JP2004347371A - 流体の移送装置及びそれを用いた流体の移送方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】簡単な構成によりマイクロタスシステムやそれを用いた試料の検出方法等に広く利用できる流体の移送装置及びそれを用いた流体の移送方法を提供すること。
【解決手段】この発明の流体の移送装置は、基板12a、12b内に組み込まれる流体ポンプとして固体電解質膜13を利用した水素ポンプ10を組み込んでいる。
このマイクロタスシステムによれば、固体電解質膜13を利用した水素ポンプを基板12a,12a内に組み込むという簡単な構成により流体の移送装置を作動させることができる。また、このような構成によれば、水素ポンプに印加される電圧が小さくてもよいので実用上有益である。
【選択図】 図1
【解決手段】この発明の流体の移送装置は、基板12a、12b内に組み込まれる流体ポンプとして固体電解質膜13を利用した水素ポンプ10を組み込んでいる。
このマイクロタスシステムによれば、固体電解質膜13を利用した水素ポンプを基板12a,12a内に組み込むという簡単な構成により流体の移送装置を作動させることができる。また、このような構成によれば、水素ポンプに印加される電圧が小さくてもよいので実用上有益である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、水素ポンプを組み込んだ流体の移送装置及びそれを用いた流体の移送方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
マイクロタス用の組込型ポンプでは、電気浸透流を利用するものが知られており、その中でも電気化学的に気体を発生させて発生した気体の流れを利用して液体を押し出したり引き込んだりする流体ポンプが知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
このようなものにあっては、一方の極(作用極)では溶液中の水素イオンが電子を獲得し水素を発生させ又はその逆の反応により水素を消滅させている。一方、他方の極(対極)では溶液の種類によって異なるが、酸素などの水素以外のガスが発生されている。
【0004】
【非特許文献1】
H.Suzuki et. al., Sensors and Actuators(2002年)第242−250頁
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、非特許文献1に提案されている組込型の流体ポンプでは、基本原理は水の電気分解によってガスを発生させるという正味の化学反応を伴っており、また、対極で発生するガスと作用極で発生するガスの種類が異なっている。このため、正味の化学反応を伴うので、このような従来の組込型ポンプでは大きな電圧を電極に印加しなければ流体ポンプとして機能しない。そのために、小型電池で動作するマイクロタスシステムに適用させた場合には、電池寿命が短くなるという課題がある。
【0006】
また、このような流体ポンプでは、駆動中のオーム損が大きく、これも電池寿命を短くさせている。さらに、電圧と水素発生量との直線性があまり良くないという課題もある。
【0007】
そこで、この発明は、これらの課題を解決することを目的とし、特に簡単な構成によりマイクロタスシステム等に広く利用できる流体の移送装置及びそれを用いた流体の移送方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、固体電解質膜と、該固体電解質膜の両面に形成された水素透過電極と、該水素透過電極に電気的に接続された電源と、前記固体電解質から前記水素透過電極の表裏の外側に形成された気体流路とを有し、前記気体流路に水素ガスを充満させた状態で前記電源からの電流の大きさを変化させることにより、前記固体電解質膜を透過する水素ガス流量を変化させることのできる水素ポンプを流体の流動を目的として基板内に組み込んだことを特徴とする流体の移送装置である。
【0009】
このように構成すれば、固体電解質膜を利用した水素ポンプを用いるという簡単な構成により流体の移送装置を作動させることができる。
【0010】
また、このような構成によれば、水素ポンプに印加される電圧が小さくてもよい。
【0011】
ここで使用する固体電解質膜には、PEFCなどに使用するパーフルオロイオン交換膜などが例として挙げられる。この物質は、水素イオンがこの中を移動でき、電子が移動できないという性質を備えている。
【0012】
請求項2記載の発明は、前記固体電解質膜は、水素イオンが水分子を伴って移動可能なものであることを特徴とする請求項1記載の流体の移送装置である。
【0013】
このように構成すれば、ポンプの引込側電極の水蒸気分圧が上がり、ポンプの動作を阻害することを防ぐことができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記基板内には前記水素ポンプへ水素を供給するための水素発生源を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の流体の移送装置である。
【0015】
このように構成すれば、基板内に水素発生源を備えることにより外部から水素を供給することなくシステムを稼働させることができる。
【0016】
すなわち、水素は分子が小さいために基板等の壁体を容易に透過してしまうために、長期保存時は系内の水素が散逸してしまう。それ故、流体移送装置を長期間運転しない場合には、運転の都度に水素を充填しなければならないが、このように基板内に水素発生源を備えることにより外部から水素を供給することなくシステムを稼働させることができる。
【0017】
なお、この水素発生源としては水素を化合物として流体の移送装置内に蓄え、使用時に化合物から水素を取り出して使用することのできるものを用いることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、前記水素発生源は、固体電解質膜を利用した水素ポンプであることを特徴とする請求項3記載の流体の移送装置である。
【0019】
