JP2004340805A - 表面解析装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】表面上の凹凸成分の識別をより的確に行うことのできる表面解析装置を提供する。
【解決手段】コンピュータ24は、撮像装置23の撮像結果から得られたシリンダボア22内周表面の凹凸情報を2次元フーリエ変換して凹凸のパワースペクトルを求めるとともに、そのパワースペクトルの一定値以上のパワー値を有する座標点の中から任意に取り出された複数の座標点についてそれらのパワースペクトル原点を通る回帰直線の相関係数を求め、その相関係数に基づいてそれら座標点の方向成分が同一であるか否かを評価して、同一の方向成分を有する座標点群を抽出する。そして抽出された座標点群が螺旋条痕成分に対応したものと判定して、シリンダボア22内周表面の螺旋条痕成分と損傷部成分との識別を行う。
【選択図】 図1
【解決手段】コンピュータ24は、撮像装置23の撮像結果から得られたシリンダボア22内周表面の凹凸情報を2次元フーリエ変換して凹凸のパワースペクトルを求めるとともに、そのパワースペクトルの一定値以上のパワー値を有する座標点の中から任意に取り出された複数の座標点についてそれらのパワースペクトル原点を通る回帰直線の相関係数を求め、その相関係数に基づいてそれら座標点の方向成分が同一であるか否かを評価して、同一の方向成分を有する座標点群を抽出する。そして抽出された座標点群が螺旋条痕成分に対応したものと判定して、シリンダボア22内周表面の螺旋条痕成分と損傷部成分との識別を行う。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面上の凹凸成分の識別を行う表面解析装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関のシリンダボア22の内周表面には、ホーニング加工等による多数の螺旋条痕が形成されている。従来、そうした表面に存在する鋳巣や加工時にバイトによって付けられた傷等の損傷部の有無を検出するなどの目的で、シリンダボア内周表面の凹凸成分の識別を行う装置として、特許文献1に記載の表面解析装置が知られている。この表面解析装置では、CCDカメラ等の撮像装置によって撮像されたシリンダボア22の内周表面の画像をもとに、下記態様で損傷部成分の識別を行っている。
【0003】
まず表面解析装置は、撮像された画像を、シリンダボアの周方向をx軸とし、シリンダボアの高さ方向をy軸とする2次元座標に展開し、その2次元座標の各座標点の凹凸レベルをプロットした、図12(a)に示すようなシリンダボア内周表面の凹凸情報を作成する。
【0004】
次に表面解析装置は、その作成された凹凸情報を2次元フーリエ変換して、図12(b)に示すようなシリンダボア内周表面の凹凸のパワースペクトルを求める。同図(b)のu軸及びv軸は、上記x軸方向及びy軸方向の周波数をそれぞれ示している。パワースペクトルには、上記2次元フーリエ変換により求められた表面凹凸のx軸方向及びy軸方向の各周波数成分の畳み込み積分値(パワー値)がプロットされる。
【0005】
こうしたパワースペクトルでは、螺旋条痕のような規則性を有して形成された凹凸成分に対しては、上記u−v座標の原点(パワースペクトル原点)から同一の方向に、高いパワー値の座標点がプロットされる。一方、損傷部のような不規則に形成された凹凸成分に対しては、低いパワー値の座標点が無秩序に散在してプロットされる。よって、図12(a)に示すような二方向の螺旋条痕の存在するシリンダボア22内周表面の凹凸のパワースペクトルでは、上記u−v座標の原点にて交差する二直線からなる略X字状の領域に、パワー値の高い座標点が集中してプロットされる。
【0006】
図13には、上記パワースペクトルのu軸に対する上記上記u−v座標の原点回りの角度φと、その角度φの方向に位置する各座標点のパワー値の積算値(パワー積算値)との対応関係が示されている。ここで、パワー積算値がピークとなる角度ω1,ω2は、上記螺旋条痕成分に対応するパワー値の高い座標点が集中してプロットされた方向を示している。
【0007】
そこで表面解析装置は、図14に示すように、上記角度ω1,ω2の方向を中心とする所定の大きさの領域をマスキング領域として設定し、上記パワースペクトルに対してマスキングを施すことで、上記パワースペクトルから螺旋条痕成分を取り除く。そして表面解析装置は、マスキングの施されたパワースペクトルの2次元フーリエ逆変換を行うことで、シリンダボア内周表面の凹凸情報の中から損傷部成分の凹凸情報のみを抽出する。これにより、この表面解析装置では、シリンダボア内周表面に形成された多数の凹凸の中から、損傷部成分を識別するようにしている。
【0008】
【特許文献1】
特開平8−128960号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
こうした従来の表面解析装置における凹凸成分の識別手法では、マスキング領域の範囲を如何に設定するかによって識別結果が大きく左右されてしまい、その識別の精度や識別結果の再現性の確保は困難となっている。すなわちシリンダボア内周表面の螺旋条痕の状態が異なれば、上記パワースペクトル上の螺旋条痕成分に対応した座標点の分布態様も自ずと異なるため、螺旋条痕の状態に応じて上記マスキング領域の大きさを適宜変更しなければ、螺旋条痕成分と損傷部成分とを適正に識別することはできなくなってしまう。
【0010】
しかしながら特許文献1には、そうしたマスキング領域の大きさの設定手法について特に言及されておらず、螺旋条痕の状態の差異にまで対応した螺旋条痕成分と損傷部成分との識別手法は、未だ十分に確立されていないのが実情である。
【0011】
なお、上記のような識別手法は、シリンダボア内周表面における螺旋条痕成分と損傷部成分との識別以外にも、規則性を有して形成された凹凸の存在する表面での規則性凹凸成分とそれ以外の不規則凹凸成分との識別に応用することができる。例えばしぼ加工のような表面上に規則的な凹凸パターンの形成される加工の施された表面において、加工による凹凸と、加工によるもの以外の凹凸成分とを識別するための手法として、上記識別手法を利用することができる。しかしながら、そうした場合にも上記識別手法をそのまま適用してしまえば、やはり同様の問題が生じてしまうこととなる。
【0012】
本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、表面上の凹凸成分の識別をより的確に行うことのできる表面解析装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
以下、上述した目的を達成するための手段及びその作用効果を記載する。
請求項1に記載の発明は、表面に形成された多数の凹凸の中から、規則性を有して形成された規則凹凸成分とそれ以外の不規則凹凸成分との識別を行う表面解析装置において、前記表面の凹凸を検出して、2次元座標に展開された前記表面の各座標点の凹凸レベルを示す該表面の凹凸情報を生成する凹凸情報生成手段と、前記凹凸情報を2次元フーリエ変換して前記表面の凹凸のパワースペクトルを求める周波数分析手段と、前記パワースペクトルの一定値以上のパワー値を有する座標点の中から任意に取り出された複数の座標点についてそれらのパワースペクトル原点を通る回帰直線の相関係数を求め、その相関係数に基づいて前記複数の座標点の方向成分が同一であるか否かを評価して、同一の方向成分を有する座標点群を抽出する抽出手段と、を備え、前記抽出手段によって抽出された座標点群が前記規則凹凸成分に対応するものと判定して前記識別を行うことをその要旨とする。
【0014】
上記構成では、表面の凹凸の検出結果に基づいて、2次元座標に展開された表面の各座標点の凹凸レベルを示す表面の凹凸情報が生成され、それを2次元フーリエ変換することで、その凹凸のパワースペクトルが求められる。このパワースペクトルは、上記2次元座標の各座標軸方向における周波数を座標軸とした2次元座標上の各座標点に、凹凸レベルの各周波数成分の畳み込み積分値(パワー値)をプロットしたものとなる。
