JP2004344808A - 写真廃液の処理方法 - Google Patents
写真廃液の処理方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004344808A JP2004344808A JP2003146433A JP2003146433A JP2004344808A JP 2004344808 A JP2004344808 A JP 2004344808A JP 2003146433 A JP2003146433 A JP 2003146433A JP 2003146433 A JP2003146433 A JP 2003146433A JP 2004344808 A JP2004344808 A JP 2004344808A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- treatment
- waste liquid
- photographic
- cod
- zeolite
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Silver Salt Photography Or Processing Solution Therefor (AREA)
- Treatment Of Water By Ion Exchange (AREA)
- Water Treatment By Electricity Or Magnetism (AREA)
- Water Treatment By Sorption (AREA)
Abstract
【課題】高濃度のCOD寄与物質及びアンモニア性窒素成分を含んでいる写真廃液に対して下水道への排出基準を満たすレベルまで効果的にCOD及びアンモニア性窒素を低減できる写真廃液処理方法を提示すること。
【解決手段】写真廃液に電解酸化処理を施したのち、アンモニア性窒素化合物吸着処理を施すことを特徴とする写真廃液の処理方法。とくにゼオライトを吸着剤として捕集するのが効果的である。
【選択図】 なし
【解決手段】写真廃液に電解酸化処理を施したのち、アンモニア性窒素化合物吸着処理を施すことを特徴とする写真廃液の処理方法。とくにゼオライトを吸着剤として捕集するのが効果的である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は写真廃液の処理方法に関するもので、より具体的には写真処理廃液のCOD及びアンモニア性窒素を下水道排水基準を満たすレベルまで処理可能な実用的且つ経済的な処理方法に関する。とくに現像所において実施可能な写真廃液のCOD及びアンモニア性窒素低減処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
写真廃液は高濃度のBOD 、COD 、窒素、リンを含み、且つ、生物処理または化学処理によっても難分解性成分が多量に含まれている。写真廃液特にカラー現像液は種々の工業廃液の中でも最も処理が困難なものの1つであって、従来から多くの処理法が開示されているが、除去率・処理コストの両面で尚多くの問題がある。
【0003】
写真廃液処理に関して従来開示されている方法は、主として生物処理、化学処理及び物理処理である。生物処理法は、例えば活性汚泥法によるもので、通常廃液を10〜50倍に希釈したものを処理期間15〜50日でCOD の50〜80%、及びBOD の50〜80%が分解除去出来るとされている。
化学処理は、オゾン酸化法、過酸化水素−第一鉄塩法(フェントン法)、過硫酸酸化法、ハロゲン酸酸化法、電解酸化法等がある。オゾン酸化法は無機COD 成分の分解除去及び現像主剤である芳香族化合物のベンゼン環分解に有効であるが、有機BOD 成分を除去する効果は殆どない。フェントン法は有機・無機成分いずれに対しても効果があるが、処理コストが高い点に問題がある。一般に化学処理によるCOD の除去率は50%程度とされている。
【0004】
物理処理には高圧加熱法、噴霧焼却法、蒸発乾燥法等がある。写真廃液中には多量のハロゲン化物イオンが含まれているので、反応装置の応力腐食が問題となる。また、熱回収のための熱交換器のスケール、残渣、廃ガス等の処理にも問題がある。
【0005】
これらの開示された写真廃液処理手段は、難生分解性のものも含む無機、有機の多種の化合物が混在した写真処理廃液に対しては、COD値の低減を実現してはいるが、排水基準を満たすレベルまで低減させるにはなお酸化活性が十分ではない。そのため、上記した処理手段を組み合わせた複合処理方法が提示されている。
【0006】
複合処理の中でも、電解処理と組み合わせる方式は電解装置がコンパクトで操作も自動化が容易な点で有利であり、例えば特許文献1には、電解酸化処理と生物処理の組み合わせ方式が提示されているが、生物処理はスペースを要する不利があり、かつこの先行例で推奨している生物処理を繰返す操作は工程を複雑にする難点がある。特許文献2では、活性汚泥処理の被処理水を濾別して電解処理する組み合わせ処理が開示されているが、限外ろ過による返送汚泥量の引抜き操作を必要としている点で現像所での実施に困難がある。
【0007】
一方、写真廃水中のアンモニア性窒素の低減に関して、特許文献3に塩素イオンを添加して電解を行い、発生する次亜塩素酸イオンによってアンモニア性窒素を分解する技術が提示されている。この場合は被処理液に塩素イオンを化学両論以上に存在させる必要があるが、写真廃液中の高濃度アンモニア性窒素量に見合う塩素イオンの添加は、処理済み廃水の排出の環境安全性に難点がある。特許文献4には、ゼオライト系の吸着塔でアンモニア成分を捕集し、これに硝化して得た硝酸を通してゼオライトを再生する方法が開示され、特許文献5には、有機廃水中のアンモニアをゼオライトに捕集させ、それを溶出して硝化し、脱窒してゼオライトを再生する廃水処理方法が開示されている。アンモニア性窒素の低減の係るこれらの開示技術は、写真廃水のような高濃度のアンモニア性窒素含有廃水の処理には、処理負荷が大きく多量の吸着剤を必要とするので、その軽減が望まれる。
【0008】
この出願の発明に関連する前記の先行技術には、次ぎの文献がある。
【特許文献1】
特開平4−235786号公報
【特許文献2】
特開平6−320184号公報
【特許文献3】
特開平7−100466号公報
【特許文献4】
特開平10−76294号公報
【特許文献5】
特開平10−80697号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように、高濃度のCOD寄与物質及びアンモニア性窒素成分を含んでいる写真廃液に対して、COD及びアンモニア性窒素を効果的に低減できて、かつ現像所でも実施可能な簡易性を有している廃水処理手段がえられていない。
本発明は、このような背景からなされたものであり、その目的は、写真廃液に対して下水道への排出基準を満たすレベルまで効果的にCOD及びアンモニア性窒素を低減できる写真廃液処理方法を提示することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的の解決方法を見出すために鋭意研究する中で、電解酸化処理では、COD寄与物質及びアンモニア性窒素成分の低減効果が処理の進行とともに低下して行くので電解時間を延長しても十分な低減効果が得られないが、電解酸化処理によって生じた電気分解を受けにくいCOD寄与物質は、アンモニア性窒素の吸着剤に効果的に捕集されるという現象を発見し、この事実をもとにさらに検討を重ねて本発明に到達することができた。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0011】
(1)写真廃液に電解酸化処理を施したのち、アンモニア性窒素化合物吸着処理を施すことを特徴とする写真廃液の処理方法。
(2)アンモニア性窒素化合物吸着処理が、ゼオライト、酸基含有ポリマー及びカチオン交換樹脂から選択される吸着剤による処理であることを特徴とする上記(1)に記載の写真廃液の処理方法。
(3)ゼオライトが、カオリン、モンモリロナイト、ベントナイト、合成ゼオライト、沸石、りん酸ジルコニウム、及びこれらの混合物又は混晶から選択される無機質交換体であることを特徴とする上記(2)に記載の写真廃液の処理方法。
(4)アンモニア性窒素化合物吸着処理が、吸着剤を充填した充填塔に廃液を貫流させる処理であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の写真廃液の処理方法。
【0012】
本発明の写真廃液の処理方法の特徴は、電解酸化処理を施した写真廃液にアンモニア性窒素用吸着剤による吸着捕集処理を施したことにある。写真廃水中のCOD及びアンモニア性窒素分のいずれも電解酸化中に減少するが、前記したように酸化分解速度が減速して分解が進行しなくなる。また、写真廃液にアンモニア性窒素用吸着剤による吸着捕集処理を施しても、アンモニア性窒素成分はかなり捕集されてもCOD寄与物質の捕集効果は大きくない。しかしながら、電解酸化処理を施した写真廃液にアンモニア性窒素用吸着剤による吸着捕集処理を施した場合は、COD及びアンモニア性窒素の予想外の減少が起こり、下水道への排水基準を満たすに至る。電解酸化手段と吸着捕集手段との組み合わせがもたらすこの効果は、電解酸化処理によって、COD寄与物質及びアンモニア性窒素成分のいずれもがそれぞれもとの化合物よりもはるかにアンモニア性窒素用吸着剤に吸着し易い形態に変化したものと解釈される。
【0013】
以下、本発明をさらに具体的に詳述する。
