JP2004342523A - 自発光デバイス - Google Patents

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徹哉 内海
Masaaki Arima
正彰 有馬
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昌幸 原田
Mari Funada
真理 舟田
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Abstract

【課題】ボトムエミッション型の自発光デバイスにおいて、光取出面に凹凸が設けられていない自発光デバイスと比べて実質的に光取出効率が高く、かつ、特定方向の輝度が高く、デバイスから取り出された光を実質的に利用することが可能な自発光デバイスを提供する。
【解決手段】ボトムエミッション型の有機ELデバイスであって、透明基板1は、有機EL素子2が形成された面とは反対側10の面が複数の凹凸を有する凹凸面とされ、凹凸面10は、JIS B0601−1994による算術平均粗さRaと局部山頂の平均間隔Sとの比Ra/Sが0.01以上0.07以下で、かつ、JIS B0601−1994による凹凸の平均間隔Smが、発光層が発する光の波長の内で最も長いものの3倍以上200倍以下、又は局部山頂の平均間隔Sが、発光層が発する光の波長の内で最も長いものの3倍以上200倍以下である。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一対の電極に挟持された発光層を備えた、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機電界発光素子、有機EL素子)や無機エレクトロルミネッセンス素子(無機電界発光素子、無機EL素子)等の自発光素子が基板上に形成され、発光層で発せられた光を基板側から外部へ出射する、ボトムエミッション型の自発光デバイスに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、有機エレクトロルミネッセンスデバイス(有機電界発光デバイス、有機ELデバイス)や無機エレクトロルミネッセンスデバイス(無機電界発光デバイス、無機ELデバイス)等の自発光デバイスによる照明装置やディスプレイが提案されている。このような自発光デバイスは、発光層で発せられた光を基板側からデバイス外部へ取り出すボトムエミッション型のデバイスと、基板とは反対側から取り出すトップエミッション型のデバイスとに大別される。
以上の自発光デバイスの内、ボトムエミッション型の自発光デバイスは、発光層で発せられた光をデバイス外部へ取り出せる光量が少ないことが指摘されている。
【0003】
図11に示すようなボトムエミッション型の有機ELデバイスにおいて、透明基板100に入射した光すべてが、透明基板100の光出射面100aから外部へ出射されるわけではない。例えば、透明基板100とデバイス外部雰囲気(一般には空気)とで規定される光出射面100aの臨界角よりも大きな角度で光出射面110に入射した光は、有機EL素子200側へ反射され、光h1のように透明基板100の端部から外部へ出射してしまい利用することができなかったり、光h2のように有機ELデバイス内で減衰してしまい利用することができなかったりする。
【0004】
そこで、透明基板の光取出側の表面(光取出面)を乱反射面(凹凸面)とするなどして、光の、光取出面における全反射による層中への封じ込めを低減して、光取出効率を高くする従来技術が開示されている(例えば特許文献1を参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−129375号
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、単に光出射面に凹凸を設けただけでは、凹凸面を設けない場合と実質的に光取出効率が変わらない場合もある。
また、光出射面から特定方向へ出射される光の量を多くしなければ、自発光デバイスから取り出された光を実質的に利用することができない。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、ボトムエミッション型の自発光デバイスにおいて、光取出面に凹凸が設けられていない自発光デバイスと比べて実質的に光取出効率が高く、かつ、特定方向の輝度が高く、デバイスから取り出された光を実質的に利用することが可能な自発光デバイスを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る自発光デバイスは、一対の電極に挟持された発光層を備えた自発光素子が基板上に形成され、発光層を基準にして基板側に設けられた部材及び基板が透明とされ、発光層で発せられた光を基板側から外部へ出射し基板は、自発光素子が形成された面とは反対側の面が複数の凹凸を有する凹凸面とされ、凹凸面は、下記条件(i)〜(xvi)のいずれかを満たしており、かつ、下記条件(a)又は(b)を満たしていることを特徴とする自発光デバイス。
【0009】
(i)JIS B0601−1994による算術平均粗さRaと局部山頂の平均間隔Sとの比Ra/Sが0.01以上0.07以下。
(ii)JIS B0601−1994による算術平均粗さRaと局部山頂の平均間隔Sとの比Ra/Sが0.019以上0.07以下。
(iii)JIS B0601−1994による算術平均粗さRaと局部山頂の平均間隔Sとの比Ra/Sが0.029以上0.066以下。
(iv)JIS B0601−1994による算術平均粗さRaと局部山頂の平均間隔Sとの比Ra/Sが0.035以上0.056以下。
(v)JIS B0601−1994による算術平均粗さRaと凹凸の平均間隔Smとの比Ra/Smが0.004以上0.035以下。
(vi)JIS B0601−1994による算術平均粗さRaと凹凸の平均間隔Smとの比Ra/Smが0.008以上0.035以下。
(vii)JIS B0601−1994による算術平均粗さRaと凹凸の平均間隔Smとの比Ra/Smが0.012以上0.035以下。
(viii)JIS B0601−1994による算術平均粗さRaと凹凸の平均間隔Smとの比Ra/Smが0.015以上0.022以下。
(ix)JIS B0601−1994による十点平均粗さRzと局部山頂の平均間隔Sとの比Rz/Sが0.05以上0.30以下。
(x)JIS B0601−1994による十点平均粗さRzと局部山頂の平均間隔Sとの比Rz/Sが0.08以上0.30以下。
(xi)JIS B0601−1994による十点平均粗さRzと局部山頂の平均間隔Sとの比Rz/Sが0.11以上0.25以下。
(xii)JIS B0601−1994による十点平均粗さRzと局部山頂の平均間隔Sとの比Rz/Sが0.15以上0.22以下。
(xiii)JIS B0601−1994による十点平均粗さRzと凹凸の平均間隔Smとの比Rz/Smが0.025以上0.14以下。
(xiv)JIS B0601−1994による十点平均粗さRzと凹凸の平均間隔Smとの比Rz/Smが0.04以上0.14以下。
(xv)JIS B0601−1994による十点平均粗さRzと凹凸の平均間隔Smとの比Rz/Smが0.05以上0.12以下。
