JP2004342407A - 有機電界発光素子及びその製造方法 - Google Patents

有機電界発光素子及びその製造方法 Download PDF

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伸洋 西田
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Abstract

【課題】有機層を簡便に基板上に形成でき、構成層間の接合界面が均一で良好な有機電界発光素子を提供すること。
【解決手段】基板上に、陰極、電子輸送層、発光層、及び陽極を有し、電子輸送層が陰極と発光層との間にある有機電界発光素子の製造方法であって、電子輸送層が電子輸送性高分子を有し、かつ、少なくとも一層の発光層を有する転写材料の発光層側と、少なくとも陰極及び電子輸送層を有する基板の電子輸送層側とを対面させ、加熱処理及び加圧処理の少なくとも一つを施すことにより、前記転写材料の少なくとも一層の発光層を前記基板上に転写する工程を有する方法により製造する。電子輸送層の発光層側の面の表面粗さRmaxが、電子輸送層の膜厚の50%以下であることが好ましい。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フルカラーディスプレイ、バックライト、照明光源等の面光源やプリンター等の光源アレイ等に有効に利用できる有機電界発光素子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機電界発光素子(有機EL素子)等の有機発光素子は容易に面状発光素子に適用し得るため、新たな光デバイスとして注目されている。具体的には、固体発光型の安価な大面積フルカラー表示素子や書き込み光源アレイとしての用途が有望視され、多くの開発が行われている。一般に、有機発光素子は、発光層及び前記発光層を挟んだ一対の対向電極(背面電極及び透明電極)から構成されている。前記有機発光素子において、一対の対向電極間に電界が印加されると、有機発光素子内に背面電極から電子が注入されるとともに、透明電極から正孔(ホール)が注入される。電子と正孔とが前記発光層中で再結合し、エネルギー準位が伝導帯から価電子帯に戻る際にエネルギーが光として放出され、発光する。
【0003】
有機EL素子の積層構成は、通常、基板上に透明電極(陽極)/有機層/背面電極(陰極)の順で積層される構成(順構成)で、この構成では素子の基板側から光は取り出される。
従来、このような順構成の素子に対し、電子輸送性高分子またはホール輸送性高分子と2種以上の発光中心形成化合物とからなる単層発光層を有する白色発光有機エレクトロルミネセンス素子が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、繰り返し単位中にアルキル基またはアルコキシル基からなる側鎖を1以上5以下含む電子輸送性高分子を用いて湿式法により電子輸送性層を形成する有機エレクトロルミネセンス素子も提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、これらの提案においては、後述する逆構成素子に関する示唆はない。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−63770公報
【特許文献2】
特開2000−252076公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
有機EL素子の製造は、基板上に、電極や有機層を順次、蒸着などの乾式法または塗布などの湿式法により形成していく方法が一般的であるが、有機層同士や有機層と電極とを転写または貼り合わせにより接合させて形成する方法もある。この転写または貼り合わせを利用する方法において、電子輸送性有機材料からなる電子輸送層を有する基板上に、支持体上に発光層を有する転写材料を用いて、電子輸送層上に転写材料の発光層を転写する工程を行う場合、電子輸送層と発光層との密着性が弱いと発光層が均一に転写されないことがあった。また、転写工程の後、有機層上にホール輸送層及び陽極を有する陽極側基板を貼り合わせる場合に、非発光領域での電子輸送層とホール輸送層との密着性が足りないと、貼り合わせ面の剥がれや接合不良を生じ易い。このような接合面の不良は、素子の発光効率や耐久性などを低下させる原因となり問題であった。
【0006】
したがって、上記問題に鑑み、本発明は、有機層を簡便に基板上に形成でき、構成層間の接合界面が均一で良好な有機電界発光素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題解決のために鋭意研究の結果、本発明者らは、電子輸送性高分子を含む電子輸送層を設けることにより、電子輸送層/発光層間及び電子輸送層/ホール輸送層間の密着性が向上し、転写性及び貼り合わせ性が著しく改良できることを見出し、本発明に到った。また、湿式法を用いて電子輸送層を形成することにより、陰極表面の凹凸を緩和することができ、さらに耐熱性の高い高分子材料を用いることにより素子寿命を改善できることも見出した。
【0008】
すなわち、上記課題は以下の手段により解決される。
(1)基板上に、陰極、電子輸送層、発光層、及び陽極を有し、電子輸送層が陰極と発光層との間にある有機電界発光素子であって、
電子輸送層が電子輸送性高分子を含み、かつ、
少なくとも1組の隣接する有機層同士は、転写又は貼り合わせにより接合されていることを特徴とする有機電界発光素子。
【0009】
(2)電子輸送層の発光層側の面の表面粗さRmaxが、該電子輸送層の膜厚の50%以下であることを特徴とする上記(1)に記載の有機電界発光素子。
(3)電子輸送層が湿式法によって形成された層であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の有機電界発光素子。
【0010】
(4)基板上に、陰極、電子輸送層、発光層、及び陽極を有し、電子輸送層が陰極と発光層との間にある有機電界発光素子の製造方法であって、
電子輸送層が電子輸送性高分子を有し、かつ、
少なくとも一層の発光層を有する転写材料の発光層側と、少なくとも陰極及び電子輸送層を有する基板の電子輸送層側とを対面させ、加熱処理及び加圧処理の少なくとも一つを施すことにより、前記転写材料の少なくとも一層の発光層を前記基板上に転写する工程を含むことを特徴とする有機電界発光素子の製造方法。
【0011】
(5)電子輸送層の発光層側の面の表面粗さRmaxが、該電子輸送層の膜厚の50%以下であることを特徴とする上記(4)に記載の製造方法。
(6)電子輸送層が湿式法によって形成された層であることを特徴とする上記(4)又は(5)に記載の製造方法。
(7)転写する工程の後に、少なくとも一層の有機層を貼り合わせる工程をさらに有することを特徴とする上記(4)〜(6)のいずれかに記載の製造方法。
(8)転写する工程の後に、電極を貼り合わせる工程をさらに有することを特徴とする上記(4)〜(7)のいずれかに記載の製造方法。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について更に詳細に説明する。なお、本明細書において、有機電界発光素子は、有機EL素子、有機発光素子等と呼ぶこともある。
本発明では、電子輸送性高分子を含む電子輸送層を設けることにより、電子輸送層/発光層間及び電子輸送層/ホール輸送層間の密着性を向上させることができる。その結果、転写不良や剥離不良による層の抜け(欠陥)を防止することができる。得られる有機電界発光素子は、発光効率などの発光性能が向上し、また駆動電圧が低下するので素子寿命が伸びるなど耐久性が向上する。
【0013】
本発明の有機電界発光素子は、逆構成素子の構造であることが、発光性能の面から好ましい。
本発明における逆構成素子とは、基板上に順に陰極/有機層/陽極を積層した構成の素子をいう。具体的な層構成としては、陰極/発光層/陽極、陰極/電子輸送層/発光層/陽極、陰極/電子輸送層/発光層/ホール輸送層/陽極、陰極/電子注入層/電子輸送層/発光層/陽極、陰極/電子注入層/電子輸送層/発光層/ホール輸送層/ホール注入層/陽極等が挙げられる。
【0014】
逆構成素子の利点の一つは、開口率(実際に発光する部分が画素中に占める割合)が高いことが挙げられる。通常、透光性の基板上に、α−Si、ポリシリコンなどからなるTFT(thin film transistor)が、画素一つに対して少なくとも一つまたは二つ設けられ、さらにTFTを選択してONするために走査電極線および信号電極線が前記基板上に多数設けられていた。TFT素子と有機発光素子とを絶縁するために、TFT上には窒化シリコンまたは酸化シリコンなどからなる絶縁膜が設けられている。しかしながら、TFTの厚さは、ゲート及びドレイン、ソース電極を含め0.2μm〜1μmとなり凹凸があるので、これを避けて下部電極を形成する必要があり、画素中に非発光部分が生ずるのを避けることができなかった。透光性基板側より光を取り出す場合には、さらに走査電極線及び信号電極線も光を遮るため画素の開口率(実際に発光する部分が画素中に占める割合)が小さかった。前記逆構成の素子はTFTが設けられた基板と反対側から光を取り出すため、高い開口率を得ることができる。
【0015】
逆構成素子の他の利点としては、基板側から光を取り出す必要がないため、非透光性の基板を用いることができる。例えば、ポリイミドフイルムを用いた屈曲自在のフレキシブル基板等、基板の選択の幅を広げることが可能となる。
更に、有機層より先に陰極を製膜するので、陰極製膜時の有機層へのダメージを避けられるという利点もある。
【0016】
