JP2004337647A - 活性エネルギー線硬化複層塗膜の形成方法、活性エネルギー線硬化複層塗膜、及び、ガラス製品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】活性エネルギー線硬化複層塗膜の形成方法であって、樹脂粒子及び塗膜形成性樹脂からなるプライマーを塗装する工程(I)、及び、上記工程(I)により得られたプライマー層の上に、活性エネルギー線硬化性塗料を塗装する工程(II)からなり、上記樹脂粒子は、非溶解性、かつ、疎水性である活性エネルギー線硬化複層塗膜の形成方法。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、活性エネルギー線硬化複層塗膜の形成方法、活性エネルギー線硬化複層塗膜、及び、ガラス製品に関する。
【0002】
【従来の技術】
短時間で硬化できる光硬化性塗料は、熱に弱い基材、熱容量の大きな基材に有利に塗装が可能であること、硬化設備をコンパクトにできること、硬化設備の保守が容易であること、電源を入れてから生産を開始できるまでの時間が短いこと等の利点があり、色々な分野で使用されている。
【0003】
このような光硬化性塗料は、耐水性、耐アルカリ性付与又は被塗装物保護の観点から、金属、プラスチック等の基材に適用されている。特に、ガラスは、その優れた透明性、耐薬品性、保存性から食品、薬品等の容器、窓ガラス、仕切り、鏡等に用いられているが、重い、割れやすい等の欠点がある。このため、破損時の破片飛散を防止するために光硬化性塗料を塗布するガラスの補強方法が一般的に行われている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。しかしながら、このような方法では、光硬化性塗料の密着性が不充分であるため、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性等の塗膜性能や破片飛散防止性が満足できるものではなかった。
【0004】
このような問題を解決するために、水性アクリル樹脂、水性ウレタン樹脂等の合成樹脂を塗布する方法(例えば、特許文献3、特許文献4参照)、シランカップリング剤で処理した後、重合性不飽和結合を有する反応性組成物を塗布する方法(例えば、特許文献5参照)、ガラスの一面にプラスチックフィルムを光硬化性組成物で貼着する方法(例えば、特許文献6参照)、特定の分子量のウレタンアクリレート樹脂を含む紫外線又は電子線硬化性組成物を塗装する方法(例えば、特許文献7参照)等が開示されている。
【0005】
しかしながら、これらの方法では、充分な強度補強効果、破損時の破片飛散防止効果が得られず、特に鏡の銀メッキ腐食防止のために塗装される防食塗料の上に塗装した場合、長期に渡って高湿度下にさらされると塗膜劣化を起こし、これらの効果が更に低下するという問題があった。
【0006】
【特許文献1】
特開昭49−102711号公報
【特許文献2】
特開昭59−140267号公報
【特許文献3】
特開2000−104007号公報
【特許文献4】
特開2000−169792号公報
【特許文献5】
特開平1−201047号公報
【特許文献6】
特開昭64−36443号公報
【特許文献7】
特開平9−157581号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性等の塗膜性能や破片飛散防止性に優れた活性エネルギー線硬化複層塗膜を得る方法、上記活性エネルギー線硬化複層塗膜を得る方法により形成される活性エネルギー線硬化複層塗膜、及び、上記活性エネルギー線硬化複層塗膜を有するガラス製品を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、活性エネルギー線硬化複層塗膜の形成方法であって、樹脂粒子及び塗膜形成性樹脂からなるプライマーを塗装する工程(I)、及び、上記工程(I)により得られたプライマー層の上に、活性エネルギー線硬化性塗料を塗装する工程(II)からなり、上記樹脂粒子は、非溶解性、かつ、疎水性であることを特徴とする活性エネルギー線硬化複層塗膜の形成方法である。
上記樹脂粒子は、ポリエチレン樹脂粉末、又は、ポリプロピレン樹脂粉末であることが好ましい。
本発明は、上記活性エネルギー線硬化複層塗膜の形成方法により得られることを特徴とする活性エネルギー線硬化複層塗膜でもある。
本発明は、上記活性エネルギー線硬化複層塗膜を有することを特徴とするガラス製品でもある。
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明の活性エネルギー線硬化複層塗膜の形成方法は、活性エネルギー線硬化性塗料を塗布する前に、工程(I)として塗膜形成性樹脂及び樹脂粒子からなるプライマーを塗装することにより、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性等の塗膜性能、破損時の破片飛散防止効果に優れた活性エネルギー線硬化複層塗膜を得ることができる方法である。
【0010】
即ち、本発明において、上記塗膜形成性樹脂及び樹脂粒子からなるプライマー層を形成することにより、活性エネルギー線硬化性塗料の密着性を高め、更に、活性エネルギー線硬化複層塗膜の透水性を抑制し、浴室等の高湿度下の環境においても、長期にわたり初期の耐水性、耐酸性、耐アルカリ性等の塗膜性能、破損時の破片飛散防止効果が維持されるものである。
【0011】
上記樹脂粒子は、非溶解性で疎水性のものであれば特に限定されず、無機粒子は含まない。ここでいう非溶解性とは、プライマーの溶媒として使用する成分又は他の配合成分に溶解又は膨潤しないことを意味する。また、ここでいう疎水性とは、水を吸収しないことを意味する。このような性質を有する樹脂粒子を本発明で使用するプライマーに配合することにより、得られる活性エネルギー線硬化複層塗膜の透水性を抑制することができる。
