JP2004331836A - 脂肪族ポリエステルの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、成形性の良い高分子量脂肪族ポリエステルを生産性良く得ることができるポリエステルの製造方法を提供することである。
【構成】本発明は脂肪族ポリエステルに滑剤(A群)と有機酸(B群)の2成分を添加することを特徴とする脂肪族ポリエステルの製造方法。
【選択図】 なし
【構成】本発明は脂肪族ポリエステルに滑剤(A群)と有機酸(B群)の2成分を添加することを特徴とする脂肪族ポリエステルの製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形性に優れた脂肪族ポリエステルを生産性良く得るのに有用なポリエステルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
脂肪族ポリエステルは一般に生分解性が認められており、繊維、成型品、シートやフィルムに使用することが期待されている。このような成形を行うにあたり、成形性を良くするために種々の添加剤、例えば滑剤や結晶核剤を配合して成形をおこなってきた。滑剤や結晶核剤を工夫して成形性を改良した脂肪族ポリエステル樹脂組成物が知られている。(特許文献1、特許文献2)
しかしながら、このような添加剤を均一に混合・分散するには、添加剤そのものの粘度、対象となる脂肪族ポリエステルの粘度、さらには装置による良好な混合特性が重要であり、いくら性能の良い添加剤であっても、均一に混合・分散できなければ、安定した樹脂の供給はできないし、混合特性の見合った装置を用いることにより生産コストがかかり、工業上好ましくない。
【0003】
また、添加するタイミングとしては、脂肪族ポリエステルの合成過程あるいは合成終了後に製品として取り出す前に添加、製品としていったん取り出した後に二軸等の混練機での添加、さらには成形時に添加することが考えられるが、添加剤の性質から、添加するタイミングが決まってしまう場合がある。例えば、滑剤であり、結晶核剤としても高い性能を有する有機脂肪酸の金属塩の場合、たとえ融点が低く、融点以上の高温で融解させても、凝集してしまい樹脂状になり粘度が高くなってしまう。そのため、通常脂肪族ポリエステルの合成終了後に取り出した後、製品としていったん取り出した後に見合った混合特性の二軸混練機で混ぜるか成形時に混ぜるなど、滑剤を添加するタイミングや、使用する混練機に制限がある。
【0004】
しかしながら、二軸混練機のような混練機を使用するとコストが高くなり、また成形時に簡易な混練機で混ぜると均一に混合・分散できない問題がある。
【特許文献1】
特開平6−172621号公報
【特許文献2】
特開2000−239498号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、成形性の良い高分子量脂肪族ポリエステルを生産性良く得ることができるポリエステルの製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本願発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行なった。その結果、脂肪族ポリエステルの製造方法において、滑剤(A群)と有機酸(B群)を添加することで、滑剤の溶融粘度を調節することができ、幅広い粘度範囲の脂肪族ポリエステルに、汎用の撹拌装置を用いても滑剤を高分散することが可能であることを見いだし、本発明を完成した。
【0007】
特に滑剤が有機脂肪酸の金属塩類である場合に、添加した滑剤が樹脂状になることを押さえ、滑剤の粘度を低下させる効果が顕著であることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明にかかる脂肪族ポリエステルの製造方法は、滑剤(A群)と有機酸(B群)の2成分を必須として、脂肪族ポリエステルに添加することを特徴とする脂肪族ポリエステルの製造方法である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の脂肪族ポリエステルの製造方法において、製造される脂肪族ポリエステルは、特に限定されず、好ましくは最終の重量平均分子量が、10,000〜300,000の脂肪族ポリエステルである。
【0010】
前記脂肪族ポリエステルは、(i)多塩基酸(あるいはそのエステル)とグリコールを重縮合する方法、(ii)ヒドロキシカルボン酸(あるいはそのエステル)を重縮合する方法、(iii)環状酸無水物と環状エーテルを開環重合する方法、(iv)環状エステルを開環重合する方法、等で得られる。
【0011】
さらには前記重合方法の組合せにより(v)多塩基酸(あるいはそのエステル)とグリコールとヒドロキシカルボン酸(環状エステル、あるいはそのエステル、環状ダイマー)を重縮合する方法においても得られる。
【0012】
(i)の方法で用いられる多塩基酸としては、例えばコハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、ダイマー酸あるいはそれらのエステル等が挙げられ、グリコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール等が挙げられる。これらのうちで、得られるポリエステルの融点、生分解性、経済性を考慮するとコハク酸とエチレングリコールおよび/またはコハク酸と1,4−ブタンジオールの組合せが好ましい。
【0013】
(ii)の方法で用いられるヒドロキシカルボン酸としては、例えばグリコール酸、乳酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピオン酸、3−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、5−ヒドロキシ酪酸、5−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、クエン酸、リンゴ酸あるいはそれらのエステル等が挙げられる。
【0014】
(iii)の方法で用いられる環状酸無水物としては、例えば無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水シトラコン酸、等が挙げられる。環状エーテルとしては、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エピクロロヒドリン、アリルグリシジルエーテル、テトラヒドロフラン、オキセパン、1,3−ジオキソランなどが挙げられる。これらのうちで、得られるポリエステルの融点、生分解性、経済性を考慮すると無水コハク酸とエチレンオキシドの組合せが好ましい。
【0015】
(iv)の方法で用いられる環状エステルとしては、例えばβ−プロピオラクトン、β−メチル−β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、グリコリド、ラクチドなどが挙げられる。
【0016】
(i)、(ii)、(iii)、(iv)のいずれの方法によって、脱水反応によりエステル化するか、もしくは、開環重合によりエステル化し、その後、必要に応じて、引き続き脱グリコール反応により縮合させることによって、重量平均分子量(Mw)の範囲が下限値が2,000、好ましくは3,000、より好ましくは5,000であり、上限値が60,000、好ましくは55,000、より好ましくは50,000である範囲の低分子量ポリエステルを得ることができる。具体的には、(i)または(ii)の場合には、脱水反応によりエステル化し、一方、(iii)、(iv)の場合には、開環重合によりエステル化するようにすればよい。