(xvi)JIS B0601−1994による十点平均粗さRzと凹凸の平均間隔Smとの比Rz/Smが0.06以上0.10以下。
【0010】
(a)JIS B0601−1994による凹凸の平均間隔Smが、発光層が発する光の波長の内で最も長いものの3倍以上200倍以下。
(b)JIS B0601−1994による局部山頂の平均間隔Sが、発光層が発する光の波長の内で最も長いものの3倍以上200倍以下。
【0011】
また、本発明に係る自発光デバイスは、光出射面を基準として特定方向における輝度が他の方向における輝度よりも高くできるために、発光層を基準にして当該層で発せられた光が取り出される側にプリズムシートを設ければ、任意の方向の輝度を高くすることができる。
【0012】
基板に対して発光層とは反対側に透明部材を設け、当該透明部材の基板とは反対側の面を、前記基板における凹凸面と同様に設計してもよい。
【0013】
なお、本発明に係る自発光デバイスは、特に、自発光素子が有機エレクトロルミネッセンス素子の場合に効果が高い。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図1〜図10において、同一の符号を付して示す構成要素は、それぞれ同等物又は類似物であることを示す。まず、第一の有機ELデバイスについて説明する。
【0015】
《第一の有機ELデバイス》
第一の有機ELデバイスは、図1に示すように、透明基板1の一方の面(光出射面)10に複数の凹凸が設けられ、光入射面11上に有機EL素子2が形成されている、ボトムエミッション型の有機ELデバイスである。
【0016】
〈基板1〉
基板1は、有機EL素子2を支える、主として板状の透明な部材であり、有機EL素子2が形成される面である光入射面11と、光入射面11に対向する側に設けられる光出射面10とを有する。基板1は、有機EL素子2から光入射面11を介して光が入射され、この入射された光を光出射面10からデバイス外部へ出射する。
【0017】
第一の有機ELデバイスでは、光出射面10は、下記条件(i)を満たしている凹凸面とされていることを特徴とする。
(i)JIS B0601−1994による算術平均粗さRaと局部山頂の平均間隔Sとの比Ra/Sが0.01以上0.07以下。
【0018】
また、光出射面10は、好ましくは上記条件(i)の代わりに下記条件(ii)を満たした凹凸面とされ、さらに好ましくは上記条件(i)の代わりに下記条件(iii)を満たした凹凸面とされ、望ましくは上記条件(i)の代わりに下記条件(iv)を満たした凹凸面とされる。
(ii)JIS B0601−1994による算術平均粗さRaと局部山頂の平均間隔Sとの比Ra/Sが0.019以上0.07以下。
(iii)JIS B0601−1994による算術平均粗さRaと局部山頂の平均間隔Sとの比Ra/Sが0.029以上0.066以下。
(iv)JIS B0601−1994による算術平均粗さRaと局部山頂の平均間隔Sとの比Ra/Sが0.035以上0.056以下。
【0019】
なお、上記凹凸面(光出射面10)は、下記条件(a)又は(b)を満たすように設計する。
Sm又はSを下記下限値以上にすると、幾何光学シュミュレーションを行うことが可能となり、作製する有機ELデバイスの光学特性の設計が極めて容易になるからである。
また、Sm又はSを下記上限値以下にすると、実質的に平面と同じになってしまう。すなわち、凹凸が設けられていない状態とほぼ変わりがなくなってしまうからである。
(a)JIS B0601−1994による凹凸の平均間隔Smが、発光層が発する光の波長の内で最も長いものの3倍以上200倍以下。
(b)JIS B0601−1994による局部山頂の平均間隔Sが、発光層が発する光の波長の内で最も長いものの3倍以上200倍以下。
【0020】
基板1は、有機EL素子2を支持/形成可能であり、透明であればどのような材料で形成されていてもよく、一般には、ガラス基板や石英基板、プラスチック基板などが選択される。また、同種又は異種の基板を複数組み合わせた複合シートからなる基板を用いることもできる。
【0021】
なお、本明細書において「透明」とは、素子外部へ取り出す光に対する光透過率が50%以上、好ましくは80%以上、望ましくは90%以上であることを言い、一般には、400〜800nm程度の波長の光(可視光)を素子外部へ取り出す。透過率が低くなるすぎると、発光層からの発光自体が減衰され、発光素子として必要な輝度を得難くなってくる。
【0022】
本願発明者らは、このような範囲内の有機ELデバイスとするとよいことを、以下の実施例及び比較例から見いだした。
実施例及び比較例では、光出射面の算術平均粗さRaと局部山頂の平均間隔Sとの比Ra/Sが0.005以上0.08以下の範囲の値になるようにしたこと以外は、それぞれ同一の条件(材料、膜厚、製法等)の有機ELデバイスを作製した。以下に、実施例及び比較例とした有機ELデバイスの作製方法について記す。
【0023】
まず、板状の透明基板の光出射面において、光出射面における凸にする部分にマスクを用いてフォトレジストによりパターニングし、そしてこの状態でエッチングすることにより、凹凸を有する光出射面10を形成した。光出射面10形成後、粗さ計により、光出射面10の算術平均粗さRaと局部山頂の平均間隔Sとを測定した。
測定後、光入射面11上に、RFスパッタリング法により、ITOにより構成された透明電極としての第一電極(膜厚50nm)20を作製した。第一電極20作製後、有機発光層(TPTEで形成したホール注入輸送層、80nm:DPVBi(93.0重量%)とBCzVBi(7.0重量%)とを共蒸着して形成した有機発光材料含有層、30nm:2,5−ビス(6’−(2’,2”−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロールで形成した電子注入輸送層、20nm)21を真空蒸着装置(カーボンルツボ、蒸着速度0.1nm/s、真空度約5.0×10−5Pa)で作製し、次いで、タングステンボード(蒸着速度1nm/s、真空度約5.0×10−5Pa)で膜厚150nmのアルミニウムの層(第二電極)22を作製し、有機ELデバイスを作製した。作製した有機ELデバイスは、公知の保護膜(パッシベーション膜)で膜封した。
【0024】
[評価1]
作製した有機ELデバイスに、それぞれ同一の電流を流し、光出射面10から出射された光の総量を、輝度測定器を用いて測定した。各有機ELデバイスの光出射面10のRa/Sと、輝度の大きさを、図2のグラフにプロットした。輝度の大きさは、光出射面10に凹凸を設けなかったこと以外は前記した通りに有機EL素子2を形成した有機ELデバイスの輝度を基準とし、この輝度に対する比(輝度比)で表した。そして、本願発明者らは、図2に示す実験結果を以下のように評価した。
【0025】
・光出射面10を、Ra/Sが0.01以上0.07以下の範囲の凹凸面とすると、基準とした有機ELデバイスの1.1倍以上、光出射面10から外部へ光を取り出すことができることが分かった。この理由は、光出射面が平面だと、当該面の臨界角より大きな角度で入射する光は透明基板内へ全反射してしまうが、光出射面が凹凸面だと、様々な角度の接線を備えるために、従来は光出射側へ取り出されなかった光の一部又は全部を取り出すことができるからである。