【0012】
上記樹脂粒子の体積平均粒子径は、下限0.1μm、上限50μmの範囲内であることが好ましい。上記体積平均粒子径が0.1μm未満であると、充分な硬化が得られず、50μmを超えると、透水性抑制効果が得られないおそれがある。上記下限は、0.5μmがより好ましく、1μmが更に好ましい。上記上限は、30μmがより好ましく、20μmが更に好ましい。
【0013】
上記樹脂粒子としては、例えば、ポリエチレン樹脂粒子、酸化ポリエチレン樹脂粒子、ポリプロピレン樹脂粒子、酸化ポリプロピレン樹脂粒子、ポリ(エチレン−プロピレン共重合)樹脂粒子等のポリオレフィン樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、アクリル樹脂粒子、ポリエステル樹脂粒子、エポキシ樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、ポリカーボネート樹脂粒子、ナイロン樹脂粒子等、及び、これらの2種以上の混合物を挙げることができる。また、上記樹脂粒子としては、更に疎水性を高めるためにパラフィン等で処理したものであってもよい。また、予めこれらの樹脂粒子を有機溶剤等に分散したものであってもよい。
【0014】
上記樹脂粒子は、なかでも、塗膜の透水性抑制の観点から、ポリエチレン樹脂粒子、及び、ポリプロピレン樹脂粒子が好ましい。更に、凝集の防止、塗膜の硬度低下を避けるため、融点が80℃以上であるポリエチレン樹脂粒子、及び、ポリプロピレン樹脂粒子がより好ましい。このようなポリエチレン樹脂粒子及びポリプロピレン樹脂粒子としては特に限定されず、例えば、商品名ランコワックスPP−1362D(ランコ社製)、シャムロックS−363、シャムロックS−386、ハイドロベルED(いずれもシャムロック社製)等を挙げることができる。上記融点は、100℃以上がより好ましい。
【0015】
上記樹脂粒子の配合量は、上記プライマーの全固形分に対して下限0.1質量%、上限50質量%の範囲内であることが好ましい。上記配合量が0.1質量%未満であると、充分な透水性抑制効果が得られない。上記配合量が50質量%を超えると、活性エネルギー線硬化性塗料の密着性に悪影響を与えるおそれがある。上記下限は、0.5質量%がより好ましく、1質量%が更に好ましい。上記上限は、30質量%がより好ましく、20質量%が更に好ましい。
【0016】
本発明のプライマーに含まれる塗膜形成性樹脂としては、通常、塗料用として使用されるものであれば特に限定されないが、それ自身100℃程度の熱で硬化する機能がない樹脂が好ましい。具体的には、上記塗膜形成性樹脂として、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ジエン系樹脂、オレフィン系樹脂、ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂を使用することができる。
【0017】
また、熱硬化性樹脂であっても、硬化剤を含まないものであれば上記塗膜形成性樹脂として使用してもよい。すなわち、本発明で使用するプライマーは、塗布後、上記活性エネルギー線硬化性塗料を塗布する前にプライマー層が架橋しないような設計であればよい。
【0018】
上記ポリエステル樹脂としては、例えばエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン等の多価アルコールと(無水)コハク酸、(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、セバチン酸、(無水)ヘキサヒドロフタル酸、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸等の多塩基酸の反応によって得られる酸価100以下、数平均分子量2000以上の溶剤希釈型又は水性の飽和ポリエステル樹脂等を挙げることができる。
【0019】
上記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、B、Fと(メチル)エピハロヒドリンを反応させて得られた芳香族エポキシ樹脂、これに上記多塩基酸を反応させた酸価100以下の溶剤希釈型又は水性の数平均分子量2000以上の変性エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0020】
上記ポリウレタン樹脂としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール等とヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート等のイソシアネートモノマーを反応させた酸価100以下の溶剤希釈型又は水性の数平均分子量2000以上のもの等を挙げることができる。
【0021】
上記アクリル樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有モノマー、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルモノマー、スチレン、ビニルトルエン等の芳香族モノマー、ビニルアセテート、ビニルクロライド等のビニルモノマーを公知の重合開始剤を用いて溶液重合、乳化重合等の方法で得た酸価100以下の溶剤希釈型又は水性の数平均分子量2000以上もの等を挙げることができる。
【0022】