このように構成すれば、水素ポンプと水素発生源とを同時に兼ね備えることにより装置を簡略化させることができる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、前記基板内の流路は、水蒸気で満たされた状態に封入されることを特徴とする請求項4記載の流体の移送装置である。
【0021】
このように構成すれば、水素ポンプを用いて即座に水の電気分解を行うことができ、これにより流体の移送装置の検出準備工程が簡略化できる。
【0022】
請求項6記載の発明は、前記水素透過電極の少なくとも一方には、水素をイオン化させるための触媒が担持されていることを特徴とする請求項1記載の流体の移送装置であり、このように構成すれば、水素のイオン化が円滑に行える。
【0023】
請求項7に記載の発明は、請求項4又は5に記載の流体の移送装置を始動する際に、前記水素ポンプにより水の電気分解により水素を発生させると同時に発生する酸素をシステム外に排出させ、しかる後、前記発生した水素ガスを利用して前記水素ポンプを作動させて流体の移送を行うことを特徴とする流体の移送方法である。
【0024】
以上に記載の流体の移送装置又は流体の移送方法は、基板内に組み込まれた又は基板外に設置された各種の混合装置、反応装置、検出装置又は分析装置などと共に、基板内で各種の流体を移送し、必要に応じて混合し、また必要に応じて反応させて、各種の混合装置、反応装置、検出装置若しくは分析装置等として又は各種の混合方法、反応方法、検出方法若しくは分析方法等として広く利用することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0026】
まず、本発明の流体の移送装置又は流体の移送方法の一例として、チップ上で遺伝子、タンパク質などの解析を行うためのマイクロタスシステム(μ total analysis system:マイクロタス)の基板に水素ポンプを組み込んだ流体の移送装置又は移送方法について図面を用いて説明する。
【0027】
まず、図1において、符号10で示される水素ポンプは、シリコン又はプラスチックなどのカバー11a、11b及び基板12a、12b内に支持されて形成されたマイクロタス用の組込ポンプである。この水素ポンプ10は固体電解質膜13のプロトン導電性を利用して構成されている。この固体電解質膜としては、例えば、パーフルオロイオン交換膜で代表される固体高分子電解質膜が例示されるが、これに限定されない。水素イオンは透過させるが水素ガス及び電子は実質的に透過させることの無い固体電解質膜であればよい。
【0028】
この固体電解質膜13の両側には一対の電極14a、電極14bが配置されている。これらの電極14a、14bは、例えば、カーボンペーパーなどで構成された水素が透過できるようにした水素透過電極であり、これらの電極14a、14bの少なくとも一方の電極には、水素をイオン化させるための触媒が担持されているものが好ましい。このような触媒としては、例えば、水素ガスとの酸化還元反応を円滑に行えるような白金などの触媒が例示される。
【0029】
これらの電極14a、14bは、基板12a、12bの表面に形成された導電パターン15a、15bに接続されている。各電極14a、14b間及び導電パターン15a、15b間の空間にはポリイミドフィルムなどの絶縁材料20が介在されている。ここで、この絶縁材料20はシリコーンゴム等の封止機能を備えたものが一層好ましい。
【0030】
これらの導電パターン15a、15bは不図示の電源に接続されることにより、一対の電極14a、14b間に所定の電圧が印加可能とされている。
【0031】
基板12a、12bにはそれぞれ空間が射出成形、切削、エッチングなどにより形成され、これらの空間は水素などの気体を貯留する貯留部16a、16bとされている。一方の貯留部16aから同様に射出成形、切削、エッチングなどにより排出口17が基板12a及びカバー11a内に形成され、他方の貯留部16bから排出口18が同様に基板12b及びカバー11b内に形成されている。
【0032】
このような水素ポンプ10を用い、排出口18を不図示の検査部に接続させることによりマイクロタスシステムが構成される。
【0033】
以下、このマイクロタスシステムの作用について説明する。
【0034】
貯留部16a、16bに接続される排出口17,18を利用して各貯留部16a、16b内に水素ガス又は水素ガスを含む気体を貯留した状態で各電極14a、14b間に所定の電圧を印加することによりこの水素ポンプ10は機能する。
【0035】
例えば、図2に示すように、各電極14a、14b間に所定の電位差を印加することにより、貯留部16aに滞留している水素ガスが電極(アノード)14a上で反応して電子を吸引しプロトンH+が生成する。このプロトンH+は電位差により固体電解質膜13を透過して貯留部16bに移動する。貯留部16bではプロトンH+は電極(カソード又は作用極)14bから電子を受け取り水素ガスが生成する。
【0036】
ここで、プロトンH+は、水素ガスの雰囲気が水又は水蒸気であれば、水の一分子又はそれ以上の数の分子と共に固体電解質膜13を移動する。これにより、電極間14a、14b間には電流が流れ、それと同時に貯留部16aでは水素ガスが消費されて減圧となり、一方、貯留部16bでは、水素ガスが生成し、固体電解質膜13をプロトンH+とともに移動した水又は水蒸気分だけ加圧される。
【0037】
これにより、貯留部16bに連通する排出口18から水素(又は水素と水分)が送出されて排出口18に接続された試薬タンク又は血液タンク等(いずれも不図示)中の試薬又は血液等を検査部(不図示)に押し出す(送出させる)ことができる。
【0038】
また、各導電パターン15a、15b間に印加される電圧の向きを逆転して、電極14aをカソードとし、電極14bをアノードとすれば、この逆の反応が生起して電流が逆向きに流れ、電極14aが作用極となって排出口17から水素が放出され、排出口18は吸引側となって血液又は試薬等を引いたりして採取することができる。
【0039】
これにより、この固体電解質膜13に所定量の電流を通電させることによって、水素を含有するガス中から所定量の水素を電解質膜の一方側から他方側へと移動が可能となる。また、この移動速度は、固体電解質膜の種類、面積等、電極の材質等によっても左右されるが、一般的に電圧を高くすることにより流量(又は流速)を調整することができる。
