JP2004332966A - 加熱炉における耐火壁の補修方法 - Google Patents

加熱炉における耐火壁の補修方法 Download PDF

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尚 櫻井
Teruyoshi Eriguchi
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Abstract

【課題】耐火壁の補修を簡単かつ短時間で行なう。
【解決手段】耐火壁10の損傷箇所を切断除去して開口部14を形成する。開口部14の内部寸法に対応する外形寸法に設定された筒状の第1の型枠16の内部に、開口部14の内部寸法より大きな外形寸法に設定された弾性変形可能な第1の補修用耐火ブロック18を圧入することで圧縮する。この第1の型枠16を、開口部14に炉外側から嵌挿する。第1の型枠16のみを開口部14から炉外側に引抜く。このとき、圧縮していた第1の補修用耐火ブロック18は、その弾性復元力によって開口部14内に隙間なく圧着する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、加熱炉における耐火壁の補修方法に関し、更に詳細には、加熱炉の耐火壁を構成する耐火物が損傷したり脱落した部位を、炉外側から補修し得る加熱炉における耐火壁の補修方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鉄皮に耐火物を内張りして耐火壁が構成される各種工業用の加熱炉では、耐火物の劣化、損傷あるいは脱落により耐火壁から火漏れが発生した場合の補修に関しては、炉内側から行なわれている。しかしこの場合は、炉内温度を作業者が入ることのできる温度まで下げるのに時間が掛かるばかりでなく、補修箇所が高い位置にある場合は、炉内に足場を組む必要があり、多大な労力および長時間を要してしまい、加熱炉の休止時間が長くなることで稼働率が著しく低下する問題があった。
【0003】
そこで、補修箇所の鉄皮を切断除去し、その切断開口部から炉内に遮蔽板を入れて該切断開口部の内側を塞いだ状態で、鉄板に補修耐火物を内張りした補修用耐火パネルを炉外側から切断開口部に嵌挿すると共に、該パネルと切断開口部との隙間に耐火物を充填する提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平1−123992号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記特許文献1に開示の技術では、補修用耐火パネルと切断開口部との隙間に充填された耐火物が脱落するおそれがある。また、炉内に遮蔽板を挿入するのにクレーン等が必要となり、作業が大掛かりになる。
【0006】
【発明の目的】
この発明は、前述した従来の技術に内在している前記課題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、耐火壁の補修を簡単かつ短時間で行ない得る加熱炉における耐火壁の補修方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前述した課題を解決し、所期の目的を好適に達成するため、本発明に係る加熱炉における耐火壁の補修方法は、
加熱炉を構成する耐火壁の補修方法であって、
前記耐火壁を構成する耐火物の劣化で生じた開口部、耐火物の損傷箇所を切断除去して形成した開口部または部分的に耐火物が脱落して生じた開口部の内部寸法に対応する外形寸法に設定された筒状の型枠を、前記開口部に対して加熱炉の内外方向に開口する姿勢で炉外側から嵌挿し、
前記型枠の内部に、該型枠を前記開口部に嵌挿する前または嵌挿した後に、前記開口部の内部寸法より大きな外形寸法に設定された弾性変形可能な補修用耐火物を圧入することで圧縮し、
前記開口部に嵌挿されている前記型枠のみを該開口部から炉外側に引抜き、圧縮していた前記補修用耐火物の弾性復元力によって該耐火物を開口部内に隙間なく圧着させることを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る加熱炉における耐火壁の補修方法につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。
【0009】
【第1実施例】
