JP2004346224A - 共重合体ならびにその製造方法、耐熱樹脂、および光学素子 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、共重合体ならびにその製造方法、耐熱樹脂、および光学素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にメタクリル酸メチルを主成分とするメタクリル系樹脂は、その卓越した透明性とバランスの取れた耐熱性および機械強度を有することより、照明用カバー、自動車用部品、看板、装飾品、雑貨品等、種々の分野で用いられている。しかし、メタクリル系樹脂の耐熱性は100℃程度で、その用途展開が制約されている分野もかなり有る。例えば、近年は、照明用カバー、自動車用部品等の用途においては、デザインの自由度、コンパクト化、高性能化を図るため、光源の高輝度化、光源を樹脂に近接して配置する設計が多く行われている。このため、光源周辺に使用する樹脂には良好な耐熱性が望まれていて、メタクリル系樹脂の高耐熱化の要求も多い。したがって、メタクリル系樹脂の耐熱性を向上させる研究が広く行われており、これまでにいくつかの報告や提案がなされている。
【0003】
耐熱樹脂の製造方法の一種として、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸アルキルエステル類の共重合体を加熱してラクトン環化させることにより耐熱樹脂を得る方法(例えば、非特許文献1〜2、特許文献1〜3参照)が開示されている。
【0004】
【非特許文献1】
Polym.Prepr.、8巻、11号、p.576、1967年
【非特許文献2】
Journal of Polymer Science. Part A. Polymer Chemistry、27巻、p.751、1989年
【特許文献1】
特開2000−95821号公報
【特許文献2】
特開2000−230016号公報
【特許文献3】
特開2001−151814公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年になり合成・精製技術が開示され、工業化が進んでいる2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸アルキルエステル類は高価であり、また皮膚刺激性が強すぎて取り扱いにくい等の問題点を有している。したがって、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸アルキルエステル類の共重合体およびその加熱に拠らない耐熱樹脂が要求されている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、その結果上記問題点を解決できる、共重合体ならびにその製造方法、耐熱樹脂、および光学素子を見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明の第一の要旨は、
一般式(1)
【0008】
【化7】
【0009】
(式中、R1は炭素数が1〜8のアルキル基を表す)
および
一般式(2)
【0010】
【化8】
【0011】
(式中、R2、R3はそれぞれ独立して水素あるいは炭素数が1〜18のアルキル基を表す)
で表される単量体を共重合させてなる、分子鎖にエステル基と水酸基を有する共重合体にある。
【0012】
本発明の第二の要旨は、
一般式(3)
【0013】
【化9】
【0014】
(式中、R4は炭素数が1〜8のアルキル基、R5、R6はそれぞれ独立して水素あるいは炭素数が1〜18のアルキル基を表す)で表される繰り返し単位を有する共重合体にある。
【0015】
本発明の第三の要旨は、
一般式(4)
【0016】
【化10】
【0017】
(式中、それぞれ独立してR7は炭素数が1〜8のアルキル基、R8は水素あるいは炭素数が1〜18のアルキル基を表す)
で表される構造を含む耐熱樹脂にある。
【0018】
本発明の第四の要旨は、本発明の耐熱樹脂からなる光学素子にある。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
本発明において、共重合に供される単量体は、
一般式(1)
【化11】
(式中、R1は炭素数が1〜8のアルキル基を表す)
で示されるものである。R1は、直鎖、分岐、環状等、特に限定されないが、共重合後に加熱して得られる耐熱樹脂の物性等の点から、アルキル基は炭素数が少ない方が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
【0020】
本発明において、前述の一般式(1)で示される単量体と共重合させる単量体は、一般式(2)
【0021】
【化12】
【0022】
(式中、R2、R3はそれぞれ独立して水素あるいは炭素数が1〜18のアルキル基を表す)
で表されるものである。具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジルなどのメタクリル酸エステル、等があげられる。共重合後に加熱して得られる耐熱樹脂の物性の点から、特にメタクリル酸メチルが好ましい。これらは1種のみでも2種以上を併用してもよい。
【0023】
本発明で共重合に供される単量体の割合は、使用する単量体の共重合性や得られる共重合体や耐熱樹脂のそれぞれの目標物性に合わせて任意でよい。しかしながら、樹脂の透明性等の物性を維持して耐熱性を付与する必要があるので、一般式(1)の単量体の共重合する割合は、一般式(1)および一般式(2)で示される単量体の合計100質量%中の、50質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下がよく、前記合計量中の少なくとも3質量%以上が好ましく、より好ましくは5質量%以上である。割合が高すぎると共重合体を加熱して得られる耐熱樹脂の透明性などの物性が悪化し、低すぎると、共重合体を加熱して得られる樹脂の耐熱性の向上が不足する。
【0024】
一般式(2)の単量体を共重合する割合は前述の合計100質量%中の、50質量%以上、好ましくは60質量%以上、さらに70質量%以上がより好ましい。また、97質量%以下、より好ましくは95質量%以下がより好ましい。割合が低すぎると、透明性等の物性が悪化してしまう。割合が高すぎると耐熱性の向上効果が望めない。
また、本発明では、共重合体を加熱して脱アルコールして耐熱樹脂を得るが、耐熱樹脂中に水酸基が残っていると、成形材料として使用する際に金型からの離形性が悪化する等の物性への悪影響がある。したがって、耐熱樹脂中に水酸基を残さないために、一般式(1)および一般式(2)を共重合させる際に、一般式(1)よりも一般式(2)のモル比率を高くしておくことが好ましい。さらに、後述する脱アルコール触媒等を利用することが好ましい。
【0025】
本発明では、得られる共重合体および耐熱樹脂の物性が損なわれない範囲内で、更に他の共重合可能な単量体を添加することができる。例えば、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、マレイミド化合物などが挙げられる。また、多官能メタクリレ−トや多官能アクリレ−トも同様に使用可能であるが、共重合体や耐熱樹脂の加熱時の流動性が悪化しない程度に限定される。具体例としては、エチレングリコ−ルジメタクリレ−ト、トリエチレングリコ−ルジメタクリレ−ト、1,6−ヘキサンジオ−ルジメタクリレ−ト、1,6−ヘキサンジオ−ルジアクリレ−ト、ネオペンチルグリコ−ルジメタクリレ−ト等の化合物が挙げられる。これらの併用する単量体は1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。また、併用するこれらの単量体の共重合量は共重合体および加熱して得られる耐熱樹脂の物性の観点から、一般式(1)および一般式(2)で示される単量体100質量部に対して、30質量部以下が好ましく、より好ましくは20質量部以下、そしてさらに好ましくは10質量部以下である。
