現可能であり、しかも長期にわたり画像形成プロセスを繰り返しても良好な画質の画像を得ることができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、搭載する露光装置として、8本以上のレーザビームを電子写真感光体上に走査させることが可能な面発光レーザアレイを有するものを用い、且つ、搭載する上記電子写真感光体として、導電性支持体及び該支持体の上方に配置される感光層を少なくとも有し、前記導電性支持体から最も離れた位置に配置される最外部の層にフッ素系樹脂が含有されてなるものを用いることによって、上述の目的を達成可能な画像形成装置が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0020】
すなわち、本発明は、導電性支持体及び該支持体の上方に配置される感光層を少なくとも有する電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電装置と、前記帯電装置により帯電される前記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光装置と、前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成させる現像装置と、前記トナー像を前記電子写真感光体から被転写媒体に転写する転写装置と、を備える画像形成装置であって、前記露光装置は、面発光レーザアレイを露光光源として備え、8本以上のレーザビームを前記電子写真感光体上に走査させて前記静電潜像を形成させるマルチビーム方式の露光装置であり、前記電子写真感光体の前記導電性支持体から最も離れた位置に配置される最外部の層には、フッ素系樹脂が含有されていることを特徴とする画像形成装置を提供する。
【0021】
かかる画像形成装置によれば、マルチビーム方式の静電潜像を形成する方法、特に、アレイ化が容易な面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Emitting Laser)を光源として用い、同時に走査させるレーザビームの本数を8本以上とすることにより、画質の向上と画像形成速度の高速化とを実現することができる。また、この場合、記録密度を高めることもできる。
【0022】
更に、本発明の画像形成装置における面発光レーザアレイは、主走査方向に3行以上、副走査方向に3列以上のレーザビーム発生源が2次元的に配置された構造を有するものであることが好ましい。これにより、画質の向上と画像形成速度の高速化をより確実に実現することが可能となる傾向がある。
【0023】
また、1つのビームを音響素子により擬似的に複数ビームとすると、電子写真感光体上に形成される静電潜像の中に露光終了までの光ビームの走査回数(照射回数)が異なる領域が混在し、各領域間での照射回数の相違が画像上に筋状の濃度ムラとして視認されることがあるが、面発光レーザアレイを利用することでビーム数を増やしても露光時間は減少することがなく、筋状の濃度ムラを十分に低減し画像の高画質化を図ることができ、同時に画像形成速度の高速化を容易に実現することができる。
【0024】
更に、本発明の画像形成装置によれば、搭載される電子写真感光体において、導電性支持体から最も離れた位置に配置される最外部の層にフッ素系樹脂を含有させることにより、電子写真プロセスにおいての、帯電、露光、現像、転写、クリーニングの反復過程で生じる感光層の摩耗の進行を十分に抑制し、感光体の長寿命化を図ることが可能となる。そして、上述の面発光レーザアレイを用いた際に、その露光の光量が少ないことに起因して顕著となる、感光層の摩耗の進行に伴って発生する感光体の電位変動、感度変動を十分に防止することができ、画像品質の低下を十分に抑制することが可能となる。また、面発光レーザの欠点である、可変光量が少なく制御幅が狭いことを補うことができる。更に、本発明の画像形成装置によれば、感光層を薄膜化することが可能なため、装置の小型化に有用であるとともに、静電潜像形成時の電荷の拡散による画像品質の低下を十分に抑制することができる。
【0025】
したがって、本発明の画像形成装置によれば、形成する画像の高画質化、画像形成速度の高速化、及び装置の小型化が容易に実現可能であり、しかも長期にわたり画像形成プロセスを繰り返しても良好な品質の画像を得ることができる。例えば、本発明の画像形成装置によれば、記録密度1200dot/inch(dpi)以上の高解像度の画像品質を長期にわたり形成することも可能である。
【0026】
また、本発明の効果をより確実に得る観点から、前記フッ素系樹脂は、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、6フッ化エチレンプロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂及び2フッ化2塩化エチレン樹脂からなる群より選択される少なくとも一種の樹脂、及び/又は、4フッ化エチレン、3フッ化塩化エチレン、6フッ化エチレンプロピレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン及び2フッ化2塩化エチレンからなる群より選択される少なくとも二種のモノマーに基づく繰り返し単位を有する共重合体を含有してなるものであることが好ましく、前記帯電装置は、前記電子写真感光体に接触して該電子写真感光体を帯電させる接触帯電装置であることが好ましい。
【0027】
また、本発明は、導電性支持体及び該支持体の上方に配置される感光層を少なくとも有する電子写真感光体と、帯電装置、現像装置、転写装置及びクリーニング装置のうちの少なくとも一つの装置と、を一体に有し、露光装置を備える画像形成装置に着脱自在であるプロセスカートリッジであって、前記露光装置は、面発光レーザアレイを有し、8本以上のレーザビームを前記電子写真感光体上に走査させて前記静電潜像を形成させるマルチビーム方式の露光装置であり、前記電子写真感光体の前記導電性支持体から最も離れた位置に配置される最外部の層には、フッ素系樹脂が含有されていることを特徴とするプロセスカートリッジを提供する。
【0028】
かかるプロセスカートリッジは、上記面発光レーザアレイを有する露光装置が搭載された画像形成装置に装着され、上記構成を有する電子写真感光体を搭載していることにより、画像の高画質化、画像形成速度の高速化及び装置の小型化が容易に実現可能であり、しかも長期にわたり画像形成プロセスを繰り返しても良好な品質の画像を得ることができる。
【0029】
また、画像の高画質化及び画像形成速度の高速化をより確実に実現する観点から、本発明のプロセスカートリジが搭載されるべき画像形成装置における面発光レーザアレイは、主走査方向に3行以上、副走査方向に3列以上のレーザビーム発生源が2次元的に配置された構造を有するものであることが好ましい。
【0030】
更に、本発明の効果をより確実に得る観点から、前記フッ素系樹脂は、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、6フッ化エチレンプロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂及び2フッ化2塩化エチレン樹脂からなる群より選択される少なくとも一種の樹脂、及び/又は、4フッ化エチレン、3フッ化塩化エチレン、6フッ化エチレンプロピレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン及び2フッ化2塩化エチレンからなる群より選択される少なくとも二種のモノマーに基づく繰り返し単位を有する共重合体を含有してなるものであることが好ましく、前記帯電装置は、前記電子写真感光体に接触して該電子写真感光体を帯電させる接触帯電装置であることが好ましい。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0032】
(画像形成装置)
まず、本発明の画像形成装置の好適な一実施形態について説明する。図1は、本発明の画像形成装置の好適な一実施形態を示す概略構成図である。
【0033】
図1に示した画像形成装置10は電子写真感光体12を備えるもので、電子写真感光体12は、駆動装置(図示せず)により所定の回転速度で矢印Aの向きに回転可能となっている。電子写真感光体12の略上方には、電子写真感光体12の外周面を帯電させる帯電器14が設けられている。
【0034】
また、帯電器14の略上方には露光装置(レーザビーム走査装置)16が配置されている。詳細は後述するが、露光装置16は、光源から射出される複数本のレーザビームを、形成すべき画像に応じて変調すると共に、主走査方向に偏向し、帯電器14により帯電した電子写真感光体12の外周面上を電子写真感光体12の軸線と平行に走査させる。
【0035】
電子写真感光体12の側方には現像装置18が配置されている。現像装置18は回転可能に配置されたローラ状の収容体を備えている。この収容体の内部には4個の収容部が形成されており、各収容部には現像器18Y,18M,18C,18Kが設けられている。現像器18Y,18M,18C,18Kは各々現像ローラ20を備え、内部に各々イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)の各色のトナーを貯留している。
【0036】
また、電子写真感光体12の略下方には無端の中間転写ベルト24が配設されている。中間転写ベルト24はローラ26,28,30に巻掛けられており、外周面が電子写真感光体12の外周面に接触するように配置されている。ローラ26〜30はモータ(図示せず)の駆動力が伝達されて回転し、中間転写ベルト24を矢印Bの向きに回転させる。
【0037】
中間転写ベルト24を挟んで電子写真感光体12の反対側には転写器32が配置されている。電子写真感光体12の外周面上に形成されたトナー像は転写器32によって中間転写ベルト24の画像形成面に転写される。
【0038】
中間転写ベルト24よりも下方側にはトレイ34が配置されており、トレイ34内には記録材料としての用紙Pが多数枚積層された状態で収容されている。図1におけるトレイ34の左斜め上方には取り出しローラ36が配置されており、取り出しローラ36による用紙Pの取り出し方向下流側にはローラ対38、ローラ40が順に配置されている。積層状態で最も上方に位置している記録紙は、取り出しローラ36が回転されることによりトレイ34から取り出され、ローラ対38、ローラ40によって搬送される。
【0039】
また、中間転写ベルト24を挟んでローラ30の反対側には転写器42が配置されている。ローラ対38、ローラ40によって搬送された用紙Pは、中間転写ベルト24と転写器42の間に送り込まれ、中間転写ベルト24の画像形成面に形成されたトナー像が転写器42によって転写される。転写器42よりも用紙Pの搬送方向下流側には、定着ローラ対を備えた定着器44が配置されており、トナー像が転写された用紙Pは、転写されたトナー像が定着器44によって溶融定着された後に画像形成装置10の機体外へ排出され、排紙トレイ(図示せず)上に載置される。
【0040】
また、電子写真感光体12を挟んで現像装置18の反対側には、電子写真感光体12の外周面を除電する機能及び外周面上に残留している不要トナーを除去する機能を備えた除電・清掃器22が配置されている。電子写真感光体12の外周面上に形成されたトナー像が中間転写ベルト24に転写されると、電子写真感光体12の外周面のうち転写されたトナー像を担持していた領域は、除電・清掃器22によって清掃される。
【0041】
図1に示した画像形成装置10では、電子写真感光体12が4回転する回転過程においてフルカラー画像の形成が行われる。すなわち、電子写真感光体12が4回転する間、帯電器14は電子写真感光体12の外周面の帯電、除電・清掃器22は外周面の除電を継続し、露光装置16は、形成すべきカラー画像を表すY,M,C,Kの画像データのうちの何れかに応じて変調したレーザビームを電子写真感光体12の外周面上で走査させることを、電子写真感光体12が1回転する毎にレーザビームの変調に用いる画像データを切替えながら繰り返す。また、現像装置18は、現像器18Y,18M,18C,18Kの何れかの現像ローラ20が電子写真感光体12の外周面に対応している状態で、外周面に対応している現像器を作動させ、電子写真感光体12の外周面に形成された静電潜像を特定の色に現像し、電子写真感光体12の外周面上に特定色のトナー像を形成させることを、電子写真感光体12が1回転する毎に、静電潜像の現像に用いる現像器が切り替わるように収容体を回転させながら繰り返す。
【0042】
これにより、電子写真感光体12が1回転する毎に、電子写真感光体12の外周面上には、Y,M,C,Kのトナー像が互いに重なるように順次形成されることになり、電子写真感光体12が4回転した時点で電子写真感光体12の外周面上にフルカラーのトナー像が形成されることになる。
【0043】
