JP2004332617A - ガスタービン部品の再生処理方法および再生処理を施されたガスタービン部品 - Google Patents

ガスタービン部品の再生処理方法および再生処理を施されたガスタービン部品 Download PDF

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Hiroaki Yoshioka
洋明 吉岡
Daizo Saito
大蔵 斎藤
Junji Ishii
潤治 石井
Yoshihiro Yuya
好浩 油谷
Kazuhiro Kitayama
和弘 北山
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Abstract

【課題】運用により材料劣化や損傷等が生じたガスタービン部品を結晶粒の粗大化等による材料特性の低下を生じさせることなく再生させる再生処理方法および再生処理を施されたガスタービン部品を提供する。
【解決手段】Ni,Al,Tiおよび要すればNbを含む元素からなる金属間化合物の析出物で強化されたNi基あるいはNi−Fe基合金鍛造品で造られ、高温下における使用により材料の劣化あるいは損傷を生じたガスタービン部品の前記劣化あるいは損傷を回復する再生処理方法において、前記ガスタービン部品に高圧下で熱処理を施し前記損傷を圧着し消滅させるHIP工程と、非加圧下で前記析出物の固溶再析出および形態の調整を図る溶体化および時効の熱処理工程とを備える構成とする。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、運転中に高温高応力下で用いられることにより、熱劣化、クリープ損傷、疲労損傷等を受けたガスタービン部品、特にロータシャフトおよびディスクの再生処理方法および再生処理を施されたガスタービン部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガスタービンの高温大容量化に伴ない、圧縮機の圧力比も高くなり、吐出空気温度は高くなっている。ガスタービンの動翼を植設されるディスクは、この圧縮機の圧縮空気を抽気し冷却空気として用いているため、そのメタル温度は高くなる傾向にあり、かつ大型化に伴ないディスクにかかる応力は高くなる傾向にある。このため、従来の耐熱鋼に比べて耐熱強度の優れたNi−Fe基超合金が用いられるようになっている。しかし、長期間使用された場合これらの合金も熱劣化あるいは高応力下におけるクリープ損傷あるいは起動停止に伴なう熱疲労による損傷が蓄積する。
【0003】
この損傷を回復させる方法として、ガスタービンの動翼等では、下記特許文献1、特許文献2等に示されているように、高温高圧下において主強化析出相を固溶再析出させて組織を回復させることにより、設計寿命を超えて用いている。しかし、ガスタービンのディスク材の場合、動翼材と異なり、鍛造品であり、主強化析出相の固溶温度は、局部溶解温度より低く、また使用条件的に熱劣化より応力に起因する損傷が主体であり、高温強度以上に、中低温の引張り強度、および延靭性の回復および再生処理による結晶粒径の粗大化によるこれらの特性の低下を防ぐ必要がある。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−335802号公報
【0005】
【特許文献2】
特開2001−240950号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のようにガスタービンのロータシャフトおよびディスクは、高温高応力下で使用されることにより、材料劣化および損傷を受ける。特にこれらの部品の場合、熱劣化以上にクリープあるいは疲労による損傷を受けている。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みて発明されたものであり、運用により材料劣化や損傷等が生じたガスタービン部品を結晶粒の粗大化等による材料特性の低下を生じさせることなく再生させる再生処理方法および再生処理を施されたガスタービン部品を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、Ni,Al,Tiおよび要すればNbを含む元素からなる金属間化合物の析出物で強化されたNi基あるいはNi−Fe基合金鍛造品で造られ、高温下における使用により材料の劣化あるいは損傷を生じたガスタービン部品の前記劣化あるいは損傷を回復する再生処理方法において、前記ガスタービン部品に高圧下で熱処理を施し前記損傷を圧着し消滅させるHIP工程と、非加圧下で前記析出物の固溶再析出および形態の調整を図る溶体化および時効の熱処理工程とを備える構成とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、加熱、加圧および冷却の全ての処理は真空あるいは不活性ガスの雰囲気内で行われ、前記不活性ガスに含有される酸素量は30ppm以下である構成とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、前記HIP工程における加熱温度は、前記金属間化合物の析出物が固溶する温度以上であり、結晶粒界が粗大化を開始する温度以下である構成とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、前記HIP工程において、高圧下で行う熱処理の圧力は、ガスタービン部品内部に生じたクリープボイドあるいは疲労き裂を圧着するのに十分な、かつ、材料のその温度における耐力以上の圧力である構成とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、前記HIP工程における加熱温度は、Ni,Al,Tiおよび要すればNbを含む元素からなる金属間化合物γ’相あるいはγ’’相の固溶温度以上であり、結晶粒の粗大化を抑制するη相あるいはδ相の固溶温度以下である構成とする。
請求項6記載の発明は、前記HIP工程における熱処理が、その後の非加圧下における溶体化熱処理を兼ねる構成とする。
【0013】
請求項7記載の発明は、前記溶体化熱処理後、ガスタービン部品に不活性ガスを吹き付けて冷却する構成とする。