本発明の有機EL素子は、電子輸送性高分子を含む電子輸送層を、陰極と発光層との間に有する。また、本発明の有機EL素子は、この電子輸送層またはその上に設けた有機層と、他の少なくとも1層の有機層とが転写法または貼り合わせ法により接合されている有機EL素子であり、より詳しくは、基板、陰極、電子輸送層、転写法及び/又は貼り合わせ法により設けた有機層を有する有機EL素子とも言える。さらに、有機EL素子として必要な陽極が蒸着、転写または貼り合わせにより設けられている。本発明において、転写とは、支持体上に有機層を有する転写材料から、該有機層のみを基板上に積層させ、支持体等を剥離することを意味する。また、貼り合わせとは、電極(好ましくは陽極)上に有機層を積層させたものを基板上に貼り合わせることを意味する。
【0017】
また、本発明では電子輸送層を陰極上に湿式法により形成することが好ましい。有機電界発光素子の陰極材料としては、電子注入効率向上のため、通常仕事関数の小さい金属が選択される。これらの金属からなる陰極は蒸着法やスパッタ法などにより形成されるが、逆構成素子の場合は陰極が最下層に形成されるので、電極表面の凹凸が上層に与える影響が大きくなる。本発明では、湿式法により陰極上に電子輸送層を形成することにより、電極表面の凹凸を緩和し、凹凸による電極同士の短絡や発光面状の悪化を防止することができる。
なお、湿式法とは、有機層の材料を溶解または分散させた塗布液を塗布、乾燥させることにより膜形成を行う製膜法を意味する。塗布液の溶剤や塗布方法については、後述する他の有機層と同様である。
【0018】
[1]電子輸送層
電子輸送層に用いられる電子輸送性高分子の具体例としては、下記の(1)〜(4)で示されるオキサジアゾール系高分子化合物や、(5)〜(7)で示されるトリアゾール系高分子化合物が挙げられる。
【0019】
【化1】
Figure 2004342407
【0020】
電子輸送性高分子の重量平均分子量は、10000〜200000が好ましく、20000〜100000がより好ましい。
電子輸送層には、電子輸送性高分子以外の低分子の電子輸送性材料を含んでもよい。低分子の電子輸送性材料を含有する場合には、高分子の電子輸送性材料に対して10質量%以下であることが好ましい。
電子輸送層は、低分子の電子輸送性材料を含まずに電子輸送性高分子からなるのが好ましく、上記の具体例で示した電子輸送性高分子からなるのが特に好ましい。
【0021】
電子輸送層の厚さは、10〜200nmが好ましく、20〜80nmがより好ましい。10nm以上では均一な膜形成により素子の短絡を防止でき、好ましい。また、200nm以下とすると、駆動電圧を抑え、発光効率を向上させることができ、好ましい。
【0022】
電子輸送層の表面は、JIS B 0601−1982で規定される最大表面粗さRmaxが、電子輸送層の膜厚の0〜50%であることが好ましく、0〜25%であるのがより好ましく、0.0001〜10%であるのが特に好ましい。これにより、電子輸送層上に設けられる他の有機層を均一に成膜することができ、電子輸送層の表面凹凸による電極同士の短絡や発光面状の悪化を防止することができる。特に、前述したとおり、電子輸送層が転写または貼り合わせの際の被成膜面になる場合には、上記範囲にすることが望ましい。
本発明において電子輸送層の形成方法は、上記の理由から湿式法であることが好ましい。
なお、最大表面粗さRmaxを測定する方法としては、原子間力顕微鏡法、共焦点顕微鏡法、触針法、光学顕微干渉法、多重干渉法、光切断法等が挙げられる。なかでも、原子間力顕微鏡法及び共焦点顕微鏡法によるのが好ましい。
【0023】
また、電子輸送層に高分子材料を用いることにより、素子の耐久性向上が期待できる。有機電界発光素子の駆動劣化に関しては種々の原因が挙げられるが、その考えられる一つの原因として有機膜の結晶化が挙げられる。
低分子からなる真空蒸着膜は均一な非晶質膜を形成するが、蒸着後、しばしば結晶化または凝集して粗な形状に変化して、素子性能を低下させる。この不安定性は有機材料のガラス転移温度(Tg)と相関しており、結晶化を制御するための手段としてTgを高めることが考えられる。一般に、高分子材料は低分子材料に比べてTgが高く、素子の熱的安定性を向上させることが可能である。有機材料のTgとしては80℃〜300℃が好ましく、100℃〜250℃が更に好ましい。
【0024】
[2]基板
本発明で使用する基板の具体例としては、ジルコニア安定化イットリウム(YSZ)、ガラス等の無機材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレ−ト、ポリエチレンナフタレ−ト等のポリエステルやポリスチレン、ポリカ−ボネ−ト、ポリエ−テルスルホン、ポリアリレ−ト、アリルジギリコ−ルカ−ボネ−ト、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の有機材料が挙げられる。有機材料の場合、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、及び加工性に優れていることが好ましい。なかでも、水分透過率が0.01g/m・day以下であることが好ましく、さらには酸素透過率が0.01cc/m・day以下であることが好ましい。水分透過率はJIS K7129B法に準拠した方法で主としてMOCON法により測定できる。酸素透過率はJIS K7126B法に準拠した方法で主としてMOCON法により測定できる。このようにすることにより、発光素子内に耐久性悪化の原因となる水分や酸素の侵入を防ぐことが可能となる。
【0025】
本発明で使用する基板は、その熱線膨張係数が20ppm/℃以下であることが好ましい。熱膨張係数は、一定速度で加熱し、試料の長さの変化を検知する方法で測定され、主にTMA法により測定される。20ppm/℃以下であると、加熱転写後の冷却時や加熱経持等で電極や有機層のクラックや剥がれを防止でき、耐久性が向上するので、好ましい。本発明において、熱線膨張係数が20ppm/℃以下である基板としては透明または不透明のいずれのものも用いることができる。但し、後述する透明な電極が発光層を含む有機層より該基板側にある等の理由で、発光を基板側から取り出す場合は、散乱、減衰を抑えるため無色透明である必要がある。上記物性を満足し、かつ電極製膜し発光素子を作成した時に短絡しない可撓性基板として、金属箔の片面または両面に絶縁層を設けた基板が好ましく用いられる。
【0026】
上記金属箔としては特に限定されることはなく、アルミ箔、銅箔、ステンレス箔、金箔、銀箔等の金属箔が用いられる。中でも加工のしやすさやコストの点からアルミ箔または銅箔が好ましい。金属箔の厚みは、10μm以上、100μm以下であることが好ましい。これよりも薄くなると、水分透過性、酸素透過性が大きくなってガスバリアー性が乏しくなり、発光素子の耐久性が悪化する。また、これよりも厚いと可撓性が無くなり取り扱いに不便を生じる。
【0027】
本発明においては、上記のようにこの金属箔の片面または両面に絶縁層を設けることが好ましい。絶縁層としては特に限定されることはなく、例えば無機酸化物や無機窒化物等の無機物や、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルやポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、アリルジギリコールカーボネート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、ポリイミド、等のプラスチックを用いることができる。
【0028】
この絶縁層の熱線膨張係数が20ppm/℃以下であることが好ましい。絶縁層の上に、電極や転写により形成される有機層を設けられることになるが、絶縁層の熱線膨張係数を20ppm/℃以下とすると、転写後冷却時や加熱経時でのクラックや剥がれが生じるのを防ぎ、耐久性を向上させることができるので、好ましい。
【0029】
熱線膨張係数が20ppm/℃以下である絶縁層としては、酸化珪素、酸化ゲルマニウム、酸化亜鉛、酸化アルミ、酸化チタン、酸化銅等の金属酸化物、窒化珪素、窒化ゲルマニウム、窒化アルミニウム等の金属窒化物を好ましく用いることができ一種もしくは二種以上を用いることができる。
【0030】
金属酸化物及び/または金属窒化物絶縁層の厚みは10nm以上1000nm以下で有ることが好ましい。これよりも薄いと絶縁性が低下しやすく、また、これよりも厚いとクラックが生じやすくなり、ピンホールができ絶縁性が低下しやすい。
金属酸化物及び/または金属窒化物絶縁層を製膜する方法としては、特に限定されることはないが、蒸着法、スパッタ法、CVD方等の乾式法や、ゾル−ゲル法等の湿式法または金属酸化物及び/または金属窒化物の粒子を溶剤に分散し塗布する方法もとることができる。
【0031】
熱線膨張係数が20ppm以下のプラスチック材料として、特にポリイミドや液晶ポリマーが好ましく用いることができる。これらのプラスチック材料の性質等の詳細については「プラスチック・データブック」(旭化成アミダス(株)「プラスチック」編集部編)等に記載されている。ポリイミド等を絶縁層として用いる場合にはポリイミド等のシートとアルミ箔をラミネートし、貼り付けることが可能である。用いられるポリイミド等のシートの厚みとしては10μm以上200μm以下であることが好ましい。これよりも薄いとラミネート時の取り扱いが困難になる。またこれよりも厚いと可撓性が損なわれ取り扱いに不便を生じる。
【0032】
本発明においては、上記絶縁層を金属箔の片面だけに設けてもよく、また両面に設けてもよい。両面に設ける場合、両面とも金属酸化物及び/または金属窒化物であってもよく、また両面ともポリイミド等のシートであってもよい。また片面が金属酸化物及び/または金属窒化物であり、一方の片面がポリイミド等のシートであってもよい。
