JP2004345175A - 木材の熱処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】表面硬さや寸法安定性の向上を目的に行う木材の熱処理時に生じる恐れのある割れや反りの発生を抑制する。
【解決手段】上下の熱盤1a,1bの間に形成される密封空間S内に木材Wを加熱圧縮状態で収容し、そこに高圧水蒸気を供給して木材の高圧水蒸気処理を行うに際して、処理すべき木材Wの繊維方向に直交する側の側面を治具10(長手方向治具部材11a,11b)により抑え込み、木材Wの繊維方向に直交する方向への熱による膨張を押さえ付けた状態で前記熱処理を行う。
【選択図】 図2
【解決手段】上下の熱盤1a,1bの間に形成される密封空間S内に木材Wを加熱圧縮状態で収容し、そこに高圧水蒸気を供給して木材の高圧水蒸気処理を行うに際して、処理すべき木材Wの繊維方向に直交する側の側面を治具10(長手方向治具部材11a,11b)により抑え込み、木材Wの繊維方向に直交する方向への熱による膨張を押さえ付けた状態で前記熱処理を行う。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は木材の熱処理方法に関し、特に、そのままでは実使用に表面硬さが不足しているような木材に対して、所要の表面硬さを付与して建築用あるいは家具用などとして有効に用いることができるようにした木材の熱処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
無垢材を建築用あるいは家具用材料として用いることが注目されている。しかし、スギ材やパイン材のように、無垢材の種類によっては、表面が柔らかく表面硬度が不足したり、あるいは、寸法安定性が不足したりして、そのままでは、建築用あるいは家具用材料としては適切でないものもある。そのために、そのような木材に対して高圧水蒸気を供与して熱処理を行うことが提案されている。例えば、特許文献1(特開平9−193104号公報)あるいは特許文献2(特開平11−10608号公報)には、上下の熱盤を備えたプレス装置の熱盤間で処理すべき木材を加熱し圧縮する行程、圧縮された木材を4周囲に隙間を持った状態で密封空間内に保持する工程、密封空間内に保持された加熱および圧縮された状態の木材に高圧水蒸気を供給する工程、および密封空間を解圧する工程、とを備えた木材の高圧水蒸気処理による熱処理方法が記載されている。このような熱処理を行うことにより、処理木材の寸法安定性や表面硬さが改善され、有効な建築資材となる。
【0003】
上記の熱処理方法は、従来の木材処理で用いられる熱盤を持つ熱圧プレスを利用し、熱盤間に形成される密封空間内に処理すべき木材を圧縮した状態で配置して熱盤から高圧水蒸気を供給し、木材を高圧水蒸気処理(それにより、寸法安定性や表面硬さの向上が得られる)する方法であり、処理が簡素化される利点もある。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−193104号公報
【特許文献2】
特開平11−10608号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、上記した木材の熱処理方法について継続して実験と研究を行っているが、その過程で、熱処理済みの木材に繊維方向に沿う割れが生じていたり、また全体に反りが生じている場合があることを経験した。割れや反りの生じた木材は商品価値が低下するので好ましくない。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、熱処理後に割れや反りが発生するのを大きく低減することのできる、さらに改良された木材の熱処理方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべくさらに実験を行うことにより、処理すべき木材の繊維方向に直交する側の側面を間に隙間が形成されないように治具により抑え込んだ状態とし、その状態で従来と同様な熱処理を行うことにより、割れ発生の頻度を大きく低減でき、また反りの発生のない処理済み木材が得られることを知見した。
【0008】
本発明は上記の知見に基づくものであり、上下の熱盤を備えたプレス装置の熱盤間で処理すべき木材を加熱し圧縮する行程、圧縮された木材を密封空間内に保持する工程、密封空間内に保持された加熱および圧縮された状態の木材に高圧水蒸気を供給する工程、および密封空間を解圧する工程、とを少なくとも備え、それにより木材の高圧水蒸気処理を行う木材の熱処理方法であって、処理すべき木材の繊維方向に直交する側の側面を当該処理すべき木材の厚さよりも高さの低い治具により抑え込み、当該木材の繊維方向に直交する方向への熱による膨張を押さえ付けた状態で前記熱処理を行うことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、熱処理中に、木材はその繊維方向に直交する方向への熱による膨張が押さえ付けられた状態で、その繊維方向に直交する側の側面が治具により抑え込まれているので、熱処理中に発生しやすい繊維方向に直交する方向へ木材の変形が生じることはなく、結果として、割れが発生する頻度(通常、木材に発生する割れは繊維方向に沿って発生する)は大きく低下し、また反りの発生も抑制される。なお、治具が、木材の繊維方向に直交する方向への熱による膨張に起因して発生する応力によって変形しないだけの曲げ強さを備えていることは必須である。この曲げ強さは、治具自体を例えば幅広のものとすことによって得るようにしてもよく、治具の側方への変位を抑え付けるような背面支持材を治具と共に用いるようにしてもよい。
【0010】
本発明の方法において、木材を加熱する方法は上記した従来知られた熱処理方法の場合と同様に任意であるが、上下熱盤に電気ヒータやスチーム管などの加熱手段を取り付け、該熱盤からの加熱により行ってもよく、加熱処理を行う部位に高周波加熱手段を配置していわゆる高周波加熱により行ってもよい。それらの加熱手段を適宜組み合わせて行ってもよい。