【0040】
すなわち、電解質膜に電圧を印加すると、負極側で水素ガスがプロトンH+となり、生成したプロトンH+は電解質膜内で電圧の印加方向と逆向きに移動し、移動したプロトンは陽極側の表面で水素ガスとなる。このようにして生じる水素ガス量は電解質膜における通電量によって決まるため、電解質膜における通電量を制御することによって、水素ガスの移動量(又は移動速度)を制御して所望の圧力又は流量の水素ガスを生成又は消費させることができる。
【0041】
このような構成の水素ポンプ10は固体電解質膜を利用することにより構成が簡単で、印加電圧が小さくても、小面積大流量の流体ポンプを構成することができる。
(実施例)
次に、これらの関係を明確にするために、理論値と実験値との対応を試みた。ここで、図6は、横軸xに電極の単位面積(1mm2)当たりの電流値をとり、縦軸yに水素流量及び印加電圧の実測値との関係をプロットした図である。
【0042】
「四角」で表したグラフは、単位面積あたりの水素流量[nL/s・mm2]を表し、実線は電流から次式で水素の移動モル数を求め、それを表した理論値であり、「四角」は実測値である。
【0043】
単位面積当たりの水素流量=
電流密度/ファラデー定数×ガス定数×絶対温度/圧力/2
この図6より、両者がよく一致していることがわかる。また、上式には電極の大きさや厚さなどのパラメータが入っていない。このことは、製造のバラツキなどが有ってもそのバラツキの変動を受けずに電流値のみに依存した安定した水素量を確保できることが理解される。
【0044】
つぎに、「菱形」で表したグラフは、印加電圧を表す図であり、印加電圧を上げることにより電流密度をほぼ原点を通る直線として示すことができることが確認される。これにより、この発明のポンプでは、化学変化を伴わない定量的な反応で水素が移動できることが理解される。
【0045】
つぎに、これらの図から、横軸xに印加電圧をとり、縦軸yに水素流量を表すと図7となる。ここで、この図7では、直線状となり、そのグラフの傾斜は略744[nL/s・Vmm2]となる。例えば、非特許文献1に記載の先行技術で用いられているポンプの能力が約34[nL/s・Vmm2]であることを考慮すると、本発明の場合には、約20倍も優れていることが確認される。
(応用例)
次に、この水素ポンプ10を用いたマイクロタスの応用例の一例について図面を参照しつつ説明する。
【0046】
まず、図3は、この発明の水素ポンプ103に加えて水素発生源としての水素ポンプ104をマイクロタスシステム100に組み込んだ応用例の概略を説明する図である。
【0047】
ここで、水素ポンプ104は、図4に示すように、貯留部16aは二つの排出口17、19を備えている。また、この水素ポンプ104では、導電パターン15a、15bに印加される電圧が水素ポンプ内で水が電解されるに充分な電圧が印加可能に構成されている。もちろん、電極14a、14bの材質がこの目的のために最適化されて異なっていてもよい。その他の構成は、図1の水素ポンプと実質的に同一乃至は均等であるので同一番号を付して詳細な説明は省略している。
【0048】
このような水素ポンプ104では、電極間14a、14bに水が電気分解される所定の電圧を印加することにより、貯留部16a、16bに貯留される水蒸気を電気分解させて、例えば、貯留部16aに酸素ガスを発生させ、貯留部16bに水素ガスを発生させることができる。
【0049】
これにより、例えば、排出口17から水蒸気と水素との混合ガスを貯留部16aに導入して所定の電圧を印加させることにより、貯留部16aに貯留された水素を水素ポンプの機能によりプロトンH+として水分子を付随しつつ貯留部16b側に移動させることができる。また、これに加えて、水の電気分解により貯留部16aに酸素ガスを生成し、貯留部16bに水素ガスを生成させることができる。
【0050】
このような水素ポンプ104では水素ポンプとしての機能によりプロトンH+の移動に伴って水分子を貯留部16b側へ移動させているので貯留部16a側に水素分子が蓄積され、水素分圧を低下させることを防止できる。
【0051】
ここで、この応用例に係るマイクロタスシステム100では、シリコン基板などの支持体101内に密封(閉鎖)されて各マイクロタス用の部材が配列されて組み込まれている。
【0052】
この応用例では、支持体101の一端101aから針先端102aを外気に露出した採血針102が組み込まれている。また、支持体101内には、二つの水素ポンプ(水素ポンプ103、104)、血液タンク105、ミキサ(混合装置)106、試薬タンク107、フィルタ108、検出部109、タンク110、酸素バッファ111が配置され、図示のような各流路により接続されている。
【0053】
すなわち、採血針102は流路aにより血液タンク105に接続され、血液タンク105は、流路bにより水素ポンプ103に接続されている。また、血液タンク105は、流路cによりミキサ106に接続され、さらに流路d及びフィルタ108を介して検出部109に接続されている。また、この検出部109はタンク110及び流路eを介して水素ポンプ104に接続されている。
【0054】
また、この水素ポンプ104は、流路fに接続され、この流路fは分岐されて試薬タンク107及び水素ポンプ103に接続されている。また、この水素ポンプ104は流路g及び酸素バッファ111を介して排出口112へ接続されている。さらに、試薬タンク107は流路hによりミキサ106に接続されている。
【0055】
ここで、各水素ポンプ103及び104は各々独立して所定の電圧が印加可能とされ、また、検出部109等は必要な回路構成等により検出結果が保存されたり又はそれぞれの検出項目に対して外部から検出可能に構成されている。
【0056】
ここで、水素ポンプ103の排出口17は流路fに接続され、排出口18は流路bに接続されている。また、水素ポンプ104の排出口19は流路gを介して酸素バッファ111に接続され、排出口17は流路eを介してタンク110に接続され、また排出口18は流路fに接続されている。
【0057】
次に、このようなマイクロタスシステム100の水素ポンプ103及び104を利用した応用について説明する。