上記ジエン系樹脂としては、例えば、ブタジエン、イソプレン等のジエンモノマーの単独又は2種以上と上記カルボキシル基含有モノマー、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、芳香族モノマー、ビニルモノマーの単独又は2種以上を共重合させた数平均分子量2000以上の変性ポリブタジエン樹脂、変性ポリイソプレン樹脂、及び、これを過酢酸等でエポキシ化したもの等を挙げることができる。
【0023】
上記オレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィンモノマーの単独又は2種以上と上記カルボキシル基含有モノマー、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、芳香族モノマー、ビニルモノマーの単独又は2種以上を共重合させた数平均分子量2000以上の変性ポリエチレン樹脂、変性ポリプロピレン樹脂、変性ポリブチレン樹脂等を挙げることができる。
【0024】
上記ビニル樹脂としては、例えば、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、塩化ビニル等の単独又は2種以上を共重合させた数平均分子量2000以上のもの、及び、これを一部又は全部をケン化したもの、更にこれをアセタール化、ブチラール化したもの等を挙げることができる。
【0025】
上記塗膜形成性樹脂は、数平均分子量が2000以上であることが好ましい。上記数平均分子量が2000未満であると、プライマー層の強度が不充分となるため好ましくない。また、上記塗膜形成性樹脂は、ガラス転移温度が−80℃〜150℃であることが好ましい。上記ガラス転移温度が上記範囲外であると、プライマー層の強度が不充分となるおそれがある。
【0026】
上記プライマーは、塗膜物性に影響を与えない範囲で着色剤を含有するものであってもよい。上記着色剤としては特に限定されず、酸化チタン、硫酸鉛、黄鉛、弁柄、紺青、カーボンブラック等の無機顔料、ニトロソ系、ニトロ系、アゾ系、フタロシアニン系、塩基性染料系、酸性染料系、建染染料系、媒染染料系の有機顔料、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、クレー、タルク等の体質顔料を挙げることができる。上記着色剤は、一種類のみを使用するものであっても、二種以上の成分を併用して使用するものであってもよい。
【0027】
上記プライマーは、塗装性を改善するために、有機溶剤、水、シリコン系、フッ素系、アクリル樹脂系等の添加剤を含有したものであってもよい。
上記有機溶剤としては特に限定されず、例えば、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の水に混和しない溶媒、及び、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の水に混和する溶媒も使用することができる。
【0028】
本発明の活性エネルギー線硬化複層塗膜の形成方法は、更に、上記工程(I)により得られたプライマー層の上に、活性エネルギー線硬化性塗料を塗装する工程(II)からなるものである。上記活性エネルギー線硬化性塗料は、活性エネルギー線で硬化する活性エネルギー線硬化性化合物を含有するものであれば特に限定されない。上記活性エネルギー線硬化性化合物としては特に限定されず、例えば、ラジカル重合型活性エネルギー線硬化性化合物、カチオン重合型活性エネルギー線硬化性化合物、及び、これらを併用した併用型活性エネルギー線硬化性化合物等を挙げることができる。
【0029】
上記ラジカル重合型活性エネルギー線硬化性化合物としては特に限定されず、例えば、分子内に1個以上の(メタ)アクリレート基、(メタ)アリル基等のラジカル重合性反応基を有するもの等を挙げることができる。このような化合物としては、例えば、(不)飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等を(メタ)アクリル酸等の酸含有モノマー、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有モノマーで変性したもの、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の水酸基含有アクリルモノマーとヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート等のイソシアネートモノマーで変性した数平均分子量300〜5000の変性ポリエステル樹脂、変性エポキシ樹脂、変性ウレタン樹脂、変性アクリル樹脂等の1種以上の混合物等を挙げることができる。必要に応じて、これにエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートのモノマー類を配合したものであってもよい。
【0030】
上記ラジカル重合型活性エネルギー線硬化性化合物の硬化性を高めるために、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイルシクロヘキサノール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、ジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド等の公知の光ラジカル重合開始剤の1種以上を、塗料中の固形分100に対し1〜10%併用してもよい。
【0031】
上記カチオン重合型活性エネルギー線硬化性化合物としては、分子内に1個以上のエポキシ基、オキセタニル基、テトラヒドロフリル基、ビニル基等のカチオン重合性反応基を有するもの等を挙げることができる。このような化合物としては、例えば、エポキシ樹脂、エポキシ化ポリジエン樹脂等を挙げることができる。上記エポキシ樹脂としては特に限定されず、例えば、上記プライマーの塗膜形成性樹脂として述べたもの等を挙げることができる。
