JP2004332385A - 多層構造による光蓄積型発光建材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】蓄光顔料を含有する透明合成樹脂から棒状に形成された蓄光層2と、蓄光顔料を蓄光層2における蓄光顔料の含有率よりも低い含有率で含有する透明合成樹脂から横断面の面積が蓄光層2の横断面の面積よりも小さくなるようにして棒状に形成されかつ蓄光層2の側面(周面)2bにこの蓄光層2の長手方向に対して平行に固定された導光・発光層3と、蓄光層2及び導光・発光層3を導光・発光層3の他側面(周面の一部)3bが長手方向に沿って露出するように被覆する反射層4と、を備えた。
【選択図】 図4
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、蓄光顔料を利用した多層構造による光蓄積型発光建材に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、ストロンチウムアルミネート等のアルミン酸塩蛍光体(例えば、特許文献1参照)からなる蓄光顔料は、1993年に開発されている。この蓄光顔料を利用した蓄光建材としては、例えば、
▲1▼ 蓄光顔料を練り込んだ蓄光樹脂成型品としてのドアノブの鍵穴(例えば、トステム社製)、
▲2▼ 前記蓄光樹脂を利用した非常時避難誘導灯(例えば、ルフトハンザ航空社製)、
▲3▼ 前記蓄光樹脂を利用したタッチパネル(例えば、ソニー社製、シャープ社製、象印社製)、
▲4▼ 繊維に蓄光塗料を染み込ませた蓄光繊維、
等が知られている。
【0003】
【特許文献1】
特許第2543825号公報(第1−22頁)
【0004】
また、夜間移動に配慮した住宅における照明手段としては、例えば、
▲5▼ LED(light−emitting diode,発光ダイオード)を階段の段板に組み込み、夜間に階段の段鼻を照らすLED階段照明、
▲6▼ LEDを廊下の幅木に組み込み、夜間に廊下を照らすLED幅木照明、
▲7▼ 床近傍の壁面に埋設された足元照明ランプの前面板が、透明合成樹脂90〜70重量部に対して蓄光材10〜30重量部混入した乳白色合成樹脂成型板で形成されてなる室内足元照明装置(例えば、特許文献2参照)、
▲8▼ 徐々に明るさを増し、深夜に照明を点灯した際のまぶしさと覚醒を抑えるソフトスタータ照明、
等が知られている。
【0005】
【特許文献2】
実用新案登録第3020514号公報(第2−5頁,図1)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような蓄光顔料は従前の蓄光顔料(硫化カルシウム、硫化亜鉛、硫化亜鉛カドミウム等の硫化物蛍光体)の10倍の初期輝度及び10倍の残光輝度という高い蓄光能力を有するものであるが、発光量も大きいことから、暗転後の発光輝度は加速度的に減少する。即ち、暗転後の発光輝度が、暗順応した目で視認できる限界輝度(0.3mcd/m2)に達するまでの残光時間は約2000分であるが、急に暗闇になった場合に人間が十分に視認できる輝度(10mcd/m2)に達するまでの残光時間は約100分しか得られない。この点、住宅内におけるトイレ等への夜間移動を補助・誘導するためには、就寝から起床まで少なくとも6時間程度の残光時間が必要であるが、蓄光顔料を利用した従来の蓄光建材では十分な残光時間が得られないという問題点がある。また、従来の蓄光建材の暗転から1分経過後の輝度は1800mcd/m2程度であるが、その後の輝度の減少が激しいことから、使用者に「しばらくすると暗くなる」という印象を与えがちであった。
【0007】
更に、夜間移動用の照明に関しては、LEDであっても、10年程度で寿命が訪れるので、メンテナンスに費用と手間がかかるという問題点がある。また、夜間移動用の照明を既築住宅に設置する際には、配線工事が必要となるので、コスト高であるという問題点がある。
【0008】
