JP2004338675A - エンジンの動力伝達装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】全地形走行車における動力伝達装置の車両進行方向の寸法を短縮する。
【解決手段】Vベルト48が掛け渡されたプライマリ軸40とセカンダリ軸42との間に、オイルポンプ27や発電体28が取り付けられたクランク軸13を配置する。また、副軸31にはバランサウエイト36を取り付ける。このように、プライマリ軸40とセカンダリ軸42との間にクランク軸13を配置することで、これらの軸の間に生じるデッドスペースを有効に活用でき、結果として車体の車両進行方向の寸法を短縮することができる。また、バランサウエイト36を副軸31に取り付けることで、バランサ軸を設ける必要が無く、更に車体の車両進行方向の寸法を短縮することができる。
【選択図】 図4
【解決手段】Vベルト48が掛け渡されたプライマリ軸40とセカンダリ軸42との間に、オイルポンプ27や発電体28が取り付けられたクランク軸13を配置する。また、副軸31にはバランサウエイト36を取り付ける。このように、プライマリ軸40とセカンダリ軸42との間にクランク軸13を配置することで、これらの軸の間に生じるデッドスペースを有効に活用でき、結果として車体の車両進行方向の寸法を短縮することができる。また、バランサウエイト36を副軸31に取り付けることで、バランサ軸を設ける必要が無く、更に車体の車両進行方向の寸法を短縮することができる。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はバギー車などの全地形走行車に搭載されるエンジンの動力伝達装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
バギー車とも言われる不整地走行車ないし全地形走行車つまりATV(All Terrain Vehicle)は、四輪の一人乗り用オフロード車であり、ハンティングやトレールツーリングなどのレジャー用のほか、一部では農業用実用車としても利用されている。このような全地形走行車は、クランク軸が車幅方向を向くようにエンジンが車体に横置きされ、エンジン動力を駆動輪に伝達するための動力伝達装置は、前後進切換機構、ベルト式無段変速機および遠心クラッチなどを備えている(特許文献1および2参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平10−297294号公報
【0004】
【特許文献2】
特開2002−68070号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の全地形走行車はクランク軸が車幅方向を向くように車体にエンジンが横置きされて乗員用の座席の前方側に搭載されるとともに、クランク軸とこの回転が伝達される無段変速機のプライマリ軸とクランク軸が所定の回転数以上となったときにクランク軸の回転をプライマリ軸に伝達する遠心クラッチとが同心上になって車体に搭載されている。このように、クランク軸とこれに対して同心上となってプライマリ軸および遠心クラッチとを配置すると、クランク軸とこれに遠心クラッチを介して同心上に配置されるプライマリ軸とを含めた軸長が長くなるので、エンジン動力を駆動輪に伝達するための動力伝達装置の車幅方向の寸法が長くなる。
【0006】
全地形走行車にあっては、座席の前方側から座席の真下の部分にかけて動力伝達装置が配置され、乗員は動力伝達装置の部分を跨いだ状態で車両を走行させることになるので、動力伝達装置の車幅方向の寸法が長くなると、走行時に股を大きく広げた状態で車両を運転しなければならないだけでなく、乗員が車両に乗り降りする際には大きく股を広げる必要があり、従来では、乗りにくいという問題点がある。
【0007】
また、クランク軸の回転変動を吸収するバランサウエイトを、クランク軸に設けるようにすると、クランク軸を長くしなければならず、動力伝達装置の車幅方向の寸法がさらに長くなり、バランサウエイトが設けられたバランサ軸をクランク軸に平行に装着すると、バランサ軸の取付スペースが余計に必要となる。
【0008】
一方、ベルト式無段変速機は、プライマリプーリが設けられるプライマリ軸とセカンダリプーリが設けられるセカンダリ軸とを有しており、プライマリ軸とセカンダリ軸とがプーリ径を隔てて配置されることになるので、両方の軸の間はデッドスペースとなり、動力伝達装置の車両進行方向の寸法も長くなる。
【0009】
本発明の目的は全地形走行車における動力伝達装置を小型化することにある。
【0010】
本発明の他の目的は動力伝達装置の車両の車両進行方向の寸法を短縮することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明のエンジンの動力伝達装置は、エンジン動力を駆動軸に伝達するエンジンの動力伝達装置であって、エンジンにより駆動され、車体の幅方向を向いて配置されるクランク軸と、前記クランク軸に平行に配置され、前記クランク軸の回転が回転伝達部材を介して伝達される副軸と、前記副軸の同心上に配置され溝幅可変のプライマリプーリが設けられるプライマリ軸と、前記プライマリプーリにベルトを介して連結される溝幅可変のセカンダリプーリが設けられるセカンダリ軸とを備えるベルト式無段変速機と、前記副軸に設けられ、前記クランク軸の回転変動を吸収するバランサウエイトとを有することを特徴とする。
【0012】
本発明のエンジンの動力伝達装置は、前記プライマリ軸と前記セカンダリ軸との間に前記クランク軸を配置することを特徴とする。
【0013】
本発明のエンジンの動力伝達装置にあっては、クランク軸と無段変速機のプライマリ軸とを平行に配置し、クランク軸と平行に配置されてクランク軸の回転が回転伝達部材により伝達される副軸にバランサウエイトを設けることにより、副軸がバランサ軸を兼ねることになり、動力伝達装置の車両進行方向の寸法を短縮することができる。また、プライマリ軸とセカンダリ軸との間にこれらに平行にクランク軸を配置したので、プライマリ軸とセカンダリ軸との間のスペースにエンジンを配置することができ、動力伝達装置の車両進行方向の寸法を短縮することができる。これにより、動力伝達装置の小型化を達成することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は車両を示す斜視図であり、この車両はバギー車とも言われるATVつまり全地形走行車である。図1に示すように、車体1には前輪2a,2bと後輪3a,3bが設けられており、鞍乗り型の座席4が車体1の中央部に設けられている。乗員は座席4に跨って車両に乗り込み、ハンドル5を操作して走行することになる。