【0026】
本発明における、
一般式(3)
【0027】
【化13】
【0028】
(式中、R4は炭素数が1〜8のアルキル基、R5、R6はそれぞれ独立して水素あるいは炭素数が1〜18のアルキル基を表す)
で表される繰り返し単位を有する共重合体は、繰り返し単位内にエステル基、水酸基を有する。それぞれ、分子内にエステル基、水酸基を有する単量体を共重合することで得られ、一例として、一般式(1)と一般式(2)を共重合することで得られる。
【0029】
本発明で使用される単量体を共重合させる方法は、溶液重合、塊状重合、連続塊状重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の方法でよく、共重合に供する単量体の物性に合わせて、それぞれに適した方法を選択すれば良い。溶液重合に使用される溶媒は、通常のラジカル重合反応で使用されるものが選ばれ、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;クロロホルム、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフランなどが挙げられる。重合温度、重合時間は、使用する重合性単量体の種類、溶媒、使用比率等によって必要に応じて調節すればよい。重合後に溶媒を除去する場合を考慮すると、使用する溶媒の沸点が高すぎると樹脂中に残存揮発分が多くなることから、加熱温度で共重合体を溶解し、沸点が50〜200℃のものが好ましく、前記の中ではトルエン等の芳香族炭化水素類、メチルエチルケトン等のケトン類などが好ましく挙げられる。
【0030】
本発明において、単量体混合物を共重合する為には、通常、重合開始剤を使用する。重合開始剤としては、公知のものが使用可能である。また、複数の重合開始剤を併用することも可能である。例えば、10時間半減温度の異なる重合開始剤を複数種組み合わせて、重合完了までの時間を調節することもできる。
【0031】
さらに本発明では、加熱して脱アルコール反応を行って耐熱樹脂を得る。本発明の共重合体を加熱する方法は、公知の方法でよく、前記共重合体の状態に併せて選択すればよい。脱アルコール反応を効率よく行うには、生成したアルコールを除去して反応の平衡をアルコール生成側に傾ければよい。したがって、加熱時に脱揮工程を併用して、残存単量体や残存溶媒等とともに生成するアルコールを強制的に除去すると、ラクトン環への高い反応率を短時間で達成とすることができる。ここでいう脱揮工程とは、溶剤、残存単量体等の揮発分と、前記脱アルコール反応により副生したアルコールを、必要により減圧加熱条件下で除去する処理工程をいう。
【0032】
加熱して脱アルコール反応を行う際は、触媒を添加することで、脱アルコール反応が高効率で進行する。公知の触媒として、p−トルエンスルホン酸およびその水和物、各種有機リン化合物等がある。有機リン化合物としては、特に、アルキル亜ホスホン酸、アリール亜ホスホン酸、亜リン酸ジエステルあるいはモノエステル、リン酸ジエステルあるいはモノエステル、アルキルホスホン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いると、特に優れた着色低減効果を発揮しうるので好ましい。さらに、アルキル亜ホスホン酸、アリール亜ホスホン酸、亜リン酸ジエステルあるいはモノエステル、リン酸ジエステルあるいはモノエステルが、触媒活性が高く、着色性が低い点から好ましく、アルキル亜ホスホン酸、アリール亜ホスホン酸、リン酸ジエステルあるいはモノエステルが特に好適である。触媒の添加方法・添加時期に特に制限はない。脱アルコール反応直前に添加してもよいし、共重合させる時点で添加しておいても良い。
【0033】
前述の脱アルコール触媒の添加量は特に限定されないが、少なすぎると効率が悪化し、また多すぎると樹脂の外観不良等を招く。好ましくは、共重合体100質量部に対して0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは2.5質量部以下、最も好ましくは1質量部以下である。添加量が低すぎると、脱アルコール反応の効率が悪く、成形中にシルバー等の外観不良を招く恐れがある。添加量が高すぎると、添加した触媒自身の影響で外観不良を招く恐れがある。
【0034】
本発明の耐熱樹脂は、分子鎖中に存在する水酸基とエステル基を脱アルコール反応させてラクトン環構造を有するものである。脱アルコール1molに対してラクトン環が1mol生成する。したがって、ラクトン環の導入割合は脱アルコール反応率から見積もることが可能であり、耐熱性向上のために脱アルコール反応率は高いほど好ましい。分子鎖中の水酸基すべてが脱アルコール反応に関与した場合を100%として、実際に反応に関与した水酸基の割合を脱アルコール反応率としてあらわしたとき、脱アルコール反応率は好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上である。脱アルコール反応が不十分で分子鎖中のラクトン環の割合が少ない場合、耐熱性が十分に得られない、また成形時の加熱処理によって成形中に脱アルコール反応が起こり、生じたアルコールが成形品中に泡やシルバーとなって存在して成形外観の悪化、ヘイズ増加等を生じてしまうので好ましくない。高い脱アルコール反応率を実現させるには、強制的に生成アルコールを除去する、あるいは脱アルコール反応の際に触媒を用いることが好ましく、例えば、脱アルコール反応時に、前記触媒を添加した方法によれば、容易に前記脱アルコール反応率を達成することができる。
【0035】
また、本発明では、前述の共重合体を加熱して脱アルコール反応を行って耐熱樹脂を得るので、その際に脱揮工程を併用すれば、生成するアルコールおよび残存溶媒、残存単量体を強制的に除去できるので、溶液重合では共重合後に必ずしも固体として取り出す必要はなく、同様に塊状重合においても未反応単量体混合物により溶液状態になっていてもよい。また、重合方法によらず、必要に応じて、一度固体として取り出した後、溶剤等を添加して溶融状態にしても良い。
【0036】
脱揮・加熱を効率よく行う方法の一例として、ベント付き押出し機を使用する方法があげられる。前述の溶液・溶融状態あるいは固体として取り出して粉砕した共重合体をベント付き押出し機に投入して、減圧下で加熱溶融押出しすると非常に効率よくアルコール、残存溶媒、残存単量体等を除去することができる。さらに、加熱による脱アルコール反応と脱揮工程を併用することで、プロセス的コストダウンも図れ、ペレット賦形まで行えるのでさらに効率的である。また、ホッパーに直接投入して加熱溶融押出しする際は、減圧時に外気を吸い込んで、加熱樹脂が酸素と接触して樹脂の着色・分解等の不具合が発生することがあるので、その際はアルコール、残存溶媒、残存単量体等の除去を妨げない程度に押出し機内に窒素ガス等をフローすればよい。
【0037】