本発明においては、必要により、金属箔にさらにハードコート層やアンダーコート層を設けてもよい。
【0033】
基板の形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、発光素子の用途、目的等に応じて適宜選択することができる。一般的には、基板形状としては、板状である。
【0034】
[3]有機電界発光素子の製造方法
本発明の有機電界発光素子の製造方法は、支持体上に有機層を形成することにより転写材料を作製し、有機層側が基板の被成膜面に対面するように転写材料を基板に重ねて加熱または加圧して層を軟化させて、基板の被成膜面に接着させた後、支持体を剥離することにより有機層だけを被成膜面に残留させ、有機層を基板の被成膜面に転写するものである。転写材料は1種のみ使用してもよいし、同一または異なる組成の有機層を有する2種以上の転写材料を使用してもよい。
【0035】
加熱手段としては、一般に公知の方法を用いることができ、例えばラミネータ、赤外線ヒータ、レーザ、熱ヘッド、ヒートローラ等を用いることができる。大面積の転写の際には、加熱手段はラミネータ、赤外線ヒータ、ヒートローラ等が好ましく用いられる。熱ヘッドとしては、例えばファーストラミネータVA−400III(大成ラミネータ(株)製)や、熱転写プリント用の熱ヘッド等を用いることができる。
【0036】
加熱手段としては、一般に公知の方法を用いることができ、例えばラミネータ、赤外線ヒータ、レーザ、熱ヘッド、ヒートローラ等を用いることができる。大面積の転写の際には、加熱手段はラミネータ、赤外線ヒータ、ヒートローラ等が好ましく用いられる。熱ヘッドとしては、例えばファーストラミネータVA−400III(大成ラミネータ(株)製)や、熱転写プリント用の熱ヘッド等を用いることができる。
【0037】
転写用の温度は特に限定的でなく、有機層の材質や加熱部材によって変更することができるが、一般に40〜250℃が好ましく、更に50〜200℃が好ましく、特に60〜180℃が好ましい。ただし、転写用の温度の範囲は、加熱部材、転写材料及び基板の耐熱性に関係しており、耐熱性が向上すればそれにともなって変化する。
【0038】
2種以上の転写材料を使用する場合には、最初に転写する転写材料の転写温度が次に転写する転写材料の転写温度以上であることが好ましい。また、一つの転写材料で2種以上の有機層を有する転写材料を使用する場合には、最初に転写する有機層の転写温度が次に転写する有機層の転写温度以上であるのが好ましい。転写材料の有機層あるいはこの有機層に含有される高分子成分のガラス転移温度、または該有機層の流動開始温度が40℃以上で、かつ転写温度+40℃以下であるのが好ましい。また転写する2種以上の有機層は少なくとも1種の共通成分を含有していることが好ましい。
【0039】
転写前に、基板及び転写材料の少なくともいずれかを予熱しておくのが好ましい。予熱温度は30℃以上で、かつ転写温度+20℃以下であるのが好ましい。また支持体を引き剥がす時の温度は10℃以上で、かつ転写温度以下であるのが好ましい。
【0040】
支持体を引き剥がした後、転写された有機層を再度加熱するのが好ましい。再加熱温度は、有機層のガラス転移温度または流動開始温度以上であるのが好ましい。
【0041】
本発明では、転写の操作を減圧雰囲気下で行うことが好ましい。減圧雰囲気の圧力は、発光素子の製造装置により適宜好適な圧力を選択することができるが、1×10−3Pa以上1×10−5Pa以下が好ましい。
【0042】
転写材料の有機層は、少なくとも発光性化合物またはキャリア輸送性材料を有するのが好ましい。
また、基板上に予め電子輸送層を設けておき、この電子輸送層上に、発光層及びホール輸送層を転写するのが好ましい。
基板には、陰極が形成されていることが好ましい。
【0043】
有機層が基板の被成膜面に対面するように転写材料を基板に重ねて加熱する際に、加圧も行うのが好ましい。但し、加圧は対面する面同士の圧力であり、その回りは減圧雰囲気である。加圧の大きさは、一般に0〜10MPaが好ましく、0〜5MPaがより好ましく、0〜2MPaが特に好ましい。
【0044】
有機層が基板の被成膜面に対面するように転写材料を基板に重ねる際に、転写材料の基板に対する進入角度を90°以下にするのが好ましい。また転写材料の支持体を基板上に転写された有機層から引き剥がす際に、支持体の有機層に対する剥離角度を90°以上にするのが好ましい。
【0045】
転写材料及び/または前記基板は連続ウエブであるのが好ましい。
【0046】
本発明において有機EL素子の製造に使用する転写材料は、支持体上に湿式法により有機層を形成してなるものが好ましい。また、1つの支持体に同一または異なる組成の2種以上の有機層が面順次に形成されていてもよい。
【0047】
本発明では、転写工程(転写工程の中に、支持体を剥離する工程も含まれる)を繰返し行い、複数の有機層を基板上に積層することもできる。複数の有機層は同一の組成であっても異なっていてもよい。同一組成の場合、転写不良や剥離不良による層の抜けを防止することができるという利点がある。また異なる層を設ける場合、機能を分離して発光効率を向上する設計とすることができ、例えば、本発明の転写法により被成膜面に、透明導電層/発光層/電子輸送層/電子注入層/背面電極、透明導電層/ホール注入層/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/背面電極を積層することができる。このとき転写温度は、先の転写層が次の転写層に逆転写されないように、先の転写材料を加熱する温度を次の転写材料を加熱する温度以上とするのが好ましい。
【0048】
基板に転写した有機層に対して、あるいは先に転写した有機層に転写した新たな有機層に対して、必要に応じて再加熱するのが好ましい。再加熱により有機層は基板または先に転写した有機層にいっそう密着する。再加熱時に必要に応じて加圧するのが好ましい。再加熱温度は転写温度±50℃の範囲であるのが好ましい。
【0049】
先の転写層が次の転写層に逆転写されないように、先の転写工程と次の転写工程の間で、被成膜面に密着力を向上するような表面処理を施してもよい。このような表面処理としては、例えばコロナ放電処理、火炎処理、グロー放電処理、プラズマ処理等の活性化処理が挙げられる。表面処理を併用する場合、逆転写しなければ、先の転写材料の転写温度が次の転写材料の転写温度未満であってもよい。
【0050】
本発明の有機電界発光素子を製造する設備としては、支持体上に湿式法により有機層を形成した転写材料を送給する装置と、転写材料を加熱しながら基板の被成膜面に押し当てることにより、有機層を基板の被成膜面に転写させる装置、転写材料の支持体を有機層から引き剥がす装置とを有する設備を用いることができる。以後、上記の対面する装置と引き剥がす装置を合わせて転写装置とも呼称する。
【0051】
上記設備は、転写装置に送給する前に転写材料及び/または基板を予熱する手段を有するのが好ましい。また転写装置の後段に冷却装置を有するのが好ましい。
転写装置の前面には、転写材料の基板に対する進入角度を90°以下にする進入角度調整部が設けられているのが好ましい。また対面装置または冷却装置の後面には、転写材料の支持体の有機層に対する剥離角度を90°以上にする剥離角度調整部が設けられているのが好ましい。
以上の有機EL素子の製造法及び装置についての詳細は特開2002−289346号公報等に記載されている
【0052】
[4]転写材料
以下、転写材料の構成及び内容について説明する。特に転写材料として支持体を用いる場合について説明する。転写材料は支持体と少なくとも一層の有機層を有する。工程に応じて、少なくとも一層の発光層を有する転写材料を使うことがある。
(1)構成
有機層(有機電界発光素子の有機層として機能する有機化合物を含有する層)は、支持体上に湿式法で作製するのが好ましい。有機層を設けた転写材料は、有機層毎に個々独立した転写材料として作製してもよいし、面順次に設けてもよい。すなわち、素子の積層順に複数の有機層を1枚の支持体に設けてもよい。この転写材料を使用すれば、転写材料の交換の必要なしに、複数の有機層を連続的に形成することができる。
【0053】
また支持体上に2層以上の有機層を予め積層した転写材料を使用すれば、1回の転写工程で基板の被成膜面に多層膜を積層することができる。支持体上に予め積層する場合、積層される各有機層の界面が均一でないと正孔や電子の移動にムラが生じてしまうので、界面を均一にするために溶剤を慎重に選ぶ必要があり、またその溶剤に可溶な有機層用の有機化合物を選択する必要がある。
【0054】
(2)支持体
支持体を用いて転写を行う場合、本発明に使用する支持体は、化学的及び熱的に安定であって、可撓性を有する材料により構成されることが好ましい。具体的には、フッ素樹脂[例えば4フッ化エチレン樹脂(PTFE)、3フッ化塩化エチレン樹脂(PCTFE)]、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN))、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリオレフィン(例えばポリエチレン、ポリプロピレン)、ポリエーテルスルホン(PES)等の薄いシート、またはこれらの積層体が好ましい。支持体の厚さは1μm〜300μmが適当であり、更に3μm〜200μmが好ましく、特に3μm〜50μmであるのが好ましい。
【0055】
(3)支持体への有機層の形成