【0032】
上記エポキシ化ポリジエン樹脂としては、例えば、ブタジエン、イソプレン等のジエンモノマーの単独又は2種以上とスチレン、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸等のビニルモノマーの単独又は2種以上の共重合体を過酢酸等でエポキシ化したもの、エポキシ化大豆油等を挙げることができる。
【0033】
上記カチオン重合型活性エネルギー線硬化性化合物の硬化性を高めるために、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロフォスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等の公知の光カチオン重合開始剤の1種以上を塗料中の固形分100に対し1〜10%併用してもよい。
【0034】
上記併用型活性エネルギー線硬化性化合物としては特に限定されず、例えば、上記ラジカル重合型活性エネルギー線硬化性化合物と上記カチオン重合型活性エネルギー線硬化性化合物をブレンドしたもの、分子内に1個以上の(メタ)アクリレート基、(メタ)アリル基等のラジカル重合性反応基と1個以上のエポキシ基、オキセタニル基、テトラヒドロフリル基、ビニル基等のカチオン重合性反応基を共に有するもの等を挙げることができる。
【0035】
上記併用型活性エネルギー線硬化性化合物の硬化性を高めるために、上記光ラジカル重合開始剤の一種以上、及び、上記光カチオン重合開始剤の一種以上を塗料中の固形分100に対し、それぞれ1〜10%併用してもよい。上記併用型活性エネルギー線硬化性化合物としてブレンドする上記ラジカル重合型活性エネルギー線硬化性化合物としては、分子内に窒素原子を含むものは硬化性を低下させるので使わないことが望ましい。
【0036】
上記活性エネルギー線硬化性塗料は、樹脂粒子を含有することが好ましい。上記樹脂粒子を含有することにより、得られる活性エネルギー線硬化複層塗膜の透水性抑制効果が更に高まり、高湿度下での塗膜劣化をより防ぐことができる。上記活性エネルギー線硬化性塗料に含まれる樹脂粒子は、非溶解性で、かつ、疎水性のものであれば特に限定されず、例えば、プライマーに含まれる樹脂粒子として例示したものを挙げることができる。上記活性エネルギー線硬化性塗料に含まれる樹脂粒子は、プライマーに含まれている樹脂粒子と同一の樹脂粒子であってもよいし、又は、異なる樹脂粒子であってもよい。上記活性エネルギー線硬化性塗料に含まれる樹脂粒子は、凝集の防止、塗膜の硬度低下を避けるため、融点が80℃以上であるポリエチレン樹脂粒子又はポリプロピレン樹脂粒子が最も好ましい。
【0037】
上記活性エネルギー線硬化性塗料が樹脂粒子を含有する場合、その含有量は、上記活性エネルギー線硬化性塗料の全固形分に対して下限0.1質量%、上限30質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量が、0.1質量%未満であると、耐水性、耐アルカリ性、耐酸性が低下するおそれがある。上記含有量が30質量%を超えると、塗料の粘度が上がり、塗装固形分が低下したり、得られる複層の外観に悪影響を与えるおそれがある。
【0038】
上記ラジカル重合型活性エネルギー線硬化性化合物は、必要に応じて硬化性を低下させない範囲でヒンダードアミン系光安定剤を併用することもできる。ヒンダードアミン系光安定剤は塗料中の固形分100に対し、3%以内の添加量にすることが望ましい。上記カチオン重合型活性エネルギー線硬化性化合物、及び、併用型活性エネルギー線硬化性化合物には、硬化性を低下させるので上記ヒンダードアミン系光安定剤は併用しないことが望ましい。
【0039】
上記ヒンダードアミン系光安定剤としては特に限定されず、例えば、スミソープ577(住友化学社製)、チヌビン622LD、チヌビン144、チヌビン111FDL、チヌビン123、チヌビン292(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、アデカスタブLA−57、アデカスタブLA−62、アデカスタブLA−63、アデカスタブLA−67、アデカスタブLA−82、アデカスタブLA−87(旭電化社製)、グッドライトUV−3034(グッドリッチ社製)等の商品名のものを挙げることができる。
【0040】
更に、本発明で使用する活性エネルギー線硬化性塗料は、必要に応じて紫外線吸収剤、塗装作業性を改善するための消泡剤、レベリング剤、意匠性を向上するための着色剤、体質顔料、金属粉末、艶消剤、潤滑剤等を配合しても良い。
【0041】
上記紫外線吸収剤としては特に限定されず、例えば、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、トリアジン系等の紫外線吸収剤を挙げることができる。
上記カチオン重合型活性エネルギー線硬化性化合物、及び、併用型活性エネルギー線硬化性化合物は、硬化性を低下させるので上記ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系及びトリアジン系の紫外線吸収剤を併用しないことが望ましい。
また、紫外線硬化性化合物と併用する場合は、硬化反応を効率よく行うため、紫外線吸収剤は塗料中の固形分100に対し20%以内の添加量にすることが望ましい。
【0042】
上記サリチル酸系の紫外線吸収剤としては特に限定されず、例えば、フェニルサリシレート、p‐t‐ブチルフェニルサリシレート、p‐オクチルサリシレート等を挙げることができる。