図1〜図3は、第1実施例に係る耐火壁の補修方法の工程を示すものであって、該補修方法が実施される加熱炉の耐火壁10は、例えばセラミックウールやガラス繊維等の繊維質耐火物を材質として立方体形状に形成された多数の耐火ブロック(耐火物)12を、縦横に相互に密着する状態で配設して構成される。なお、各耐火ブロック12は、図示しない取付け金具を介して加熱炉の外側に配設されている支持板に固定されており、各耐火ブロック12毎に交換可能に構成されている。
【0010】
前記耐火壁10の天井部分において耐火ブロック12の劣化、損傷により火漏れが発生した場合は、当該損傷箇所を炉外側から切断除去して所定寸法の開口部14を形成する(図1参照)。なお、加熱炉では、操業中における排気のため、あるいは外気の侵入防止のために炉内は加圧状態となっているため、補修を行なう前には予め炉内加熱を停止すると共に、炉内圧力を下げて開口部14から炉内空気が吹き出さないようにしておく。
【0011】
次に、図1に示す如く、前記開口部14の内部寸法に対応する外形寸法に設定した上下方向(加熱炉の内外方向)に貫通する筒状の第1の型枠16の内部に、前記開口部14の内部寸法より大きな外形寸法に設定された弾性変形可能な第1の補修用耐火ブロック(補修用耐火物)18を圧入することで圧縮する。すなわち、第1の補修用耐火ブロック18は、幅および厚み方向に圧縮された状態で第1の型枠16の内部に収容される。ちなみに、このとき第1の補修用耐火ブロック18は、例えば約80%まで圧縮されるが、後述するように、開口部14内に圧着可能な圧縮率であればよい。また第1の補修用耐火ブロック18は、前記耐火ブロック12と同様に、セラミックウールやガラス繊維等の繊維質耐火物を材質として開口部14の内部形状と相似形(実施例では立方体形)に形成されたものであって、その上面(炉外側の面)から取付け金具20が突出している。
【0012】
前記第1の補修用耐火ブロック18を収容した第1の型枠16を、図2に示す如く、前記開口部14に対して加熱炉の内外方向に開口する姿勢で炉外側から嵌挿する。次いで、第1の型枠16のみを開口部14から炉外側に引抜いて、前記第1の補修用耐火ブロック18を開口部14内に止めておく(図3参照)。このとき圧縮されていた第1の補修用耐火ブロック18は、元の寸法形状に戻ろうとする弾性復元力により、周囲の耐火ブロック12に弾力的に当接して、該第1の補修用耐火ブロック18は開口部14内に隙間なく圧着される。すなわち、第1の補修用耐火ブロック18は開口部14内に弾性復元力によって確実に保持されるから、該ブロック18が炉内に簡単に脱落することはない。そして、第1の補修用耐火ブロック18の炉外側に突出する取付け金具20を、前記支持板に溶接等により固定することで補修作業は完了する。
【0013】
すなわち、第1実施例の補修方法によれば、炉外側から耐火壁10の補修を行なうことができるから、加熱炉の休止時間を著しく短縮することができる。また、補修のために形成した開口部14に第1の型枠16を嵌挿した後に引抜くだけの簡単な作業であるから、クレーン等を用いることなく短時間で行なうことができ、更に作業時間を短縮して稼働率の低下を抑制し得る。ちなみに、作業者が炉内に入って補修作業を行なう場合は、加熱炉の休止時間は約72時間であったのに対し、第1実施例のように炉外側から補修作業を行なう場合の休止時間は約10時間となり、著しい時間短縮を達成し得ることが確認されている。
【0014】
なお、前記耐火壁10を構成する一部の耐火ブロック12が脱落した場合においても、この脱落により生じた開口部の内部寸法に対応する外形寸法に設定された型枠を用いることで、前述したと同様の補修を行なうことができる。
【0015】
【第2実施例】
図4〜図6は、第2実施例に係る耐火壁の補修方法の工程を示すものであって、該実施例では、加熱炉の耐火壁10における天井部を構成する隣接する耐火ブロック12,12の間の目地部分に、劣化等によって大きな隙間を生じて火漏れが発生した場合に、該隙間を耐火物で塞ぐ場合を示す。なお、第1実施例と同じ部分については説明を省略すると共に、同一部材には同じ符号を付して示す。
【0016】
すなわち、隙間(開口部)22の内部寸法と対応する外形寸法で上下に貫通する筒状の第2の型枠24を、該隙間22に予め嵌挿する。この第2の型枠24の上端縁には、上方に向かうにつれて拡開するロート状の案内部24aが設けられている。そして、前記隙間22の内部寸法より大きな外形寸法に設定した第2の補修用耐火ブロック(補修用耐火物)26を、前記案内部24aに案内させつつ第2の型枠24の内部に圧入することで、該第2の補修用耐火ブロック26を圧縮した状態で収容する(図5参照)。