有機層は、通常、バインダーとして高分子化合物を含む。バインダーを含む塗布液を調製し、これを支持体に塗布、形成するのが好ましい。即ち、有機層用材料を有機溶剤に所望の濃度に溶解し、得られた塗布液を支持体に塗布する。塗布法としては、有機層の乾燥膜厚が好ましくは200nm以下で均一な膜厚分布が得られれば特に制限はなく、スピンコート法、グラビアコート法、ディップコート法、キャスト法、ダイコート法、ロールコート法、バーコート法、エクストルージェンコート法、インクジェット塗布法等が挙げられる。中でも、ロールツーロールによる生産性の高いエクストルージェンコート法が好ましい。
【0056】
(4)有機層
有機層は、有機EL素子を構成する層であり、それぞれの特質から発光層、電子輸送層、ホール輸送層、ホール注入層等が挙げられる。また発色性を向上するための種々の層を挙げることができる。各層に用いる化合物の具体例については、例えば「月刊ディスプレイ」1998年10月号別冊の「有機ELディスプレイ」(テクノタイムズ社)等に記載されている。
【0057】
有機層自体またはその中の成分のガラス転移温度は40℃以上で、かつ転写温度+40℃以下が好ましく、更に50℃以上で、かつ転写温度+20℃以下が好ましく、特に60℃以上で、かつ転写温度以下が好ましい。また転写材料の有機層自体またはその中の成分の流動開始温度は40℃以上で、かつ転写温度+40℃以下が好ましく、更に50℃以上で、かつ転写温度+20℃以下が好ましく、特に60℃以上で、かつ転写温度以下が好ましい。ガラス転移温度は、示差走査熱量測定装置(DSC)により測定することができる。また流動開始温度は、例えば島津製作所(株)製のフローテスターCFT−500を用いて測定することができる。
【0058】
(a)発光層
発光層は少なくとも一種の発光性化合物を含有する。発光性化合物は特に限定的ではなく、蛍光発光性化合物であっても燐光発光性化合物であってもよい。また蛍光発光性化合物及び燐光発光性化合物を同時に用いてもよい。本発明においては、発光輝度及び発光効率の点から燐光発光性化合物を用いるのが好ましい。なお以下の発光層の説明において、誘導体という用語は、その化合物自身とその誘導体を意味するものとする。
【0059】
蛍光発光性化合物としては、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、ペリレン誘導体、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、スチリルアミン誘導体、芳香族ジメチリデン化合物、金属錯体(8−キノリノール誘導体の金属錯体、希土類錯体等)、高分子発光性化合物(ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等)等が使用できる。これらは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0060】
燐光発光性化合物は、好ましくは三重項励起子から発光することができる化合物であり、オルトメタル化錯体及びポルフィリン錯体が好ましい。ポルフィリン錯体の中ではポルフィリン白金錯体が好ましい。燐光発光性化合物は単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0061】
本発明でいうオルトメタル化錯体とは、山本明夫著「有機金属化学 基礎と応用」,150頁及び232頁,裳華房社(1982年)、H. Yersin著「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」,71〜77頁及び135〜146頁,Springer−Verlag社(1987年)等に記載されている化合物群の総称である。オルトメタル化錯体を形成する配位子は特に限定されないが、2−フェニルピリジン誘導体、7,8−ベンゾキノリン誘導体、2−(2−チエニル)ピリジン誘導体、2−(1−ナフチル)ピリジン誘導体または2−フェニルキノリン誘導体であるのが好ましい。これら誘導体は置換基を有してもよい。またこれらのオルトメタル化錯体形成に必須の配位子以外に他の配位子を有していてもよい。オルトメタル化錯体を形成する中心金属としては、遷移金属であればいずれも使用可能であり、本発明ではロジウム、白金、金、イリジウム、ルテニウム、パラジウム等を好ましく用いることができる。このようなオルトメタル化錯体を含む有機化合物層は、発光輝度及び発光効率に優れている。オルトメタル化錯体については、特願2000−254171号に具体例が記載されている。
【0062】
本発明で用いるオルトメタル化錯体は、Inorg. Chem., 30, 1685, 1991、Inorg. Chem., 27, 3464, 1988、Inorg. Chem., 33, 545, 1994、Inorg. Chim. Acta, 181, 245, 1991、J. Organomet. Chem., 335, 293, 1987、J. Am. Chem. Soc., 107, 1431, 1985等に記載の公知の方法により合成することができる。
【0063】
発光層中の発光性化合物の含有量は特に制限されないが、例えば0.1〜70質量%であるのが好ましく、1〜20質量%であるのがより好ましい。発光性化合物の含有量が0.1質量%未満であるかまたは70質量%を超えると、その効果が十分に発揮されないことがある。
【0064】
発光層は必要に応じてホスト化合物、ホール輸送性材料、電子輸送性材料、電気的に不活性なポリマーバインダー等を含有してもよい。なおこれらの材料の機能は1つの化合物により同時に達成できることがある。例えば、カルバゾール誘導体はホスト化合物として機能するのみならず、ホール輸送性材料としても機能する。
【0065】
ホスト化合物とは、その励起状態から発光性化合物へエネルギー移動が起こり、その結果その発光性化合物を発光させる化合物である。その具体例としては、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン化合物、ポルフィリン化合物、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体、メタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾール等を配位子とする金属錯体、ポリシラン化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、アニリン共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等が挙げられる。ホスト化合物は1種単独で使用しても2種以上を併用してもよい。ホスト化合物の発光層における含有率としては0〜99.9質量%が好ましく、さらに好ましくは、0〜99.0質量%である。
【0066】
ホール輸送性材料は、陽極からホールを注入する機能、ホールを輸送する機能、及び陰極から注入された電子を障壁する機能のいずれかを有しているものであれば特に限定されず、低分子材料であっても高分子材料であってもよい。その具体例としては、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン化合物、ポルフィリン化合物、ポリシラン化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、アニリン共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等が挙げられる。これらは単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。ホール輸送性材料の発光層における含有率としては0〜99.9質量%が好ましく、さらに好ましくは、0〜80.0質量%である。
【0067】
電子輸送性材料は、陰極から電子を注入する機能、電子を輸送する機能、及び陽極から注入されたホールを障壁する機能のいずれかを有しているものであれば特に限定されない。その具体例としては、例えばトリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体等の金属錯体、メタロフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾール等を配位子とする金属錯体、アニリン共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等が挙げられる。これらは単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。電子輸送性材料の発光層における含有率としては0〜99.9質量%が好ましく、さらに好ましくは、0〜80.0質量%である。
【0068】
ポリマーバインダーとしては、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等が使用可能である。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。ポリマーバインダーを含有する発光層は、湿式製膜法により容易に大面積に塗布形成することができる。
【0069】
発光層の厚さは10〜200nmとするのが好ましく、20〜80nmとするのがより好ましい。厚さを200nm以下とすると素子の駆動電圧を低下させることができ、また10nm以上とすると素子の短絡を防止できるので、好ましい。
【0070】
(b)ホール輸送層