上記ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤としては特に限定されず、例えば、2,4‐ジヒドロキシベンゾフェノン、2‐ヒドロキシ‐4‐メトキシベンゾフェノン、2‐ヒドロキシ‐4‐オクトキシベンゾフェノン、2‐ヒドロキシ‐4‐ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’‐ジヒドロキシ‐4‐メトキシベンゾフェノン、2,2’‐ジヒドロキシ‐4,4’‐ジメトキシベンゾフェノン、2‐ヒドロキシ‐4‐メトキシ‐5‐スルホベンゾフェノン、ビス(2‐メトキシ‐4‐ヒドロキシ‐5‐ベンゾイルフェニル)メタン等を挙げることができる。
【0043】
上記ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤としては特に限定されず、例えば、2‐(2’‐ヒドロキシ‐5’‐メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2‐(2’‐ヒドロキシ‐5’‐t‐ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2‐(2’‐ヒドロキシ‐3’,5’‐ジ‐t‐ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2‐(2’‐ヒドロキシ‐3’‐t‐ブチル‐5’‐メチルフェニル)‐5‐クロロベンゾトリアゾール、2‐(2’‐ヒドロキシ‐3, 5’‐ジ‐t‐アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2‐〔2’‐ヒドロキシ‐3’‐(3’’,4’’,5’’, 6’’‐テトラヒドロフタルイミドメチル)‐5’‐メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2,2‐メチレンビス〔4‐(1,1,3,3‐テトラメチルブチル)‐6‐(2H‐ベンゾトリアゾール‐2‐イル)フェノール〕、2‐(2’‐ヒドロキシ‐5’‐メタアクリロキシフェニル)‐2H‐ベンゾトリアゾール、オクチル‐〔3−t−ブチル‐4‐ヒドロキシ‐5‐ (2H‐ベンゾトリアゾール‐2‐イル)フェニル〕プロピオネ‐ト、オクチル‐〔3−t−ブチル‐4‐ヒドロキシ‐5‐(5’‐クロロ‐2H‐ベンゾトリアゾール‐2‐イル)フェニル〕プロピオネ‐ト、2‐(2H‐ベンゾトリアゾール‐2‐イル)‐4‐(1’, 1’, 3’, 3’‐テトラメチルブチル)‐6‐(1’’−メチル‐1’’‐フェニルエチル)フェノール、2‐(2H‐ベンゾトリアゾール‐2‐イル)‐4,6‐ビス(1’−メチル‐1’‐フェニルエチル)フェノール、2‐(2H‐ベンゾトリアゾール‐2‐イル)‐4,6‐ジ‐t‐ペンチルフェノール等を挙げることができる。
【0044】
上記シアノアクリレート系の紫外線吸収剤としては特に限定されず、例えば、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート等を挙げることができる。
上記トリアジン系の紫外線吸収剤としては特に限定されず、例えば、2‐〔4’‐[2’’‐ヒドロキシ‐3’’‐ドデシルオキシプロピル]オキシ〕‐2’‐ヒドロキシフェニル‐4,6‐ビス(2’’ ’,4’’ ’‐ジメチルフェニル)‐1,3,5‐トリアジン、2,4‐ビス(2’,4’‐ジメチルフェニル)‐6‐(2’’‐ヒドロキシ‐4’’‐イソオクチルオキシフェニル)‐1,3,5‐トリアジン等を挙げることができる。
【0045】
上記着色剤としては特に限定されず、上述のプライマーに含まれる着色剤として述べたものを挙げることができる。上記着色剤は、一種類のみを使用するものであっても、二種以上の成分を併用して使用するものであってもよい。着色剤は、通常、高い紫外線吸収能を有するため、硬化性を阻害しない範囲で配合することが好ましい。また、上記活性エネルギー線硬化性化合物として、カチオン重合型活性エネルギー線硬化性化合物及び併用型活性エネルギー線硬化性化合物を使用する場合、これらの着色剤の中で、中性又は酸性のものを選択するのが好ましい。
【0046】
上記活性エネルギー線硬化性塗料は、塗装性を改善するために、有機溶剤、水、シリコン系、フッ素系、アクリル樹脂系等の添加剤を含有したものであってもよい。
上記有機溶剤としては特に限定されず、上述のプライマーに含まれる有機溶剤として述べたものを挙げることができる。
【0047】
本発明の活性エネルギー線硬化複層塗膜の形成方法は、樹脂粒子及び塗膜形成性樹脂からなるプライマーを塗装する工程(I)、上記工程(I)により得られたプライマー層の上に、活性エネルギー線硬化性塗料を塗装する工程(II)からなるものである。上記工程(I)における、上記プライマーの塗装方法としては特に限定されず、例えば、ハケ塗り、ローラー塗布、エアースプレー塗布、エアーレススプレー塗布、カーテンフロー塗布、浸漬塗布、流し塗り等を挙げることができる。
【0048】
本発明において、工程(II)を行う前に、上記工程(I)により得られるプライマー層を60〜200℃で30秒〜10分程度乾燥することが好ましい。このような乾燥を行うことにより、良好な物性と外観を有する複層塗膜を得ることができる。
【0049】
上記プライマー層の乾燥膜厚は、下限1μm、上限100μmの範囲内であることが好ましい。上記乾燥膜厚が1μm未満であると、活性エネルギー線硬化性塗料の密着性を高めることできず、100μmを超えると、それ以上効果が上がらず不経済である。上記下限は、3μmがより好ましく、5μmが更に好ましい。上記上限は、50μmがより好ましく、30μmが更に好ましい。
【0050】