【0017】
詳しくは、得られるポリエステルの重量平均分子量が前述した範囲(下限値が2,000、好ましくは3,000、より好ましくは5,000であり、上限値が60,000、好ましくは55,000、より好ましくは50,000である範囲)となるように、まず脱水反応もしくは開環重合によるエステル化を行い、該エステル化が終了した段階で得られたポリエステルの重量平均分子量が前記範囲に達していなければ、引き続き脱グリコール反応を行うようにすればよい。
【0018】
さらに詳しくは、(i)または(ii)の手法で脱水反応によりエステル化を行う場合は、通常、末端が少なくなると脱水効率が低下する傾向があるため、重量平均分子量が、下限値が2,000、好ましくは3,000、より好ましくは5,000であり、上限値が20,000、好ましくは18,000、より好ましくは15,000である範囲となった時点(反応混合物の酸価で判断するときは、反応混合物の酸価が50mgKOH/g程度となった時点)で脱水反応を終了し、脱グリコール反応を行うようにすればよい。一方、(iii)または(iv)の手法で開環重合によりエステル化を行う場合は、用いる原料の純度にもよるが、通常、脱水反応よりも高分子量のポリエステルが得られ易いので、重量平均分子量が、下限値が10,000、好ましくは15,000、より好ましくは20,000であり、上限値が60,000、好ましくは55,000、より好ましくは50,000である範囲となった時点で開環重合を終了し、脱グリコール反応を行うようにすればよい。
【0019】
前記エステル化を脱水反応で行う場合、脱水反応の際の反応条件等は、特に制限されないが、例えば、反応温度は160〜260℃、好ましくは180〜230℃とするのがよい。160℃未満であると、反応速度が遅くなり、一方、260℃を越えると、熱分解を起こす恐れがある。また、前記脱水反応は、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。また、前記脱水反応は、通常、常圧下で行えばよいが、当初常圧下で行った後に脱水反応を促進するため微減圧にしてもよい。さらに、常圧下では、グリコール成分が損なわれ系内の組成が変わらないように、上部に能力の適したコンデンサを使用することが望ましい。
【0020】
前記脱水反応においては、脱水反応触媒を用いることができる。脱水反応触媒としては、例えば、Ti、Ge、Zn、Fe、Mn、Co、Zr、V、Ir、La、Ce、Li、Caなどの金属化合物(好ましくは有機酸塩);アルコキシド、アセチルアセトナートなどの有機金属化合物;等が挙げられる。これらの中でも特に、例えば、ジブトキシジアセトアセトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン等のチタン化合物が好ましい。脱水反応触媒の使用割合は、特に制限されないが、通常、酸成分1モルに対して0.001〜0.1モル%とするのがよい。なお、前記触媒の添加時機については特に制限はなく、前記脱水反応の最初から加えてもよく、前記脱グリコール反応の直前に加えてもよい。
【0021】
前記エステル化を開環重合で行う場合、溶媒中での重合や塊状重合等の公知の方法を採用すればよい。すなわち、溶媒中での重合では脂肪族ジカルボン酸無水物を溶媒に溶解させておき、塊状重合では脂肪族ジカルボン酸無水物自体を溶融させておき、そこへ環状エーテル化合物を投入するようにすればよい。溶媒中での重合に用いることのできる溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ジオキサン、クロロホルム、ジクロロエタン等の不活性溶媒が挙げられ、重合形態は回分式で行ってもよいし、連続式で行ってもよい。
【0022】
前記開環重合においては、環状エーテル化合物を初期に一括仕込みすることもできるが、重合中に逐次添加することが好ましい。逐次添加とは、具体的には、連続的に滴下する形態、もしくは、多段階に分割して添加する形態のいずれであってもよいが、好ましくは連続的に滴下する形態がよい。環状エーテル化合物を逐次添加する場合、その添加速度は、脂肪族ジカルボン酸無水物100重量部に対して1時間あたり3〜90重量部、好ましくは5〜50重量部となるようにするのがよい。環状エーテル化合物の添加速度が遅すぎると、反応時間が長くなり生産性が低下することとなり、一方、添加速度が速すぎると、生成物中のポリエーテル成分が多くなり、融点の低いポリエステルしか得られないこととなる。
【0023】
前記開環重合の際の反応条件等は、特に制限されないが、例えば、反応温度は10〜250℃、好ましくは50〜150℃、さらに好ましくは100〜150℃とするのがよい。また、前記開環重合の際には、反応容器内の圧力は、反応温度、溶媒の有無、溶媒の種類等に応じて適宜設定すればよいが、常圧〜5MPaとすることが好ましく、常圧〜1.5MPaとすることがより好ましい。
【0024】
前記開環重合の際には、通常、重合触媒を用いる。重合触媒としては、特に制限はないが、例えば金属アルコキシド、ハロゲン化物、アルキルアルミニウム、アルキル亜鉛、三級アミン、ヘテロポリ酸およびそのアルカリ金属塩、ジルコニウム化合物等が挙げられ、中でもオクチル酸ジルコニール、テトラアルコキシジルコニウム類、炭酸ジルコニールが特に好ましい。重合触媒の使用量には特に制限はないが、通常、脂肪族ジカルボン酸無水物と環状エーテル化合物の合計量に対して0.001〜10質量%とするのがよい。なお、前記重合触媒の添加時機については、特に制限はなく、反応開始前に一括添加してもよく、環状エーテル化合物と同様に重合中に逐次添加してもよい。
【0025】
前記脱グリコール反応の際の反応条件等は、特に制限されないが、反応速度および分解防止を考慮すると、例えば、反応温度は160〜260℃、好ましくは180〜230℃とするのがよく、5kPa以下の減圧下、好ましくは1kPa以下の減圧下、より好ましくは0.5kPa以下の減圧下のような高真空下(減圧度の下限は装置によって決まる)で反応を行うのがよい。また、前記脱グリコール反応においては、エステル化で用いた前述の脱水反応触媒あるいは開環重合触媒をそのまま用いてもよいし、新たに添加してもよい。
【0026】
本発明においては、前記低分子量ポリエステルを減圧下で加熱する脱グリコール反応によって、前記低分子量ポリエステルの重量平均分子量の2倍以上、好ましくは4倍以上、より好ましくは6倍以上の分子量に高分子量化することができる。具体的には、該高分子量化によって達成される重量平均分子量は、下限が5,000、好ましくは20,000、より好ましくは40,000であり、上限が120,000、好ましくは100,000、より好ましくは80,000の範囲となる。
【0027】
また、こうして得られた高分子量ポリエステルは種々の鎖延長剤と反応させてさらに高分子量化してもよい。鎖延長剤としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物、多価金属化合物、多官能酸無水物、リン酸エステル、亜リン酸エステル等が挙げられ、一種、または二種以上を組み合わせても良い。鎖延長剤とポリエステルとの反応方法は特に制限はないが、ポリエステルを適当な溶媒に溶かして鎖延長剤と反応させる方法、ポリエステルを加熱溶解させて鎖延長剤と反応させる方法などが挙げられる。
【0028】