【0015】
図2は図1の車両に搭載される本発明の一実施の形態であるエンジンの動力伝達装置を示す概略図であり、図3は図2のIII−III線に沿う断面図である。図2および図3に示すように、車両前方側にはエンジン動力を出力するエンジンユニット10が設けられており、エンジンユニット10の後方側にはエンジン動力を駆動輪に伝達する駆動ユニット11が設けられている。
【0016】
図2に示すように、エンジンユニット10のクランクケース12には、クランク軸13が軸受を介して回転自在に収容されている。また、図3に示すように、クランクケース12の上方にはシリンダ14が取り付けられ、シリンダ14の上端面にはシリンダヘッド15が搭載されている。シリンダ14に形成されるシリンダボア内には、燃焼室15aを区画形成するピストン16が往復動自在に組み込まれており、ピストン16に取り付けられるピストンピン17と、クランク軸13にその回転中心から偏心して固定されるクランクピン18はコネクティングロッド19を介して連結されている。
【0017】
図3に示されるように、シリンダヘッド15には燃焼室15aが形成されるとともに、燃焼室15aに開口する吸気ポート15bと排気ポート15cとが形成されている。この吸気ポート15bを開閉する吸気弁20と、排気ポート15cを開閉する排気弁21がシリンダヘッド15に組み込まれている。シリンダヘッド15にはカム面を備えたカムシャフト22が回転自在に装着され、これと平行に設けられたロッカシャフト23には、吸気弁20を開閉駆動するためのロッカアーム23aと、排気弁21を開閉駆動するためのロッカアーム23bとが回動自在に装着されている。カムシャフト22に固定された図示しないスプロケットと、図2に示すようにクランク軸13の端部に固定されたスプロケット24との間には図示しないタイミングチェーンが掛け渡されており、カムシャフト22はクランク軸13の回転に同期して回転駆動される。クランク軸13の回転位置つまりピストン16の移動位置に応じて、カムシャフト22はロッカアーム23a,23bの一端にカム面を接触させるため、吸気弁20および排気弁21はそれぞれ所定のタイミングで開閉駆動される。
【0018】
このようなクランクケース12、シリンダ14、およびシリンダヘッド15を備えるエンジン25は、クランク軸13が車幅方向を向くように車体1に搭載される。このエンジン25は単気筒の空冷エンジンであり、シリンダ14およびシリンダヘッド15には放熱フィン26が形成されている。
【0019】
クランク軸13の一端にはクランク軸13によって駆動されるオイルポンプ27が設けられており、このオイルポンプ27から吐出される潤滑油は図示しない油路を介して駆動ユニット11の摺動部に供給される。クランク軸13の他端にはクランク軸13によって駆動される発電体28が設けられており、発電体28より発電される電力は図示しないバッテリに充電される。この発電体28に隣接してスタータモータ29が設けられており、エンジン始動時に駆動されるスタータモータ29の回転は、歯車30a,30bを介してクランク軸13に伝達される。
【0020】
図2に示すように、クランクケース12には副軸31がクランク軸13に平行となって回転自在に装着されている。この副軸31に設けられた歯車32aはクランク軸13に設けられた歯車32bに噛合っており、クランク軸13の回転は回転伝達部材としての歯車32a,32bを介して副軸31に伝達される。副軸31の一端側のクランクケース12にはリコイルカバー33が組み付けられており、リコイルカバー33にはバッテリの充電量が不足してエンジン25を始動することが困難な場合に手動でエンジン25を始動させるためのリコイルスタータ34が装着されている。リコイルスタータ34は、リコイルカバー33内に収容されてリコイルロープ34aが巻き付けられるリコイルプーリ34bと、副軸31に取り付けられたリコイルドラム34cとを備えており、リコイルロープ34aを引いてリコイルプーリ34bを回転させることにより、副軸31を介してクランク軸13を回転させてエンジン25を始動することができる。
【0021】
副軸31の他端には遠心クラッチ35が取り付けられており、この遠心クラッチ35はクランクケース12内に回転自在に装着されるクラッチドラム35aと、副軸31に固定される回転板35bとを有している。回転板35bには円弧状のクラッチシュー35cが複数個取り付けられており、それぞれのクラッチシュー35cは一端に取り付けられるピン35dにより回動自在となっている。クラッチシュー35cの他端には引張コイルバネ35eが取り付けられており、クラッチシュー35cにはクラッチドラム35aの内周面から離れる方向にバネ力が加えられている。したがって、副軸31が所定の回転数を超えると、クラッチシュー35cに加えられる遠心力がバネ力を上回るため、クラッチシュー35cがクラッチドラム35aの内周面に係合して遠心クラッチ35は締結状態となり、クランク軸13からのエンジン動力が副軸31を介してクラッチドラム35aに伝達される。
【0022】
副軸31にはバランサウエイト36が取り付けられており、このバランサウエイト36によって、歯車32a,32bを介して副軸31に伝達されるクランク軸13の回転変動を吸収することができる。なお、図2に示す場合にあっては、このバランサウエイト36は歯車32aと遠心クラッチ35との間に配置されているが、これを歯車32aとリコイルスタータ34との間に配置するようにしても良い。このように、バランサウエイト36を副軸31に取り付けるようにすれば、バランサ軸を設ける必要が無い分だけ部品点数を削減できるとともに、車体1の車両進行方向の寸法を小さくすることができる。
【0023】
クラッチドラム35aにはプライマリ軸40が固定されており、このプライマリ軸40はクランクケース12に組み付けられる変速機ケース41内に回転自在に収容される。この変速機ケース41内にはプライマリ軸40に平行となって回転自在にセカンダリ軸42が収容されており、プライマリ軸40からセカンダリ軸42に変速したエンジン動力を伝達する無段変速機43が変速機ケース41内に装着されている。このように、クランク軸13と無段変速機43のプライマリ軸40とを平行に配置し、クランク軸13と平行に配置されてクランク軸13の回転が回転伝達部材により伝達される副軸31をプライマリ軸40と同心上に配置したので、この動力伝達装置は、クランク軸13とプライマリ軸40とセカンダリ軸42が相互に平行となった三軸構造となる。これにより、エンジン25を車体1に横向きに搭載した場合における動力伝達装置の車幅方向の寸法を短縮することができる。また、鞍乗り型の座席の下側に搭載される動力伝達装置の車幅方向の寸法が小さくなるので、車両への乗員の乗り降りが容易となる。
