JP2004338618A - 空気清浄機能を備えた車両用シート - Google Patents
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Abstract
【解決手段】車室内Aに設置され、車室内Aの空気流を通過させることができる車両用シート5であって、シート構成部分の着座者50が接する側とは反対側のシートの構成部分に光触媒層25およびコーティング層を形成すると共に、該光触媒層25に向けて照射する光源27を設置したことを特徴とする空気清浄化機能を備えた車両用シート5。
【選択図】 図4
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気清浄機能を備えた車両用シートに関する。更に詳しくは、光触媒作用により車室内の空気清浄を行う車両用シートに関する。
なお、本明細書において「空気清浄機能」とは、車室内の空気の脱臭及び殺菌作用をなす機能のことをいう。
【0002】
【従来の技術】
従来、車室内における内装材及び接着剤の揮発性成分、乗客の喫煙によるたばこ臭などの好ましくない臭いや、車内で発生したカビや細菌類などを除去するためには、窓を開けたり、活性炭などの吸着材を用いて対応していた。
しかし、窓を開けるのは雨日においては困難であり、また、吸着材はその吸着成分により吸着物質が異なるため、すべての臭いや細菌等の物質を除去するためには複数の種類の吸着材を必要としていた。そのため、吸着材を備えた容器を複数個設置することは、車室内のスペースを必要以上に占領し、コスト面においても問題があった。
【0003】
このため、最近では車室内の空気の清浄を光触媒作用により行うことが提案されている。一例として、自動車の新車時の臭いを取るために、光触媒を塗布した袋状カバーを自動車シートの表面に被せる脱臭手段が提案されている(特許文献1参照)。この脱臭手段によれば、新車を顧客に渡すまでの間、自動車室内の新車時特有の臭いを、自動車シートに被せた袋状カバーの光触媒作用によって取り去るものである。そして、袋状カバーは原則として新車が顧客に渡される際、取り外される。
上記の脱臭手段によれば、光触媒作用により、異なる多種類の成分を除去することができ、吸着材のように異なる種類のものを数多く設置する必要がない。すなわち、光触媒は、分解が困難な有機化学物質、有害気相物質(NOX、SOX、など)、細菌類などを光を利用して分解することができる。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−175999号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した脱臭手段においては、光触媒作用をなすための光源は太陽光によっていた。このため、雨天及び曇天の場合や、夜間においては、光源が不十分で、充分な効果を得ることができないという問題があった。また、現在のように紫外線の人体への影響が広く知られている現状にあっては、紫外線カット硝子使用の窓が車両に装備されている場合もあり、晴天の日や昼中においても予定していた効果を充分に上げることができないと言う問題もある。
また、上記脱臭手段において、車室内に紫外線光源を別途設置すると言うことも考えられる。この場合には、上述した問題は解決されるが、代わりにシートに被せた袋状カバーの光触媒に照射するための紫外線光源が着座者にも照射される恐れがあり、人体への影響の点から好ましくないと言う問題が生じる。
また、上記脱臭手段の光触媒を備えた袋状カバーは、新車が顧客に渡された時点で通常は取り外されるため、その後の車室内の空気清浄機能はなされないと言う不具合もある。
【0006】
本発明は、上記した従来の問題を解決するためになされたものであって、本発明が解決しようとする課題は、車室内の空気流が通過することができるシートにおいて光触媒作用を行わせ、天候や昼夜に関係なくかつ人体への影響もより少なくした空気清浄機能を行わせることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の第1の発明に係る空気清浄機能を備えた車両用シートは、次の手段をとる。