上記工程(II)における、上記活性エネルギー線硬化性塗料の塗布方法としては特に限定されず、例えば、上述のプライマーの塗装方法として例示した方法を挙げることができる。
【0051】
上記活性エネルギー線硬化性塗料によって形成される塗膜を硬化する為に使用する活性エネルギー線としては特に限定されず、例えば、紫外線、電子線、放射線(β線、γ線)等を挙げることができる。また、活性エネルギー線のエネルギー源としては特に限定されず、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、無電極放電ランプ、キセノンランプ、エキシマランプ等の紫外線ランプ類、走査型、非走査型の電子線照射装置等を挙げることができる。
【0052】
上記塗膜を硬化させる活性エネルギー線の照射量としては、紫外線の場合は下限100mJ/cm2、上限10000mJ/cm2が好ましく、電子線の場合は、下限1Mrad、上限50Mradが好ましい。上記塗膜は、塗装後に50〜200℃の温風で1秒〜10分間程度乾燥させて有機溶剤又は水等の溶媒を蒸発させた後に、活性エネルギー線を照射し、硬化させることが好ましい。
【0053】
上記塗膜は、乾燥膜厚が下限1μm、上限200μmの範囲内であることが好ましい。上記乾燥膜厚が1μm未満であると、充分な耐水性、耐アルカリ性等を得ることができないおそれがある。また、上記乾燥膜厚が200μmを超えると、それ以上の効果が得られず経済的に不利である。上記下限は、3μmがより好ましく、5μmが更に好ましい。上記上限は、150μmがより好ましく、100μmが更に好ましい。上述の方法により得られる活性エネルギー線硬化複層塗膜も本発明の一つである。
【0054】
本発明の活性エネルギー線硬化複層塗膜の形成方法における被塗装物としては特に限定されず、例えば、金属、プラスチック、紙、木材、ガラス、セラミック、モルタル等の基材を使用することができる。これらの被塗装物に本発明の活性エネルギー線硬化複層塗膜を形成することにより、優れた耐水性、耐酸性、耐アルカリ性等を付与することができる。なかでも、上記被塗装物としては、破損時の飛散防止性が求められるガラス製品、特に鏡が好ましい。上述の方法により得られる活性エネルギー線硬化複層塗膜を有するガラス製品も本発明の一つである。
【0055】
本発明の被塗装物として鏡を用いる場合、上記鏡は防食塗料を塗布したものであることが好ましい。従来、特に防食塗膜と活性エネルギー線硬化塗膜との密着性は良好でないため、優れた防食効果と飛散防止効果を両立することが困難であった。しかしながら、本発明において、防食塗膜の上にプライマーを塗布することによって、活性エネルギー線硬化性塗料の密着性を高め、優れた防食効果と飛散防止効果を有する鏡を得ることができる。また、塗膜の透水性を抑制することによって、浴室等の高湿度下の環境においても、長期にわたり初期の塗膜性能、飛散防止効果が維持される鏡を得ることができる。
【0056】
上記被塗装物は、通常の脱脂、化成処理、コロナ放電処理、フレーム処理、カップリング剤塗布処理等を行ったものであってもよい。
上記カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤等を挙げることができるが、なかでもシランカップリング剤が好ましい。上記カップリング剤は二種以上を併用してもよい。
【0057】
上記シランカップリング剤としては特に限定されず、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルジメトキシメチルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、及び、これらの加水分解物等を挙げることができる。なかでも、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びこれらの加水分解物が好ましい。
上記カップリング剤塗布処理は、これらのカップリング剤を有機溶剤に稀釈してそのまま塗装してもよいが、予め加水分解させたカップリング剤を塗装することもできる。
【0058】
本発明の活性エネルギー線硬化複層塗膜の形成方法は、非溶解性で疎水性の樹脂粒子を含むプライマーを塗布し、得られるプライマー層の上に、活性エネルギー線硬化性塗料を塗装する方法であって、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性等の塗膜強度や破片飛散防止性に優れた活性エネルギー線硬化複層塗膜を得ることができるものである。
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、部又は%はそれぞれ質量部、質量%を意味する。
【0059】
製造例1
攪拌機付4口フラスコにトルエン350部、メチルエチルケトン350部、エピコート1009(シェル化学社製、エポキシ樹脂)300部を仕込み、80℃で溶解して、数平均分子量3750、ガラス転移点75℃、固形分30%の熱可塑性樹脂溶液を得た。
【0060】
製造例2
攪拌機付4口フラスコにトルエン600部、キシレン200部、タフテックM1943(旭化成社製、変性スチレン・エチレン・ブタジエン樹脂)200部を仕込み、80℃で溶解して、固形分20%の熱可塑性樹脂溶液を得た。
【0061】
製造例3
攪拌機付4口フラスコにトルエン350部、メチルエチルケトン350部、バイロン200(東洋紡績社製、飽和ポリエステル樹脂)300部を仕込み、80℃で溶解して、数平均分子量19000、ガラス転移点67℃、固形分30%の熱可塑性樹脂溶液を得た。
【0062】
製造例4