【0024】
無段変速機43はプライマリ軸40に設けられるプライマリプーリ44と、セカンダリ軸42に設けられるセカンダリプーリ45とを備えている。プライマリプーリ44は円錐面が形成される固定シーブ46aと、この固定シーブ46aに対向する円錐面が形成される可動シーブ46bとを備えており、固定シーブ46aはプライマリ軸40に固定され、可動シーブ46bはプライマリ軸40に設けられたスプラインに軸方向に移動自在となって装着されている。一方、セカンダリプーリ45は円錐面が形成される固定シーブ47aと、この固定シーブ47aに対向する円錐面が形成される可動シーブ47bとを備えており、固定シーブ47aはセカンダリ軸42に固定され、可動シーブ47bはセカンダリ軸42に設けられたスプラインに軸方向に移動自在となって装着されている。
【0025】
プライマリプーリ44とセカンダリプーリ45との間には、ゴム製のVベルト48が掛け渡されており、Vベルト48のプライマリプーリ44とセカンダリプーリ45とに対する巻き付け径が変化すると、プライマリ軸40の回転は変速比が無段階に変化してセカンダリ軸42に伝達される。プライマリプーリ44の可動シーブ46bには、プライマリ軸40の回転中心に対して直角方向を向いて円柱形状の遠心ウエイト49が複数個、たとえば6個装着されている。可動シーブ46bには遠心ウエイト49に対応するカム面50が形成されており、このカム面50は可動シーブ46bの径方向外側部がプライマリ軸40の端部に向けて迫り出す形状となっている。プライマリ軸40にはカム面50に対向するようにカムプレート51が固定されており、このカムプレート51の径方向外側部がカム面50に向けて接近するように傾斜している。一方、セカンダリ軸42にはバネ受け52が固定されており、バネ受け52と可動シーブ47bとの間にはVベルト48への締め付け力を加えるための圧縮コイルバネ53が装着されている。
【0026】
プライマリ軸40の回転数が高くなると遠心ウエイト49に加えられる遠心力は大きくなるため、遠心ウエイト49は可動シーブ46bとカムプレート51との間を押し広げながら径方向外方に移動する。ここで、カムプレート51はプライマリ軸40に固定されているため、遠心ウエイト49の移動により可動シーブ46bが固定シーブ46aに向けて近づくことになる。これにより、プライマリプーリ44の溝幅が狭められてVベルト48のプライマリプーリ44に対する巻き付け径が大きくなる一方、Vベルト48によってセカンダリプーリ45の溝幅はバネ力に抗して広げられるため、Vベルト48のセカンダリプーリ45に対する巻き付け径は小さくなる。つまり、プライマリ軸40の回転数が高くなるほど無段変速機43の変速比は高速側に変化する。
【0027】
一方、プライマリ軸40の回転数が低下して遠心ウエイト49に加えられる遠心力が小さくなると、セカンダリプーリ45に加えられるバネ力によってセカンダリプーリ45の溝幅は狭められるため、Vベルト48のセカンダリプーリ45に対する巻き付け径が大きくなる一方、Vベルト48によってプライマリプーリ44の溝幅は広げられるため、Vベルト48のプライマリプーリ44に対する巻き付け径は小さくなる。つまり、プライマリ軸40の回転数が低くなるほど無段変速機43の変速比は低速側に変化する。
【0028】
セカンダリ軸42の一端は変速機ケース41から突き出され、変速機ケース41に組み付けられるギヤケース54に軸受を介して支持されている。ギヤケース54には、セカンダリ軸42に平行となって出力軸55が回転自在に収容されるとともにこの出力軸55に平行となって車軸56が回転自在に装着されている。
【0029】
セカンダリ軸42には前進用の歯車57aが一体に設けられ、この歯車57aは出力軸55に回転自在に装着された歯車57bに常時噛み合っている。また、セカンダリ軸42には後退用のスプロケット58aが一体に設けられ、このスプロケット58aと出力軸55に回転自在に装着されたスプロケット58bとの間にはチェーン58cが掛け渡されている。つまり、セカンダリ軸42からの動力によって歯車駆動される歯車57bの回転方向はセカンダリ軸42の回転方向と逆向きになり、チェーン駆動されるスプロケット58bの回転方向はセカンダリ軸42の回転方向と同じ向きになる。
【0030】
歯車57bとスプロケット58bとの間には前後進切換機構59が装着されており、前後進切換機構59の切換操作に応じて歯車57bとスプロケット58bからの動力が選択的に出力軸55に伝達される。この前後進切換機構59は出力軸55のスプラインにそれぞれ噛み合う一対の切換ディスク60a,60bを有しており、これらの切換ディスク60a,60bは出力軸55に軸方向に摺動自在となっている。一方の切換ディスク60aには歯車57bの側面に設けられた噛合い歯61aと係合する噛合い歯61bが設けられており、他方の切換ディスク60bにはスプロケット58bの側面に設けられた噛合い歯62aと係合する噛合い歯62bが設けられている。したがって、一対の切換ディスク60a,60bを歯車57bに向けて移動させて噛合い歯61a,61bを係合させると、セカンダリ軸42の回転は前進用の歯車57a,57bを介して出力軸55に伝達される。一方、切換ディスク60a,60bをスプロケット58bに向けて移動させて噛合い歯62a,62bを係合させると、セカンダリ軸42の回転は後退用のスプロケット58a,58bを介して出力軸55に伝達される。なお、図2に示すように、切換ディスク60a,60bをいずれの噛合い歯にも係合させない場合には、セカンダリ軸42と出力軸55との間は遮断されることになる。
【0031】
出力軸55には、出力軸55のスプラインにそれぞれ噛み合う一対の切換ディスク63a,63bが軸方向に摺動自在に装着され、一方の切換ディスク63bにはギヤケース54に設けられた噛合い歯64aに係合する噛合い歯64bが設けられている。したがって、一対の切換ディスク63a,63bをギヤケース54に向けて移動させて両方の噛合い歯64a,64bを係合させると、出力軸55とギヤケース54とは締結されて出力軸55の回転が規制される一方、図2に示すように、噛合い歯64a,64bの係合を解くと、出力軸55は回転可能な状態となる。
【0032】