【0026】
また、以上のことから、光出射面10を、Ra/Sが0.01を超えない範囲の凹凸面としても、実質的に、基準とした有機ELデバイスとほぼ同量の光しか光出射面10から外部へ取り出すことができないことを見いだした。つまり、取出に好適な凹凸面を有していなければ、光出射面を平面にした場合と光取出量はほとんど変わらないことが分かった。
【0027】
・光出射面10を、Ra/Sが0.019以上0.07以下の範囲の凹凸面とすると、基準とした有機ELデバイスの1.2倍以上、光出射面10からデバイス外部へ光を取り出すことができることが分かった。つまり、上記条件は、光取出に好適な条件であることを見いだした。
【0028】
・光出射面10を、Ra/Sが0.029以上0.066以下の範囲の凹凸面とすると、基準とした有機ELデバイスの1.3倍以上、光出射面10からデバイス外部へ光を取り出すことができ、光取出効率が極めて高くなることが分かった。
【0029】
・光出射面10を、Ra/Sが0.035以上0.056以下の範囲の凹凸面とすると、基準とした有機ELデバイスの1.4倍以上、光出射面10からデバイス外部へ光を取り出すことができ、光取出効率が特に高くなることが分かった。
【0030】
[評価2]
以上のようにして作製した各有機ELデバイスの、光出射面10における各出射方向の色度を調べた結果、Ra/Sが0.01以上0.07以下の範囲では、出射方向による色度の相違はほとんどなかった。つまり、色度の角度依存性がなかった。
これは、光出射面10の凹凸は、それぞれ様々な方向へ光を拡散する最適な形状を有しているためと考えられる。つまり、光出射面10の形状が最適化されているため、光出射面10における各出射方向おいて各波長の光の輝度の角度依存性がなくなったと考えられる。
【0031】
[評価3]
上記各有機ELデバイスについて、光出射面10における各出射方向の輝度を調べた結果、いずれのデバイスも、他の出射方向と比べて輝度が高い方向を有していた。このように、すべての出射方向に対して一様に輝度が高いのではないため、特定方向の輝度を高くすることが要求される用途、例えばディスプレイや照明装置などに好適であることが分かった。
次に、有機EL素子2について説明する。
【0032】
〈有機EL素子2〉
有機EL素子2は、図1に示すように、一対の電極20、22に、有機発光材料が含有された発光層としての有機発光層21が狭持されてなる、所定の色の光(所定の波長の光/所定の色度の光)を発する素子であり、公知の有機EL素子を適宜採用できる。
【0033】
[第一電極20]
第一の有機ELデバイスでは、第一電極20は、有機発光層21よりも光取出側に設けられるため、透明である必要がある。第一電極20は陽極としても陰極としてもよいが、第一電極(透明電極)形成用の材料は、有機発光層21にキャリア(正孔/電子)を効率よく注入することができるものが望ましい。
【0034】
陽極としては、一般には、仕事関数4.5eV〜5.5eVの物質が好ましい。具体的には、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム(IZO)、酸化インジウム(In)、酸化錫(SnO)及び酸化亜鉛(ZnO)のいずれかを主組成としたものが好ましい。
これらの酸化物は、その化学両論組成から多少偏倚していてもよい。ITOにおけるInに対するSnOの混合比は、1〜20wt%、さらには5〜12wt%が好ましい。IZOにおけるInに対するZnOの混合比は、通常、12〜32wt%程度である。なお、透明電極1全体の平均値としてこのような組成で有れば、膜厚方向に濃度勾配を持っていてもよい。
その他、Sn、Ti、Pb等が酸化物の形で、酸化物換算にして1wt%以下含まれていてもよい。
【0035】
陰極は、有機層に電子を注入する電極であり、電子注入効率を高くするために仕事関数が例えば4.5eV未満、一般には4.0eV以下、典型的には3.7eV以下の金属や合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物が電極物質として採用される。
このような材料としては、陽極に採用できる材料として挙げたものも採用でき、また、次のような材料も採用されうる。
例えば、超薄膜のマグネシウム−銀合金に透明な導電性酸化物を積層化して形成された電極などが採用される。また、この陰極において、導電性酸化物をスパッタリングする際に発光層などがプラズマにより損傷するのを防ぐため、銅フタロシアニンなどを添加したバッファ層を陰極と有機発光層21との間に設けるとよい。
【0036】
[有機発光層21]
有機発光層21は、第一電極20及び第二電極22から注入されたキャリア(電子及び正孔)の内、少なくとも一方を輸送して再結合させ、励起子を作成し、励起子が基底状態戻る際にエレクトロルミネッセンス(光)を発する層であり、主として有機材料によりなる。
【0037】
有機材料は、有機発光層21に要求される以上の機能を有機発光層21に付与する材料であってもよく、また、各機能をそれぞれ異なる材料が有機発光層21に付与してもよい。このような材料としてはAlq3やDCMなど、公知の有機EL素子の有機発光層に用いられる材料を適宜採用すればよい。
【0038】
さらに、有機発光層21を積層構造として、上記機能を各層に分担させて実現させてもよい。この場合、エレクトロルミネッセンスを生成する蛍光材料や燐光材料等の材料(有機発光材料)を含有する層を特に有機発光材料含有層と表記する。
例えば、陰極からの電子注入機能を担う電子注入層や電子注入輸送層を陰極との界面に設けてもよい。また、電子輸送機能を担う電子輸送層を、陰極や電子注入層と有機発光材料含有層との間に設けてもよい。陽極からの正孔(ホール)注入機能を担うホール注入層やホール注入輸送層を設けてもよく、ホール輸送機能を担うホール輸送層を設けてもよい。
採用する層構成及び当該層を構成する材料としては公知の有機EL素子と同様の層構成及び材料を適宜採用すればよい。
【0039】
発光色の調整は、公知の有機EL素子における発光色の調整法を適宜採用でき、例えば以下のような調整法を採用することもできる。
・励起子から基底状態に戻る際にエレクトロルミネッセンスを発する機能を有機発光層21に付与する材料(有機発光材料)の種類の選択。
・有機発光層21に添加する有機材料や有機発光材料の混合比の調整。
・有機発光材料の混入量の調整。
・有機発光層21の膜厚の調整。
・公知のカラーフィルタ層を有機ELデバイスに設けて、デバイス外部へ出射される光の波長を制限する。
・入射された光の波長を変更する公知の波長変換材料を混合する。
・有機発光材料を複数混合することで、複数色を発して、その加色を表現する。
・発光を促進したり阻害したりする材料を添加して発光色を調整する。
・有機発光層21に流す電流量によって発光色を調整する。
【0040】
[第二電極22]
第二電極22は、第一電極が陽極の場合には陰極とされ、第一電極が陰極の場合には陽極とされる。したがって、陽極/陰極に要求される前記した条件を具備する、公知の有機EL素子に採用される材料であれば適宜採用することができ、前記した第一電極20形成用の材料を採用することもできる。