このように、複数本のレーザビームを電子写真感光体上に走査させて静電潜像を形成させるマルチビーム方式の露光装置14と共に、先に述べた構成を有する電子写真感光体12を用いることによって、画像の画質の向上、画像形成速度の高速化、及び装置の小型化が容易に実現可能であり、しかも長期にわたり画像形成プロセスを繰り返しても良好な画質の画像を得ることができる。
【0044】
次に、電子写真感光体12の好ましい例について詳述する。
【0045】
図2〜5は、それぞれ電子写真感光体12の好適な一例を示す模式断面図であり、導電性支持体1と感光層4との積層方向に沿って電子写真感光体12を切断したときの部分断面図である。
【0046】
図2〜5に示す電子写真感光体12は、電荷発生材料を含有する層(電荷発生層2)と電荷輸送材料を含有する層(電荷輸送層3)とに機能が分離された感光層4を備えるものである。
【0047】
図2に示す電子写真感光体12は、導電性支持体1上に電荷発生層2、電荷輸送層3が順次積層された構造を有するものである。
【0048】
図3に示す電子写真感光体12は、導電性支持体1上に下引層5、電荷発生層2、電荷輸送層3が順次積層された構造を有するものである。
【0049】
図4に示す電子写真感光体12は、導電性支持体1上に電荷発生層2、電荷輸送層3、保護層6が順次積層された構造を有するものである。
【0050】
図5に示す電子写真感光体12は、導電性支持体1上に下引層5、電荷発生層2、電荷輸送層3、保護層6が順次積層された構造を有するものである。
【0051】
そして、電子写真感光体12において導電性支持体1から最も離れた位置に配置されている最外部の層(図2及び3に示す感光体では電荷輸送層3、図4及び5に示す感光体では保護層6)には、フッ素系樹脂7が含有されている。
【0052】
以下、このような電子写真感光体12を構成する各要素について詳述する。
【0053】
まず、導電性支持体12について説明する。導電性支持体12の材質としては、導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼等の金属類;アルミニウム、チタニウム、ニッケル、クロム、ステンレス、金、バナジウム、酸化錫、酸化インジウム、ITO(酸化インジウムスズ)等の薄膜を設けたプラスチックフィルム;導電性付与剤を塗布又は含浸させた紙又はプラスチックフィルム、等が挙げられる。これらの導電性支持体の形状としては特に制限されないが、例えば、ドラム状、シート状、プレート状等の形状で使用される。
【0054】
また、導電性支持体1として金属パイプを用いる場合、金属パイプは素管のまま用いてもよいが、予め鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニング、着色処理等の処理を施したものを用いることが好ましい。表面処理により基材表面を粗面化することで、レーザビームのような可干渉光源を用いた場合に発生しうる感光体内での干渉光による木目状の濃度斑を防止することができる。
【0055】
次に、下引層5について説明する。下引層5は、積層構造を有する感光層4の帯電の際に、導電性支持体1から感光層4への電荷の注入を阻止するとともに、感光層4を導電性支持体1に対して一体的に接着保持せしめる接着層としての作用を有するものである、また、下引層5は、場合によっては導電性支持体1の光の反射防止作用等示すことができる。かかる効果を有し、高画質な画像を維持する観点から、本発明にかかる電子写真感光体12は、下引層5を備えていることが好ましい。
【0056】
下引層5の材料としては、ポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂等の高分子樹脂化合物、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等が挙げられる。また、電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂等を用いることができる。これらの化合物は単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いることができる。中でも上層(例えば、電荷発生層2)形成用塗布液に含まれる溶剤に不溶な樹脂が好ましく用いられ、特にフェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。更に、ジルコニウムキレート化合物、シランカップリング剤は残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少ないなど性能上優れている。
【0057】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらの中でも、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシシラン)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。
【0058】
ジルコニウムキレート化合物としては、例えば、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
【0059】
チタニウムキレート化合物としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0060】
アルミニウムキレート化合物としては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0061】
下引層5中には、感光体特性向上のために、導電性物質を含有させることができる。導電性物質としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫等の金属酸化物等が挙げられるが、所望の感光体特性が得られるのであれば、公知のいかなるものでも使用することができる。
【0062】
これらの金属酸化物には表面処理を施すことができる。表面処理を施すことで、抵抗値の制御、分散性制御、感光体特性向上を図ることができる。表面処理剤としては、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料を用いることができる。これらの化合物は単独あるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いることができる。中でもシランカップリング剤は残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少ない、画質特性に優れるなど性能上優れている。
【0063】
シランカップリング剤、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物の例としては前述した例と同じ物質が挙げられる。
【0064】
表面処理方法は公知の方法であればいかなる方法でも使用可能であるが、乾式法あるいは湿式法を用いることができる。
【0065】
乾式法により表面処理を施す場合、金属酸化物微粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、シランカップリング剤を直接又は有機溶媒に溶解させて滴下し、それらの混合物を乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させることによって、均一な表面処理が行われる。シランカップリング剤の滴下及び混合物の噴霧は、使用する溶剤の沸点以下の温度で行うことが好ましい。滴下又は噴霧を溶剤の沸点以上の温度で行うと、均一に攪拌される前に溶剤が蒸発し、シランカップリング剤が局部的に凝集して均一な処理ができにくくなる傾向がある。
【0066】
このようにして表面処理された金属酸化物粒子について、更に100℃以上で焼き付けを行うことができる。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。湿式法としては、金属酸化物微粒子を溶剤中に攪拌、超音波、サンドミルやアトライター、ボールミル等を用いて分散し、シランカップリング剤溶液を添加して、攪拌又は分散した後、溶剤を除去することで均一に処理される。溶剤は蒸留により留去することが好ましい。なお、ろ過による除去方法では未反応のシランカップリング剤が流出しやすく、所望の特性を得るためのシランカップリング剤量をコントロールしにくくなる傾向がある。溶剤除去後には更に100℃以上で焼き付けを行うことができる。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。湿式法においては金属酸化物微粒子含有水分除去法として表面処理に用いる溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法等を用いることもできる。
【0067】
下引層5中の金属酸化物微粒子に対するシランカップリング剤の量は、所望の電子写真特性が得られる量であればいかなる量でも用いることができる。また、下引層5中に用いられる金属酸化物微粒子と樹脂との割合は、所望の電子写真特性が得られる割合であれば任意に設定できる。
【0068】
下引層5中には、光散乱性の向上等の目的により、各種の有機もしくは無機微粉末を混合することができる。かかる微粉末の好ましい例としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、リトポン等の白色顔料や、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の体質顔料としての無機顔料や、テフロン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、スチレン樹脂粒子等が挙げられる。これらの微粉末の粒径は、0.01〜2μmであることが好ましい。微粉末は必要に応じて添加される成分であるが、添加する場合の配合量は、下引層5に含まれる固形分に対して、質量比で10〜80質量%であることが好ましく、30〜70質量%であることがより好ましい。
【0069】
また、下引層5の形成に用いられる塗布液(下引層形成用塗布液)には、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加物を用いることができる。添加物としては、クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物等の電子輸送性物質、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料等が挙げられる。
【0070】
下引層形成用塗布液を調製するに際し、前述の導電性物質や光散乱物質等の微粉末を混入させる場合には、樹脂成分を溶解した溶液中に微粉末を添加して分散処理が行うことが好ましい。微粉末を樹脂中に分散させる方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー等の方法を用いることができる。
【0071】
また、下引層形成用塗布液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0072】
下引層5の膜厚は、好ましくは0.01〜50μm、より好ましくは0.05〜30μmである。
【0073】
次に、電荷発生層2について説明する。電荷発生層2は、電荷発生材料及び結着樹脂を含んで構成される。
【0074】
かかる電荷発生材料としては、公知の電荷発生材料を特に制限なく使用することができるが、中でも金属及び無金属フタロシアニン顔料が好ましく用いられ、特定の結晶を有するヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ジクロロスズフタロシアニン、チタニルフタロシアニンが特に好ましく用いられる。
【0075】
電荷発生層2において好ましく用いられる電荷発生材料は、公知の方法で製造される顔料結晶を、自動乳鉢、遊星ミル、振動ミル、CFミル、ローラーミル、サンドミル、及びニーダー等を用いて機械的に乾式粉砕するか、乾式粉砕後、溶剤と共にボールミル、乳鉢、サンドミル、及びニーダー等を用いて湿式粉砕処理を行うことによって製造することができる。
【0076】
湿式粉砕処理において使用される溶剤は、芳香族類(トルエン、クロロベンゼン等)、アミド類(ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等)、脂肪族アルコール類(メタノール、エタノール、ブタノール等)、脂肪族多価アルコール類(エチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等)、芳香族アルコール類(ベンジルアルコール、フェネチルアルコール等)、エステル類(酢酸エステル、酢酸ブチル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、ジメチルスルホキシド、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、又はこれらの数種の混合系、あるいは水とこれら有機溶剤との混合系が挙げられる。
【0077】
