JP2004346562A - パッシブ型2段階制振装置 - Google Patents

パッシブ型2段階制振装置 Download PDF

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Abstract

【課題】塔状建物の屋上工作物等の重量をマスの一つに利用したパッシブ型2段階制振装置を提供する。
【解決手段】親子関係に構成した大小二つのマスの働きを2段階に切り換えて揺れを抑えるパッシブ型2段階制振装置において、建物の屋上工作物等が、建物上に、日常風程度では滑らない大きさの摩擦係数を有する滑り支承により非質量同調大マスとして水平方向へ移動可能に支持され、更に減衰手段と復元力手段及び過大変形防止手段がそれぞれ設けられ、前記屋上工作物等の内部に、風用の質量同調系小マスが水平方向への移動が可能に設置され、この小マスにも減衰手段と復元力手段及び過大変形防止手段が設けられている。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、塔状建物の地震や風によって発生する大小様々な揺れを、親子関係に構成した大小二つのマスの働きを2段階に切り換えてパッシブ形式で抑制するパッシブ型2段階制振装置の技術分野に属し、更に言えば、屋上工作物等の重量をマスの一つに利用したパッシブ型2段階制振装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
所謂アスペクト比が大きい塔状建物は、地震や風によって揺れやすい性質を有している。
そこで風に対しては、居住性を改善する目的で、建物頂部に質量体(マスや液体槽)を設置し、その周期を建物周期と一致させて共振現象を起こさせ、建物全体の振動を抑制する同調質量系ダンパー(AMD、TMD、TLD)を実施する例が多い。
【0003】
同調質量系ダンパーの制振効果は、質量体(以下、マスと呼ぶ。)の慣性力が大きいほど及び振幅が大きいほど高い。
従って、同調質量系ダンパーのみで、建物の小さい揺れ、大きい揺れの双方に対して制振効果を得るためには、マスに非常に大きな移動距離(ストローク)と、非常に大きな質量が必要である。制振マスは、建物の揺れが最も大きい階、一般的には屋上階に設置するのが効果的である。
【0004】
しかし、小規模な塔状建物は、制振マスを設置するスペースに制約がある。また、大きなストロークを確保することも不可能なことが多く、建築計画的に実施が困難である。大きなマスを建物頂部に設置することは、骨組みに対して常時の鉛直荷重が増大するので不経済な設計になる。
【0005】
一方、大規模な塔状建物(超高層建物)は、周期が長く(振動数が小さく)なり、慣性力が小さくなるため、大地震時に制振効果を得るためには、更に大きなマス質量とストロークが必要となり、実施不可能である。その故に、小さい揺れのみを対象とする同調質量系ダンパー(TMD)を設置し、大地震時には固定して動かないようにする構成例が殆どである。
【0006】
いずれにしても、大地震に比べて遙かに小さな揺れに対して設計されているマスダンパーは、大地震時に対しては、質量、ストローク、速度が非常に大きくなるため、マスダンパー構成部材の設計が不可能である。速度が大きくなるため既製品を使用できず、特注品を使用する必要がある、等々の理由でコストが非常に高い装置になってしまう。
【0007】
従来技術として、小さな揺れと大きな揺れの双方に働かせる制振マスダンパーが、下記の特許文献1、特許文献2及び特許文献3に開示されている。しかし、これらは振動制御対象の建物又は構造物に付加マスを設置し、付加マスに子マスを設置し、子マスに反力をとって付加マスをコンピュータなどにより駆動制御するアクチュエータを用いて能動的に揺らすアクティブ型制振の方法によるものである。アクティブ型制振はコンピュータにより揺れの程度に応じて加振力を可変制御出来るため、幅広い範囲の揺れの大きさに対応した制振効果を得られる。しかし、コンピュータの制御が必要であるため、高価である。また、電気系統を不可欠とするため、地震時に電力供給が絶たれたときには動作保証に不安がある。
【0008】
小さな揺れと大きな揺れの双方に有効な制振マスダンパーとしては、剛性や減衰を可変とするアクティブ制御の方法が採用されることもある。しかし、制御のためには外部から電気エネルギの供給が必要であるし、計測、演算装置などが必要でもあるから、非常に高価なものである。
【0009】
