JP2645713B2 - 鉄皮式窯炉の熱間補修方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は鉄鋼業を始めとする各種産業分野において設
備されている加熱炉、保熱炉、調質炉あるいは煙道など
の高温の熱設備（本発明では窯炉と総称する）に関し、
特に、炉内を台車が出入りするトンネル炉やバッチ式の
炉で、しかも繊維質耐火物をライニングした鉄皮式窯炉
の熱間補修方法に係る。

〔従来の技術〕

近時、窯炉における耐火ライニングを繊維質耐火物即
ちガラス繊維、石綿、ロックウール、スラグウールある
いはセラミックウール等を用いて施工する例が増加して
いる。

前記繊維質耐火物は通常ペーパー、バルク、ブランケ
ット、ブロック等の成形品とし、使用に際しては積層し
て使用されることが多い。

而して、前記繊維質耐火物をライニングした窯炉（以
下本発明ではファイバー炉と云う）において、ライニン
グが損傷した際の補修方法は、一旦ファイバー炉を休止
して炉温を下げ冷間補修する手段が採用されており、た
とえば炉内側より繊維質耐火物を損傷部を中心として広
範囲に切り取り、その後新しい繊維質耐火物を接着する
か、あるいは耐熱ボルト等を用いて固着するなどの手段
に加えて繊維質耐火物を吹き付けるほか粘土状にしたも
のを塗りつける等の手段が採用されている。

〔発明が解決しようとする問題点〕

前述の通り従来の補修方法は、いずれも作業者が炉内
に入って作業できる程度まで炉内温度を下げる必要があ
り、生産中断によるコストアップの問題や炉温の昇降に
原因する設備上の諸問題即ち耐火物や鉄皮の膨張収縮に
基く損傷つまり目地切れやライニングの脱落などの問題
点が生じ易く、補修部分が拡大する恐れが多いと云う課
題がある。

本発明の目的は、ファイバー炉の損傷を熱間において
安全かつ迅速に補修する方法を提供することにあり、他
の目的は生産を中断することなくライニングを補修する
方法を提供することにある。

〔問題点を解決するための手段〕

前記目的に沿う本発明に係る鉄皮式窯炉の熱間補修方
法は、繊維質耐火物をライニングした鉄皮式窯炉の熱間
補修方法であって、ライニング損傷部を鉄皮と共に切断
除去し、次いで切断開口部外方から熱遮蔽板を炉内に挿
入して前記切断開口部を炉内側から閉塞して炉内側から
の熱放射および高温ガスの噴出を遮蔽した後、鉄板に繊
維質耐火物をライニングした補修用耐火パネルを予め準
備し、該補修用耐火パネルを前記切断開口部の近くに吊
り下げ、次いで、前記切断開口部を炉内側から閉塞して
いた前記熱遮蔽板を炉内に吊り降ろして、炉内を出入り
する台車に載せて炉外に搬出可能とした後、前記補修用
耐火パネルを前記切断開口部に嵌装し、前記切断開口部
と嵌装した前記補修用耐火パネルとの間隙に耐火物を充
填して、前記鉄板を鉄皮に溶接している。

〔作用〕

本発明の方法は、炉外から損傷したライニング部分を
切り取り、熱遮蔽板によって炉内側からの熱放射および
高温ガスの噴出を遮蔽し、次いで補修用耐火パネルを嵌
装するので、作業を安全かつ能率よく実施することが出
来る。

また該補修用耐火パネルは、補修作業に先だってあら
かじめ製作するので、構造的に充分にかつ頑丈に製作す
ることが可能で、補修後に問題をおこすことが全く無
い。

さらに、切断開口部と補修用耐火パネルとの間隙には
炉外から繊維質耐火物を始めとする任意の耐火物たとえ
ば最も適当な成分とバインダーを有する耐火物を入念に
充填することが可能なので、熱漏洩などの問題を生ずる
恐れが無い。

また、補修用耐火パネルの鉄板と鉄皮との溶接を、前
記耐火物の充填が完全に実施されたのちに行なうので、
再補修などの問題を懸念する必要は一切生じない。

〔実施例〕

第１図は本発明の一実施例にかかる大型陶器の加熱炉
１の概略断面図で鉄皮２の内側には繊維質耐火物３がラ
イニングされている。

台車４は軌条5a、5b上に転輪6a、6bを介して走行自在
に搭載されており、該台車上の被加熱物７は通常一方向
に走行する間に予熱、加熱および徐冷作用を受けるよう
構成されている。

８は前記ライニング損傷部であって、第２図はその部
分拡大断面図で、繊維質耐火物３は機能およびもしくは
経済的理由により、たとえばスラグウール3a、セラミッ
クウール3bの如く複数の異なった材質のものを積層し、
接着などの手段のほかに耐熱ボルトやフックあるいは取
付金具（図示せず）を用いて鉄皮２に取付けられてい
る。第３図はライニング損傷部８を炉外から鉄皮２諸共
にブロック９として切り取り、吊具10を介してクレーン
11で搬出している状況を示す概略図であり、鉄皮２はグ
ラインダーやガス切断器等を用いて切断し、繊維質耐火
物３は大型ナイフや鋸を用いて切断する。

10a、10bは鉄皮２にあらかじめ溶接しておく吊金具を
示す。

而して前記ブロック９を切り出すと切断開口部12から
炉内の高温ガスが噴出したり、烈しい熱放射が生ずるの
で、第４図に示すように鉄板に繊維質耐火物をライニン
グしたり、あるいは成形耐火板（耐火ボード）や鉄系・
非鉄系耐熱金属板などから構成された熱遮蔽板13をチェ
ーン14、15を用いて吊持し切断開口部12から炉内に挿入
し、第５図に示すように前記切断開口部12を炉内側から
閉塞する。