これら溶剤の使用量は、顔料結晶1質量部に対して1〜200質量部、好ましくは10〜100質量部が望ましい。また、湿式粉砕処理における処理温度は、0℃以上溶剤の沸点以下、好ましくは10〜60℃である。また、粉砕の際に食塩、ぼう硝等の磨砕助剤を用いてもよい。磨砕助剤は、顔料に対して0.5〜20倍、好ましくは1〜10倍(いずれも質量換算値)用いればよい。
【0078】
また、公知の方法で製造される顔料結晶について、アシッドペースティング又はアシッドペースティングと前述したような乾式粉砕又は湿式粉砕との組み合わせによって結晶制御することもできる。アシッドペースティングに用いる酸としては、硫酸が好ましく、この硫酸の濃度は70〜100%、好ましくは95〜100%の濃度のものが使用される。この濃硫酸の量は、顔料結晶の質量に対して、1〜100倍、好ましくは3〜50倍(いずれも質量換算値)の範囲に設定される。また、溶解温度は、−20〜100℃、好ましくは0〜60℃の範囲に設定される。結晶を酸から析出させる際の溶剤としては、水、或いは水と有機溶剤の混合溶剤を任意の量で使用できる。析出させる温度については特に制限はないが、発熱を防ぐために、氷等で冷却することが好ましい。
【0079】
これらの電荷発生材料は、加水分解性基を有する有機金属化合物又はシランカップリング剤で被覆処理してもよい。かかる被覆処理によって電荷発生材料の分散性や電荷発生層用塗布液の塗布性が向上し、平滑で分散均一性の高い電荷発生層2を容易に且つ確実に成膜することができ、その結果、カブリやゴースト等の画質欠陥が防止され、画質維持性を向上させることができる。また、電荷発生層用塗布液の保存性も著しく向上するので、ポットライフの延長の点でも効果的であり、感光体のコストダウンも可能となる。
【0080】
上記加水分解性基を有する有機金属化合物は、下記一般式(I):
Rp−M−Yq (I)
で表される化合物である。なお、式中、Rは有機基を表し、Mはアルカリ金属以外の金属原子又はケイ素原子を表し、Yは加水分解性基を表し、p及びqはそれぞれ1〜4の整数であり、pとqとの和はMの原子価に相当する。
【0081】
一般式(I)中、Rで表される有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアリールアルキル基、スチリル基等のアリールアルケニル基、フリル基、チエニル基、ピロリジニル基、ピリジル基、イミダゾリル基等の複素環残基等が挙げられる。これらの有機基は1または2種以上の各種の置換基を有していてもよい。
【0082】
また、一般式(I)中、Yで表される加水分解性基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、シクロヘキシルオキシ基、フェノキシ基、ベンジロキシ基等のエーテル基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、ベンゾイルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基、ベンジロキシカルボニル基等のエステル基、塩素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
【0083】
また、一般式(I)中、Mはアルカリ金属以外であれば特に制限されるものではないが、好ましくはチタン原子、アルミニウム原子、ジルコニウム原子又はケイ素原子である。すなわち、本発明に係る感光体においては、上記の有機基や加水分解性の官能基を置換した有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物、有機ジルコニウム化合物、さらにはシランカップリング剤が好ましく用いられる。
【0084】
また、上記シランカップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシシラン)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ。
【0085】
これらの中でも、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシランがより好ましい。
【0086】
また、上記の有機金属化合物及びシランカップリング剤の加水分解生成物も使用することができる。この加水分解生成物としては、上記一般式(I)で示される有機金属化合物のM(アルカリ金属以外の金属原子又はケイ素原子)に結合するY(加水分解性基)やR(有機基)に置換する加水分解性基が加水分解したものが挙げられる。なお、有機金属化合物及びシランカップリング剤が加水分解性基を複数含有する場合は、必ずしも全ての官能基を加水分解する必要はなく、部分的に加水分解された生成物であってもよい。また、これらの有機金属化合物及びシランカップリング剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
【0087】
上記の加水分解性基を有する有機金属化合物及び/又はシランカップリング剤(以下、単に「有機金属化合物」という)を用いてフタロシアニン顔料を被覆処理する方法としては、フタロシアニン顔料の結晶を整える過程で該フタロシアニン顔料を被覆処理する方法、フタロシアニン顔料を結着樹脂に分散する前に被覆処理する方法、フタロシアニン顔料の結着樹脂への分散時に有機金属化合物を混合処理する方法、フタロシアニン顔料の結着樹脂への分散後に有機金属化合物で更に分散処理する方法等が挙げられる。
【0088】
より具体的には、顔料の結晶を整える過程で予め被覆処理する方法としては、有機金属化合物と結晶が整う前のフタロシアニン顔料とを混合した後加熱する方法、有機金属化合物を結晶が整う前のフタロシアニン顔料に混合し機械的に乾式粉砕する方法、有機金属化合物の水または有機溶剤中の混合液を結晶が整う前のフタロシアニン顔料に混合し湿式粉砕処理方法等が挙げられる。
【0089】
また、フタロシアニン顔料を結着樹脂に分散する前に被覆処理する方法としては、有機金属化合物、水又は水と有機溶剤との混合液、並びにフタロシアニン顔料を混合して加熱する方法、有機金属化合物をフタロシアニン顔料に直接噴霧する方法、有機金属化合物をフタロシアニン顔料と混合しミリングする方法等がある。
【0090】
また、分散時に混合処理する方法としては、分散溶剤に有機金属化合物、フタロシアニン顔料、結着樹脂を順次添加しながら混合する方法、これらの電荷発生層2形成成分を同時に添加し混合する方法等が挙げられる。
【0091】
また、フタロシアニン顔料を結着樹脂中に分散した後に有機金属化合物で更に分散処理する方法としては、例えば溶剤で希釈した有機金属化合物を分散液に添加し攪拌しながら分散する方法が挙げられる。また、かかる分散処理の際、より強固にフタロシアニン顔料に付着させるために、触媒として硫酸、塩酸、トリフルオロ酢酸等の酸を添加してもよい。
【0092】
これらの中でも、フタロシアニン顔料の結晶を整える過程で予め被覆処理する方法、又はフタロシアニン顔料を結着樹脂に分散する前に被覆処理する方法が好ましい。
【0093】
電荷発生層2に用いる結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択することができる。また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーから選択することもできる。好ましい結着樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノールAとフタル酸との重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等の絶縁性樹脂を挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの結着樹脂は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。電荷発生材料と結着樹脂との配合比(質量比)は、10:1〜1:10の範囲が好ましい。
【0094】
電荷発生層2は、例えば、電荷発生材料及び結着樹脂を含む塗布液の塗布により形成される。塗布液の溶媒としては、結着樹脂を溶解することが可能であれば特に制限なく使用することができ、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を単独で又は2種以上混合して用いることができる。
【0095】
電荷発生材料及び結着樹脂を溶媒に分散させる方法としては、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の通常の方法を用いることができるが、この際、分散によって電荷発生材料の結晶型が変化しない条件で行うことが好ましい。また、この分散の際、電荷発生材料を好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.3μm以下、更に好ましくは0.15μm以下の粒子サイズにすることが有効である。
【0096】
また、かかる塗布液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法が挙げられる。
【0097】
電荷発生層2の膜厚は、好ましくは0.1〜5μm、より好ましくは0.2〜2.0μmである。
【0098】
次に、電荷輸送層3について説明する。電荷輸送層3は、電荷輸送材料及び結着樹脂を含み、電子写真感光体12が保護層6を有さない場合には、先に述べたようにフッ素系樹脂7を更に含んで構成されるものである。
【0099】
かかるフッ素系樹脂7としては、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、6フッ化プロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、2フッ化2塩化エチレン樹脂及びこれらの樹脂を構成する単量体の2種以上からなる共重合体からなる群から選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。
【0100】
本発明にかかるフッ素系樹脂7は、通常、粒子形状を有しているが、その平均一次粒径としては、好ましくは0.05〜1μmであり、より好ましくは0.1〜0.5μmである。平均一次粒径が0.05μm未満では、分散時の凝集が起こりやすくなる傾向があり、1μmを超えると、形成する画像の画質欠陥が発生し易くなる傾向がある。
【0101】
更に、電荷輸送層3中のフッ素系樹脂7の含有量は、電荷輸送層3に含まれる固形分全量を基準として、0.1〜40質量%であることが好ましく、1〜30質量%であることがより好ましい。含有量が1質量%未満では、フッ素系樹脂7による改質効果が不十分となり、感光体の長寿命化が不十分となる傾向があり、40質量%を越えると、光通過性が低下や繰返し使用による残留電位の上昇が起こりやすくなる傾向がある。
【0102】
電荷輸送層3に用いる電荷輸送材料としては、例えば、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、トリ(p−メチルフェニル)アミニル−4−アミン、ジベンジルアニリン等の芳香族第3級アミノ化合物、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4’−ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4’−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジン等の1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリン等のキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N−ジフェニルアニリン等のα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体等の正孔輸送物質;クロラニル、ブロアントラキノン等のキノン系化合物、テトラアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物等の電子輸送物質;あるいは上記化合物から水素原子等を除いた残基を主鎖又は側鎖に有する重合体等が挙げられる。これらの電荷輸送材料は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0103】
電荷輸送層3に用いる結着樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリアリレート、ポリエステル樹脂、ビスフェノールAタイプ或いはビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリスルホン、ポリアクリルアミド、ポリアミド、塩素ゴム等の絶縁性樹脂、およびポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等の有機光導電性ポリマー等が挙げられる。これらの結着樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0104】