【0041】
ただし、有機発光層21から光取出側とは反対側に出射された光を光取出側へ反射してデバイスの光取出効率を高くしたり、有機EL素子2非発光時に光取出側から入射された光を光取出側へ反射したりするために、第二電極22は好ましくは光反射機能を備えているとよい。第二電極22に光反射機能を付与する材料としては、陽極/陰極に要求される前記した条件を具備し、かつ、有機発光層21で発せられる波長の光や外部から入射された光等の、光出射面11からデバイス外部へ取り出す波長の光を少なくとも反射する性質を有する、公知の有機EL素子に採用される金属や合金等を適宜採用できる。
【0042】
また、以上に記載した以外の、公知の有機EL素子に採用される層や部材を適宜組み合わせて用いることができる。例えば、第二電極22に光反射機能を付与せず、有機発光層21を基準にして光取出側とは反対側に光反射部材を設けてもよく、また、有機EL素子2中に半透過半反射部材(ハーフミラー)を設けてもよい。
次に、第一の有機ELデバイスの作製方法について説明する。
【0043】
〈作製方法〉
第一の有機ELデバイスは、基板1の光出射面10に前記した条件を具備する微小凹凸を複数形成する公知の基板加工方法と、光入射面11上に有機EL素子2を構成する各層を順次形成する公知の有機EL素子の作成方法とを用いることで作製できる。例えば次のように作製してもよい。
【0044】
まず、図3(a)に示すように、平板状の透明基板1’を用意する。この透明基板1’の一方の面(光出射面)10’に、これから形成しようとする凹部と凸部の配置に対応したパターンのマスクを用いてフォトレジスト等によりパターニングする。そして、この状態でエッチングを施すことにより図3(b)に示すような凹凸面10を形成する。
【0045】
次いで、図3(c)に示すように、透明基板1の光入射面11上に、第一電極20、有機発光層21、第二電極22を、それぞれ基板1側に接する層の表面に順次積層する。
以上のようにして有機ELデバイスを作製できる。
【0046】
なお、透明基板1の光出射面10は、エッチングにより形成する代わりに、他の基板加工方法を採用することができる。例えば、サンドブラストによる表面処理法を採用することもできる。また、凹凸状の内面を有する型に溶融した透明な樹脂やガラス等を流し込み、光出射面10を有する基板1を作製してもよい。
【0047】
また、光出射面(凹凸面)10は、透明基板1上に有機EL素子2を設けた後に形成してもよい。この場合にも、前記同様の手法により凹凸面を作製できるが、サンドブラストによる表面処理法を用いて凹凸面を作製することが好ましい。この表面処理法を用いれば、有機EL素子2を特に保護することなく、サンドを光出射面10側にぶつけるだけで凹凸面が形成できるからである。
【0048】
さらに、透明基板1に有機EL素子2を設けた後に、光出射面10を凹凸面にする場合には、凹凸面を形成するとともに、透明基板1を薄くしてもよい。例えば、サンドブラストによる表面処理法を採用した場合、光出射面10側全面にサンドをぶつけることで、凹凸面を形成するだけでなく、透明基板1の厚さも薄くできる。
【0049】
このように、透明基板1に有機EL素子2を設けた後に凹凸面を形成する手法が優れているのは、有機EL素子2を形成する際には、透明基板1に所定の厚さ/強度/平面平滑性があるために、有機EL素子2を構成する各層をそれぞれ均一に作製できる点と、有機EL素子2が形成された後には、有機ELデバイスとして特になくてもよい透明基板1の厚さを薄くでき、かつ、光取出効率等を高くできる点にある。
透明基板1の厚さを薄くすれば、有機発光層21から発せられた光が透明基板1内で減衰する量を減らすことができたり、作製した有機ELデバイスの大きさ(厚さ)を薄くできたり、軽くできたりする。
【0050】
〈作用効果〉
本実施の形態にかかる有機ELデバイスは、以上の構成を備えているために、以下の作用効果を得ることができる。
【0051】
・高い光取出効率
前記したように光出射面を最適化したために、光出射面が平面である従来の有機ELデバイスよりも実質的に高い光取出効率が得られる。
換言すると、単に光出射面に凹凸を設けただけでは得られない性能が得られる。
【0052】
・特定方向の輝度の向上
発光時において、光出射面を基準にして特定の方向における輝度が、他の方向における輝度よりも高くなる。また、この特定の方向は、Ra/Sを変えることで変わることも分かった。
これは、凹の集光効果や、凹凸による反射や屈折によるものと考えられる。
したがって、出射光を有効に利用することができるため、第一の有機ELデバイスは、特定方向の輝度が他の方向の輝度よりも高いことが要求されるデバイス(例えばディスプレイや照明装置等)に特に好適に採用できる。
【0053】
・反射特性の向上
前記したように有機ELデバイスを設計したために、有機ELデバイスに入射した光を防止し、映り込みを防ぐことができる。
【0054】
・色度特性の向上
発光時において、光出射側10における各出射方向において色度が均一になる。
これは、光出射面10に微小凹凸が形成されるため、各波長の光についてもそれぞれ様々な方向へ拡散でき、光出射面10における出射方向おいて各波長の光の輝度の角度依存性が極めて小さくなったためと考えられる。
【0055】
〈別例〉
なお、第一の有機EL素子は以下のように変形することもできる。また、以下の変形例を適宜組み合わせて用いることもできる。
【0056】
[別例1:透明基板1よりも光取出側に設けた部材に凹凸を設ける]
基板1の光出射面10に凹凸を設けるのでなく、図4に示すように、透明基板1よりも光取出側に、上記条件を具備した凹凸面30を有する部材3を設けても、前記同等の効果が得られる。
例えば、一方の面を、前記した条件を具備する凹凸面とした透明樹脂からなるフィルムを、凹凸面と反対側の面が透明基板1の光出射面10と向かい合うようにして貼り合わせてもよい。なお、本明細書においては、以上のように光出射面10よりも光取出側に前記条件を具備した凹凸面を備えた部材を貼り合わせたデバイスも、透明基板1の光出射面10側に前記条件を具備した凹凸面を備えたデバイスに含める。
【0057】
このように、透明基板1よりも光取出側に、前記条件を具備した凹凸面を備えた透明部材を配置する場合には、当該部材の屈折率を基板の屈折率と同等程度にし、上記部材と基板との間の屈折率を、両者の中間の屈折率にするとよい。両者を密着させると好ましい。
また、上記部材にその他の機能を持たせてもよい。例えば、入射された光の波長を変更する部材を含有させたり、蛍光材料や燐光材料を含有させたり、カラーフィルタにしたりしてもよい。
以上のように透明部材に凹凸を設ければ、凹凸を形成可能不能な/困難な基板であっても使用することができる。
【0058】
[別例2:無機EL素子にする]
上記実施の形態において、有機EL素子2の代わりに無機EL素子を形成した自発光デバイスとしてもよい。図5に示すように、無機EL素子4は、硫化亜鉛等の無機材料を主材料とする無機発光材料含有層412を酸化シリコン等の一対の絶縁層411、413で挟んだ三層構造の無機発光層41が、透明な第一電極40と、金属等で構成されて反射層としても機能する第二電極42とで挟まれている。この素子に、電極間に200V程度の高交流電圧が印加されると、無機発光層412と絶縁層411、413との界面から放出される電子が加速し、無機発光層412中のドーパント原子が励起して光(エレクトロルミネッセンス)が生じ、この光が透明な電極40側から素子外部へ出射される。