【0015】
こうしたパワースペクトルでは、上記規則凹凸成分に対しては、上記座標の原点、すなわちパワースペクトル原点から同一の方向に、高いパワー値の座標点がプロットされる。一方、上記不規則凹凸成分に対しては、低いパワー値の座標点が無秩序に散在してプロットされる。そのため、規則凹凸成分に対応する座標点のみを集めた座標点群について、上記パワースペクトル原点を通る回帰直線を求め、その相関係数を取れば、その値はほぼ1となる。
【0016】
そこで上記構成では、パワースペクトル上の一定値以上のパワー値を有する座標点の中から、複数の座標点を任意に取り出し、それらのパワースペクトル原点を通る回帰直線の相関係数を求めるようにしている。そして、その求められた相関係数に基づいてそれら複数の座標点の方向成分が同一であるか否かを評価して、同一の方向成分を有する座標点群を抽出するようにしている。そのため、パワースペクトル上から規則凹凸の凹凸成分に対応する座標点群のみを適切に抽出することができる。したがって、表面上の規則凹凸成分と不規則凹凸成分との識別をより的確に行うことができる。
【0017】
また請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の表面解析装置において、前記パワースペクトルに対して前記抽出手段によって抽出された座標点群以外の座標点にマスキングを施したものに2次元フーリエ逆変換を行って、前記規則凹凸成分の凹凸情報を生成する手段を更に備えることをその要旨とする。
【0018】
上記抽出手段によって抽出された座標点群の各座標点は、規則凹凸成分に対応したものとなっている。よって、それら抽出された座標点群以外の座標点にマスキングを施して2次元フーリエ逆変換を行えば、すなわち抽出された座標点群のみを対象として2次元フーリエ逆変換を行えば、上記2次元座標上の規則凹凸の配置を示す凹凸情報が得られるようになる。
【0019】
また請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の表面解析装置において、前記パワースペクトルに対して前記抽出手段によって抽出された座標点群にマスキングを施したものに2次元フーリエ逆変換を行って、前記不規則凹凸成分の凹凸情報を生成する手段を更に備えることをその要旨とする。
【0020】
上記抽出手段によって抽出されずに残された座標点は、不規則凹凸成分に対応したものとなる。よって、抽出された座標点群の各座標点にマスキングを施して2次元フーリエ逆変換を行えば、すなわち抽出された座標点群以外の座標点を対象として2次元フーリエ逆変換を行えば、上記2次元座標上の不規則凹凸成分の配置を示す凹凸情報が得られるようになる。
【0021】
更に請求項4に記載の発明は、多数の螺旋条痕の形成された表面の凹凸の中から、螺旋条痕成分と損傷部成分との識別を行う表面解析装置において、前記表面の凹凸を検出して、2次元座標に展開された前記表面の各座標点の凹凸レベルを示す該表面の凹凸情報を生成する凹凸情報生成手段と、前記凹凸情報を2次元フーリエ変換して前記表面の凹凸のパワースペクトルを求める周波数分析手段と、前記パワースペクトルの一定値以上のパワー値を有する座標点の中から任意に取り出された複数の座標点についてそれらのパワースペクトル原点を通る回帰直線の相関係数を求め、その相関係数に基づいて前記複数の座標点の方向成分が同一であるか否かを評価して、同一の方向成分を有する座標点群を抽出する抽出手段と、を備え、前記抽出手段によって抽出された座標点群が前記螺旋条痕成分に対応したものと判定して前記識別を行うことをその要旨とする。
【0022】
一定の方向に延びるように形成された螺旋条痕の存在する表面の凹凸情報を2次元フーリエ変換して得られたパワースペクトルでは、螺旋条痕に対応した凹凸成分に対しては、パワースペクトル原点から同一の方向に高いパワー値の座標点がプロットされる。一方、それ以外の凹凸成分に対しては、低いパワー値の座標点が無秩序に散在してプロットされる。そのため、上記構成のように任意に取り出された複数の座標点のパワースペクトル原点を通る回帰直線の相関係数に基づくことで、パワースペクトル上から螺旋条痕に対応した座標点群のみを的確に抽出することができる。したがって、表面上の螺旋条痕成分と損傷部成分との識別をより的確に行うことができる。
【0023】
また請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の表面解析装置において、前記パワースペクトルに対して前記抽出手段によって抽出された座標点群以外の座標点にマスキングを施したものに2次元フーリエ逆変換を行って、前記螺旋条痕成分の凹凸情報を生成する手段を更に備えることをその要旨とする。
【0024】
上記抽出手段によって抽出された座標点群の各座標点は、螺旋条痕に対応したものとなっている。よって、それら抽出された座標点群以外の座標点にマスキングを施して2次元フーリエ逆変換を行えば、すなわち抽出された座標点群のみを対象として2次元フーリエ逆変換を行えば、上記2次元座標上の螺旋条痕に対応する凹凸成分の配置を示す凹凸情報が得られるようになる。
【0025】
また請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の表面解析装置において、前記パワースペクトルに対して前記抽出手段によって抽出された座標点群にマスキングを施したものに2次元フーリエ逆変換を行って、前記表面の損傷部成分の凹凸情報を生成する手段を更に備えることをその要旨とする。
【0026】
上記抽出手段によって抽出されずに残された座標点は、螺旋条痕以外の凹凸成分、すなわち損傷部の凹凸成分に対応したものとなる。よって、抽出された座標点群の各座標点にマスキングを施して2次元フーリエ逆変換を行えば、すなわち抽出された座標点群以外の座標点を対象として2次元フーリエ逆変換を行えば、上記2次元座標上の損傷部に対応する凹凸成分の配置を示す凹凸情報が得られるようになる。
【0027】
また請求項7に記載の発明は、請求項4〜6のいずれかに記載の表面解析装置において、前記表面は、内燃機関のシリンダボアの内周表面であることをその要旨とする。
【0028】
上記構成によれば、ホーニング加工等によって多数の螺旋条痕の形成されたシリンダボアの内周表面において、その内周表面上の螺旋条痕成分とそれ以外の損傷部成分との識別を的確に行うことができる。そのため、損傷部の有無の検出や加工の良否の判定などを目的とした表面解析を的確に行うことができるようになる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を内燃機関のシリンダボア内周表面における凹凸成分の識別を行う表面解析装置として具体化した一実施形態を、図1〜図11を参照して詳細に説明する。
【0030】
図1に示すように、本実施形態の表面解析装置は、シリンダブロック21に形成されたシリンダボア22の内周表面を撮像する撮像装置23、及びその撮像装置23から出力される撮像信号に基づき、シリンダボア22内周表面の凹凸状態の解析を行うコンピュータ24とを備えて構成されている。
【0031】
撮像装置23は、シリンダボア22の内周表面を撮像するCCDカメラ、及びそのCCDカメラをシリンダボア22の高さ方向に往復駆動させるとともに、同CCDカメラをシリンダボア22の中心軸回りに回転駆動させる駆動装置を備えて構成されている。これら撮像装置23のCCDカメラ及び駆動装置は、コンピュータ24からの指令に応じて作動される。
【0032】
コンピュータ24は、解析に係る各種処理を実行するCPU、解析処理用のプログラムが記憶され、且つ上記撮像信号等の解析処理に必要な情報を記憶する記憶装置、解析結果等を出力するディスプレイ等の出力装置を備えて構成されている。またコンピュータ24には、撮像装置23から出力された撮像信号を入力する入力ポート、及び撮像装置23のCCDカメラや駆動装置に指令信号を出力する出力ポートが設けられている。