有機電界発光素子は、必要に応じて上記ホール輸送性材料からなるホール輸送層を有してよい。ホール輸送層は上記ポリマーバインダーを含有してもよい。ホール輸送層の厚さは10〜200nmとするのが好ましく、20〜80nmとするのがより好ましい。厚さを200nm以下とすると素子の駆動電圧を低下させることができ、また10nm以上とすると素子の短絡を防止できるので、好ましい。
【0071】
以上の有機層を湿式法(湿式製膜法)により塗布形成する場合、該有機化合物層の材料を溶解して塗布液を調整する際に用いられる溶剤としては、特に制限はなく、前記正孔輸送材、前記オルトメタル化錯体、前記ホスト材、前記ポリマ−バインダ−等の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、n−プロピルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン、炭酸ジエチル等のエステル系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエ−テル系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤、ジメチルスルホキシド、水等が挙げられる。
なお、前記塗布液における固形分量溶剤に対する固形分量としては、特に制限はなく、その粘度も湿式製膜方法に応じて任意に選択することができる。
【0072】
複数の有機層を形成する際に、本発明の転写法以外に蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、ディッピング、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、ダイコート法、ロールコート法、バーコート法、グラビアコート法等の湿式製膜法、印刷法等を併用することもできる。
【0073】
(5)版
本発明では、転写材料の支持体として版を用いることもできる。版を用いることで、有機層のパターニングが容易にでき、好ましい。
(a)構成
転写材料の支持体として版を用いる場合には、有機層を版上に少なくとも一層作製する。この場合、有機層を設けた版は、個々独立した転写材料として作製してもよいし、面順次に設けてもよい。すなわち、素子の積層順に複数の有機層を1枚の版上に設けてもよい。この面順次の転写材料を使用すれば、転写材料の交換の必要なしに、複数の有機層を連続的に形成することができる。
【0074】
また、版上に2層以上の有機層を予め積層した転写材料を使用すれば、1回の転写工程で基板の被成膜面に多層膜を積層することができる。版上に予め積層する場合、積層される各有機層の界面が均一でないとホールや電子の移動にムラが生じてしまうので、界面を均一にするために製膜法を慎重に選ぶ必要がある。
製膜法としては、薄膜が形成できれば特に限定することはなく、湿式法であってもよく、蒸着法などの乾式でもよい。
【0075】
(b)版
本発明の版とは、印刷に用いられている凸版、平版、凹版、孔版を表す。
凸版とは、所定のパターン部が一つの平面内にあり、非パターン部がこの面よりも陥没している。したがって、被成膜面は所定のパターン部と接触し、非所定のパターン部とは接触しない。凸版は、機械的に作製する場合、活版そのものを用いる原版、原版に合金を流し込んで作製する鉛版、木版、プラスチック版、ゴム版などがあり、化学的に作製する場合、電気メッキを利用して原版から作製する方法がある。
【0076】
平版は、所定のパターン部と、非所定のパターン部とが巨視的には同一平面上に構成されているものである。有機層を版上に有機層用塗布液を用いて形成する場合、版面に前処理として親液化処理や撥液処理を施し、親液化処理を施した面に所定のパターン部を形成し、撥液処理を施した面に非所定のパターン部を形成することで版を形成することができる。この場合、被成膜面は転写材料のほぼ全面と接触する。平版は、機械的には作製できない。平版は化学的に作製することができ、炭酸カルシウムを主成分とした石版、亜鉛またはアルミニウムなどの板を用いた金属平版があり、2種の異なる金属を層状にして構成した版材を支持版上に設ける多層平版、ゼラチンを主成分として硬化のない部分で有機薄膜層用塗布液を吸収または膨潤させて非所定のパターン部を作り硬化部分を用いるコロタイプが知られている。
【0077】
凹版は、非所定のパターン部が一つの平面内にあり、所定のパターン部がこの面よりも陥没しており、凸版と反対の型をもつ。凹版の場合、凹版全面に有機層を形成し、非所定のパターン部の有機層を拭き取り、または、掻き落すなどの工程を行い、陥没している部分に所定のパターン部を残す。凹版は、機械的に銅版などに彫刻して作製する彫刻凹版、化学的には薬液を使って所定のパターン部を腐食してつくるエッチングで作製する。銅版または銅円筒面を腐食して写真画層を作るグラビア版や、電子的・機械的に彫刻して作製する電子彫刻グラビアがある。
【0078】
孔版は、所定のパターン部が表裏貫通している膜または板である。表裏貫通している部分にある有機層を乾燥膜として作製する。孔版は謄写版、シルクスクリーン印刷などで金網、絹網などがある。
【0079】
本発明の版としては、なかでも所定のパターンを有する凸版が好ましい。平版では被成膜面全面と接触するため、重ねた時に気泡が入り易い。また、凹版では、作製時に材料ロスが生じ、孔版の場合には有機薄膜が孔の中に残り材料ロスが生じる。
【0080】
本発明に使用する版は、化学的及び熱的に安定であれば、特に限定されることはない。具体的には、ガラス、アルミ箔、銅箔、ステンレス箔、金箔、銀箔等の金属箔や、ポリイミド、液晶性ポリマ−、フッ素樹脂[例えば4フッ化エチレン樹脂(PTFE)、3フッ化塩化エチレン樹脂(PCTFE)]、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN))、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリオレフィン(例えばポリエチレン、ポリプロピレン)、ポリアリレート、硬質塩化ビニル等のプラスチックシ−ト等の薄いシート、又はこれらの積層体を挙げることができる。この中でも、加工のしやすさやコストの点からアルミ箔、銅箔、ステンレス箔、ガラスまたはその積層体が好ましい。
版の厚さは、繰り返し用いるために厚いほど好ましい。版の場合、構造、大きさ等については、特に制限はなく、製造設備の仕様、目的等に応じて適宜選択することができる。厚さについても製造設備に組み込まれる仕様に合わせて適宜選択する。
【0081】
版の有機層を形成する面は、純水との接触角が50°以上が好ましく、更に60°以上が好ましく、特に70°以上が好ましい。50°未満では有機層が版と密着するため転写し難いことがある。また、有機層を塗布で設ける場合、塗布液の組成にもよるが、90°を超えると液がムラになることがある。しかし、有機層を真空製膜法や転写剥離法などの乾式法で設ける場合、上限は特に限定されることはない。
純水との接触角とは、版と純水の接触点から水滴へ引いた接線とのなす角のことである。測定法としては、滴下直後の静置された水滴を測定する一般の接触角測定機であれば特に限定されない。具体的には協和界面科学社製の型番CA−Xで測定することができる。測定環境としては、温度21〜24℃、相対湿度45〜55%の一定条件で測定するのが好ましい。
【0082】
また、版の表面に表面撥水処理を施してもよい。表面撥水処理としては、フッ素化処理を挙げることができる。フッ素化処理としては、フロロカーボンガス(CFガス等)を用いたプラズマ処理や、フッ素アルキルカップリング剤(例えばパーフルオロアルキル官能性シラン、好ましくはパーフロロアルキルトリメトシキシラン等)の蒸気に曝す方法等が挙げられる。
上述の表面処理や、剥離層を形成する前処理として、アンダーコート層を設けて密着を向上させてもよい。
また、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、火炎処理、グロー放電処理等の活性化処理を行ってもよい。
【0083】
また、版の有機層を形成する面に離型効果を有する成分(離型剤)を含む剥離層を設けてもよい。離型効果とは、転写材料を基板に重ねて加熱した後、版を引き剥がすときに有機層が支持体側に融着せず、効率よく基板に転写される効果である。
【0084】
版の表面は、JIS B0601−1982で規定される最大表面粗さRmaxが、転写材料の有機層の膜厚に対し0〜50%が好ましく、0〜25%であるのがより好ましく、0.0001〜10%であるのが特に好ましい。50%を超えると、有機層の膜厚の均一性や膜強度等の低下により、該有機層を転写する際の転写率が低下したり、転写後の膜質が低下することがある。
最大表面粗さRmaxを測定する方法としては、原子間力顕微鏡法、共焦点顕微鏡法、触針法、光学顕微干渉法、多重干渉法、光切断法等が挙げられるが、原子間力顕微鏡法及び共焦点顕微鏡法によるのが好ましい。
【0085】
(c)パターニング
本発明の転写材料は、所定のパターンを有する版(凸版や平版、凹版、孔版、好ましくは凸版)上に有機層を全面均一に形成することが好ましい。これにより、容易に有機層のパターニングを行うことができる。
本発明の版は所定パターンを正確に作成できるように、凸版や凹版はテーパしているのが好ましい。
また、複数回繰り返して有機層を転写する場合、位置合わせのためにマーキングしてもよい。マーキング法としては、一般に知られている公知の方法を適宜用いることができる。
【0086】
(d)版への有機層の形成
版への有機層の形成は、高分子化合物を含む場合と低分子化合物からなる場合によって好ましい方法が異なる。