制振マスダンパーにおいて、マスの動きを2段階に切り換え可能に構成したものが、下記の特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7及び特許文献8に開示されている。しかし、これらの制振マスダンパーは、複数モードの制御やX−Y2軸方向の周期差を持つ建物に対して周期を合わせるためのものであり、制御対象とする外力の大きさ(例えば大地震と風荷重、小地震の差)に応じて可動マスを切り換える構成にはなっていない。
【0010】
従来、建物の屋上の重量物をマスとして利用する制振ダンパーとして、例えば下記の特許文献9には、意匠用構造物をマスに利用した制振ダンパーが開示されている。また、特許文献10には、建物の塔屋部分をマスに利用した制振ダンパーが開示されている。これらのマスダンパーは、弾性体を介して共振系を構成したことを特徴としている。
【0011】
【特許文献1】
特開平5−141120号公報
【特許文献2】
特公平3−70075号公報
【特許文献3】
特開平5−10053号公報
【特許文献4】
特許第2627862号公報
【特許文献5】
特公平5−4529号公報
【特許文献6】
特開平6−272427号公報
【特許文献7】
特開平8−21127号公報
【特許文献8】
特開平9−310534号公報
【特許文献9】
特開2000−170411号公報
【特許文献10】
特開平4−285276号公報
【0012】
【本発明が解決しようとする課題】
風による小さな揺れと、地震による大きな揺れの双方に有効なパッシブ型の2段階制振装置を、塔状建物の屋上工作物等と、これに付加した質量同調系の小マスとにより実現しようとすると、次の問題が解決されねばならない。
塔状建物の屋上工作物又は付属物などは、その設置位置が地上から高いため、大きな風荷重を受けやすい。塔状建物であるため、屋上工作物等の支点間距離は小さく制限される。また、屋上工作物等は、元来、比較的に軽量であることが多い。したがって、屋上工作物等の足元部分には転倒モーメントや引き抜き力が発生しやすい。しかし、制振マスダンパーに通常使用される支承(積層ゴム支承、滑り支承、転がり支承など)は、引き抜き力に対して構造上弱い。このため屋上工作物等を制振マスダンパーとして利用する場合には、支持装置部分に引き抜き力を発生させないように、必要充分な重量により抑え込むなどの引き抜き防止措置を講ずる必要がある。例えば引き抜き力を発生させないように、屋上工作物等に重量を付加する必要がある。その付加重量は、転倒防止の観点から、屋上工作物等の低い部分に、且つ支持点(支承)に近い位置に設置することが望ましい。以上の検討から、前記付加重量の一部を、同調質量系ダンパー(TMD)のマス及び屋上工作物の基礎梁兼用とすることで、合理的な質量付加が可能になることがわかる。
【0013】
本発明の目的は、塔屋などの屋上工作物や付属物の重量を非質量同調大マスに利用し、更に前記屋上工作物等に内包された質量同調系小マスの二種を用い、2段階に切り換えるパッシブ型制振システムにより、建物の地震による大きな揺れに対する安全性と、風や小地震等による小さな揺れに対する居住性、使用性を確保するパッシブ型2段階制振装置を提供することである。
【0014】
本発明の次の目的は、大きな風荷重を受けやすく、比較的軽量で、足元部分に転倒モーメントや引き抜き力が生じやすい屋上工作物等を、これに内包させた質量同調系小マスを付加重量に利用し、合理的に引き抜き防止措置を講じてなるパッシブ型2段階制振装置を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上述した従来技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係るパッシブ型2段階制振装置は、
大きな地震による揺れ、及び風や小地震による小さな揺れのそれぞれに対し、親子関係に構成した大小二つのマスの働きを2段階に切り換えてパッシブ形式で揺れを抑えるパッシブ型2段階制振装置において、
建物の屋上工作物等が、建物上に、日常風の大きさ程度では滑らない大きさの摩擦係数を有する滑り支承により非質量同調大マスとして水平方向へ移動可能に支持されており、更に減衰手段と復元力手段及び過大変形防止手段がそれぞれ設けられていること、
前記屋上工作物等の内部に、風用の質量同調系小マスが水平方向への移動が可能に設置されており、この小マスにも減衰手段と復元力手段及び過大変形防止手段が設けられていること、を特徴とする。