【0058】
このマクロタスシステム100は、使用に先立って減圧することにより、各流路内及びタンク110内等はその温度における飽和水蒸気で満たされている。また、タンク110内には部分的に水を含ませておき、ここで必要な水分を供給する役割を果たす。外気と接している針先端102a及び酸素排出口112とはシールなどにより外気と遮断しておく。
【0059】
所定の電圧を印加させて水素ポンプ104を可動させることにより、陰極で酸素が生成され、陽極で水素が生成される。この生成ガスは、水の電気分解に由来するものであるので、生成ガスの体積比は水素の2に対して酸素は1である。
【0060】
生成した水素は流路fを介して水素ポンプ103に供給される。ついで、水素ポンプ103に所定の電圧を印加して水素ポンプ103を稼働させると、流路fを通って供給された水素は水素ポンプ103でさらに流路bに向けて送出され、血液タンク105,流路c、ミキサ106,流路d、フィルタを介して検出部109に供給される。検出部109を通過した水素はタンク110内で水を背接して飽和湿り水素として流路eを介して水素ポンプ104に供給される。
【0061】
これにより供給された水素と水分とにより水素ポンプ104ではさらに水の電気分解が継続されて、同様な図中右回りの水素循環回路が確立される。
【0062】
システム100内では、水の電気分解で生成した気体により加圧となる。酸素排出口112のシールを剥がすことにより生成した酸素は流路g、酸素バッファ111を介して酸素排出口112から排出される。また、針先端102aのシールを剥がすと水素は針先端102aから排出される。酸素排出口112を再びシールすることにより、システム内に充分な水素が充填されて準備段階が完了する。
【0063】
つぎに、採血針102を指などに刺した状態で、水素ポンプ103を逆転させて流路bを吸引側とすることにより採血針102で採取された血液を血液タンク105内に貯留する。血液針102の針先端102aを大気に露出させることにより血液は凝固し、システム内は閉鎖系とされる。積極的に採血針102内又は流路a内に凝血剤を注入させて閉鎖系を形成させてもよい。
【0064】
ついで、水素ポンプ103及び水素ポンプ104に水の電気分解が生起しない程度の低い所望の電圧を印加させて動作させることにより、血液タンク105内の血液と試薬タンク107内の試薬をミキサ106に供給させる。全体が閉鎖系であるので、水素ポンプ103の水素の移動量に比例して血液タンク105からミキサ106に血液が移動され、水素ポンプ104の水素の移動量から水素ポンプ103の水素の移動量を減じた量に比例して試薬タンク107からミキサ106へ試薬を供給することができる。
【0065】
ここで、各水素ポンプ103,104の移動量は各水素ポンプ103,104に流れた電流量に比例しているので、簡易にコントロールが行える。
【0066】
ミキサ106で混合された後、さらに押し出されて流路d、フィルタ108を介して検出部109に混合物が供給される。検出部109内の血液の滞留時間は水素ポンプ103,104の稼働状況により適宜に設定可能である。必要によっては、各水素ポンプ103、104の双方又は一方を逆転させてもよい。これにより、検出部109内で血液を充分に対流させたり、流したり、又は逆転(往復)させることにより検出部109で充分な反応を確保する。
【0067】
以上、この発明の実施の形態を図面により詳述してきたが、具体的な構成はこの実施の形態に限らず、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれる。
【0068】
例えば、以上の説明では、マイクロタスシステムを流体の移送装置又は流体の移送方法として説明していたが、本発明においては、基板内に組み込まれた水素ポンプにより流体を移送できるので、基板内に組み込まれた又は基板外に設置された各種の混合装置、反応装置、検出装置又は分析装置などと共に、基板内で各種の流体を移送し、又は基板外へ各種の流体を排出し、必要に応じて混合し、また必要に応じて反応させて、各種の混合装置、反応装置、検出装置若しくは分析装置等として又は各種の混合方法、反応方法、検出方法若しくは分析方法等として本発明の流体の移送装置又は流体の移送方法を広く利用することができる。
【0069】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明に従えば、固体電解質膜を利用した水素ポンプをマイクロタスシステムに組み込むことにより構成が簡単で、印加電圧が小さくても、小面積大流量の流体ポンプを構成することができる。
【0070】
また、本発明に従えば、特に簡単な構成によりマイクロタスシステム等に広く利用できる流体の移送装置及びそれを用いた流体の移送方法を提供することができる、という実用的な効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る水素ポンプの構成を説明する原理図である。
【図2】図1の水素ポンプの運転の一例を説明する図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る水素ポンプを用いたマイクロタスの応用例の一例を説明する図である。
【図4】図3に用いた水素ポンプの構成を説明する原理図である。
【図5】図4の水素ポンプの運転の一例を説明する図である。
【図6】電流密度と水素流量及び印加電圧の関係を表す図である。
【図7】印加電圧と水素流量の関係を表す図である。
【符号の説明】
10,103,104:水素ポンプ
11a、11b:カバー
12a、12b:基板
13:固体電解質膜
14a、14b:電極
15a、15b:導電パターン
16a、16b:貯留部
17,18,19:排出口
20:絶縁材料
a〜h:流路
100:マイクロタスシステム
101:支持体
102:採血針
102a:針先端
105:血液タンク
106:ミキサ
107:試薬タンク
108:フィルタ
109:検出部
110:タンク
111:酸素バッファ
112:酸素排出口
【発明の属する技術分野】
この発明は、水素ポンプを組み込んだ流体の移送装置及びそれを用いた流体の移送方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