さらに多官能イソシアネート化合物を反応させる場合、該多官能イソシアネート化合物との反応に供するポリエステルは、末端基が実質的にヒドロキシル基である必要があり、具体的には、末端ヒドロキシル基の単位重量当たりの数が10mgKOH/ポリマーg以下程度、好ましくは5mgKOH/ポリマーg以下程度であるのがよい。また、多官能イソシアネート化合物との反応に供するポリエステルは、その重量平均分子量が5万以上となっていることが好ましい。多官能イソシアネート化合物との反応に供するポリエステルの重量平均分子量が小さすぎると、最終的に得られるポリエステルの物性が低下したり、多官能イソシアネート化合物との反応中にゲル化を生じたりする恐れがある。
【0029】
前記多官能イソシアネート化合物としては、特に制限はないが、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。これらの中でも特に、ヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。多官能イソシアネート化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
前記多官能イソシアネート化合物の使用量は、反応に供するポリエステルの分子量および最終的に得ようとするポリエステルの分子量にもよるが、反応に供するポリエステル100重量部に対して0.3〜2重量部、好ましくは0.5〜1.5重量部とするのがよい。
【0031】
さらに多官能イソシアネート化合物を反応させる場合、その方法は、特に制限されるものではなく、従来公知の方法によって行えばよい。例えば、常圧下、150〜200℃の温度で反応させることが好ましい。また、該反応は、反応に供するポリエステルが均一な溶融状態で溶剤を含まず、容易に撹拌可能となる条件下で行われることが好ましい。例えば、反応に供するポリエステルが固形状である場合は、該固形状のポリエステルに多官能イソシアネート化合物を添加し、エクストルーダーを通して溶融すると同時に反応させることも不可能ではないが、一般には、多官能イソシアネート化合物との反応は、前述した低分子量ポリエステルの製造と続く高分子量化に引き続き同じ製造装置内で行うか、あるいは、例えばニーダー内で、溶融状態にあるポリエステルに多官能イソシアネート化合物を添加して反応させることが実用的である。
【0032】
前記重合過程で滑剤(A群)と有機酸(B群)の2成分を添加するが、その2成分の合計添加量としては、対象となる脂肪族ポリエステルに対して0.01〜10質量%の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.05〜5質量%の範囲である。0.0001重量部未満の場合には所定の効果が得られにくく、10重量%を超える場合は、不経済である場合がある。
【0033】
本発明に使用する滑剤(A群)は加工時にポリマー間の摩擦を少なくする内部滑剤、またポリマーと加工機械の表面との滑りを良くする外部滑剤、無滴剤、アンチブロッキング剤、光沢剤などの効果のあるサービス滑性能を持つものが挙げられるが、具体的には次のようなものが挙げられる。
【0034】
脂肪族炭化水素系滑剤:例えば流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、天然パラフィン、合成パラフィン、ポリオレフィンワックスおよびこれらの部分酸化物、あるいはフッ素化物、塩化物等、高級脂肪族系アルコール・高級脂肪酸系滑剤:例えば動物油、植物油、モンタンワックス等、脂肪酸アマイド系滑剤:例えば高級脂肪酸アマイド、ビスアマイド等、金属石鹸系滑剤(有機脂肪酸の金属塩):例えば炭素数8〜30の有機脂肪酸の金属塩。具体的には、オクチル酸、トルイル酸、ヘプタン酸、ペラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸のLi、Na、Mg、K、Ca、Al、Ba、Znといった金属塩等、脂肪酸エステル系滑剤等が挙げられる。
【0035】
本発明に使用する有機酸(B群)は、脂肪族ポリエステルの原料として使用される多価カルボン酸とは異なる炭素数1〜30の有機酸であれば良いが、ポリエステル中に取り込まれることを考えると、1価の有機酸が好ましく、ポリエステルの安定性を考慮すると炭素数8〜30の高級脂肪酸がさらに好ましい。具体的には、オクチル酸、トルイル酸、ヘプタン酸、ペラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等が挙げられる。
【0036】
滑剤(A群)と有機酸(B群)の組み合わせとしては、特にこだわらないが、相溶性の点で、滑剤が金属石鹸系の場合は、対応する遊離酸の組み合わせが好ましく、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、モンタン酸と、その金属塩(例えばLi、Na、Mg、K、Ca、Al、Ba、Zn)との組み合わせがより好ましい。
【0037】
さらに、滑剤(A群)と有機酸(B群)としてはこれらの中のうちそれぞれ1種を用いても良いし、それぞれ2種以上を用いても良い。
【0038】
混合の形態としては、滑剤(A群)、有機酸(B群)を各々直接に脂肪族ポリエステル中に添加してもよく、あらかじめ両者を溶融混合して均一化しておいてもよく、有機酸(B群)を中和して幾分か金属塩にしたものを用いてもよいが、よりポリマー中で早く均一化させることを考慮すると、あらかじめ溶融混合しておくか、中和により幾分か金属塩にしたものを用いるのが好ましい。
【0039】
あらかじめ溶融混合して均一化する方法としては、各々の金属塩の融点以上で均一化することが好ましく、いかなる混合装置、加熱装置を用いてもかまわない。混合物の色調が気になる場合は、窒素気流下で行うことが好ましい。
【0040】
中和により幾分か金属塩にする方法としては、例えばステアリン酸カルシウムの場合は、ステアリン酸溶液に所定量の水酸化カルシウム溶液を加えることで達成できるし、ダイワックス(大日化学工業)のような一部カルシウムで中和された市販製品を用いることもできる。
【0041】
滑剤(A群)と有機酸(B群)の質量割合の範囲は、上限値が80:20、好ましくは75:25、さらに好ましくは70:30であり、下限値が10:90、好ましくは15:85、好ましくは20:80である。滑剤(A群)が80%を超えた場合は、有機酸(B群)の効果が希薄であり、均一に混合・分散するには混練能力の非常に大きい混練機を必要とし、滑剤(A群)が両者の合計の10%未満である場合は滑剤(A群)の効果が希薄となる。
【0042】
上記混合物の添加するタイミングは、前記いずれの重合形態によるかで変わってくるが、本発明の方法を用いれば、どの粘度範囲でも均一に混合・分散することは可能であるが、操作上、初期の原料仕込み時、脱グリコール反応開始時、架橋剤添加時、反応器から抜き出し直前、一軸や二軸による混練時、成形時それぞれの工程のくぎりの段階での添加が好ましい。
【0043】
より好ましくは、初期の原料仕込み時、脱グリコール反応開始時、架橋剤添加時、反応器から抜き出し直前のように製品として抜き出す前が最も効率が良い。
【0044】
添加するタイミング時の脂肪族ポリエステルの重量平均分子量の下限値としては、2,000以上、好ましくは3,000以上、より好ましくは5,000以上である。上限値としては300,000以下、好ましくは200,000以下、より好ましくは100,000以下である。2,000未満ではポリエステルを構成する有機酸が存在することや粘度面でも本発明の効果なくして均一に混合・分散できることが可能である。
【0045】
また、イソシアネートジャンプする際には滑剤の添加で分子量が増加するため、鎖延長剤添加前に添加することがより好ましい。
【0046】
さらに、前記イソシアネート反応を行うに当たり、本発明における2成分を添加した際、イソシアネートによるジャンプ効率がよくなることも確認された。この結果、イソシアネート添加前の一般に反応が遅いとされている脱グリコール工程の時間を短時間にすることにより、全工程での時間短縮が達成できる可能性がある。
