JP2004332137A - 流体抵抗減少水着 - Google Patents
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Abstract
【構成】水着生地表面に、まず部分的に親水部をプリント加工により設け、次いで親水部を設けた生地全体を、そのまま浸漬する、という手段による撥水加工を施す。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、競泳用水着に係るものであり、水着表面に撥水部を設けることによって水中での表面摩擦抵抗を削減するのみならず、非撥水部乃至は親水部をも設けることにより水抜け性をも確保する、という新規な、流体抵抗減少水着に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、競泳用水着に於いて最も求められる水中での表面摩擦抵抗を削減する目的で、水着表面に、撥水プリント加工を施したり、撥水シートを貼着したりする例が少なくなく、例えば特開平9−49107号の技術などはその典型であって、水着表面に、ストライプ状に撥水部と非撥水部とを分けるなどして抵抗減を図っている。
【0003】
又、水着の表面全面に撥水加工を施したものも従来の技術としては存在するが、このうちには、水着の襟などの開口部から侵入した水が外部に抜けなくなってしまう、即ち、表面の摩擦抵抗減少機能は仮に充分発揮できたとしても、上記のように水抜け性という点での欠点が際立ってしまうことになるばかりであって、却って、抵抗が増してしまう結果となってしまうため実際には使用に不適当であることも、多くあった。
【0004】
他には、水着表面全体に撥水加工を施しながらも、同時に水抜け性をも確保した従来技術も存してはいる。
即ち、編み組織を針抜きの手段にて粗くし、通水効果をももたらす技術である。然し乍らこの技術によれば、針抜きという面倒な工程が不可欠となること、のみならず、針抜きが均一でない場合が生じ易くなること、あるいは、編み組織をわざわざ粗くすることによって、水着全体としては強度的な見地から弱い部分がどうしても出来てしまう、という欠点もまま生じていた。
【0005】
図3は、従来技術の典型的な例を断面拡大的に示すものであって(特開平9−49107)、生地51の上面のみ(表面のみ)に、撥水剤52が部分的に(この場合ストライプ状に)プリント加工されており、該撥水剤52がプリント加工されていない部分は非撥水性部分53である。
しかし乍ら、この種の従来の技術では、水着表面に、シリコン系や、フッ素系等の撥水剤を使用し、一般的に工業化されているプリント処理によって撥水部を形成するに過ぎないものであり、従って、経時的な自然劣化、あるいは洗濯などに於ける摩擦などの外的原因による劣化や剥離などによって、充分な撥水効果の持続が期待できなくなる、即ち撥水部も直ちに非撥水部と化してしまう、という問題は依然として残されていた。
更には、水抜け性という点でも、該非撥水部は、一般にはポリエステルなどを用いているため、それらの素材の特性により、水抜けがされにくいという結果ともなっていた。
【0006】
のみならず、撥水プリント加工持に撥水剤が滲み出してしまうということが多くあり、非撥水部の非撥水性が充分確保しえない、という欠点もあったことが否めなかった(即ち、非撥水部も撥水機能を生じる結果となってしまう)。
【0007】
殊に、非撥水部を、細い線として形成することは極めて困難であった。即ち、細幅の非撥水部にも、撥水剤が滲み出してしまうことにより、非撥水機能が殆ど失われてしまうことが極めて多くあった。
【0008】
また、経時的劣化、即ち長期間の着用による撥水機能の劣化や、外的要因による劣化、即ち、洗濯等による撥水機能の劣化、の場合には撥水部と非撥水部との区別がつきにくくなってしまう結果が生じ、抵抗減とはならない、という重大な問題も含んでいた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記に述べてきた従来技術の欠点を解消すべく、本願発明は、工程が少ない(例えば針抜きなどの)のみならず、強度的にもムラが生じることもなく、又、細幅の非撥水部を設ける場合でもその非撥水機能を失うことのない水着として、撥水部に、仮に経時的自然劣化や、何らかの外的原因による劣化が生じた場合であっても、流体抵抗減少を充分維持できると同時に、水抜け性をも充分に機能させうるという画期的な流体抵抗減少水着を開発したものである。
【0010】
【手段】
本発明は、まず適宜伸縮性を有する水着生地の任意位置にまず親水加工を施こしてしまい、次いで該親水加工を施こした該水着生地表面の更に上面全体に亘って撥水加工を施こしたこと、を要旨とするものである。