なお、本明細書では「写真処理廃液」とその簡略表現である「写真廃液」は、同義である。
【0014】
【発明の実施の形態】
[被処理廃液]
本発明の実施の形態の説明に先だって、発明の対象である写真処理廃液について述べる。写真処理廃液は、カラー写真或いはモノクローム写真の現像廃液の他、定着廃液または写真製版等写真工業で発生した多くの種類の廃液が含まれている。定着廃液は溶存している銀を回収した残液が処理の対象となる。通常これら種々の写真処理工程からの廃液は混合された状態で回収されて、処理される。
写真廃液を構成する現像廃液は、現像処理の各工程から排出された廃液であって、処理中に感光材料から溶出した例えばゼラチンや感光色素などの成分、処理中に生じた反応生成物、及び処理液処方に含まれて消費されなかった構成薬品(処理液処方の詳細は後述する)などを含んでいる廃液である。
【0015】
したがって、現像廃液には、現像主薬及びその酸化生成物、アルカリ化合物及び緩衝剤、亜硫酸塩やヒドロキシルアミン誘導体などから選択される補恒剤、アルカリハライドなどを主体としており、定着廃液は、チオ硫酸のアンモニウム塩、ナトリウム塩及び/又は亜硫酸のアンモニウム塩及び/又はナトリウム塩、アルカリハライドなどを主体としており、漂白廃液は、ポリアミノポリカルボン酸鉄(III)錯塩などの漂白剤とそれに由来する反応生成物、アルカリハライド(再ハロゲン化剤)、緩衝塩などを主体としており、漂白定着廃液は、定着廃液と漂白廃液に含まれるものとほぼ同様の成分を主体としており、その他の各工程から排出される廃液もそれらの工程液の機能性化合物とそれに由来する化合物を含有している。したがって、処理される写真廃液の成分は、現像液由来の成分や漂白液・定着液・漂白定着液由来の成分などが感光材料溶出物や処理中の反応生成物と混在しており、例えば緩衝剤(炭酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、四ホウ酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩など)、発色現像主薬、亜硫酸塩、ヒドロキシルアミン塩、炭酸塩、硬水軟化剤、アルキレングリコール類、ベンジルアルコール類、界面活性剤(アルキルホスホン酸、アリールホスホン酸、脂肪酸カルボン酸、芳香族カルボン酸等)酸化剤(鉄(III)のEDTA錯塩、1,3−ジアミノ−プロパン四酢酸錯塩など)、ハロゲン化物(臭化アルカリ、臭化アンモニウムなど)、チオ硫酸塩(ナトリウム塩、アンモニウム塩)、酢酸塩など多岐に亘る化学成分を含んでいて、この多様性が効果的な廃液処理手段を見出すことを困難にしている。
【0016】
写真廃液の組成は、処理の種類及びその処理の各工程からの廃液の混合比率によりかなり変動するが、おおよそCOD 30,000〜50,000 mg/l、BOD 5,000 〜15,000 mg/l、TOC(Total Organic Carbon) 10,000〜25,000 mg/l、ケルダール窒素 10,000 〜15,000 mg/l、トータル燐 100〜500mg/l の範囲である。COD:BOD:TOC の比率は概ね 4:1:1.5でCOD が高い特徴があり、またC:N:P の元素比率はほぼ 100:100:1でN の含有率が高い特徴がある。
【0017】
[廃液処理工程]
<電解酸化処理>
電解酸化法について述べる。写真廃液中には、一般的に若干量のハロゲン化イオンが存在するので電解により塩素(ハロゲン)イオンは陽極で酸化されて更に水と反応して次亜塩素酸(次亜ハロゲン酸)イオンが生成するが、廃液中の高濃度のCOD寄与成分やアンモニア性窒素化合物の量には化学量論的に到底及ばない。その反面、写真廃液は高い腐食性をもっているので、電解槽はこれらの成分に耐える耐食性材料である白金、フェライト、ステンレス、酸化皮膜が速やかに形成される鉄、硬質プラスチック等を選択する必要がある。
【0018】
陽極は、酸化され難い耐蝕材質である白金、ステンレス、カーボン(とくにグラファイトや基板上に層形成されたダイヤモンド)、チタン、酸化皮膜が速やかに形成される鉄等が好ましい。
陰極は、電解酸化反応には直接関与しないが、廃液に対して不活性な材質である白金、ステンレス、チタン、カーボン等が好ましい。
例えば、陽極にはステンレス、ダイヤモンド層、酸化皮膜が速やかに形成される鉄を、陰極にはステンレス、チタンなどの材料を用いた電極が好ましい。また、反応液中には多量の懸濁成分が含まれているため、電極への懸濁物の沈澱を防止して均一な酸化反応を起こさせ、電流効率を高めるためには回転電極を用いることも好ましい。
【0019】
本発明においては、電解槽の構造は公知の各種の構成で用いることができる。すなわち、単一室セルであってもよく、又は陽極と陰極が膜で仕切られた分割セルであってもよい。また、電解処理ごとに被処理液を電槽に充填する回分式であっても電解中に被処理液の槽中への供給と槽からの取りだしを行う連続式であってもよい。
最も簡単な実施態様は、単一室セルである。単一室セルでは、陽極と陰極を隔てるバリヤーがなく、したがって溶質は陽極と陰極間を移動するのに制限を受けない。このような単一室方式は、一般的には陽極で酸化された成分がその後陰極で還元されるという可能性を持っているが、写真廃液成分の電気的酸化分解反応の場合は、酸化種の大半は非可逆的な酸化を受けるのでそのリスクの可能性は殆どない。
【0020】
2室セルにおいては、イオン交換膜、ミクロろ過膜、半透膜、多孔性膜例えば多孔性セラミックスなどの通電性隔膜を陽極と陰極の間に挿入する。イオン交換膜はあるタイプのイオン種のみを陽極液から陰極液へ又はその逆方向へ通過させることができる。膜の機能は、陽極液と陰極液が混合することなく電気的中性を保持することである。また、適当な膜を用いれば、その膜を通過して移動するイオンの性質を制御することができる。例えば、陰極室でチオ硫酸イオンや亜硫酸イオンが還元されて生成した硫黄イオンにとって硫化銀が生成して沈殿し、陰極室内で捕集する本発明の好ましい態様が可能である。なかでもイオン交換膜、半透膜、セラミックスなどが両極を分ける隔膜として好ましい。
【0021】
電解酸化処理の温度は常温或いはこれよりやや高い温度が好ましく、また、電圧は5.0 〜8.0 V 、電流密度は、0.5〜100 A/dm2が好ましく、より好ましくは5 〜50 A/dm2がよい。
また、電解は回分法でも連続法の何れでもよい。回分式の好ましい電圧印加方式としては、電解初期(COD低減目標値の2〜10%相当の間)は4〜6A/dm2の比較的低電流密度を適用し、電解の進行と共に電流密度を高めてCOD低減目標値の10%相当程度に電解した後は、定常的な電流密度、例えば12〜20A/dm2 の電流密度を適用することによって電気分解を続けるのも好ましい態様である。
【0022】
写真廃液には、写真処理液由来の界面活性剤が含まれているが、電解酸化中の発泡を抑制するために、さらにノニオン性界面活性剤のような消泡剤を使用することができる。例えば、BASF社によって上市されているPluronic(登録商標)シリーズからのもの、好ましくはPluronic−31R1Polyol(登録商標)(メタノール溶液のポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドとの序列コポリマー)を用いてもよい。しかし、消泡剤を使用する場合、泡の形成を避けるために必要な最低量で使用する。例えば、Pluronic−31R1Polyol(登録商標)消泡剤ではその添加量は、0.15mL/処理廃液L以下でよい。
電解酸化処理の程度にもよるが、好ましい条件ではこの処理過程で廃液中のCOD の10〜60%、多くの場合10〜40%が、またアンモニア性窒素の10〜50%、多くの場合20〜40%が低減される。しかしながら、電解酸化処理の大きな利点は、CODやアンモニア性窒素 の低減作用よりは、前記したように電解酸化処理後の廃液は吸着剤処理による除去が容易になることである。
【0023】
本発明の廃水処理方法における電解酸化処理では、高速度攪拌の電解酸化処理装置を用いると効果が増加する。本発明に適用される高速度電解酸化処理装置には、振動板を備えた攪拌装置を用いて電解液を振動板の振動のよって攪拌させて電解酸化を行なう処理方式も好ましく、振動周波数を適当に選択することによって、極めて高い電解酸化速度とCOD低減効果が得られる。
【0024】
本発明に好ましく用いられる攪拌装置の例としては、振動板を電動機と結合させて電動機の回転を振動板の振動に変換させ、その振動によって電解液に攪拌作用を及ぼさせる方式のものが挙げられる。その振動周波数は、10cycle/sec以上100cycle/sec以下であり、好ましくは15cycle/sec以上80cycle/sec以下であり、より好ましくは20cycle/sec以上60cycle/sec以下である。
【0025】
また、前記の好ましい攪拌装置は、少なくとも1個の振動板を有するものであるが、好ましくは複数個の振動板を配列させた構成である。複数個の振動板からなる攪拌装置の場合は、振動板の配列の形態は、好ましくは振動板の板面が一平面内になるように一列に並べた形態、振動板を板面を並行にして板面方向に直角方向に重ね合わせた多段式の形態、あるいは振動板の板面同士は並行であるが、板面が重ね方向と斜めになるように重ね合わせた斜め多段式形態のいずれであってもよいが、いずれの場合も各振動板の間に液流が確保されるように振動板同士は互いに一定間隔を置いて配列される。その間隔は、1〜200mmであり、好ましくは2〜150mm、より好ましくは、3〜100mmである。