有機層が低分子化合物からなる場合、有機層の乾燥膜厚が好ましくは200nm以下で均一な膜厚分布が得られれば特に制限はなく、高分子化合物の場合の塗布法に加え、真空製膜法を蒸着法も用いることができる。例えば、物理的な真空製膜法としては、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、レーザアブレーションMBE法、MOMBE法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、クラスターイオンビーム法、グロー放電スパッタリング法、イオンビームスパッタリング法、反応性スパッタリング法等を挙げることができる。化学的な真空製膜法としては、熱CVD法、MOCVD(MOVPE)法、RFプラズマCVD法、ECRプラズマCVD法、光CVD法、レーザCVD法、水銀増感法等を挙げることができる。なかでも、真空蒸着法が好ましい。これらの方法の詳細については、日本表面科学会編〔図解〕薄膜技術に記載されている。
【0087】
有機層がバインダーとして高分子化合物を含む場合、湿式法により版上に形成するのが好ましい。これには、有機層用材料を有機溶剤に所望の濃度に溶解し、得られた溶液を版上に塗布する。塗布法としては、有機薄膜層の乾燥膜厚が好ましくは200nm以下で均一な膜厚分布が得られれば特に制限はなく、スピンコート法、グラビアコート法、ディップコート法、キャスト法、ダイコート法、ロールコート法、バーコート法、エクストルージェンコート法、インクジェット塗布法等が挙げられる。なかでも、ロールツーロールによる生産性の高いエクストルージェンコート法が好ましい。
【0088】
[5]有機電界発光素子
(1)構成
有機電界発光素子の全体構成は、前述の通り基板上に順に陰極/電子注入層/発光層/陽極、陰極/電子注入層/電子輸送層/発光層/陽極、陰極/電子注入層/電子輸送層/発光層/正孔輸送性有機層/陽極、陰極/電子注入層/電子輸送層/発光層/正孔輸送性有機層/正孔注入性有機層/陽極等を積層した構成であってよい。発光層は蛍光発光性化合物及び/または燐光発光性化合物を含有し、陰極または陽極側から発光が取り出される。各層に用いる化合物の具体例については、例えば「月刊ディスプレイ」1998年10月号別冊の「有機ELディスプレイ」(テクノタイムズ社)等に記載されている。
【0089】
−陽極−
陰極または陽極のどちらでも透明電極として用いることができる。本発明の素子は逆構成素子であることが好ましく、この場合、陽極を透明電極として用い、陽極側から光を取り出すことが好ましい。
【0090】
前記陽極としては、通常、有機化合物層に正孔を供給する陽極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極の中から適宜選択することができる。
【0091】
前記陽極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、有機導電性化合物、またはこれらの混合物を好適に挙げられ、仕事関数が4.0eV以上の材料が好ましい。具体例としては、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の半導性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物または積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、前記半導性金属酸化物または金属化合物の分散物、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、及びこれらとITOとの積層物などが挙げられる。
【0092】
陽極は例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式、などの中から前記材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って前記基板上に形成することができる。例えば、前記陽極の材料として、ITOを選択する場合には、該陽極の形成は、直流あるいは高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレ−ティング法等に従って行うことができる。また前記陽極の材料として有機導電性化合物を選択する場合には湿式製膜法に従って行うことができる。中でも本発明においては発光素子の大面積化や、その生産性の点から湿式製膜法を用いることが好ましい。
【0093】
なお、陽極のパターニングは、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングにより行ってもよいし、レーザなどによる物理的エッチングにより行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法により行ってもよい。
【0094】
陽極の厚みとしては、前記材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10nm〜50μmであり、50nm〜20μmが好ましい。
【0095】
陽極の抵抗値としては、10Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましい。10Ω/□以下の場合、バスライン電極を設置することが、性能の優れた大面積発光素子を得る上では、好ましい。
【0096】
陽極は、無色透明であっても、有色透明であっても、不透明であってもよいが、陽極を透明陽極とし、透明陽極側から発光を取り出す場合にその透過率としては60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。この透過率は、分光高度計を用いた公知の方法に従って測定できる。透明陽極としては「透明導電膜の新展開」(沢田豊監修、シーエムシー刊、1999年)等に詳細に記載されている電極も本発明に適用できる。特に耐熱性の低いプラスチック基板を用いる場合は、透明導電層材料としてITOまたはIZOを使用し、150℃以下の低温で製膜するのが好ましい
【0097】
−陰極−
陰極としては、通常、前記有機化合物層に電子を注入する陰極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極の中から適宜選択することができる。
【0098】
陰極としては、例えば、金属単体や、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物などが挙げられ、仕事関数が4.5eV以下のものが好ましい。具体例としてはアルカリ金属(たとえば、Li、Na、K、Cs等)、アルカリ土類金属(たとえばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、イッテルビウム等の希土類金属、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。
【0099】
これらの中でも、電子注入性の点で、アルカリ金属やアルカリ度類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。
前記アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、またはアルミニウムと0.01〜10重量%のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属との合金若しくは混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。
【0100】
陰極側から光を取り出す場合、透明陰極を使用する必要がある。透明陰極は光に対して、実質上透明で有ればよい。前記電子注入性と透明性を両立するためには、薄膜の上記金属層と透明な導電層の2層構造をとることもできる。なお、前記薄膜金属層の材料については、特開平2−15595号公報、特開平5−121172号公報に詳述されている。前記薄膜の金属層の厚みは1nm以上50nm以下であることが好ましい。1nm以下であると、均一に薄膜層を製膜することが困難な場合があり、また50nmよりも厚いと光に対する透明性が悪くなる場合がある。
【0101】
2層構造をとる場合の透明導電層に用いられる材料としては、導電性、半導性が有り、透明である材料であるならば特に限定されることはなく、前記陽極に記載した材料が好適に用いることができ、中でも例えばアンチモンやフッ素等をド−プした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等を挙げることができる。
透明導電層の厚みは30nm以上500nm以下であることが好ましい。これよりも薄いと導電性、半導性が劣り、これよりも厚いと生産性が悪くなる。
【0102】
陰極の形成法は、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができるが、本発明においては真空機器内で行なうことが好ましい。例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ−ティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式、などの中から前記材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って前記基板上に形成することができる。例えば、陰極の材料として、金属等を選択する場合には、その1種または2種以上を同時または順次にスパッタ法等に従って行うことができる。また、有機伝導性材料を用いる場合、湿式製膜法を用いてもよい。
【0103】