尚、前記親水加工部の形成は、従来技術によればよいが、好ましくはアクリル系やウレタン系等の適宜合成樹脂を、バインダーとしてプリント加工することによって行うこと、をもその要旨とする。
又、前記全体に亘る撥水加工は、従来技術のようなプリント加工ではなく、生地全体を撥水剤に浸漬してしまうことによって施すこともその特徴とする。
【0011】
のみならず前記親水加工部は、ストライプ等任意の形状乃至は任意の大きさであること、も特徴とする。
尚、前記バインダーは、常に一定量の水を吸収して該水を含んだ親水部でもあるが、この場合、親水部の含水限度乃至所定量を越える水は、即ち、親水剤の吸収力の範囲を越える水は、最早親水部に含まれていることはなく水着外側に排除されるのであり、親水部に含まれることにはならない。
【0012】
尚、本明細書中に於いて使用される「水着全体の撥水加工乃至撥水層」とは、生地を構成する経糸及び緯糸自体の全周又は略全周が撥水加工される、ということである(より正確には、部分的に設けられた親水部が表面に存在しない糸での場合に限ってのことではあるが・・・この点図面参照されたい)。
即ち、交編した面全体に薄膜層を形成する(あたかも該層の存在によって、生地が完全に覆われてしまうように)、ということを意味するものではない。
つまり、上記撥水加工を施されるのは、糸自体の全周、正確には略全周のみであって、編組織の間隙は依然として残存している、という構成であることを念のためここで明らかにしておきたい。
【0013】
【実施例】
本発明の典型的な実施の例を、以下、図1に沿って説明する。
まず、符号1は、適宜伸縮性のある、従来水着として多く採択されている水着用生地であり、素材としては例えば、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリプロピレン系などの合成繊維マルチフィラメント糸、又はこれら合成繊維マルチフィラメント糸とポリウレタン弾性糸の交編による編物などから成る。
【0014】
符号2は、生地1自体の任意の位置に、適宜ストライプ形状その他任意の形状乃至大きさを呈する親水加工部である。
【0015】
該親水加工部2の形成には、従来より広く一般に行われている親水加工処理のうちから、プリント加工が採択さている。
即ち、この加工手段によれば、例えば、合成樹脂のうちから、アクリル系やウレタン系などを適宜バインダーとして、一般的ローラー機、オートスクリーン機、ハンドスクリーン機などを用いることにより塗布加工し、糸1’,1’・・・と密に一体化することとなる。
又、前記バインダー中には、当然適宜選択された所謂親水剤が混在していることは勿論である。
尚、親水剤としては、一般的に使用されている水溶性高分子などの溶液が適宜採択される。
【0016】
尚、該親水加工部2は、アクリル系やウレタン系の合成樹脂であるため、又、のみならず、親水部の全体を覆う後述の撥水層3bは極めて薄いため、水中にあっては、外側(体表側)より浸入してくる水を常に含んだ状態を呈し、かつ、この外側より浸入し水着と身体との中間に溜まった水は、糸と糸の間、即ち、編み組織の間隙を経由して所謂毛細管現象によりすべての水が該親水加工部2まで吸い上げられ(あたかも該親水加工部2が呼び水となるように)、該部2より外部に流出する(後述のように撥水層3の薄手部分3bは極めて薄手のため、この流出の支障とはならない)、即ち、水抜け作用が充分に生じるため、生地1の裏面からの水抜け性も又充分に確保されているといえる(即ち、もし、該親水加工部2が存在しないと、水は毛細管現象によって、糸と糸の間隙を経由して一応は吸い上げられるが、必ずしもすべてが吸い上げられるわけではなく相当量は自ずと下ちてしまうこととなってしまうのである。)
【0017】
次に、符号3は、生地1の全周(乃至は前述のように正確には各糸の略全周・・・図1及び2参照)に形成された撥水層であり、該撥水層3を形成するのには
、前記(
【0005】にて述べたような)従来技術が採択してきたプリント加工乃至塗布加工にはよらず、前述の第一工程を経た生地1全体を、そのまま撥水液に浸漬してしまうという工程により行われる。
【0018】
撥水液の材料としては、一般に用いられているシリコン系、フッ素系等の撥水剤が任意に選択されるが、特に撥水剤と称されているものには限らず、同等の効果を生じさせる処理剤であれば、名称は問わないことは勿論であるので、逐一列挙はしない。
【0019】
前記撥水層3は、厚手の被膜層3aと、極めて薄手の被膜層3bとから成る。
即ち、通常は、周知の所謂アンカー効果及びグリップ効果により、撥水剤は生地1の糸1’,1’・・・内部に浸入し、繊維に絡み着き固着されるのであるが、前記合成樹脂バインダーと、撥水剤とは、所謂相性がよくない関係にあるため、即ち、親水性がないため、という両者の有している特性により、アンカー効果及びグリップ効果共が生じにくいのであって、従って、撥水剤は糸1中の繊維に絡みつきにくく、結果として、親水加工部2に対しては、それ以外の部分の被膜層3a(これとても薄手であることは勿論なのであるが)と比して極めて薄手の被膜層3bしか形成されない、という結果が生じることとなる。