【0047】
このようにして滑剤を均一に混合・分散させて得られた高分子量脂肪族ポリエステル、あるいはさらにイソシアネートなどの鎖延長剤によりさらに高分子量化されたポリエステルは、押し出し成形、射出成形、中空成形、真空成形等の通常の成型方法に適用することができ、各種部品、容器、資材、器具、フィルム、シート、繊維等の成型品とすることができる。
【0048】
【参考例】
ステアリン酸カルシウムおよびステアリン酸マグネシウムにステアリン酸を添加し、粘度低下の挙動を調べた。
【0049】
(樹脂粘度)
粘度測定器(BROOKFIELD製「DV−III+RHEOMETER」)を用い、スピンドル番号SC4−21、10rpmで試料8.0gの180℃における溶融粘度を測定した。
【0050】
(参考例1)
ステアリン酸カルシウムおよびステアリン酸を粘度測定用セルに所定の比率で仕込み、180℃で一旦溶融均一化させた。この固化サンプルを再度180℃で溶融し、その時の溶融時間、溶融粘度を測定した。結果を表1に示す。
【0051】
(参考例2)
ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸を粘度測定用セルに所定の比率で仕込み、180℃で一旦溶融均一化させた。この固化サンプルを再度180℃で溶融し、その時の溶融時間、溶融粘度を測定した。結果を表2に示す。
【0052】
以上のように、単独では融点以上の温度でも粘度が高く樹脂状のステアリン酸金属塩に、ステアリン酸を添加することにより、粘度降下が見られ、任意の粘度に調節することが可能になることが判明した。
【0053】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0054】
(DSC測定)
セイコーDSC220を用い、試料約10mgを200℃まで昇温し、200℃で5分保持した後、10℃/minで−40℃まで降温した時の結晶化ピーク温度(Tc)、および結晶化ピーク面積(ΔH)を測定した。
【0055】
(重量平均分子量)
試料をクロロホルムに溶解させて1%溶液とし、ゲルパーミエーションクロマトグラフを用いてポリスチレン換算の重量平均分子量を測定した。
【0056】
(成形性評価)
試料約5gを180℃で、100kgf/cm2で1分、150kgf/cm2で2分加圧することにより、圧縮成形を行い、その成形均一性を評価した。
【0057】
成形性は以下のように評価した。
A:均一に円形のシートが得られた場合。
B:滑剤の分散不良により流れが悪く花弁状のシートが得られた場合。
C:結晶化速度が遅く生産性が悪い場合。
【0058】
(製造例)
100LのSUS製反応器にコハク酸49.0kgおよびエチレングリコール26.45kg、チタンテトライソプロポキシド0.0076kg、トリメチロールプロパン0.111kgを加え、窒素置換を行った。次いで窒素ブローのもと撹拌下に樹脂温度130−220℃で、5時間かけてエステル化反応をおこなった。引き続いて樹脂温度220℃、9.3kPaの減圧下で1時間反応をおこない、エステル化反応を促進させた。
【0059】
この低分子量ポリエステルを減圧下、樹脂温度220℃で、5時間かけて脱グリコール反応を行った。その結果重量平均分子量(Mw)が55,100の脂肪族ポリエステルを得た。
【0060】
(実施例1)
300mLのガラス製反応器に製造例で作成した脂肪族ポリエステル100gを加え、窒素置換を行った。次いで窒素ブローのもと180℃のオイルバスに浸漬し、上記ポリエステルが溶解後、亜リン酸を0.01g添加し、10分間撹拌を行った。その後、酸化防止剤としてIrganox1010(チバガイギー社)を0.05g、ステアリン酸カルシウム(和光純薬工業:A群)を0.03g、ステアリン酸(和光純薬工業:B群)を0.07g(脂肪族ポリエステルに対してA群、B群の合計0.1質量%)各々添加し、5分間撹拌を行った。その後5分間減圧を行い、再び窒素ブローのもとヘキサメチレンジイソシアネートを0.9g添加した。その後1時間撹拌し、7時間静置した。このようにして得られた樹脂のDSC測定結果および成形性の結果を表3に示す。
【0061】
(実施例2)
A群、B群を成分として有する、ダイワックスCS55(大日化学工業:カルシウム中和度からA群は60%、B群は40%)を0.3g(脂肪族ポリエステルに対して0.3質量%)用いた他は実施例1と同様にしてポリエステルを得た。このようにして得られた樹脂のDSC測定結果および成形性の結果を表3に示す。
【0062】
(比較例1)
A群成分しか含まないダイワックスC(大日化学工業:カルシウム中和度からA群は100%、B群は0%)を用い、ヘキサメチレンジイソシアネートを1.0g添加した他は実施例1と同様にしてポリエステルを得た。このようにして得られた樹脂のDSC測定結果および成形性の結果を表4に示す。
【0063】
(比較例2)
300mLのガラス製反応器にコハク酸100.38gおよびエチレングリコール55.34g、チタンテトライソプロポキシド0.014g、トリメチロールプロパン0.342gを加え、窒素置換を行った。次いで窒素ブローのもと撹拌下に樹脂温度220℃で、1.5時間かけてエステル化反応をおこなった。引き続いて樹脂温度220℃、6.6kPaの減圧下で1.5時間反応をおこない、エステル化反応を促進させた。
【0064】
この低分子量ポリエステルを減圧下、樹脂温度220℃で、7時間かけて脱グリコール反応を行った。その結果重量平均分子量(Mw)が53,900の脂肪族ポリエステルを得た。
【0065】
引き続き、窒素ブローのもと樹脂温度180℃まで降温し、亜リン酸を0.012g、酸化防止剤としてIrganox1010を0.06g添加し、10分間撹拌を行った。その後、5分間減圧を行い、再び窒素ブローのもとヘキサメチレンジイソシアネートを1.38g添加後15分撹拌した後、7時間45分静置した。このようにして得られた樹脂のDSC測定結果および成形性の結果を表4に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
【表4】
【0070】
本実施例において下記効果が確認された。
比較例と比べて均一に分散・混合されている。
比較例2と比べてイソシアネートジャンプ効率が高い。
【0071】
【発明の効果】
本発明によれば、生分解性を有する高分子量脂肪族ポリエステルを、汎用の装置を用いることができる実用的な条件で、高収率かつ工業的に効率よく、かつ経済的に製造することができる。
【0072】
本発明で得られる脂肪族ポリエステルは、比較的高分子量で高融点のものであるため、フィルムやシート等への成型加工が容易となり、成形品としての耐久性にもすぐれている。したがって、本発明で得られる高分子量脂肪族ポリエステルは、使い捨ての包装材料や日用雑貨品等に有効に使用できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形性に優れた脂肪族ポリエステルを生産性良く得るのに有用なポリエステルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
脂肪族ポリエステルは一般に生分解性が認められており、繊維、成型品、シートやフィルムに使用することが期待されている。このような成形を行うにあたり、成形性を良くするために種々の添加剤、例えば滑剤や結晶核剤を配合して成形をおこなってきた。滑剤や結晶核剤を工夫して成形性を改良した脂肪族ポリエステル樹脂組成物が知られている。(特許文献1、特許文献2)