この発明は、以上のような事情や問題点に鑑みてなされたものであり、長時間安定した明るさを持続し、メンテナンスや電気配線が不要な多層構造による光蓄積型発光建材を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための請求項1の発明は、蓄光顔料を含有する透明合成樹脂から棒状に形成された蓄光層と、蓄光顔料を前記蓄光層における蓄光顔料の含有率よりも低い含有率で含有する透明合成樹脂から横断面の面積が前記蓄光層の横断面の面積よりも小さくなるようにして棒状に形成されかつ前記蓄光層の周面にこの蓄光層の長手方向に対して平行に固定された導光・発光層と、前記蓄光層及び前記導光・発光層を前記導光・発光層の周面の一部が長手方向に沿って露出するように被覆する反射層と、を備えたものである。
【0010】
請求項2の発明は、前記反射層を建材本体で被覆したものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
第1実施形態に係る多層構造による光蓄積型発光建材1は、図1乃至図4に示すように、蓄光層2と導光・発光層3と反射層4とを備え、反射層4を建材本体5で被覆した多層構造のものであって、廊下6の幅木等として使用できるものである。
【0012】
蓄光層2は、蓄光顔料を含有する透明合成樹脂から棒状に形成されている。蓄光顔料としては、ストロンチウムアルミネート等のアルミン酸塩化合物タイプ(アルミン酸塩化合物を主成分として希土類元素からなる賦活剤を添加・焼成したもの)の高輝度長残光性蛍光体〔例えば、根本特殊化学株式会社製,商品名:ルミノーバ,G−300シリーズ(緑色発光),BG−300シリーズ(青色発光),V−300シリーズ(紫色発光)〕等が好適である。透明合成樹脂としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が挙げられる。蓄光層2における蓄光顔料の含有率としては、透明合成樹脂100重量部に対して10重量部程度が適当であるが、必要に応じて適宜変更可能である。
【0013】
導光・発光層3も、上記と同様の蓄光顔料を含有する上記と同様の透明合成樹脂から棒状に形成されているが、蓄光顔料の含有率が蓄光層2における蓄光顔料の含有率よりも低いと共に、横断面の面積が蓄光層2の横断面の面積よりも小さくなるように構成されている。導光・発光層3の一側面3aは、蓄光層2の側面(周面)2bの下端に、融着又は透明接着剤による接着等により蓄光層2の長手方向に対して平行に固定されている。なお、導光・発光層3の固定部位及び蓄光層2に対する固定位置は特に限定されるものではなく、適宜の部位を蓄光層2の周面の適宜の位置に固定することができる。
【0014】
反射層4は、アルミニウムやステンレス鋼等の金属製のミラーシート等から構成されており、蓄光層2及び導光・発光層3を、導光・発光層3の他側面(周面)3bが長手方向に沿って露出するように被覆している。反射層4は、蓄光層2及び導光・発光層3に対して接着剤等で貼り付けることができる。なお、導光・発光層3における露出範囲は他側面3bに限定されるものではなく、周面の適宜の一部が長手方向に沿って露出するように構成できる。
【0015】
建材本体5は、木材、集成材、又は合成樹脂等から棒状に形成されており、反射層4を被覆している。建材本体5は、反射層4に対して接着剤等で貼り付けることができる。この実施形態においては、蓄光層2及び導光・発光層3の各横断面形状をそれぞれ長方形状とし、横断面が長方形状の建材本体5の内部に、上記のようにして互いに固定しかつ反射層4で被覆した蓄光層2及び導光・発光層3が挿入される横断面がL字状の空間部7を長手方向に沿って設けているが、これに限定されるものではなく、光蓄積型発光建材1、蓄光層2、導光・発光層3、及び建材本体5の各横断面は、正方形状、台形状、多角形状、円状、楕円状、円弧状、C字状、コ字状、L字状等の適宜の形状とすることができる。光蓄積型発光建材1の形状も直線状に限定されるものではなく、壁8の出隅部や入隅部等に適用できる役物又は各種の化粧材等としてL字形、コ字形、C字形、波形、円弧形等に曲がっていてもよい。また、建材本体5は、複数の部材を組み立てることにより構成することもできる。
【0016】