攪拌機付4口フラスコに酢酸エチル610部、アロニックスM−305(東亜合成社製、ペンタエリスリトールトリアクリレート)1200部、ハイドロキノン0.8部、ジブチル錫ジラウレート0.8部を仕込み、攪拌しながら40℃以下でイソホロンジイソシアネート222部を1時間かけて滴下した。その後70℃に昇温して2時間攪拌を継続後、赤外分光光度計で2220cm−1のイソシアネート基に基づく吸収が消失したことを確認して、数平均分子量600、固形分70%のウレタンアクリレート樹脂溶液を得た。
【0063】
実施例1
脱脂した0.8mm厚の磨軟鋼鈑に製造例1の熱可塑性樹脂溶液100部にランコワックスPP−1362D(ランコ社製、ポリプロピレン粉末、平均粒径5μm)5部を分散したプライマーを乾燥膜厚15μmになるようにバーコータ−で塗装、80℃で5分乾燥させた後、製造例4のウレタンアクリレート樹脂溶液50部、ライトアクリレートDCP−A(共栄社化学製、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート)20部、ライトアクリレート1,9ND−A(共栄社化学製、1,9−ノナンジオールジアクリレート)20部、イルガキュア184(チバスペシャリティーケミカルズ社製、1−ベンゾイルシクロヘキサノール)3部よりなるラジカル重合型紫外線硬化性塗料を乾燥膜厚30μmになるようにバーコータ−で塗装、80℃で5分乾燥した。次いで集光型高圧水銀灯HAL−250NL(日本電池製、120W/cm)の下を5m/分の速度で通過させて塗膜を硬化させて試験用板を作成した。この時の活性エネルギー線照射量は310mJ/cm2であった。得られた試験板を用いて、下記方法で、耐水性、耐アルカリ性、耐酸性、加工性を評価した結果を表1に記載した。
【0064】
評価方法
<耐水性>
裏面をポリエステルフィルムでシールした試験板を60℃の温水に10日浸漬した。引き上げ直後の塗面の外観、密着性、鉛筆硬度を評価した。
<耐アルカリ性>
裏面をポリエステルフィルムでシールした試験板を40℃の3%苛性ソーダ水溶液に10日浸漬した。引き上げ直後の塗面の外観、密着性、鉛筆硬度を評価した。
<耐酸性>
裏面をポリエステルフィルムでシールした試験板を40℃の3%硫酸水溶液に10日浸漬した。引き上げ直後の塗面の外観、密着性、鉛筆硬度を評価した。
【0065】
<外観>
塗面の白化、ブリスターの有無を目視で判定した。
〇:白化、ブリスターなし
△:若干の白化、又は、ブリスターあり
×:著しい白化、又は、ブリスターあり
【0066】
<密着性>
塗膜に鋭利なカッターで1mm間隔の碁盤目を100個作り、粘着テープを貼りつけて剥離した。塗膜の残存数を測定して密着性とした。
〇:残存数が80個以上
△:残存数が20個以上、80個未満
×:残存数が20個未満
<鉛筆硬度>
芯先端が平らで角が鋭くなるように調整した三菱ユニ鉛筆を約45度の角度で塗膜に当てて表面を引っかく。塗膜が破れない最高の鉛筆の濃度記号を鉛筆硬度とする。
【0067】
<加工性>
デュポン衝撃試験機で1/2インチ径のポンチにより裏打ちで30cmの高さから1kgの錘を落下させて塗膜の割れ具合を観察する。
〇:割れ、剥離なし
△:若干の割れ、剥離あり
×:著しい割れ、剥離あり
【0068】
実施例2
製造例2の熱可塑性樹脂溶液100部にシャムロックS−386(シャムロック社製、ポリエチレン粉末、平均粒径5μm)5部を分散したプライマーを脱脂した0.8mm厚の磨軟鋼鈑に乾燥膜厚15μmになるようにバーコータ−で塗装、80℃で5分乾燥させた後、製造例4のウレタンアクリレート樹脂溶液50部、ライトアクリレートDCP−A20部、1,9−ノナンジオールジアクリレート20部、3部のイルガキュア184の混合物に、5部のシャムロックS−386を分散して得られたラジカル重合型紫外線硬化性塗料合反応性組成物を乾燥膜厚30μmになるようにバーコータ−で塗装、80℃で5分乾燥した。次いで集光型高圧水銀灯HAL−250NLの下を5m/分の速度で通過させて塗膜を硬化させて試験用板を作成した。この時の活性エネルギー線照射量は310mJ/cm2であった。得られた試験板を用いて、評価した結果を表1に記載した。
【0069】
実施例3
製造例2の熱可塑性樹脂溶液100部にシャムロックS−363(シャムロック社製、ポリエチレン:ポリプロピレン混合粉末、平均粒径5μm)5部を分散したプライマーを脱脂した0.8mm厚の磨軟鋼鈑に乾燥膜厚15μmになるようにバーコータ−で塗装、80℃で5分乾燥させた後、製造例4のウレタンアクリレート樹脂溶液50部、ライトアクリレートDCP−A20部、1,9−ノナンジオールジアクリレート20部、3部のイルガキュア184の混合物に、ランコワックスPP−1362D5部を分散したラジカル重合型紫外線硬化性塗料を乾燥膜厚30μmになるようにバーコータ−で塗装、80℃で5分乾燥した。次いで集光型高圧水銀灯HAL−250NLの下を5m/分の速度で通過させて塗膜を硬化させて試験用板を作成した。この時の活性エネルギー線照射量は310mJ/cm2であった。得られた試験板を用いて、評価した結果を表1に記載した。
【0070】
実施例4
銀メッキ、銅メッキをした上にエポキシ樹脂系の防食塗料を塗装した鏡(0.5×200×300mm)の防食塗膜面に製造例3の熱可塑性樹脂溶液100部にランコワックスPP−1362D5部を分散したプライマーを乾燥膜厚15μmになるようにバーコータ−で塗装、80℃で5分乾燥させた後、紫光UV−3520TL(日本合成化学工業製、ウレタンアクリレート樹脂溶液)100部、アロニックスM−350(東亜合成製、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート)20部、ライトアクリレートIB−XA(共栄社化学製、イソボルニルアクリレート)20部、3部のイルガキュア184よりなるラジカル重合型紫外線硬化性塗料を乾燥膜厚100μmになるようにバーコータ−で塗装、80℃で5分乾燥した。次いで集光型高圧水銀灯HAL−250NLの下を5m/分の速度で通過させて塗膜を硬化させて試験用板を作成した。この時の活性エネルギー線照射量は310mJ/cm2であった。得られた鏡の飛散防止性を下記の方法に従って評価し、結果を表1に記載した。