【0016】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載したパッシブ型2段階制振装置において、
風用の質量同調系小マスが、屋上工作物等の風に対する転倒防止に必要な重量物の一部又は全部を兼ねていることを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載した発明は、請求項1に記載したパッシブ型2段階制振装置において、
建物の屋上工作物等は、その上部を鉄骨造として構成され、下部の基礎部分は風に対する転倒防止、及び同基礎の浮き上がりを防止する付加質量を兼ねる鉄筋コンクリート造を主体として構成されていることを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載した発明は、請求項1に記載したパッシブ型2段階制振装置において、
滑り支承の摩擦係数は8/100以上30/100以下の大きさであることを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載した発明は、請求項1に記載したパッシブ型2段階制振装置において、
建物の屋上工作物等の滑り支承は、その一部に転がり支承又は積層ゴム支承若しくは両者の併用を含み、
減衰手段は、オイルダンパー、粘性体ダンパー、粘弾性ダンパー、摩擦ダンパー、鋼材履歴ダンパーの何れかとされ、
復元力手段は、積層ゴム支承、線型又は非線型のコイルバネのいずれかであることをそれぞれ特徴とする。
【0020】
【発明の実施形態】
以下に、請求項1〜5に記載した発明に係るパッシブ型2段階制振装置の実施形態を、図面に基いて説明する。
先ず図1は、本発明に係るパッシブ型2段階制振装置の一般論的モデルを分かりやすく示したものである。図中の符号1が建物本体(塔状建物)を示し、2が屋上工作物(建物の一部、あるいは塔屋等の屋上付属物を含む。)、3は前記屋上工作物の可動支持装置であり、具体的には摩擦係数が大きい(8/100以上30/100以下の大きさ。)滑り支承である(請求項4記載の発明)。この滑り支承3により、前記屋上工作物2は、非質量同調大マスとして水平方向へ移動可能に支持されている。滑り支承3には、その一部に転がり支承又は積層ゴム支承若しくは両者の併用を含ませることができる(請求項5記載の発明)。
【0021】
次に、符号4は屋上工作物2が非質量同調大マスとして働く際の減衰手段である。これにはオイルダンパー、粘性体ダンパー、粘弾性ダンパー、あるいは摩擦ダンパー、鋼材履歴ダンパーの何れかが、ダンパー形式を問わず使用される(請求項5記載の発明)。符号5は復元力手段を指す。これには積層ゴム支承、線型又は非線型のコイルバネのいずれかが採用される(請求項5記載の発明)。更に符号10は、屋上工作物2の過大変形防止手段を指している。
【0022】
図1中の符号6は、前記屋上工作物2に内包された風用の質量同調系小マスである。この質量同調系小マス6は、既述したように、屋上工作物2の転倒防止の観点から、屋上工作物2のできるだけ低い部位に、且つ支持点(滑り支承3)に近い位置に水平方向への移動が可能に設置される。なお、同じ屋上工作物2の足元部位には鉄筋コンクリート製の基礎梁を配置して、屋上工作物2が風により転倒したり浮き上がること(支承に引き抜き力を発生させること。)を防止する重しとしても利用される。この質量同調系小マス6についても、減衰手段と復元力手段が設けられるが、図1にはその図示を省略した。符号7は質量同調系小マス6の過大変形防止手段を指している。
【0023】
次に、図2〜図4は、上記の屋上工作物2が、例えば太陽熱利用の空気調和設備システムその他を設置した三角屋根構造である場合の実施形態をより具体的に示している。
図2は、質量同調系小マス6が、吊り構造の振り子型チューンドマスダンパー(重量7トン(7×10kg)、ストローク1.5cm)であることを明示している。この質量同調系小マス6の側面方向には、減衰手段と過大変形防止手段7とが設置されていることも示している。なお、質量同調系小マス6の設置態様は、吊り構造の限りではなく、通常の水平移動(振動)する構造で設置することもできる。
【0024】
図3と図4は、更に具体的に、屋上工作物2の基礎梁2aが、建物1の屋上に構築されたコンクリート台座11の上に設置された、水平2軸方向に移動自在な滑り支承3により支持されていることを示す。また、屋上工作物2の梁2bへ吊り材12で吊り支持された質量同調系小マス6の側面に対して、やはり梁2bから下ろした垂直腕部材13に、上記の減衰手段と過大変形防止手段7が設置されていることも示す。