【0011】
木材を圧縮するには、用いる治具の高さを処理すべき木材の厚さよりも低いものとし、熱盤が該治具に接するまで上下の熱盤の双方または一方を移動させればよい。それにより処理すべき木材は圧縮された状態で密封空間内に保持される。本発明では、繊維方向に直交する側の側面が上記のようにして治具により抑え込まれているので、この圧縮工程時にも、木材が繊維方向に直交する方向に変形することはない。もちろん、圧縮時に側面に生じる応力によって変形しないだけの曲げ強さを治具が備えていることは必須である。
【0012】
密封空間内に保持された加熱および圧縮された状態の木材に対して、熱盤に形成した細孔を通して外部から高圧水蒸気を供給する。それにより、木材が持つ水分も水蒸気化し密封空間内は高温高圧雰囲気となる。この高温高圧雰囲気に圧縮された木材をさらすことにより、木材の熱処理は進行し、少なくとも表面およびその近傍の硬度は向上する。また、寸法安定性も向上する。高圧水蒸気の供給を停止して密封空間を解圧し、処理済みの木材を取り出す。熱盤に冷却水を供給して循環させ、処理済の木材を積極的に冷却し、しかるのちの解圧を行ってもよい。冷却処理を施すことにより、表面特性はさらに向上する。
【0013】
本発明において、圧縮工程を一気に行うと、木材に破壊が生じる場合がある。そのような場合には、熱盤の移動量を制御しながら2段階以上の工程として行い、最終段の行程により木材を収容した処理空間が密封空間とされるようにしてもよい。それにより、破壊が生じるのを回避できる。また、本発明者らの実験では、表面層により近い部分の硬度をさらに高くすることができた。
【0014】
本発明において、密封空間内に高圧水蒸気を供給する前の工程として、密封空間内を減圧する工程をさらに行うようにしてもよい。減圧した状態で高圧水蒸気を供給することにより、熱処理が迅速化すると共に、処理空間が密封状態となっているか否かを、この減圧工程でもって確認することができる。
【0015】
上記した特許文献1、2に記載される方法のように、本発明においても、密封空間への高圧水蒸気の供給と共に空間内の真空引きを行うようにしてもよい。また、密封空間の解圧時に、真空引きを行うことにより、密封空間を迅速に常圧に戻すことができ、解圧作業の安全性も確保できる。
【0016】
上下の熱盤間に形成される広い密封空間内の中央部に上記したようにして治具を配置して本発明による木材の熱処理を行う場合、特に上記した真空引きを行わない場合には、木材を収容した密封空間内の解圧が遅れ気味となる場合がある。それを回避するために、治具として蒸気抜きの穴を備えたものを用いることが推奨される。上下の熱盤を開くときに、熱処理済みの木材表面と熱盤との分離は遅れ気味となるが、治具に形成した穴から、密封空間内の蒸気が大気に繋がる広い空間内を排出されるので、良好な減圧工程が進行する。
【0017】
なお、本発明において、熱処理の条件は対象となる木材の種類や寸法などに応じて実験的に最適値が定められるが、例えば、スギ材の場合、高圧水蒸気の圧力は数kgf/cm2 〜30kgf/cm2 、温度は150℃〜230℃程度が好ましい。圧縮率も任意であるが、15%から35%程度が実際的であり、圧縮率がさらに高い場合、性能的には格別の不具合は生じないが、容積低減率が大きくなり木材としての歩留まりが低下する。低すぎると表面硬度の改善が十分に得られない。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明をさらに詳細に説明する。図1は本発明の木材の熱処理方法を実施する装置の一例を示している。図において、1a、1bは、従来の木材処理で用いられる熱盤プレスに装着されると同様の熱盤であり、それぞれに熱源としてのヒータ2a、2bが設けられ、さらに、少なくとも処理すべき木材Wと衝接することとなる表面部分には多数の細孔3a、3bが形成されている。上方の熱盤1aに形成された細孔3aは配管4aおよび適宜の開閉弁を介して高圧水蒸気発生源に接続しており、下方の熱盤1bに形成された細孔3bは配管4bを介して真空ポンプに接続している。真空ポンプに変えてブロアーを用いてもよい。図示しないが、配管4a,4bのそれぞれを、適宜の切替弁を介して、高圧水蒸気発生源と真空ポンプの双方に接続可能としておいてもよい。
【0019】
図3に示すように、下方の熱盤1bのほぼ中央部分には、処理すべき木材Wを収容する治具10が取り付けられる。治具10は耐熱性と耐圧性を備えた材料で作られる。例えば、S−45Cのような鉄材が用いられる。この例において、処理すべき木材Wは繊維方向を長手方向とする断面矩形状の長尺物であり、説明の都合上、厚さa×横幅b×長さcのものとする(図1も参照)。治具10は木材Wの長手方向の2つの側面に沿って配置される一対の長手方向治具部材11a,11bと、短手方向の配置される一対の短手方向治具部材12a,12bとからなる。各治具部材の高さhは等しく、高さhは木材Wの厚さaよりも小さい。a−hで示される値pが木材Wが圧縮される距離となり、p/a×100が圧縮率Pとなる。前記したように、圧縮率Pは15%〜35%が好ましい。
【0020】
図3に示すようにして4つの治具部材を組み付けることにより、下方の熱盤1bのほぼ中央部分に木材Wを収容する空間が形成される。この例において、短手方向治具部材12a,12bの横幅tは木材Wの横幅bと等しいかわずかに狭くされている。そして、一方の長手方向治具部材11aが熱盤1bに適宜の手段で固定され、該長手方向治具部材11aの両端近傍に短手方向治具部材12a,12bが、両者の接触面を気密にした状態で、適宜の手段により固定される。
【0021】