しかしながら、このような添加剤を均一に混合・分散するには、添加剤そのものの粘度、対象となる脂肪族ポリエステルの粘度、さらには装置による良好な混合特性が重要であり、いくら性能の良い添加剤であっても、均一に混合・分散できなければ、安定した樹脂の供給はできないし、混合特性の見合った装置を用いることにより生産コストがかかり、工業上好ましくない。
【0003】
また、添加するタイミングとしては、脂肪族ポリエステルの合成過程あるいは合成終了後に製品として取り出す前に添加、製品としていったん取り出した後に二軸等の混練機での添加、さらには成形時に添加することが考えられるが、添加剤の性質から、添加するタイミングが決まってしまう場合がある。例えば、滑剤であり、結晶核剤としても高い性能を有する有機脂肪酸の金属塩の場合、たとえ融点が低く、融点以上の高温で融解させても、凝集してしまい樹脂状になり粘度が高くなってしまう。そのため、通常脂肪族ポリエステルの合成終了後に取り出した後、製品としていったん取り出した後に見合った混合特性の二軸混練機で混ぜるか成形時に混ぜるなど、滑剤を添加するタイミングや、使用する混練機に制限がある。
【0004】
しかしながら、二軸混練機のような混練機を使用するとコストが高くなり、また成形時に簡易な混練機で混ぜると均一に混合・分散できない問題がある。
【特許文献1】
特開平6−172621号公報
【特許文献2】
特開2000−239498号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、成形性の良い高分子量脂肪族ポリエステルを生産性良く得ることができるポリエステルの製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本願発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行なった。その結果、脂肪族ポリエステルの製造方法において、滑剤(A群)と有機酸(B群)を添加することで、滑剤の溶融粘度を調節することができ、幅広い粘度範囲の脂肪族ポリエステルに、汎用の撹拌装置を用いても滑剤を高分散することが可能であることを見いだし、本発明を完成した。
【0007】
特に滑剤が有機脂肪酸の金属塩類である場合に、添加した滑剤が樹脂状になることを押さえ、滑剤の粘度を低下させる効果が顕著であることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明にかかる脂肪族ポリエステルの製造方法は、滑剤(A群)と有機酸(B群)の2成分を必須として、脂肪族ポリエステルに添加することを特徴とする脂肪族ポリエステルの製造方法である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の脂肪族ポリエステルの製造方法において、製造される脂肪族ポリエステルは、特に限定されず、好ましくは最終の重量平均分子量が、10,000〜300,000の脂肪族ポリエステルである。
【0010】
前記脂肪族ポリエステルは、(i)多塩基酸(あるいはそのエステル)とグリコールを重縮合する方法、(ii)ヒドロキシカルボン酸(あるいはそのエステル)を重縮合する方法、(iii)環状酸無水物と環状エーテルを開環重合する方法、(iv)環状エステルを開環重合する方法、等で得られる。
【0011】
さらには前記重合方法の組合せにより(v)多塩基酸(あるいはそのエステル)とグリコールとヒドロキシカルボン酸(環状エステル、あるいはそのエステル、環状ダイマー)を重縮合する方法においても得られる。
【0012】
(i)の方法で用いられる多塩基酸としては、例えばコハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、ダイマー酸あるいはそれらのエステル等が挙げられ、グリコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール等が挙げられる。これらのうちで、得られるポリエステルの融点、生分解性、経済性を考慮するとコハク酸とエチレングリコールおよび/またはコハク酸と1,4−ブタンジオールの組合せが好ましい。
【0013】
(ii)の方法で用いられるヒドロキシカルボン酸としては、例えばグリコール酸、乳酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピオン酸、3−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、5−ヒドロキシ酪酸、5−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、クエン酸、リンゴ酸あるいはそれらのエステル等が挙げられる。
【0014】
(iii)の方法で用いられる環状酸無水物としては、例えば無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水シトラコン酸、等が挙げられる。環状エーテルとしては、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エピクロロヒドリン、アリルグリシジルエーテル、テトラヒドロフラン、オキセパン、1,3−ジオキソランなどが挙げられる。これらのうちで、得られるポリエステルの融点、生分解性、経済性を考慮すると無水コハク酸とエチレンオキシドの組合せが好ましい。
【0015】
(iv)の方法で用いられる環状エステルとしては、例えばβ−プロピオラクトン、β−メチル−β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、グリコリド、ラクチドなどが挙げられる。
【0016】
(i)、(ii)、(iii)、(iv)のいずれの方法によって、脱水反応によりエステル化するか、もしくは、開環重合によりエステル化し、その後、必要に応じて、引き続き脱グリコール反応により縮合させることによって、重量平均分子量(Mw)の範囲が下限値が2,000、好ましくは3,000、より好ましくは5,000であり、上限値が60,000、好ましくは55,000、より好ましくは50,000である範囲の低分子量ポリエステルを得ることができる。具体的には、(i)または(ii)の場合には、脱水反応によりエステル化し、一方、(iii)、(iv)の場合には、開環重合によりエステル化するようにすればよい。
【0017】
詳しくは、得られるポリエステルの重量平均分子量が前述した範囲(下限値が2,000、好ましくは3,000、より好ましくは5,000であり、上限値が60,000、好ましくは55,000、より好ましくは50,000である範囲)となるように、まず脱水反応もしくは開環重合によるエステル化を行い、該エステル化が終了した段階で得られたポリエステルの重量平均分子量が前記範囲に達していなければ、引き続き脱グリコール反応を行うようにすればよい。
【0018】
さらに詳しくは、(i)または(ii)の手法で脱水反応によりエステル化を行う場合は、通常、末端が少なくなると脱水効率が低下する傾向があるため、重量平均分子量が、下限値が2,000、好ましくは3,000、より好ましくは5,000であり、上限値が20,000、好ましくは18,000、より好ましくは15,000である範囲となった時点(反応混合物の酸価で判断するときは、反応混合物の酸価が50mgKOH/g程度となった時点)で脱水反応を終了し、脱グリコール反応を行うようにすればよい。一方、(iii)または(iv)の手法で開環重合によりエステル化を行う場合は、用いる原料の純度にもよるが、通常、脱水反応よりも高分子量のポリエステルが得られ易いので、重量平均分子量が、下限値が10,000、好ましくは15,000、より好ましくは20,000であり、上限値が60,000、好ましくは55,000、より好ましくは50,000である範囲となった時点で開環重合を終了し、脱グリコール反応を行うようにすればよい。