通例、屋上工作物2は、その上部を鉄骨造として構成されるが、下部の基礎梁2aの部分は、風に対する転倒防止、及び同基礎の浮き上がりを防止する付加質量を兼ねる鉄筋コンクリート造を主体として構成されている(請求項3記載の発明)。
図4は更に、屋上工作物2が非質量同調大マスとして働く際の減衰手段であるオイルダンパー4の設置態様、及び復元力手段である積層ゴム5の設置態様をも示している。
【0025】
図5と図6は、滑り支承3の具体的構造を示している。コンクリート台座11の上面へ固定したベースプレート30の水平な上面が滑り面に形成され、該滑り面の左右に対称な配置で、図6の紙面と垂直な方向(以下、これをX軸方向と呼ぶ。)に、コ字形をなす案内溝31が設けられている。前記滑り面の上に滑動部材33が設置され、滑動部材33の下端部側面に、前記案内溝31内を滑る被拘束部32がX軸方向へ形成されている。この滑動部材33のX軸方向への摩擦係数の大きさが、上記したように8/100以上30/100以下の大きさに設定され、季節風などの日常的な風や小地震の程度ではフラフラ動くことはないが、大地震時には滑らかに動くトリガー機能を発揮する構成とされている。前記大きさの摩擦係数は、各滑り面の仕上げ加工精度の如何、或いは合成樹脂シートの使用などによって実現される。
なお、図5に示すように、前記ベースプレート30の案内溝31の両端近傍位置に、過大変形防止手段10としてのストッパブロック10aがベースプレート30に固定されている。前記滑動部材33が過大な変位をすると、ストッパブロック10aへ衝突して変位が阻止される。
【0026】
前記滑動部材33の水平な上面に、スライドプレート35が、図5の紙面と垂直な方向(以下、これをY軸方向と呼ぶ。)への水平移動が可能に載置されている。即ち、スライドプレート35の下面が水平な滑り面に形成され、該滑り面の左右に対称な配置で、図4の紙面と垂直なY軸方向に、コ字形をなす案内溝36が設けられている。一方、前記滑動部材33の上端部側面に、前記案内溝36内を滑る被拘束部37が形成されており、Y軸方向にのみ滑動可能に構成されている。スライドプレート35のY軸方向への摩擦係数の大きさも、上記したように8/100以上30/100以下の大きさに設定され、日常の風や小地震の程度ではフラフラ動くことはないが、大地震時には滑らかに動くトリガー機能を発揮する構成とされている。前記大きさの摩擦係数は、各滑り面の仕上げ加工精度の如何、或いは合成樹脂シートの使用などによって実現される。
図5で明らかなように、ベースプレート35の案内溝36の両端近傍位置に、過大変形防止手段10としてのストッパブロック10bがスライドプレート35に固定されている。前記滑動部材33が過大な変位をすると、ストッパブロック10bへ衝突して変位が阻止される。
【0027】
上記構成の滑り支承3におけるスライドプレート35の上に、屋上工作物2の上記基礎梁2a(図3)の下端が載置され固定されている。かくして、屋上工作物2は、滑り支承3の摩擦係数を超える大地震時にのみ、非質量同調大マスとして水平方向へ移動可能に支持されているのである。
【0028】
次に、図7〜図9に基づいて、上記屋上工作物2の内部に設置された風用の質量同調系小マス6の構成について説明する。
この質量同調系小マス6が、屋上工作物2の梁2bの下に、4本の吊り材12により吊り下げられた吊り構造の振り子型チューンドマスダンパーとして構成されていることは、既に図2〜図4に基づいて説明した通りである。吊り構造であるが故に、復元力手段を備えていることは当業者に明らかであろう。質量同調系小マス6は、一例として、縦、横、高さがそれぞれ、1300×2300×1000mmの大きさで、重量は70KN程度の鉄筋コンクリート製である。したがって、この質量同調系小マス6が、屋上工作物2の風に対する転倒防止に必要な重量物の一部(又は全部)を兼ね得る(請求項2記載の発明)。
【0029】
図7〜図9は、上記質量同調系小マス6の減衰手段と過大変形防止手段7の具体的構成と配置を示している。
質量同調系小マス6の短辺に相当する図6中左右の2側面には、その中央部に1個ずつ(図9)、過大変形防止手段7であるストッパ7aが、垂直腕部材13に反力をとる構成で設置されている。長辺に相当する2側面(正面と背面)にはその左右に2箇所ずつ合計4箇所に、上段が過大変形防止手段7としてのストッパ7aで、下段に減衰手段としてのダンパー16がそれぞれ、1本の垂直腕部材13を共通に利用して反力をとる構成で設置されている。垂直腕部材13は、要所要所に補強スチフナーを入れたH形鋼で構成されている。