すなわち、第1の発明に係る空気清浄機能を備えた車両用シートは、車室内に設置され、車室内の空気流を通過させることができる車両用シートであって、着座者が接する側とは反対側のシートの構成部分に光触媒層およびコーティング層が形成されると共に、該光触媒層に向けて照射することが可能な光源が設置されることを特徴とする。ここで、着座者が接する側と反対側のシートの構成部分とは、着座者が車両用シートに着座した場合に、着座者の動きの影響を相対摩擦運動として受けにくい構成部分を意味するものである。また、コーティング層とは、被塗布物であるシートの保護と光触媒層とシートとの密着性を高める機能を有するものをいう。
【0008】
この第1の発明によれば、車両用シートに、光触媒層およびコーティング層を形成すると共に、光源が設置される。このため、車室内の空気流がシートを通過する際、光触媒層およびコーティング層に光源が照射して行われる光触媒作用によって空気流の清浄化が行われる。
なお、上記における光触媒作用を行わせるための光源からの照射は、シート内部において行われる場合には、着座者等乗員の人体への影響をより少なくすることができる。また、光源をシート内部に有する場合には、天候、昼夜を問わず、空気清浄機能を発揮することができる。
【0009】
更に、この第1の発明においては、光触媒層およびコーティング層はシート構成部分の着座者が接する側とは反対側のシートの構成部分に形成されることから、シート着座者の動きの影響を受けることが少なく、長期に亘って安定した空気清浄機能を行うことができる。すなわち、光触媒層がシート構成部分の着座者が接する側に形成されるときには、シート着座者の動きの影響を受け易く、このため光触媒層が剥がれて、光触媒作用効果を短期に減少させる恐れがある。
また、この第1の発明における車両用シートは、普通には車両の既存の備品であり、その備品の空間を利用して光触媒作用を行わせるための装備をするものであることから、車室内に空気清浄を行わせるための別途のスペースを必要とはしない。
【0010】
次に、本発明の第2の発明に係る空気清浄機能を備えた車両用シートは、次の手段をとる。
すなわち、上記第1の発明における空気清浄機能を備えた車両用シートにおいて、前記光源を紫外線発光ダイオードとし、かつ車両用電源が常時供給されることを特徴とする。
この第2の発明によれば、上述の第1の発明による機能に加えて、次のような機能を有する。すわなち、また、紫外線発光ダイオードには車両用電源が常時供給されていることで、車室内の空気清浄が常時行われる。したがって、車室内の空気を常時清浄にした状態とすることができる。特に、車両の未使用時でも常時空気清浄が行われていることから、車両に乗り込んだ際の不快な臭い等を抑制できる。
なお、空調装置が作動していない状態においても、車内における人間及び紫外線発光ダイオードなどの熱源により生ずる熱分布の差異から空気の循環は確保されている。
【0011】
また、光源を紫外線発光ダイオードとすることで、車両に備えられているバッテリ電源を常時供給しても十分に対応することができる。つまり、いわゆるバッテリ上がりという状態を防止することができる。
【0012】
次に、本発明の第3の発明に係る空気清浄機能を備えた車両用シートは、次の手段をとる。
すなわち、上記第1の発明または第2の発明における空気清浄機能を備えた車両用シートにおいて、空気を強制的に対流させるための空調装置を備えることを特徴とする。
この第3の発明によれば、上記の第1の発明または第2の発明による機能に加えて、次のような機能を有する。すなわち、シート自身がいわゆる空調シートに形成されており、シート内部での空気流の循環が強制的に行われている事から、シートの空気清浄機能をより高めることができる。このため光触媒層の設置面積を少なくすることも可能である。
【0013】
更に、本発明に係る空気清浄機能を備えた車両用シートは、上記手段以外に次の各手段をとることができる。
先ず、上記各発明の空気清浄機能を備えた車両用シートにおいて、シート構成部位としてパッド部材を有し、該パッド部材の着座者が接する側とは反対側の面に光触媒層が塗布されて形成される手段をとることができる。
上記手段によれば、光触媒層はパッド部材の表面に塗布するのみで形成することができるので、作業性が良く、生産性も高い。
【0014】