【0033】
以下、上記のように構成された本実施形態の表面解析装置における表面解析処理の詳細を説明する。
表面解析処理が開始されると、まずシリンダボア22の内周表面の撮像が行われる。撮像は、CCDカメラをシリンダボア22の中心軸回りに回転させつつ、シリンダボア22の高さ方向に移動させて、シリンダボア22の内周表面の全体を周方向及び高さ方向に順次走査しながら行われる。そして撮像を通じて撮像装置23から出力される撮像信号は、入力ポートを通じてコンピュータ24に入力される。
【0034】
図2に示すようにコンピュータ24は、撮像信号が入力されると、その信号を順次処理して、シリンダボア22内周表面の凹凸情報を生成して記憶装置に順次記憶する。シリンダボア22の内周表面すべての凹凸情報が作成されると、その凹凸情報の2次元フーリエ変換処理により、同表面の凹凸のパワースペクトルが作成され、記憶装置に記憶される。
【0035】
図3(b)に、撮像信号に基づき生成された上記シリンダボア22内周表面の凹凸情報の一例を示す。この凹凸情報には、同図(a)に示すようなシリンダボア22の周方向をx軸とし、その高さ方向をy軸とする2次元座標に展開されたシリンダボア22内周表面の各座標点毎の輝度レベルが、凹凸レベルの指標値としてプロットされている。
【0036】
図4は、図3(b)のIV領域におけるシリンダボア22内周表面の拡大図である。同図に示すように、シリンダボア22の内周表面には、ほぼ一定間隔で規則的に表れる複数の螺旋条痕に加え、多数の損傷部が存在している。
【0037】
図5は、上記シリンダボア22内周表面の凹凸情報を2次元フーリエ変換して得られたパワースペクトルの一例を示している。同図のu軸及びv軸は、上記x軸方向及びy軸方向の周波数をそれぞれ示している。そして、そうしたu−v座標上の各座標点には、シリンダボア22の内周表面の上記x軸方向及びy軸方向における輝度レベルの各周波数成分の畳み込み積分値(パワー値)がプロットされている。こうしたパワースペクトルでは、その第1象限及び第3象限、第2象限及び第4象限が、上記u−v座標の原点(パワースペクトル原点)に対する点対称となっている。
【0038】
以上のようにしてシリンダボア22内周表面の凹凸のパワースペクトルを求めた後、コンピュータ24は、シリンダボア22内周表面の凹凸に含まれる螺旋条痕成分と損傷部成分との識別を行うための成分識別処理を実行する。以下、図5のパワースペクトルを簡易化した図6のモデルを用いて成分識別処理の詳細を説明する。
【0039】
まずここでは、図7及び図8に基づき、第2象限を対象とした成分識別処理の手順を説明する。図7(a)は、図6のパワースペクトルの第2象限を示している。同図7(a)の各座標点に付された数字は、第2象限の各座標点におけるパワー値の大きさの順序を示している。なお以下では、sを任意の自然数としたとき、s番目にパワー値の大きい座標点を「座標点P(i)」と表記する。
【0040】
始めにコンピュータ24は、パワースペクトルの座標点中、最もパワー値の大きい座標点P(1)を選択し、その座標点P(1)と同一の方向成分を有する座標点群U(1)の抽出処理を行う。この抽出処理は、以下の態様で行われる。
【0041】
まずコンピュータ24は、上記座標点P(1)に次いでパワー値の大きい座標点P(2)を選択し、それら座標点P(1),P(2)についての上記パワースペクトル原点Oを通る回帰直線に対する相関係数rを求める。そして、その相関係数rに基づき、それら座標点P(1),P(2)の方向成分が同一であるか否かを判定する。すなわちそれら座標点P(1),P(2)の相関係数rの値がほぼ「1」であれば(r≒1)、それらは同一の方向成分を有していると判定され、そうでなければ(r<<1)、それらの方向成分は異なっていると判定される。ここでは図7(b)に示すように、座標点P(1),P(2)の上記相関係数rの値はほぼ「1」となっているため、それらは同一の方向成分を有する座標点群U(1)に属していると判定される。
【0042】
続いてコンピュータ24は、図7(c)に示すように、3番目にパワー値の大きい座標点P(3)を選択し、その座標点P(3)及び上記座標点P(1),P(2)についての上記相関係数rを求める。そしてコンピュータ24は、その相関係数rに基づき、今回選択された座標点P(3)が、上記座標点P(1),P(2)と同一の方向成分を有しているか否かの判定を行う。ここでは同図に示すように、座標点P(3)は、上記座標点P(1),P(2)とは、方向成分が異なる(r<<1)と判定されている。この場合、座標点P(3)は、座標点群U(1)からは排除される。
【0043】
その後、コンピュータ24は、図7(d)、図7(e)に示すように、4番目にパワー値の大きい座標点P(4)、5番目にパワー値の大きい座標点P(5)・・・と、パワー値の大きい順に座標点を選択しつつ、上記判定を必要な回数繰返し実施する。これにより、図7(f)に示すように、最もパワー値の大きい座標点P(1)と同一の方向成分を有する座標点群U(1)を抽出する。
【0044】
こうして座標点群U(1)の抽出が完了すると、コンピュータ24は、その座標点群U(1)から排除された座標点の中で最もパワー値の大きい座標点を選択する。この例では、図8(a)に示すように、上記座標点P(3)が選択される。そして上記座標点群U(1)から排除された座標点を対象として、上記と同様の抽出処理を行い、図8(b)に示すように、その座標点P(3)と同一の方向成分を有する座標点群U(2)を抽出する。
【0045】
コンピュータ24は、そうした抽出処理を、同一の方向成分を有する座標点群が抽出されなくなるまで繰返し行うことで、図8(c)に示すようにパワースペクトルの第2象限に存在する同一の方向成分を有する座標点群を抽出する。以後、コンピュータ24は、パワースペクトルの第1象限を対象として同様の抽出処理を実施し、その第1象限に存在する同一の方向成分を有する座標点群の抽出を行う。
【0046】
こうして抽出された各座標点群は、シリンダボア22の内周表面の同一方向に延びる螺旋条痕のそれぞれに対応している。またいずれの座標点群からも排除された各座標点は、螺旋条痕以外のシリンダボア22内周表面の凹凸成分、すなわち損傷部成分に対応している。したがって、以上の抽出処理を通じて、パワースペクトル上で、螺旋条痕成分に対応する座標点と損傷部成分に対応する座標点とが分離されることとなる。そして、分離された各成分のパワースペクトルを2次元フーリエ逆変換すれば、各成分についてのシリンダボア22内周表面における凹凸情報が得られるようになる。
【0047】
図9に、本実施形態の成分識別処理の全容をブロック図として示す。同図には、パワースペクトルにて、方向成分のそれぞれ異なる螺旋条痕成分A〜Cに対応する3つの座標点群が抽出された場合が示されている。同図に示すように、本実施形態では、上記抽出された各座標点群を合成したものに2次元フーリエ逆変換を行うことで、シリンダボア22内周表面の螺旋条痕成分の凹凸情報が生成されている。またそれら以外の座標点を対象に2次元フーリエ逆変換を行うことで、損傷部成分の凹凸情報が生成されている。なお抽出された各座標点群に対して個別に2次元フーリエ逆変換を行い、各方向の螺旋条痕成分の凹凸情報をそれぞれ個別に生成することも可能である。
【0048】
図10及び図11は、以上説明した成分識別処理のフローチャートを示している。この処理は、図2の処理を通じて、シリンダボア22内周表面の凹凸のパワースペクトルが生成された後、コンピュータ24によって実行される。なお本処理の開始時の下記カウンタi及びカウンタjの値はそれぞれ「1」に設定されている。
【0049】
同図に示すように、成分識別処理が開始されると、コンピュータ24は、まずステップS101において、上記パワースペクトルの情報を読み込み、ステップS102において、そのパワースペクトルの中で最もパワー値の大きい座標点P(1)を選択する。そしてコンピュータ24は、ステップS110〜S122の処理を、カウンタjの値が所定値Nに達するまで繰返し実行する。