【0059】
[別例3:プリズムシートを設ける]
図6に示すように、発光層を基準にして光取出側にプリズムシート5を一枚乃至複数枚設けてもよい。
本実施の形態に係る有機ELデバイスは、前記したように、凹凸面のRa/Sに応じて特定方向の輝度を高くできる。したがって、この特定方向へ出射された光の進行方向を、光出射面の法線方向へ変える一又は複数のプリズムシート5を光取出側に設ければ、光出射面の法線方向、すなわちデバイスの正面方向の輝度を高くできる。なお、正面方向以外の輝度を高くするようにしてもよいことは当然である。
プリズムシート5は、有機ELデバイスの出射特性に合わせて公知の最適なシートを適宜選択すればよく、有機ELデバイスとプリズムシート5とを組み合わせは、公知の組み合わせ方法や組み合わせ部材を用いて実現できる。
【0060】
[別例4:液晶表示装置のバックライトとして用いる]
第一の有機ELデバイスを照明装置として用いてもよい。
また、液晶表示装置のバックライト(背後光源)としても好適に用いることができる。これは、第一の有機ELデバイスが前記したように、従来の有機ELデバイスと比べて光取出量が多く、輝度むらが少なく、高い反射特性を有し、かつ、鏡面反射をしないからである。したがって、第一の有機ELデバイスを液晶表示装置のバックライトとして用いた場合には、従来の有機ELデバイスをバックライトとして用いた場合よりも、輝度が高く、輝度むらが少なく、非発光時にも表示を鮮明に視認させることが可能になる。
【0061】
例えば図7に示すように、液晶表示パネル6は、公知の透過型の液晶表示パネルや半透過型の液晶表示パネルが採用され、非表示面61が有機ELデバイスの光出射面10と向かい合うように配置される。つまり、液晶表示パネル6は、液晶表示装置外部からは表示面60が視認されるように配置される。
この液晶表示装置では、装置外部が十分に明るい場合には、有機EL素子2を光らせなくても液晶表示パネル6の表示を良好に視認することができる。また、装置外部に十分な明るさがない場合には、有機EL素子2を光らせて液晶表示パネル6の表示を視認することができる。
このように、第一の有機ELデバイスをバックライトとして備えた有機EL装置は、太陽光の下のような明るい場所でも、室内や夜のように暗い場所でも、鮮明な表示が可能になる。また、外光が十分に明るい場合には有機EL素子2を光らせる必要がないため、バックライトを備えた従来の液晶表示装置よりも消費電力を小さくできる。
【0062】
[別例5:ディスプレイにする]
第一の有機ELデバイスに公知の有機EL素子用駆動方式と組み合わせてディスプレイとしてもよい。有機EL素子用駆動方式としては、例えば、パッシブマトリックス方式を採用してもよく、アクティブマトリックス方式を採用してもよい。
【0063】
パッシブマトリックス方式では、走査電極と信号電極とによるXYマトリクス電極構成において、マトリクスを構成する各格子点に表示素子(有機EL素子2)が接続され、有機EL素子2は線順次駆動により駆動(発光)される。
【0064】
アクティブマトリックス方式では、表示素子(有機EL素子2)、すなわち画素/サブピクセルごとに、スイッチ素子及び保持素子を備える駆動方式である。表示素子(有機EL素子2)は、走査電極と信号電極とのマトリックス交差部に配置されることになる。スイッチにはTFTを用いることが好ましい。
以下、第二の有機ELデバイスについて説明する。
【0065】
《第二の有機ELデバイス》
第二の有機ELデバイスは、以下の点を除いて第一の有機ELデバイスと同様に構成でき、また第一の有機ELデバイスと同様に変形できる。
【0066】
第二の有機ELデバイスは、第一の有機ELデバイスにおいて、上記条件(i)の代わりに下記(v)〜(viii)のいずれかの条件を満たすようにされたことを特徴とする。
(v)JIS B0601−1994による算術平均粗さRaと凹凸の平均間隔Smとの比Ra/Smが0.004以上0.035以下。
(vi)JIS B0601−1994による算術平均粗さRaと凹凸の平均間隔Smとの比Ra/Smが0.008以上0.035以下。
(vii)JIS B0601−1994による算術平均粗さRaと凹凸の平均間隔Smとの比Ra/Smが0.012以上0.035以下。
(viii)JIS B0601−1994による算術平均粗さRaと凹凸の平均間隔Smとの比Ra/Smが0.015以上0.022以下。
【0067】
なお、上記条件(v)〜(viii)のいずれの条件を具備する場合であっても、前記した理由により、上記凹凸面は下記(a)又は(b)を満たすように設計される。
(a)JIS B0601−1994による凹凸の平均間隔Smが、発光層が発する光の波長の内で最も長いものの3倍以上200倍以下。
(b)JIS B0601−1994による局部山頂の平均間隔Sが、発光層が発する光の波長の内で最も長いものの3倍以上200倍以下。
【0068】
本願発明者らは、このような範囲内の有機ELデバイスとするとよいことを、以下の実施例及び比較例から見いだした。
実施例及び比較例では、光出射面10のRa/Smを、0.001以上0.04以下の値に適宜変更したこと以外は、第一の有機ELデバイスにおける実施例と同一の条件(材料、膜厚、製法等)の有機ELデバイスを作製した。
【0069】
[評価4]
作製した有機ELデバイスに、それぞれ同一の電流を流し、光出射面10から出射された光の総量を、輝度測定器を用いて測定した。各有機ELデバイスの光出射面10のRa/Smと、輝度の大きさを、図8のグラフにプロットした。輝度の大きさは、光出射面10に凹凸を設けなかったこと以外は前記した通りに有機EL素子2を形成した有機ELデバイスの輝度を基準とし、この輝度に対する比(輝度比)で表した。そして、本願発明者らは、図8に示す実験結果を以下のように評価した。
【0070】
・光出射面10を、Ra/Smが0.004以上0.035以下の範囲の凹凸面とすると、基準とした有機ELデバイスの1.1倍以上、光出射面10から外部へ光を取り出すことができることが分かった。これは、光出射面が凹凸面だと、様々な角度の接線を備えるために、従来は光出射側へ取り出されなかった光の一部又は全部を取り出すことができるからである。
【0071】
換言すれば、光出射面10を、Ra/Smが0.004を超えない範囲の凹凸面としても、実質的に、基準とした有機ELデバイスとほぼ同量の光しか光出射面10から外部へ取り出すことができないことを見いだした。つまり、光取出に好適な凹凸面を有していなければ、光出射面を平面にした場合と光取出量はほとんど変わらないことが分かった。
【0072】
・光出射面10を、Ra/Smが0.08以上0.035以下の範囲の凹凸面とすると、基準とした有機ELデバイスの1.2倍以上、光出射面10からデバイス外部へ光を取り出すことができることが分かった。つまり、上記条件は、光取出に好適な条件であることを見いだした。
【0073】