【0019】
前記エステル化を脱水反応で行う場合、脱水反応の際の反応条件等は、特に制限されないが、例えば、反応温度は160〜260℃、好ましくは180〜230℃とするのがよい。160℃未満であると、反応速度が遅くなり、一方、260℃を越えると、熱分解を起こす恐れがある。また、前記脱水反応は、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。また、前記脱水反応は、通常、常圧下で行えばよいが、当初常圧下で行った後に脱水反応を促進するため微減圧にしてもよい。さらに、常圧下では、グリコール成分が損なわれ系内の組成が変わらないように、上部に能力の適したコンデンサを使用することが望ましい。
【0020】
前記脱水反応においては、脱水反応触媒を用いることができる。脱水反応触媒としては、例えば、Ti、Ge、Zn、Fe、Mn、Co、Zr、V、Ir、La、Ce、Li、Caなどの金属化合物(好ましくは有機酸塩);アルコキシド、アセチルアセトナートなどの有機金属化合物;等が挙げられる。これらの中でも特に、例えば、ジブトキシジアセトアセトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン等のチタン化合物が好ましい。脱水反応触媒の使用割合は、特に制限されないが、通常、酸成分1モルに対して0.001〜0.1モル%とするのがよい。なお、前記触媒の添加時機については特に制限はなく、前記脱水反応の最初から加えてもよく、前記脱グリコール反応の直前に加えてもよい。
【0021】
前記エステル化を開環重合で行う場合、溶媒中での重合や塊状重合等の公知の方法を採用すればよい。すなわち、溶媒中での重合では脂肪族ジカルボン酸無水物を溶媒に溶解させておき、塊状重合では脂肪族ジカルボン酸無水物自体を溶融させておき、そこへ環状エーテル化合物を投入するようにすればよい。溶媒中での重合に用いることのできる溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ジオキサン、クロロホルム、ジクロロエタン等の不活性溶媒が挙げられ、重合形態は回分式で行ってもよいし、連続式で行ってもよい。
【0022】
前記開環重合においては、環状エーテル化合物を初期に一括仕込みすることもできるが、重合中に逐次添加することが好ましい。逐次添加とは、具体的には、連続的に滴下する形態、もしくは、多段階に分割して添加する形態のいずれであってもよいが、好ましくは連続的に滴下する形態がよい。環状エーテル化合物を逐次添加する場合、その添加速度は、脂肪族ジカルボン酸無水物100重量部に対して1時間あたり3〜90重量部、好ましくは5〜50重量部となるようにするのがよい。環状エーテル化合物の添加速度が遅すぎると、反応時間が長くなり生産性が低下することとなり、一方、添加速度が速すぎると、生成物中のポリエーテル成分が多くなり、融点の低いポリエステルしか得られないこととなる。
【0023】
前記開環重合の際の反応条件等は、特に制限されないが、例えば、反応温度は10〜250℃、好ましくは50〜150℃、さらに好ましくは100〜150℃とするのがよい。また、前記開環重合の際には、反応容器内の圧力は、反応温度、溶媒の有無、溶媒の種類等に応じて適宜設定すればよいが、常圧〜5MPaとすることが好ましく、常圧〜1.5MPaとすることがより好ましい。
【0024】
前記開環重合の際には、通常、重合触媒を用いる。重合触媒としては、特に制限はないが、例えば金属アルコキシド、ハロゲン化物、アルキルアルミニウム、アルキル亜鉛、三級アミン、ヘテロポリ酸およびそのアルカリ金属塩、ジルコニウム化合物等が挙げられ、中でもオクチル酸ジルコニール、テトラアルコキシジルコニウム類、炭酸ジルコニールが特に好ましい。重合触媒の使用量には特に制限はないが、通常、脂肪族ジカルボン酸無水物と環状エーテル化合物の合計量に対して0.001〜10質量%とするのがよい。なお、前記重合触媒の添加時機については、特に制限はなく、反応開始前に一括添加してもよく、環状エーテル化合物と同様に重合中に逐次添加してもよい。
【0025】
前記脱グリコール反応の際の反応条件等は、特に制限されないが、反応速度および分解防止を考慮すると、例えば、反応温度は160〜260℃、好ましくは180〜230℃とするのがよく、5kPa以下の減圧下、好ましくは1kPa以下の減圧下、より好ましくは0.5kPa以下の減圧下のような高真空下(減圧度の下限は装置によって決まる)で反応を行うのがよい。また、前記脱グリコール反応においては、エステル化で用いた前述の脱水反応触媒あるいは開環重合触媒をそのまま用いてもよいし、新たに添加してもよい。
【0026】
本発明においては、前記低分子量ポリエステルを減圧下で加熱する脱グリコール反応によって、前記低分子量ポリエステルの重量平均分子量の2倍以上、好ましくは4倍以上、より好ましくは6倍以上の分子量に高分子量化することができる。具体的には、該高分子量化によって達成される重量平均分子量は、下限が5,000、好ましくは20,000、より好ましくは40,000であり、上限が120,000、好ましくは100,000、より好ましくは80,000の範囲となる。
【0027】
また、こうして得られた高分子量ポリエステルは種々の鎖延長剤と反応させてさらに高分子量化してもよい。鎖延長剤としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物、多価金属化合物、多官能酸無水物、リン酸エステル、亜リン酸エステル等が挙げられ、一種、または二種以上を組み合わせても良い。鎖延長剤とポリエステルとの反応方法は特に制限はないが、ポリエステルを適当な溶媒に溶かして鎖延長剤と反応させる方法、ポリエステルを加熱溶解させて鎖延長剤と反応させる方法などが挙げられる。
【0028】
さらに多官能イソシアネート化合物を反応させる場合、該多官能イソシアネート化合物との反応に供するポリエステルは、末端基が実質的にヒドロキシル基である必要があり、具体的には、末端ヒドロキシル基の単位重量当たりの数が10mgKOH/ポリマーg以下程度、好ましくは5mgKOH/ポリマーg以下程度であるのがよい。また、多官能イソシアネート化合物との反応に供するポリエステルは、その重量平均分子量が5万以上となっていることが好ましい。多官能イソシアネート化合物との反応に供するポリエステルの重量平均分子量が小さすぎると、最終的に得られるポリエステルの物性が低下したり、多官能イソシアネート化合物との反応中にゲル化を生じたりする恐れがある。
【0029】
前記多官能イソシアネート化合物としては、特に制限はないが、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。これらの中でも特に、ヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。多官能イソシアネート化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
前記多官能イソシアネート化合物の使用量は、反応に供するポリエステルの分子量および最終的に得ようとするポリエステルの分子量にもよるが、反応に供するポリエステル100重量部に対して0.3〜2重量部、好ましくは0.5〜1.5重量部とするのがよい。
【0031】