【0050】
ステップS110においてコンピュータ24は、未だ座標点群のいずれにも加えられずに残された座標点の中から、前回選択された座標点P(i−1)に次いでパワー値の大きい座標点P(i)を選択し、ステップS111において、その座標点P(i)を座標点群U(j)に加える。
【0051】
続くステップS112においてコンピュータ24は、今回選択された座標点P(i)を加えた座標点群U(j)のパワースペクトル原点Oを通る回帰直線を求め、ステップS113においてその回帰直線の相関係数rを算出する。そしてコンピュータ24は、ステップS114において、算出された相関係数rの値がほぼ1であるか否かを、すなわち今回選択された座標点P(i)が、座標点群U(j)の他の座標点と同一の方向成分を有しているか否かを判定する。ここで相関係数rの値がほぼ1であれば(S114:YES)、コンピュータ24は、今回選択された座標点P(i)を座標点群U(j)に残留させたまま、処理をステップS116に移行する。そうでなければ(S114:NO)、コンピュータ24は、処理をステップS115に進めて、座標点P(i)を座標点群U(j)から排除した後、ステップS116に処理を移行する。
【0052】
ステップS116においてコンピュータ24は、カウンタiの値が所定値nに達しているか否かを判定する。ここでカウンタiの値が所定値nに達していなければ(S116:NO)、コンピュータ24は、カウンタiの値に1を加算した後、処理をステップS110に戻す。
【0053】
ここでカウンタiの値が所定値nに達していれば(S116:YES)、コンピュータ24は処理をステップS120に進め、カウンタjの値が所定値Nに達しているか否かを判定する。ここでカウンタjの値が所定値Nに達していなければ(S120:NO)、コンピュータ24は処理をステップS121に進め、そのとき座標点群U(j)に残された各座標点を選択対象から除外し、続くステップS122において、除外されずに残された座標点の中から最もパワー値の大きい座標点を選択する。そしてコンピュータ24は、カウンタjの値に1を加算して、ステップS110に処理を再び戻す。
【0054】
一方、カウンタjの値が所定値Nに達していれば(S120:YES)、コンピュータ24は、ステップS140以降の処理に進み、螺旋条痕成分及び損傷成分の各凹凸情報の生成を行う。すなわち、コンピュータ24は、ステップS140において、抽出された各座標点群U(1)〜U(N)を合成し、ステップS141において、その合成された座標点群U(1)〜U(N)のいずれからも除外された座標点のパワー値を「0」として2次元フーリエ逆変換を行って、螺旋条痕成分の凹凸情報を生成する。またコンピュータ24は、ステップS142において、その合成された座標点群U(1)〜U(N)に含まれる座標点のパワー値を「0」として2次元フーリエ逆変換を行い、損傷部成分の凹凸情報を生成する。なおこのとき、上記抽出された各座標点群U(1)〜U(N)のそれぞれに個別に2次元フーリエ逆変換を行えば、方向の異なる螺旋条痕成分の凹凸情報を個別に生成することができる。
【0055】
こうして両成分の凹凸情報を生成した後、コンピュータ24は本処理を終了する。そして生成された両成分の凹凸情報を用いて、シリンダボア22内周表面の損傷部の検出や、ホーニング加工の良否の判定などが行われる。
【0056】
なお本実施形態では、図2の解析準備処理が上記凹凸情報生成手段及び上記周波数分析手段の処理に、図10のステップS102〜S122の処理が、上記抽出手段の処理に、それぞれ対応している。またシリンダボア22内周表面に形成された凹凸の螺旋条痕成分が上記規則凹凸成分に、損傷部成分が上記不規則凹凸成分に、それぞれ対応している。
【0057】
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態の表面解析装置では、上記相関係数rに基づく評価を通じて、パワースペクトル上の同一方向成分を有する座標点群を抽出することで、シリンダボア22内周表面の螺旋条痕成分と損傷部成分との識別を的確に行うことができる。
【0058】
(2)螺旋条痕の状態に応じて上記抽出時のマスキングの範囲が的確に設定されるため、螺旋条痕の形成状態の差違に拘わらず、螺旋条痕成分と損傷部成分とを的確に識別することができる。
【0059】
(3)成分識別に係る手法が明確に定義されているため、識別結果の再現性を高めて、その結果に高い信頼性を確保することができる。
(4)成分識別に係る処理がすべて自動化されているため、シリンダボア22内周表面の凹凸状態の解析を容易に行うことができる。
【0060】
(5)上記生成される損傷部の凹凸情報によって、シリンダボア22内周表面の損傷部の位置や状態を明確に把握することができ、損傷部の検出等を好適に行うことができる。
【0061】
(6)上記生成される螺旋条痕の凹凸情報によって、シリンダボア22内周表面における螺旋条痕の状態を明確に把握することができ、ホーニング加工の良否判定等の螺旋条痕の評価を好適に行うことができる。
【0062】
なお、上記実施形態は次のように変更して実施することもできる。
・上記実施形態の撮像装置23の代りとして3次元粗さ測定器や形状測定器等を採用し、凹凸レベルの指標値としてそれらの測定結果(3次元粗さや形状の測定データ)を用いて凹凸成分の識別を行うようにしても良い。
【0063】
要は、規則性を有して形成された規則凹凸成分とそれ以外の不規則凹凸成分とが存在する表面について、その規則凹凸成分と不規則凹凸成分との識別を行う表面解析装置であれば、本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の全体構造を示す模式図。
【図2】同実施形態の解析準備処理の処理手順を示すブロック図。
【図3】シリンダボア22の内周表面の(a)座標系、及び(b)凹凸情報の一例を併せ示す図。
【図4】シリンダボア22の内周表面の拡大図。
【図5】2次元フーリエ変換された凹凸情報のパワースペクトルの一例を示す図。
【図6】同じく凹凸情報のパワースペクトルの簡易モデルを示す図。
【図7】(a)〜(f)上記実施形態における成分識別処理の処理例を示す図。
【図8】(a)〜(c)同じく成分識別処理の処理例を示す図。
【図9】同成分識別処理の全容を示すブロック図。
【図10】同成分識別処理の処理手順を示すフローチャート。
【図11】同じく成分識別処理の処理手順を示すフローチャート。
【図12】従来の表面解析装置の凹凸成分識別処理で生成される(a)凹凸情報の一例、及び(b)パワースペクトルの一例を併せ示す図。
【図13】同処理におけるパワー積算値と角度φとの関係を示すグラフ。
【図14】同処理でのマスキング領域の設定例を示す図。
【符号の説明】
21…シリンダブロック、22…シリンダボア、23…撮像装置、24…コンピュータ。
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面上の凹凸成分の識別を行う表面解析装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関のシリンダボア22の内周表面には、ホーニング加工等による多数の螺旋条痕が形成されている。従来、そうした表面に存在する鋳巣や加工時にバイトによって付けられた傷等の損傷部の有無を検出するなどの目的で、シリンダボア内周表面の凹凸成分の識別を行う装置として、特許文献1に記載の表面解析装置が知られている。この表面解析装置では、CCDカメラ等の撮像装置によって撮像されたシリンダボア22の内周表面の画像をもとに、下記態様で損傷部成分の識別を行っている。
【0003】
まず表面解析装置は、撮像された画像を、シリンダボアの周方向をx軸とし、シリンダボアの高さ方向をy軸とする2次元座標に展開し、その2次元座標の各座標点の凹凸レベルをプロットした、図12(a)に示すようなシリンダボア内周表面の凹凸情報を作成する。