固定した短手方向治具部材12a,12bの他方の側面側にもう一つの長手方向治具部材11bを取り付ける。この例では、長手方向治具部材11bの両端近傍にはねじ穴14が形成されていて、熱盤1b側に固定した短手方向治具部材12a,12bの開放した側面に、ねじ穴14を介して留めねじ14aによりねじ止めされるようになっている。ねじ止め時のねじ14aの締め付け程度により、長手方向治具部材11bは下方の熱盤1bの表面上を実質的に気密を維持した状態で摺動し、最終締め付け位置では、短手方向治具部材12a,12bの開放した側面と長手方向治具部材11bの側面とは気密状態で接触して固定され、前記した木材Wを収容する空間Sを形成する。ねじ14aを緩めることにより、図3に示すように、長手方向治具部材11bは外側に移動して収容空間を広くする。
【0022】
上方の熱盤1aの外周縁に沿って密封用枠体15が取り付けられる。密封用枠体15は図示の例のように、金属材料のような実質的にリジットな材料で作られてもよく、シリコンゴムのような耐熱性を備えた変形可能な密封材料で作られていてもよい。前者の場合には、密封用枠体15の下端面にはシリコンゴムのような耐熱性の密封用のパッキン16を取り付る。いずれの場合も、熱盤を移動して治具10の上端面が上方の熱盤1aと衝接して空間Sを密封空間としたときに、密封用枠体15の下端面と下方の熱盤1bとの間も気密状態とされ、密封用枠体15と治具10との間に第2の密封空間S2が形成される。
【0023】
なお、上下の熱盤1a,1bに形成する細孔3a,3bは4つの治具部材で囲まれた領域にのみ形成されていれば、本発明による熱処理方法は実行することができる。しかし、同じ熱盤プレスを用いて種々の大きさの木材Wに対して熱処理を行うことを考慮すると、図示の例のように熱盤全体に細孔3a,3bを形成することも好ましい態様となる。
【0024】
この装置を用いて本発明による熱処理方法を実施するに際しては、まず、下方の熱盤1bに前記した治具10を取り付ける。その際に、図3に示すように、移動する長手方向治具部材11bの留めねじ14aを緩めておき、空間Sの横幅を広くしておく。その状態で処理すべき前記木材Wを空間S内に収容し、ねじ14aを締め付け、長手方向治具部材11bを短手方向治具部材12a,12bの側面に衝接するまで移動させる。処理すべき木質材Wの長手方向の側面が均一な平坦面となっていない場合もありうるので、短手方向治具部材12a,12bの横幅tを木材Wの横幅bよりもわずかに狭く設定しておき、ねじの締め付けにより木材Wの側面をやや圧縮した状態として、空間S内に収容することは好ましい。それにより、木材Wの繊維方向に直交する方向の側面と長手方向治具部材11a,11bの側面とは全面が密接した状態となり、本発明による熱処理の効果は確実に達成される。
【0025】
空間S内に木材Wを収容した後、熱盤1a、1bを次第に接近させ、熱盤1aが治具10の上面と衝接して移動が規制された時点で、移動を停止する(図2参照)。その状態で、木材Wを収容した空間Sとその周囲の空間S2の双方が密封された状態となる。同時に、木材Wは前記したように(a−h)で示される値pだけ圧縮される。この圧縮工程を一気に行うと、木材Wに破壊が生じる場合がある。そのような場合には、圧縮工程を多段階に分けて行うことが望ましく、それにより、破壊が生じるのを回避できる。
【0026】
その状態で、真空ポンプを作動させて、下方の熱盤1bに形成した細孔3bから真空引きを行う。空間S,S2の減圧の進行具合により、気密性の程度を確認することができる。装置の形態によっては、上下の熱盤の双方から真空引きを行うようにしてもよい。また、真空引きを省略することもできる。
【0027】
所定の減圧が得られた時点で真空引きを停止し、高圧水蒸気発生源側の配管4aに設けた開閉弁を開き、熱盤1aに形成した細孔3aから高圧水蒸気を噴出させる。この場合も、装置の形態によっては、上下の熱盤の双方から高圧水蒸気の供給を行ってもよい。密封空間S内は高圧水蒸気で満たされて高圧高温雰囲気となり、噴出する水蒸気は木材Wの内部にまで均一に到達する。なお、図示の装置では、空間S2も高圧水蒸気に満たされるが、この水蒸気は木材Wの熱処理には直接には関与しない。従って、前記のように、空間S2に相当する領域の細孔は省略可能である。
【0028】
所望量の高圧水蒸気を噴出することにより、木材Wの熱処理は進行する。熱処理の過程で、木材Wは加熱と水蒸気の吸収により膨張しようとする。膨張は木材の繊維方向に直交する方向が最も大きく、放置すると繊維方向に沿う割れが発生する。また、反り発生の要因ともなる。本発明においては、処理すべき木材Wの繊維方向に直交する側の側面は、長手方向治具部材11a,11bの側面によりしっかりと抑え込まれており、木材Wの繊維方向に直交する方向への膨張は抑制される。そのために、熱処理によって木材Wに割れが生じるのは確実に回避でき、反りが生じるのも抑制できる。当該木材Wの熱盤に面する上下の面も繊維方向に直交する側の側面であるが、この面は熱盤により移動が抑制されており、熱膨張による変形は生じない。木材Wの繊維方向の端面と治具10の短手方向治具部材12a,12bとの間には隙間があっても差し支えない。その理由は、一般に木材の繊維方向に沿う方向の寸法変化率は小さく、治具10により抑え付けなくても割れが生じることはないことによる。
【0029】
以下、従来法による場合と同様にして、解圧および冷却工程を行うことにより、本発明による木材の熱処理方法は終了する。上下の熱盤を開くときに、熱処理済みの木材表面と熱盤との分離は遅れ気味となる場合がある。それを回避するために、好ましくは、治具10の長手方向治具部材11a,11bに蒸気抜きのための穴17を備えたものを用いる。上下の熱盤1a,1bを開いた瞬間に、該穴17から密封空間S内の高圧蒸気が大気に繋がる広い空間S2内を排出されるので、良好な減圧工程を進行させることができる。
【0030】