【0030】
図10にストッパ7aの詳細構造を示し、図11がダンパー16の詳細構造を示している。
ストッパ7aの構成について説明する。鉄筋コンクリート製の質量同調系小マス6の各側面の該当位置に、打ち込み型のスリーブナット70を利用して、衝突板71がボルト72で固定されている。衝突板71の前面には、緩衝ゴムシート73が張り付けられている。一方、垂直腕部材13の内側面において対応する位置にも、衝突板74がボルト75で固定されている。衝突板74の前面にも、緩衝ゴムシート73が張り付けられている。因みに相対峙する二つの緩衝ゴムシート73と76の間のクリアランスSは15mm程度に設定されており、このクリアランスS以上に質量同調系小マス6が変位すると、ストッパ7aが衝突したり反発する状態となって、屋上工作物2と一体的に挙動する。
【0031】
それを具体的に説明すると、入力レベルが震度3以下の小地震、あるいは風速22〜25m/s以下の強風時では、質量同調系小マス6は、前記クリアランスSの範囲内で振り子として作動し、制振作用と制振効果を発揮する。しかし、震度が3〜4以上、あるいは風速が25m/sになると、質量同調系小マス6はストッパ7aが衝突したり反発しつつ衝突をくり返しながら、屋上工作物2と一体的に共振する挙動を呈する。
一方、屋上工作物2を支持する滑り支承3は、震度が3〜4までは滑動しないが、震度5弱程度では滑動する。震度が6〜7の強震時にも、ストッパ10a又は10bへ衝突する程の振動にはならない。風に対しては、風速22m/s以下の強風時でも、滑り支承3が滑動することはないが、風速22〜25m/s以上になると滑動が始まる。そして、風速36m/s以上になるとストッパ10a又は10bへの衝突が始まる。
【0032】
次に、図11に示したダンパー16について説明する。このダンパー16は、質量同調系小マス6の減衰手段であり、鉄筋コンクリート製の質量同調系小マス6の正面、背面の該当位置に、打ち込み型のスリーブナット20を利用して、支持板21がボルト22で固定されている。他方、垂直腕部材13の内側面において対応する位置にも、支持板23がボルト25で固定されている。そして、両側の支持板21と23からそれぞれ水平方向に突き出されたブラケット24と26の間が粘弾性体ダンパー27で連結されている。つまり、質量同調系小マス6の振り子振動の際には、粘弾性体ダンパー27に剪断変形を生じさせてエネルギ吸収を行うのである。
【0033】
本発明の上記パッシブ型2段階制振装置は、風や小地震に対して居住性、使用性を高める質量同調系小マス6が、建物1の屋上工作物2を固定系として、当該小マス6の質量を除いた屋上工作物2の振動系に対してチューニングされたTMDとして構成され、一定レベル以下の小さな揺れを抑制する。そして、非質量同調大マスとして利用する屋上工作物2は、これを建物1上に支持する滑り支承3に設定した摩擦係数で滑り始めるように、振動特性に非線型性を与えたので、小さな外力レベルでは動かないトリガー機能を発揮し、大地震の揺れに対してのみ制振効果を発揮する、いわゆる2段階制振となる。勿論、質量同調系小マス6が屋上工作物2と共に共振するときは、過大変形防止手段(ストッパ7a、7b)が働く。そして、屋上工作物2の過大な変形も、過大変形防止手段10(ストッパ10a、10b)が働いて安全性が保たれる。
【0034】
因みに、図12は、風荷重による建物の揺れに対する上記質量同調系小マス6(TMDマスダンパー)の制振効果を解析図として示したものである。図中の○線がTMD無しの場合、□線がTMD有りの場合を示している。日常的な風荷重に対してTMDマスダンパー6は建物本体1の応答加速度を1/2〜1/3に低減することがわかり、居住性、使用性の向上を図れることが明らかである。
図13は、大地震時に屋上工作物2が非質量同調大マスとして働いた場合の制振効果を解析図として示している。図中の●線は屋上工作物2が非質量同調大マスとして働いた(滑動した)場合、▲線は滑動しない場合(大マス固定)の建物本体の最大応答層剪断力の大きさを示している。屋上工作物2が非質量同調大マスとして働いた場合、建物本体の最大応答層剪断力の大きさを2割程度低減できることが示されている。
【0035】
【本発明が奏する効果】