【0026】
また、振動板の形状は矩形、楕円形、梯形、正方形、矩形又は正方形の各稜に丸みを持たせた形のいずれでもよいが、好ましくは矩形又はその稜に丸みを与えた形である。振動板のサイズは、電解酸化槽の大きさに応じて適宜選択することができる。目安としては振動板の片面の面積が電解槽断面積の1/1000〜1/5であり、好ましくは1/50〜1/5である。その厚みは振動板が金属板の場合はその長辺(長径)の1/100〜1/5であり、好ましくは1/10〜1/20であり、振動板が樹脂板の場合は、1/50〜1/5であり、好ましくは1/20〜1/10である。
【0027】
<吸着捕集処理>
上記の電解酸化された写真廃液には、吸着捕集処理が施される。
吸着捕集処理は、本来電解酸化処理では不十分であったアンモニア性窒素の吸着捕集を意図していたので、アンモニア性窒素を吸着し易い吸着剤が選択された。しかしながら、前記したように電解酸化処理後の廃液中のCOD寄与成分とアンモニア性窒素成分はいずれも極めて効果的に捕集される。
【0028】
吸着剤として用いることができる材料は、COD寄与成分とアンモニア性窒素成分を吸着する材料であればいずれでもよいが、好ましくはゼオライト、酸基含有ポリマー及びカチオン交換樹脂から選択される材料である。
ゼオライトは、好ましくはカオリン、モンモリロナイト、ベントナイト、合成ゼオライト、沸石、りん酸ジルコニウム、及びこれらの混合物又は混晶から選択される無機質交換体である。これら例示した無機イオン交換体には、白土、酸性白土、活性白土などの名で呼ばれる好物も含まれる。また、別の分類によるこの様な吸着物質としては、例えば、微粉珪酸、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、カオリン、カオリナイト、ハロイサイト、ナクライト、ディッカイト、パイロフィライト、セリサイト、二酸化チタン、ベントナイトを挙げることができる。
酸基含有ポリマーとしては、アクリル酸又はメタクリル酸等のモノマーの単独重合体、又は他の一般的モノマーとの共重合体、マレイン酸、メタクリル酸等のα、β不飽和酸の単独重合体又は他の一般的モノマーとの共重合体、スルホン酸基を有するポリマー、多価カルボン酸と多価アルコールとのエステル、多価カルボン酸で変性した酸性セルロース誘導体あるいはナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩のポリマー等が挙げられる。
カチオン交換樹脂としては、市販の強酸性イオン交換樹脂、弱酸性イオン交換樹脂を適宜用いることができる。
【0029】
電解酸化処理が施された写真廃液に対する吸着剤の処理方法は、吸着剤を廃液に浸漬する方法、吸着剤を充填したカラムに廃液を通液する充填塔方式などのいずれを用いてもよい。操作の連続性や簡易性の点で後者が好ましい。後者の場合、任意の公知の充填塔を用いることができる。また、通液速度は、吸着剤の粒度や微細構造などによって異なるが、一般的に体積速度(SV)が0.01〜10m3/Hrの範囲から適当な速度が選択される。また、単一吸着塔方式でも、並列方式でもよい。
被処理液のpHは、電解酸化処理後の廃液のpHが1〜10の範囲である限り必ずしも調整しなくてもよいが、好ましくは5〜8の範囲が好ましい。
多くの場合、アンモニア性窒素及びCOD寄与成分の飽和吸着量は、いずれも1〜100、より多くの場合、5〜10mgN/g−吸着剤の程度である。
【0030】
充填塔の吸着容量の限界に達する前に、新しい(あるいは再生処理済み)の充填塔に切替えて通液が続けられる。切替え時期は、通液された被処理液の溶存アンモニア性窒素をイオンメーター(例えばDKK製イオンメーターIOL−50)でチェックしたり、残留CODを溶存酸素計(DOメータ−)を用いるなどによって行うことができる。
使用済み吸着塔からは、捕集したアンモニア性窒素とCOD寄与成分を溶出させて再生することができる。
溶出されたアンモニア性窒素とCOD寄与成分は、十分に濃厚な状態であって、かつ無機塩類が共存していないので、公知の方法で環境安全な状態に処理することができる。例えば、特開平8‐52494号に記載されている方法で捕集物を溶出再生することもできるし、また特開平10−80697号の段落0010に記載の方法に準拠して捕集物を離脱させて硝化脱窒を行うこともできる。あるいは、特開平10‐76294号段落0015及び0016に記載のように捕集物を 担持した吸着塔(充填塔)をそのまま硝化脱窒槽に替えて硝化脱窒処理をおこなってもよい。
【0031】
例えば、生物処理を利用した本発明の典型的な態様を挙げれば、ゼオライト充填層を備えたゼオライト充填塔を2系列用意しておき、一方のゼオライト充填塔に、電解酸化処理済み廃液を通液してCOD寄与成分とアンモニア性窒素成分とを捕集し、もう一方のゼオライト充填槽に通水してゼオライトへの硝化菌の付着を促進させておく。第一の充填層が飽和吸着量に達する前に、通液を切替えて電解酸化処理済み廃液を第二の充填層で捕集が行われるようにする。COD寄与成分とアンモニア性窒素を捕集した第一の充填層には、通水しながら、層の下部から酸素含有ガスを供給して曝気すると、ゼオライト表面に硝化菌が高濃度に固定化されるので、硝化反応が進んでゼオライトの生物再生も行われる。
その他の公知の方法も捕集物の溶出方法や吸着剤の再製方法も採用できる。
【0032】
[写真処理液]
写真処理液は、カラー感光材料と黒白感光材料の処理に用いられるが、処理されるカラー感光材料としてはカラーペーパー、カラー反転ペーパー、撮影用カラーネガフィルム、カラー反転フィルム、映画用ネガもしくはポジフィルム、直接ポジカラー感光材料などを挙げることができ、黒白感光材料としては、Xレイフィルム、印刷用感光材料、マイクロフィルム、撮影用黒白フィルムなどを挙げることができる。
【0033】
本発明に適用される写真処理廃液は、写真処理液成分を主成分としているが、写真処理廃液には、写真処理液に添加されている素材のほか写真処理過程で生成した現像主薬の酸化体、硫酸塩、ハライドなどの反応生成物や、感光材料から溶け出した微量のゼラチン、感光色素、界面活性剤などの成分が含まれている。
【0034】
写真処理液にはカラー処理液、黒白処理液、製版作業に伴う減力液、現像処理タンク洗浄液などがあり、黒白現像液、カラー現像液、定着液、漂白液、漂白定着液、画像安定化液などが挙げられる。
【0035】
カラー現像液は、通常、芳香族第一級アミンカラー現像主薬を主成分として含有する。それは主にp−フェニレンジアミン誘導体であり、代表例はN,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン、2−アミノ−5−ジエチルアミノトルエン、2−メチル−4−〔N−エチル−N−(β−ヒドロキシエチル)アミノ〕アニリン、N−エチル−N−(β−メタンスルホンアミドエチル)−3−メチル−4−アミノアニリンである。また、これらのp−フェニレンジアミン誘導体は硫酸塩、塩酸塩、亜硫酸塩、p−トルエンスルホン酸塩などの塩である。該芳香族第一級アミン現像主薬の含有量は現像液1リットル当り約0.5g〜約10gの範囲である。
【0036】
また黒白現像液中には、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−ヒドロキシメチル−4−メチル−3−ピラゾリドン、N−メチル−p−アミノフェノール及びその硫酸塩、ヒドロキノン及びそのスルホン酸塩などが含まれている。
【0037】
カラー及び黒白現像液には保恒剤として、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、メタ亜硫酸ナトリウム、メタ亜硫酸カリウム等の亜硫酸塩や、カルボニル亜硫酸付加物を含有するのが普通で、これらの含有量は現像液1リットル当たりカラー現像液では5g以下、多くは3g以下(無添加も含む)、黒白現像液では0g〜50gである。
【0038】
カラー及び黒白現像液中には、保恒剤として種々のヒドロキシルアミン類を含んでいる。ヒドロキシルアミン類は置換又は無置換いずれも用いられる。置換体としてはヒドロキシアルミン類の窒素原子が低級アルキル基によって置換されているもの、とくに2個のアルキル基(例えば炭素数1〜3)によって置換されたN,N−ジアルキル置換ヒドロキシルアミン類が挙げられる。またN,N−ジアルキル置換ヒドロキシルアミンとトリエタノールアミンなどのアルカノールアミンの組合せも用いられる。ヒドロキシルアミン類の含有量は現像液1リットル当り0〜5gである。
【0039】
カラー及び黒白現像液は、pH9〜12である。上記pHを保持するためには、各種緩衝剤が用いられる。緩衝剤としては、炭酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、四ホウ酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、グリシン塩、N,N−ジメチルグリシン塩、ロイシン塩、ノルロイシン塩、グアニン塩、3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン塩、アラニン塩、アミノ酪酸塩、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール塩、バリン塩、プロリン塩、トリスヒドロシアミノメタン塩、リシン塩などを用いることができる。特に炭酸塩、リン酸塩、四ホウ酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩は、溶解性やpH9.0以上の高pH領域での緩衝能に優れ、現像液に添加しても写真性能面への悪影響(カブリなど)がなく、安価であるといった利点を有し、これらの緩衝剤が多く用いられる。該緩衝剤の現像液への添加量は通常現像液1リットル当たり0.1モル〜1モルである。