溶媒あるいは未反応単量体によって溶融状態にある共重合体を加熱して脱アルコールすると共に脱揮する場合、溶媒・未反応単量体の量は特に限定されないが、好ましくは共重合体と溶媒・未反応単量体の合計100質量%中、溶媒・未反応単量体が5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、最も好ましくは25質量%以上とするのが好ましく、90質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下、最も好ましくは75質量%以下とするのが好ましい。溶媒・未反応単量体が少なすぎると、溶融時の流動性が低くなりすぎ、流動性を確保するために温度を上げる必要が生じるため、樹脂の着色や分解が起こる可能性があり、光学特性等の品質上好ましくない。溶媒・未反応単量体が多すぎると溶融時の流動性が高すぎて取り扱いが困難、残存単量体・残存溶媒の増加、また脱揮回収される溶媒・未反応単量体の量が多すぎる等の不具合が出る可能性があり、品質上また製造コスト上好ましくない。なお、脱アルコール反応の際中に、溶媒・未反応単量体の一部が自然に揮発しても何ら問題ではない。
【0038】
ベント付き押出機を用いる場合、ベントは1個でも複数個でもいずれでもよいが、複数個のベントを有する方が好ましい。ベント付き押出機での処理温度は、150℃以上、好ましくは200℃以上、また350℃以下、好ましくは300℃以下がよい。上記温度が低すぎると、押出し時の流動性が悪化しやすく、脱アルコール反応が不充分になる、樹脂中の残存揮発分が多くなるという問題がある。高すぎると、樹脂の着色や分解が起こることがあるために物性上好ましくない。
【0039】
本発明の耐熱樹脂の重量平均分子量は、40000以上、好ましくは80000以上、さらに好ましくは100000以上、また300000以下、さらに200000以下であることが好ましい。重量平均分子量が低すぎると機械的強度が低下し脆くなりやすいという問題があり、一方、高すぎると、流動性が低下して成形しにくくなるので好ましくない。分子量の調節は、メルカプタン等の連鎖移動剤を適宜使用すること等の公知の方法で可能である。
【0040】
本発明の耐熱樹脂は、ラクトン環構造を有した重合体からなっており、ラクトン環構造の占める割合は、耐熱樹脂全量中、5質量%以上であることが好ましく、さらに好ましくは10質量%以上、最も好ましくは20質量%以上であるのがよい。ラクトン環構造の占める割合が低すぎると、得られる透明性耐熱樹脂に十分な耐熱性が付与できない傾向がある。なお、ラクトン環構造の占める割合は、脱アルコール反応率と同様に実施例で後述する方法で算出することができる。
【0041】
本発明の耐熱樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が、115℃以上、好ましくは120℃以上、さらに好ましくは125℃以上であるのがよい。
【0042】
本発明の耐熱樹脂においては、射出成形により得られる成形品のJIS―K7361に準じた方法で測定された全光線透過率が厚さ3mmで85%以上、さらに好ましくは88%以上、最も好ましくは90%以上であることが好ましい。全光線透過率は、透明性の目安であり、これが85%未満であると、透明性が低下し、従来の透明樹脂の目的とする用途に使用できない場合がある。
【0043】
本発明の耐熱樹脂においては、射出成形により得られる成形品のJIS―K7136に準じた方法で測定された曇価が厚さ3mmで4%以下、好ましくは3%以下、さらに好ましくは1.5%以下であることが好ましい。曇価は、透明性の目安であり、これが5%を越えると、透明性が低下して、従来の透明樹脂の目的とする用途に使用できない場合がある。
【0044】
本発明の耐熱樹脂においては、射出成形により得られる成形品のJIS―K7105に準じた方法で測定されたYI値が厚さ3mmで、4以下、好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下であることが好ましい。YI値は着色の程度の目安であり、これが5を越えると、透明性が低下して、従来の透明樹脂の目的とする用途に使用できない場合がある。
【0045】
本発明のメタクリル系耐熱樹脂には、必要に応じて各種の紫外線吸収剤、拡散剤、酸化防止剤、有機フィラー、無機フィラー、難燃剤、界面活性剤等の帯電防止剤、有機顔料・無機顔料・染料等の着色剤等の各種添加剤を必要に応じて添加することが可能である。前記添加剤は併用することが可能である。前記添加剤を添加することで、長期使用時の変色防止、光学素子の輝度向上等の効果が得られる。添加方法としては公知の方法が適用可能である。単量体の共重合時に添加しておいて同時に重合する方法や、脱アルコール時に添加する方法、ペレット賦形時に混練する方法等が挙げられる。
【0046】
本発明の耐熱樹脂は、150℃以上、好ましくは200℃以上、また350℃以下、好ましくは280℃以下で成形するのが好ましいが、耐熱性などの樹脂の性質および成形品の形状に応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。成形方法としては特に限定されず、射出成形、ブロー成形、押出成形などが挙げられる。
【0047】
本発明の耐熱樹脂は、従来の透明性耐熱樹脂成形品で避けられなかった成形時の泡やシルバーを、完全に、あるいはほぼ完全に回避できる点で、非常に有用である。さらに、フィルム、シート状の成形品、他の樹脂との積層シート、浴槽用表層樹脂等にも応用できる。さらに種々の形状を容易に成形できる点で優れている。
【0048】
本発明の光学素子とは、透明光学レンズ、照明用カバー等の光拡散性面状成形体、各種計器・機器類・ディスプレイや看板照明等に利用可能な導光体や前面板、プラスチック光ファイバー、半導体レ−ザ−を利用した光電子機器に搭載されるピックアップレンズ、OA機器や自動車等の透明部品(例えば、レーザービームプリンター用レンズ、車両用のヘッドランプやフォグランプや信号灯等に用いられるランプレンズ、メーターパネル周辺部材等)、プロジェクタ−用レンズ等、情報記録媒体用基板等のことをいう。
【0049】
本発明の光学素子は、前述の耐熱樹脂からなるもので、透明性・耐熱性に優れていて、目的の光学素子の形状に成形した際にも泡やシルバーが入りにくく欠陥が少ないため、光学素子として非常に好適である。
【0050】
【実施例】
以下、本発明に係る実施例および比較例について説明する。光学素子の一例として、バックライト型液晶表示部の照明に使用される導光体がある。液晶表示部の輝度向上を行う際に冷陰極線管の輝度を上げて対処することがあり、その際に導光体が熱変形する場合がある。本実施例では、光学素子としての性能を以下に説明する冷陰極管暴露試験で判断した。
本発明は該実施例により何ら制限されるものではない。
【0051】
(共重合反応率、共重合体の組成分析)
共重合反応時の反応率および共重合体中の特定単量体単位の含有率は、得られた重合反応混合物中の未反応単量体の量をガスクロマトグラフィー(島津製作所製、装置名:GC−14A)を用いて測定して求めた。
【0052】
(脱アルコール反応率、ラクトン環構造の占める割合)
共重合して得られた共重合体(もしくは共重合体溶液)を一旦精製アセトンに溶解もしくは希釈し、過剰のヘキサンへ投入して再沈殿を行い、取り出した沈殿物を真空乾燥(1.33hPa、80℃、3時間以上)することにより、揮発成分等を除去して質量(W1)を測定した。次に、再沈した組成物を窒素雰囲気下で加熱して冷却して質量(W2)を測定した。実測した質量減少率(X1)は、