請求項8記載の発明はロータシャフトまたはディスクであり、請求項1ないし7に記載のガスタービン部品の再生処理方法を施された構成とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明では、NiとAl,TiあるいはNbを含む元素からなる金属間化合物で強化されたNi基あるいはNi−Fe基合金鍛造品で造られ、高温下における使用により材料の劣化や損傷を生じたガスタービン部品、特にディスクあるいはロータの材料劣化回復法において、再生熱処理により結晶粒の粗大化等による材料特性の低下を生じさせることなく損傷を回復させる方法として、前記ガスタービン部品に高圧下で熱処理を施しクリープあるいは疲労により生じた損傷を圧着し消滅させるHIP(Hot Isostatic Pressing 熱間静水圧成形(法))工程と、非加圧下で析出物の固溶再析出および形態の調整を図る溶体化および時効の熱処理工程とを施す。
【0015】
ここでは、処理部品が最終形状であることから、全ての処理は真空あるいは不活性ガスの雰囲気下で行い、加圧ガスあるいは冷却に用いるガスも不活性ガス、特に、Arガスを用い、そのガスに含有する酸素量は30ppm以下、窒素量は60ppm以下である。
【0016】
この高圧下における熱処理温度は、主強化析出相である金属間化合物γ’相あるいはγ’’相が固溶する温度以上であり、結晶粒界が急速に粗大化を開始する温度以下でなければならない。特に、この粗大化を抑制する効果のある析出相であるη相あるいはδ相の固溶温度以下である。
【0017】
なお、γ’相は、NiとAl,Tiの化合物であり、Ni(Al,Ti)で示される球状あるいは立方状の金属間化合物である。γ’’相はNiとNb,Al,Tiの化合物で、Ni(Nb,Al,Ti)で示されるディスク状の安定な金属間化合物である。η相はNiTiで示される板状の金属間化合物である。δ相はNiNbで示される準安定なブロック状の金属間化合物で、γ’’相の結晶構造がBCT(体心立方格子)であるのに対し、δ相は斜方晶である。
【0018】
また、高圧下で行う熱処理の圧力は、ガスタービン部品内部に生じたクリープボイドあるいは疲労き裂を圧着するのに十分な、また、材料のその温度における耐力以上の圧力であり、1000気圧以上であることが好ましい。
【0019】
なお、高圧下における熱処理が、その後の非加圧下における溶体化熱処理を兼ねることも可能であり、この場合は、処理後の冷却を不活性ガスを吹き付けることによって行い、最適な冷却速度を得ることが可能である。
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
まず、図1の表に本発明の対象となるガスタービン部品用の合金のひとつであるNi基合金1(IN706:INCO社商品名)を例に示す。なお、HIPは高圧下での熱処理、ACは空冷、FCは炉冷を表わし、GFCはArガス等を吹き付けて強制冷却することを表わす。
【0021】
合金1は主析出相がγ’相とγ’’相であり、その固溶温度は885℃である。そのため、本合金は885℃以上で高圧下における熱処理を行う必要がある。また、η相あるいはδ相の固溶温度は954℃であり、この温度以上で熱処理を行うと、これらの相による結晶粒界の粗大化を抑える効果がなくなるので、急速に結晶粒が大きくなる。本合金は実機使用段階で熱処理によりこれらの相は固溶させていることになっているが、それでもASTM E112によって測定した粒度は図2に見られるとおりであり、HIP処理温度は、885℃以上、950℃以下、好ましくは、930℃以下である。
【0022】
図1に示した熱処理条件を中心に、新材,劣化材,HIP処理材の機械試験結果を図4および図5に示す。クリープ試験は700℃、500MPaで行った。HIP処理は、溶体化処理をHIP炉中で行い、その後の時効処理を同じ炉で不活性ガス雰囲気下で行った。これらの図から、本発明範囲内のHIP条件(900℃)において材料特性が改善されることがわかる。
【0023】
次に、本発明の第2の実施例であるNi基合金2(IN718:INCO社商品名)の例を示す。合金2の組成および処理条件を図1に示す。合金2は主析出相がγ’’相であり、この固溶温度は925℃である。このため、本合金はこの温度以上で高圧下における熱処理(HIP)を行う必要がある。また、δ相の固溶温度は1010℃であり、この温度以上で熱処理を行うと、これらの相による結晶粒界の粗大化を抑える効果がなくなることから、急速に結晶粒が大きくなる。図3に高圧下で行った本熱処理の結果を示したが、本処理温度は、925℃以上、1010℃以下、好ましくは、1000℃以下である。
【0024】
図1に示した熱処理条件を中心に、本合金においても新材,劣化材,HIP処理材の機械試験結果を図6および図7に示す。HIP処理は、溶体化処理をHIP炉中で行い、その後の時効処理を同じ炉で不活性ガス雰囲気下で行った。この結果、本発明範囲内のHIP条件下において特性の改善が図られることが確認された。
【0025】
【発明の効果】
本発明によれば、運用により材料劣化や損傷等が生じたガスタービン部品を結晶粒の粗大化等による材料特性の低下を生じさせることなく再生させる再生処理方法および再生処理を施されたガスタービン部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における合金1,2の組成(a)および再生処理条件(b)を示す表。
【図2】本発明の実施の形態における合金1のHIP処理温度と結晶粒の大きさの関係を示すグラフ。
【図3】本発明の実施の形態における合金2のHIP処理温度と結晶粒の大きさの関係を示すグラフ。
【図4】本発明の実施の形態における合金1の新材、劣化材およびHIP処理材の引張り強さ、耐力および伸びを示すグラフ。
【図5】本発明の実施の形態における合金1の新材、劣化材およびHIP処理材のクリープ寿命を示すグラフ。
【図6】本発明の実施の形態における合金2の新材、劣化材およびHIP処理材の引張り強さ、耐力および伸びを示すグラフ。
【図7】本発明の実施の形態における合金2の新材、劣化材およびHIP処理材のクリープ寿命を示すグラフ。