次に、上記各発明の空気清浄機能を備えた車両用シートにおいて、シート構成部位としてパット部材を受けるフレーム部材があり、該フレーム部材に紫外線光源が設置される手段をとることができる。
上記手段によれば、光触媒層を塗布したパッド部材を受けるフレーム部材に紫外線光源を設置するものであるため、光触媒層の形成と相俟って紫外線光源を効果的に組み合わせて設置することができる。
【0015】
次に、上記各発明の空気清浄機能を備えた車両用シートにおいて、シートはシートクッションとシートバックから成っており、光触媒層及び紫外線光源は少なくともシートバックに設定される手段をとることができる。
上記手段によれば、車室内の空気清浄を行う光触媒作用は少なくとも車室内において普通には起立状態にあり車室内の空気流が良く通過するシートバックで行われるため、その空気清浄を効率良く行うことができる。
特に、エヤコン等の空調装置を備えた車両においては、車室内を循環する空気流はシートバック箇所を特に良く通過する様になることから、より効率的に空気清浄が行われる。
また、車両がセダンタイプの自動車におけるフロントシートのシートバックの場合には、そのシートバックは車室内の略中央位置にあることから、空気清浄機能が最も効率良く行われる。
【0016】
次に、上記各発明の空気清浄機能を備えた車両用シートにおいて、シート内部の構成部分に光触媒層を形成すると共に、該光触媒層に向けて照射する紫外線光源をシート内部の構成部分に設置する手段をとることができる。
上述手段によれば、着座者等乗員の人体への影響をより確実に少なくすることができる。また、紫外線光源をシート内部に有することから、天候、昼夜を問わず、空気清浄機能を発揮することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に本発明に係る空気清浄機能を備えた車両用シートの実施の形態を図に基づいて説明する。本実施の形態は、車両が自動車の場合でセダンタイプの乗用車に装備された車両用シートの場合である。また車両用シート内部に光触媒層およびコーティング層が形成されると共に、該光触媒層に向けて照射することが可能な光源として紫外線光源が設置された車両用シートの場合である。図1は車室内の概観を示す。図2は車室内の吹き出し口の概観を示す。図3は車両用シートの全体構成を一部破断して示す斜視図である。図4は車両用シートの要部断面図である。
【0018】
図1に示されるように、セダンタイプの乗用自動車の車室内Aには、図1で見て左側の前部位置にフロントシート5が配置され、右側の後部位置にリアシート7が配置されている。フロントシート5は進行方向向かって右側位置の運転席シートと、左側位置の助手席シートが、いわゆるセパレートタイプとして形成されている。リヤシート7は左右一体となったいわゆるベンチシートタイプとして形成されている。
車室内Aの側部にはサイドドア3が設けられている。サイドドア3は、フロントドア3aとリヤドア3bよりなる。また、前部位置にはインストルメントパネル1が設けられている。このインストルメントパネル1には、図2に示される様に、エアコンディショナーの吹き出し口として、センターレジスター1a、サイドレジスター1b、足元吹き出し口1c、デフロスター1dを有する。これらエアコンディショナーの吹き出し口は普通には乗員に対して適切な循環空気流となるように空気を吹き出すようになっているため、空気流は車室内Aに装備されたフロントシート5やリヤシート7に対しても循環する。
【0019】
通常は、エアコンディショナーにより空気流の循環は、フロントシート5側を優先配慮して行われるようになっているため、フロントシート5は特に良く循環される位置状態にある。図1に良く示されるように、フロントシート5のシートバック20は車室内Aの略中央位置にあって起立した状態として配置されているため、より空気流が循環される位置状態にある。
なお、図2には一般的なエアコンディショナーの吹き出し口の配置の場合を示したが、必ずしもこれらすべての吹き出し口を装備する必要はなく、いずれか一つであっても良い。ただし、後述する光触媒の効果の面から、乗員及び車両用シートに対する適切な空気流を生起させるためには、吹き出し口は多いほうが好ましい。例えば、図2の場合にはいずれも前方からの吹き出しという構成をとっているが、フロント及びリヤドア3a、3bや車室内の後方に設けることも可能である。