【0040】
その他、現像液中にはカルシウムやマグネシウムの沈澱防止剤として、或いは現像液の安定性向上のために各種キレート剤が添加される。その代表例としてニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ニトリロ−N,N,N−トリメリメチレンホスホン酸、エチレンジアミン−N,N,N′,N′−テトラメチレンホスホン酸、1,3−ジアミノ−2−プロパノール四酢酸、トランスシクロヘキサンジアミン四酢酸、1,3−ジアミノプロパン四酢酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸等を挙げることができる。これらのキレート剤は必要に応じて2種以上併用されることもある。
【0041】
現像液は、各種の現像促進剤を含有する。現像促進剤としては、チオエーテル系化合物、p−フェニレンジアミン系化合物、4級アンモニウム塩類、p−アミノフェノール類、アミン系化合物、ポリアルキレンオキサイド、1−フェニル−3−ピラゾリドン類、ヒドラジン類、メソイオン型化合物、チオン型化合物、イミダゾール類等である。
【0042】
多くのカラーペーパー用カラー現像液は、上記のカラー現像主薬、亜硫酸塩、ヒドロキシルアミン塩、炭酸塩、硬水軟化剤などと共にシルキレングリコール類やベンジルアルコール類を含んでいる。一方カラーネガ用現像液、カラーポジ用現像液、一部のカラーペーパー用現像液は、これらのアルコール類を含んでいない。
【0043】
また、現像液中には、カブリ防止の目的で、臭素イオンを含有することが多いが、塩化銀を主体とする感光材料に対しては臭素イオンを含まない現像液を用いることもある。その他、無機カブリ防止剤としてNaClやKClなどの塩素イオンを与える化合物を含有していることがある。また各種有機カブリ防止剤を含有していていることも多い。有機カブリ防止剤としては、例えば、アデニン類、ベンズイミダゾール類、ベンズトリアゾール類及びテトラゾール類を含有していてせよい。これらのカブリ防止剤の含有量は現像液1リットル当り0.010g〜2gである。これらのカブリ防止剤は処理中に感光材料中から溶出し、現像液中に蓄積するものも含まれる。特に本発明において上記したような臭素イオンや塩素イオン等の総ハロゲンイオン濃度が混合液1リットル当たり1ミリモル以上であるような廃液においても有効に処理することができる。特に臭素イオン濃度が混合液1リットル当たり1ミリモル以上の場合に有効である。
【0044】
また、現像液中には、アルキルホスホン酸、アリールホスホン酸、脂肪酸カルボン酸、芳香族カルボン酸等の各種界面活性剤を含有している。
【0045】
黒白写真処理においては、現像処理の後に定着処理が行なわれる。カラー写真処理においては、現像処理と定着処理の間に通常漂白処理が行なわれ、漂白処理は定着処理と同時に漂白定着(ブリックス)で行なわれることもある。漂白液には、酸化剤として鉄(III) 又はCo(III) のEDTA、ジエチレントリアミン五酢酸、ニトリロトリ酢酸、1,3−ジアミノ−プロパン四酢酸塩、ホスホノカルボン酸塩そのほか過硫酸塩、キノン類などが含まれている。そのほか、臭化アルカリ、臭化アンモニウムなどの再ハロゲン化剤、硼酸塩類、炭酸塩類、硝酸塩類を適宜含有する場合もある。定着液や漂白定着液には通常チオ硫酸塩(ナトリウム塩、アンモニウム塩)、酢酸塩、ホウ酸塩、アンモニウム又はカリ明ばん亜硫酸塩などを含有していている。
【0046】
ハロゲン化銀写真感光材料の処理においては、定着処理あるいは漂白定着処理行なった後、水洗及び/又は安定処理を行なうことが一般的である。水洗処理においては、その処理槽にバクテリアが繁殖し、生成した浮遊物が感光材料に付着する等の問題が生じることがある。このような問題の解決策として、水洗水に特開昭61−131632号に記載のカルシウムイオン、マグネシウムイオンを低減させる方法を用いることができる。また、特開昭57−8542号に記載のイソチアゾロン化合物やサイアベンダゾール類、塩素化イソシアヌール酸ナトリウム等の塩素系殺菌剤、その他ベンゾトリアゾール等、堀口博著「防菌防黴剤の化学」、衛生技術会編「微生物の滅菌、殺菌、防黴技術」、日本防菌防黴学会編「防菌防黴剤事典」に記載の殺菌剤を用いることもある。
【0047】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、これらは本発明の範囲をなんら限定するものではない。
[実施例1]
(廃液の調整)
銀回収系廃液(カラー写真処理CN−16 の定着液、CN−16Qの漂白液と定着液の混合液、CP−20の漂白定着液、CP−23の漂白定着液、および水を各々4、1、3、2、2の体積比で混合した後銀回収処理を施したもの)と現像液系廃液(カラー写真処理CN−16、CN−16Q、CP−20、CP−23各々の現像液および水を各々4、1、3、2、2の体積比で混合したもの)とを体積比で1対1で混合した。このように調製された廃液のpHは7.5であった。この液のCODは45000mg/L、NH4 −Nは8000mg/Lであった。上記した各液CN−16、CN−16Q、CP−20、CP−23、はいずれも富士写真フイルム(株)製の処理液の商品名である。
【0048】
(廃液の処理)
本実施例においては以下A及びBの処理を行った。
A.電解酸化処理
純粋な白金でコーティングしたSHOWA金属チタン陽極((株)昭和製)と、交互に積層したチタン陰極からなる小型電解槽に、上記調整廃液1Lを、600mL/分の速度で電極に直角に循環させた。電流密度は3.5A/dm2 であった。電気分解を定電流電解方式で実施し、電流の強さを10Aに設定した。温度を25℃に維持した。開始時のpHは水酸化ナトリウム水溶液を添加することで9に調整し、24時間電気分解処理を行った。
【0049】
B.ゼオライト吸着法
内径21mmの円筒状カラムに、直径0.5〜1mmの天然ゼオライトであるクリノプチロライト50ml(風乾重量:52g)を充填して反応カラムとした。
廃液を上記のゼオライトを充填した反応カラムに300ml/h(空間速度:SV6h−1)の流速で処理した。
上記A及びBの各処理方法を単独に行った場合と、A及びBを組み合わせた処理を実施した場合の、それぞれの処理後のCOD及びNH4 −Nの測定濃度値を表1に示す。
電気分解後に吸着処理を行った本発明(A→B)では、単独処理からは全く予想できないレベルまでCOD、アンモニア濃度とも減少できており、この効果は吸着処理後に電気分解を用いても発現しないことが示されている。
【0050】
【表1】
【0051】
【発明の効果】
写真廃液に電解酸化処理を施したのち、アンモニア性窒素化合物吸着処理を施すことを特徴とする本発明の写真廃液の処理方法によって、高濃度のCOD寄与物質及びアンモニア性窒素成分を含んでいる写真廃液に対しても効果的にCOD及びアンモニア性窒素を低減できる。
【産業上の利用分野】
本発明は写真廃液の処理方法に関するもので、より具体的には写真処理廃液のCOD及びアンモニア性窒素を下水道排水基準を満たすレベルまで処理可能な実用的且つ経済的な処理方法に関する。とくに現像所において実施可能な写真廃液のCOD及びアンモニア性窒素低減処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
写真廃液は高濃度のBOD 、COD 、窒素、リンを含み、且つ、生物処理または化学処理によっても難分解性成分が多量に含まれている。写真廃液特にカラー現像液は種々の工業廃液の中でも最も処理が困難なものの1つであって、従来から多くの処理法が開示されているが、除去率・処理コストの両面で尚多くの問題がある。
【0003】
写真廃液処理に関して従来開示されている方法は、主として生物処理、化学処理及び物理処理である。生物処理法は、例えば活性汚泥法によるもので、通常廃液を10〜50倍に希釈したものを処理期間15〜50日でCOD の50〜80%、及びBOD の50〜80%が分解除去出来るとされている。
化学処理は、オゾン酸化法、過酸化水素−第一鉄塩法(フェントン法)、過硫酸酸化法、ハロゲン酸酸化法、電解酸化法等がある。オゾン酸化法は無機COD 成分の分解除去及び現像主剤である芳香族化合物のベンゼン環分解に有効であるが、有機BOD 成分を除去する効果は殆どない。フェントン法は有機・無機成分いずれに対しても効果があるが、処理コストが高い点に問題がある。一般に化学処理によるCOD の除去率は50%程度とされている。
【0004】
物理処理には高圧加熱法、噴霧焼却法、蒸発乾燥法等がある。写真廃液中には多量のハロゲン化物イオンが含まれているので、反応装置の応力腐食が問題となる。また、熱回収のための熱交換器のスケール、残渣、廃ガス等の処理にも問題がある。
【0005】
これらの開示された写真廃液処理手段は、難生分解性のものも含む無機、有機の多種の化合物が混在した写真処理廃液に対しては、COD値の低減を実現してはいるが、排水基準を満たすレベルまで低減させるにはなお酸化活性が十分ではない。そのため、上記した処理手段を組み合わせた複合処理方法が提示されている。
【0006】