マイクロタス用の組込型ポンプでは、電気浸透流を利用するものが知られており、その中でも電気化学的に気体を発生させて発生した気体の流れを利用して液体を押し出したり引き込んだりする流体ポンプが知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
このようなものにあっては、一方の極(作用極)では溶液中の水素イオンが電子を獲得し水素を発生させ又はその逆の反応により水素を消滅させている。一方、他方の極(対極)では溶液の種類によって異なるが、酸素などの水素以外のガスが発生されている。
【0004】
【非特許文献1】
H.Suzuki et. al., Sensors and Actuators(2002年)第242−250頁
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、非特許文献1に提案されている組込型の流体ポンプでは、基本原理は水の電気分解によってガスを発生させるという正味の化学反応を伴っており、また、対極で発生するガスと作用極で発生するガスの種類が異なっている。このため、正味の化学反応を伴うので、このような従来の組込型ポンプでは大きな電圧を電極に印加しなければ流体ポンプとして機能しない。そのために、小型電池で動作するマイクロタスシステムに適用させた場合には、電池寿命が短くなるという課題がある。
【0006】
また、このような流体ポンプでは、駆動中のオーム損が大きく、これも電池寿命を短くさせている。さらに、電圧と水素発生量との直線性があまり良くないという課題もある。
【0007】
そこで、この発明は、これらの課題を解決することを目的とし、特に簡単な構成によりマイクロタスシステム等に広く利用できる流体の移送装置及びそれを用いた流体の移送方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、固体電解質膜と、該固体電解質膜の両面に形成された水素透過電極と、該水素透過電極に電気的に接続された電源と、前記固体電解質から前記水素透過電極の表裏の外側に形成された気体流路とを有し、前記気体流路に水素ガスを充満させた状態で前記電源からの電流の大きさを変化させることにより、前記固体電解質膜を透過する水素ガス流量を変化させることのできる水素ポンプを流体の流動を目的として基板内に組み込んだことを特徴とする流体の移送装置である。
【0009】
このように構成すれば、固体電解質膜を利用した水素ポンプを用いるという簡単な構成により流体の移送装置を作動させることができる。
【0010】
また、このような構成によれば、水素ポンプに印加される電圧が小さくてもよい。
【0011】
ここで使用する固体電解質膜には、PEFCなどに使用するパーフルオロイオン交換膜などが例として挙げられる。この物質は、水素イオンがこの中を移動でき、電子が移動できないという性質を備えている。
【0012】
請求項2記載の発明は、前記固体電解質膜は、水素イオンが水分子を伴って移動可能なものであることを特徴とする請求項1記載の流体の移送装置である。
【0013】
このように構成すれば、ポンプの引込側電極の水蒸気分圧が上がり、ポンプの動作を阻害することを防ぐことができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記基板内には前記水素ポンプへ水素を供給するための水素発生源を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の流体の移送装置である。
【0015】
このように構成すれば、基板内に水素発生源を備えることにより外部から水素を供給することなくシステムを稼働させることができる。
【0016】
すなわち、水素は分子が小さいために基板等の壁体を容易に透過してしまうために、長期保存時は系内の水素が散逸してしまう。それ故、流体移送装置を長期間運転しない場合には、運転の都度に水素を充填しなければならないが、このように基板内に水素発生源を備えることにより外部から水素を供給することなくシステムを稼働させることができる。
【0017】
なお、この水素発生源としては水素を化合物として流体の移送装置内に蓄え、使用時に化合物から水素を取り出して使用することのできるものを用いることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、前記水素発生源は、固体電解質膜を利用した水素ポンプであることを特徴とする請求項3記載の流体の移送装置である。
【0019】
このように構成すれば、水素ポンプと水素発生源とを同時に兼ね備えることにより装置を簡略化させることができる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、前記基板内の流路は、水蒸気で満たされた状態に封入されることを特徴とする請求項4記載の流体の移送装置である。
【0021】
このように構成すれば、水素ポンプを用いて即座に水の電気分解を行うことができ、これにより流体の移送装置の検出準備工程が簡略化できる。
【0022】
請求項6記載の発明は、前記水素透過電極の少なくとも一方には、水素をイオン化させるための触媒が担持されていることを特徴とする請求項1記載の流体の移送装置であり、このように構成すれば、水素のイオン化が円滑に行える。
【0023】
請求項7に記載の発明は、請求項4又は5に記載の流体の移送装置を始動する際に、前記水素ポンプにより水の電気分解により水素を発生させると同時に発生する酸素をシステム外に排出させ、しかる後、前記発生した水素ガスを利用して前記水素ポンプを作動させて流体の移送を行うことを特徴とする流体の移送方法である。
【0024】
以上に記載の流体の移送装置又は流体の移送方法は、基板内に組み込まれた又は基板外に設置された各種の混合装置、反応装置、検出装置又は分析装置などと共に、基板内で各種の流体を移送し、必要に応じて混合し、また必要に応じて反応させて、各種の混合装置、反応装置、検出装置若しくは分析装置等として又は各種の混合方法、反応方法、検出方法若しくは分析方法等として広く利用することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0026】