電荷輸送層3は、上記の電荷輸送材料及び結着樹脂を所定の溶媒に溶解及び/又は分散させ、そこに上記のフッ素系樹脂7を加えて分散させた塗布液を塗布し乾燥することによって形成することができる。塗布液に用いる溶媒としては、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n―ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状又は直鎖状エーテル系溶剤、あるいはこれらの混合溶剤等を用いることができる。電荷輸送材料と結着樹脂との配合比(質量比)は10:1〜1:5が好ましい。
【0105】
塗布液を調製する際にフッ素系樹脂7を分散させる方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、高圧ホモジナイザー、超音波分散機、コロイドミル、衝突式メディアレス分散機、貫通式メディアレス分散機等の方法を用いることができる。
【0106】
また、塗布液を調製する際に、フッ素系樹脂7の分散安定性を向上させ、且つ塗膜形成時の凝集を防止する観点から、分散助剤を更に添加することが好ましい。かかる分散助剤としては、フッ素系界面活性剤、フッ素系ポリマー、シリコーン系ポリマー、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0107】
このような塗布液を塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、スプレー塗布法、ロールコータ塗布法、グラビアコータ塗布法等が挙げられる。また、電荷輸送層3の膜厚は、5〜50μmであることが好ましく、10〜35μmであることがより好ましい。
【0108】
また、電子写真感光体12においては、通常、導電性支持体1から近い順に電荷発生層2、電荷輸送層3が積層されているが、これらの層の順序は逆であってもよい。この場合には、電子写真感光体12において導電性支持体1から最も離れた位置に配置される最外部の層が電荷発生層2となるため、上記フッ素系樹脂7は該電荷発生層2に含有させることになる。このとき、電荷発生層2におけるフッ素系樹脂7の含有量や分散方法等については、上述した電荷輸送層3に含有させる場合と同様の条件を採用することが好ましい。また、フッ素系樹脂7は、電荷発生層2及び電荷輸送層3の両方に含有させていてもよい。更に、電荷発生層2と電荷輸送層3との間に他の層が存在していてもよい。
【0109】
また、本発明にかかる電子写真感光体12において、感光層4は電荷輸送材料及び電荷発生材料を同一の層に含有する単層構造を有するものであってもよい。この場合には、当該感光層4にフッ素系樹脂7を含有させればよく、このときのフッ素系樹脂7の含有量や分散方法等についても、上述した電荷輸送層3に含有させる場合と同様の条件を採用することが好ましい。なお、本発明にかかる電子写真感光体12においては、保護層6が設けられている場合、最外部の層、すなわち、保護層6にフッ素系樹脂7を含有させる必要がある。
【0110】
次に、保護層6について説明する。保護層6は、必要に応じて設けられる層であり、かかる層を設けることにより、積層構造を有する感光層4の帯電の際に、電荷輸送層3の化学的変化を防止したり、感光層4の機械的強度を向上することができる傾向がある。
【0111】
この保護層6としては、例えば、電荷輸送機能を有する高分子にシリコーンハードコート剤をハイブリッドさせたもの、高分子化合物中に金属酸化物等の微粒子を分散させたもの、導電性高分子化合物等の保護層6を形成する基材となる材料に、上述したフッ素系樹脂7を分散させたものが挙げられる。このときの保護層6におけるフッ素系樹脂7の含有量や分散方法等については、上述した電荷輸送層3に含有させる場合と同様の条件を採用することが好ましい。また、保護層6の膜厚は、好ましくは0.05〜20μmである。
【0112】
本発明にかかる電子写真感光体12においては、画像形成装置10中で発生するオゾンやNOX、あるいは光や熱による感光体の劣化を防止する目的で、感光層4、保護層6等に酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等の添加剤を添加することができる。
【0113】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノンおよびそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機リン化合物等が挙げられる。
【0114】
光安定剤としては、ベンゾフェノン、ベンゾアゾール、ジチオカルバメート、テトラメチルピペン等の誘導体が挙げられる。
【0115】
また、電子写真感光体12の表面の平滑性を向上させる目的で、電子写真感光体12における最外部の層中にシリコーンオイル等のレベリング剤を添加することができる。
【0116】
次に、図6を参照し、露光装置16について説明する。露光装置16はm本(mは少なくとも8以上)のレーザビームを射出する面発光レーザアレイ50を備えている。なお、図6では簡略化のためにレーザビームを3本のみ示しているが、面発光レーザをアレイ化してなる面発光レーザアレイ50は、例えば数十本のレーザビームを射出するように構成することができ、また、面発光レーザの配列(面発光レーザアレイ50から射出されるレーザビームの配列)についても、1列に配列する以外に、2次元的に(例えばマトリクス状に)配列することも可能である。
【0117】
図7は、発光点(レーザビーム発生源)51が2次元的に配列されたレーザアレイ50を示す平面図である。図示の通り、レーザアレイ50には、所定の間隔で、主走査方向に3行、副走査方向に3列の計9個の発光点51が2次元的に配置されている。また、主走査方向に並んだ発光点51は、副走査方向に隣り合う発光点51との距離を4等分した距離を1ステップとし、副走査方向に1ステップずつ段階的にずれるように配置されている。すなわち、副走査方向に限ってみれば、1ステップ毎に発光点51が配置されていることになる。このように副走査方向に段階的にずらして発光点51を配置することにより、全ての発光点51が異なる走査線を走査することができるようになっている。これにより、レーザアレイ50は9本の走査線を同時に走査することができる。
【0118】
また、面発光レーザアレイ50の発光点は、上述のように3行以上×3列以上に並んでいることが好ましく、4行以上×4列以上に並んでいることがより好ましく、6行以上×6列以上に並んでいることが特に好ましい。これにより、形成する画像の高画質化(高解像度化)及び画像形成速度の高速化をより確実に実現することが可能となる傾向がある。
【0119】
更に、露光装置16は、上述の通り8本以上のレーザビームをそれぞれ独立に電子写真感光体12上に走査させるものであることが必要であるが、上記効果(高画質化及び高速化)をより有効に得る観点から、ビーム数を16本以上とすることが好ましく、32本以上とすることがより好ましい。
【0120】
図6に戻り、面発光レーザアレイ50のレーザビーム射出側には、コリメートレンズ52、ハーフミラー54が順に配置されている。面発光レーザアレイ50から射出されたレーザビームは、コリメートレンズ52によって略平行光束とされた後にハーフミラー54に入射され、ハーフミラー54によって一部が分離・反射される。ハーフミラー54のレーザビーム反射側にはレンズ56、光量センサ58が順に配置されており、ハーフミラー54によって主レーザビーム(露光に用いるレーザビーム)から分離・反射された一部のレーザビームは、レンズ56を透過して光量センサ58へ入射され、光量センサ58によって光量が検出される。
【0121】
なお、面発光レーザは、露光に用いるレーザビームが射出される側と反対側からはレーザビームが射出されない(端面発光レーザでは両側から射出される)ため、レーザビームの光量を検出・制御するためには、上記のように露光に用いるレーザビームの一部を分離して光量検出に供することが必要になる。
【0122】
ハーフミラー54の主レーザビーム射出側には、アパーチャ60、副走査方向にのみパワーを有するシリンダレンズ62、折り返しミラー64が順に配置されており、ハーフミラー54から射出された主レーザビームは、アパーチャ60によって整形された後に、回転多面鏡66の反射面近傍で主走査方向に長い線状に結像するようにシリンダレンズ62によって屈折され、折り返しミラー64によって回転多面鏡66側へ反射される。なお、パーチャ60は複数本のレーザビームを均等に整形するために、コリメートレンズ52の焦点位置近傍に配置することが望ましい。
【0123】
回転多面鏡66は、図示しないモータの駆動力が伝達されて図6中の矢印C方向に回転され、折り返しミラー64によって反射されて入射されたレーザビームを主走査方向に沿って偏向・反射する。回転多面鏡66のレーザビーム射出側には主走査方向にのみパワーを有するFθレンズ68,70が配置されており、回転多面鏡66によって偏向・反射されたレーザビームは、電子写真感光体12の外周面上を略等速で移動し、且つ主走査方向の結像位置が電子写真感光体12の外周面上に一致するようにFθレンズ68,70によって屈折される。
【0124】
Fθレンズ68,70のレーザビーム射出側には、副走査方向にのみパワーを有するシリンダミラー72,74が順に配置されており、Fθレンズ68,70を透過したレーザビームは、副走査方向の結像位置が電子写真感光体12の外周面に一致するようにシリンダミラー72,74によって反射され、電子写真感光体12の外周面上に照射される。なお、シリンダミラー72,74は回転多面鏡66と電子写真感光体12の外周面を副走査方向において共役にする面倒れ補正機能も有している。
【0125】
また、シリンダミラー72のレーザビーム射出側には、レーザビームの走査範囲のうち走査開始側の端部(SOS:Start Of Scan)に相当する位置にピックアップミラー76が配置されており、ピックアップミラー76のレーザビーム射出側にはビーム位置検出センサ78が配置されている。面発光レーザアレイ50から射出されたレーザビームは、回転多面鏡66の各反射面のうちのレーザビームを反射している面が、入射ビームをSOSに相当する方向へ反射する向きとなったときに、ピックアップミラー76で反射されてビーム位置検出センサ78に入射される(図6の想像線も参照)。
【0126】
ビーム位置検出センサ78から出力された信号は、回転多面鏡66の回転に伴って電子写真感光体12の外周面上を走査されるレーザビームを変調して静電潜像を形成するにあたり、各回の主走査における変調開始タイミングの同期をとるために用いられる。
【0127】
また、本実施形態にかかる露光装置16では、コリメートレンズ52とシリンダレンズ62、2枚のシリンダミラー72,74が各々副走査方向においてアフォーカルになる様に配置されている。これは、複数本のレーザビームの走査線湾曲(BOW)の差と複数本のレーザビームによる走査線間隔の変動を抑制するためである。
【0128】
続いて、画像形成装置10の制御装置のうち、露光装置16の面発光レーザアレイ50からのレーザビームの射出を制御する部分(以下、この部分を制御部80と称する)の構成について、図8を参照して説明する。制御装置は、画像形成装置10によって形成すべき画像を表す画像データを記憶するための記憶部82を内蔵しており、記憶部82に記憶された画像データは、画像形成装置10によって画像が形成される際に制御部80の変調信号生成手段84に入力される。
【0129】
図示は省略するが、変調信号生成手段84にはビーム位置検出センサ78が接続されている。変調信号生成手段84は、記憶部82から入力された画像データを、面発光レーザアレイ50から射出されるm本のレーザビームの何れかに各々対応するm個の画像データに分解し、分解したm個の画像データに基づき、ビーム位置検出センサ78から入力された信号によって検知されるSOSのタイミングを基準として、面発光レーザアレイ50から射出されるm本のレーザビームの各々をオンオフさせるタイミングを規定するm個の変調信号を生成し、レーザ駆動回路(LDD)86に出力する。
【0130】
LDD86には駆動量制御手段88が接続されており、面発光レーザアレイ50から射出されるm本のレーザビームを、変調信号生成手段84から入力された変調信号に応じたタイミングでオンオフすると共に、オン時のレーザビームの光量を、駆動量制御手段88から入力される駆動量設定信号に対応する光量にするためのm個の駆動電流を生成し、面発光レーザアレイ50のm個の面発光レーザに各々供給する。
【0131】
これにより、面発光レーザアレイ50からは、変調信号に応じたタイミングでオンオフされると共に、オン時の光量が駆動量設定信号に対応する光量とされたm本のレーザビームが射出され、このm本のレーザビームが電子写真感光体12の外周面上を各々走査・露光されることで、電子写真感光体12の外周面上に静電潜像が形成される。この静電潜像が現像装置18によりトナー像として現像され、このトナー像が転写器32,42による転写を経て用紙Pに転写され、定着器44によって用紙Pに溶融定着されることで、用紙Pに画像が記録されることになる。