このような切換ディスク60a,60b,63a,63bは、切換ホルダ65,66によって切り換えられる。切換ホルダ65,66は図示しない作動リンクを介して図1に示す車両の切換レバー6に連結されており、乗員による切換レバー6の操作によって切換ディスク60a,60b,63a,63bの切り換えが行われる。切換レバー6には、前進走行に対応したF位置、後退走行に対応したR位置、駆動ユニット11の中立状態に対応したN位置、そして車両の駐車状態に対応したP位置が設定される。
【0033】
切換レバー6をF位置に操作すると、切換ディスク60aの噛合い歯61bが歯車57bの噛合い歯61aに係合する一方、切換ディスク63a,63bは中立位置となる。また、R位置に操作すると、切換ディスク60bの噛合い歯62bがスプロケット58bの噛合い歯62aに係合する一方、切換ディスク63a,63bは中立位置となる。そして、N位置に操作すると、全ての切換ディスク60a,60b,63a,63bが中立位置となり、P位置に操作すると、切換ディスク60a,60bが中立位置となり、切換ディスク63bの噛合い歯64bがギヤケース54の噛合い歯64aに係合する。
【0034】
このような切換レバー6の操作に応じて動力が伝達される出力軸55には歯車67aが固定され、この歯車67aに常時噛み合う歯車67bが車軸56に固定されている。車軸56の端部には後輪3a,3bが連結されており、駆動輪である後輪3a,3bが車軸56によって駆動される。なお、図3に示すように、歯車67bに噛み合う歯車68を備えた前輪2a,2b用の駆動軸69が変速機ケース41とギヤケース54とにより回転自在に支持されており、この駆動軸69に傘歯車70を介して連結される前輪出力軸71がギヤケース54に回転自在に支持される。このように、出力軸55からの動力は駆動軸69を介して前輪出力軸71に伝達されるため、後輪3a,3bとともに前輪2a,2bが駆動されることになる。
【0035】
走行時における車両を制動するために、図2に示すように出力軸55にはブレーキディスク72が取り付けられており、ギヤケース54にはこのブレーキディスク72にブレーキパッド73を係合させるブレーキキャリパー74が取り付けられている。乗員がハンドル5に設けられたブレーキレバー7を操作することにより、ブレーキキャリパー74を駆動して出力軸55に制動力を加えることができる。
【0036】
図4は、図1に示された全地形走行車に搭載される動力伝達装置の他の実施の形態を示す概略図であり、図4においては図2に示された部材と共通する部材には同一の符号が付されている。図4に示す動力伝達装置にあっては、プライマリ軸40とセカンダリ軸42との間にはこれらに平行となってクランク軸13が配置されており、図3に示されるエンジン25と同様のエンジンが変速機ケース41の側面に配置されている。エンジンが変速機ケース41の側面に配置されることから、クランク軸13に取り付けられるオイルポンプ27や発電体28なども、プライマリ軸40とセカンダリ軸42との間に配置されている。
【0037】
副軸31は図2に示した場合と同様にプライマリ軸40と同心状となっており、副軸31の回転中心はプライマリ軸40の回転中心と一致しており、副軸31にはバランサウエイト36が取り付けられている。また、図3の動力伝達装置と同様にセカンダリ軸42に平行となって出力軸55が配置されており、出力軸55には前後進切換機構59が設けられている。出力軸55の回転は車軸56に対して歯車67a,67bを介して伝達されるようになっているが、出力軸55の回転をチェーンを介して車軸56に伝達するようにしても良い。
【0038】
このように、クランク軸13に平行となるとともにプライマリ軸40と同心状に配置された副軸31にバランサウエイト36を設けたので、副軸31がバランサ軸を兼ねることになり、バランサ軸を設けることが不要となる。また、プライマリ軸40とセカンダリ軸42との間にクランク軸13を配置することで、プライマリ軸40とセカンダリ軸42との間のスペースにエンジン25が配置されることになる。これにより、車体1の車両進行方向の寸法を小さくすることができ、動力伝達装置の小型化が達成される。
【0039】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。たとえば、前記実施の形態において、回転伝達部材として噛合い歯車が使用されている部分は、プーリとベルトとの組合せや、スプロケットとチェーンとの組合せで構成される回転伝達部材に代えることが可能である。つまり、副軸31とクランク軸13および出力軸55と車軸をプーリとベルトにより動力伝達するようにしたり、スプロケットとチェーンにより動力伝達するようにしても良い。
【0040】
【発明の効果】
本発明のエンジンの動力伝達装置にあっては、クランク軸と無段変速機のプライマリ軸とを平行に配置し、クランク軸と平行に配置されてクランク軸の回転が回転伝達部材により伝達される副軸をプライマリ軸と同心上に配置している。つまり、この動力伝達装置は、クランク軸とプライマリ軸とセカンダリ軸が相互に平行となった三軸構造となっている。さらに、副軸に直接バランサウエイトを取り付けることで、副軸がバランサ軸を兼ねることになり、バランサ軸を設けることが不要となる。これによって、全地形走行車の動力伝達装置の車両進行方向および車幅方向の寸法を短縮することができる。
【0041】
また、プライマリ軸とセカンダリ軸との間にクランク軸を配置することにより、プライマリ軸とセカンダリ軸との間にエンジンを配置することができ、これらの軸の間に生じるデッドスペースを無くすことができ、結果として、全地形走行車の動力伝達装置の車両の車両進行方向の寸法を短縮することができる。
【0042】
さらに、バランサ軸やバランサ軸を回転させるための回転伝達部材を省略することで、部品点数の削減、加工工数の削減を図ることができ、動力伝達装置の軽量化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】全地形走行車の一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示された全地形走行車に搭載される動力伝達装置を示す概略図である。
【図3】図2におけるIII−III線に沿う方向の断面図である。
【図4】図1に示された全地形走行車に搭載される動力伝達装置の他の実施の形態を示す概略図である。
【符号の説明】
10 エンジンユニット
11 駆動ユニット
12 クランクケース
13 クランク軸
31 副軸
35 遠心クラッチ
36 バランサウエイト
40 プライマリ軸