【0004】
次に表面解析装置は、その作成された凹凸情報を2次元フーリエ変換して、図12(b)に示すようなシリンダボア内周表面の凹凸のパワースペクトルを求める。同図(b)のu軸及びv軸は、上記x軸方向及びy軸方向の周波数をそれぞれ示している。パワースペクトルには、上記2次元フーリエ変換により求められた表面凹凸のx軸方向及びy軸方向の各周波数成分の畳み込み積分値(パワー値)がプロットされる。
【0005】
こうしたパワースペクトルでは、螺旋条痕のような規則性を有して形成された凹凸成分に対しては、上記u−v座標の原点(パワースペクトル原点)から同一の方向に、高いパワー値の座標点がプロットされる。一方、損傷部のような不規則に形成された凹凸成分に対しては、低いパワー値の座標点が無秩序に散在してプロットされる。よって、図12(a)に示すような二方向の螺旋条痕の存在するシリンダボア22内周表面の凹凸のパワースペクトルでは、上記u−v座標の原点にて交差する二直線からなる略X字状の領域に、パワー値の高い座標点が集中してプロットされる。
【0006】
図13には、上記パワースペクトルのu軸に対する上記上記u−v座標の原点回りの角度φと、その角度φの方向に位置する各座標点のパワー値の積算値(パワー積算値)との対応関係が示されている。ここで、パワー積算値がピークとなる角度ω1,ω2は、上記螺旋条痕成分に対応するパワー値の高い座標点が集中してプロットされた方向を示している。
【0007】
そこで表面解析装置は、図14に示すように、上記角度ω1,ω2の方向を中心とする所定の大きさの領域をマスキング領域として設定し、上記パワースペクトルに対してマスキングを施すことで、上記パワースペクトルから螺旋条痕成分を取り除く。そして表面解析装置は、マスキングの施されたパワースペクトルの2次元フーリエ逆変換を行うことで、シリンダボア内周表面の凹凸情報の中から損傷部成分の凹凸情報のみを抽出する。これにより、この表面解析装置では、シリンダボア内周表面に形成された多数の凹凸の中から、損傷部成分を識別するようにしている。
【0008】
【特許文献1】
特開平8−128960号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
こうした従来の表面解析装置における凹凸成分の識別手法では、マスキング領域の範囲を如何に設定するかによって識別結果が大きく左右されてしまい、その識別の精度や識別結果の再現性の確保は困難となっている。すなわちシリンダボア内周表面の螺旋条痕の状態が異なれば、上記パワースペクトル上の螺旋条痕成分に対応した座標点の分布態様も自ずと異なるため、螺旋条痕の状態に応じて上記マスキング領域の大きさを適宜変更しなければ、螺旋条痕成分と損傷部成分とを適正に識別することはできなくなってしまう。
【0010】
しかしながら特許文献1には、そうしたマスキング領域の大きさの設定手法について特に言及されておらず、螺旋条痕の状態の差異にまで対応した螺旋条痕成分と損傷部成分との識別手法は、未だ十分に確立されていないのが実情である。
【0011】
なお、上記のような識別手法は、シリンダボア内周表面における螺旋条痕成分と損傷部成分との識別以外にも、規則性を有して形成された凹凸の存在する表面での規則性凹凸成分とそれ以外の不規則凹凸成分との識別に応用することができる。例えばしぼ加工のような表面上に規則的な凹凸パターンの形成される加工の施された表面において、加工による凹凸と、加工によるもの以外の凹凸成分とを識別するための手法として、上記識別手法を利用することができる。しかしながら、そうした場合にも上記識別手法をそのまま適用してしまえば、やはり同様の問題が生じてしまうこととなる。
【0012】
本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、表面上の凹凸成分の識別をより的確に行うことのできる表面解析装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
以下、上述した目的を達成するための手段及びその作用効果を記載する。
請求項1に記載の発明は、表面に形成された多数の凹凸の中から、規則性を有して形成された規則凹凸成分とそれ以外の不規則凹凸成分との識別を行う表面解析装置において、前記表面の凹凸を検出して、2次元座標に展開された前記表面の各座標点の凹凸レベルを示す該表面の凹凸情報を生成する凹凸情報生成手段と、前記凹凸情報を2次元フーリエ変換して前記表面の凹凸のパワースペクトルを求める周波数分析手段と、前記パワースペクトルの一定値以上のパワー値を有する座標点の中から任意に取り出された複数の座標点についてそれらのパワースペクトル原点を通る回帰直線の相関係数を求め、その相関係数に基づいて前記複数の座標点の方向成分が同一であるか否かを評価して、同一の方向成分を有する座標点群を抽出する抽出手段と、を備え、前記抽出手段によって抽出された座標点群が前記規則凹凸成分に対応するものと判定して前記識別を行うことをその要旨とする。
【0014】
上記構成では、表面の凹凸の検出結果に基づいて、2次元座標に展開された表面の各座標点の凹凸レベルを示す表面の凹凸情報が生成され、それを2次元フーリエ変換することで、その凹凸のパワースペクトルが求められる。このパワースペクトルは、上記2次元座標の各座標軸方向における周波数を座標軸とした2次元座標上の各座標点に、凹凸レベルの各周波数成分の畳み込み積分値(パワー値)をプロットしたものとなる。
【0015】
こうしたパワースペクトルでは、上記規則凹凸成分に対しては、上記座標の原点、すなわちパワースペクトル原点から同一の方向に、高いパワー値の座標点がプロットされる。一方、上記不規則凹凸成分に対しては、低いパワー値の座標点が無秩序に散在してプロットされる。そのため、規則凹凸成分に対応する座標点のみを集めた座標点群について、上記パワースペクトル原点を通る回帰直線を求め、その相関係数を取れば、その値はほぼ1となる。
【0016】
そこで上記構成では、パワースペクトル上の一定値以上のパワー値を有する座標点の中から、複数の座標点を任意に取り出し、それらのパワースペクトル原点を通る回帰直線の相関係数を求めるようにしている。そして、その求められた相関係数に基づいてそれら複数の座標点の方向成分が同一であるか否かを評価して、同一の方向成分を有する座標点群を抽出するようにしている。そのため、パワースペクトル上から規則凹凸の凹凸成分に対応する座標点群のみを適切に抽出することができる。したがって、表面上の規則凹凸成分と不規則凹凸成分との識別をより的確に行うことができる。
【0017】
また請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の表面解析装置において、前記パワースペクトルに対して前記抽出手段によって抽出された座標点群以外の座標点にマスキングを施したものに2次元フーリエ逆変換を行って、前記規則凹凸成分の凹凸情報を生成する手段を更に備えることをその要旨とする。
【0018】
上記抽出手段によって抽出された座標点群の各座標点は、規則凹凸成分に対応したものとなっている。よって、それら抽出された座標点群以外の座標点にマスキングを施して2次元フーリエ逆変換を行えば、すなわち抽出された座標点群のみを対象として2次元フーリエ逆変換を行えば、上記2次元座標上の規則凹凸の配置を示す凹凸情報が得られるようになる。
【0019】
また請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の表面解析装置において、前記パワースペクトルに対して前記抽出手段によって抽出された座標点群にマスキングを施したものに2次元フーリエ逆変換を行って、前記不規則凹凸成分の凹凸情報を生成する手段を更に備えることをその要旨とする。
【0020】