【0053】
X1(質量%)=(W1−W2)/W1×100 (式1)
で計算される。
【0054】
加熱にはガラスチューブオーブンを使用した。加熱条件は以下の通りである。
加熱温度:230℃(到達後、30分保持)
昇温速度:10℃/min(110℃まで加熱後、水分等の除去のため1時間保持して、更に昇温)
雰囲気:窒素フロー 200ml/min
【0055】
以後の説明にあたり、用いる単量体種・その質量・共重合体中の単量体単位の質量分率等を以下の略号を使用する。
【0056】
【表1】
【0057】
当該共重合体の分析結果から、その共重合体に含まれる全ての水酸基がラクトン環の形成に関与するためアルコールになり脱アルコールすると仮定した時の理論質量減少率(X2)(すなわち、その組成上において100%の脱アルコール反応が起きたと仮定して算出した質量減少率)は計算できる。使用した単量体、使用した単量体から生成するアルコールの、それぞれの分子量、共重合体中の含有率(質量%)から、次式で計算できる。
X2(質量%)=(a2/MW2)×(AW)×100・・・(a1/MW1)>(a2/MW2)の場合 (式2−1)
X2(質量%)=(a1/MW1)×(AW)×100・・・(a1/MW1)<(a2/MW2)の場合 (式2−2)
【0058】
実測した質量減少率(X1)、理論質量減少率(X2)より、脱アルコール反応率(X)が計算できる。
【0059】
X(%)=X1/X2×100 (式3)
また、M1:1mol、M2:1molからA:1molが生成して、ラクトン環が生成するので、ラクトン環含有率XLは次式(式4)で計算できる。
【0060】
XL(質量%)=(W1−W2)/AW×(MW1+MW2−AW)/W2×100 (式4)
【0061】
(ガラス転移温度)
組成物を加熱して脱アルコール反応させ、前述の方法で再沈精製したもの、または押出し機で加熱脱揮したペレットの示差操作熱量測定を行い、その結果から求めた。
【0062】
測定装置:DSC200(セイコーインスツルメンツ株式会社)
測定条件:試料量 約10mg
昇温速度:10℃/min
雰囲気:窒素フロー 200ml/min
【0063】
(全光線透過率、曇価)
透明度の指標として、脱アルコール後に得られた耐熱樹脂を射出成形(厚み3mm)し、全光線透過率および曇価を、JISK−7361、JISK−7136に従って、ヘイズメーター(装置名:HR−100、村上色彩技術研究所(株)製)を用いて測定した。
【0064】
(YI値)
着色の程度の指標として、脱アルコール後に得られた耐熱樹脂を射出成形(厚み3mm)し、YI値をJISK−7105にしたがって、分光光度計(装置名:マクベスカラーアイCE−7000、サカタインクス(株)製)で測定した。
【0065】
(冷陰極管暴露試験)
脱アルコール後に得られた耐熱樹脂を射出成形した樹脂板(横210mm×縦100mm×厚さ3mm)の端面を鏡面研磨し、冷陰極管2灯を研磨した端面に2灯並べて配置し、金属製ランプリフレクタ−で冷陰極管2灯と樹脂板を囲って試験した。冷陰極管は、HMBSM2JD86E256YS/AX(ハリソン電気(株)社)を用いて、電圧12V、管電流8mAに設定した。2000時間連続使用後の樹脂板端面の外観を目視にて観察した。
【0066】
(実施例1)
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した30Lの反応釜に、水酸基含有モノマー(M1)としてβ−メタリルアルコール:50質量部、その共重合モノマー(M2)としてメタクリル酸メチル:50質量部を仕込み、窒素を通じつつ100℃まで昇温した。そして、開始剤としてターシャリーブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.05質量部を加えると同時に、90℃で重合を行い、さらに1時間半かけて加熱を行った。
【0067】
共重合体溶液の重合反応率は54質量%(残り46質量%は未反応のメタクリル酸メチルとβ―メタリルアルコール)であった。再沈精製した共重合体中のモノマー単位の割合は、β−メタリルアルコール:13.3質量%(a1=0.133)、MMA:86.7質量%(a2=0.867)であった。再沈精製した共重合体2.55g(=W1)をガラスチューブオーブンで加熱したところ、2.46g(=W2)となり、実測した質量減少率(X1)=3.5質量%であった。該共重合体中の各モノマー単位の割合から(式2)−2が適用でき、100%脱アルコール(この場合は脱メタノール)したときの理論質量減少率(X2)=5.9質量%と推算されることから、脱アルコール反応率(X)=59.3%であり、また、ラクトン環構造の含有率(XL)=16.0質量%であった。Tgは125℃であった。
【0068】
(実施例2)
前述の再沈精製した共重合体総量100質量部に対して0.005質量部のフェニル亜ホスホン酸を加えて、ガラスチューブオーブンで同様に加熱した。加熱後の共重合体を再度再沈精製して、フェニル亜ホスホン酸残滓等を取り除いて乾燥させた後に質量を測定し、フェニル亜ホスホン酸を加えて加熱する前の質量から計算した質量減少率(X1)=5.6質量%であった。したがって、脱アルコール反応率(X)=95.0%であり、ラクトン環構造の含有率(XL)=25.5質量%であった。Tgは129℃であった。
【0069】
(実施例3)
実施例1で得た共重合体溶液100質量部にフェニル亜ホスホン酸0.015質量部添加して、ベント付き押出し機(バレル温度230℃)で加熱脱揮してペレットを得た。ペレットの重量平均分子量は12万であった。このペレットのTgは133℃であった。このペレットをガラスチューブオーブンで加熱して、加熱前に測定しておいた質量と加熱後の質量から質量減少率を測定したところ、質量減少率は観測されなかった。脱アルコール反応率がほぼ100%に達していると推定される。
前述のペレットを射出成形して、樹脂板を得た。その際に発泡等の不具合は発生しなかった。樹脂板の全光線透過率=92.0%、ヘイズ=0.3%、YI値=0.9であった。この樹脂板の冷陰極管線暴露試験を行ったところ、変形は認められなかった。
【0070】
(比較例1)
市販のアクリル成形材料のガラス転移温度を実施例と同様に測定したところ、115℃であった。実施例3と同様にして射出成形して樹脂板を得た。冷陰極管線暴露試験を行ったところ、端面に変形が認められた。
【0071】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明によれば、従来とは異なる単量体から従来とは異なる構造の分子内にエステル基と水酸基を有する共重合体が得ることができ、その共重合体から透明性に優れた耐熱樹脂を得ることができる。本発明の光学素子は、良好な耐熱性と透明性を有し、光学素子として優れている。
【発明の属する技術分野】