図4は本発明の木材の熱処理方法を実施する装置の他の例を示している。この例は、図1に示した装置から、上方の熱盤1aの外周縁に沿って密封用枠体15を取り除いたものに実質的に相当する。この装置では、治具10は図1に示す装置と同様にして取り付けられ、熱盤間には木材を熱処理する空間Sのみが形成される。前記した空間S2は形成されない。従って、蒸気の供給および真空引き用の細孔は当然に治具10で囲まれた領域内にのみ形成されると共に、長手方向治具部材11a,11bには蒸気抜きのための穴16が形成されることはない。なお、図1に示した装置におけると同じ機能を奏する部材には同じ符号を付すことにより、詳細な説明は省略する。この装置は、所要形状の木材に対する専用の熱処理装置とする場合に、効果的である。
【0031】
図5は本発明の木材の熱処理方法を実施する装置のさらに他の例を示している。この例は、熱盤に外部に連通する細孔が設けられていない平板プレスを本発明の処理方法に用いる場合に好適な例であり、蒸気噴出用の細孔23aを有する平板状の第1の別部材20aがネジ21aを用いて上方の熱盤1aに固定され、さらに、真空引き用の細孔23bを有する平板状の第2の別部材20bがネジ21bを用いて下方の熱盤1bに固定されている。そして、それぞれの細孔23a、23bは、図1に示した装置の場合と同様に、高圧水蒸気発生源および真空ポンプに接続している。そして、第2の別部材20bには図1の装置と同様にして治具10が装着される。この装置の使用方法は図1に示した装置におけると実質的に同じである。
【0032】
【実施例】
以下、実施例に基づき本発明を説明する。
〔実施例1〕
図1〜図3に示す装置を用い、両熱盤1a,1bの表面には2mmφの細孔3a,3bを40mm間隔で縦横に形成した。上方の熱盤1aの細孔群を高圧水蒸気発生源に接続し、下方の熱盤の細孔群を真空ポンプに接続した。処理材Wとして厚さ20mm×横幅100mm×長さ1200mmのスギ材を用い、それを下方の熱盤に取り付けた治具10内に収容した。上方の熱盤1aの外周部に取り付けた密封用枠体15の高さ16mmとした。
【0033】
治具10は断面矩形状の中実鋼材で構成され、木材Wの長手方向の2つの側面に沿って配置される一対の長手方向治具部材11a,11bは、高さ16mm×横幅50mm×長さ1450mmとした。短手方向の配置される一対の短手方向治具部材12a,12bは、高さ16mm×横幅100mm×長さ100mmとした。
【0034】
治具10内の空間に木材Wを収容した後、長手方向治具部材11bをねじを締め付けて短手方向治具部材12a,12bの側面に衝接するまで移動させた。熱盤温度を200℃に維持した状態で、上方の熱盤1aを治具10の上端面に衝接するまで下降させ、空間Sを密封空間とした。なお、プレス圧は200kgf/cm2 で行った。
【0035】
次に、下方熱盤に形成した細孔群に連続する真空ポンプを稼働させて密封空間を減圧した。真空引きを停止した後、上方熱盤に形成した細孔群から15kgf/cm2 の飽和水蒸気(200℃)を5分間噴出させた。蒸気の供給を停止した後、解圧して処理済の木材を取り出した(実施例品)。実施例品の厚さ方向の密度分布を測定した。密度分布のグラフを図6に示す。また、表面硬度(ブリネル硬度)を測定し、さらに、表面に割れおよび反りが生じているかどうかを目視により観察した。その結果を表1に示す。
【0036】
〔比較例1〕
治具10を用いない以外は、実施例1と同様にしてスギ材の熱処理を行って処理済木材を得た(比較品1)。比較品1の厚さ方向の密度分布を測定した。密度分布のグラフを図7に示す。また、表面硬度(ブリネル硬度)を測定し、さらに、表面に割れおよび反りが生じているかどうかを目視により観察した。その結果を表1に示す。
【0037】
〔比較例2〕
前記の実施例品および比較品1で用いた木材(スギ材)であって無処理のもの(比較品2)について、厚さ方向の密度分布を測定した。密度分布のグラフを図8に示す。また、表面硬度(ブリネル硬度)を測定した。その結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
表1に示されるように、本発明による熱処理方法を施した製品は、表面硬度が治具なしでの処理品および無処理品よりも大きく改善されていることに加え、表面に割れや反りは生じてなく、外観意匠に優れた処理品が得られることががわかる。また、本発明による熱処理方法を施した製品は、図6に示されるように、上方熱盤に接している面(表面)近傍の密度が他の部分と比較して高くなっており、表面特性が大きく改善されていることもわかる。治具を用いない場合での処理品(比較品1)も同じような密度分布特性を示しているが、表1に示すように割れや反りが生じており、商品価値が低下している。
【0040】
【発明の効果】
木材の熱処理方法によれば、従来法に比較して、表面硬度が改善された処理済木材を割れや反りを生じることなく得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の木材の熱処理方法を実施する装置の一例を示す図であり、上下の熱盤が開いた状態を示す。
【図2】図1に示す装置であって、上下の熱盤が閉じた状態を示す図。
【図3】用いる治具を説明するための図。
【図4】本発明の木材の熱処理方法を実施する装置の他の例を示す図。
【図5】本発明の木材の熱処理方法を実施する装置のさらに他の例を示す図。
【図6】実施例品での厚さ方向の密度分布を示すグラフ。
【図7】比較品1での厚さ方向の密度分布を示すグラフ。
【図8】比較品2での厚さ方向の密度分布を示すグラフ。
【符号の説明】
W…処理しようとする木材、1a、1b…熱盤、2a、2b…ヒータ、3a、3b…細孔、4a、4b…配管、10…治具、11a,11b…長手方向治具部材、12a,12b…短手方向治具部材、14a…留めねじ、15…密封用枠体
【発明の属する技術分野】
本発明は木材の熱処理方法に関し、特に、そのままでは実使用に表面硬さが不足しているような木材に対して、所要の表面硬さを付与して建築用あるいは家具用などとして有効に用いることができるようにした木材の熱処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