【0132】
一方、画像形成装置10は、電子写真感光体12の外周面上に形成されたトナー像、中間転写ベルト24の外周面上に転写されたトナー像、及び用紙Pに記録された画像の何れかの濃度を検出する濃度センサ(図示省略)を備えており、この濃度センサは制御部80に接続されている。なお、本実施形態のように多数本(m本)のレーザビームを電子写真感光体12の外周面上で同時に走査・露光して画像(詳しくは静電潜像)を形成する場合、各回の主走査におけるm本のレーザビームによる走査領域の境界付近ではレーザビームが2回照射(露光)される。
【0133】
なお、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、帯電装置14として、図1に示すように、コロトロンやスコロトロン等の非接触方式の帯電装置を用いてもよいが、帯電ローラや帯電ブラシを備える接触帯電方式の帯電装置を用いてもよい。かかる接触帯電方式の帯電装置は、画像形成装置10の小型化を図る観点から好ましい。本発明においては、電子写真感光体12が優れた機械的強度を有しているため、かかる接触帯電方式を用いた場合であっても、優れた耐久性を示すことができる。
【0134】
この接触帯電方式は、電子写真感光体12の表面に接触させた導電性部材に電圧を印加することにより電子写真感光体12の表面を帯電させるものである。導電性部材の形状としては、ブラシ状、ブレード状、ピン電極状、ローラ状等が挙げられるが、中でもローラ状であることが好ましい。通常、ローラ状部材は外側から抵抗層とそれらを支持する弾性層と芯材から構成される。更に、必要に応じて抵抗層の外側に保護層を設けることができる。
【0135】
ローラ状部材は、感光体に接触させることにより特に駆動手段を有しなくとも感光体と同じ周速度で回転し、帯電手段として機能する。しかし、ローラ部材に何らかの駆動手段を取り付け、感光体とは異なる周速度で回転させ、帯電させても良い。
【0136】
芯材の材質としては、導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、鉄、銅、真鍮、ステンレス、アルミニウム、ニッケル等が挙げられる。また、導電性粒子等を分散した樹脂成形品等を用いることもできる。
【0137】
弾性層の材質としては、導電性あるいは半導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、ゴム材に導電性粒子あるいは半導電性粒子を分散したものが挙げられる。ゴム材としては、EPDM、ポリブタジエン、天然ゴム、ポリイソブチレン、SBR、CR、NBR、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、SBS、熱可塑性エラストマー、ノルボーネンゴム、フロロシリコーンゴム、エチレンオキシドゴム等が用いられる。導電性粒子あるいは半導電性粒子としては、カーボンブラック、亜鉛、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、クロム、チタニウム等の金属、ZnO−Al2O3、SnO2−Sb2O3、In2O3−SnO2、ZnO−TiO2、MgO−Al2O3、FeO−TiO2、TiO2、SnO2、Sb2O3、In2O3、ZnO、MgO等の金属酸化物を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0138】
抵抗層及び保護層は、結着樹脂に導電性粒子又は半導電性粒子を分散させ、その抵抗を制御したもので、電気抵抗値が、103〜1014Ωcmであることが好ましく、105〜1012Ωcmであることがより好ましく、107〜1012Ωcmであることが更に好ましい。また、膜厚はそれぞれ、0.01〜1000μmであること好ましく、0.1〜500μmであることがより好ましく、0.5〜100μmであることが更に好ましい。
【0139】
抵抗層及び保護層における結着樹脂としては、アクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、メトキシメチル化ナイロン、エトキシメチル化ナイロン、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリチオフェン樹脂、PFA、FEP、PET等のポリオレフィン樹脂、スチレンブタジエン樹脂等が用いられる。
【0140】
抵抗層及び保護層における導電性粒子又は半導電性粒子としては、弾性層と同様のカーボンブラック、金属、金属酸化物等が用いられる。また必要に応じてヒンダードフェノール、ヒンダードアミン等の酸化防止剤、クレー、カオリン等の充填剤や、シリコーンオイル等の潤滑剤を添加することができる。これらの層を形成する手段としてはブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等を用いることができる。
【0141】
これらの導電性部材を用いて感光体を帯電させる際に、導電性部材に印加する電圧は、直流電圧又は直流電圧に交流電圧を重畳したものであることが好ましい。また、印加する電圧の範囲は、直流電圧の場合には要求される感光体帯電電位に応じて正又は負の50〜2,000Vが好ましく、100〜1,500Vがより好ましい。交流電圧を重畳する場合には、ピーク間電圧が400〜1,800Vであることが好ましく、800〜1,600Vであることがより好ましく、1,200〜1,600Vであることが更に好ましい。また、交流電圧の周波数は、好ましくは50〜20,000Hz、より好ましくは100〜5,000Hzである。
【0142】
本発明の画像形成装置で用いられる現像剤は、一成分系、二成分系のいずれであってもよく、また、正規現像剤、反転現像剤のいずれであってもよい。
【0143】
また、本発明の画像形成装置は、電子写真感光体上のトナー像を被転写媒体に直接転写するものであってもよく、電子写真感光体上のトナー像を中間転写体に転写した後、さらに被転写媒体に転写する中間転写方式のものであってもよい。なお、中間転写体としては、図1に示した画像形成装置10では中間転写体としてベルト形状の中間転写ベルト24を用いているが、ドラム形状等の中間転写体を用いてもよい。
【0144】
更に、図1に示した画像形成装置10は、電子写真感光体12を少なくとも含んで構成されるプロセスカートリッジを備えるものであってもよい。かかるプロセスカートリッジを用いることによって、メンテナンスをより簡便に行うことができる。
【0145】
また、本発明の画像形成装置は、図1に示したものの他、白黒画像用の画像形成装置やタンデム式のカラー画像形成装置としてもよい。次に、タンデム式のカラー画像形成装置について説明する。なお、「タンデム式画像形成装置」とは、以下の画像形成ユニットを2以上有する画像形成装置をという。
【0146】
図9は、本発明の画像形成装置の好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。図6に示す画像形成装置200は、帯電装置402a〜402dが接触帯電装置であり、転写装置が中間転写方式を採用する構成を有しており、且つ、帯電装置402a〜402d、露光装置403、及び現像装置404a〜404dを少なくとも備える画像形成ユニットを2以上有するタンデム式画像形成装置である。
【0147】
より具体的には、このタンデム式画像形成装置200は、ハウジング400内において4つの電子写真感光体401a〜401d(例えば、電子写真感光体401aがイエロー、電子写真感光体401bがマゼンタ、電子写真感光体401cがシアン、電子写真感光体401dがブラックの色からなる画像をそれぞれ形成可能である)が中間転写ベルト409に沿って相互に並列に配置されている。また、この画像形成装置200には、さらに、クリーニング手段415a〜415dが備わっている。
【0148】
ここで、画像形成装置200に搭載されている電子写真感光体401a〜401dは、それぞれ先に述べた本発明の電子写真感光体の構成を有するものである。
【0149】
電子写真感光体401a〜401dのそれぞれは所定の方向(紙面上は反時計回り)に回転可能であり、その回転方向に沿って帯電ロール402a〜402d(電子写真感光体を帯電させる接触帯電装置)、現像装置404a〜404d(露光装置により形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置)、1次転写ロール410a〜410d{現像装置により形成されたトナー像を後述の中間転写ベルト409(中間転写体)に1次転写するための転写装置}、クリーニングブレード415a〜415d(クリーニング手段)が配置されている。現像装置404a〜404dのそれぞれにはトナーカートリッジ405a〜405dに収容されたブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色のトナーが供給可能であり、また、1次転写ロール410a〜410dはそれぞれ中間転写ベルト409(1次転写像を被転写媒体500に転写する中間転写体)を介して電子写真感光体401a〜401dに当接している。
【0150】
更に、ハウジング400内の所定の位置にはレーザ光源となる露光装置403(帯電装置により帯電される電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光装置)が配置されており、レーザ光源403から出射されたレーザ光を帯電後の電子写真感光体401a〜401dの表面に照射することが可能となっている。なお、この露光装置403は図2〜図5を用いて説明した露光装置16と同様の構成を有するものである。
【0151】
これにより、電子写真感光体401a〜401dの回転工程において帯電、露光、現像、1次転写、クリーニングの各工程が順次行われ、各色のトナー像が中間転写ベルト409上に重ねて転写される。
【0152】
上記帯電装置(帯電用部材)402a〜402dは、ローラ状の接触帯電部材を備えるもので、感光体401a〜401dの表面に接触するように配置され、感光体に電圧を均一に印加し、感光体表面を所定の電位に帯電させるものである。帯電装置にはアルミニウム、鉄、銅等の金属、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性高分子材料、ポリウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴム、フッソゴム、スチレンーブタジエンゴム、ブタジエンゴム等のエラストマー材料にカーボンブラック、沃化銅、沃化銀、硫化亜鉛、炭化ケイ素、金属酸化物等の金属酸化物粒子を分散したもの等を用いることができる。
【0153】
この金属酸化物の例としてはZnO、SnO2、TiO2、In2O3、MoO3等、あるいはこれらの複合酸化物が挙げられる。また、帯電装置402a〜402dにはエラストマー材料中に過塩素酸塩を含有させて導電性を付与したものを使用しても良い。
【0154】
更に、帯電装置402a〜402dにはその表面に被覆層を設けてもよい。被覆層を形成する材料としては、N−アルコキシメチル化ナイロン、セルロース樹脂、ビニルピリジン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、メラミン等が単独、あるいは併用して用いられる。また、エマルジョン樹脂系材料、たとえば、アクリル樹脂エマルジョン、ポリエステル樹脂エマルジョン、ポリウレタン、特にソープフリーのエマルジョン重合により合成されたエマルジョン樹脂を用いることも出来る。
【0155】
これらの樹脂にはさらに抵抗率を調整するために、導電剤粒子を分散してもよいし、劣化を防止するために酸化防止剤を含有させることもできる。また、被覆層を形成する時の成膜性を向上させるために、エマルジョン樹脂にレベリング剤または界面活性剤を含有させることもできる。また、この接触帯電用部材の形状としては、ローラ状、ブレード状、ベルト状、ブラシ状等が挙げられる。
【0156】
更に、帯電装置402a〜402dの電気抵抗値は、好ましくは102〜1014Ωcm、さらに好ましくは102〜1012Ωcmの範囲が良い。また、この接触帯電用部材への印加電圧は、直流、交流いずれも用いることができる。又、直流+交流の形(直流電圧と交流電圧とを重畳したもの)で印加することもできる。
【0157】
また、転写装置410a〜410dとしては、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等、が挙げられる。
【0158】
また、上記現像装置404a〜404dとしては、一成分系、二成分系等の正規または反転現像剤を用いた従来公知の現像装置等を用いることができる。このような現像剤のうち画質の向上という理由から、二成分現像剤を用いる二成分現像方式を用いて行うことが好ましい。この場合、静電潜像の可視化のために用いる現像剤は、トナーとキャリアとで構成される。また、使用されるトナーの形状は特に制限されず、例えば粉砕法による不定形トナーや重合法による球形トナーが好適に使用される。