さらに多官能イソシアネート化合物を反応させる場合、その方法は、特に制限されるものではなく、従来公知の方法によって行えばよい。例えば、常圧下、150〜200℃の温度で反応させることが好ましい。また、該反応は、反応に供するポリエステルが均一な溶融状態で溶剤を含まず、容易に撹拌可能となる条件下で行われることが好ましい。例えば、反応に供するポリエステルが固形状である場合は、該固形状のポリエステルに多官能イソシアネート化合物を添加し、エクストルーダーを通して溶融すると同時に反応させることも不可能ではないが、一般には、多官能イソシアネート化合物との反応は、前述した低分子量ポリエステルの製造と続く高分子量化に引き続き同じ製造装置内で行うか、あるいは、例えばニーダー内で、溶融状態にあるポリエステルに多官能イソシアネート化合物を添加して反応させることが実用的である。
【0032】
前記重合過程で滑剤(A群)と有機酸(B群)の2成分を添加するが、その2成分の合計添加量としては、対象となる脂肪族ポリエステルに対して0.01〜10質量%の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.05〜5質量%の範囲である。0.0001重量部未満の場合には所定の効果が得られにくく、10重量%を超える場合は、不経済である場合がある。
【0033】
本発明に使用する滑剤(A群)は加工時にポリマー間の摩擦を少なくする内部滑剤、またポリマーと加工機械の表面との滑りを良くする外部滑剤、無滴剤、アンチブロッキング剤、光沢剤などの効果のあるサービス滑性能を持つものが挙げられるが、具体的には次のようなものが挙げられる。
【0034】
脂肪族炭化水素系滑剤:例えば流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、天然パラフィン、合成パラフィン、ポリオレフィンワックスおよびこれらの部分酸化物、あるいはフッ素化物、塩化物等、高級脂肪族系アルコール・高級脂肪酸系滑剤:例えば動物油、植物油、モンタンワックス等、脂肪酸アマイド系滑剤:例えば高級脂肪酸アマイド、ビスアマイド等、金属石鹸系滑剤(有機脂肪酸の金属塩):例えば炭素数8〜30の有機脂肪酸の金属塩。具体的には、オクチル酸、トルイル酸、ヘプタン酸、ペラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸のLi、Na、Mg、K、Ca、Al、Ba、Znといった金属塩等、脂肪酸エステル系滑剤等が挙げられる。
【0035】
本発明に使用する有機酸(B群)は、脂肪族ポリエステルの原料として使用される多価カルボン酸とは異なる炭素数1〜30の有機酸であれば良いが、ポリエステル中に取り込まれることを考えると、1価の有機酸が好ましく、ポリエステルの安定性を考慮すると炭素数8〜30の高級脂肪酸がさらに好ましい。具体的には、オクチル酸、トルイル酸、ヘプタン酸、ペラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等が挙げられる。
【0036】
滑剤(A群)と有機酸(B群)の組み合わせとしては、特にこだわらないが、相溶性の点で、滑剤が金属石鹸系の場合は、対応する遊離酸の組み合わせが好ましく、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、モンタン酸と、その金属塩(例えばLi、Na、Mg、K、Ca、Al、Ba、Zn)との組み合わせがより好ましい。
【0037】
さらに、滑剤(A群)と有機酸(B群)としてはこれらの中のうちそれぞれ1種を用いても良いし、それぞれ2種以上を用いても良い。
【0038】
混合の形態としては、滑剤(A群)、有機酸(B群)を各々直接に脂肪族ポリエステル中に添加してもよく、あらかじめ両者を溶融混合して均一化しておいてもよく、有機酸(B群)を中和して幾分か金属塩にしたものを用いてもよいが、よりポリマー中で早く均一化させることを考慮すると、あらかじめ溶融混合しておくか、中和により幾分か金属塩にしたものを用いるのが好ましい。
【0039】
あらかじめ溶融混合して均一化する方法としては、各々の金属塩の融点以上で均一化することが好ましく、いかなる混合装置、加熱装置を用いてもかまわない。混合物の色調が気になる場合は、窒素気流下で行うことが好ましい。
【0040】
中和により幾分か金属塩にする方法としては、例えばステアリン酸カルシウムの場合は、ステアリン酸溶液に所定量の水酸化カルシウム溶液を加えることで達成できるし、ダイワックス(大日化学工業)のような一部カルシウムで中和された市販製品を用いることもできる。
【0041】
滑剤(A群)と有機酸(B群)の質量割合の範囲は、上限値が80:20、好ましくは75:25、さらに好ましくは70:30であり、下限値が10:90、好ましくは15:85、好ましくは20:80である。滑剤(A群)が80%を超えた場合は、有機酸(B群)の効果が希薄であり、均一に混合・分散するには混練能力の非常に大きい混練機を必要とし、滑剤(A群)が両者の合計の10%未満である場合は滑剤(A群)の効果が希薄となる。
【0042】
上記混合物の添加するタイミングは、前記いずれの重合形態によるかで変わってくるが、本発明の方法を用いれば、どの粘度範囲でも均一に混合・分散することは可能であるが、操作上、初期の原料仕込み時、脱グリコール反応開始時、架橋剤添加時、反応器から抜き出し直前、一軸や二軸による混練時、成形時それぞれの工程のくぎりの段階での添加が好ましい。
【0043】
より好ましくは、初期の原料仕込み時、脱グリコール反応開始時、架橋剤添加時、反応器から抜き出し直前のように製品として抜き出す前が最も効率が良い。
【0044】
添加するタイミング時の脂肪族ポリエステルの重量平均分子量の下限値としては、2,000以上、好ましくは3,000以上、より好ましくは5,000以上である。上限値としては300,000以下、好ましくは200,000以下、より好ましくは100,000以下である。2,000未満ではポリエステルを構成する有機酸が存在することや粘度面でも本発明の効果なくして均一に混合・分散できることが可能である。
【0045】
また、イソシアネートジャンプする際には滑剤の添加で分子量が増加するため、鎖延長剤添加前に添加することがより好ましい。
【0046】
さらに、前記イソシアネート反応を行うに当たり、本発明における2成分を添加した際、イソシアネートによるジャンプ効率がよくなることも確認された。この結果、イソシアネート添加前の一般に反応が遅いとされている脱グリコール工程の時間を短時間にすることにより、全工程での時間短縮が達成できる可能性がある。
【0047】
このようにして滑剤を均一に混合・分散させて得られた高分子量脂肪族ポリエステル、あるいはさらにイソシアネートなどの鎖延長剤によりさらに高分子量化されたポリエステルは、押し出し成形、射出成形、中空成形、真空成形等の通常の成型方法に適用することができ、各種部品、容器、資材、器具、フィルム、シート、繊維等の成型品とすることができる。
【0048】
【参考例】
ステアリン酸カルシウムおよびステアリン酸マグネシウムにステアリン酸を添加し、粘度低下の挙動を調べた。
【0049】
(樹脂粘度)
粘度測定器(BROOKFIELD製「DV−III+RHEOMETER」)を用い、スピンドル番号SC4−21、10rpmで試料8.0gの180℃における溶融粘度を測定した。
【0050】
(参考例1)
ステアリン酸カルシウムおよびステアリン酸を粘度測定用セルに所定の比率で仕込み、180℃で一旦溶融均一化させた。この固化サンプルを再度180℃で溶融し、その時の溶融時間、溶融粘度を測定した。結果を表1に示す。
【0051】
(参考例2)
ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸を粘度測定用セルに所定の比率で仕込み、180℃で一旦溶融均一化させた。この固化サンプルを再度180℃で溶融し、その時の溶融時間、溶融粘度を測定した。結果を表2に示す。