上記抽出手段によって抽出されずに残された座標点は、不規則凹凸成分に対応したものとなる。よって、抽出された座標点群の各座標点にマスキングを施して2次元フーリエ逆変換を行えば、すなわち抽出された座標点群以外の座標点を対象として2次元フーリエ逆変換を行えば、上記2次元座標上の不規則凹凸成分の配置を示す凹凸情報が得られるようになる。
【0021】
更に請求項4に記載の発明は、多数の螺旋条痕の形成された表面の凹凸の中から、螺旋条痕成分と損傷部成分との識別を行う表面解析装置において、前記表面の凹凸を検出して、2次元座標に展開された前記表面の各座標点の凹凸レベルを示す該表面の凹凸情報を生成する凹凸情報生成手段と、前記凹凸情報を2次元フーリエ変換して前記表面の凹凸のパワースペクトルを求める周波数分析手段と、前記パワースペクトルの一定値以上のパワー値を有する座標点の中から任意に取り出された複数の座標点についてそれらのパワースペクトル原点を通る回帰直線の相関係数を求め、その相関係数に基づいて前記複数の座標点の方向成分が同一であるか否かを評価して、同一の方向成分を有する座標点群を抽出する抽出手段と、を備え、前記抽出手段によって抽出された座標点群が前記螺旋条痕成分に対応したものと判定して前記識別を行うことをその要旨とする。
【0022】
一定の方向に延びるように形成された螺旋条痕の存在する表面の凹凸情報を2次元フーリエ変換して得られたパワースペクトルでは、螺旋条痕に対応した凹凸成分に対しては、パワースペクトル原点から同一の方向に高いパワー値の座標点がプロットされる。一方、それ以外の凹凸成分に対しては、低いパワー値の座標点が無秩序に散在してプロットされる。そのため、上記構成のように任意に取り出された複数の座標点のパワースペクトル原点を通る回帰直線の相関係数に基づくことで、パワースペクトル上から螺旋条痕に対応した座標点群のみを的確に抽出することができる。したがって、表面上の螺旋条痕成分と損傷部成分との識別をより的確に行うことができる。
【0023】
また請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の表面解析装置において、前記パワースペクトルに対して前記抽出手段によって抽出された座標点群以外の座標点にマスキングを施したものに2次元フーリエ逆変換を行って、前記螺旋条痕成分の凹凸情報を生成する手段を更に備えることをその要旨とする。
【0024】
上記抽出手段によって抽出された座標点群の各座標点は、螺旋条痕に対応したものとなっている。よって、それら抽出された座標点群以外の座標点にマスキングを施して2次元フーリエ逆変換を行えば、すなわち抽出された座標点群のみを対象として2次元フーリエ逆変換を行えば、上記2次元座標上の螺旋条痕に対応する凹凸成分の配置を示す凹凸情報が得られるようになる。
【0025】
また請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の表面解析装置において、前記パワースペクトルに対して前記抽出手段によって抽出された座標点群にマスキングを施したものに2次元フーリエ逆変換を行って、前記表面の損傷部成分の凹凸情報を生成する手段を更に備えることをその要旨とする。
【0026】
上記抽出手段によって抽出されずに残された座標点は、螺旋条痕以外の凹凸成分、すなわち損傷部の凹凸成分に対応したものとなる。よって、抽出された座標点群の各座標点にマスキングを施して2次元フーリエ逆変換を行えば、すなわち抽出された座標点群以外の座標点を対象として2次元フーリエ逆変換を行えば、上記2次元座標上の損傷部に対応する凹凸成分の配置を示す凹凸情報が得られるようになる。
【0027】
また請求項7に記載の発明は、請求項4〜6のいずれかに記載の表面解析装置において、前記表面は、内燃機関のシリンダボアの内周表面であることをその要旨とする。
【0028】
上記構成によれば、ホーニング加工等によって多数の螺旋条痕の形成されたシリンダボアの内周表面において、その内周表面上の螺旋条痕成分とそれ以外の損傷部成分との識別を的確に行うことができる。そのため、損傷部の有無の検出や加工の良否の判定などを目的とした表面解析を的確に行うことができるようになる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を内燃機関のシリンダボア内周表面における凹凸成分の識別を行う表面解析装置として具体化した一実施形態を、図1〜図11を参照して詳細に説明する。
【0030】
図1に示すように、本実施形態の表面解析装置は、シリンダブロック21に形成されたシリンダボア22の内周表面を撮像する撮像装置23、及びその撮像装置23から出力される撮像信号に基づき、シリンダボア22内周表面の凹凸状態の解析を行うコンピュータ24とを備えて構成されている。
【0031】
撮像装置23は、シリンダボア22の内周表面を撮像するCCDカメラ、及びそのCCDカメラをシリンダボア22の高さ方向に往復駆動させるとともに、同CCDカメラをシリンダボア22の中心軸回りに回転駆動させる駆動装置を備えて構成されている。これら撮像装置23のCCDカメラ及び駆動装置は、コンピュータ24からの指令に応じて作動される。
【0032】
コンピュータ24は、解析に係る各種処理を実行するCPU、解析処理用のプログラムが記憶され、且つ上記撮像信号等の解析処理に必要な情報を記憶する記憶装置、解析結果等を出力するディスプレイ等の出力装置を備えて構成されている。またコンピュータ24には、撮像装置23から出力された撮像信号を入力する入力ポート、及び撮像装置23のCCDカメラや駆動装置に指令信号を出力する出力ポートが設けられている。
【0033】
以下、上記のように構成された本実施形態の表面解析装置における表面解析処理の詳細を説明する。
表面解析処理が開始されると、まずシリンダボア22の内周表面の撮像が行われる。撮像は、CCDカメラをシリンダボア22の中心軸回りに回転させつつ、シリンダボア22の高さ方向に移動させて、シリンダボア22の内周表面の全体を周方向及び高さ方向に順次走査しながら行われる。そして撮像を通じて撮像装置23から出力される撮像信号は、入力ポートを通じてコンピュータ24に入力される。
【0034】
図2に示すようにコンピュータ24は、撮像信号が入力されると、その信号を順次処理して、シリンダボア22内周表面の凹凸情報を生成して記憶装置に順次記憶する。シリンダボア22の内周表面すべての凹凸情報が作成されると、その凹凸情報の2次元フーリエ変換処理により、同表面の凹凸のパワースペクトルが作成され、記憶装置に記憶される。
【0035】
図3(b)に、撮像信号に基づき生成された上記シリンダボア22内周表面の凹凸情報の一例を示す。この凹凸情報には、同図(a)に示すようなシリンダボア22の周方向をx軸とし、その高さ方向をy軸とする2次元座標に展開されたシリンダボア22内周表面の各座標点毎の輝度レベルが、凹凸レベルの指標値としてプロットされている。
【0036】
図4は、図3(b)のIV領域におけるシリンダボア22内周表面の拡大図である。同図に示すように、シリンダボア22の内周表面には、ほぼ一定間隔で規則的に表れる複数の螺旋条痕に加え、多数の損傷部が存在している。
【0037】
図5は、上記シリンダボア22内周表面の凹凸情報を2次元フーリエ変換して得られたパワースペクトルの一例を示している。同図のu軸及びv軸は、上記x軸方向及びy軸方向の周波数をそれぞれ示している。そして、そうしたu−v座標上の各座標点には、シリンダボア22の内周表面の上記x軸方向及びy軸方向における輝度レベルの各周波数成分の畳み込み積分値(パワー値)がプロットされている。こうしたパワースペクトルでは、その第1象限及び第3象限、第2象限及び第4象限が、上記u−v座標の原点(パワースペクトル原点)に対する点対称となっている。
【0038】
以上のようにしてシリンダボア22内周表面の凹凸のパワースペクトルを求めた後、コンピュータ24は、シリンダボア22内周表面の凹凸に含まれる螺旋条痕成分と損傷部成分との識別を行うための成分識別処理を実行する。以下、図5のパワースペクトルを簡易化した図6のモデルを用いて成分識別処理の詳細を説明する。