なお、陰極のパターニングは、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングにより行ってもよいし、レーザなどによる物理的エッチングにより行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法により行ってもよい。
【0104】
以上説明した電極を、前記した転写材料の有機層を転写する工程の後に、転写された有機層上に貼り合せる工程を設けることができる。
この場合、基板の有機層面と電極面とを対面させ、加熱及び/又は加圧することにより、電極を有機層上に貼り合わせることができる。貼り合わせにおける加熱及び/又は加圧の条件、雰囲気は、上記転写条件と同様である。
【0105】
(4)パターニング
有機層のパターニングには、微細パターン状の開口部を有するマスク(微細マスク)を使用することもできる。マスクの材質は限定的でないが、金属、ガラス、セラミック、耐熱性樹脂等の耐久性があって安価なものが好ましい。またこれらの材料を組み合わせて使用することもできる。また機械的強度及び有機層の転写精度の観点から、マスクの厚さは2〜100μmであるのが好ましく、5〜60μmがより好ましい。転写材料の有機層が正確にマスクの開口部の形状通りに下地の透明導電層または他の有機層に接着するように、マスク開口部は基板側より転写材料側の方が大きくなるようにテーパしているのが好ましい。
【0106】
また。本発明において、
(イ)支持体上に有機層を少なくとも一層形成することにより、単数または複数の転写材料を形成する転写材料形成工程、
(ロ)上記単数または複数の転写材料のうちの1種の転写材料表面を、表面に所定パターンの凹凸が形成された押圧部材で押圧することにより、該転写材料表面に、前記押圧部材の凹凸に対応する凹凸パターンを形成するパターン形成工程、(ハ)上記凹凸パターンが形成された単数または複数の転写材料のうちの1種の転写材料の表面を所定の被成膜面と重ね合わせ、該転写材料の凸部の被転写材料に転写する操作を少なくとも一回繰り返すことにより、被成膜面上に上記単数または複数の異なる組成の有機層が形成されたパターン材料を製造する転写工程、を有するパターニング方法を用いた有機EL素子の製造方法も好適に利用できる。
【0107】
(5)その他の層
有機EL素子を構成する層として、発光性能の劣化を防止するために保護層や封止層を設けるのが好ましい。さらに転写材料においては発光性能に影響しなければ、転写性を向上するために支持体と有機層の間に剥離層を設けたり、有機層と被成膜面の間に接着層を設けたりしてもよい。
【0108】
(a)保護層
有機EL素子は、特開平7−85974号、同7−192866号、同8−22891号、同10−275682号、同10−106746号等に記載の保護層を有していてもよい。保護層は有機EL素子の最上面に形成する。ここで最上面とは、例えば基板、透明電極、有機層及び背面電極をこの順に積層する場合には背面電極の外側表面を指し、また例えば基板、背面電極、有機層及び透明電極をこの順に積層する場合には透明電極の外側表面を指す。保護層の形状、大きさ、厚さ等は特に限定的でない。保護層をなす材料は、水分や酸素等の有機EL素子を劣化させ得るものが素子内に侵入または透過するのを抑制する機能を有しているものであれば特に限定されず、例えば一酸化ケイ素、二酸化ケイ素、一酸化ゲルマニウム、二酸化ゲルマニウム等が使用できる。
【0109】
保護層の形成方法は特に限定はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子センエピタキシ法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等が適用できる。
【0110】
(b)封止層
有機EL素子には水分や酸素の侵入を防止するための封止層を設けるのが好ましい。封止層を形成する材料としては、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとの共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンまたはジクロロジフルオロエチレンと他のコモノマーとの共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質、金属(In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等)、金属酸化物(MgO、SiO、SiO、Al、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe、Y、TiO等)、金属フッ化物(MgF、LiF、AlF、CaF等)、液状フッ素化炭素(パーフルオロアルカン、パーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等)、液状フッ素化炭素に水分や酸素の吸着剤を分散させたもの等が使用可能である。
【0111】
外部からの水分や酸素を遮断する目的で、有機層を封止板、封止容器等の封止部材により封止するのが好ましい。封止部材を素子の外側表面側のみに設置しても、発光積層体(陽極/有機層/陰極の積層体)全体を封止部材で覆ってもよい。有機層を封止でき外部の空気を遮断することができれば、封止部材の形状、大きさ、厚さ等は特に限定されない。封止部材に用いる材料としては、ガラス、ステンレススチール、金属(アルミニウム等)、プラスチック(ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリエステル、ポリカーボネート等)、セラミック等が使用できる。
【0112】
封止部材を発光積層体に設置する際には、適宜封止剤(接着剤)を用いてもよい。発光積層体全体を封止部材で覆う場合は、封止剤を用いずに封止部材同士を熱融着してもよい。封止剤としては、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、二液型硬化樹脂等が使用可能である。
【0113】
さらに封止容器と有機EL素子の間の空間に水分吸収剤または不活性液体を挿入してもよい。水分吸収剤は特に限定されず、具体例としては酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、五酸化リン、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カルシウム、臭化バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、酸化マグネシウム等が挙げられる。不活性液体としてはパラフィン類、流動パラフィン類、フッ素系溶剤(パーフルオロアルカン、パーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等)、塩素系溶剤、シリコーンオイル類等が使用可能である。
【0114】
本発明の発光素子は、前記陽極と前記陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜40ボルト)、または直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
本発明の発光素子の駆動については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号、米国特許5828429号、同6023308号、日本特許第2784615号、等に記載の方法を利用することができる。
【0115】
【実施例】
本発明を以下の実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0116】
(実施例1)
〔発光素子101の作製〕
(A)転写材料Aの作製
ポリエーテルスルホン(住友ベークライト(株)製、厚さ188μm)の支持体の片面上に、下記組成を有する発光層用塗布液をバーコータを用いて塗布し、室温で乾燥させることにより、厚さ40nmの発光層を支持体上に形成した転写材料Aを作製した。
Figure 2004342407
【0117】
(B)転写材料Bの作製
ポリエーテルスルホン(住友ベークライト(株)製、厚さ188μm)の支持体の片面上に、下記組成を有するホール輸送層用塗布液エクストルージョン型塗布機を用いて塗布し、室温で乾燥させることにより、厚さ40nmのホール輸送層を支持体上に形成した転写材料Bを作製した。
(塗布液組成)
高分子化合物(PTPDES): 40質量部
添加剤(TBPA): 10質量部
ジクロロエタン: 3500質量部
【0118】
【化2】
Figure 2004342407
【0119】
【化3】
Figure 2004342407
【0120】
(C)有機電界発光素子の作製
5cm角(厚み30μm)のアルミ箔の両面にポリイミドシート(ユーピレックス50S、厚み50μm、宇部興産製)を接着剤を用いてラミネ−トし、基板を作成した。尚、該支持基板の熱線膨張係数は10ppm/℃であった(TMA測定)。また、該基板の水分透過率は0.01g/m・day以下(MOCON法、25℃、90%RH)、酸素透過率は0.01cc/m・day以下(MOCON法、25℃、0%RH)であった。
【0121】
この基板上に蒸着法により250nmの膜厚でAlを製膜した(陰極)。更にこの上に蒸着法によりLiFを1nmの膜厚で積層した。減圧状態を維持したまま、この基板上に下記組成を有する電子輸送層用塗布液をスピンコーターで塗布し、膜厚40nmの電子輸送層を作製した。
(塗布液組成)
前記した電子輸送性高分子化合物(1): 10質量部
ジクロロエタン: 1000質量部
【0122】