まず、本発明の流体の移送装置又は流体の移送方法の一例として、チップ上で遺伝子、タンパク質などの解析を行うためのマイクロタスシステム(μ total analysis system:マイクロタス)の基板に水素ポンプを組み込んだ流体の移送装置又は移送方法について図面を用いて説明する。
【0027】
まず、図1において、符号10で示される水素ポンプは、シリコン又はプラスチックなどのカバー11a、11b及び基板12a、12b内に支持されて形成されたマイクロタス用の組込ポンプである。この水素ポンプ10は固体電解質膜13のプロトン導電性を利用して構成されている。この固体電解質膜としては、例えば、パーフルオロイオン交換膜で代表される固体高分子電解質膜が例示されるが、これに限定されない。水素イオンは透過させるが水素ガス及び電子は実質的に透過させることの無い固体電解質膜であればよい。
【0028】
この固体電解質膜13の両側には一対の電極14a、電極14bが配置されている。これらの電極14a、14bは、例えば、カーボンペーパーなどで構成された水素が透過できるようにした水素透過電極であり、これらの電極14a、14bの少なくとも一方の電極には、水素をイオン化させるための触媒が担持されているものが好ましい。このような触媒としては、例えば、水素ガスとの酸化還元反応を円滑に行えるような白金などの触媒が例示される。
【0029】
これらの電極14a、14bは、基板12a、12bの表面に形成された導電パターン15a、15bに接続されている。各電極14a、14b間及び導電パターン15a、15b間の空間にはポリイミドフィルムなどの絶縁材料20が介在されている。ここで、この絶縁材料20はシリコーンゴム等の封止機能を備えたものが一層好ましい。
【0030】
これらの導電パターン15a、15bは不図示の電源に接続されることにより、一対の電極14a、14b間に所定の電圧が印加可能とされている。
【0031】
基板12a、12bにはそれぞれ空間が射出成形、切削、エッチングなどにより形成され、これらの空間は水素などの気体を貯留する貯留部16a、16bとされている。一方の貯留部16aから同様に射出成形、切削、エッチングなどにより排出口17が基板12a及びカバー11a内に形成され、他方の貯留部16bから排出口18が同様に基板12b及びカバー11b内に形成されている。
【0032】
このような水素ポンプ10を用い、排出口18を不図示の検査部に接続させることによりマイクロタスシステムが構成される。
【0033】
以下、このマイクロタスシステムの作用について説明する。
【0034】
貯留部16a、16bに接続される排出口17,18を利用して各貯留部16a、16b内に水素ガス又は水素ガスを含む気体を貯留した状態で各電極14a、14b間に所定の電圧を印加することによりこの水素ポンプ10は機能する。
【0035】
例えば、図2に示すように、各電極14a、14b間に所定の電位差を印加することにより、貯留部16aに滞留している水素ガスが電極(アノード)14a上で反応して電子を吸引しプロトンH+が生成する。このプロトンH+は電位差により固体電解質膜13を透過して貯留部16bに移動する。貯留部16bではプロトンH+は電極(カソード又は作用極)14bから電子を受け取り水素ガスが生成する。
【0036】
ここで、プロトンH+は、水素ガスの雰囲気が水又は水蒸気であれば、水の一分子又はそれ以上の数の分子と共に固体電解質膜13を移動する。これにより、電極間14a、14b間には電流が流れ、それと同時に貯留部16aでは水素ガスが消費されて減圧となり、一方、貯留部16bでは、水素ガスが生成し、固体電解質膜13をプロトンH+とともに移動した水又は水蒸気分だけ加圧される。
【0037】
これにより、貯留部16bに連通する排出口18から水素(又は水素と水分)が送出されて排出口18に接続された試薬タンク又は血液タンク等(いずれも不図示)中の試薬又は血液等を検査部(不図示)に押し出す(送出させる)ことができる。
【0038】
また、各導電パターン15a、15b間に印加される電圧の向きを逆転して、電極14aをカソードとし、電極14bをアノードとすれば、この逆の反応が生起して電流が逆向きに流れ、電極14aが作用極となって排出口17から水素が放出され、排出口18は吸引側となって血液又は試薬等を引いたりして採取することができる。
【0039】
これにより、この固体電解質膜13に所定量の電流を通電させることによって、水素を含有するガス中から所定量の水素を電解質膜の一方側から他方側へと移動が可能となる。また、この移動速度は、固体電解質膜の種類、面積等、電極の材質等によっても左右されるが、一般的に電圧を高くすることにより流量(又は流速)を調整することができる。
【0040】
すなわち、電解質膜に電圧を印加すると、負極側で水素ガスがプロトンH+となり、生成したプロトンH+は電解質膜内で電圧の印加方向と逆向きに移動し、移動したプロトンは陽極側の表面で水素ガスとなる。このようにして生じる水素ガス量は電解質膜における通電量によって決まるため、電解質膜における通電量を制御することによって、水素ガスの移動量(又は移動速度)を制御して所望の圧力又は流量の水素ガスを生成又は消費させることができる。
【0041】
このような構成の水素ポンプ10は固体電解質膜を利用することにより構成が簡単で、印加電圧が小さくても、小面積大流量の流体ポンプを構成することができる。
(実施例)
次に、これらの関係を明確にするために、理論値と実験値との対応を試みた。ここで、図6は、横軸xに電極の単位面積(1mm2)当たりの電流値をとり、縦軸yに水素流量及び印加電圧の実測値との関係をプロットした図である。
【0042】
「四角」で表したグラフは、単位面積あたりの水素流量[nL/s・mm2]を表し、実線は電流から次式で水素の移動モル数を求め、それを表した理論値であり、「四角」は実測値である。
【0043】
単位面積当たりの水素流量=
電流密度/ファラデー定数×ガス定数×絶対温度/圧力/2
この図6より、両者がよく一致していることがわかる。また、上式には電極の大きさや厚さなどのパラメータが入っていない。このことは、製造のバラツキなどが有ってもそのバラツキの変動を受けずに電流値のみに依存した安定した水素量を確保できることが理解される。