上記のように構成された光蓄積型発光建材1を廊下6の幅木として使用する場合、図2乃至図4に示すように、光蓄積型発光建材1は、廊下床9と壁8との隅部に導光・発光層3を内側に向けて配置すればよい。廊下6が明るい状態では、図3に示すように、光L1が導光・発光層3に供給されると共に、光L1が導光・発光層3を透して蓄光層2にも供給される。この場合、導光・発光層3中や蓄光層2中の各蓄光顔料は、供給された光L1をそれぞれ吸収し、吸光と発光の平衡状態に至っている。夜間消灯後では、図4に示すように、導光・発光層3中の蓄光顔料が発光し、導光・発光層3が光L2を発して暗闇の中に浮かび上がるように視認できるので、照明器具を点灯しなくてもトイレ等への夜間移動を安全に行うことができる。蓄光層2中の蓄光顔料も発光し、導光・発光層3に継続的に光L3を供給する。反射層4は、蓄光層2から発した光L3や導光・発光層3から発した光L2が建材本体5に吸収されるのを防止する。
【0017】
ここで、導光・発光層3における蓄光顔料の含有率は蓄光層2における蓄光顔料の含有率よりも低いと共に、導光・発光層3の横断面の面積は蓄光層2の横断面の面積よりも小さくなるように構成されているので、導光・発光層3中の蓄光顔料は、制御された発光量で発光すると共に、蓄光層2からの継続的な光L3の供給により長時間安定した明るさを持続するという利点がある。そのため、常夜灯等の照明器具を配備していない場合であっても、トイレ等への夜間移動を夜間の長時間に渡って安全に行うことができる。また、メンテナンスが不要で半永久的に機能を維持すると共に、電気配線等も不要であるので、既築住宅への適用の際にも簡易な工事で改築が可能であり、住宅の新築時や既築住宅のリフォーム時等におけるコストダウンを図ることができるという利点がある。更に、この実施形態のように、反射層4を建材本体5で被覆しておけば、光蓄積型発光建材1を使用部位にそのままの状態で使用できるので、施工に手間がかからないという利点がある。
【0018】
なお、光蓄積型発光建材1は、図5に示すようなドア10の周囲に設けられるドア枠、図6に示すようなドア10の化粧材、室内の幅木(図示せず)、天井の回り縁(図示せず)、窓枠(サッシュ,図示せず)、外壁(図示せず)等の他、光蓄積型発光部材としてイルミネーション(図示せず)や看板(図示せず)等にも使用できる。光蓄積型発光建材1をドア10の化粧材として使用する場合は、図6に示すように、ドア10の表面10bの周縁等に光蓄積型発光建材1を接着又は埋設等することができる。光蓄積型発光建材1をドア枠やドア10の化粧材等として使用する場合において、互いの端部を付き合わせて直角方向に連結する必要があるときは、図5及び図6に示すように、互いの端部を長手方向に対して45°方向にそれぞれ切断し、互いの端面1aを接着剤等を介して突き合わせることにより直角方向に連結することができる。
【0019】
図7に示すように、光蓄積型発光建材1を丸棒状等に形成した場合は、光蓄積型発光建材1を階段・ベランダ等の手摺り材、塀・パラペット等の笠木等として好適に使用できる。この場合、蓄光層2は丸棒状に、導光・発光層3の横断面は円弧状に、建材本体5の横断面はC字状にそれぞれ形成することができる。既述のように、光蓄積型発光建材1は、トイレ等への夜間移動の際の誘導標識等の用途に使用できるが、これに限定されるものではなく、住宅の内外における近未来的なデザインの付与、広告等の各種の用途に使用することができる。
【0020】
第2実施形態に係る多層構造による光蓄積型発光建材21は、図8乃至図11に示すように、第1実施形態とそれぞれほぼ同様に構成された蓄光層2と導光・発光層3と反射層4とを備えた多層構造のものであって、導光・発光層3を階段22の段鼻等として使用できるものである。
【0021】
横断面が長方形状の蓄光層2の上端角部には長手方向に延びる切欠部23が設けられており、この切欠部23には横断面が正方形状の導光・発光層3の一部が融着又は透明接着剤等による接着等により固定されている。反射層4は、蓄光層2及び導光・発光層3を、導光・発光層3の上面3c、他側面3b、及び下面3dの一部が長手方向に沿って露出するように被覆している。なお、第1実施形態と同様、導光・発光層3の固定部位及び蓄光層2に対する固定位置、並びに導光・発光層3における露出範囲は特に限定されるものではなく、導光・発光層3の適宜の部位を蓄光層2の周面の適宜の位置に固定できると共に、導光・発光層3の周面の適宜の一部が長手方向に沿って露出するように構成できる。また、この実施形態においても、適宜の横断面形状の建材本体5で反射層4を被覆しておいてもよい。