Claims (8)

  1. Ni,Al,Tiおよび要すればNbを含む元素からなる金属間化合物の析出物で強化されたNi基あるいはNi−Fe基合金鍛造品で造られ、高温下における使用により材料の劣化あるいは損傷を生じたガスタービン部品の前記劣化あるいは損傷を回復する再生処理方法において、前記ガスタービン部品に高圧下で熱処理を施し前記損傷を圧着し消滅させるHIP工程と、非加圧下で前記析出物の固溶再析出および形態の調整を図る溶体化および時効の熱処理工程とを備えることを特徴とするガスタービン部品の再生処理方法。
  2. 加熱、加圧および冷却の全ての処理は真空あるいは不活性ガスの雰囲気内で行われ、前記不活性ガスに含有される酸素量は30ppm以下であることを特徴とする請求項1記載のガスタービン部品の再生処理方法。
  3. 前記HIP工程における加熱温度は、前記金属間化合物の析出物が固溶する温度以上であり、結晶粒界が粗大化を開始する温度以下であることを特徴とする請求項1記載のガスタービン部品の再生処理方法。
  4. 前記HIP工程において、高圧下で行う熱処理の圧力は、ガスタービン部品内部に生じたクリープボイドあるいは疲労き裂を圧着するのに十分な、かつ、材料のその温度における耐力以上の圧力であることを特徴とする請求項3記載のガスタービン部品の再生処理方法。
  5. 前記HIP工程における加熱温度は、Ni,Al,Tiおよび要すればNbを含む元素からなる金属間化合物γ’相あるいはγ’’相の固溶温度以上であり、結晶粒の粗大化を抑制するη相あるいはδ相の固溶温度以下であることを特徴とする請求項1記載のガスタービン部品の再生処理方法。
  6. 前記HIP工程における熱処理が、その後の非加圧下における溶体化熱処理を兼ねることを特徴とする請求項1記載のガスタービン部品の再生処理方法。
  7. 前記溶体化熱処理後、ガスタービン部品に不活性ガスを吹き付けて冷却することを特徴とする請求項1記載のガスタービン部品の再生処理方法。
  8. 請求項1ないし7に記載のガスタービン部品の再生処理方法を施されたことを特徴とするガスタービンのロータシャフトまたはディスク。
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CN104878329A (zh) * 2015-06-12 2015-09-02 北京科技大学 一种修复dz125合金蠕变损伤的恢复热处理方法
CN112338190A (zh) * 2020-11-30 2021-02-09 中国航发动力股份有限公司 一种高温合金增材制造件的热处理工艺方法

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