請求項1〜5に記載した発明に係るパッシブ型2段階制振装置は、風や小地震による小さな揺れに対しては、質量同調系小マス6(TMDマスダンパー)が制振効果を発揮して、建物の居住性、使用性を改善する。質量同調系小マス6は、大きな風荷重を受ける屋上工作物2の転倒モーメントや引き抜き力の発生を押さえ込むものとしても働く。一方、大地震による揺れに対しては、それなりに大きな摩擦係数の滑り支承3で建物上に支持された屋上工作物2を非質量同調大マスとして働かせるように、振動特性に非線型性を与えたので、小さな外力レベルでは動かないトリガー機能を発揮し、2段階の制振作用を発揮するので、建物の安全性を確保することが出来る。
【0036】
請求項1〜5に記載した発明に係るパッシブ型2段階制振装置は、パッシブ型システムとして制振作用を発揮するものであり、電気エネルギなどの供給は必要でなく、大地震時に電力系統が破断された場合にも、品質保証が可能である。そして、制御系統が必要無いなど、安価な装置を提供できるのである。更に、スペース的に制限される塔状建物へも容易に設置できる装置である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るパッシブ型2段階制振装置の構成をモデル化して示した概念図である。
【図2】本発明に係るパッシブ型2段階制振装置が屋上工作物と振り小型マスダンパーとから成ることを示す説明図である。
【図3】本発明に係るパッシブ型2段階制振装置の主要部構造を概念的に示した立面図である。
【図4】本発明に係るパッシブ型2段階制振装置の主要部構造を概念的に示した斜視図である。
【図5】滑り支承の構造を右半分を破断して示した正面図である。
【図6】滑り支承の構造を右半分を破断して示した側面図である。
【図7】質量同調系小マスの設置構造を示す正面図である。
【図8】質量同調系小マスの設置構造を示す側面図である。
【図9】質量同調系小マスの設置構造を示す平面図である。
【図10】ストッパの構造を示した立面図である。
【図11】ダンパーの構造を示した立側面図である。
【図12】TMDマスダンパの制振効果を階層毎に確認した最大応答加速度図である。
【図13】屋上工作物が非質量同調大マスとして働いた制振効果を階層毎に確認した最大層剪断力図である。
【符号の説明】
1 建物
6 質量同調系小マス(TMDマスダンパー)
2 屋上工作物(非質量同調大マス)
3 滑り支承
4 減衰手段(オイルダンパー)
5 復元力手段(積層ゴム)
10 過大変形防止手段
16 ダンパー(減衰手段)
7 過大変形防止手段
2a 屋上工作物の基礎梁

Claims (5)

  1. 大きな地震による揺れ、及び風や小地震による小さな揺れのそれぞれに対し、親子関係に構成した大小二つのマスの働きを2段階に切り換えてパッシブ形式で揺れを抑えるパッシブ型2段階制振装置において、
    建物の屋上工作物等が、建物上に、日常風の大きさ程度では滑らない大きさの摩擦係数を有する滑り支承により非質量同調大マスとして水平方向へ移動可能に支持されており、更に減衰手段と復元力手段及び過大変形防止手段がそれぞれ設けられていること、
    前記屋上工作物等の内部に、風用の質量同調系小マスが水平方向への移動が可能に設置されており、この小マスにも減衰手段と復元力手段及び過大変形防止手段が設けられていること、
    を特徴とする、パッシブ型2段階制振装置。
  2. 風用の質量同調系小マスが、屋上工作物等の風に対する転倒防止に必要な重量物の一部又は全部を兼ねていることを特徴とする、請求項1に記載したパッシブ型2段階制振装置。
  3. 建物の屋上工作物等は、その上部を鉄骨造として構成され、下部の基礎部分は風に対する転倒防止、及び同基礎の浮き上がりを防止する付加質量を兼ねる鉄筋コンクリート造を主体として構成されていることを特徴とする、請求項1に記載したパッシブ型2段階制振装置。
  4. 滑り支承の摩擦係数は8/100以上30/100以下の大きさであることを特徴とする、請求項1に記載したパッシブ型2段階制振装置。
  5. 建物の屋上工作物等の滑り支承は、その一部に転がり支承又は積層ゴム支承若しくは両者の併用を含み、
    減衰手段は、オイルダンパー、粘性体ダンパー、粘弾性ダンパー、摩擦ダンパー、鋼材履歴ダンパーの何れかとされ、
    復元力手段は、積層ゴム支承、線型又は非線型のコイルバネのいずれかであることをそれぞれ特徴とする、請求項1に記載したパッシブ型2段階制振装置。
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