【0159】
また、上記クリーニング手段415a〜415dは、転写工程後の電子写真感光体401a〜401dの表面に付着する残存トナーを除去するためのもので、これにより清浄面化された電子写真感光体401a〜401dは上記の画像形成プロセスに繰り返し供される。クリーニング手段415a〜415dとしては、クリーニングブレード、ブラシクリーニング、ロールクリーニング等を用いることができるが、これらの中でもクリーニングブレードを用いることが好ましい。また、クリーニングブレードの材質としてはウレタンゴム、ネオプレンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。
【0160】
また、上記中間転写ベルト409は以下の手順で製造することができる。すなわち、略等モルのテトラカルボン酸二無水物或いはその誘導体とジアミンとを所定の溶媒中で重合反応させてポリアミド酸溶液を得る。このポリアミド酸溶液を円筒状金型に供給・展開して膜(層)形成を行った後、さらにイミド転化を行うことによって、ポリイミド樹脂からなる中間転写ベルト409を得ることができる。
【0161】
かかるテトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物等が例示される。
【0162】
また、ジアミンの具体例としては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジメチル4,4’−ビフェニルジアミン、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、2,4−ビス(β−アミノ第三ブチル)トルエン、ビス(p−β−アミノ−第三ブチルフェニル)エーテル、ビス(p−β−メチル−δ−アミノフェニル)ベンゼン、ビス−p−(1,1−ジメチル−5−アミノ−ベンチル)ベンゼン、1−イソプロピル−2,4−m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、ジ(p−アミノシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ジアミノプロピルテトラメチレン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、1,2−ビス−3−アミノプロボキシエタン、2,2−ジメチルプロピレンジアミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,17−ジアミノエイコサデカン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,10−ジアミノ−1,10−ジメチルデカン、12−ジアミノオクタデカン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ピペラジン、H2N(CH2)3O(CH2)2O(CH2)NH2、H2N(CH2)3S(CH2)3NH2、H2N(CH2)3N(CH3)2(CH2)3NH2等が挙げられる。
【0163】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンを重合反応させる際の溶媒としては、溶解性等の点から極性溶媒が好ましい。極性溶媒としては、N,N−ジアルキルアミド類が好ましく、中でもN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホン等の低分子量のものがより好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0164】
また、中間転写ベルト409の膜抵抗を調整するために、ポリイミド樹脂中にカーボンを分散してもよい。カーボンの種類は特に限定されないが、カーボンブラックの酸化処理によりその表面に酸素含有官能基(カルボキシル基、キノン基、ラクトン基、水酸基等)が形成された酸化処理カーボンブラックを用いることが好ましい。ポリイミド樹脂中に酸化処理カーボンブラックを分散すると、電圧を印可したときに酸化処理カーボンブラックに過剰な電流が流れるため、ポリイミド樹脂が繰返しの電圧印加による酸化の影響を受けにくくなる。また、酸化処理カーボンブラックはその表面に形成された酸素含有官能基によりポリイミド樹脂中への分散性が高いので、抵抗バラツキを小さくすることができると共に電界依存性も小さくなり、転写電圧による電界集中が起こりにくくなる。従って、転写電圧による抵抗低下を防止し、電気抵抗の均一性を改善し、電界依存性が少なく、さらに環境による抵抗の変化の少ない、用紙走行部が白く抜けること等の画質欠陥の発生が抑制された高画質を得ることができる中間転写ベルトを得ることができる。
【0165】
酸化処理カーボンブラックは、カーボンブラックを高温雰囲気下で空気と接触、反応させる空気酸化法、常温下で窒素酸化物やオゾン等と反応させる方法、高温下での空気酸化後、低温下でオゾン酸化する方法等により得ることができる。
【0166】
また、酸化処理カーボンとしては、三菱化学製のMA100(pH3.5、揮発分1.5%)、同,MA100R(pH3.5、揮発分1.5%)、同MA100S(pH3.5、揮発分1.5%)、同#970(pH3.5、揮発分3.0%)、同MA11(pH3.5、揮発分2.0%)、同#1000(pH3.5、揮発分3.0%)、同#2200(pH3.5,揮発分3.5%)、同MA230(pH3.0、揮発分1.5%)、同MA220(pH3.0、揮発分1.0%)、同#2650(pH3.0、揮発分8.0%)、同MA7(pH3.0、揮発分3.0%)、同MA8(pH3.0、揮発分3.0%)、同OIL7B(pH3.0、揮発分6.0%)、同MA77(pH2.5、揮発分3.0%)、同#2350(pH2.5、揮発分7.5%)、同#2700(pH2.5、揮発分10.0%)、同#2400(pH2.5、揮発分9.0%);デグサ社製のプリンテックス150T(pH4.5、揮発分10.0%)、同スペシャルブラック350(pH3.5、揮発分2.2%)、同スペシャルブラック100(pH3.3、揮発分2.2%)、同スペシャルブラック250(pH3.1、揮発分2.0%)、同スペシャルブラック5(pH3.0、揮発分15.0%)、同スペシャルブラック4(pH3.0、揮発分14.0%)、同スペシャルブラック4A(pH3.0、揮発分14.0%)、同スペシャルブラック550(pH2.8、揮発分2.5%)、同スペシャルブラック6(pH2.5、揮発分18.0%)、同カラーブラックFW200(pH2.5、揮発分20.0%)、同カラーブラックFW2(pH2.5、揮発分16.5%)、同カラーブラックFW2V(pH2.5、揮発分16.5%);キャボット社製MONARCH1000(pH2.5、揮発分9.5%)、同MONARCH1300(pH2.5、揮発分9.5%)、同MONARCH1400(pH2.5、揮発分9.0%)、同MOGUL−L(pH2.5、揮発分5.0%)、同REGAL400R(pH4.0、揮発分3.5%)、等の市販品を用いてもよい。また、このような酸化処理カーボンとしては、pH4.5以下であり、揮発分1.0%以上であるものが好ましい。
【0167】
上記の酸化処理カーボンは、例えば酸化処理の度合い、DBP吸油量、窒素吸着を利用したBET法による比表面積等の物性の相違により導電性が異なるがこれらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよいが、実質的に導電性の異なるものを2種以上組み合わせて用いることが好ましい。このように物性の異なる2種類以上のカーボンブラックを添加する場合、例えば高い導電性を発現するカーボンブラックを優先的に添加した後、導電率の低いカーボンブラックを添加して表面抵抗率を調整すること等が可能である。
【0168】
これら酸化処理カーボンブラックの含有量は、ポリイミド樹脂に対して10〜50質量%が好ましく、より好ましくは12〜30質量%である。当該含有量が10質量%未満であると、電気抵抗の均一性が低下し、耐久使用時の表面抵抗率の低下が大きくなる場合があり、一方、50質量%を超えると、所望の抵抗値が得られにくく、また、成型物として脆くなるため好ましくない。
【0169】
2種類以上の酸化処理カーボンブラックを分散させたポリアミド酸溶液の製造方法としては、溶媒中に2種類以上の酸化処理カーボンブラックを予め分散した分散液中に上記酸二無水物成分及びジアミン成分を溶解・重合する方法、2種類以上の酸化処理カーボンブラックを各々溶媒中に分散させ2種類以上のカーボンブラック分散液を作製し、この分散液に酸無水物成分及びジアミン成分を溶解・重合させた後、各々のポリアミド酸溶液を混合する方法、等が挙げられる。
【0170】
中間転写ベルト409は、このようにして得られたポリアミド酸溶液を円筒状金型内面に供給・展開して被膜とし、加熱によりポリアミド酸をイミド転化させることにより得られる。かかるイミド転化の際には、所定の温度で0.5時間以上保持することによって、良好な平面度を有する中間転写ベルトを得ることができる。
【0171】
ポリアミド酸溶液を円筒状金型内面に供給する際の供給方法としては、ディスペンサーによる方法、ダイスによる方法等が挙げられる。ここで、円筒上金型としては、その内周面が鏡面仕上げされたものを用いることが好ましい。
【0172】
また、金型に供給されたポリアミド酸溶液から被膜を形成する方法としては、加熱しながら遠心成形する方法、弾丸状走行体を用いて成形する方法、回転成形する方法等が挙げられ、これらの方法により均一な膜厚の被膜が形成される。
【0173】
このようにして形成された被膜をイミド転化させて中間転写ベルトを成形する方法としては、(i)金型ごと乾燥機中に入れ、イミド転化の反応温度まで昇温する方法、(ii)ベルトとして形状を保持できるまで溶媒の除去を行った後、金型内面から被膜を剥離して金属製シリンダ外面に差し替えた後、このシリンダごと加熱してイミド転化を行う方法等が挙げられる。本発明においては、得られる中間転写ベルトの表面のダイナミック硬度が上記の条件を満たせば上記(i)、(ii)のいずれの方法でイミド転化を行ってもよいが、方法(ii)によりイミド転化を行うと、平面度及び外表面精度が良好な中間転写体を効率よく且つ確実に得ることができるので好ましい。以下、方法(ii)について詳述する。
【0174】
方法(ii)において、溶媒を除去する際の加熱条件は、溶媒を除去できれば特に制限されないが、加熱温度は80〜200℃であることが好ましく、加熱時間は0.5〜5時間であることが好ましい。このようにしてベルトとしてそれ自身形状を保持することができるようになった成形物は金型内周面から剥離されるが、かかる剥離の際に金型内周面に離型処理を施してもよい。
【0175】
次いで、ベルト形状として保持できるまで加熱・硬化させた成形物を、金属製シリンダ外面に差し替え、差し替えたシリンダごと加熱することにより、ポリアミド酸のイミド転化反応を進行させる。かかる金属製シリンダとしては、線膨張係数がポリイミド樹脂よりも大きいものが好ましく、また、シリンダの外径をポリイミド成形物の内径より所定量小さくすることで、ヒートセットを行うことができ均一な膜厚でムラのない無端ベルトを得ることができる。また、金属製シリンダ外面の表面粗度(Ra)は、1.2〜2.0μmであることが好ましい。金属製シリンダ外面の表面粗度(Ra)が1.2μm未満であると、金属製シリンダ自身が平滑過ぎるため、得られる中間転写ベルトにおいてベルトの軸方向に対する収縮による滑りが発生しないため、延伸がこの工程で行われ、膜厚のバラツキや平面度の精度の低下が発生する傾向にある。また、金属製シリンダ外面の表面粗度(Ra)が2.0μmを超えると、金属製シリンダ外面がベルト状中間転写体の内面に転写し、さらには外面に凹凸を発生させ、これにより画像不良が発生しやすくなる傾向にある。なお、本実施形態でいう表面粗度とはJIS B601に準じて測定されるRaをいう。
【0176】
また、イミド転化の際の加熱条件としては、ポリイミド樹脂の組成にもよるが、加熱温度が220〜280℃、加熱時間0.5〜2時間であることが好ましい。このような加熱条件でイミド転化を行うと、ポリイミド樹脂の収縮量がより大きくなるため、ベルトの軸方向についての収縮を緩やかに行うことにより、膜厚バラツキや平面度の精度の低下を防ぐことができる。
【0177】
このようにして得られたポリイミド樹脂からなる中間転写ベルトの外面の表面粗度(Ra)は、1.5μm以下であることが好ましい。中間転写体の表面粗度(Ra)が1.5μmを超えるとがさつき等の画像欠陥が発生しやすくなる傾向にある。なお、がさつきの発生は、転写の際に印加される電圧や剥離放電による電界がベルト表面の凸部に局所的に集中して凸部表面が変質することによって、新たな導電経路の発現により抵抗が低下し、その結果得られる画像の濃度低下が起こることに起因すると本発明者らは推察する。
【0178】