41 変速機ケース
42 セカンダリ軸
43 無段変速機
44 プライマリプーリ
45 セカンダリプーリ
46 シーブ
47 シーブ
48 Vベルト
49 遠心ウエイト
50 カム面
51 カムプレート
54 ギヤケース
55 出力軸
56 車軸
59 前後進切換機構
【発明の属する技術分野】
本発明はバギー車などの全地形走行車に搭載されるエンジンの動力伝達装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
バギー車とも言われる不整地走行車ないし全地形走行車つまりATV(All Terrain Vehicle)は、四輪の一人乗り用オフロード車であり、ハンティングやトレールツーリングなどのレジャー用のほか、一部では農業用実用車としても利用されている。このような全地形走行車は、クランク軸が車幅方向を向くようにエンジンが車体に横置きされ、エンジン動力を駆動輪に伝達するための動力伝達装置は、前後進切換機構、ベルト式無段変速機および遠心クラッチなどを備えている(特許文献1および2参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平10−297294号公報
【0004】
【特許文献2】
特開2002−68070号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の全地形走行車はクランク軸が車幅方向を向くように車体にエンジンが横置きされて乗員用の座席の前方側に搭載されるとともに、クランク軸とこの回転が伝達される無段変速機のプライマリ軸とクランク軸が所定の回転数以上となったときにクランク軸の回転をプライマリ軸に伝達する遠心クラッチとが同心上になって車体に搭載されている。このように、クランク軸とこれに対して同心上となってプライマリ軸および遠心クラッチとを配置すると、クランク軸とこれに遠心クラッチを介して同心上に配置されるプライマリ軸とを含めた軸長が長くなるので、エンジン動力を駆動輪に伝達するための動力伝達装置の車幅方向の寸法が長くなる。
【0006】
全地形走行車にあっては、座席の前方側から座席の真下の部分にかけて動力伝達装置が配置され、乗員は動力伝達装置の部分を跨いだ状態で車両を走行させることになるので、動力伝達装置の車幅方向の寸法が長くなると、走行時に股を大きく広げた状態で車両を運転しなければならないだけでなく、乗員が車両に乗り降りする際には大きく股を広げる必要があり、従来では、乗りにくいという問題点がある。
【0007】
また、クランク軸の回転変動を吸収するバランサウエイトを、クランク軸に設けるようにすると、クランク軸を長くしなければならず、動力伝達装置の車幅方向の寸法がさらに長くなり、バランサウエイトが設けられたバランサ軸をクランク軸に平行に装着すると、バランサ軸の取付スペースが余計に必要となる。
【0008】
一方、ベルト式無段変速機は、プライマリプーリが設けられるプライマリ軸とセカンダリプーリが設けられるセカンダリ軸とを有しており、プライマリ軸とセカンダリ軸とがプーリ径を隔てて配置されることになるので、両方の軸の間はデッドスペースとなり、動力伝達装置の車両進行方向の寸法も長くなる。
【0009】
本発明の目的は全地形走行車における動力伝達装置を小型化することにある。
【0010】
本発明の他の目的は動力伝達装置の車両の車両進行方向の寸法を短縮することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明のエンジンの動力伝達装置は、エンジン動力を駆動軸に伝達するエンジンの動力伝達装置であって、エンジンにより駆動され、車体の幅方向を向いて配置されるクランク軸と、前記クランク軸に平行に配置され、前記クランク軸の回転が回転伝達部材を介して伝達される副軸と、前記副軸の同心上に配置され溝幅可変のプライマリプーリが設けられるプライマリ軸と、前記プライマリプーリにベルトを介して連結される溝幅可変のセカンダリプーリが設けられるセカンダリ軸とを備えるベルト式無段変速機と、前記副軸に設けられ、前記クランク軸の回転変動を吸収するバランサウエイトとを有することを特徴とする。
【0012】
本発明のエンジンの動力伝達装置は、前記プライマリ軸と前記セカンダリ軸との間に前記クランク軸を配置することを特徴とする。
【0013】
本発明のエンジンの動力伝達装置にあっては、クランク軸と無段変速機のプライマリ軸とを平行に配置し、クランク軸と平行に配置されてクランク軸の回転が回転伝達部材により伝達される副軸にバランサウエイトを設けることにより、副軸がバランサ軸を兼ねることになり、動力伝達装置の車両進行方向の寸法を短縮することができる。また、プライマリ軸とセカンダリ軸との間にこれらに平行にクランク軸を配置したので、プライマリ軸とセカンダリ軸との間のスペースにエンジンを配置することができ、動力伝達装置の車両進行方向の寸法を短縮することができる。これにより、動力伝達装置の小型化を達成することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は車両を示す斜視図であり、この車両はバギー車とも言われるATVつまり全地形走行車である。図1に示すように、車体1には前輪2a,2bと後輪3a,3bが設けられており、鞍乗り型の座席4が車体1の中央部に設けられている。乗員は座席4に跨って車両に乗り込み、ハンドル5を操作して走行することになる。
【0015】
図2は図1の車両に搭載される本発明の一実施の形態であるエンジンの動力伝達装置を示す概略図であり、図3は図2のIII−III線に沿う断面図である。図2および図3に示すように、車両前方側にはエンジン動力を出力するエンジンユニット10が設けられており、エンジンユニット10の後方側にはエンジン動力を駆動輪に伝達する駆動ユニット11が設けられている。
【0016】
図2に示すように、エンジンユニット10のクランクケース12には、クランク軸13が軸受を介して回転自在に収容されている。また、図3に示すように、クランクケース12の上方にはシリンダ14が取り付けられ、シリンダ14の上端面にはシリンダヘッド15が搭載されている。シリンダ14に形成されるシリンダボア内には、燃焼室15aを区画形成するピストン16が往復動自在に組み込まれており、ピストン16に取り付けられるピストンピン17と、クランク軸13にその回転中心から偏心して固定されるクランクピン18はコネクティングロッド19を介して連結されている。
【0017】