【0020】
次に、清浄機能を備えたシートの詳細構造について説明する。
図3はフロントシート5の助手席シートを一部破断して示したものである。フロントシート5はシートバック20とシートクッション30からなっている。シートクッション30は、普通には床面に対して進行方向前後に移動可能に設置されている。シートバック20はこのシートクッション30に対して傾動可能とされて、普通には起立状態として取付けられている。
シートバック20は、図4に示す様に、シートカバー21、シートパッド22、フレーム部材23からなっている。シートカバー21はフロントカバー21a、バックカバー21b及びこの両カバー21a、21bを繋ぐ頂部カバー21cからなっており、繋ぎ部が縫い合わせ等により接合されて、全体として袋状として形成されている。
シートカバー21は通気性のある材質で形成されておれば良く、車室内Aの空気流がシートカバー21内部を循環できる様になっておれば良い。通常のシートカバー21はファブリック製とされているが、ファブリック製のシートカバーは通気性が良いため、従来通りの構成のままで良い。
【0021】
また、シート内部にシートパッドを設けない、伸縮性の良いシートカバーがシートパッドの役割を兼ね備える構造のシート、いわゆるネットシートであってもよい。ネットシートであれば、内部にシートクッションを設けない分だけシート内外の空気流の通気性が向上するため、効果的に空気清浄機能を発揮できる。
【0022】
フレーム部材23は、図3に良く示されるように、シートバック20の外形骨格を形成するフレーム骨格23aとS字状ジグザグスプリング23bとからなっており、S字状ジグザグスプリング23bが左右のフレーム骨格23a間に張設されて構成されている。シートパッド22は、図4に良く示されるように、着座者50が座り心地を確保できる所定の厚みをもって、シートバック20の上部から下部に亘って配設されている。
すなわち、シートパッド22はフレーム骨格23aと略同じ範囲の面積に亘って設けられている。そして、シートパッド22の周囲には切り込み22aが設けられており、この切り込み22aにフレーム骨格23aが取り込まれて配置されている。全体として見ると、フレーム骨格23の前面(図4で見て左方向位置)にシートパッド22が配置され、これに袋状のシートカバー21が被せられてシートバックが形成されている。なお、この実施の形態におけるシートパッド22が本発明でいうパッド部材に相当する。
【0023】
上述したシートバック20において、シートパッド22の、図4で見て右側面の裏面に光触媒層25が形成されており、フレーム骨格23aに紫外線光源27が取り付けられている。光触媒層25が形成されているシートバック22の裏面は、図4から分かるように、着座者50がフロントシート5に着座した場合において、着座者が接する側のフロントカバー21aとは反対側のシート内部の構成部分位置にある。すなわち、シートバック22の裏面は着座者の動きの伝達が少なくなっている位置であり、かつその動きによるフレーム部材23との相対摩擦運動の影響も少ない位置状態にある。紫外線光源27が取り付けられるフレーム骨格23aの位置も同様の位置状態にある。
【0024】
シートパッド22の裏面に形成される光触媒層25は、光触媒の作用により、被塗物であるシートパッド22の表面が劣化する可能性があるため、被塗物の保護と密着性を得る点から、コーティング層を光触媒と被塗物であるシートパッド22の間に形成させておくのが良い。コーティング層を構成するものとしては、多孔質構造のエナメルタイプのものや、無機材質のものがある。これらと共に被塗物であるシートパッド22に塗布することで、酸化チタンが上記コーティング材の層表面に露出し、光触媒層が形成される(図示せず)。
なお、光触媒層25に用いられる光触媒としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化セリウムなどがあるが、安全性が高く、かつ、化学的安定性の高い二酸化チタンが好ましい。
【0025】