複合処理の中でも、電解処理と組み合わせる方式は電解装置がコンパクトで操作も自動化が容易な点で有利であり、例えば特許文献1には、電解酸化処理と生物処理の組み合わせ方式が提示されているが、生物処理はスペースを要する不利があり、かつこの先行例で推奨している生物処理を繰返す操作は工程を複雑にする難点がある。特許文献2では、活性汚泥処理の被処理水を濾別して電解処理する組み合わせ処理が開示されているが、限外ろ過による返送汚泥量の引抜き操作を必要としている点で現像所での実施に困難がある。
【0007】
一方、写真廃水中のアンモニア性窒素の低減に関して、特許文献3に塩素イオンを添加して電解を行い、発生する次亜塩素酸イオンによってアンモニア性窒素を分解する技術が提示されている。この場合は被処理液に塩素イオンを化学両論以上に存在させる必要があるが、写真廃液中の高濃度アンモニア性窒素量に見合う塩素イオンの添加は、処理済み廃水の排出の環境安全性に難点がある。特許文献4には、ゼオライト系の吸着塔でアンモニア成分を捕集し、これに硝化して得た硝酸を通してゼオライトを再生する方法が開示され、特許文献5には、有機廃水中のアンモニアをゼオライトに捕集させ、それを溶出して硝化し、脱窒してゼオライトを再生する廃水処理方法が開示されている。アンモニア性窒素の低減の係るこれらの開示技術は、写真廃水のような高濃度のアンモニア性窒素含有廃水の処理には、処理負荷が大きく多量の吸着剤を必要とするので、その軽減が望まれる。
【0008】
この出願の発明に関連する前記の先行技術には、次ぎの文献がある。
【特許文献1】
特開平4−235786号公報
【特許文献2】
特開平6−320184号公報
【特許文献3】
特開平7−100466号公報
【特許文献4】
特開平10−76294号公報
【特許文献5】
特開平10−80697号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように、高濃度のCOD寄与物質及びアンモニア性窒素成分を含んでいる写真廃液に対して、COD及びアンモニア性窒素を効果的に低減できて、かつ現像所でも実施可能な簡易性を有している廃水処理手段がえられていない。
本発明は、このような背景からなされたものであり、その目的は、写真廃液に対して下水道への排出基準を満たすレベルまで効果的にCOD及びアンモニア性窒素を低減できる写真廃液処理方法を提示することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的の解決方法を見出すために鋭意研究する中で、電解酸化処理では、COD寄与物質及びアンモニア性窒素成分の低減効果が処理の進行とともに低下して行くので電解時間を延長しても十分な低減効果が得られないが、電解酸化処理によって生じた電気分解を受けにくいCOD寄与物質は、アンモニア性窒素の吸着剤に効果的に捕集されるという現象を発見し、この事実をもとにさらに検討を重ねて本発明に到達することができた。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0011】
(1)写真廃液に電解酸化処理を施したのち、アンモニア性窒素化合物吸着処理を施すことを特徴とする写真廃液の処理方法。
(2)アンモニア性窒素化合物吸着処理が、ゼオライト、酸基含有ポリマー及びカチオン交換樹脂から選択される吸着剤による処理であることを特徴とする上記(1)に記載の写真廃液の処理方法。
(3)ゼオライトが、カオリン、モンモリロナイト、ベントナイト、合成ゼオライト、沸石、りん酸ジルコニウム、及びこれらの混合物又は混晶から選択される無機質交換体であることを特徴とする上記(2)に記載の写真廃液の処理方法。
(4)アンモニア性窒素化合物吸着処理が、吸着剤を充填した充填塔に廃液を貫流させる処理であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の写真廃液の処理方法。
【0012】
本発明の写真廃液の処理方法の特徴は、電解酸化処理を施した写真廃液にアンモニア性窒素用吸着剤による吸着捕集処理を施したことにある。写真廃水中のCOD及びアンモニア性窒素分のいずれも電解酸化中に減少するが、前記したように酸化分解速度が減速して分解が進行しなくなる。また、写真廃液にアンモニア性窒素用吸着剤による吸着捕集処理を施しても、アンモニア性窒素成分はかなり捕集されてもCOD寄与物質の捕集効果は大きくない。しかしながら、電解酸化処理を施した写真廃液にアンモニア性窒素用吸着剤による吸着捕集処理を施した場合は、COD及びアンモニア性窒素の予想外の減少が起こり、下水道への排水基準を満たすに至る。電解酸化手段と吸着捕集手段との組み合わせがもたらすこの効果は、電解酸化処理によって、COD寄与物質及びアンモニア性窒素成分のいずれもがそれぞれもとの化合物よりもはるかにアンモニア性窒素用吸着剤に吸着し易い形態に変化したものと解釈される。
【0013】
以下、本発明をさらに具体的に詳述する。
なお、本明細書では「写真処理廃液」とその簡略表現である「写真廃液」は、同義である。
【0014】
【発明の実施の形態】
[被処理廃液]
本発明の実施の形態の説明に先だって、発明の対象である写真処理廃液について述べる。写真処理廃液は、カラー写真或いはモノクローム写真の現像廃液の他、定着廃液または写真製版等写真工業で発生した多くの種類の廃液が含まれている。定着廃液は溶存している銀を回収した残液が処理の対象となる。通常これら種々の写真処理工程からの廃液は混合された状態で回収されて、処理される。
写真廃液を構成する現像廃液は、現像処理の各工程から排出された廃液であって、処理中に感光材料から溶出した例えばゼラチンや感光色素などの成分、処理中に生じた反応生成物、及び処理液処方に含まれて消費されなかった構成薬品(処理液処方の詳細は後述する)などを含んでいる廃液である。
【0015】
したがって、現像廃液には、現像主薬及びその酸化生成物、アルカリ化合物及び緩衝剤、亜硫酸塩やヒドロキシルアミン誘導体などから選択される補恒剤、アルカリハライドなどを主体としており、定着廃液は、チオ硫酸のアンモニウム塩、ナトリウム塩及び/又は亜硫酸のアンモニウム塩及び/又はナトリウム塩、アルカリハライドなどを主体としており、漂白廃液は、ポリアミノポリカルボン酸鉄(III)錯塩などの漂白剤とそれに由来する反応生成物、アルカリハライド(再ハロゲン化剤)、緩衝塩などを主体としており、漂白定着廃液は、定着廃液と漂白廃液に含まれるものとほぼ同様の成分を主体としており、その他の各工程から排出される廃液もそれらの工程液の機能性化合物とそれに由来する化合物を含有している。したがって、処理される写真廃液の成分は、現像液由来の成分や漂白液・定着液・漂白定着液由来の成分などが感光材料溶出物や処理中の反応生成物と混在しており、例えば緩衝剤(炭酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、四ホウ酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩など)、発色現像主薬、亜硫酸塩、ヒドロキシルアミン塩、炭酸塩、硬水軟化剤、アルキレングリコール類、ベンジルアルコール類、界面活性剤(アルキルホスホン酸、アリールホスホン酸、脂肪酸カルボン酸、芳香族カルボン酸等)酸化剤(鉄(III)のEDTA錯塩、1,3−ジアミノ−プロパン四酢酸錯塩など)、ハロゲン化物(臭化アルカリ、臭化アンモニウムなど)、チオ硫酸塩(ナトリウム塩、アンモニウム塩)、酢酸塩など多岐に亘る化学成分を含んでいて、この多様性が効果的な廃液処理手段を見出すことを困難にしている。
【0016】
写真廃液の組成は、処理の種類及びその処理の各工程からの廃液の混合比率によりかなり変動するが、おおよそCOD 30,000〜50,000 mg/l、BOD 5,000 〜15,000 mg/l、TOC(Total Organic Carbon) 10,000〜25,000 mg/l、ケルダール窒素 10,000 〜15,000 mg/l、トータル燐 100〜500mg/l の範囲である。COD:BOD:TOC の比率は概ね 4:1:1.5でCOD が高い特徴があり、またC:N:P の元素比率はほぼ 100:100:1でN の含有率が高い特徴がある。
【0017】
[廃液処理工程]
<電解酸化処理>
電解酸化法について述べる。写真廃液中には、一般的に若干量のハロゲン化イオンが存在するので電解により塩素(ハロゲン)イオンは陽極で酸化されて更に水と反応して次亜塩素酸(次亜ハロゲン酸)イオンが生成するが、廃液中の高濃度のCOD寄与成分やアンモニア性窒素化合物の量には化学量論的に到底及ばない。その反面、写真廃液は高い腐食性をもっているので、電解槽はこれらの成分に耐える耐食性材料である白金、フェライト、ステンレス、酸化皮膜が速やかに形成される鉄、硬質プラスチック等を選択する必要がある。
【0018】
陽極は、酸化され難い耐蝕材質である白金、ステンレス、カーボン(とくにグラファイトや基板上に層形成されたダイヤモンド)、チタン、酸化皮膜が速やかに形成される鉄等が好ましい。
陰極は、電解酸化反応には直接関与しないが、廃液に対して不活性な材質である白金、ステンレス、チタン、カーボン等が好ましい。
例えば、陽極にはステンレス、ダイヤモンド層、酸化皮膜が速やかに形成される鉄を、陰極にはステンレス、チタンなどの材料を用いた電極が好ましい。また、反応液中には多量の懸濁成分が含まれているため、電極への懸濁物の沈澱を防止して均一な酸化反応を起こさせ、電流効率を高めるためには回転電極を用いることも好ましい。
【0019】