図3に示されるように、シリンダヘッド15には燃焼室15aが形成されるとともに、燃焼室15aに開口する吸気ポート15bと排気ポート15cとが形成されている。この吸気ポート15bを開閉する吸気弁20と、排気ポート15cを開閉する排気弁21がシリンダヘッド15に組み込まれている。シリンダヘッド15にはカム面を備えたカムシャフト22が回転自在に装着され、これと平行に設けられたロッカシャフト23には、吸気弁20を開閉駆動するためのロッカアーム23aと、排気弁21を開閉駆動するためのロッカアーム23bとが回動自在に装着されている。カムシャフト22に固定された図示しないスプロケットと、図2に示すようにクランク軸13の端部に固定されたスプロケット24との間には図示しないタイミングチェーンが掛け渡されており、カムシャフト22はクランク軸13の回転に同期して回転駆動される。クランク軸13の回転位置つまりピストン16の移動位置に応じて、カムシャフト22はロッカアーム23a,23bの一端にカム面を接触させるため、吸気弁20および排気弁21はそれぞれ所定のタイミングで開閉駆動される。
【0018】
このようなクランクケース12、シリンダ14、およびシリンダヘッド15を備えるエンジン25は、クランク軸13が車幅方向を向くように車体1に搭載される。このエンジン25は単気筒の空冷エンジンであり、シリンダ14およびシリンダヘッド15には放熱フィン26が形成されている。
【0019】
クランク軸13の一端にはクランク軸13によって駆動されるオイルポンプ27が設けられており、このオイルポンプ27から吐出される潤滑油は図示しない油路を介して駆動ユニット11の摺動部に供給される。クランク軸13の他端にはクランク軸13によって駆動される発電体28が設けられており、発電体28より発電される電力は図示しないバッテリに充電される。この発電体28に隣接してスタータモータ29が設けられており、エンジン始動時に駆動されるスタータモータ29の回転は、歯車30a,30bを介してクランク軸13に伝達される。
【0020】
図2に示すように、クランクケース12には副軸31がクランク軸13に平行となって回転自在に装着されている。この副軸31に設けられた歯車32aはクランク軸13に設けられた歯車32bに噛合っており、クランク軸13の回転は回転伝達部材としての歯車32a,32bを介して副軸31に伝達される。副軸31の一端側のクランクケース12にはリコイルカバー33が組み付けられており、リコイルカバー33にはバッテリの充電量が不足してエンジン25を始動することが困難な場合に手動でエンジン25を始動させるためのリコイルスタータ34が装着されている。リコイルスタータ34は、リコイルカバー33内に収容されてリコイルロープ34aが巻き付けられるリコイルプーリ34bと、副軸31に取り付けられたリコイルドラム34cとを備えており、リコイルロープ34aを引いてリコイルプーリ34bを回転させることにより、副軸31を介してクランク軸13を回転させてエンジン25を始動することができる。
【0021】
副軸31の他端には遠心クラッチ35が取り付けられており、この遠心クラッチ35はクランクケース12内に回転自在に装着されるクラッチドラム35aと、副軸31に固定される回転板35bとを有している。回転板35bには円弧状のクラッチシュー35cが複数個取り付けられており、それぞれのクラッチシュー35cは一端に取り付けられるピン35dにより回動自在となっている。クラッチシュー35cの他端には引張コイルバネ35eが取り付けられており、クラッチシュー35cにはクラッチドラム35aの内周面から離れる方向にバネ力が加えられている。したがって、副軸31が所定の回転数を超えると、クラッチシュー35cに加えられる遠心力がバネ力を上回るため、クラッチシュー35cがクラッチドラム35aの内周面に係合して遠心クラッチ35は締結状態となり、クランク軸13からのエンジン動力が副軸31を介してクラッチドラム35aに伝達される。
【0022】
副軸31にはバランサウエイト36が取り付けられており、このバランサウエイト36によって、歯車32a,32bを介して副軸31に伝達されるクランク軸13の回転変動を吸収することができる。なお、図2に示す場合にあっては、このバランサウエイト36は歯車32aと遠心クラッチ35との間に配置されているが、これを歯車32aとリコイルスタータ34との間に配置するようにしても良い。このように、バランサウエイト36を副軸31に取り付けるようにすれば、バランサ軸を設ける必要が無い分だけ部品点数を削減できるとともに、車体1の車両進行方向の寸法を小さくすることができる。
【0023】
クラッチドラム35aにはプライマリ軸40が固定されており、このプライマリ軸40はクランクケース12に組み付けられる変速機ケース41内に回転自在に収容される。この変速機ケース41内にはプライマリ軸40に平行となって回転自在にセカンダリ軸42が収容されており、プライマリ軸40からセカンダリ軸42に変速したエンジン動力を伝達する無段変速機43が変速機ケース41内に装着されている。このように、クランク軸13と無段変速機43のプライマリ軸40とを平行に配置し、クランク軸13と平行に配置されてクランク軸13の回転が回転伝達部材により伝達される副軸31をプライマリ軸40と同心上に配置したので、この動力伝達装置は、クランク軸13とプライマリ軸40とセカンダリ軸42が相互に平行となった三軸構造となる。これにより、エンジン25を車体1に横向きに搭載した場合における動力伝達装置の車幅方向の寸法を短縮することができる。また、鞍乗り型の座席の下側に搭載される動力伝達装置の車幅方向の寸法が小さくなるので、車両への乗員の乗り降りが容易となる。
【0024】
無段変速機43はプライマリ軸40に設けられるプライマリプーリ44と、セカンダリ軸42に設けられるセカンダリプーリ45とを備えている。プライマリプーリ44は円錐面が形成される固定シーブ46aと、この固定シーブ46aに対向する円錐面が形成される可動シーブ46bとを備えており、固定シーブ46aはプライマリ軸40に固定され、可動シーブ46bはプライマリ軸40に設けられたスプラインに軸方向に移動自在となって装着されている。一方、セカンダリプーリ45は円錐面が形成される固定シーブ47aと、この固定シーブ47aに対向する円錐面が形成される可動シーブ47bとを備えており、固定シーブ47aはセカンダリ軸42に固定され、可動シーブ47bはセカンダリ軸42に設けられたスプラインに軸方向に移動自在となって装着されている。
【0025】