【0044】
つぎに、「菱形」で表したグラフは、印加電圧を表す図であり、印加電圧を上げることにより電流密度をほぼ原点を通る直線として示すことができることが確認される。これにより、この発明のポンプでは、化学変化を伴わない定量的な反応で水素が移動できることが理解される。
【0045】
つぎに、これらの図から、横軸xに印加電圧をとり、縦軸yに水素流量を表すと図7となる。ここで、この図7では、直線状となり、そのグラフの傾斜は略744[nL/s・Vmm2]となる。例えば、非特許文献1に記載の先行技術で用いられているポンプの能力が約34[nL/s・Vmm2]であることを考慮すると、本発明の場合には、約20倍も優れていることが確認される。
(応用例)
次に、この水素ポンプ10を用いたマイクロタスの応用例の一例について図面を参照しつつ説明する。
【0046】
まず、図3は、この発明の水素ポンプ103に加えて水素発生源としての水素ポンプ104をマイクロタスシステム100に組み込んだ応用例の概略を説明する図である。
【0047】
ここで、水素ポンプ104は、図4に示すように、貯留部16aは二つの排出口17、19を備えている。また、この水素ポンプ104では、導電パターン15a、15bに印加される電圧が水素ポンプ内で水が電解されるに充分な電圧が印加可能に構成されている。もちろん、電極14a、14bの材質がこの目的のために最適化されて異なっていてもよい。その他の構成は、図1の水素ポンプと実質的に同一乃至は均等であるので同一番号を付して詳細な説明は省略している。
【0048】
このような水素ポンプ104では、電極間14a、14bに水が電気分解される所定の電圧を印加することにより、貯留部16a、16bに貯留される水蒸気を電気分解させて、例えば、貯留部16aに酸素ガスを発生させ、貯留部16bに水素ガスを発生させることができる。
【0049】
これにより、例えば、排出口17から水蒸気と水素との混合ガスを貯留部16aに導入して所定の電圧を印加させることにより、貯留部16aに貯留された水素を水素ポンプの機能によりプロトンH+として水分子を付随しつつ貯留部16b側に移動させることができる。また、これに加えて、水の電気分解により貯留部16aに酸素ガスを生成し、貯留部16bに水素ガスを生成させることができる。
【0050】
このような水素ポンプ104では水素ポンプとしての機能によりプロトンH+の移動に伴って水分子を貯留部16b側へ移動させているので貯留部16a側に水素分子が蓄積され、水素分圧を低下させることを防止できる。
【0051】
ここで、この応用例に係るマイクロタスシステム100では、シリコン基板などの支持体101内に密封(閉鎖)されて各マイクロタス用の部材が配列されて組み込まれている。
【0052】
この応用例では、支持体101の一端101aから針先端102aを外気に露出した採血針102が組み込まれている。また、支持体101内には、二つの水素ポンプ(水素ポンプ103、104)、血液タンク105、ミキサ(混合装置)106、試薬タンク107、フィルタ108、検出部109、タンク110、酸素バッファ111が配置され、図示のような各流路により接続されている。
【0053】
すなわち、採血針102は流路aにより血液タンク105に接続され、血液タンク105は、流路bにより水素ポンプ103に接続されている。また、血液タンク105は、流路cによりミキサ106に接続され、さらに流路d及びフィルタ108を介して検出部109に接続されている。また、この検出部109はタンク110及び流路eを介して水素ポンプ104に接続されている。
【0054】
また、この水素ポンプ104は、流路fに接続され、この流路fは分岐されて試薬タンク107及び水素ポンプ103に接続されている。また、この水素ポンプ104は流路g及び酸素バッファ111を介して排出口112へ接続されている。さらに、試薬タンク107は流路hによりミキサ106に接続されている。
【0055】
ここで、各水素ポンプ103及び104は各々独立して所定の電圧が印加可能とされ、また、検出部109等は必要な回路構成等により検出結果が保存されたり又はそれぞれの検出項目に対して外部から検出可能に構成されている。
【0056】
ここで、水素ポンプ103の排出口17は流路fに接続され、排出口18は流路bに接続されている。また、水素ポンプ104の排出口19は流路gを介して酸素バッファ111に接続され、排出口17は流路eを介してタンク110に接続され、また排出口18は流路fに接続されている。
【0057】
次に、このようなマイクロタスシステム100の水素ポンプ103及び104を利用した応用について説明する。
【0058】
このマクロタスシステム100は、使用に先立って減圧することにより、各流路内及びタンク110内等はその温度における飽和水蒸気で満たされている。また、タンク110内には部分的に水を含ませておき、ここで必要な水分を供給する役割を果たす。外気と接している針先端102a及び酸素排出口112とはシールなどにより外気と遮断しておく。
【0059】
所定の電圧を印加させて水素ポンプ104を可動させることにより、陰極で酸素が生成され、陽極で水素が生成される。この生成ガスは、水の電気分解に由来するものであるので、生成ガスの体積比は水素の2に対して酸素は1である。
【0060】
生成した水素は流路fを介して水素ポンプ103に供給される。ついで、水素ポンプ103に所定の電圧を印加して水素ポンプ103を稼働させると、流路fを通って供給された水素は水素ポンプ103でさらに流路bに向けて送出され、血液タンク105,流路c、ミキサ106,流路d、フィルタを介して検出部109に供給される。検出部109を通過した水素はタンク110内で水を背接して飽和湿り水素として流路eを介して水素ポンプ104に供給される。
【0061】
これにより供給された水素と水分とにより水素ポンプ104ではさらに水の電気分解が継続されて、同様な図中右回りの水素循環回路が確立される。
【0062】