このようにして得られる中間転写ベルト409はシームレスベルトであることが好ましい。このシームレスベルトの場合、中間転写ベルト409の厚さはその使用目的に応じて適宜決定しうるが、強度や柔軟性等の機械的特性の点から、20〜500μmが好ましく、50〜200μmがより好ましい。また、中間転写ベルト409の表面抵抗は、その表面抵抗率(Ω/□)の常用対数値が8〜15(logΩ/□)であることが好ましく、11〜13(logΩ/□)であることがより好ましい。なお、ここでいう表面抵抗率とは、22℃、55%RH環境下で100Vの電圧を印加し、電圧印可開始時から10秒後に測定される電流値に基づいて得られる値をいう。ここで、「表面抵抗[Ω/□]」とは、「薄膜ハンドブック(オーム社刊)」p.896に記載の「表面抵抗」と同義であり、面状の抵抗体を正方形に切り出して対向する2辺間の抵抗で表わしたものを示す。この表面抵抗は、抵抗分布が一様ならば正方形の寸法に無関係である。
【0179】
中間転写ベルト409は駆動ロール406、バックアップロール408及びテンションロール407により所定の張力をもって指示されており、これらのロールの回転によりたわみを生じることなく回転可能となっている。また、2次転写ロール413は、中間転写ベルト409を介してバックアップロール408と当接するように配置されている。バックアップロール408と2次転写ロール413との間を通った中間転写ベルト409はクリーニングブレード416により清浄面化された後、次の画像形成プロセスに繰り返し供される。
【0180】
また、ハウジング400内の所定の位置にはトレイ(被転写媒体トレイ)411が設けられており、トレイ411内の紙等の被転写媒体500が移送ロール412により中間転写ベルト409と2次転写ロール413との間、さらには相互に当接する2個の定着ロール414の間に順次移送された後、ハウジング400の外部に排紙される。
【0181】
このように電子写真感光体401a〜401dの回転工程において、帯電、露光、現像、転写、クリーニングの各工程を順次行うことによって画像形成が繰り返し行われる。ここで、電子写真感光体401a〜401dは、上述した電子写真感光体1であり、リーク防止性と電気特性との双方が充分に高水準で達成されたものであるため、接触帯電装置402a〜402dと共に用いた場合であってもかぶり等の画質欠陥を生じることなく良好な画像品質を得ることが可能となる。従って、本実施形態により、長期にわたり繰り返し使用される場合であっても、感光体におけるピンホールリークの発生が充分に防止され、画像品質の優れたカラー画像を高速で形成できる画像形成装置200が実現される。
【0182】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、図9に示した装置は、電子写真感光体401a〜401dと接触帯電装置402a〜402dとを含んで構成されるプロセスカートリッジを備えるものであってもよい。かかるプロセスカートリッジを用いることによって、メンテナンスをより簡便に行うことができる。
【0183】
また、本発明の画像形成装置はイレース光照射装置等の除電装置をさらに備えていてもよい。これにより、電子写真感光体が繰り返し使用される場合に、電子写真感光体の残留電位が次のサイクルに持ち込まれる現象が防止されるので、画像品質をより高めることができる。
【0184】
(プロセスカートリッジ)
次に、本発明のプロセスカートリッジについて説明する。図10は、本発明のプロセスカートリッジの好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。プロセスカートリッジ300は、電子写真感光体307とともに、帯電装置308、現像装置311、中間転写体320(中間転写装置)、クリーニング装置313、露光のための開口部318、及び、除電露光のための開口部317を取り付けレール316を用いて組み合わせ、そして一体化したものである。また、プロセスカートリッジ300は、転写装置312の転写方式が、トナー像を中間転写体320を介して被転写媒体500に転写する中間転写方式を採用する構成を有している。なお、電子写真感光体307は、上述した本発明にかかる電子写真感光体の構成を有するものである。
【0185】
そして、このプロセスカートリッジ300は、転写装置312と、定着装置315と、図示しない他の構成部分とからなる画像形成装置本体に対して着脱自在としたものであり、画像形成装置本体とともに画像形成装置を構成するものである。
【0186】
なお、本発明のプロセスカートリッジにおいて、帯電装置308(帯電用部材)は、帯電ロール、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電チューブ等による接触帯電方式を採用することができる。接触帯電方式は、感光体表面に接触させた導電性部材に電圧を印加することにより感光体表面を帯電させるものである。導電性部材の形状はブラシ状、ブレード状、ピン電極状、或いはローラ状等何れでもよいが、特にローラ状部材が好ましい。通常、ローラ状部材は外側から抵抗層とそれらを支持する弾性層と芯材から構成される。更に必要に応じて抵抗層の外側に保護層を設けることができる。
【0187】
上述した本発明のプロセスカートリッジに使用される現像装置311について具体的に説明すると、現像装置311としては、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、一成分系現像剤又は二成分系現像剤をブラシ、ローラ等を用い接触或いは非接触させて現像する公知の現像器等が挙げられる。また、トナーとしては、機械的な粉砕方や化学重合で作られる。トナーの形状としては不定形なものから球形のものが挙げられる。
【0188】
上述した本発明のプロセスカートリッジに使用される中間転写装置320について具体的に説明すると、中間転写装置320としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。これらの中でも、転写帯電補償能力に優れる点で接触型転写帯電器が好ましい。なお、本発明においては、上記転写帯電器の他、剥離帯電器等を併用することもできる。
【0189】
上述した本発明のプロセスカートリッジに使用されるクリーニング装置313について具体的に説明すると、クリーニング装置313としては、特に制限はなく、それ自体公知のクリーニング装置等を用いればよい。例えば、ウレタン製のブレードやクリーニングブラシ等が挙げられる。
【0190】
上述した本発明のプロセスカートリッジに使用される除電装置(光除電装置)について具体的に説明すると、光除電装置としては、例えば、タングステンランプ、LED等が挙げられ、該光除電プロセスに用いる光質としては、例えば、タングステンランプ等の白色光、LED光等の赤色光等が挙げられる。該光除電プロセスにおける照射光強度としては、通常、電子写真感光体の半減露光感度を示す光量の数倍乃至30倍程度になるよう出力設定される。本実施形態においては、開口部317からこのような光除電装置からの光を取り込み、感光体を除電する。
【0191】
このような本発明のプロセスカートリッジは、先に述べた面発光レーザアレイを有する露光装置が搭載された画像形成装置に装着されるものであり、上記電子写真感光体を搭載していることにより、画像の高画質化、画像形成速度の高速化、並びに、感光体の長寿命化を達成することができる。
【0192】
【実施例】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0193】
[実施例1]
(電子写真感光体の作製)
ポリビニルブチラール樹脂(エスレックBM−S、積水化学社製)4質量部を溶解したn−ブチルアルコール溶液170質量部に、有機ジルコニウム化合物(アセチルアセトンジルコニウムブチレート)30質量部及び有機シラン化合物(γ−アミノプロピルトリメトキシシラン)3質量部を添加し、混合撹拌して下引層形成用塗布液を得た。得られた塗布液を、ホーニング処理により外周面が粗面化された外径84mm、長さ340mm、肉厚1mmのアルミニウム支持体上に浸漬塗布し、室温で5分間風乾を行った後、支持体を10分間で50℃に昇温し、50℃、85%RH(露点47℃)の恒温恒湿槽中に入れて、20分間加湿硬化促進処理を行った。更に、処理後の支持体を熱風乾燥機に入れて、170℃で10分間乾燥を行い、膜厚1μmの下引層を形成した。
【0194】
次に、電荷発生材料として塩化ガリウムフタロシアニン15質量部、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニオンカーバイト社製)10質量部及びn−ブチルアルコール300質量部からなる混合物をサンドミルにて4時間分散処理し、電荷発生層形成用塗布液を得た。得られた塗布液を、上記下引層上に浸漬塗布し、100℃で10分間乾燥させて、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0195】
次に、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン40質量部と、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量40,000)60質量部とを、テトロヒドロフラン280質量部及びトルエン120質量部に十分に溶解混合した後、平均一次粒径0.2μmの4フッ化エチレン樹脂粒子10質量部を加えて更に混合した。その後、ガラスビーズを用いたサンドグラインダーにより3時間分散処理を行い、4フッ化エチレン樹脂粒子が分散した電荷輸送層形成用塗布液を得た。得られた塗布液を上記電荷発生層の上に浸漬塗布し、130℃で60分間乾燥させて、膜厚30μmの電荷輸送層を形成し、目的の電子写真感光体を得た。
【0196】
(画像形成装置の作製)
得られた電子写真感光体を用いて、帯電装置が接触帯電装置であり、転写方式が中間転写方式であるタンデム式画像形成装置を作製した。なお、画像形成装置の構成は、露光装置部分を以下の構成に改造した以外はカラータンデム複写機DocuCentre C400(富士ゼロックス社製)と同様の構成とした。すなわち、露光装置に、面発光レーザアレイ(発光点が6×6の二次元に配列、レーザビーム数が32本)を備え、その走査線数を2400dpiに改造した。
【0197】
ここで、面発光レーザアレイの発光点(6×6の二次元に配列)に対して、レーザビーム数が36本ではなく32本であるのは、6×6マトリックスは36個の素子を配列しているが、実際に使用する場合にはコンピュータでの制御条件の制約[2のn乗(この場合は25)]による。そのため、36本ではなく、32本を使用している。
【0198】
[実施例2]
以下の手順により作製した電荷輸送層形成用塗布液を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2のタンデム式画像形成装置を作製した。
【0199】
すなわち、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン40質量部と、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量40,000)60質量部とを、テトロヒドロフラン280質量部及びトルエン120質量部に十分に溶解混合した後、平均一次粒径0.2μmのフッ化ビニリデン樹脂粒子10質量部を加えて更に混合した。その後、ガラスビーズを用いたサンドグラインダーにより3時間分散処理を行い、フッ化ビニリデン樹脂粒子が分散した電荷輸送層形成用塗布液を作製した。
【0200】
[実施例3]
以下の手順により下引層を形成した以外は実施例1と同様にして、実施例3のタンデム式画像形成装置を作製した。
【0201】
すなわち、酸化亜鉛(平均粒径70nm、テイカ社製試作品)100質量部をトルエン500質量部と攪拌混合し、これにシランカップリング剤(KBM603、信越化学社製)1.5質量部を添加して2時間攪拌した。その後、トルエンを減圧蒸留にて留去し、150℃で2時間焼き付けを行った。得られた表面処理後の酸化亜鉛60質量部と、硬化剤(ブロック化イソシアネート スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製)15質量部と、ブチラール樹脂(BM−1、積水化学社製)15質量部とを、メチルエチルケトン85質量部に溶解させて混合液を得た。この混合液38質量部とメチルエチルケトン25質量部とを混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散処理を行うことで分散液を得た。得られた分散液に、触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005質量部を添加して下引層形成用塗布液を得た。得られた塗布液を外径30mm、長さ340mm、肉厚1mmのアルミニウム支持体上に浸漬塗布し、160℃で100分間の乾燥硬化を行い、膜厚20μmの下引層を形成した。
【0202】
[比較例1]
以下の手順により作製した電荷輸送層形成用塗布液を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1のタンデム式画像形成装置を作製した。
【0203】