無垢材を建築用あるいは家具用材料として用いることが注目されている。しかし、スギ材やパイン材のように、無垢材の種類によっては、表面が柔らかく表面硬度が不足したり、あるいは、寸法安定性が不足したりして、そのままでは、建築用あるいは家具用材料としては適切でないものもある。そのために、そのような木材に対して高圧水蒸気を供与して熱処理を行うことが提案されている。例えば、特許文献1(特開平9−193104号公報)あるいは特許文献2(特開平11−10608号公報)には、上下の熱盤を備えたプレス装置の熱盤間で処理すべき木材を加熱し圧縮する行程、圧縮された木材を4周囲に隙間を持った状態で密封空間内に保持する工程、密封空間内に保持された加熱および圧縮された状態の木材に高圧水蒸気を供給する工程、および密封空間を解圧する工程、とを備えた木材の高圧水蒸気処理による熱処理方法が記載されている。このような熱処理を行うことにより、処理木材の寸法安定性や表面硬さが改善され、有効な建築資材となる。
【0003】
上記の熱処理方法は、従来の木材処理で用いられる熱盤を持つ熱圧プレスを利用し、熱盤間に形成される密封空間内に処理すべき木材を圧縮した状態で配置して熱盤から高圧水蒸気を供給し、木材を高圧水蒸気処理(それにより、寸法安定性や表面硬さの向上が得られる)する方法であり、処理が簡素化される利点もある。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−193104号公報
【特許文献2】
特開平11−10608号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、上記した木材の熱処理方法について継続して実験と研究を行っているが、その過程で、熱処理済みの木材に繊維方向に沿う割れが生じていたり、また全体に反りが生じている場合があることを経験した。割れや反りの生じた木材は商品価値が低下するので好ましくない。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、熱処理後に割れや反りが発生するのを大きく低減することのできる、さらに改良された木材の熱処理方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべくさらに実験を行うことにより、処理すべき木材の繊維方向に直交する側の側面を間に隙間が形成されないように治具により抑え込んだ状態とし、その状態で従来と同様な熱処理を行うことにより、割れ発生の頻度を大きく低減でき、また反りの発生のない処理済み木材が得られることを知見した。
【0008】
本発明は上記の知見に基づくものであり、上下の熱盤を備えたプレス装置の熱盤間で処理すべき木材を加熱し圧縮する行程、圧縮された木材を密封空間内に保持する工程、密封空間内に保持された加熱および圧縮された状態の木材に高圧水蒸気を供給する工程、および密封空間を解圧する工程、とを少なくとも備え、それにより木材の高圧水蒸気処理を行う木材の熱処理方法であって、処理すべき木材の繊維方向に直交する側の側面を当該処理すべき木材の厚さよりも高さの低い治具により抑え込み、当該木材の繊維方向に直交する方向への熱による膨張を押さえ付けた状態で前記熱処理を行うことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、熱処理中に、木材はその繊維方向に直交する方向への熱による膨張が押さえ付けられた状態で、その繊維方向に直交する側の側面が治具により抑え込まれているので、熱処理中に発生しやすい繊維方向に直交する方向へ木材の変形が生じることはなく、結果として、割れが発生する頻度(通常、木材に発生する割れは繊維方向に沿って発生する)は大きく低下し、また反りの発生も抑制される。なお、治具が、木材の繊維方向に直交する方向への熱による膨張に起因して発生する応力によって変形しないだけの曲げ強さを備えていることは必須である。この曲げ強さは、治具自体を例えば幅広のものとすことによって得るようにしてもよく、治具の側方への変位を抑え付けるような背面支持材を治具と共に用いるようにしてもよい。
【0010】
本発明の方法において、木材を加熱する方法は上記した従来知られた熱処理方法の場合と同様に任意であるが、上下熱盤に電気ヒータやスチーム管などの加熱手段を取り付け、該熱盤からの加熱により行ってもよく、加熱処理を行う部位に高周波加熱手段を配置していわゆる高周波加熱により行ってもよい。それらの加熱手段を適宜組み合わせて行ってもよい。
【0011】
木材を圧縮するには、用いる治具の高さを処理すべき木材の厚さよりも低いものとし、熱盤が該治具に接するまで上下の熱盤の双方または一方を移動させればよい。それにより処理すべき木材は圧縮された状態で密封空間内に保持される。本発明では、繊維方向に直交する側の側面が上記のようにして治具により抑え込まれているので、この圧縮工程時にも、木材が繊維方向に直交する方向に変形することはない。もちろん、圧縮時に側面に生じる応力によって変形しないだけの曲げ強さを治具が備えていることは必須である。
【0012】
密封空間内に保持された加熱および圧縮された状態の木材に対して、熱盤に形成した細孔を通して外部から高圧水蒸気を供給する。それにより、木材が持つ水分も水蒸気化し密封空間内は高温高圧雰囲気となる。この高温高圧雰囲気に圧縮された木材をさらすことにより、木材の熱処理は進行し、少なくとも表面およびその近傍の硬度は向上する。また、寸法安定性も向上する。高圧水蒸気の供給を停止して密封空間を解圧し、処理済みの木材を取り出す。熱盤に冷却水を供給して循環させ、処理済の木材を積極的に冷却し、しかるのちの解圧を行ってもよい。冷却処理を施すことにより、表面特性はさらに向上する。
【0013】
本発明において、圧縮工程を一気に行うと、木材に破壊が生じる場合がある。そのような場合には、熱盤の移動量を制御しながら2段階以上の工程として行い、最終段の行程により木材を収容した処理空間が密封空間とされるようにしてもよい。それにより、破壊が生じるのを回避できる。また、本発明者らの実験では、表面層により近い部分の硬度をさらに高くすることができた。