本発明は、共重合体ならびにその製造方法、耐熱樹脂、および光学素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にメタクリル酸メチルを主成分とするメタクリル系樹脂は、その卓越した透明性とバランスの取れた耐熱性および機械強度を有することより、照明用カバー、自動車用部品、看板、装飾品、雑貨品等、種々の分野で用いられている。しかし、メタクリル系樹脂の耐熱性は100℃程度で、その用途展開が制約されている分野もかなり有る。例えば、近年は、照明用カバー、自動車用部品等の用途においては、デザインの自由度、コンパクト化、高性能化を図るため、光源の高輝度化、光源を樹脂に近接して配置する設計が多く行われている。このため、光源周辺に使用する樹脂には良好な耐熱性が望まれていて、メタクリル系樹脂の高耐熱化の要求も多い。したがって、メタクリル系樹脂の耐熱性を向上させる研究が広く行われており、これまでにいくつかの報告や提案がなされている。
【0003】
耐熱樹脂の製造方法の一種として、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸アルキルエステル類の共重合体を加熱してラクトン環化させることにより耐熱樹脂を得る方法(例えば、非特許文献1〜2、特許文献1〜3参照)が開示されている。
【0004】
【非特許文献1】
Polym.Prepr.、8巻、11号、p.576、1967年
【非特許文献2】
Journal of Polymer Science. Part A. Polymer Chemistry、27巻、p.751、1989年
【特許文献1】
特開2000−95821号公報
【特許文献2】
特開2000−230016号公報
【特許文献3】
特開2001−151814公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年になり合成・精製技術が開示され、工業化が進んでいる2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸アルキルエステル類は高価であり、また皮膚刺激性が強すぎて取り扱いにくい等の問題点を有している。したがって、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸アルキルエステル類の共重合体およびその加熱に拠らない耐熱樹脂が要求されている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、その結果上記問題点を解決できる、共重合体ならびにその製造方法、耐熱樹脂、および光学素子を見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明の第一の要旨は、
一般式(1)
【0008】
【化7】
【0009】
(式中、R1は炭素数が1〜8のアルキル基を表す)
および
一般式(2)
【0010】
【化8】
【0011】
(式中、R2、R3はそれぞれ独立して水素あるいは炭素数が1〜18のアルキル基を表す)
で表される単量体を共重合させてなる、分子鎖にエステル基と水酸基を有する共重合体にある。
【0012】
本発明の第二の要旨は、
一般式(3)
【0013】
【化9】
【0014】
(式中、R4は炭素数が1〜8のアルキル基、R5、R6はそれぞれ独立して水素あるいは炭素数が1〜18のアルキル基を表す)で表される繰り返し単位を有する共重合体にある。
【0015】
本発明の第三の要旨は、
一般式(4)
【0016】
【化10】
【0017】
(式中、それぞれ独立してR7は炭素数が1〜8のアルキル基、R8は水素あるいは炭素数が1〜18のアルキル基を表す)
で表される構造を含む耐熱樹脂にある。
【0018】
本発明の第四の要旨は、本発明の耐熱樹脂からなる光学素子にある。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
本発明において、共重合に供される単量体は、
一般式(1)
【化11】
(式中、R1は炭素数が1〜8のアルキル基を表す)
で示されるものである。R1は、直鎖、分岐、環状等、特に限定されないが、共重合後に加熱して得られる耐熱樹脂の物性等の点から、アルキル基は炭素数が少ない方が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
【0020】
本発明において、前述の一般式(1)で示される単量体と共重合させる単量体は、一般式(2)
【0021】
【化12】
【0022】
(式中、R2、R3はそれぞれ独立して水素あるいは炭素数が1〜18のアルキル基を表す)
で表されるものである。具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジルなどのメタクリル酸エステル、等があげられる。共重合後に加熱して得られる耐熱樹脂の物性の点から、特にメタクリル酸メチルが好ましい。これらは1種のみでも2種以上を併用してもよい。
【0023】
本発明で共重合に供される単量体の割合は、使用する単量体の共重合性や得られる共重合体や耐熱樹脂のそれぞれの目標物性に合わせて任意でよい。しかしながら、樹脂の透明性等の物性を維持して耐熱性を付与する必要があるので、一般式(1)の単量体の共重合する割合は、一般式(1)および一般式(2)で示される単量体の合計100質量%中の、50質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下がよく、前記合計量中の少なくとも3質量%以上が好ましく、より好ましくは5質量%以上である。割合が高すぎると共重合体を加熱して得られる耐熱樹脂の透明性などの物性が悪化し、低すぎると、共重合体を加熱して得られる樹脂の耐熱性の向上が不足する。
【0024】
一般式(2)の単量体を共重合する割合は前述の合計100質量%中の、50質量%以上、好ましくは60質量%以上、さらに70質量%以上がより好ましい。また、97質量%以下、より好ましくは95質量%以下がより好ましい。割合が低すぎると、透明性等の物性が悪化してしまう。割合が高すぎると耐熱性の向上効果が望めない。
また、本発明では、共重合体を加熱して脱アルコールして耐熱樹脂を得るが、耐熱樹脂中に水酸基が残っていると、成形材料として使用する際に金型からの離形性が悪化する等の物性への悪影響がある。したがって、耐熱樹脂中に水酸基を残さないために、一般式(1)および一般式(2)を共重合させる際に、一般式(1)よりも一般式(2)のモル比率を高くしておくことが好ましい。さらに、後述する脱アルコール触媒等を利用することが好ましい。
【0025】
本発明では、得られる共重合体および耐熱樹脂の物性が損なわれない範囲内で、更に他の共重合可能な単量体を添加することができる。例えば、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、マレイミド化合物などが挙げられる。また、多官能メタクリレ−トや多官能アクリレ−トも同様に使用可能であるが、共重合体や耐熱樹脂の加熱時の流動性が悪化しない程度に限定される。具体例としては、エチレングリコ−ルジメタクリレ−ト、トリエチレングリコ−ルジメタクリレ−ト、1,6−ヘキサンジオ−ルジメタクリレ−ト、1,6−ヘキサンジオ−ルジアクリレ−ト、ネオペンチルグリコ−ルジメタクリレ−ト等の化合物が挙げられる。これらの併用する単量体は1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。また、併用するこれらの単量体の共重合量は共重合体および加熱して得られる耐熱樹脂の物性の観点から、一般式(1)および一般式(2)で示される単量体100質量部に対して、30質量部以下が好ましく、より好ましくは20質量部以下、そしてさらに好ましくは10質量部以下である。
【0026】
本発明における、
一般式(3)
【0027】
【化13】
【0028】