・光出射面10を、Ra/Smが0.012以上0.035以下の範囲の凹凸面とすると、基準とした有機ELデバイスの1.3倍以上、光出射面10からデバイス外部へ光を取り出すことができ、光取出効率が極めて高くなることが分かった。
【0074】
・光出射面10を、Ra/Smが0.015以上0.022以下の範囲の凹凸面とすると、基準とした有機ELデバイスの1.4倍以上、光出射面10からデバイス外部へ光を取り出すことができ、光取出効率が特に高くなることが分かった。
【0075】
[評価5]
以上のようにして作製した各有機ELデバイスの、光出射面10における各出射方向の色度を調べた結果、Ra/Smが0.004以上0.035以下の範囲では、出射方向による色度の相違はほとんどなかった。つまり、色度の角度依存性がなかった。
これは、光出射面10の凹凸は、それぞれ様々な方向へ光を拡散する最適な形状を有しているためと考えられる。つまり、光出射面10の形状が最適化されているため、光出射面10における各出射方向おいて各波長の光の輝度の角度依存性がなくなったと考えられる。
【0076】
[評価6]
上記各有機ELデバイスについて、光出射面10における各出射方向の輝度を調べた結果、いずれのデバイスも、他の出射方向と比べて輝度が高い方向を有していた。このように、すべての出射方向に対して一様に輝度が高いのではないため、特定方向の輝度を高くすることが要求される用途、例えばディスプレイや照明装置などに好適であることが分かった。
次に、第三の有機ELディスプレイについて説明する。
【0077】
《第三の有機ELデバイス》
第三の有機ELデバイスは、以下の点を除いて第一の有機ELデバイスと同様に構成でき、また第一の有機ELデバイスと同様に変形できる。
【0078】
第三の有機ELデバイスは、第一の有機ELデバイスにおいて、上記条件(i)の代わりに下記(ix)〜(xii)のいずれかの条件を満たすようにされたことを特徴とする。
(ix)JIS B0601−1994による十点平均粗さRzと局部山頂の平均間隔Sとの比Rz/Sが0.05以上0.30以下。
(x)JIS B0601−1994による十点平均粗さRzと局部山頂の平均間隔Sとの比Rz/Sが0.08以上0.30以下。
(xi)JIS B0601−1994による十点平均粗さRzと局部山頂の平均間隔Sとの比Rz/Sが0.11以上0.25以下。
(xii)JIS B0601−1994による十点平均粗さRzと局部山頂の平均間隔Sとの比Rz/Sが0.15以上0.22以下。
【0079】
なお、上記条件(v)〜(viii)のいずれの条件を具備する場合であっても、前記した理由により、上記凹凸面は下記(a)又は(b)を満たすように設計される。
(a)JIS B0601−1994による凹凸の平均間隔Smが、発光層が発する光の波長の内で最も長いものの3倍以上200倍以下。
(b)JIS B0601−1994による局部山頂の平均間隔Sが、発光層が発する光の波長の内で最も長いものの3倍以上200倍以下。
【0080】
本願発明者らは、このような範囲内の有機ELデバイスとするとよいことを、以下の実施例及び比較例から見いだした。
実施例及び比較例では、光出射面10のRz/Sを、0.02以上0.35以下の値に適宜変更したこと以外は、第一の有機ELデバイスにおける実施例と同一の条件(材料、膜厚、製法等)の有機ELデバイスを作製した。
【0081】
[評価7]
作製した有機ELデバイスに、それぞれ同一の電流を流し、光出射面10から出射された光の総量を、輝度測定器を用いて測定した。各有機ELデバイスの光出射面10のRz/Sと、輝度の大きさを、図9のグラフにプロットした。輝度の大きさは、光出射面10に凹凸を設けなかったこと以外は前記した通りに有機EL素子2を形成した有機ELデバイスの輝度を基準とし、この輝度に対する比(輝度比)で表した。そして、本願発明者らは、図9に示す実験結果を以下のように評価した。
【0082】
・光出射面10を、Rz/Sが0.05以上0.30以下の範囲の凹凸面とすると、基準とした有機ELデバイスの1.1倍以上、光出射面10から外部へ光を取り出すことができることが分かった。これは、光出射面が凹凸面だと、様々な角度の接線を備えるために、従来は光出射側へ取り出されなかった光の一部又は全部を取り出すことができるからである。
【0083】
換言すれば、光出射面10を、Rz/Sが0.05を超えない範囲の凹凸面としても、実質的に、基準とした有機ELデバイスとほぼ同量の光しか光出射面10から外部へ取り出すことができないことを見いだした。つまり、光取出に好適な凹凸面を有していなければ、光出射面を平面にした場合と光取出量はほとんど変わらないことが分かった。
【0084】
・光出射面10を、Rz/Sが0.08以上0.030以下の範囲の凹凸面とすると、基準とした有機ELデバイスの1.2倍以上、光出射面10からデバイス外部へ光を取り出すことができることが分かった。つまり、上記条件は、光取出に好適な条件であることを見いだした。
【0085】
・光出射面10を、Rz/Sが0.11以上0.25以下の範囲の凹凸面とすると、基準とした有機ELデバイスの1.3倍以上、光出射面10からデバイス外部へ光を取り出すことができ、光取出効率が極めて高くなることが分かった。
【0086】
・光出射面10を、Rz/Sが0.15以上0.22以下の範囲の凹凸面とすると、基準とした有機ELデバイスの1.4倍以上、光出射面10からデバイス外部へ光を取り出すことができ、光取出効率が特に高くなることが分かった。
【0087】
[評価8]
以上のようにして作製した各有機ELデバイスの、光出射面10における各出射方向の色度を調べた結果、Rz/Sが0.05以上0.30以下の範囲では、出射方向による色度の相違はほとんどなかった。つまり、色度の角度依存性がなかった。
これは、光出射面10の凹凸は、それぞれ様々な方向へ光を拡散する最適な形状を有しているためと考えられる。つまり、光出射面10の形状が最適化されているため、光出射面10における各出射方向おいて各波長の光の輝度の角度依存性がなくなったと考えられる。
【0088】
[評価9]
上記各有機ELデバイスについて、光出射面10における各出射方向の輝度を調べた結果、いずれのデバイスも、他の出射方向と比べて輝度が高い方向を有していた。このように、すべての出射方向に対して一様に輝度が高いのではないため、特定方向の輝度を高くすることが要求される用途、例えばディスプレイや照明装置などに好適であることが分かった。
次に、第四の有機ELディスプレイについて説明する。
【0089】
《第四の有機ELデバイス》
第四の有機ELデバイスは、以下の点を除いて第一の有機ELデバイスと同様に構成でき、また第一の有機ELデバイスと同様に変形できる。
【0090】
第四の有機ELデバイスは、第一の有機ELデバイスにおいて、上記条件(i)の代わりに下記(xiii)〜(xvi)のいずれかの条件を満たすようにされることを特徴とする。
(xiii)JIS B0601−1994による十点平均粗さRzと凹凸の平均間隔Smとの比Rz/Smが0.025以上0.14以下。
(xiv)JIS B0601−1994による十点平均粗さRzと凹凸の平均間隔Smとの比Rz/Smが0.04以上0.14以下。
(xv)JIS B0601−1994による十点平均粗さRzと凹凸の平均間隔Smとの比Rz/Smが0.05以上0.12以下。