【0022】
上記のように構成された光蓄積型発光建材21の導光・発光層3を階段22の段鼻として使用する場合、図9乃至図11に示すように、光蓄積型発光建材21を階段22の所定位置に設置し、蓄光層2の上面2cと導光・発光層3の一側面3aとの隅部に反射層4を介して踏み板24等を固定し、蓄光層2の側面2bと導光・発光層3の下面3dとの隅部に反射層4を介して蹴上げ板25等を固定すればよい。光蓄積型発光建材21の機能・作用は第1実施形態と同様であり、階段22が明るい状態では、図10に示すように、光L1が導光・発光層3に供給されると共に、光L1が導光・発光層3を透して蓄光層2にも供給される。夜間消灯後では、図11に示すように、導光・発光層3中の蓄光顔料が発光し、光L2を発して段鼻としての導光・発光層3が暗闇の中に浮かび上がるように視認できるので、照明器具を点灯しなくても夜間における階段22の昇降を安全に行うことができる。反射層4は、蓄光層2から発した光L3や導光・発光層3から発した光L2が踏み板24や蹴上げ板25等に吸収されるのを防止する。その他の利点は第1実施形態と同様である。
【0023】
【発明の効果】
以上のように、請求項1の発明によれば、蓄光層と導光・発光層と反射層とを備え、導光・発光層における蓄光顔料の含有率は蓄光層における蓄光顔料の含有率よりも低いと共に、導光・発光層の横断面の面積は蓄光層の横断面の面積よりも小さくなるように構成されているので、導光・発光層中の蓄光顔料は、制御された発光量で発光すると共に、蓄光層からの継続的な光の供給により長時間安定した明るさを持続する。そのため、常夜灯等の照明器具を配備していない場合であっても、トイレ等への夜間移動や夜間における階段の昇降等を夜間の長時間に渡って安全に行うことができる。また、メンテナンスが不要で半永久的に機能を維持すると共に、電気配線等も不要であるので、既築住宅への適用の際にも簡易な工事で改築が可能であり、住宅の新築時や既築住宅のリフォーム時等におけるコストダウンを図ることができる。
【0024】
請求項2の発明によれば、反射層を建材本体で被覆しているので、光蓄積型発光建材を使用部位にそのままの状態で使用でき、施工に手間がかからない。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係る光蓄積型発光建材の一部を示す斜視図。
【図2】光蓄積型発光建材を廊下の幅木として使用した例を示す斜視図。
【図3】廊下が明るい状態における光蓄積型発光建材の機能を示す縦断面図。
【図4】夜間消灯後における光蓄積型発光建材の機能を示す縦断面図。
【図5】光蓄積型発光建材をドア枠として使用した例を示す正面図。
【図6】光蓄積型発光建材をドアの化粧材として使用した例を示す正面図。
【図7】丸棒状に形成した光蓄積型発光建材の斜視図。
【図8】第2実施形態に係る光蓄積型発光建材の一部を示す斜視図。
【図9】光蓄積型発光建材の導光・発光層を階段の段鼻として使用した例を示す斜視図。
【図10】階段が明るい状態における光蓄積型発光建材の機能を示す縦断面図。
【図11】夜間消灯後における光蓄積型発光建材の機能を示す縦断面図。
【符号の説明】
1,21 光蓄積型発光建材
2 蓄光層
2b 側面(周面)
3 導光・発光層
3b 他側面(周面)
3c 上面(周面)
3d 下面(周面)
4 反射層
5 建材本体
Claims (2)
- 蓄光顔料を含有する透明合成樹脂から棒状に形成された蓄光層と、
蓄光顔料を前記蓄光層における蓄光顔料の含有率よりも低い含有率で含有する透明合成樹脂から横断面の面積が前記蓄光層の横断面の面積よりも小さくなるようにして棒状に形成されかつ前記蓄光層の周面にこの蓄光層の長手方向に対して平行に固定された導光・発光層と、
前記蓄光層及び前記導光・発光層を前記導光・発光層の周面の一部が長手方向に沿って露出するように被覆する反射層と、
を備えたことを特徴とする多層構造による光蓄積型発光建材。 - 前記反射層を建材本体で被覆した請求項1記載の多層構造による光蓄積型発光建材。
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