(式中、R4は炭素数が1〜8のアルキル基、R5、R6はそれぞれ独立して水素あるいは炭素数が1〜18のアルキル基を表す)
で表される繰り返し単位を有する共重合体は、繰り返し単位内にエステル基、水酸基を有する。それぞれ、分子内にエステル基、水酸基を有する単量体を共重合することで得られ、一例として、一般式(1)と一般式(2)を共重合することで得られる。
【0029】
本発明で使用される単量体を共重合させる方法は、溶液重合、塊状重合、連続塊状重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の方法でよく、共重合に供する単量体の物性に合わせて、それぞれに適した方法を選択すれば良い。溶液重合に使用される溶媒は、通常のラジカル重合反応で使用されるものが選ばれ、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;クロロホルム、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフランなどが挙げられる。重合温度、重合時間は、使用する重合性単量体の種類、溶媒、使用比率等によって必要に応じて調節すればよい。重合後に溶媒を除去する場合を考慮すると、使用する溶媒の沸点が高すぎると樹脂中に残存揮発分が多くなることから、加熱温度で共重合体を溶解し、沸点が50〜200℃のものが好ましく、前記の中ではトルエン等の芳香族炭化水素類、メチルエチルケトン等のケトン類などが好ましく挙げられる。
【0030】
本発明において、単量体混合物を共重合する為には、通常、重合開始剤を使用する。重合開始剤としては、公知のものが使用可能である。また、複数の重合開始剤を併用することも可能である。例えば、10時間半減温度の異なる重合開始剤を複数種組み合わせて、重合完了までの時間を調節することもできる。
【0031】
さらに本発明では、加熱して脱アルコール反応を行って耐熱樹脂を得る。本発明の共重合体を加熱する方法は、公知の方法でよく、前記共重合体の状態に併せて選択すればよい。脱アルコール反応を効率よく行うには、生成したアルコールを除去して反応の平衡をアルコール生成側に傾ければよい。したがって、加熱時に脱揮工程を併用して、残存単量体や残存溶媒等とともに生成するアルコールを強制的に除去すると、ラクトン環への高い反応率を短時間で達成とすることができる。ここでいう脱揮工程とは、溶剤、残存単量体等の揮発分と、前記脱アルコール反応により副生したアルコールを、必要により減圧加熱条件下で除去する処理工程をいう。
【0032】
加熱して脱アルコール反応を行う際は、触媒を添加することで、脱アルコール反応が高効率で進行する。公知の触媒として、p−トルエンスルホン酸およびその水和物、各種有機リン化合物等がある。有機リン化合物としては、特に、アルキル亜ホスホン酸、アリール亜ホスホン酸、亜リン酸ジエステルあるいはモノエステル、リン酸ジエステルあるいはモノエステル、アルキルホスホン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いると、特に優れた着色低減効果を発揮しうるので好ましい。さらに、アルキル亜ホスホン酸、アリール亜ホスホン酸、亜リン酸ジエステルあるいはモノエステル、リン酸ジエステルあるいはモノエステルが、触媒活性が高く、着色性が低い点から好ましく、アルキル亜ホスホン酸、アリール亜ホスホン酸、リン酸ジエステルあるいはモノエステルが特に好適である。触媒の添加方法・添加時期に特に制限はない。脱アルコール反応直前に添加してもよいし、共重合させる時点で添加しておいても良い。
【0033】
前述の脱アルコール触媒の添加量は特に限定されないが、少なすぎると効率が悪化し、また多すぎると樹脂の外観不良等を招く。好ましくは、共重合体100質量部に対して0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは2.5質量部以下、最も好ましくは1質量部以下である。添加量が低すぎると、脱アルコール反応の効率が悪く、成形中にシルバー等の外観不良を招く恐れがある。添加量が高すぎると、添加した触媒自身の影響で外観不良を招く恐れがある。
【0034】
本発明の耐熱樹脂は、分子鎖中に存在する水酸基とエステル基を脱アルコール反応させてラクトン環構造を有するものである。脱アルコール1molに対してラクトン環が1mol生成する。したがって、ラクトン環の導入割合は脱アルコール反応率から見積もることが可能であり、耐熱性向上のために脱アルコール反応率は高いほど好ましい。分子鎖中の水酸基すべてが脱アルコール反応に関与した場合を100%として、実際に反応に関与した水酸基の割合を脱アルコール反応率としてあらわしたとき、脱アルコール反応率は好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上である。脱アルコール反応が不十分で分子鎖中のラクトン環の割合が少ない場合、耐熱性が十分に得られない、また成形時の加熱処理によって成形中に脱アルコール反応が起こり、生じたアルコールが成形品中に泡やシルバーとなって存在して成形外観の悪化、ヘイズ増加等を生じてしまうので好ましくない。高い脱アルコール反応率を実現させるには、強制的に生成アルコールを除去する、あるいは脱アルコール反応の際に触媒を用いることが好ましく、例えば、脱アルコール反応時に、前記触媒を添加した方法によれば、容易に前記脱アルコール反応率を達成することができる。
【0035】
また、本発明では、前述の共重合体を加熱して脱アルコール反応を行って耐熱樹脂を得るので、その際に脱揮工程を併用すれば、生成するアルコールおよび残存溶媒、残存単量体を強制的に除去できるので、溶液重合では共重合後に必ずしも固体として取り出す必要はなく、同様に塊状重合においても未反応単量体混合物により溶液状態になっていてもよい。また、重合方法によらず、必要に応じて、一度固体として取り出した後、溶剤等を添加して溶融状態にしても良い。
【0036】
脱揮・加熱を効率よく行う方法の一例として、ベント付き押出し機を使用する方法があげられる。前述の溶液・溶融状態あるいは固体として取り出して粉砕した共重合体をベント付き押出し機に投入して、減圧下で加熱溶融押出しすると非常に効率よくアルコール、残存溶媒、残存単量体等を除去することができる。さらに、加熱による脱アルコール反応と脱揮工程を併用することで、プロセス的コストダウンも図れ、ペレット賦形まで行えるのでさらに効率的である。また、ホッパーに直接投入して加熱溶融押出しする際は、減圧時に外気を吸い込んで、加熱樹脂が酸素と接触して樹脂の着色・分解等の不具合が発生することがあるので、その際はアルコール、残存溶媒、残存単量体等の除去を妨げない程度に押出し機内に窒素ガス等をフローすればよい。
【0037】
溶媒あるいは未反応単量体によって溶融状態にある共重合体を加熱して脱アルコールすると共に脱揮する場合、溶媒・未反応単量体の量は特に限定されないが、好ましくは共重合体と溶媒・未反応単量体の合計100質量%中、溶媒・未反応単量体が5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、最も好ましくは25質量%以上とするのが好ましく、90質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下、最も好ましくは75質量%以下とするのが好ましい。溶媒・未反応単量体が少なすぎると、溶融時の流動性が低くなりすぎ、流動性を確保するために温度を上げる必要が生じるため、樹脂の着色や分解が起こる可能性があり、光学特性等の品質上好ましくない。溶媒・未反応単量体が多すぎると溶融時の流動性が高すぎて取り扱いが困難、残存単量体・残存溶媒の増加、また脱揮回収される溶媒・未反応単量体の量が多すぎる等の不具合が出る可能性があり、品質上また製造コスト上好ましくない。なお、脱アルコール反応の際中に、溶媒・未反応単量体の一部が自然に揮発しても何ら問題ではない。