プライマリプーリ44とセカンダリプーリ45との間には、ゴム製のVベルト48が掛け渡されており、Vベルト48のプライマリプーリ44とセカンダリプーリ45とに対する巻き付け径が変化すると、プライマリ軸40の回転は変速比が無段階に変化してセカンダリ軸42に伝達される。プライマリプーリ44の可動シーブ46bには、プライマリ軸40の回転中心に対して直角方向を向いて円柱形状の遠心ウエイト49が複数個、たとえば6個装着されている。可動シーブ46bには遠心ウエイト49に対応するカム面50が形成されており、このカム面50は可動シーブ46bの径方向外側部がプライマリ軸40の端部に向けて迫り出す形状となっている。プライマリ軸40にはカム面50に対向するようにカムプレート51が固定されており、このカムプレート51の径方向外側部がカム面50に向けて接近するように傾斜している。一方、セカンダリ軸42にはバネ受け52が固定されており、バネ受け52と可動シーブ47bとの間にはVベルト48への締め付け力を加えるための圧縮コイルバネ53が装着されている。
【0026】
プライマリ軸40の回転数が高くなると遠心ウエイト49に加えられる遠心力は大きくなるため、遠心ウエイト49は可動シーブ46bとカムプレート51との間を押し広げながら径方向外方に移動する。ここで、カムプレート51はプライマリ軸40に固定されているため、遠心ウエイト49の移動により可動シーブ46bが固定シーブ46aに向けて近づくことになる。これにより、プライマリプーリ44の溝幅が狭められてVベルト48のプライマリプーリ44に対する巻き付け径が大きくなる一方、Vベルト48によってセカンダリプーリ45の溝幅はバネ力に抗して広げられるため、Vベルト48のセカンダリプーリ45に対する巻き付け径は小さくなる。つまり、プライマリ軸40の回転数が高くなるほど無段変速機43の変速比は高速側に変化する。
【0027】
一方、プライマリ軸40の回転数が低下して遠心ウエイト49に加えられる遠心力が小さくなると、セカンダリプーリ45に加えられるバネ力によってセカンダリプーリ45の溝幅は狭められるため、Vベルト48のセカンダリプーリ45に対する巻き付け径が大きくなる一方、Vベルト48によってプライマリプーリ44の溝幅は広げられるため、Vベルト48のプライマリプーリ44に対する巻き付け径は小さくなる。つまり、プライマリ軸40の回転数が低くなるほど無段変速機43の変速比は低速側に変化する。
【0028】
セカンダリ軸42の一端は変速機ケース41から突き出され、変速機ケース41に組み付けられるギヤケース54に軸受を介して支持されている。ギヤケース54には、セカンダリ軸42に平行となって出力軸55が回転自在に収容されるとともにこの出力軸55に平行となって車軸56が回転自在に装着されている。
【0029】
セカンダリ軸42には前進用の歯車57aが一体に設けられ、この歯車57aは出力軸55に回転自在に装着された歯車57bに常時噛み合っている。また、セカンダリ軸42には後退用のスプロケット58aが一体に設けられ、このスプロケット58aと出力軸55に回転自在に装着されたスプロケット58bとの間にはチェーン58cが掛け渡されている。つまり、セカンダリ軸42からの動力によって歯車駆動される歯車57bの回転方向はセカンダリ軸42の回転方向と逆向きになり、チェーン駆動されるスプロケット58bの回転方向はセカンダリ軸42の回転方向と同じ向きになる。
【0030】
歯車57bとスプロケット58bとの間には前後進切換機構59が装着されており、前後進切換機構59の切換操作に応じて歯車57bとスプロケット58bからの動力が選択的に出力軸55に伝達される。この前後進切換機構59は出力軸55のスプラインにそれぞれ噛み合う一対の切換ディスク60a,60bを有しており、これらの切換ディスク60a,60bは出力軸55に軸方向に摺動自在となっている。一方の切換ディスク60aには歯車57bの側面に設けられた噛合い歯61aと係合する噛合い歯61bが設けられており、他方の切換ディスク60bにはスプロケット58bの側面に設けられた噛合い歯62aと係合する噛合い歯62bが設けられている。したがって、一対の切換ディスク60a,60bを歯車57bに向けて移動させて噛合い歯61a,61bを係合させると、セカンダリ軸42の回転は前進用の歯車57a,57bを介して出力軸55に伝達される。一方、切換ディスク60a,60bをスプロケット58bに向けて移動させて噛合い歯62a,62bを係合させると、セカンダリ軸42の回転は後退用のスプロケット58a,58bを介して出力軸55に伝達される。なお、図2に示すように、切換ディスク60a,60bをいずれの噛合い歯にも係合させない場合には、セカンダリ軸42と出力軸55との間は遮断されることになる。
【0031】
出力軸55には、出力軸55のスプラインにそれぞれ噛み合う一対の切換ディスク63a,63bが軸方向に摺動自在に装着され、一方の切換ディスク63bにはギヤケース54に設けられた噛合い歯64aに係合する噛合い歯64bが設けられている。したがって、一対の切換ディスク63a,63bをギヤケース54に向けて移動させて両方の噛合い歯64a,64bを係合させると、出力軸55とギヤケース54とは締結されて出力軸55の回転が規制される一方、図2に示すように、噛合い歯64a,64bの係合を解くと、出力軸55は回転可能な状態となる。
【0032】
このような切換ディスク60a,60b,63a,63bは、切換ホルダ65,66によって切り換えられる。切換ホルダ65,66は図示しない作動リンクを介して図1に示す車両の切換レバー6に連結されており、乗員による切換レバー6の操作によって切換ディスク60a,60b,63a,63bの切り換えが行われる。切換レバー6には、前進走行に対応したF位置、後退走行に対応したR位置、駆動ユニット11の中立状態に対応したN位置、そして車両の駐車状態に対応したP位置が設定される。
【0033】
切換レバー6をF位置に操作すると、切換ディスク60aの噛合い歯61bが歯車57bの噛合い歯61aに係合する一方、切換ディスク63a,63bは中立位置となる。また、R位置に操作すると、切換ディスク60bの噛合い歯62bがスプロケット58bの噛合い歯62aに係合する一方、切換ディスク63a,63bは中立位置となる。そして、N位置に操作すると、全ての切換ディスク60a,60b,63a,63bが中立位置となり、P位置に操作すると、切換ディスク60a,60bが中立位置となり、切換ディスク63bの噛合い歯64bがギヤケース54の噛合い歯64aに係合する。
【0034】