システム100内では、水の電気分解で生成した気体により加圧となる。酸素排出口112のシールを剥がすことにより生成した酸素は流路g、酸素バッファ111を介して酸素排出口112から排出される。また、針先端102aのシールを剥がすと水素は針先端102aから排出される。酸素排出口112を再びシールすることにより、システム内に充分な水素が充填されて準備段階が完了する。
【0063】
つぎに、採血針102を指などに刺した状態で、水素ポンプ103を逆転させて流路bを吸引側とすることにより採血針102で採取された血液を血液タンク105内に貯留する。血液針102の針先端102aを大気に露出させることにより血液は凝固し、システム内は閉鎖系とされる。積極的に採血針102内又は流路a内に凝血剤を注入させて閉鎖系を形成させてもよい。
【0064】
ついで、水素ポンプ103及び水素ポンプ104に水の電気分解が生起しない程度の低い所望の電圧を印加させて動作させることにより、血液タンク105内の血液と試薬タンク107内の試薬をミキサ106に供給させる。全体が閉鎖系であるので、水素ポンプ103の水素の移動量に比例して血液タンク105からミキサ106に血液が移動され、水素ポンプ104の水素の移動量から水素ポンプ103の水素の移動量を減じた量に比例して試薬タンク107からミキサ106へ試薬を供給することができる。
【0065】
ここで、各水素ポンプ103,104の移動量は各水素ポンプ103,104に流れた電流量に比例しているので、簡易にコントロールが行える。
【0066】
ミキサ106で混合された後、さらに押し出されて流路d、フィルタ108を介して検出部109に混合物が供給される。検出部109内の血液の滞留時間は水素ポンプ103,104の稼働状況により適宜に設定可能である。必要によっては、各水素ポンプ103、104の双方又は一方を逆転させてもよい。これにより、検出部109内で血液を充分に対流させたり、流したり、又は逆転(往復)させることにより検出部109で充分な反応を確保する。
【0067】
以上、この発明の実施の形態を図面により詳述してきたが、具体的な構成はこの実施の形態に限らず、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれる。
【0068】
例えば、以上の説明では、マイクロタスシステムを流体の移送装置又は流体の移送方法として説明していたが、本発明においては、基板内に組み込まれた水素ポンプにより流体を移送できるので、基板内に組み込まれた又は基板外に設置された各種の混合装置、反応装置、検出装置又は分析装置などと共に、基板内で各種の流体を移送し、又は基板外へ各種の流体を排出し、必要に応じて混合し、また必要に応じて反応させて、各種の混合装置、反応装置、検出装置若しくは分析装置等として又は各種の混合方法、反応方法、検出方法若しくは分析方法等として本発明の流体の移送装置又は流体の移送方法を広く利用することができる。
【0069】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明に従えば、固体電解質膜を利用した水素ポンプをマイクロタスシステムに組み込むことにより構成が簡単で、印加電圧が小さくても、小面積大流量の流体ポンプを構成することができる。
【0070】
また、本発明に従えば、特に簡単な構成によりマイクロタスシステム等に広く利用できる流体の移送装置及びそれを用いた流体の移送方法を提供することができる、という実用的な効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る水素ポンプの構成を説明する原理図である。
【図2】図1の水素ポンプの運転の一例を説明する図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る水素ポンプを用いたマイクロタスの応用例の一例を説明する図である。
【図4】図3に用いた水素ポンプの構成を説明する原理図である。
【図5】図4の水素ポンプの運転の一例を説明する図である。
【図6】電流密度と水素流量及び印加電圧の関係を表す図である。
【図7】印加電圧と水素流量の関係を表す図である。
【符号の説明】
10,103,104:水素ポンプ
11a、11b:カバー
12a、12b:基板
13:固体電解質膜
14a、14b:電極
15a、15b:導電パターン
16a、16b:貯留部
17,18,19:排出口
20:絶縁材料
a〜h:流路
100:マイクロタスシステム
101:支持体
102:採血針
102a:針先端
105:血液タンク
106:ミキサ
107:試薬タンク
108:フィルタ
109:検出部
110:タンク
111:酸素バッファ
112:酸素排出口
Claims (7)
- 固体電解質膜と、
該固体電解質膜の両面に形成された水素透過電極と、
該水素透過電極に電気的に接続された電源と、
前記固体電解質から前記水素透過電極の表裏の外側に形成された気体流路とを有し、
前記気体流路に水素ガスを充満させた状態で前記電源からの電流の大きさを変化させることにより、前記固体電解質膜を透過する水素ガス流量を変化させることのできる水素ポンプを流体の流動を目的として基板内に組み込んだことを特徴とする流体の移送装置。 - 前記固体電解質膜は、水素イオンが水分子を伴って移動可能なものであることを特徴とする請求項1記載の流体の移送装置。
- 前記基板内には前記水素ポンプへ水素を供給するための水素発生源を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の流体の移送装置。
- 前記水素発生源は、固体電解質膜を利用した水素ポンプであることを特徴とする請求項3記載の流体の移送装置。
- 前記基板内の流路は、水蒸気で満たされた状態に封入されることを特徴とする請求項4記載の流体の移送装置。
- 前記水素透過電極の少なくとも一方には、水素をイオン化させるための触媒が担持されていることを特徴とする請求項1記載の流体の移送装置。
- 請求項4又は5に記載の流体の移送装置を始動する際に、前記水素ポンプにより水の電気分解により水素を発生させると同時に発生する酸素をシステム外に排出させ、しかる後、前記発生した水素ガスを利用して前記水素ポンプを作動させて流体の移送を行うことを特徴とする流体の移送方法。
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