フレーム部材23に取り付けられる紫外線光源27は、この実施の形態においては、紫外線発光ダイオードが用いられている。紫外線発光ダイオードは使用電力が少なくて済むという利点があり、自動車等のようにバッテリを電源とする車両においては好適となる。なお、紫外線光源27としては、他にブラックライト、ケミカルライト、殺菌灯、高圧水銀灯等を用いることが考えられる。しかし、これらはいずれも消費電力が発光ダイオードより高い。
紫外線光源27は、この実施の形態においては、左右のフレーム骨格23aに内側向きに各1個、光触媒層25を照射するように取り付けられている。そして、図示は省略したがそれぞれの紫外線光源27にはバッテリ電源から常時電力が供給されるように配線されている。なお、紫外線光源27の設置数はシートパッド22の裏面に形成される光触媒層25の面積を照射するに十分な数だけ設置すれば良いものである。
【0026】
次に、図3に示されるシートクッション30も、位置は異なるが、シートバック20と同様に構成されている。すなわち、シートクッション30は、シートカバー31、シートパッド32、フレーム部材33からなっている。フレーム部材33はフレーム骨格33aとS字状ジグザグスプリング33bとからなっており、S字状ジグザグスプリング33bが左右のフレーム骨格33aに張設して形成されている。
そして、このシートクッション30においても、上述のシートバック20と同様の位置である、シートパッド31の下面に光触媒層35が形成されており、フレーム骨格33aに紫外線光源37が光触媒層35を照射するように取り付けられている。
【0027】
図3及び図4に示したシート以外のシートも、上述したフロントシート5の助手席側シートと同様の構成して構成されている。すなわち、運転席側のフロントシート5やリアシート7も同様に構成されており、それぞれのシートに空気清浄機能をなすための光触媒層及び紫外線光源が設けられている。しかし、空気清浄機能は必ずしもすべてのシートに設ける必要はなく、車室内の空気清浄を行うのに十分な程度に、必要に応じて設ければ良いものである。この場合、シートの配置構成の点から、フロントシート5のシートバック20に優先的に設けるのが空気清浄機能を効率的に行う観点から好ましいものである。
【0028】
以上の構成よりなる自動車の車室内に装備されたシートの空気清浄機能について説明する。
図2に示すエアコンディショナーの各吹き出し口1a、1b、1c、1dから出た空気流は、図1に示す自動車室内Aを循環するが、その一部の循環流がフロントシート5やリヤシート7の内部に循環していく。この各シート5、7内に循環していく空気流には臭いや細菌を有している場合がある。臭いや細菌を有する空気流はシート内部の光触媒層25、35の位置に来た際に、紫外線光源27、37からの照射による光触媒作用によって、臭いや細菌は分解されて空気の清浄化が行われる。浄化された空気は循環流にしたがってシート外の車室内Aに再び戻される。この空気清浄機能はシート内への空気の循環が行われている限り行われ、車室内Aの空気の清浄化が進められ、車室内Aは常に清浄化された状態となる。
この様にこの実施の形態においては、光触媒作用を行わせるための紫外線光源27、37の照射がシート内部において行われるものであるため、着座者50の人体への影響をより少なくすることができる。また、紫外線光源27、37はシート内部のフレーム骨格23a、33aに設けられている事から、天候や、昼夜に関係なく空気清浄機能を行うことができる。
空調装置が作動していない状態においても、車内における人間50及び紫外線光源27、37などの熱源により生ずる熱分布の差異から空気の循環は確保されている。 微弱な空気の循環においても、シート5、7の内部空間を利用して広く光触媒層25、35を形成することが出来るため、十分な効果が得られる。
【0029】
また、上記した実施の形態によれば、光触媒層25、35はシートパッド22、32の裏面や下面の表面にコーティングして、すなわち単に塗布して形成するものであるので、その製作の作業性がよく、生産性も良い。更に、この光触媒層25、35が形成される位置は、着座者50が着座した位置から離れた位置にあって、着座者50の動きがあまり伝達されない位置であるため、光触媒層25、35を長期に亘って安定して維持することができる。