このような切換レバー6の操作に応じて動力が伝達される出力軸55には歯車67aが固定され、この歯車67aに常時噛み合う歯車67bが車軸56に固定されている。車軸56の端部には後輪3a,3bが連結されており、駆動輪である後輪3a,3bが車軸56によって駆動される。なお、図3に示すように、歯車67bに噛み合う歯車68を備えた前輪2a,2b用の駆動軸69が変速機ケース41とギヤケース54とにより回転自在に支持されており、この駆動軸69に傘歯車70を介して連結される前輪出力軸71がギヤケース54に回転自在に支持される。このように、出力軸55からの動力は駆動軸69を介して前輪出力軸71に伝達されるため、後輪3a,3bとともに前輪2a,2bが駆動されることになる。
【0035】
走行時における車両を制動するために、図2に示すように出力軸55にはブレーキディスク72が取り付けられており、ギヤケース54にはこのブレーキディスク72にブレーキパッド73を係合させるブレーキキャリパー74が取り付けられている。乗員がハンドル5に設けられたブレーキレバー7を操作することにより、ブレーキキャリパー74を駆動して出力軸55に制動力を加えることができる。
【0036】
図4は、図1に示された全地形走行車に搭載される動力伝達装置の他の実施の形態を示す概略図であり、図4においては図2に示された部材と共通する部材には同一の符号が付されている。図4に示す動力伝達装置にあっては、プライマリ軸40とセカンダリ軸42との間にはこれらに平行となってクランク軸13が配置されており、図3に示されるエンジン25と同様のエンジンが変速機ケース41の側面に配置されている。エンジンが変速機ケース41の側面に配置されることから、クランク軸13に取り付けられるオイルポンプ27や発電体28なども、プライマリ軸40とセカンダリ軸42との間に配置されている。
【0037】
副軸31は図2に示した場合と同様にプライマリ軸40と同心状となっており、副軸31の回転中心はプライマリ軸40の回転中心と一致しており、副軸31にはバランサウエイト36が取り付けられている。また、図3の動力伝達装置と同様にセカンダリ軸42に平行となって出力軸55が配置されており、出力軸55には前後進切換機構59が設けられている。出力軸55の回転は車軸56に対して歯車67a,67bを介して伝達されるようになっているが、出力軸55の回転をチェーンを介して車軸56に伝達するようにしても良い。
【0038】
このように、クランク軸13に平行となるとともにプライマリ軸40と同心状に配置された副軸31にバランサウエイト36を設けたので、副軸31がバランサ軸を兼ねることになり、バランサ軸を設けることが不要となる。また、プライマリ軸40とセカンダリ軸42との間にクランク軸13を配置することで、プライマリ軸40とセカンダリ軸42との間のスペースにエンジン25が配置されることになる。これにより、車体1の車両進行方向の寸法を小さくすることができ、動力伝達装置の小型化が達成される。
【0039】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。たとえば、前記実施の形態において、回転伝達部材として噛合い歯車が使用されている部分は、プーリとベルトとの組合せや、スプロケットとチェーンとの組合せで構成される回転伝達部材に代えることが可能である。つまり、副軸31とクランク軸13および出力軸55と車軸をプーリとベルトにより動力伝達するようにしたり、スプロケットとチェーンにより動力伝達するようにしても良い。
【0040】
【発明の効果】
本発明のエンジンの動力伝達装置にあっては、クランク軸と無段変速機のプライマリ軸とを平行に配置し、クランク軸と平行に配置されてクランク軸の回転が回転伝達部材により伝達される副軸をプライマリ軸と同心上に配置している。つまり、この動力伝達装置は、クランク軸とプライマリ軸とセカンダリ軸が相互に平行となった三軸構造となっている。さらに、副軸に直接バランサウエイトを取り付けることで、副軸がバランサ軸を兼ねることになり、バランサ軸を設けることが不要となる。これによって、全地形走行車の動力伝達装置の車両進行方向および車幅方向の寸法を短縮することができる。
【0041】
また、プライマリ軸とセカンダリ軸との間にクランク軸を配置することにより、プライマリ軸とセカンダリ軸との間にエンジンを配置することができ、これらの軸の間に生じるデッドスペースを無くすことができ、結果として、全地形走行車の動力伝達装置の車両の車両進行方向の寸法を短縮することができる。
【0042】
さらに、バランサ軸やバランサ軸を回転させるための回転伝達部材を省略することで、部品点数の削減、加工工数の削減を図ることができ、動力伝達装置の軽量化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】全地形走行車の一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示された全地形走行車に搭載される動力伝達装置を示す概略図である。
【図3】図2におけるIII−III線に沿う方向の断面図である。
【図4】図1に示された全地形走行車に搭載される動力伝達装置の他の実施の形態を示す概略図である。
【符号の説明】
10 エンジンユニット
11 駆動ユニット
12 クランクケース
13 クランク軸
31 副軸
35 遠心クラッチ
36 バランサウエイト
40 プライマリ軸
41 変速機ケース
42 セカンダリ軸
43 無段変速機
44 プライマリプーリ
45 セカンダリプーリ
46 シーブ
47 シーブ
48 Vベルト
49 遠心ウエイト
50 カム面
51 カムプレート
54 ギヤケース
55 出力軸
56 車軸
59 前後進切換機構
Claims (2)
- エンジン動力を駆動軸に伝達するエンジンの動力伝達装置であって、
エンジンにより駆動され、車体の幅方向を向いて配置されるクランク軸と、
前記クランク軸に平行に配置され、前記クランク軸の回転が回転伝達部材を介して伝達される副軸と、
前記副軸の同心上に配置され溝幅可変のプライマリプーリが設けられるプライマリ軸と、前記プライマリプーリにベルトを介して連結される溝幅可変のセカンダリプーリが設けられるセカンダリ軸とを備えるベルト式無段変速機と、
前記副軸に設けられ、前記クランク軸の回転変動を吸収するバランサウエイトとを有することを特徴とするエンジンの動力伝達装置。 - 請求項1記載のエンジンの動力伝達装置において、前記プライマリ軸と前記セカンダリ軸との間に前記クランク軸を配置することを特徴とするエンジンの動力伝達装置。
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