【0014】
本発明において、密封空間内に高圧水蒸気を供給する前の工程として、密封空間内を減圧する工程をさらに行うようにしてもよい。減圧した状態で高圧水蒸気を供給することにより、熱処理が迅速化すると共に、処理空間が密封状態となっているか否かを、この減圧工程でもって確認することができる。
【0015】
上記した特許文献1、2に記載される方法のように、本発明においても、密封空間への高圧水蒸気の供給と共に空間内の真空引きを行うようにしてもよい。また、密封空間の解圧時に、真空引きを行うことにより、密封空間を迅速に常圧に戻すことができ、解圧作業の安全性も確保できる。
【0016】
上下の熱盤間に形成される広い密封空間内の中央部に上記したようにして治具を配置して本発明による木材の熱処理を行う場合、特に上記した真空引きを行わない場合には、木材を収容した密封空間内の解圧が遅れ気味となる場合がある。それを回避するために、治具として蒸気抜きの穴を備えたものを用いることが推奨される。上下の熱盤を開くときに、熱処理済みの木材表面と熱盤との分離は遅れ気味となるが、治具に形成した穴から、密封空間内の蒸気が大気に繋がる広い空間内を排出されるので、良好な減圧工程が進行する。
【0017】
なお、本発明において、熱処理の条件は対象となる木材の種類や寸法などに応じて実験的に最適値が定められるが、例えば、スギ材の場合、高圧水蒸気の圧力は数kgf/cm2 〜30kgf/cm2 、温度は150℃〜230℃程度が好ましい。圧縮率も任意であるが、15%から35%程度が実際的であり、圧縮率がさらに高い場合、性能的には格別の不具合は生じないが、容積低減率が大きくなり木材としての歩留まりが低下する。低すぎると表面硬度の改善が十分に得られない。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明をさらに詳細に説明する。図1は本発明の木材の熱処理方法を実施する装置の一例を示している。図において、1a、1bは、従来の木材処理で用いられる熱盤プレスに装着されると同様の熱盤であり、それぞれに熱源としてのヒータ2a、2bが設けられ、さらに、少なくとも処理すべき木材Wと衝接することとなる表面部分には多数の細孔3a、3bが形成されている。上方の熱盤1aに形成された細孔3aは配管4aおよび適宜の開閉弁を介して高圧水蒸気発生源に接続しており、下方の熱盤1bに形成された細孔3bは配管4bを介して真空ポンプに接続している。真空ポンプに変えてブロアーを用いてもよい。図示しないが、配管4a,4bのそれぞれを、適宜の切替弁を介して、高圧水蒸気発生源と真空ポンプの双方に接続可能としておいてもよい。
【0019】
図3に示すように、下方の熱盤1bのほぼ中央部分には、処理すべき木材Wを収容する治具10が取り付けられる。治具10は耐熱性と耐圧性を備えた材料で作られる。例えば、S−45Cのような鉄材が用いられる。この例において、処理すべき木材Wは繊維方向を長手方向とする断面矩形状の長尺物であり、説明の都合上、厚さa×横幅b×長さcのものとする(図1も参照)。治具10は木材Wの長手方向の2つの側面に沿って配置される一対の長手方向治具部材11a,11bと、短手方向の配置される一対の短手方向治具部材12a,12bとからなる。各治具部材の高さhは等しく、高さhは木材Wの厚さaよりも小さい。a−hで示される値pが木材Wが圧縮される距離となり、p/a×100が圧縮率Pとなる。前記したように、圧縮率Pは15%〜35%が好ましい。
【0020】
図3に示すようにして4つの治具部材を組み付けることにより、下方の熱盤1bのほぼ中央部分に木材Wを収容する空間が形成される。この例において、短手方向治具部材12a,12bの横幅tは木材Wの横幅bと等しいかわずかに狭くされている。そして、一方の長手方向治具部材11aが熱盤1bに適宜の手段で固定され、該長手方向治具部材11aの両端近傍に短手方向治具部材12a,12bが、両者の接触面を気密にした状態で、適宜の手段により固定される。
【0021】
固定した短手方向治具部材12a,12bの他方の側面側にもう一つの長手方向治具部材11bを取り付ける。この例では、長手方向治具部材11bの両端近傍にはねじ穴14が形成されていて、熱盤1b側に固定した短手方向治具部材12a,12bの開放した側面に、ねじ穴14を介して留めねじ14aによりねじ止めされるようになっている。ねじ止め時のねじ14aの締め付け程度により、長手方向治具部材11bは下方の熱盤1bの表面上を実質的に気密を維持した状態で摺動し、最終締め付け位置では、短手方向治具部材12a,12bの開放した側面と長手方向治具部材11bの側面とは気密状態で接触して固定され、前記した木材Wを収容する空間Sを形成する。ねじ14aを緩めることにより、図3に示すように、長手方向治具部材11bは外側に移動して収容空間を広くする。
【0022】
上方の熱盤1aの外周縁に沿って密封用枠体15が取り付けられる。密封用枠体15は図示の例のように、金属材料のような実質的にリジットな材料で作られてもよく、シリコンゴムのような耐熱性を備えた変形可能な密封材料で作られていてもよい。前者の場合には、密封用枠体15の下端面にはシリコンゴムのような耐熱性の密封用のパッキン16を取り付る。いずれの場合も、熱盤を移動して治具10の上端面が上方の熱盤1aと衝接して空間Sを密封空間としたときに、密封用枠体15の下端面と下方の熱盤1bとの間も気密状態とされ、密封用枠体15と治具10との間に第2の密封空間S2が形成される。
【0023】
なお、上下の熱盤1a,1bに形成する細孔3a,3bは4つの治具部材で囲まれた領域にのみ形成されていれば、本発明による熱処理方法は実行することができる。しかし、同じ熱盤プレスを用いて種々の大きさの木材Wに対して熱処理を行うことを考慮すると、図示の例のように熱盤全体に細孔3a,3bを形成することも好ましい態様となる。
【0024】