本発明においては、電解槽の構造は公知の各種の構成で用いることができる。すなわち、単一室セルであってもよく、又は陽極と陰極が膜で仕切られた分割セルであってもよい。また、電解処理ごとに被処理液を電槽に充填する回分式であっても電解中に被処理液の槽中への供給と槽からの取りだしを行う連続式であってもよい。
最も簡単な実施態様は、単一室セルである。単一室セルでは、陽極と陰極を隔てるバリヤーがなく、したがって溶質は陽極と陰極間を移動するのに制限を受けない。このような単一室方式は、一般的には陽極で酸化された成分がその後陰極で還元されるという可能性を持っているが、写真廃液成分の電気的酸化分解反応の場合は、酸化種の大半は非可逆的な酸化を受けるのでそのリスクの可能性は殆どない。
【0020】
2室セルにおいては、イオン交換膜、ミクロろ過膜、半透膜、多孔性膜例えば多孔性セラミックスなどの通電性隔膜を陽極と陰極の間に挿入する。イオン交換膜はあるタイプのイオン種のみを陽極液から陰極液へ又はその逆方向へ通過させることができる。膜の機能は、陽極液と陰極液が混合することなく電気的中性を保持することである。また、適当な膜を用いれば、その膜を通過して移動するイオンの性質を制御することができる。例えば、陰極室でチオ硫酸イオンや亜硫酸イオンが還元されて生成した硫黄イオンにとって硫化銀が生成して沈殿し、陰極室内で捕集する本発明の好ましい態様が可能である。なかでもイオン交換膜、半透膜、セラミックスなどが両極を分ける隔膜として好ましい。
【0021】
電解酸化処理の温度は常温或いはこれよりやや高い温度が好ましく、また、電圧は5.0 〜8.0 V 、電流密度は、0.5〜100 A/dm2が好ましく、より好ましくは5 〜50 A/dm2がよい。
また、電解は回分法でも連続法の何れでもよい。回分式の好ましい電圧印加方式としては、電解初期(COD低減目標値の2〜10%相当の間)は4〜6A/dm2の比較的低電流密度を適用し、電解の進行と共に電流密度を高めてCOD低減目標値の10%相当程度に電解した後は、定常的な電流密度、例えば12〜20A/dm2 の電流密度を適用することによって電気分解を続けるのも好ましい態様である。
【0022】
写真廃液には、写真処理液由来の界面活性剤が含まれているが、電解酸化中の発泡を抑制するために、さらにノニオン性界面活性剤のような消泡剤を使用することができる。例えば、BASF社によって上市されているPluronic(登録商標)シリーズからのもの、好ましくはPluronic−31R1Polyol(登録商標)(メタノール溶液のポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドとの序列コポリマー)を用いてもよい。しかし、消泡剤を使用する場合、泡の形成を避けるために必要な最低量で使用する。例えば、Pluronic−31R1Polyol(登録商標)消泡剤ではその添加量は、0.15mL/処理廃液L以下でよい。
電解酸化処理の程度にもよるが、好ましい条件ではこの処理過程で廃液中のCOD の10〜60%、多くの場合10〜40%が、またアンモニア性窒素の10〜50%、多くの場合20〜40%が低減される。しかしながら、電解酸化処理の大きな利点は、CODやアンモニア性窒素 の低減作用よりは、前記したように電解酸化処理後の廃液は吸着剤処理による除去が容易になることである。
【0023】
本発明の廃水処理方法における電解酸化処理では、高速度攪拌の電解酸化処理装置を用いると効果が増加する。本発明に適用される高速度電解酸化処理装置には、振動板を備えた攪拌装置を用いて電解液を振動板の振動のよって攪拌させて電解酸化を行なう処理方式も好ましく、振動周波数を適当に選択することによって、極めて高い電解酸化速度とCOD低減効果が得られる。
【0024】
本発明に好ましく用いられる攪拌装置の例としては、振動板を電動機と結合させて電動機の回転を振動板の振動に変換させ、その振動によって電解液に攪拌作用を及ぼさせる方式のものが挙げられる。その振動周波数は、10cycle/sec以上100cycle/sec以下であり、好ましくは15cycle/sec以上80cycle/sec以下であり、より好ましくは20cycle/sec以上60cycle/sec以下である。
【0025】
また、前記の好ましい攪拌装置は、少なくとも1個の振動板を有するものであるが、好ましくは複数個の振動板を配列させた構成である。複数個の振動板からなる攪拌装置の場合は、振動板の配列の形態は、好ましくは振動板の板面が一平面内になるように一列に並べた形態、振動板を板面を並行にして板面方向に直角方向に重ね合わせた多段式の形態、あるいは振動板の板面同士は並行であるが、板面が重ね方向と斜めになるように重ね合わせた斜め多段式形態のいずれであってもよいが、いずれの場合も各振動板の間に液流が確保されるように振動板同士は互いに一定間隔を置いて配列される。その間隔は、1〜200mmであり、好ましくは2〜150mm、より好ましくは、3〜100mmである。
【0026】
また、振動板の形状は矩形、楕円形、梯形、正方形、矩形又は正方形の各稜に丸みを持たせた形のいずれでもよいが、好ましくは矩形又はその稜に丸みを与えた形である。振動板のサイズは、電解酸化槽の大きさに応じて適宜選択することができる。目安としては振動板の片面の面積が電解槽断面積の1/1000〜1/5であり、好ましくは1/50〜1/5である。その厚みは振動板が金属板の場合はその長辺(長径)の1/100〜1/5であり、好ましくは1/10〜1/20であり、振動板が樹脂板の場合は、1/50〜1/5であり、好ましくは1/20〜1/10である。
【0027】
<吸着捕集処理>
上記の電解酸化された写真廃液には、吸着捕集処理が施される。
吸着捕集処理は、本来電解酸化処理では不十分であったアンモニア性窒素の吸着捕集を意図していたので、アンモニア性窒素を吸着し易い吸着剤が選択された。しかしながら、前記したように電解酸化処理後の廃液中のCOD寄与成分とアンモニア性窒素成分はいずれも極めて効果的に捕集される。
【0028】
吸着剤として用いることができる材料は、COD寄与成分とアンモニア性窒素成分を吸着する材料であればいずれでもよいが、好ましくはゼオライト、酸基含有ポリマー及びカチオン交換樹脂から選択される材料である。
ゼオライトは、好ましくはカオリン、モンモリロナイト、ベントナイト、合成ゼオライト、沸石、りん酸ジルコニウム、及びこれらの混合物又は混晶から選択される無機質交換体である。これら例示した無機イオン交換体には、白土、酸性白土、活性白土などの名で呼ばれる好物も含まれる。また、別の分類によるこの様な吸着物質としては、例えば、微粉珪酸、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、カオリン、カオリナイト、ハロイサイト、ナクライト、ディッカイト、パイロフィライト、セリサイト、二酸化チタン、ベントナイトを挙げることができる。
酸基含有ポリマーとしては、アクリル酸又はメタクリル酸等のモノマーの単独重合体、又は他の一般的モノマーとの共重合体、マレイン酸、メタクリル酸等のα、β不飽和酸の単独重合体又は他の一般的モノマーとの共重合体、スルホン酸基を有するポリマー、多価カルボン酸と多価アルコールとのエステル、多価カルボン酸で変性した酸性セルロース誘導体あるいはナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩のポリマー等が挙げられる。
カチオン交換樹脂としては、市販の強酸性イオン交換樹脂、弱酸性イオン交換樹脂を適宜用いることができる。
【0029】
電解酸化処理が施された写真廃液に対する吸着剤の処理方法は、吸着剤を廃液に浸漬する方法、吸着剤を充填したカラムに廃液を通液する充填塔方式などのいずれを用いてもよい。操作の連続性や簡易性の点で後者が好ましい。後者の場合、任意の公知の充填塔を用いることができる。また、通液速度は、吸着剤の粒度や微細構造などによって異なるが、一般的に体積速度(SV)が0.01〜10m3/Hrの範囲から適当な速度が選択される。また、単一吸着塔方式でも、並列方式でもよい。
被処理液のpHは、電解酸化処理後の廃液のpHが1〜10の範囲である限り必ずしも調整しなくてもよいが、好ましくは5〜8の範囲が好ましい。
多くの場合、アンモニア性窒素及びCOD寄与成分の飽和吸着量は、いずれも1〜100、より多くの場合、5〜10mgN/g−吸着剤の程度である。
【0030】
充填塔の吸着容量の限界に達する前に、新しい(あるいは再生処理済み)の充填塔に切替えて通液が続けられる。切替え時期は、通液された被処理液の溶存アンモニア性窒素をイオンメーター(例えばDKK製イオンメーターIOL−50)でチェックしたり、残留CODを溶存酸素計(DOメータ−)を用いるなどによって行うことができる。
使用済み吸着塔からは、捕集したアンモニア性窒素とCOD寄与成分を溶出させて再生することができる。
溶出されたアンモニア性窒素とCOD寄与成分は、十分に濃厚な状態であって、かつ無機塩類が共存していないので、公知の方法で環境安全な状態に処理することができる。例えば、特開平8‐52494号に記載されている方法で捕集物を溶出再生することもできるし、また特開平10−80697号の段落0010に記載の方法に準拠して捕集物を離脱させて硝化脱窒を行うこともできる。あるいは、特開平10‐76294号段落0015及び0016に記載のように捕集物を 担持した吸着塔(充填塔)をそのまま硝化脱窒槽に替えて硝化脱窒処理をおこなってもよい。
【0031】