【0039】
まずここでは、図7及び図8に基づき、第2象限を対象とした成分識別処理の手順を説明する。図7(a)は、図6のパワースペクトルの第2象限を示している。同図7(a)の各座標点に付された数字は、第2象限の各座標点におけるパワー値の大きさの順序を示している。なお以下では、sを任意の自然数としたとき、s番目にパワー値の大きい座標点を「座標点P(i)」と表記する。
【0040】
始めにコンピュータ24は、パワースペクトルの座標点中、最もパワー値の大きい座標点P(1)を選択し、その座標点P(1)と同一の方向成分を有する座標点群U(1)の抽出処理を行う。この抽出処理は、以下の態様で行われる。
【0041】
まずコンピュータ24は、上記座標点P(1)に次いでパワー値の大きい座標点P(2)を選択し、それら座標点P(1),P(2)についての上記パワースペクトル原点Oを通る回帰直線に対する相関係数rを求める。そして、その相関係数rに基づき、それら座標点P(1),P(2)の方向成分が同一であるか否かを判定する。すなわちそれら座標点P(1),P(2)の相関係数rの値がほぼ「1」であれば(r≒1)、それらは同一の方向成分を有していると判定され、そうでなければ(r<<1)、それらの方向成分は異なっていると判定される。ここでは図7(b)に示すように、座標点P(1),P(2)の上記相関係数rの値はほぼ「1」となっているため、それらは同一の方向成分を有する座標点群U(1)に属していると判定される。
【0042】
続いてコンピュータ24は、図7(c)に示すように、3番目にパワー値の大きい座標点P(3)を選択し、その座標点P(3)及び上記座標点P(1),P(2)についての上記相関係数rを求める。そしてコンピュータ24は、その相関係数rに基づき、今回選択された座標点P(3)が、上記座標点P(1),P(2)と同一の方向成分を有しているか否かの判定を行う。ここでは同図に示すように、座標点P(3)は、上記座標点P(1),P(2)とは、方向成分が異なる(r<<1)と判定されている。この場合、座標点P(3)は、座標点群U(1)からは排除される。
【0043】
その後、コンピュータ24は、図7(d)、図7(e)に示すように、4番目にパワー値の大きい座標点P(4)、5番目にパワー値の大きい座標点P(5)・・・と、パワー値の大きい順に座標点を選択しつつ、上記判定を必要な回数繰返し実施する。これにより、図7(f)に示すように、最もパワー値の大きい座標点P(1)と同一の方向成分を有する座標点群U(1)を抽出する。
【0044】
こうして座標点群U(1)の抽出が完了すると、コンピュータ24は、その座標点群U(1)から排除された座標点の中で最もパワー値の大きい座標点を選択する。この例では、図8(a)に示すように、上記座標点P(3)が選択される。そして上記座標点群U(1)から排除された座標点を対象として、上記と同様の抽出処理を行い、図8(b)に示すように、その座標点P(3)と同一の方向成分を有する座標点群U(2)を抽出する。
【0045】
コンピュータ24は、そうした抽出処理を、同一の方向成分を有する座標点群が抽出されなくなるまで繰返し行うことで、図8(c)に示すようにパワースペクトルの第2象限に存在する同一の方向成分を有する座標点群を抽出する。以後、コンピュータ24は、パワースペクトルの第1象限を対象として同様の抽出処理を実施し、その第1象限に存在する同一の方向成分を有する座標点群の抽出を行う。
【0046】
こうして抽出された各座標点群は、シリンダボア22の内周表面の同一方向に延びる螺旋条痕のそれぞれに対応している。またいずれの座標点群からも排除された各座標点は、螺旋条痕以外のシリンダボア22内周表面の凹凸成分、すなわち損傷部成分に対応している。したがって、以上の抽出処理を通じて、パワースペクトル上で、螺旋条痕成分に対応する座標点と損傷部成分に対応する座標点とが分離されることとなる。そして、分離された各成分のパワースペクトルを2次元フーリエ逆変換すれば、各成分についてのシリンダボア22内周表面における凹凸情報が得られるようになる。
【0047】
図9に、本実施形態の成分識別処理の全容をブロック図として示す。同図には、パワースペクトルにて、方向成分のそれぞれ異なる螺旋条痕成分A〜Cに対応する3つの座標点群が抽出された場合が示されている。同図に示すように、本実施形態では、上記抽出された各座標点群を合成したものに2次元フーリエ逆変換を行うことで、シリンダボア22内周表面の螺旋条痕成分の凹凸情報が生成されている。またそれら以外の座標点を対象に2次元フーリエ逆変換を行うことで、損傷部成分の凹凸情報が生成されている。なお抽出された各座標点群に対して個別に2次元フーリエ逆変換を行い、各方向の螺旋条痕成分の凹凸情報をそれぞれ個別に生成することも可能である。
【0048】
図10及び図11は、以上説明した成分識別処理のフローチャートを示している。この処理は、図2の処理を通じて、シリンダボア22内周表面の凹凸のパワースペクトルが生成された後、コンピュータ24によって実行される。なお本処理の開始時の下記カウンタi及びカウンタjの値はそれぞれ「1」に設定されている。
【0049】
同図に示すように、成分識別処理が開始されると、コンピュータ24は、まずステップS101において、上記パワースペクトルの情報を読み込み、ステップS102において、そのパワースペクトルの中で最もパワー値の大きい座標点P(1)を選択する。そしてコンピュータ24は、ステップS110〜S122の処理を、カウンタjの値が所定値Nに達するまで繰返し実行する。
【0050】
ステップS110においてコンピュータ24は、未だ座標点群のいずれにも加えられずに残された座標点の中から、前回選択された座標点P(i−1)に次いでパワー値の大きい座標点P(i)を選択し、ステップS111において、その座標点P(i)を座標点群U(j)に加える。
【0051】
続くステップS112においてコンピュータ24は、今回選択された座標点P(i)を加えた座標点群U(j)のパワースペクトル原点Oを通る回帰直線を求め、ステップS113においてその回帰直線の相関係数rを算出する。そしてコンピュータ24は、ステップS114において、算出された相関係数rの値がほぼ1であるか否かを、すなわち今回選択された座標点P(i)が、座標点群U(j)の他の座標点と同一の方向成分を有しているか否かを判定する。ここで相関係数rの値がほぼ1であれば(S114:YES)、コンピュータ24は、今回選択された座標点P(i)を座標点群U(j)に残留させたまま、処理をステップS116に移行する。そうでなければ(S114:NO)、コンピュータ24は、処理をステップS115に進めて、座標点P(i)を座標点群U(j)から排除した後、ステップS116に処理を移行する。
【0052】
ステップS116においてコンピュータ24は、カウンタiの値が所定値nに達しているか否かを判定する。ここでカウンタiの値が所定値nに達していなければ(S116:NO)、コンピュータ24は、カウンタiの値に1を加算した後、処理をステップS110に戻す。
【0053】
ここでカウンタiの値が所定値nに達していれば(S116:YES)、コンピュータ24は処理をステップS120に進め、カウンタjの値が所定値Nに達しているか否かを判定する。ここでカウンタjの値が所定値Nに達していなければ(S120:NO)、コンピュータ24は処理をステップS121に進め、そのとき座標点群U(j)に残された各座標点を選択対象から除外し、続くステップS122において、除外されずに残された座標点の中から最もパワー値の大きい座標点を選択する。そしてコンピュータ24は、カウンタjの値に1を加算して、ステップS110に処理を再び戻す。
【0054】