この装置を用いて本発明による熱処理方法を実施するに際しては、まず、下方の熱盤1bに前記した治具10を取り付ける。その際に、図3に示すように、移動する長手方向治具部材11bの留めねじ14aを緩めておき、空間Sの横幅を広くしておく。その状態で処理すべき前記木材Wを空間S内に収容し、ねじ14aを締め付け、長手方向治具部材11bを短手方向治具部材12a,12bの側面に衝接するまで移動させる。処理すべき木質材Wの長手方向の側面が均一な平坦面となっていない場合もありうるので、短手方向治具部材12a,12bの横幅tを木材Wの横幅bよりもわずかに狭く設定しておき、ねじの締め付けにより木材Wの側面をやや圧縮した状態として、空間S内に収容することは好ましい。それにより、木材Wの繊維方向に直交する方向の側面と長手方向治具部材11a,11bの側面とは全面が密接した状態となり、本発明による熱処理の効果は確実に達成される。
【0025】
空間S内に木材Wを収容した後、熱盤1a、1bを次第に接近させ、熱盤1aが治具10の上面と衝接して移動が規制された時点で、移動を停止する(図2参照)。その状態で、木材Wを収容した空間Sとその周囲の空間S2の双方が密封された状態となる。同時に、木材Wは前記したように(a−h)で示される値pだけ圧縮される。この圧縮工程を一気に行うと、木材Wに破壊が生じる場合がある。そのような場合には、圧縮工程を多段階に分けて行うことが望ましく、それにより、破壊が生じるのを回避できる。
【0026】
その状態で、真空ポンプを作動させて、下方の熱盤1bに形成した細孔3bから真空引きを行う。空間S,S2の減圧の進行具合により、気密性の程度を確認することができる。装置の形態によっては、上下の熱盤の双方から真空引きを行うようにしてもよい。また、真空引きを省略することもできる。
【0027】
所定の減圧が得られた時点で真空引きを停止し、高圧水蒸気発生源側の配管4aに設けた開閉弁を開き、熱盤1aに形成した細孔3aから高圧水蒸気を噴出させる。この場合も、装置の形態によっては、上下の熱盤の双方から高圧水蒸気の供給を行ってもよい。密封空間S内は高圧水蒸気で満たされて高圧高温雰囲気となり、噴出する水蒸気は木材Wの内部にまで均一に到達する。なお、図示の装置では、空間S2も高圧水蒸気に満たされるが、この水蒸気は木材Wの熱処理には直接には関与しない。従って、前記のように、空間S2に相当する領域の細孔は省略可能である。
【0028】
所望量の高圧水蒸気を噴出することにより、木材Wの熱処理は進行する。熱処理の過程で、木材Wは加熱と水蒸気の吸収により膨張しようとする。膨張は木材の繊維方向に直交する方向が最も大きく、放置すると繊維方向に沿う割れが発生する。また、反り発生の要因ともなる。本発明においては、処理すべき木材Wの繊維方向に直交する側の側面は、長手方向治具部材11a,11bの側面によりしっかりと抑え込まれており、木材Wの繊維方向に直交する方向への膨張は抑制される。そのために、熱処理によって木材Wに割れが生じるのは確実に回避でき、反りが生じるのも抑制できる。当該木材Wの熱盤に面する上下の面も繊維方向に直交する側の側面であるが、この面は熱盤により移動が抑制されており、熱膨張による変形は生じない。木材Wの繊維方向の端面と治具10の短手方向治具部材12a,12bとの間には隙間があっても差し支えない。その理由は、一般に木材の繊維方向に沿う方向の寸法変化率は小さく、治具10により抑え付けなくても割れが生じることはないことによる。
【0029】
以下、従来法による場合と同様にして、解圧および冷却工程を行うことにより、本発明による木材の熱処理方法は終了する。上下の熱盤を開くときに、熱処理済みの木材表面と熱盤との分離は遅れ気味となる場合がある。それを回避するために、好ましくは、治具10の長手方向治具部材11a,11bに蒸気抜きのための穴17を備えたものを用いる。上下の熱盤1a,1bを開いた瞬間に、該穴17から密封空間S内の高圧蒸気が大気に繋がる広い空間S2内を排出されるので、良好な減圧工程を進行させることができる。
【0030】
図4は本発明の木材の熱処理方法を実施する装置の他の例を示している。この例は、図1に示した装置から、上方の熱盤1aの外周縁に沿って密封用枠体15を取り除いたものに実質的に相当する。この装置では、治具10は図1に示す装置と同様にして取り付けられ、熱盤間には木材を熱処理する空間Sのみが形成される。前記した空間S2は形成されない。従って、蒸気の供給および真空引き用の細孔は当然に治具10で囲まれた領域内にのみ形成されると共に、長手方向治具部材11a,11bには蒸気抜きのための穴16が形成されることはない。なお、図1に示した装置におけると同じ機能を奏する部材には同じ符号を付すことにより、詳細な説明は省略する。この装置は、所要形状の木材に対する専用の熱処理装置とする場合に、効果的である。
【0031】
図5は本発明の木材の熱処理方法を実施する装置のさらに他の例を示している。この例は、熱盤に外部に連通する細孔が設けられていない平板プレスを本発明の処理方法に用いる場合に好適な例であり、蒸気噴出用の細孔23aを有する平板状の第1の別部材20aがネジ21aを用いて上方の熱盤1aに固定され、さらに、真空引き用の細孔23bを有する平板状の第2の別部材20bがネジ21bを用いて下方の熱盤1bに固定されている。そして、それぞれの細孔23a、23bは、図1に示した装置の場合と同様に、高圧水蒸気発生源および真空ポンプに接続している。そして、第2の別部材20bには図1の装置と同様にして治具10が装着される。この装置の使用方法は図1に示した装置におけると実質的に同じである。
【0032】
【実施例】
以下、実施例に基づき本発明を説明する。
〔実施例1〕
図1〜図3に示す装置を用い、両熱盤1a,1bの表面には2mmφの細孔3a,3bを40mm間隔で縦横に形成した。上方の熱盤1aの細孔群を高圧水蒸気発生源に接続し、下方の熱盤の細孔群を真空ポンプに接続した。処理材Wとして厚さ20mm×横幅100mm×長さ1200mmのスギ材を用い、それを下方の熱盤に取り付けた治具10内に収容した。上方の熱盤1aの外周部に取り付けた密封用枠体15の高さ16mmとした。