【0038】
ベント付き押出機を用いる場合、ベントは1個でも複数個でもいずれでもよいが、複数個のベントを有する方が好ましい。ベント付き押出機での処理温度は、150℃以上、好ましくは200℃以上、また350℃以下、好ましくは300℃以下がよい。上記温度が低すぎると、押出し時の流動性が悪化しやすく、脱アルコール反応が不充分になる、樹脂中の残存揮発分が多くなるという問題がある。高すぎると、樹脂の着色や分解が起こることがあるために物性上好ましくない。
【0039】
本発明の耐熱樹脂の重量平均分子量は、40000以上、好ましくは80000以上、さらに好ましくは100000以上、また300000以下、さらに200000以下であることが好ましい。重量平均分子量が低すぎると機械的強度が低下し脆くなりやすいという問題があり、一方、高すぎると、流動性が低下して成形しにくくなるので好ましくない。分子量の調節は、メルカプタン等の連鎖移動剤を適宜使用すること等の公知の方法で可能である。
【0040】
本発明の耐熱樹脂は、ラクトン環構造を有した重合体からなっており、ラクトン環構造の占める割合は、耐熱樹脂全量中、5質量%以上であることが好ましく、さらに好ましくは10質量%以上、最も好ましくは20質量%以上であるのがよい。ラクトン環構造の占める割合が低すぎると、得られる透明性耐熱樹脂に十分な耐熱性が付与できない傾向がある。なお、ラクトン環構造の占める割合は、脱アルコール反応率と同様に実施例で後述する方法で算出することができる。
【0041】
本発明の耐熱樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が、115℃以上、好ましくは120℃以上、さらに好ましくは125℃以上であるのがよい。
【0042】
本発明の耐熱樹脂においては、射出成形により得られる成形品のJIS―K7361に準じた方法で測定された全光線透過率が厚さ3mmで85%以上、さらに好ましくは88%以上、最も好ましくは90%以上であることが好ましい。全光線透過率は、透明性の目安であり、これが85%未満であると、透明性が低下し、従来の透明樹脂の目的とする用途に使用できない場合がある。
【0043】
本発明の耐熱樹脂においては、射出成形により得られる成形品のJIS―K7136に準じた方法で測定された曇価が厚さ3mmで4%以下、好ましくは3%以下、さらに好ましくは1.5%以下であることが好ましい。曇価は、透明性の目安であり、これが5%を越えると、透明性が低下して、従来の透明樹脂の目的とする用途に使用できない場合がある。
【0044】
本発明の耐熱樹脂においては、射出成形により得られる成形品のJIS―K7105に準じた方法で測定されたYI値が厚さ3mmで、4以下、好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下であることが好ましい。YI値は着色の程度の目安であり、これが5を越えると、透明性が低下して、従来の透明樹脂の目的とする用途に使用できない場合がある。
【0045】
本発明のメタクリル系耐熱樹脂には、必要に応じて各種の紫外線吸収剤、拡散剤、酸化防止剤、有機フィラー、無機フィラー、難燃剤、界面活性剤等の帯電防止剤、有機顔料・無機顔料・染料等の着色剤等の各種添加剤を必要に応じて添加することが可能である。前記添加剤は併用することが可能である。前記添加剤を添加することで、長期使用時の変色防止、光学素子の輝度向上等の効果が得られる。添加方法としては公知の方法が適用可能である。単量体の共重合時に添加しておいて同時に重合する方法や、脱アルコール時に添加する方法、ペレット賦形時に混練する方法等が挙げられる。
【0046】
本発明の耐熱樹脂は、150℃以上、好ましくは200℃以上、また350℃以下、好ましくは280℃以下で成形するのが好ましいが、耐熱性などの樹脂の性質および成形品の形状に応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。成形方法としては特に限定されず、射出成形、ブロー成形、押出成形などが挙げられる。
【0047】
本発明の耐熱樹脂は、従来の透明性耐熱樹脂成形品で避けられなかった成形時の泡やシルバーを、完全に、あるいはほぼ完全に回避できる点で、非常に有用である。さらに、フィルム、シート状の成形品、他の樹脂との積層シート、浴槽用表層樹脂等にも応用できる。さらに種々の形状を容易に成形できる点で優れている。
【0048】
本発明の光学素子とは、透明光学レンズ、照明用カバー等の光拡散性面状成形体、各種計器・機器類・ディスプレイや看板照明等に利用可能な導光体や前面板、プラスチック光ファイバー、半導体レ−ザ−を利用した光電子機器に搭載されるピックアップレンズ、OA機器や自動車等の透明部品(例えば、レーザービームプリンター用レンズ、車両用のヘッドランプやフォグランプや信号灯等に用いられるランプレンズ、メーターパネル周辺部材等)、プロジェクタ−用レンズ等、情報記録媒体用基板等のことをいう。
【0049】
本発明の光学素子は、前述の耐熱樹脂からなるもので、透明性・耐熱性に優れていて、目的の光学素子の形状に成形した際にも泡やシルバーが入りにくく欠陥が少ないため、光学素子として非常に好適である。
【0050】
【実施例】
以下、本発明に係る実施例および比較例について説明する。光学素子の一例として、バックライト型液晶表示部の照明に使用される導光体がある。液晶表示部の輝度向上を行う際に冷陰極線管の輝度を上げて対処することがあり、その際に導光体が熱変形する場合がある。本実施例では、光学素子としての性能を以下に説明する冷陰極管暴露試験で判断した。
本発明は該実施例により何ら制限されるものではない。
【0051】
(共重合反応率、共重合体の組成分析)
共重合反応時の反応率および共重合体中の特定単量体単位の含有率は、得られた重合反応混合物中の未反応単量体の量をガスクロマトグラフィー(島津製作所製、装置名:GC−14A)を用いて測定して求めた。
【0052】
(脱アルコール反応率、ラクトン環構造の占める割合)
共重合して得られた共重合体(もしくは共重合体溶液)を一旦精製アセトンに溶解もしくは希釈し、過剰のヘキサンへ投入して再沈殿を行い、取り出した沈殿物を真空乾燥(1.33hPa、80℃、3時間以上)することにより、揮発成分等を除去して質量(W1)を測定した。次に、再沈した組成物を窒素雰囲気下で加熱して冷却して質量(W2)を測定した。実測した質量減少率(X1)は、
【0053】
X1(質量%)=(W1−W2)/W1×100 (式1)
で計算される。
【0054】
加熱にはガラスチューブオーブンを使用した。加熱条件は以下の通りである。
加熱温度:230℃(到達後、30分保持)
昇温速度:10℃/min(110℃まで加熱後、水分等の除去のため1時間保持して、更に昇温)
雰囲気:窒素フロー 200ml/min
【0055】
以後の説明にあたり、用いる単量体種・その質量・共重合体中の単量体単位の質量分率等を以下の略号を使用する。
【0056】
【表1】
【0057】