(xvi)JIS B0601−1994による十点平均粗さRzと凹凸の平均間隔Smとの比Rz/Smが0.06以上0.10以下。
【0091】
なお、上記条件(viii)〜(xvi)のいずれの条件を具備する場合であっても、前記した理由により、上記凹凸面は下記(a)又は(b)を満たすように設計される。
(a)JIS B0601−1994による凹凸の平均間隔Smが、発光層が発する光の波長の内で最も長いものの3倍以上200倍以下。
(b)JIS B0601−1994による局部山頂の平均間隔Sが、発光層が発する光の波長の内で最も長いものの3倍以上200倍以下。
【0092】
本願発明者らは、このような範囲内の有機ELデバイスとするとよいことを、以下の実施例及び比較例から見いだした。
実施例及び比較例では、光出射面10のRz/Smを、0.005以上0.15以下の値に適宜変更したこと以外は、第一の有機ELデバイスにおける実施例と同一の条件(材料、膜厚、製法等)の有機ELデバイスを作製した。
【0093】
[評価10]
作製した有機ELデバイスに、それぞれ同一の電流を流し、光出射面10から出射された光の総量を、輝度測定器を用いて測定した。各有機ELデバイスの光出射面10のRz/Smと、輝度の大きさを、図10のグラフにプロットした。輝度の大きさは、光出射面10に凹凸を設けなかったこと以外は前記した通りに有機EL素子2を形成した有機ELデバイスの輝度を基準とし、この輝度に対する比(輝度比)で表した。そして、本願発明者らは、図10に示す実験結果を以下のように評価した。
【0094】
・光出射面10を、Rz/Smが0.025以上0.014以下の範囲の凹凸面とすると、基準とした有機ELデバイスの1.1倍以上、光出射面10から外部へ光を取り出すことができることが分かった。これは、光出射面が凹凸面だと、様々な角度の接線を備えるために、従来は光出射側へ取り出されなかった光の一部又は全部を取り出すことができるからである。
【0095】
換言すれば、光出射面10を、Rz/Smが0.025を超えない範囲の凹凸面としても、実質的に、基準とした有機ELデバイスとほぼ同量の光しか光出射面10から外部へ取り出すことができないことを見いだした。つまり、光取出に好適な凹凸面を有していなければ、光出射面を平面にした場合と光取出量はほとんど変わらないことが分かった。
【0096】
・光出射面10を、Rz/Smが0.04以上0.014以下の範囲の凹凸面とすると、基準とした有機ELデバイスの1.2倍以上、光出射面10からデバイス外部へ光を取り出すことができることが分かった。つまり、上記条件は、光取出に好適な条件であることを見いだした。
【0097】
・光出射面10を、Rz/Smが0.05以上0.012以下の範囲の凹凸面とすると、基準とした有機ELデバイスの1.3倍以上、光出射面10からデバイス外部へ光を取り出すことができ、光取出効率が極めて高くなることが分かった。
【0098】
・光出射面10を、Rz/Smが0.06以上0.10以下の範囲の凹凸面とすると、基準とした有機ELデバイスの1.4倍以上、光出射面10からデバイス外部へ光を取り出すことができ、光取出効率が特に高くなることが分かった。
【0099】
[評価11]
以上のようにして作製した各有機ELデバイスの、光出射面10における各出射方向の色度を調べた結果、Rz/Smが0.025以上0.14以下の範囲では、出射方向による色度の相違はほとんどなかった。つまり、色度の角度依存性がなかった。
これは、光出射面10の凹凸は、それぞれ様々な方向へ光を拡散する最適な形状を有しているためと考えられる。つまり、光出射面10の形状が最適化されているため、光出射面10における各出射方向おいて各波長の光の輝度の角度依存性がなくなったと考えられる。
【0100】
[評価12]
上記各有機ELデバイスについて、光出射面10における各出射方向の輝度を調べた結果、いずれのデバイスも、他の出射方向と比べて輝度が高い方向を有していた。このように、すべての出射方向に対して一様に輝度が高いのではないため、特定方向の輝度を高くすることが要求される用途、例えばディスプレイや照明装置などに好適であることが分かった。
【0101】
【発明の効果】
上記発明からも明らかなように、本発明によれば、凹凸面が設けられていない自発光デバイスよりも光取出側から出射される光の量が実質的に多く、かつ、輝度むらのない自発光デバイスを提供できる。
また、光出射側における特定方向の輝度が高い自発光デバイスを提供できる。
さらに、反射板として用いた場合に、鏡面反射しないだけでなく、光源があると想定される方向から光が入射された場合に特定方向の輝度が高い自発光デバイスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る第一の有機ELデバイスの構成を説明するための断面図である。
【図2】第一の有機ELデバイスの光出射面10におけるRa/Sと、光出射面10からデバイス外部へ出射された光の量とをプロットしたグラフである。
【図3】第一の有機ELデバイスの作成例を説明するための断面図である。
【図4】第一の有機ELデバイスの変形例を説明するための断面図である。
【図5】第一の有機ELデバイスにおいて、自発光デバイスを無機ELデバイスに変更した変形例を説明するための断面図である。
【図6】第一の有機ELデバイスにプリズムシートを付加したデバイスを示した断面図である。
【図7】第一の有機ELデバイスをバックライトに組み込んだ液晶表示装置の構成を示した断面図である。
【図8】第一の有機ELデバイスの光出射面10におけるRa/Smと、光出射面10からデバイス外部へ出射された光の量とをプロットしたグラフである。
【図9】第一の有機ELデバイスの光出射面10におけるRz/Sと、光出射面10からデバイス外部へ出射された光の量とをプロットしたグラフである。
【図10】第一の有機ELデバイスの光出射面10におけるRz/Smと、光出射面10からデバイス外部へ出射された光の量とをプロットしたグラフである。
【図11】従来の有機ELデバイスの構成を示し、当該デバイスの問題を説明するための断面図である。
【符号の説明】
1 基板
10 光出射面(凹凸面)
11 光入射面
2 有機EL素子(自発光素子)
20、40 第一電極
21、41 有機発光層(発光層)
411、413 無機絶縁層
412 無機発光材料含有層
22、42 第二電極
3 中間層
30 凹凸面を有する部材(例えばフィルム等)
4 無機EL素子(自発光素子)
5 プリズムシート
6 液晶表示パネル
60 表示面
61 非表示面

Claims (19)

  1. 一対の電極に挟持された発光層を備えた自発光素子が基板上に形成され、発光層で発せられた光を基板側から外部へ出射する自発光デバイスであって、
    前記基板は、自発光素子が形成された面とは反対側の面が複数の凹凸を有する凹凸面とされ、当該凹凸面は、下記条件(i)を満たしており、かつ、下記条件(a)又は(b)を満たしていることを特徴とする自発光デバイス。
    (i)JIS B0601−1994による算術平均粗さRaと局部山頂の平均間隔Sとの比Ra/Sが0.01以上0.07以下。