【0017】
次いで、図6に示す如く、前記第2の型枠24のみを隙間22から炉外側に引抜く。このとき圧縮されていた第2の補修用耐火ブロック26が元の寸法形状に戻ろうとする弾性復元力により、周囲の耐火ブロック12に弾力的に当接して、該第2の補修用耐火ブロック26は隙間22内に隙間なく圧着され、補修作業は完了する。この第2の補修用耐火ブロック26は隙間22内に弾性復元力によって確実に保持されるから、該ブロック26が炉内に簡単に脱落することはない。
【0018】
すなわち、第2実施例の補修方法においても、炉外側から目地部分の補修を行なうことができるから、加熱炉の休止時間を短縮することができる。また、隙間22に第2の型枠24を嵌挿した後に引抜くだけの簡単な作業であるから、クレーン等を用いることなく短時間で行なうことができ、更に作業時間を短縮し得る。
【0019】
なお、第1および第2実施例においては、耐火壁10における天井部の耐火物が損傷したり劣化した場合の補修について説明したが、該耐火壁10における側部の耐火物が損傷したり劣化した場合についても、前述したように開口部や隙間に型枠を介して補修用耐火ブロックを炉外側から嵌挿することで簡単に補修できる。また両実施例では、支持板に耐火ブロック12を固定することで耐火壁10を構成したが、鉄皮の内面に耐火ブロックを取付けた構成の耐火壁であってもよい。但し、この場合には、耐火壁の補修に際しては、補修箇所の鉄皮を予めガス切断器等により切除した後、前述した補修方法を行なうこととなる。
【0020】
また、第1実施例では開口部14に嵌挿する前の第1の型枠16に第1の補修用耐火ブロック18を圧入し、第2実施例では隙間22に嵌挿した後の第2の型枠24に第2の補修用耐火ブロック26を圧入する場合で説明したが、型枠16,24に補修用耐火ブロック18,26を圧入する時期に関しては、第1の型枠16を開口部14に嵌挿した後、または第2の型枠24を隙間22に嵌挿する前であってもよい。更に、耐火壁10に形成する開口部14は、第1実施例のような矩形状に限定されるものでなく、三角形や円形等、その他の形状であってもよく、その場合には第1の型枠16や第1の補修用耐火ブロック18も対応する形状となっていればよい。
【0021】
【別実施例】
図7〜図9は、別実施例に係る耐火壁の補修方法を示すものであって、該補修方法は、加熱炉の煙道における天井部を構成する耐火壁の補修を行なうものである。すなわち、加熱炉の煙道においても、該煙道を構成する耐火物が劣化したり損傷することで火漏れが発生した場合の補修に関して、従来は作業者が煙道内に入って内部から行なっており、作業時間が長くなると共に作業者に多大な労力を強いていた。そこで、この別実施例においては、加熱炉における煙道の補修を、外部側から簡単に行ない得るようにしたものである。
【0022】
図7に示す如く、前記煙道28の耐火壁30は、鉄皮32の内側に不定形耐火物34を内張りして構成されており、該不定形耐火物34が劣化したり損傷することで火漏れが発生した場合に、該損傷箇所を、図に示す第1施工具36と第2施工具38とを用いて補修する。第1施工具36は、所定寸法の支板36aの一方の面から所定長さで延出する支材36bの先端に直交する横材36cを設けて構成される。また第2施工具38は、所定寸法の支板38aの一方の面に、Y字状のスタッド38bを複数突設して構成される。
【0023】
前記2種類の施工具36,38を用いて行なう補修方法では、図7に示す如く、補修箇所の鉄皮32を煙道28の外部側から切断除去し、これにより形成された開口部40に、外部から先ず第1施工具36を、その支板36aが道内に臨むように挿入し、該開口部40の一部を支板36aにより内側から塞ぐ。また前記第2施工具38を、そのスタッド38bが開口部40の内部に臨む姿勢で、支板38aを道外側に位置決めする。この状態で、第1施工具36の支板36aにより塞がれている部分に、外部から補修用不定形耐火物(例えばキャスタブル耐火物)42を流し込む。この開口部40に流し込まれた補修用不定形耐火物42は、第1施工具36の支板36aにより道内に落下することなく、第2施工具38における複数のスタッド38bに絡み付いて開口部40内に止まる。なお、補修作業中において前記第1施工具36や第2施工具38は、作業者が保持するか、または開口部40の周囲に位置する鉄皮32に適宜の部材を介して溶接することで固定する。
【0024】