16は前記チェーン15の案内の滑車を示し、チェーン15
の昇降はクレーン、ウインチもしくは人力により適宜に
実施する。

而して前記ブロック９の切り出しにあたって炉内から
の高温ガスの吹き出しが多い場合は炉圧を調整するほ
か、防熱除塵などの安全手段を講ずることは云う迄も無
い。また前記チェーン14、15の代りにワイヤロープある
いはロッドなどを用いることも可能である。

さて、前記ライニング損傷部８が比較的に大きい場合
には１個の巨大ブロックとして切り出すことが困難なこ
とがあり、その際は複数のブロックにわけて切り出す方
が作業性が良く、かつ安全である。

第６図の概略平面図は前述のようにして、ブロック９
を切り出し熱遮蔽板13を装着した後、隣接した区域をブ
ロック9a、9bで示すように逐次同様な手順で切り出し
て、熱遮蔽板を装着する状況を示すもので、破線17で示
す部分は隣接する熱遮蔽板相互を連結する際の溶接部を
示す。次に第７図は前記熱遮蔽板13を装着した切断開口
部12に吊持ビーム18a、18bに吊持された補修用耐火パネ
ル19を嵌装する直前の状況を示す概略斜視図であって、
クレーン11により前記補修用耐火パネル19を切断開口部
12の直近に吊り下げた時点で、チェーン14、15を弛めて
熱遮蔽板13を炉内に吊り下し、前記台車４で炉外に搬出
する。

次に前記補修用耐火パネル19を切断開口部12に嵌装し
た後、両者の間隙20に耐火物たとえば繊維質耐火物21
（セラミックウール、スラグウール等）を第８図の概略
断面図に示すように充填する。

前記繊維質耐火物21は繊維質耐火物４と同等のものを
用いるほか、それ以上の品質のものを採用すると良い結
果が期待できる。即ち熱膨張性を有するものや接着強度
が高く熱収縮率の低い耐火物など成分とバインダーを適
宜に選定して入念に充填することが望ましい。

前記補修用耐火パネル19は第８図に示すように鉄板22
にスラグウール23、セラミックウール24を固着して作成
するが、この実施例に限ることなく、前記スラグウー
ル、セラミックウールのほか、グラスウール、ロックウ
ール、石綿等を適宜に組合せて使用しても差し支えな
い。

さらに、鉄板22と鉄皮２との溶接に際しては、前記間
隙20の幅より若干幅広の補強鉄板25a、25bを用いて両者
を溶接し間隙20を完全に閉塞する。

〔発明の効果〕

本発明の方法は窯炉の作業を全く中断することなく実
施できるほか、中断する場合も炉温を下げる必要が無い
ので、生産能率を高位に維持できるほか、従来のように
炉温の著しい昇降による窯炉ライニングの損傷や寿命低
下が無いので、経済的効果は極めて多大である。

【図面の簡単な説明】

第１図は加熱炉の概略断面図、第２図はライニング損傷
部の部分拡大図、第３図はブロック切り取り状況を示す
概略図、第４図、第５図は熱遮蔽板の挿入および切断開
口部の閉塞要領説明図、第６図は複数のブロックの切り
出し手順を説明するための概略平面図、第７図は補修用
耐火パネルの取付け状況説明図、第８図は補修用耐火パ
ネルの嵌装と間隙充填手順を説明するための補修部概略
断面図である。 〔符号の説明〕 １……加熱炉、２……鉄皮、３……繊維質耐火物、3a…
…スラグウール、3b……セラミックウール、４……台
車、5a、5b……軌条、6a、6b……転輪、７……被加熱
物、８……ライニング損傷部、９、9a、9b……ブロッ
ク、10……吊具、10a、10b……吊金具、11……クレー
ン、12……切断開口部、13……熱遮蔽板、14、15……チ
ェーン、16……滑車、17……溶接部、18a、18b……吊持
ビーム、19……補修用耐火パネル、20……間隙、21……
繊維質耐火物、22……鉄板、23……スラグウール、24…
…セラミックウール、25a、25b……補強鉄板

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中村 倫 福岡県北九州市八幡東区枝光１―１―１ 新日本製鐵株式會社八幡製鐵所内 (72)発明者 井戸 勝利 福岡県北九州市八幡東区枝光１―１―１ 新日本製鐵株式會社八幡製鐵所内 (72)発明者 永楽 益夫 福岡県北九州市八幡東区山王１丁目９番 10号 九築工業株式会社内 (72)発明者 田崎 素直 福岡県北九州市八幡東区山王１丁目９番 10号 九築工業株式会社内 (56)参考文献 特開 昭63−93818（ＪＰ，Ａ) 特開 昭63−93817（ＪＰ，Ａ) 特開 昭55−14855（ＪＰ，Ａ)

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】繊維質耐火物をライニングした鉄皮式窯炉
   の熱間補修方法であって、 ライニング損傷部を鉄皮と共に切断除去し、次いで切断
   開口部外方から熱遮蔽板を炉内に挿入して前記切断開口
   部を炉内側から閉塞して炉内側からの熱放射および高温
   ガスの噴出を遮蔽した後、 鉄板に繊維質耐火物をライニングした補修用耐火パネル
   を予め準備し、該補修用耐火パネルを前記切断開口部の
   近くに吊り下げ、 次いで、前記切断開口部を炉内側から閉塞していた前記
   熱遮蔽板を炉内に吊り降ろし、炉内を出入りする台車に
   載せて炉外に搬出可能とした後、 前記補修用耐火パネルを前記切断開口部に嵌装し、 前記切断開口部と嵌装した前記補修用耐火パネルとの間
   隙に耐火物を充填して、前記鉄板を鉄皮に溶接すること
   を特徴とする鉄皮式窯炉の熱間補修方法。