一方、カウンタjの値が所定値Nに達していれば(S120:YES)、コンピュータ24は、ステップS140以降の処理に進み、螺旋条痕成分及び損傷成分の各凹凸情報の生成を行う。すなわち、コンピュータ24は、ステップS140において、抽出された各座標点群U(1)〜U(N)を合成し、ステップS141において、その合成された座標点群U(1)〜U(N)のいずれからも除外された座標点のパワー値を「0」として2次元フーリエ逆変換を行って、螺旋条痕成分の凹凸情報を生成する。またコンピュータ24は、ステップS142において、その合成された座標点群U(1)〜U(N)に含まれる座標点のパワー値を「0」として2次元フーリエ逆変換を行い、損傷部成分の凹凸情報を生成する。なおこのとき、上記抽出された各座標点群U(1)〜U(N)のそれぞれに個別に2次元フーリエ逆変換を行えば、方向の異なる螺旋条痕成分の凹凸情報を個別に生成することができる。
【0055】
こうして両成分の凹凸情報を生成した後、コンピュータ24は本処理を終了する。そして生成された両成分の凹凸情報を用いて、シリンダボア22内周表面の損傷部の検出や、ホーニング加工の良否の判定などが行われる。
【0056】
なお本実施形態では、図2の解析準備処理が上記凹凸情報生成手段及び上記周波数分析手段の処理に、図10のステップS102〜S122の処理が、上記抽出手段の処理に、それぞれ対応している。またシリンダボア22内周表面に形成された凹凸の螺旋条痕成分が上記規則凹凸成分に、損傷部成分が上記不規則凹凸成分に、それぞれ対応している。
【0057】
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態の表面解析装置では、上記相関係数rに基づく評価を通じて、パワースペクトル上の同一方向成分を有する座標点群を抽出することで、シリンダボア22内周表面の螺旋条痕成分と損傷部成分との識別を的確に行うことができる。
【0058】
(2)螺旋条痕の状態に応じて上記抽出時のマスキングの範囲が的確に設定されるため、螺旋条痕の形成状態の差違に拘わらず、螺旋条痕成分と損傷部成分とを的確に識別することができる。
【0059】
(3)成分識別に係る手法が明確に定義されているため、識別結果の再現性を高めて、その結果に高い信頼性を確保することができる。
(4)成分識別に係る処理がすべて自動化されているため、シリンダボア22内周表面の凹凸状態の解析を容易に行うことができる。
【0060】
(5)上記生成される損傷部の凹凸情報によって、シリンダボア22内周表面の損傷部の位置や状態を明確に把握することができ、損傷部の検出等を好適に行うことができる。
【0061】
(6)上記生成される螺旋条痕の凹凸情報によって、シリンダボア22内周表面における螺旋条痕の状態を明確に把握することができ、ホーニング加工の良否判定等の螺旋条痕の評価を好適に行うことができる。
【0062】
なお、上記実施形態は次のように変更して実施することもできる。
・上記実施形態の撮像装置23の代りとして3次元粗さ測定器や形状測定器等を採用し、凹凸レベルの指標値としてそれらの測定結果(3次元粗さや形状の測定データ)を用いて凹凸成分の識別を行うようにしても良い。
【0063】
要は、規則性を有して形成された規則凹凸成分とそれ以外の不規則凹凸成分とが存在する表面について、その規則凹凸成分と不規則凹凸成分との識別を行う表面解析装置であれば、本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の全体構造を示す模式図。
【図2】同実施形態の解析準備処理の処理手順を示すブロック図。
【図3】シリンダボア22の内周表面の(a)座標系、及び(b)凹凸情報の一例を併せ示す図。
【図4】シリンダボア22の内周表面の拡大図。
【図5】2次元フーリエ変換された凹凸情報のパワースペクトルの一例を示す図。
【図6】同じく凹凸情報のパワースペクトルの簡易モデルを示す図。
【図7】(a)〜(f)上記実施形態における成分識別処理の処理例を示す図。
【図8】(a)〜(c)同じく成分識別処理の処理例を示す図。
【図9】同成分識別処理の全容を示すブロック図。
【図10】同成分識別処理の処理手順を示すフローチャート。
【図11】同じく成分識別処理の処理手順を示すフローチャート。
【図12】従来の表面解析装置の凹凸成分識別処理で生成される(a)凹凸情報の一例、及び(b)パワースペクトルの一例を併せ示す図。
【図13】同処理におけるパワー積算値と角度φとの関係を示すグラフ。
【図14】同処理でのマスキング領域の設定例を示す図。
【符号の説明】
21…シリンダブロック、22…シリンダボア、23…撮像装置、24…コンピュータ。
Claims (7)
- 表面に形成された多数の凹凸の中から、規則性を有して形成された規則凹凸成分とそれ以外の不規則凹凸成分との識別を行う表面解析装置において、
前記表面の凹凸を検出して、2次元座標に展開された前記表面の各座標点の凹凸レベルを示す該表面の凹凸情報を生成する凹凸情報生成手段と、
前記凹凸情報を2次元フーリエ変換して前記表面の凹凸のパワースペクトルを求める周波数分析手段と、
前記パワースペクトルの一定値以上のパワー値を有する座標点の中から任意に取り出された複数の座標点についてそれらのパワースペクトル原点を通る回帰直線の相関係数を求め、その相関係数に基づいて前記複数の座標点の方向成分が同一であるか否かを評価して、同一の方向成分を有する座標点群を抽出する抽出手段と、
を備え、前記抽出手段によって抽出された座標点群が前記規則凹凸成分に対応するものと判定して前記識別を行うことを特徴とする表面解析装置。 - 請求項1に記載の表面解析装置において、前記パワースペクトルに対して前記抽出手段によって抽出された座標点群以外の座標点にマスキングを施したものに2次元フーリエ逆変換を行って、前記規則凹凸成分の凹凸情報を生成する手段を更に備えることを特徴とする表面解析装置。
- 請求項1又は2に記載の表面解析装置において、前記パワースペクトルに対して前記抽出手段によって抽出された座標点群にマスキングを施したものに2次元フーリエ逆変換を行って、前記不規則凹凸成分の凹凸情報を生成する手段を更に備えることを特徴とする表面解析装置。
- 多数の螺旋条痕の形成された表面の凹凸の中から、螺旋条痕成分と損傷部成分との識別を行う表面解析装置において、
前記表面の凹凸を検出して、2次元座標に展開された前記表面の各座標点の凹凸レベルを示す該表面の凹凸情報を生成する凹凸情報生成手段と、
前記凹凸情報を2次元フーリエ変換して前記表面の凹凸のパワースペクトルを求める周波数分析手段と、
前記パワースペクトルの一定値以上のパワー値を有する座標点の中から任意に取り出された複数の座標点についてそれらのパワースペクトル原点を通る回帰直線の相関係数を求め、その相関係数に基づいて前記複数の座標点の方向成分が同一であるか否かを評価して、同一の方向成分を有する座標点群を抽出する抽出手段と、
を備え、前記抽出手段によって抽出された座標点群が前記螺旋条痕成分に対応したものと判定して前記識別を行うことを特徴とする表面解析装置。 - 請求項4に記載の表面解析装置において、前記パワースペクトルに対して前記抽出手段によって抽出された座標点群以外の座標点にマスキングを施したものに2次元フーリエ逆変換を行って、前記螺旋条痕成分の凹凸情報を生成する手段を更に備えることを特徴とする表面解析装置。
- 請求項4又は5に記載の表面解析装置において、前記パワースペクトルに対して前記抽出手段によって抽出された座標点群にマスキングを施したものに2次元フーリエ逆変換を行って、前記表面の損傷部成分の凹凸情報を生成する手段を更に備えることを特徴とする表面解析装置。
- 前記表面は、内燃機関のシリンダボアの内周表面である請求項4〜6のいずれかに記載の表面解析装置。
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-
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- 2003-05-16 JP JP2003138971A patent/JP2004340805A/ja not_active Withdrawn
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