すなわち、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン40質量部と、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量40,000)60質量部とを、テトロヒドロフラン280質量部及びトルエン120質量部に十分に溶解混合して、電荷輸送層形成用塗布液を作製した。
【0204】
[比較例2]
以下の手順により作製した電荷輸送層形成用塗布液を用い、形成した電荷輸送層の膜厚を38μmとした以外は実施例1と同様にして、比較例2のタンデム式画像形成装置を作製した。
【0205】
すなわち、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン40質量部と、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量40,000)60質量部とを、テトロヒドロフラン280質量部及びトルエン120質量部に十分に溶解混合して、電荷輸送層形成用塗布液を作製した。
【0206】
[比較例3]
実施例1と同様にして作製した電子写真感光体を、改造を行っていないカラータンデム複写機DocuCentre C400(富士ゼロックス社製、露光装置のレーザビーム数が2本、走査線数が1200×600dpi)に装着することにより比較例3の画像形成装置を作製した。
【0207】
[比較例4]
比較例1と同様にして作製した電子写真感光体を、改造を行っていないカラータンデム複写機DocuCentre C400に装着することにより比較例4の画像形成装置を作製した。
【0208】
<画像形成装置の性能評価試験>
実施例1〜3及び比較例1〜4の画像形成装置について、それぞれの性能を以下のように評価した。
【0209】
高温高湿(28℃、80%RH)環境下、以下の(a)〜(c)からなる一連の工程を1サイクル(cycle)とする画像形成プロセスを300,000サイクル(30万回)繰り返して画像を連続的に紙(30万枚)に印刷した。なお、連続印刷用の紙としては、富士ゼロックス社製PPC用紙(L、A4)を用いた。
【0210】
(a)グリッド印加電圧−700Vのスコロトロン帯電器で各電子写真感光体を帯電させた。(b)780nmの半導体レーザを用いて、(a)の工程で帯電させてから0.25秒後の各電子写真感光体に10mJ/m2の光を照射して放電を行わせた。(c)放電させてから0.75秒後、各電子写真感光体に50mJ/m2の赤色LED光を照射して除電を行った。
【0211】
そして、画像形成装置ごとに、1サイクル終了後{(c)工程終了後}の各電子写真感光体の表面の電位A[V]と、300,000サイクル終了後{(c)工程終了後}の各電子写真感光体の表面の電位B[V]とを測定し、その変動量(B−A)を測定した。そして、画像形成装置ごとの変動量(B−A)の相加平均値を算出した。
【0212】
また、画像形成装置ごとに、はじめの各電子写真感光体の厚さと、300,000サイクル終了後の各電子写真感光体の厚さとを測定して「摩耗により減少した感光体の厚さ」(以下、「摩耗しろ」という)を算出した。また、この摩耗しろに基づいて、各電子写真感光体の摩耗レート[nm/kcycle]を算出した。そして、画像形成装置ごとの摩耗レートの相加平均値を算出した。ここで、1kcycleは1,000cycleを意味する。
【0213】
また、画像形成装置ごとの電子写真感光体について、電荷輸送層の残膜厚が約15μmになる時点を感光体の寿命とした。これ以下の膜厚では摩耗による電位変動や、かぶり等の画質欠陥が顕著になり実使用上問題となるレベルである。(a)〜(c)からなる一連の工程を繰り返し、上記の水準に達する工程の回数[Kcycle]を「感光体寿命」として測定した。
【0214】
また、画像形成装置ごとの電子写真感光体上の潜像解像度について以下のようにして求めた。すなわち、画像形成装置において、電子写真感光体を−650Vに均一に帯電させた後、表1記載の走査線記録密度で電子写真感光体表面に露光を行い、感光体表面上に静電潜像を形成した。さらに、この静電潜像に対し、トナー像の現像を行い、現像したトナー像を粘着テープに転写し、このテープを光学顕微鏡で観察し解像度を求めた。
【0215】
上述の各測定結果を表1に示す。
【表1】
【0216】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、形成する画像の高画質化、画像形成速度の高速化、及び装置の小型化が容易に実現可能であり、しかも長期にわたり画像形成プロセスを繰り返しても良好な画質の画像を得ることができる画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像形成装置の好適な一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明の画像形成装置に搭載される電子写真感光体の一例を示す模式断面図である。
【図3】本発明の画像形成装置に搭載される電子写真感光体の一例を示す模式断面図である。
【図4】本発明の画像形成装置に搭載される電子写真感光体の一例を示す模式断面図である。
【図5】本発明の画像形成装置に搭載される電子写真感光体の一例を示す模式断面図である。
【図6】本発明にかかる露光装置の一例を示す概略構成図である。
【図7】発光点が2次元的に配列されたレーザアレイを示す平面図である。
【図8】本発明にかかる制御装置の一例を示す概略構成図である。
【図9】本発明の画像形成装置の他の好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。
【図10】本発明のプロセスカートリッジの好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
1…導電性支持体、2…電荷発生層、3…電荷輸送層、4…感光層、5…下引層、6…保護層、7…フッ素系樹脂、10…画像形成装置、12…電子写真感光体、14…帯電器、16…露光装置、18…現像装置、24…中間転写ベルト、32、42…転写器、44…定着器、50…面発光レーザアレイ、51…発光点、52…コリメートレンズ、54…ハーフミラー、56…レンズ、58…光量センサ、60…アパーチャ、62…シリンダレンズ、64…折り返しミラー、66…回転多面鏡、68、70…Fθレンズ、72、74…シリンダミラー、76…ピックアップミラー、78…ビーム位置検出センサ、80…制御部、82…記憶部、84…変調信号生成手段、88…駆動量制御手段、90…光量設定部、92…レベル変更手段、200…画像形成装置、300…プロセスカートリッジ、307…電子写真感光体、308…帯電装置、311…現像装置、312…中間転写装置、313…クリーニング装置、315…定着装置、316…取り付けレール、317…除電露光のための開口部、318…露光のための開口部、400…ハウジング、401a〜401d…電子写真感光体、402a〜402d…帯電装置、403…露光装置、404a〜404d…現像装置、405a〜405d…トナーカートリッジ、406…駆動ロール、407…テンションロール、408…バックアップロール、409…中間転写ベルト、410a〜410d…1次転写ロール、411…トレイ(被転写体トレイ)、412…移送ロール、413…2次転写ロール、414…定着ロール、416…クリーニングブレード、500…被転写媒体。
Claims (10)
- 導電性支持体及び該支持体の上方に配置される感光層を少なくとも有する電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電させる帯電装置と、
前記帯電装置により帯電される前記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光装置と、
前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成させる現像装置と、
前記トナー像を前記電子写真感光体から被転写媒体に転写する転写装置と、
を備える画像形成装置であって、
前記露光装置は、面発光レーザアレイを露光光源として備え、8本以上のレーザビームを前記電子写真感光体上に走査させて前記静電潜像を形成させるマルチビーム方式の露光装置であり、
前記電子写真感光体の前記導電性支持体から最も離れた位置に配置される最外部の層には、フッ素系樹脂が含有されていることを特徴とする画像形成装置。 - 前記面発光レーザアレイは、主走査方向に3行以上、副走査方向に3列以上のレーザビーム発生源が2次元的に配置された構造を有するものであることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
- 前記フッ素系樹脂は、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、6フッ化エチレンプロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂及び2フッ化2塩化エチレン樹脂からなる群より選択される少なくとも一種の樹脂を含有してなるものであることを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
- 前記フッ素系樹脂は、4フッ化エチレン、3フッ化塩化エチレン、6フッ化エチレンプロピレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン及び2フッ化2塩化エチレンからなる群より選択される少なくとも二種のモノマーに基づく繰り返し単位を有する共重合体を含有してなるものであることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の画像形成装置。
- 前記帯電装置は、前記電子写真感光体に接触して該電子写真感光体を帯電させる接触帯電装置であることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の画像形成装置。
- 導電性支持体及び該支持体の上方に配置される感光層を少なくとも有する電子写真感光体と、
帯電装置、現像装置、転写装置及びクリーニング装置のうちの少なくとも一つの装置と、
を一体に有し、露光装置を備える画像形成装置に着脱自在であるプロセスカートリッジであって、
前記露光装置は、面発光レーザアレイを有し、8本以上のレーザビームを前記電子写真感光体上に走査させて前記静電潜像を形成させるマルチビーム方式の露光装置であり、
前記電子写真感光体の前記導電性支持体から最も離れた位置に配置される最外部の層には、フッ素系樹脂が含有されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。 - 前記面発光レーザアレイは、主走査方向に3行以上、副走査方向に3列以上のレーザビーム発生源が2次元的に配置された構造を有するものであることを特徴とする請求項6記載のプロセスカートリッジ。
- 前記フッ素系樹脂は、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、6フッ化エチレンプロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂及び2フッ化2塩化エチレン樹脂からなる群より選択される少なくとも一種の樹脂を含有してなるものであることを特徴とする請求項6又は7記載のプロセスカートリッジ。
- 前記フッ素系樹脂は、4フッ化エチレン、3フッ化塩化エチレン、6フッ化エチレンプロピレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン及び2フッ化2塩化エチレンからなる群より選択される少なくとも二種のモノマーに基づく繰り返し単位を有する共重合体を含有してなるものであることを特徴とする請求項6〜8のうちのいずれか一項に記載のプロセスカートリッジ。
- 前記帯電装置は、前記電子写真感光体に接触して該電子写真感光体を帯電させる接触帯電装置であることを特徴とする請求項6〜9のうちのいずれか一項に記載のプロセスカートリッジ。
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JP2006267954A (ja) * | 2005-03-25 | 2006-10-05 | Fuji Xerox Co Ltd | 画像形成装置 |
JP2006276827A (ja) * | 2005-03-03 | 2006-10-12 | Ricoh Co Ltd | 画像形成装置 |
JP2015068950A (ja) * | 2013-09-27 | 2015-04-13 | 富士ゼロックス株式会社 | 電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置 |
-
2003
- 2003-05-23 JP JP2003146751A patent/JP2004347992A/ja active Pending
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