【0052】
以上のように、単独では融点以上の温度でも粘度が高く樹脂状のステアリン酸金属塩に、ステアリン酸を添加することにより、粘度降下が見られ、任意の粘度に調節することが可能になることが判明した。
【0053】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0054】
(DSC測定)
セイコーDSC220を用い、試料約10mgを200℃まで昇温し、200℃で5分保持した後、10℃/minで−40℃まで降温した時の結晶化ピーク温度(Tc)、および結晶化ピーク面積(ΔH)を測定した。
【0055】
(重量平均分子量)
試料をクロロホルムに溶解させて1%溶液とし、ゲルパーミエーションクロマトグラフを用いてポリスチレン換算の重量平均分子量を測定した。
【0056】
(成形性評価)
試料約5gを180℃で、100kgf/cm2で1分、150kgf/cm2で2分加圧することにより、圧縮成形を行い、その成形均一性を評価した。
【0057】
成形性は以下のように評価した。
A:均一に円形のシートが得られた場合。
B:滑剤の分散不良により流れが悪く花弁状のシートが得られた場合。
C:結晶化速度が遅く生産性が悪い場合。
【0058】
(製造例)
100LのSUS製反応器にコハク酸49.0kgおよびエチレングリコール26.45kg、チタンテトライソプロポキシド0.0076kg、トリメチロールプロパン0.111kgを加え、窒素置換を行った。次いで窒素ブローのもと撹拌下に樹脂温度130−220℃で、5時間かけてエステル化反応をおこなった。引き続いて樹脂温度220℃、9.3kPaの減圧下で1時間反応をおこない、エステル化反応を促進させた。
【0059】
この低分子量ポリエステルを減圧下、樹脂温度220℃で、5時間かけて脱グリコール反応を行った。その結果重量平均分子量(Mw)が55,100の脂肪族ポリエステルを得た。
【0060】
(実施例1)
300mLのガラス製反応器に製造例で作成した脂肪族ポリエステル100gを加え、窒素置換を行った。次いで窒素ブローのもと180℃のオイルバスに浸漬し、上記ポリエステルが溶解後、亜リン酸を0.01g添加し、10分間撹拌を行った。その後、酸化防止剤としてIrganox1010(チバガイギー社)を0.05g、ステアリン酸カルシウム(和光純薬工業:A群)を0.03g、ステアリン酸(和光純薬工業:B群)を0.07g(脂肪族ポリエステルに対してA群、B群の合計0.1質量%)各々添加し、5分間撹拌を行った。その後5分間減圧を行い、再び窒素ブローのもとヘキサメチレンジイソシアネートを0.9g添加した。その後1時間撹拌し、7時間静置した。このようにして得られた樹脂のDSC測定結果および成形性の結果を表3に示す。
【0061】
(実施例2)
A群、B群を成分として有する、ダイワックスCS55(大日化学工業:カルシウム中和度からA群は60%、B群は40%)を0.3g(脂肪族ポリエステルに対して0.3質量%)用いた他は実施例1と同様にしてポリエステルを得た。このようにして得られた樹脂のDSC測定結果および成形性の結果を表3に示す。
【0062】
(比較例1)
A群成分しか含まないダイワックスC(大日化学工業:カルシウム中和度からA群は100%、B群は0%)を用い、ヘキサメチレンジイソシアネートを1.0g添加した他は実施例1と同様にしてポリエステルを得た。このようにして得られた樹脂のDSC測定結果および成形性の結果を表4に示す。
【0063】
(比較例2)
300mLのガラス製反応器にコハク酸100.38gおよびエチレングリコール55.34g、チタンテトライソプロポキシド0.014g、トリメチロールプロパン0.342gを加え、窒素置換を行った。次いで窒素ブローのもと撹拌下に樹脂温度220℃で、1.5時間かけてエステル化反応をおこなった。引き続いて樹脂温度220℃、6.6kPaの減圧下で1.5時間反応をおこない、エステル化反応を促進させた。
【0064】
この低分子量ポリエステルを減圧下、樹脂温度220℃で、7時間かけて脱グリコール反応を行った。その結果重量平均分子量(Mw)が53,900の脂肪族ポリエステルを得た。
【0065】
引き続き、窒素ブローのもと樹脂温度180℃まで降温し、亜リン酸を0.012g、酸化防止剤としてIrganox1010を0.06g添加し、10分間撹拌を行った。その後、5分間減圧を行い、再び窒素ブローのもとヘキサメチレンジイソシアネートを1.38g添加後15分撹拌した後、7時間45分静置した。このようにして得られた樹脂のDSC測定結果および成形性の結果を表4に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
【表4】
【0070】
本実施例において下記効果が確認された。
比較例と比べて均一に分散・混合されている。
比較例2と比べてイソシアネートジャンプ効率が高い。
【0071】
【発明の効果】
本発明によれば、生分解性を有する高分子量脂肪族ポリエステルを、汎用の装置を用いることができる実用的な条件で、高収率かつ工業的に効率よく、かつ経済的に製造することができる。
【0072】
本発明で得られる脂肪族ポリエステルは、比較的高分子量で高融点のものであるため、フィルムやシート等への成型加工が容易となり、成形品としての耐久性にもすぐれている。したがって、本発明で得られる高分子量脂肪族ポリエステルは、使い捨ての包装材料や日用雑貨品等に有効に使用できる。
Claims (4)
- 脂肪族ポリエステルの製造方法において、滑剤(A群)と有機酸(B群)の2成分を添加することを特徴とする脂肪族ポリエステルの製造方法。
- 前記滑剤(A群)が有機脂肪酸の金属塩、前記有機酸(B群)が脂肪酸、であることを特徴とする請求項1記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
- 滑剤(A群)と有機酸(B群)の質量割合が80:20〜10:90であることを特徴とする請求項1または2記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
- 滑剤(A群)、有機酸(B群)の添加するタイミングが、脂肪族ポリエステルの重量平均分子量(Mw)が2,000以上、300,000以下の時に添加することを特徴とする請求項1〜3記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003130324A JP2004331836A (ja) | 2003-05-08 | 2003-05-08 | 脂肪族ポリエステルの製造方法 |
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JP2003130324A JP2004331836A (ja) | 2003-05-08 | 2003-05-08 | 脂肪族ポリエステルの製造方法 |
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JP (1) | JP2004331836A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2015155182A (ja) * | 2014-02-21 | 2015-08-27 | 三菱樹脂株式会社 | ポリエステル多層成形体 |
-
2003
- 2003-05-08 JP JP2003130324A patent/JP2004331836A/ja active Pending
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