【0071】
<飛散防止性>
複層塗膜面を下にして、鏡を水平で平滑なコンクリート床に置き、1mの高さから1kgの鋼球を自然落下させて破壊させる。破壊した鏡の一端を持ち、引き上げた時の破片の分離状況を観察する。
○:全ての破片が連続して持ち上げられる
△:2〜3個に分離する
×:4個以上に分離する
【0072】
実施例5
銀メッキ、銅メッキをした上にエポキシ樹脂系の防食塗料を塗装した鏡(0.5×200×300mm)の防食塗膜面に製造例3の熱可塑性樹脂溶液100部にランコワックスPP−1362D5部を分散したプライマーを乾燥膜厚15μmになるようにバーコータ−で塗装、80℃で5分乾燥させた後、紫光UV−3520TL100部、20部のアロニックスM−350、ライトアクリレートIB−XA20部よりなるラジカル重合型電子線硬化性塗料を乾燥膜厚90μmになるようにバーコータ−で塗装、80℃で5分乾燥した。次いで電子線照射装置(岩崎電気製)で窒素雰囲気下3Mrad照射して試験用板を作成した。得られた鏡の飛散防止性を実施例4と同様に評価し、結果を表1に記載した。
【0073】
比較例1
プライマーにランコワックスPP−1362Dを配合しない以外は実施例1と同様にして試験用板を作成した。得られた試験板を用いて、評価した結果を表1に記載した。
【0074】
比較例2
プライマー、ラジカル重合反応性組成物にランコワックスPP−1362を配合しない以外は実施例2と同様にして試験用板を作成した。得られた試験板を用いて、評価した結果を表1に記載した。
【0075】
比較例3
プライマーにシャムロックS−363を配合しない以外は実施例3と同様にして試験用板を作成した。得られた試験板を用いて、評価した結果を表1に記載した。
【0076】
比較例4
銀メッキ、銅メッキをした上にエポキシ樹脂系の防食塗料を塗装した鏡(0.5×200×300mm)の防食塗膜面に紫光UV−3520TL100部、20部のアロニックスM−350、ライトアクリレートIB−XA20部、3部のイルガキュア184からなる混合物に、ランコワックスPP−1362D5部を分散したラジカル重合型紫外線硬化性塗料を乾燥膜厚90μmになるようにバーコータ−で塗装、80℃で5分乾燥した。次いで集光型高圧水銀灯HAL−250NLの下を5m/分の速度で通過させて塗膜を硬化させて試験用板を作成した。この時の活性エネルギー線照射量は310mJ/cm2であった。得られた鏡を用いて、評価した結果を表1に記載した。
【0077】
比較例5
脱脂した0.8mm厚の磨軟鋼鈑に製造例1の熱可塑性樹脂溶液100部に酸化チタン5部を分散したプライマーを乾燥膜厚15μmになるようにバーコータ−で塗装、80℃で5分乾燥させた後、製造例4のウレタンアクリレート樹脂溶液50部、ライトアクリレートDCP−A20部、ライトアクリレート1,9ND−A20部、3部のイルガキュア184よりなるラジカル重合反応性組成物を乾燥膜厚10μmになるようにバーコータ−で塗装、80℃で5分乾燥した。次いで集光型高圧水銀灯HAL−250NLの下を5m/分の速度で通過させて塗膜を硬化させて試験用板を作成した。この時の活性エネルギー線照射量は310mJ/cm2であった。得られた試験板を用いて、評価した結果を表1に記載した。
【0078】
【表1】
【0079】
表1から明らかなように、実施例により得られた活性エネルギー線硬化複層塗膜は、優れた耐水性、耐アルカリ性、耐酸性、飛散防止性等を有することが示された。一方、比較例においては、全ての項目を満たす良好な複層塗膜を得ることはできなかった。
【0080】
【発明の効果】
本発明により、被塗装物との密着性に優れ、良好な耐水性、耐アルカリ性、耐酸性、飛散防止性等を有する活性エネルギー線硬化複層塗膜を得ることができる。また、上記活性エネルギー線硬化複層塗膜は、透水性抑制効果に優れるため、高湿度下においても初期の塗膜性能を維持することができる。
Claims (4)
- 活性エネルギー線硬化複層塗膜の形成方法であって、
樹脂粒子及び塗膜形成性樹脂からなるプライマーを塗装する工程(I)、及び、前記工程(I)により得られたプライマー層の上に、活性エネルギー線硬化性塗料を塗装する工程(II)からなり、
前記樹脂粒子は、非溶解性、かつ、疎水性である
ことを特徴とする活性エネルギー線硬化複層塗膜の形成方法。 - 樹脂粒子は、ポリエチレン樹脂粉末、又は、ポリプロピレン樹脂粉末である請求項1記載の活性エネルギー線硬化複層塗膜の形成方法。
- 請求項1又は2記載の活性エネルギー線硬化複層塗膜の形成方法により得られることを特徴とする活性エネルギー線硬化複層塗膜。
- 請求項3記載の活性エネルギー線硬化複層塗膜を有することを特徴とするガラス製品。
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JP2003133718A JP2004337647A (ja) | 2003-05-12 | 2003-05-12 | 活性エネルギー線硬化複層塗膜の形成方法、活性エネルギー線硬化複層塗膜、及び、ガラス製品 |
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- 2003-05-12 JP JP2003133718A patent/JP2004337647A/ja active Pending
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