【0020】
このようにして形成された本発明の水着によれば、
【0005】に述べたような従来技術の有していた欠点、即ち、ポリエステルとポリウレタンの交編生地による非撥水部分は、素材自身の特性から、通水性に劣ること、又、プリントによる撥水加工では、糸の表面の一部にのみ(全周でなく上面のみ)撥水剤が付着するだけであって、そもそも耐久性に乏しいこと、(尚、本発明にあっては、
【0012】のように糸1’,1’・・・表面の全て乃至は略全体に撥水剤が付着するため耐久性に於いて極めて優れる)従って数回の洗濯その他何らかの理由によって、撥水プリント部が劣化あるいは剥離すると、撥水機能は直ちに失われ、水は、水着生地自体に直ちに直接的に滲入してゆき、流体抵抗減少の機能が直ちに失われてゆく、という欠点を解消できること、又、非撥水部が細幅の場合にも撥水液が非撥水部に滲出してゆくこともなく、従って細幅の非撥水性は充分に保たれ機能すること、更には、親水部の親水性は維持されうること、といった長所を発揮できる。
【0021】
即ち、仮に、本例の表面撥水加工の機能が、上記のような、何らかの、例えば洗濯などの、外的理由によって低下した場合であっても、低下した部分が疎水性になるのに対し、親水部はそのまま親水性を維持できるのであって、疎水部と親水部としての差異は保たれる。
【0022】
尚、第一工程として部分的に親水加工された水着全体を、第二工程の段階で撥水液に浸漬してしまうことによって、従来技術とは異なり、水着全体に撥水加工が行われるとしても、該撥水加工層中の極薄部分3bは勿論、3bに比して厚手の部分たる3aも、せいぜいその厚さは僅か数ミクロンといった程度にしか過ぎず、プリント加工と比して極めて薄い膜乃至層としてのみ形成されるのであるから、水着全体の重量は、着用者が気にする程度にまで増加することはなく、即ち、重量感を、着用者が格別意識することは全くない。
【0023】
又、上記工程では、水着表面のみならず、水着裏面の全体にも撥水層は形成されるが、上述のように、溜まった水は、糸の間(編み組織の間隙)の毛細管現象により親水加工部2まで吸い上げられ(親水加工部2の表面撥水膜が極く薄手であることを参照)、該部から更に外部にまで流出するのであり、即ち水抜け性は充分に確保されることとなる。つまり編組織の間隙を通して水抜け性は確保できるのであり、裏面撥水薄膜層の存在は即乾性に優れているという利点こそあれ、摩擦抵抗の点又、水抜け性の点に於いて、欠点となることは実際上全くない。
【0024】
【発明の効果】
以上述べてきたように、本発明によれば、殊に細い巾の非撥水部に撥水剤が滲入して非撥水部の機能を失わせることもなく、又、経時的乃至外部的要因によって撥水機能が全体として低下していった場合に於いても、低下した部分が疎水性となることに対し、親水部はなお親水性を維持できるので、従って、依然として、疎水部と親水部の差異は残存することとなる。従って、その結果として、特に100分の1秒を争う現在の競泳種目に於いては、流体抵抗減少機能は充分発揮されるため、極めて優れた影響を与えることとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る水着を断面的に拡大した状態を示すものである。
【図2】本発明に係る水着の要部を更に拡大した断面的状態を示すものである。
【図3】従来の典型的な撥水水着の同状態を示すものである。
【符号の説明】
1 生地
1’,1’・・・糸
2 親水部
3 撥水層
3a厚手の撥水層
3b薄手の撥水層
Claims (5)
- 適宜伸縮性を有する水着生地中適宜任意の位置に親水加工部を設ける第一の工程、次いで、
前記第一工程による親水加工部を設けた該水着生地の更に上面全体に亘って撥水加工を施す第二の工程、
より成ることを特徴とする流体抵抗減少水着。 - 前記第二の工程たる全体に亘る撥水加工を、生地全体を撥水剤に浸漬する手段によって施すこと、
を特徴とする請求項1記載の流体抵抗減少水着。 - 前記親水加工部の形成を、適宜合成樹脂等を、バインダーとしてプリント加工することによって、あるいは一般的塗布加工することによって行うこと、
を特徴とする請求項1記載の流体抵抗減少水着。 - 前記バインダーの合成樹脂が、アクリル系又はウレタン系であること、
を特徴とする請求項3記載の流体抵抗減少水着。 - 前記親水加工部が、任意の形状乃至任意の大きさであること、
を特徴とする請求項1又は請求項3又は請求項4記載の流体抵抗減少水着。
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