    (a)JIS B0601−1994による凹凸の平均間隔Smが、発光層が発する光の波長の内で最も長いものの3倍以上200倍以下。
    (b)JIS B0601−1994による局部山頂の平均間隔Sが、発光層が発する光の波長の内で最も長いものの3倍以上200倍以下。
  2. 一対の電極に挟持された発光層を備えた自発光素子が基板上に形成され、発光層で発せられた光を基板側から外部へ出射する自発光デバイスであって、
    前記基板に対して自発光素子とは反対側に透明部材が設けられ、
    前記透明部材は、基板とは反対側の面が複数の凹凸を有する凹凸面とされ、当該凹凸面は、下記条件(i)を満たしており、かつ、下記条件(a)又は(b)を満たしていることを特徴とする自発光デバイス。
    (i)JIS B0601−1994による算術平均粗さRaと局部山頂の平均間隔Sとの比Ra/Sが0.01以上0.07以下。
    (a)JIS B0601−1994による凹凸の平均間隔Smが、発光層が発する光の波長の内で最も長いものの3倍以上200倍以下。
    (b)JIS B0601−1994による局部山頂の平均間隔Sが、発光層が発する光の波長の内で最も長いものの3倍以上200倍以下。
  3. 上記条件(i)が下記条件(ii)に置換されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の自発光デバイス。
    (ii)JIS B0601−1994による算術平均粗さRaと局部山頂の平均間隔Sとの比Ra/Sが0.019以上0.07以下。
  4. 上記条件(i)が下記条件(iii)に置換されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の自発光デバイス。
    (iii)JIS B0601−1994による算術平均粗さRaと局部山頂の平均間隔Sとの比Ra/Sが0.029以上0.066以下。
  5. 上記条件(i)が下記条件(iv)に置換されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の自発光デバイス。
    (iv)JIS B0601−1994による算術平均粗さRaと局部山頂の平均間隔Sとの比Ra/Sが0.035以上0.056以下。
  6. 上記条件(i)が下記条件(v)に置換されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の自発光デバイス。
    (v)JIS B0601−1994による算術平均粗さRaと凹凸の平均間隔Smとの比Ra/Smが0.004以上0.035以下。
  7. 上記条件(i)が下記条件(vi)に置換されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の自発光デバイス。
    (vi)JIS B0601−1994による算術平均粗さRaと凹凸の平均間隔Smとの比Ra/Smが0.008以上0.035以下。
  8. 上記条件(i)が下記条件(vii)に置換されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の自発光デバイス。
    (vii)JIS B0601−1994による算術平均粗さRaと凹凸の平均間隔Smとの比Ra/Smが0.012以上0.035以下。
  9. 上記条件(i)が下記条件(viii)に置換されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の自発光デバイス。
    (viii)JIS B0601−1994による算術平均粗さRaと凹凸の平均間隔Smとの比Ra/Smが0.015以上0.022以下。
  10. 上記条件(i)が下記条件(ix)に置換されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の自発光デバイス。
    (ix)JIS B0601−1994による十点平均粗さRzと局部山頂の平均間隔Sとの比Rz/Sが0.05以上0.30以下。
  11. 上記条件(i)が下記条件(x)に置換されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の自発光デバイス。
    (x)JIS B0601−1994による十点平均粗さRzと局部山頂の平均間隔Sとの比Rz/Sが0.08以上0.30以下。
  12. 上記条件(i)が下記条件(xi)に置換されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の自発光デバイス。
    (xi)JIS B0601−1994による十点平均粗さRzと局部山頂の平均間隔Sとの比Rz/Sが0.11以上0.25以下。
  13. 上記条件(i)が下記条件(xii)に置換されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の自発光デバイス。
    (xii)JIS B0601−1994による十点平均粗さRzと局部山頂の平均間隔Sとの比Rz/Sが0.15以上0.22以下。
  14. 上記条件(i)が下記条件(xiii)に置換されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の自発光デバイス。
    (xiii)JIS B0601−1994による十点平均粗さRzと凹凸の平均間隔Smとの比Rz/Smが0.025以上0.14以下。
  15. 上記条件(i)が下記条件(xiv)に置換されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の自発光デバイス。
    (xiv)JIS B0601−1994による十点平均粗さRzと凹凸の平均間隔Smとの比Rz/Smが0.04以上0.14以下。
  16. 上記条件(i)が下記条件(xv)に置換されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の自発光デバイス。
    (xv)JIS B0601−1994による十点平均粗さRzと凹凸の平均間隔Smとの比Rz/Smが0.05以上0.12以下。
  17. 上記条件(i)が下記条件(xvi)に置換されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の自発光デバイス。
    (xvi)JIS B0601−1994による十点平均粗さRzと凹凸の平均間隔Smとの比Rz/Smが0.06以上0.10以下。
  18. 請求項1から17のいずれか1項に記載の自発光デバイスであって、
    前記自発光デバイスは、さらに、前記発光層を基準にして当該層で発せられた光が取り出される側にプリズムシートが設けられたことを特徴とする自発光デバイス。
  19. 請求項1から18のいずれか1項に記載の自発光デバイスであって、
    前記自発光素子は有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする自発光デバイス。
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