【0033】
治具10は断面矩形状の中実鋼材で構成され、木材Wの長手方向の2つの側面に沿って配置される一対の長手方向治具部材11a,11bは、高さ16mm×横幅50mm×長さ1450mmとした。短手方向の配置される一対の短手方向治具部材12a,12bは、高さ16mm×横幅100mm×長さ100mmとした。
【0034】
治具10内の空間に木材Wを収容した後、長手方向治具部材11bをねじを締め付けて短手方向治具部材12a,12bの側面に衝接するまで移動させた。熱盤温度を200℃に維持した状態で、上方の熱盤1aを治具10の上端面に衝接するまで下降させ、空間Sを密封空間とした。なお、プレス圧は200kgf/cm2 で行った。
【0035】
次に、下方熱盤に形成した細孔群に連続する真空ポンプを稼働させて密封空間を減圧した。真空引きを停止した後、上方熱盤に形成した細孔群から15kgf/cm2 の飽和水蒸気(200℃)を5分間噴出させた。蒸気の供給を停止した後、解圧して処理済の木材を取り出した(実施例品)。実施例品の厚さ方向の密度分布を測定した。密度分布のグラフを図6に示す。また、表面硬度(ブリネル硬度)を測定し、さらに、表面に割れおよび反りが生じているかどうかを目視により観察した。その結果を表1に示す。
【0036】
〔比較例1〕
治具10を用いない以外は、実施例1と同様にしてスギ材の熱処理を行って処理済木材を得た(比較品1)。比較品1の厚さ方向の密度分布を測定した。密度分布のグラフを図7に示す。また、表面硬度(ブリネル硬度)を測定し、さらに、表面に割れおよび反りが生じているかどうかを目視により観察した。その結果を表1に示す。
【0037】
〔比較例2〕
前記の実施例品および比較品1で用いた木材(スギ材)であって無処理のもの(比較品2)について、厚さ方向の密度分布を測定した。密度分布のグラフを図8に示す。また、表面硬度(ブリネル硬度)を測定した。その結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
表1に示されるように、本発明による熱処理方法を施した製品は、表面硬度が治具なしでの処理品および無処理品よりも大きく改善されていることに加え、表面に割れや反りは生じてなく、外観意匠に優れた処理品が得られることががわかる。また、本発明による熱処理方法を施した製品は、図6に示されるように、上方熱盤に接している面(表面)近傍の密度が他の部分と比較して高くなっており、表面特性が大きく改善されていることもわかる。治具を用いない場合での処理品(比較品1)も同じような密度分布特性を示しているが、表1に示すように割れや反りが生じており、商品価値が低下している。
【0040】
【発明の効果】
木材の熱処理方法によれば、従来法に比較して、表面硬度が改善された処理済木材を割れや反りを生じることなく得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の木材の熱処理方法を実施する装置の一例を示す図であり、上下の熱盤が開いた状態を示す。
【図2】図1に示す装置であって、上下の熱盤が閉じた状態を示す図。
【図3】用いる治具を説明するための図。
【図4】本発明の木材の熱処理方法を実施する装置の他の例を示す図。
【図5】本発明の木材の熱処理方法を実施する装置のさらに他の例を示す図。
【図6】実施例品での厚さ方向の密度分布を示すグラフ。
【図7】比較品1での厚さ方向の密度分布を示すグラフ。
【図8】比較品2での厚さ方向の密度分布を示すグラフ。
【符号の説明】
W…処理しようとする木材、1a、1b…熱盤、2a、2b…ヒータ、3a、3b…細孔、4a、4b…配管、10…治具、11a,11b…長手方向治具部材、12a,12b…短手方向治具部材、14a…留めねじ、15…密封用枠体
Claims (4)
- 上下の熱盤を備えたプレス装置の熱盤間で処理すべき木材を加熱し圧縮する行程、圧縮された木材を密封空間内に保持する工程、密封空間内に保持された加熱および圧縮された状態の木材に高圧水蒸気を供給する工程、および密封空間を解圧する工程、とを少なくとも備え、それにより木材の高圧水蒸気処理を行う木材の熱処理方法であって、
処理すべき木材の繊維方向に直交する側の側面を当該木材の厚さよりも高さの低い治具により抑え込み、当該木材の繊維方向に直交する方向への熱による膨張を押さえ付けた状態で前記熱処理を行うことを特徴とする木材の熱処理方法。 - 処理すべき木材の圧縮を熱盤の移動量を制御することにより複数段で行い、最終段の圧縮行程において木材を収容した処理空間が密封空間とされることを特徴とする請求項1記載の木材の熱処理方法。
- 密封空間内に高圧水蒸気を供給する前の工程として、密封空間内を減圧する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載の木材の熱処理方法。
- 治具として蒸気抜きの穴を備えたものを用いることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の木材の熱処理方法。
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JP2021535848A (ja) * | 2018-08-07 | 2021-12-23 | 中国林業科学研究院木材工業研究所 | 密度分布の制御可能な無垢板材の圧密化製造方法 |
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2003
- 2003-05-21 JP JP2003143547A patent/JP2004345175A/ja not_active Withdrawn
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