なお、上記の実施の形態においては、光触媒層25、35への電力の供給は常時行うようにしているため、車室内は常に清浄化された状態を維持でき、例えば、自動車に乗り込んだ際の、異臭や細菌からの影響をなくすることができる。すなわち、光触媒作用はラジカル反応であるため、電源を入れてからその作用が発揮するためにはある程度の時間を要する。このため自動車に乗り込んだ際に電源を入れたのでは乗員に対する清浄化が遅れるという問題を生じるものである。
【0030】
以上本発明に係る空気清浄機能を備えた車両用シートの実施の形態について説明したが、本発明はその他各種の実施の形態で実施可能なものである。
先ず、上述の実施の形態においては、光触媒層25は図4に示すシートバック20について説明すれば、シートバッド22の裏面に形成した場合について説明したが、シートカバー21のバックカバー21bの内側に形成しても良い。この場合には、袋状のシートカバー21をいわゆる裏側向きに反転させてから光触媒層を塗布して形成しなければならない煩わしさはあるが、この部位はシートパッド22の裏面と異なり着座者の動きによる相対摩擦運動が殆んど生じない箇所であるので、上述の実施の形態の場合より光触媒層25をより長く安定して維持できるという利点がある。
【0031】
また、上述の実施の形態においては、紫外線光源27、37への電力の通電は常に行うように配線した場合について説明したが、紫外線光源27、37と車両用電源又は外部電源との間に通電を制御する装置を設けることもできる。これにより、長時間使用をしない場合には、その通電を停止し、節電することが出来る。
【0032】
【発明の効果】
本発明の各発明は、上述した手段をとることにより、次の様な効果がある。
先ず、第1の発明によれば、車両用シートに、光触媒層およびコーティング層を形成すると共に、光源が設置されているため、天気、昼夜を問わず、空気清浄化機能を発揮することができる。また、光触媒層、コーティング層および光源が車両用シート内部に設置されている場合には、着座者等の人体への影響がより少なくなるようになっていると共に、光触媒層が長期に亘って安定して利用できる様になっている。
【0033】
次に、第2の発明によれば、紫外線光源に消費電力の少ない紫外線発光ダイオードを用いることで、車両用電源が常時供給される方式をとることができ、車室内の空気を常に清浄化することができる。
次に、第3の発明によれば、シート内部での空気流の循環が強制的に行われる事から、シート内部での空気清浄機能の容量をより多くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】車室内の概略図である。
【図2】車室内の吹き出し口の概略図である。
【図3】車両用シートの全体構成を一部破断して示す斜視図である。
【図4】車両用シートの要部断面図である。
【符号の説明】
A 車室内
1 インストルメントパネル
1a、1b、1c、1d 吹き出し口
3 サイドドア
3a フロントドア
3b リヤドア
5 フロントシート
7 リヤシート
20 シートバック
30 シートクッション
21、31 シートカバー
21a フロントカバー
21b バックカバー
21c 頂部カバー
22、32 シートパッド(パッド部材)
23、33 フレーム部材
23a、33a フレーム骨格
23b、33b S字状ジグザグスプリング
25、35 光触媒層
27、37 紫外線光源
50 着座者
Claims (3)
- 車室内に設置され、車室内の空気流を通過させることができる車両用シートであって、
着座者が接する側と反対側のシートの構成部分に光触媒層およびコーティング層が形成されると共に、
該光触媒層に向けて照射することが可能な光源が設置されることを特徴とする空気清浄機能を備えた車両用シート。 - 請求項1に記載の空気清浄機能を備えた車両用シートであって、
前記光源を紫外線発光ダイオードとし、
かつ車両用電源が常時供給されることを特徴とする空気清浄機能を備えた車両用シート。 - 請求項1または請求項2に記載の空気清浄機能を備えた車両用シートであって、
空気を強制的に対流させるための空調装置を備えることを特徴とする空気清浄機能を備えた車両用シート。
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