例えば、生物処理を利用した本発明の典型的な態様を挙げれば、ゼオライト充填層を備えたゼオライト充填塔を2系列用意しておき、一方のゼオライト充填塔に、電解酸化処理済み廃液を通液してCOD寄与成分とアンモニア性窒素成分とを捕集し、もう一方のゼオライト充填槽に通水してゼオライトへの硝化菌の付着を促進させておく。第一の充填層が飽和吸着量に達する前に、通液を切替えて電解酸化処理済み廃液を第二の充填層で捕集が行われるようにする。COD寄与成分とアンモニア性窒素を捕集した第一の充填層には、通水しながら、層の下部から酸素含有ガスを供給して曝気すると、ゼオライト表面に硝化菌が高濃度に固定化されるので、硝化反応が進んでゼオライトの生物再生も行われる。
その他の公知の方法も捕集物の溶出方法や吸着剤の再製方法も採用できる。
【0032】
[写真処理液]
写真処理液は、カラー感光材料と黒白感光材料の処理に用いられるが、処理されるカラー感光材料としてはカラーペーパー、カラー反転ペーパー、撮影用カラーネガフィルム、カラー反転フィルム、映画用ネガもしくはポジフィルム、直接ポジカラー感光材料などを挙げることができ、黒白感光材料としては、Xレイフィルム、印刷用感光材料、マイクロフィルム、撮影用黒白フィルムなどを挙げることができる。
【0033】
本発明に適用される写真処理廃液は、写真処理液成分を主成分としているが、写真処理廃液には、写真処理液に添加されている素材のほか写真処理過程で生成した現像主薬の酸化体、硫酸塩、ハライドなどの反応生成物や、感光材料から溶け出した微量のゼラチン、感光色素、界面活性剤などの成分が含まれている。
【0034】
写真処理液にはカラー処理液、黒白処理液、製版作業に伴う減力液、現像処理タンク洗浄液などがあり、黒白現像液、カラー現像液、定着液、漂白液、漂白定着液、画像安定化液などが挙げられる。
【0035】
カラー現像液は、通常、芳香族第一級アミンカラー現像主薬を主成分として含有する。それは主にp−フェニレンジアミン誘導体であり、代表例はN,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン、2−アミノ−5−ジエチルアミノトルエン、2−メチル−4−〔N−エチル−N−(β−ヒドロキシエチル)アミノ〕アニリン、N−エチル−N−(β−メタンスルホンアミドエチル)−3−メチル−4−アミノアニリンである。また、これらのp−フェニレンジアミン誘導体は硫酸塩、塩酸塩、亜硫酸塩、p−トルエンスルホン酸塩などの塩である。該芳香族第一級アミン現像主薬の含有量は現像液1リットル当り約0.5g〜約10gの範囲である。
【0036】
また黒白現像液中には、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−ヒドロキシメチル−4−メチル−3−ピラゾリドン、N−メチル−p−アミノフェノール及びその硫酸塩、ヒドロキノン及びそのスルホン酸塩などが含まれている。
【0037】
カラー及び黒白現像液には保恒剤として、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、メタ亜硫酸ナトリウム、メタ亜硫酸カリウム等の亜硫酸塩や、カルボニル亜硫酸付加物を含有するのが普通で、これらの含有量は現像液1リットル当たりカラー現像液では5g以下、多くは3g以下(無添加も含む)、黒白現像液では0g〜50gである。
【0038】
カラー及び黒白現像液中には、保恒剤として種々のヒドロキシルアミン類を含んでいる。ヒドロキシルアミン類は置換又は無置換いずれも用いられる。置換体としてはヒドロキシアルミン類の窒素原子が低級アルキル基によって置換されているもの、とくに2個のアルキル基(例えば炭素数1〜3)によって置換されたN,N−ジアルキル置換ヒドロキシルアミン類が挙げられる。またN,N−ジアルキル置換ヒドロキシルアミンとトリエタノールアミンなどのアルカノールアミンの組合せも用いられる。ヒドロキシルアミン類の含有量は現像液1リットル当り0〜5gである。
【0039】
カラー及び黒白現像液は、pH9〜12である。上記pHを保持するためには、各種緩衝剤が用いられる。緩衝剤としては、炭酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、四ホウ酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、グリシン塩、N,N−ジメチルグリシン塩、ロイシン塩、ノルロイシン塩、グアニン塩、3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン塩、アラニン塩、アミノ酪酸塩、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール塩、バリン塩、プロリン塩、トリスヒドロシアミノメタン塩、リシン塩などを用いることができる。特に炭酸塩、リン酸塩、四ホウ酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩は、溶解性やpH9.0以上の高pH領域での緩衝能に優れ、現像液に添加しても写真性能面への悪影響(カブリなど)がなく、安価であるといった利点を有し、これらの緩衝剤が多く用いられる。該緩衝剤の現像液への添加量は通常現像液1リットル当たり0.1モル〜1モルである。
【0040】
その他、現像液中にはカルシウムやマグネシウムの沈澱防止剤として、或いは現像液の安定性向上のために各種キレート剤が添加される。その代表例としてニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ニトリロ−N,N,N−トリメリメチレンホスホン酸、エチレンジアミン−N,N,N′,N′−テトラメチレンホスホン酸、1,3−ジアミノ−2−プロパノール四酢酸、トランスシクロヘキサンジアミン四酢酸、1,3−ジアミノプロパン四酢酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸等を挙げることができる。これらのキレート剤は必要に応じて2種以上併用されることもある。
【0041】
現像液は、各種の現像促進剤を含有する。現像促進剤としては、チオエーテル系化合物、p−フェニレンジアミン系化合物、4級アンモニウム塩類、p−アミノフェノール類、アミン系化合物、ポリアルキレンオキサイド、1−フェニル−3−ピラゾリドン類、ヒドラジン類、メソイオン型化合物、チオン型化合物、イミダゾール類等である。
【0042】
多くのカラーペーパー用カラー現像液は、上記のカラー現像主薬、亜硫酸塩、ヒドロキシルアミン塩、炭酸塩、硬水軟化剤などと共にシルキレングリコール類やベンジルアルコール類を含んでいる。一方カラーネガ用現像液、カラーポジ用現像液、一部のカラーペーパー用現像液は、これらのアルコール類を含んでいない。
【0043】
また、現像液中には、カブリ防止の目的で、臭素イオンを含有することが多いが、塩化銀を主体とする感光材料に対しては臭素イオンを含まない現像液を用いることもある。その他、無機カブリ防止剤としてNaClやKClなどの塩素イオンを与える化合物を含有していることがある。また各種有機カブリ防止剤を含有していていることも多い。有機カブリ防止剤としては、例えば、アデニン類、ベンズイミダゾール類、ベンズトリアゾール類及びテトラゾール類を含有していてせよい。これらのカブリ防止剤の含有量は現像液1リットル当り0.010g〜2gである。これらのカブリ防止剤は処理中に感光材料中から溶出し、現像液中に蓄積するものも含まれる。特に本発明において上記したような臭素イオンや塩素イオン等の総ハロゲンイオン濃度が混合液1リットル当たり1ミリモル以上であるような廃液においても有効に処理することができる。特に臭素イオン濃度が混合液1リットル当たり1ミリモル以上の場合に有効である。
【0044】
また、現像液中には、アルキルホスホン酸、アリールホスホン酸、脂肪酸カルボン酸、芳香族カルボン酸等の各種界面活性剤を含有している。
【0045】
黒白写真処理においては、現像処理の後に定着処理が行なわれる。カラー写真処理においては、現像処理と定着処理の間に通常漂白処理が行なわれ、漂白処理は定着処理と同時に漂白定着(ブリックス)で行なわれることもある。漂白液には、酸化剤として鉄(III) 又はCo(III) のEDTA、ジエチレントリアミン五酢酸、ニトリロトリ酢酸、1,3−ジアミノ−プロパン四酢酸塩、ホスホノカルボン酸塩そのほか過硫酸塩、キノン類などが含まれている。そのほか、臭化アルカリ、臭化アンモニウムなどの再ハロゲン化剤、硼酸塩類、炭酸塩類、硝酸塩類を適宜含有する場合もある。定着液や漂白定着液には通常チオ硫酸塩(ナトリウム塩、アンモニウム塩)、酢酸塩、ホウ酸塩、アンモニウム又はカリ明ばん亜硫酸塩などを含有していている。
【0046】
ハロゲン化銀写真感光材料の処理においては、定着処理あるいは漂白定着処理行なった後、水洗及び/又は安定処理を行なうことが一般的である。水洗処理においては、その処理槽にバクテリアが繁殖し、生成した浮遊物が感光材料に付着する等の問題が生じることがある。このような問題の解決策として、水洗水に特開昭61−131632号に記載のカルシウムイオン、マグネシウムイオンを低減させる方法を用いることができる。また、特開昭57−8542号に記載のイソチアゾロン化合物やサイアベンダゾール類、塩素化イソシアヌール酸ナトリウム等の塩素系殺菌剤、その他ベンゾトリアゾール等、堀口博著「防菌防黴剤の化学」、衛生技術会編「微生物の滅菌、殺菌、防黴技術」、日本防菌防黴学会編「防菌防黴剤事典」に記載の殺菌剤を用いることもある。
【0047】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、これらは本発明の範囲をなんら限定するものではない。