当該共重合体の分析結果から、その共重合体に含まれる全ての水酸基がラクトン環の形成に関与するためアルコールになり脱アルコールすると仮定した時の理論質量減少率(X2)(すなわち、その組成上において100%の脱アルコール反応が起きたと仮定して算出した質量減少率)は計算できる。使用した単量体、使用した単量体から生成するアルコールの、それぞれの分子量、共重合体中の含有率(質量%)から、次式で計算できる。
X2(質量%)=(a2/MW2)×(AW)×100・・・(a1/MW1)>(a2/MW2)の場合 (式2−1)
X2(質量%)=(a1/MW1)×(AW)×100・・・(a1/MW1)<(a2/MW2)の場合 (式2−2)
【0058】
実測した質量減少率(X1)、理論質量減少率(X2)より、脱アルコール反応率(X)が計算できる。
【0059】
X(%)=X1/X2×100 (式3)
また、M1:1mol、M2:1molからA:1molが生成して、ラクトン環が生成するので、ラクトン環含有率XLは次式(式4)で計算できる。
【0060】
XL(質量%)=(W1−W2)/AW×(MW1+MW2−AW)/W2×100 (式4)
【0061】
(ガラス転移温度)
組成物を加熱して脱アルコール反応させ、前述の方法で再沈精製したもの、または押出し機で加熱脱揮したペレットの示差操作熱量測定を行い、その結果から求めた。
【0062】
測定装置:DSC200(セイコーインスツルメンツ株式会社)
測定条件:試料量 約10mg
昇温速度:10℃/min
雰囲気:窒素フロー 200ml/min
【0063】
(全光線透過率、曇価)
透明度の指標として、脱アルコール後に得られた耐熱樹脂を射出成形(厚み3mm)し、全光線透過率および曇価を、JISK−7361、JISK−7136に従って、ヘイズメーター(装置名:HR−100、村上色彩技術研究所(株)製)を用いて測定した。
【0064】
(YI値)
着色の程度の指標として、脱アルコール後に得られた耐熱樹脂を射出成形(厚み3mm)し、YI値をJISK−7105にしたがって、分光光度計(装置名:マクベスカラーアイCE−7000、サカタインクス(株)製)で測定した。
【0065】
(冷陰極管暴露試験)
脱アルコール後に得られた耐熱樹脂を射出成形した樹脂板(横210mm×縦100mm×厚さ3mm)の端面を鏡面研磨し、冷陰極管2灯を研磨した端面に2灯並べて配置し、金属製ランプリフレクタ−で冷陰極管2灯と樹脂板を囲って試験した。冷陰極管は、HMBSM2JD86E256YS/AX(ハリソン電気(株)社)を用いて、電圧12V、管電流8mAに設定した。2000時間連続使用後の樹脂板端面の外観を目視にて観察した。
【0066】
(実施例1)
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した30Lの反応釜に、水酸基含有モノマー(M1)としてβ−メタリルアルコール:50質量部、その共重合モノマー(M2)としてメタクリル酸メチル:50質量部を仕込み、窒素を通じつつ100℃まで昇温した。そして、開始剤としてターシャリーブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.05質量部を加えると同時に、90℃で重合を行い、さらに1時間半かけて加熱を行った。
【0067】
共重合体溶液の重合反応率は54質量%(残り46質量%は未反応のメタクリル酸メチルとβ―メタリルアルコール)であった。再沈精製した共重合体中のモノマー単位の割合は、β−メタリルアルコール:13.3質量%(a1=0.133)、MMA:86.7質量%(a2=0.867)であった。再沈精製した共重合体2.55g(=W1)をガラスチューブオーブンで加熱したところ、2.46g(=W2)となり、実測した質量減少率(X1)=3.5質量%であった。該共重合体中の各モノマー単位の割合から(式2)−2が適用でき、100%脱アルコール(この場合は脱メタノール)したときの理論質量減少率(X2)=5.9質量%と推算されることから、脱アルコール反応率(X)=59.3%であり、また、ラクトン環構造の含有率(XL)=16.0質量%であった。Tgは125℃であった。
【0068】
(実施例2)
前述の再沈精製した共重合体総量100質量部に対して0.005質量部のフェニル亜ホスホン酸を加えて、ガラスチューブオーブンで同様に加熱した。加熱後の共重合体を再度再沈精製して、フェニル亜ホスホン酸残滓等を取り除いて乾燥させた後に質量を測定し、フェニル亜ホスホン酸を加えて加熱する前の質量から計算した質量減少率(X1)=5.6質量%であった。したがって、脱アルコール反応率(X)=95.0%であり、ラクトン環構造の含有率(XL)=25.5質量%であった。Tgは129℃であった。
【0069】
(実施例3)
実施例1で得た共重合体溶液100質量部にフェニル亜ホスホン酸0.015質量部添加して、ベント付き押出し機(バレル温度230℃)で加熱脱揮してペレットを得た。ペレットの重量平均分子量は12万であった。このペレットのTgは133℃であった。このペレットをガラスチューブオーブンで加熱して、加熱前に測定しておいた質量と加熱後の質量から質量減少率を測定したところ、質量減少率は観測されなかった。脱アルコール反応率がほぼ100%に達していると推定される。
前述のペレットを射出成形して、樹脂板を得た。その際に発泡等の不具合は発生しなかった。樹脂板の全光線透過率=92.0%、ヘイズ=0.3%、YI値=0.9であった。この樹脂板の冷陰極管線暴露試験を行ったところ、変形は認められなかった。
【0070】
(比較例1)
市販のアクリル成形材料のガラス転移温度を実施例と同様に測定したところ、115℃であった。実施例3と同様にして射出成形して樹脂板を得た。冷陰極管線暴露試験を行ったところ、端面に変形が認められた。
【0071】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明によれば、従来とは異なる単量体から従来とは異なる構造の分子内にエステル基と水酸基を有する共重合体が得ることができ、その共重合体から透明性に優れた耐熱樹脂を得ることができる。本発明の光学素子は、良好な耐熱性と透明性を有し、光学素子として優れている。
Claims (9)
- 請求項4に記載される耐熱樹脂の製造方法であって、分子鎖にエステル基と水酸基を有する共重合体を加熱して脱アルコール反応させる製造方法。
- 分子鎖にエステル基と水酸基を有する共重合体が請求項1または請求項2に記載される共重合体である請求項5に記載の製造方法。
- 請求項4記載の耐熱樹脂からなる光学素子。
- 請求項5または請求項6に記載の製造方法で得られた耐熱樹脂。
- 請求項8記載の耐熱樹脂からなる光学素子。
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JP2003146065A JP2004346224A (ja) | 2003-05-23 | 2003-05-23 | 共重合体ならびにその製造方法、耐熱樹脂、および光学素子 |
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2003
- 2003-05-23 JP JP2003146065A patent/JP2004346224A/ja active Pending
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