前記作業が終了した後、同様に開口部40を第1施工具36で部分的に塞ぐと共に第2施工具38をセットして、対応箇所に補修用不定形耐火物42を流し込む作業を行なう。このように、第1施工具36と第2施工具38とを用いて、開口部40を所定領域毎に順次補修用不定形耐火物42を流し込んで塞ぐ作業を繰返し、最終的に全ての開口部40を補修用不定形耐火物42で塞ぐことで補修が完了する。
【0025】
すなわち、別実施例の補修方法においては、外部から耐火壁30の補修を行なうことができるから、加熱炉の休止時間を短縮することができる。また、2種類の施工具36,38を組合わせて用いることで、補修用不定形耐火物42が内部に落下することなく、開口部40を確実に塞ぐことができる。
【0026】
【発明の効果】
以上説明した如く、本発明に係る加熱炉における耐火壁の補修方法によれば、炉外側から補修を行なうことができるから、加熱炉の休止時間を短縮し得る。しかも、耐火壁の開口部に型枠を嵌挿した後に引抜くだけの簡単な作業であるから、作業者の労力を大幅に低減できる。また、大型の重機を用いることなく耐火壁の補修を行ない得るから、作業時間を更に短縮して稼働率の低下を抑制し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適な第1実施例に係る耐火壁の補修方法において、耐火壁の損傷箇所を切断除去すると共に、第1の型枠に第1の補修用耐火ブロックを圧入する前の状態を示す説明図である。
【図2】第1実施例に係る耐火壁の補修方法において、第1の補修用耐火ブロックを圧入した第1の型枠を耐火壁に形成した開口部に嵌挿した状態を示す説明図である。
【図3】第1実施例に係る耐火壁の補修方法において、開口部から第1の型枠のみを引抜いて開口部内に第1の補修用耐火ブロックを圧着させた状態を示す説明図である。
【図4】本発明の好適な第2実施例に係る耐火壁の補修方法において、耐火壁の目地部分に生じた隙間に嵌挿した第2の型枠に第2の補修用耐火ブロックを圧入する前の状態を示す説明図である。
【図5】第2実施例に係る耐火壁の補修方法において、隙間に嵌挿されている第2の型枠に第2の補修用耐火ブロックを圧入した状態を示す説明図である。
【図6】第2実施例に係る耐火壁の補修方法において、隙間から第2の型枠のみを引抜いて隙間内に第2の補修用耐火ブロックを圧着させた状態を示す説明図である。
【図7】別実施例に係る耐火壁の補修方法において、煙道に形成した開口部に第1および第2施工具をセットして部分的に塞いで補修用不定形耐火物を流し込む状態を示す説明図である。
【図8】別実施例に係る耐火壁の補修方法において、煙道の開口部の次の部位に第1および第2施工具をセットして部分的に塞いて補修用不定形耐火物を流し込む状態を示す説明図である。
【図9】別実施例に係る耐火壁の補修方法において、煙道の開口部の全部を補修用不定形耐火物で塞いだ状態を示す説明図である。
【符号の説明】
10 耐火壁
12 耐火ブロック(耐火物)
14 開口部
16 第1の型枠
18 第1の補修用耐火ブロック(補修用耐火物)
22 隙間(開口部)
24 第2の型枠
26 第2の補修用耐火ブロック(補修用耐火物)

Claims (1)

  1. 加熱炉を構成する耐火壁(10)の補修方法であって、
    前記耐火壁(10)を構成する耐火物(12)の劣化で生じた開口部(22)、耐火物(12)の損傷箇所を切断除去して形成した開口部(14)または部分的に耐火物が脱落して生じた開口部の内部寸法に対応する外形寸法に設定された筒状の型枠(16,24)を、前記開口部(14,22)に対して加熱炉の内外方向に開口する姿勢で炉外側から嵌挿し、
    前記型枠(16,24)の内部に、該型枠(16,24)を前記開口部(14,22)に嵌挿する前または嵌挿した後に、前記開口部(14,22)の内部寸法より大きな外形寸法に設定された弾性変形可能な補修用耐火物(18,26)を圧入することで圧縮し、
    前記開口部(14,22)に嵌挿されている前記型枠(16,24)のみを該開口部(14,22)から炉外側に引抜き、圧縮していた前記補修用耐火物(18,26)の弾性復元力によって該耐火物(18,26)を開口部(14,22)内に隙間なく圧着させる
    ことを特徴とする加熱炉における耐火壁の補修方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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