[実施例1]
(廃液の調整)
銀回収系廃液(カラー写真処理CN−16 の定着液、CN−16Qの漂白液と定着液の混合液、CP−20の漂白定着液、CP−23の漂白定着液、および水を各々4、1、3、2、2の体積比で混合した後銀回収処理を施したもの)と現像液系廃液(カラー写真処理CN−16、CN−16Q、CP−20、CP−23各々の現像液および水を各々4、1、3、2、2の体積比で混合したもの)とを体積比で1対1で混合した。このように調製された廃液のpHは7.5であった。この液のCODは45000mg/L、NH4 −Nは8000mg/Lであった。上記した各液CN−16、CN−16Q、CP−20、CP−23、はいずれも富士写真フイルム(株)製の処理液の商品名である。
【0048】
(廃液の処理)
本実施例においては以下A及びBの処理を行った。
A.電解酸化処理
純粋な白金でコーティングしたSHOWA金属チタン陽極((株)昭和製)と、交互に積層したチタン陰極からなる小型電解槽に、上記調整廃液1Lを、600mL/分の速度で電極に直角に循環させた。電流密度は3.5A/dm2 であった。電気分解を定電流電解方式で実施し、電流の強さを10Aに設定した。温度を25℃に維持した。開始時のpHは水酸化ナトリウム水溶液を添加することで9に調整し、24時間電気分解処理を行った。
【0049】
B.ゼオライト吸着法
内径21mmの円筒状カラムに、直径0.5〜1mmの天然ゼオライトであるクリノプチロライト50ml(風乾重量:52g)を充填して反応カラムとした。
廃液を上記のゼオライトを充填した反応カラムに300ml/h(空間速度:SV6h−1)の流速で処理した。
上記A及びBの各処理方法を単独に行った場合と、A及びBを組み合わせた処理を実施した場合の、それぞれの処理後のCOD及びNH4 −Nの測定濃度値を表1に示す。
電気分解後に吸着処理を行った本発明(A→B)では、単独処理からは全く予想できないレベルまでCOD、アンモニア濃度とも減少できており、この効果は吸着処理後に電気分解を用いても発現しないことが示されている。
【0050】
【表1】
【0051】
【発明の効果】
写真廃液に電解酸化処理を施したのち、アンモニア性窒素化合物吸着処理を施すことを特徴とする本発明の写真廃液の処理方法によって、高濃度のCOD寄与物質及びアンモニア性窒素成分を含んでいる写真廃液に対しても効果的にCOD及びアンモニア性窒素を低減できる。
Claims (4)
- 写真廃液に電解酸化処理を施したのち、アンモニア性窒素化合物吸着処理を施すことを特徴とする写真廃液の処理方法。
- アンモニア性窒素化合物吸着処理が、ゼオライト、酸基含有ポリマー及びカチオン交換樹脂から選択される吸着剤による処理であることを特徴とする請求項1に記載の写真廃液の処理方法。
- ゼオライトが、カオリン、モンモリロナイト、ベントナイト、合成ゼオライト、沸石、りん酸ジルコニウム、及びこれらの混合物又は混晶から選択される無機質交換体であることを特徴とする請求項2に記載の写真廃液の処理方法。
- アンモニア性窒素化合物吸着処理が、吸着剤を充填した充填塔に廃液を貫流させる処理であることを特徴とする請求項1〜3に記載の写真廃液の処理方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003146433A JP2004344808A (ja) | 2003-05-23 | 2003-05-23 | 写真廃液の処理方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003146433A JP2004344808A (ja) | 2003-05-23 | 2003-05-23 | 写真廃液の処理方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004344808A true JP2004344808A (ja) | 2004-12-09 |
Family
ID=33533289
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003146433A Pending JP2004344808A (ja) | 2003-05-23 | 2003-05-23 | 写真廃液の処理方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004344808A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2010076195A1 (de) * | 2008-12-15 | 2010-07-08 | Süd-Chemie AG | Verfahren zur aufarbeitung stickstoffbelasteter abwässer |
JP2013094693A (ja) * | 2011-10-28 | 2013-05-20 | Spring:Kk | 溶存水素濃度を高めた水素水の製造装置および該水素水の製造方法 |
-
2003
- 2003-05-23 JP JP2003146433A patent/JP2004344808A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2010076195A1 (de) * | 2008-12-15 | 2010-07-08 | Süd-Chemie AG | Verfahren zur aufarbeitung stickstoffbelasteter abwässer |
US8778190B2 (en) | 2008-12-15 | 2014-07-15 | Süd-Chemie Ip Gmbh & Co. Kg | Method for processing waste water loaded with nitrogen-containing compounds |
CN102239119B (zh) * | 2008-12-15 | 2015-05-27 | 南方化学Ip股份有限责任公司 | 处理含氮废水的方法 |
JP2013094693A (ja) * | 2011-10-28 | 2013-05-20 | Spring:Kk | 溶存水素濃度を高めた水素水の製造装置および該水素水の製造方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP3236611B2 (ja) | 液状写真処理廃液の処理方法及び処理装置 | |
US5296111A (en) | Method of treating photographic processing wastes | |
US4217188A (en) | Method for storing developers | |
US4089760A (en) | Method for regenerating waste developers used for processing silver halide photographic materials and method for storing developers | |
JP2005000867A (ja) | 写真廃液の処理方法、処理装置及び銀回収方法 | |
JP2005021743A (ja) | 写真廃液の処理方法 | |
JP2004344808A (ja) | 写真廃液の処理方法 | |
JP2005254146A (ja) | 写真廃液の処理方法 | |
JPH0474593A (ja) | 被酸化性物質含有廃液の処理方法 | |
JP2005034732A (ja) | 写真廃液の処理方法 | |
JP2004337775A (ja) | アンモニウムイオン含有廃水の処理方法及び写真廃液の処理方法 | |
JP2005208529A (ja) | 写真廃液の処理方法、処理装置及び銀回収方法 | |
JP4049711B2 (ja) | 炭酸エチレンなど含有排水処理方法 | |
JPS62133457A (ja) | ハロゲン化銀カラ−写真感光材料の処理方法及び現像液処理装置 | |
Bober et al. | Treatment of photographic processing wastes | |
JP2006098445A (ja) | 写真廃液の処理方法 | |
JP2722147B2 (ja) | 写真廃液の処理方法 | |
JP2006053188A (ja) | 写真廃液処理方法および写真廃液処理装置 | |
JPH05177197A (ja) | 廃水の処理方法 | |
JP2005205248A (ja) | 写真廃液の電解酸化処理方法及び電解酸化処理効率の改良方法 | |
JP2005193188A (ja) | 写真廃液の処理方法 | |
JP2005258122A (ja) | 写真廃液の処理方法 | |
JPH04244299A (ja) | 写真処理廃液の処理方法 | |
JP2005221808A (ja) | 写真廃液の活用方法 | |
JPH04197489A (ja) | 被酸化性物質含有廃液の処理方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
RD04 | Notification of resignation of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424 Effective date: 20060325 |