上記基板の電子輸送層表面の粗さは、JIS B0601−1982に基づき原子間力顕微鏡で最大高さRmaxを測定することにより評価した。測定は、SPI3800N SPA−400(セイコーインスツルメンツ(株)製)を用いて、20000nm×20000nmの面積を0.05nm毎(ピッチ)で格子状にサンプリングして行った。結果を表1に示す。
【0123】
上記基板の電子輸送層の上面に、転写材料Aの発光層側を重ね、転写材料Aの支持体側から0.3MPaの加圧力の1対のローラー(一方が155℃の加熱ローラー)の間を0.05m/分の速度で通すことにより転写材料Aの支持体側から加熱しながら加圧し、支持体を引き剥がすことにより、電子輸送層の上面に発光層を形成した。
【0124】
更に、発光層の上面に転写材料Bのホール輸送層側を重ね、転写材料Bの仮支持体側から0.3MPaの加圧力の1対のローラー(一方が155℃の加熱ローラー)の間を0.05m/分の速度で通すことにより転写材料Bの支持体側から加熱しながら加圧し、支持体を引き剥がすことにより、発光層の上面にホール輸送層を形成した。
【0125】
以上の様にして設けた有機層の上にDCマグネトロンスパッタにより200nmの膜厚でITO(インジウム/錫=95/5モル比)を成膜し陽極の透明電極を得た。次に陽極、陰極よりそれぞれアルミニウムのリード線を出して発光素子を作成した。さらにリード線部以外の部分をスパッタ法により窒化珪素により被い封止膜を作成し本発明に従う発光素子101を作成した。
【0126】
〔発光素子102の作製〕
発光素子101において、電子輸送層材料として前記した電子輸送性高分子化合物(5)を用いる以外は101と同様な方法で発光素子102を作製した。
【0127】
(比較例1)
〔発光素子103の作製〕
素子101において、Al及びLiFを積層した基板上に、下記組成を有する電子輸送層用塗布液をスピンコーターで塗布し、膜厚40nmの電子輸送層を作製し、さらに前記発光層を転写した基板上に、前記ホール輸送層用塗布液をスピンコーターで塗布し、膜厚40nmのホール輸送層を作成する以外は101と同様な方法で発光素子103を作製した。
Figure 2004342407
【0128】
【化4】
Figure 2004342407
【0129】
(比較例2)
〔発光素子104の作製〕
素子101において、転写材料Aの発光層を転写するかわりに、トリス(2−フェニルピリジル)イリジウム錯体及び4,4’−N,N’−ジカルバゾ−ルビフェニルをそれぞれ0.1nm/秒、1nm/秒の速度で共蒸着して、0.024μmの発光層を形成した。
【0130】
その上に、転写材料Bのホール輸送層を転写するかわりに、N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニルベンジジンを1nm/秒の速度で蒸着して0.04μmのホール輸送層を設けた。それ以外は素子101と同様にして発光素子104を作製した。
【0131】
以上のようにして得た発光素子を以下の方法で評価した。評価結果は、表1に示した。
東洋テクニカ製ソースメジャーユニット2400型を用いて、直流電圧を有機EL素子に印加し発光させ、1cd/m時の電圧を駆動電圧、200cd/m時の発光効率(η200)を外部量子効率とした。
【0132】
更に欠陥の有無を目視で評価した。欠陥は面積1mm当たりの個数により下記基準で評価した。
5個以下 A
20個以下 B
21個以上 C
【0133】
【表1】
Figure 2004342407
【0134】
表1に示される結果から、本発明の発光素子は低駆動電圧かつ高発光効率であり、欠陥も著しく少ないことが分かる。
【0135】
(実施例2)
〔発光素子201の作製〕
(a)陰極側基板Nの作成
実施例1で使用したものと同様な支持基板上に、蒸着法により250nmの膜厚でAlを製膜した。更にこの上に、LiFを蒸着法により1nmの膜厚で積層し、電子注入層とした。この電子注入層の上面に、実施例1で使用したものと同様な電子輸送層用塗布液を用いて、実施例1と同条件で電子輸送層を積層し、更にその上面に、実施例1で使用したものと同様な転写材料Aを用いて、実施例1と同条件で発光層を転写し、陰極側基板Nを作成した。
【0136】
(b)陽極側基板Pの作成
25mm角のガラス基板上に、ITOターゲット(インジウム/錫=95/5モル比)を用いて、DCマグネトロンスパッタ(条件:基板温度100℃、酸素圧1×10−3Pa)により厚さ200nmのITO薄膜からなる透明電極(陽極)を形成した。このITO薄膜の表面抵抗は10Ω/□であった。次に、この透明電極上にポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホン酸の水性分散液(BAYER社製、Baytron P:固形分1.3質量%)をスピンコートした後、150℃で2時間真空乾燥して厚さ100nmのホール輸送層を形成し、陽極側基板Pを作成した。
【0137】
(c)有機電界発光素子の作成
作成した基板Nと基板Pとを、それぞれの電極が交差し、且つ発光層が転写された被成膜面とホール輸送層が対面するように重ね合わせ、0.3MPaの加圧力の1対のローラー(一方が155℃の加熱ローラー)の間を0.05m/分の速度で通すことにより加熱しながら加圧し、貼り合せた。次に陽極、陰極よりアルミニウムのリード線を結線して発光素子を作成した。更に紫外線硬化型接着剤(長瀬チバ(株)製、XNR5493)を用い、ガラス製の封止容器で封止して本発明の発光素子201を作製した。
【0138】
〔発光素子202の作製〕
素子201において、電子輸送性層化合物として前記した電子輸送性高分子化合物(6)を1nm積層する以外は素子201と同様な方法で発光素子202を作製した。
【0139】
(比較例3)
〔発光素子203の作製〕
素子201において、Al及びLiFを積層した陰極側基板上に、下記組成を有する電子輸送層用塗布液をスピンコーターで塗布し、膜厚40nmの電子輸送層を作成する以外は素子201と同様な方法で素子203を作成した。
Figure 2004342407
【0140】
【化5】
Figure 2004342407
【0141】
(比較例4)
〔発光素子204の作製〕
素子201において、転写材料Aの発光層を転写するかわりに、トリス(2−フェニルピリジル)イリジウム錯体及び4,4’−N,N’−ジカルバゾ−ルビフェニルをそれぞれ0.1nm/秒、1nm/秒の速度で共蒸着して、0.024μmの発光層を形成する以外は素子201と同様にして発光素子204を作製した。
【0142】
作製した素子201〜204を用いて、実施例1と同様な評価を行った結果、本発明の発光素子201及び202は低駆動電圧かつ高発光効率であり、欠陥も著しく少なかったが、比較例の発光素子203及び204は高駆動電圧かつ低発光効率であり、欠陥も多かった。
【0143】
【発明の効果】
本発明の製造方法は、電子輸送性高分子を有する電子輸送層を陰極と発光層との間に設けるので、少なくとも発光層を含む有機層の転写が良好に行え、発光面の欠陥が少なく、発光特性や耐久性に優れた発光素子が得られ、さらに、製造工程が少なくなるため効率良く製造することができる。さらに、電子輸送層が湿式法により形成された層とすることで、蒸着法により形成された陰極の表面粗さを平滑化することが可能となり、電極同士の短絡や発光面状の悪化を防止することができる。
また、本発明の製造方法により作製することのできる、基板上に、陰極、有機層、陽極をこの順に有する素子は、高い開口率を有し、発光特性や耐久性に優れる。

Claims (8)

  1. 基板上に、陰極、電子輸送層、発光層、及び陽極を有し、電子輸送層が陰極と発光層との間にある有機電界発光素子であって、
    電子輸送層が電子輸送性高分子を含み、かつ、
    少なくとも1組の隣接する有機層同士は、転写又は貼り合わせにより接合されていることを特徴とする有機電界発光素子。
  2. 電子輸送層の発光層側の面の表面粗さRmaxが、該電子輸送層の膜厚の50%以下であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
  3. 電子輸送層が湿式法によって形成された層であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機電界発光素子。
  4. 基板上に、陰極、電子輸送層、発光層、及び陽極を有し、電子輸送層が陰極と発光層との間にある有機電界発光素子の製造方法であって、
    電子輸送層が電子輸送性高分子を有し、かつ、
    少なくとも一層の発光層を有する転写材料の発光層側と、少なくとも陰極及び電子輸送層を有する基板の電子輸送層側とを対面させ、加熱処理及び加圧処理の少なくとも一つを施すことにより、前記転写材料の少なくとも一層の発光層を前記基板上に転写する工程を含むことを特徴とする有機電界発光素子の製造方法。
  5. 電子輸送層の発光層側の面の表面粗さRmaxが、該電子輸送層の膜厚の50%以下であることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
  6. 電子輸送層が湿式法によって形成された層であることを特徴とする請求項4又は5に記載の製造方法。
  7. 転写する工程の後に、少なくとも一層の有機層を貼り合わせる工程をさらに有することを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の製造方法。
  8. 転写する工程の後に、電極を貼り合わせる工程をさらに有することを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載の製造方法。
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