JP2004331605A - ヨウ素安定化担体、水溶性固体防殺菌剤組成物及び水溶性固体防殺菌剤組成物の製造方法 - Google Patents

ヨウ素安定化担体、水溶性固体防殺菌剤組成物及び水溶性固体防殺菌剤組成物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、ヨウ素臭がなく、安価な水溶性固体防殺菌剤組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】防殺菌効果を有する水溶性固体防殺菌剤組成物であって、二糖類にヨウ素を担持させて構成されているものである。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヨウ素安定化担体、水溶性固体防殺菌剤組成物及び水溶性固体防殺菌剤組成物の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
ヨウ素が防殺菌剤として効果のあることは、従来から知られている。また、ヨウ素の水への溶解度は0.018g/100ml(20℃,1atm)と低いことから、ヨウ化アルカリによるI存在下でヨウ素をI として溶解する方法も知られている。
【0003】
ところで、ヨウ素含有の防殺菌剤はヨウ素が蒸発し易く、取り扱い時に毒性が生じるという欠点を有している。
【0004】
従って、ヨウ素の蒸発を抑えることを目的としてヨウ素安定化担体を用いる方法があり、例えば、一般的に用いられる水溶液ポリマーであるポリビニルピロリドンは不添加と比較して臭気の大幅な減少は認められるものの十分ではなく、また、価格も高いことから経済的にも満足するものではない。
【0005】
上述のポリビニルピロリドン以外にもアミノ酸を用いる方法(特開昭56−77209)、尿素を用いる方法(特開平9−59165)等が報告されている。
【0006】
しかしながら、これらはいずれも不添加の場合と比較してヨウ素の蒸発による臭気の減少は認められるものの、未だ十分ではない。
【0007】
本発明は安価で、且つヨウ素の蒸発を可及的に抑制したヨウ素安定化担体、水溶性固体防殺菌剤組成物及び水溶性固体防殺菌剤組成物の製造方法を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨を説明する。
【0009】
ヨウ素を安定化させるものであって、二糖類で構成されていることを特徴とするヨウ素安定化担体に係るものである。
【0010】
また、防殺菌効果を有するものであって、二糖類にヨウ素を担持させて構成されていることを特徴とする水溶性固体防殺菌剤組成物に係るものである。
【0011】
また、防殺菌効果を有する水溶性固体防殺菌剤組成物の製造方法であって、水若しくはエタノールなどの有機溶媒で溶解したヨウ化アルカリにヨウ素を溶解し、この溶液を二糖類と混合した後、水若しくは有機溶媒を除去することを特徴とする水溶性固体防殺菌剤組成物の製造方法に係るものである。
【0012】
また、請求項3記載の水溶性固体防殺菌剤組成物の製造方法において、酸とともに二糖類と混合をすることを特徴とする水溶性固体防殺菌剤組成物の製造方法に係るものである。
【0013】
また、請求項4記載の水溶性固体防殺菌剤組成物の製造方法において、酸は、ヨウ素に対して1〜100重量%の範囲で添加することを特徴とする水溶性固体防殺菌剤組成物の製造方法に係るものである。
【0014】
また、請求項4,5いずれか1項に記載の水溶性固体防殺菌剤組成物の製造方法において、酸として、リン酸、シュウ酸、クエン酸若しくはその酸性塩を採用することを特徴とする水溶性固体防殺菌剤組成物の製造方法に係るものである。
【0015】
また、請求項3〜6いずれか1項に記載の防殺菌剤組成物の製造方法において、二糖類として、トレハロース若しくはマルトースを採用することを特徴とする水溶性固体防殺菌剤組成物の製造方法に係るものである。
【0016】
また、請求項3〜7いずれか1項に記載の水溶性固体防殺菌剤組成物の製造方法において、ヨウ素は、二糖類に対し、1〜20%(重量)であることを特徴とする水溶性固体防殺菌剤組成物の製造方法に係るものである。
【0017】
また、請求項3〜8いずれか1項に記載の水溶性固体防殺菌剤組成物の製造方法において、ヨウ化アルカリとして、濃度をヨウ素に対するモル比で0.5〜2の範囲のヨウ化アルカリを採用することを特徴とする水溶性固体防殺菌剤組成物の製造方法に係るものである。
【0018】
また、請求項3〜9いずれか1項に記載の水溶性固体防殺菌剤組成物の製造方法において、ヨウ化アルカリとして、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム若しくはヨウ化カリウムを採用することを特徴とする水溶性固体防殺菌剤組成物の製造方法に係るものである。
【0019】
また、請求項10記載の水溶性固体防殺菌剤組成物の製造方法において、ヨウ化アルカリとして、電気透析で分離したヨウ化ナトリウム水溶液を採用することを特徴とする水溶性固体防殺菌剤組成物の製造方法に係るものである。
【0020】
【発明の作用及び効果】
ヨウ素を二糖類に担持させるとヨウ素は安定化する。ヨウ素と二糖類との結合の詳細は不明であるが、ヨウ素が安定化することを実験により確認した。請求項1はこの点の実験結果を請求項としてまとめたものである。
【0021】
また、Iが殺菌作用を有し、Iが殺菌作用を有しないことは周知である。ところで、Iが不安定であるため、Iを安定させることで蒸発を防ぎ、臭気のない防殺菌剤を得るべくIにヨウ化アルカリを添加してIを溶解し、この溶解したIを二糖類に担持させることで、Iが安定状態の、即ち、臭気のない水溶性固体防殺菌剤が得られた。請求項2,3はこの点の実験結果を請求項としてまとめたものである。
【0022】
本発明によれば、ヨウ素臭が可及的に抑制され且つ安価な水溶性固体防殺菌剤組成物を得ることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
請求項1記載の発明によれば、二糖類によってヨウ素は安定化され、ヨウ素臭は抑制される。
【0024】
また、請求項2記載の発明によれば、二糖類によってヨウ素は安定化され、ヨウ素臭が抑制された水溶性固体防殺菌剤組成物となる。
【0025】
また、請求項3,4の発明によれば、水若しくはエタノールなどの有機溶媒で溶解したヨウ化アルカリにヨウ素を溶解し、この溶液を二糖類と混合した後、水あるいは有機溶媒を減圧留去あるいは噴霧乾燥等により除去することにより極めて安定し且つ価格も安価な水溶性固体防殺菌剤組成物が得られる。
【0026】
必要に応じて酸を添加する。ヨウ素は、pHいかんで様々なイオンに変化するが、酸を添加することによって、ヨウ素は最も防殺菌効果の高い二原子ヨウ素になり易くなるからである。
【0027】
本発明でヨウ化アルカリを溶解するために用いられる有機溶媒は、特に限定されるものではなく、通常は安価であることからアルコール類が望ましい。
【0028】
また、請求項5,6記載の発明によれば、酸は、ヨウ素に対して1〜100重量%の範囲で添加を行う。酸を100重量%以上加えると経済的ではないことから好ましくない。
【0029】
また、添加する酸は、リン酸、シュウ酸、クエン酸、若しくはその酸性塩等、いずれでもよい。
【0030】
また、請求項7記載の発明によれば、二糖類類は、トレハロース若しくはマルトースが好ましい。これらは安価であり、経済性に秀れ、且つ得られる製品のベタつきも少なくなるからである。
【0031】
また、請求項8記載の発明によれば、ヨウ素は、二糖類に対して1〜20%(重量)であることが望ましい。ヨウ素は多いとヨウ素の安定性が悪く、ヨウ素の蒸発が生じ、少ないと有効ヨウ素に対する二糖類の使用量が相対的に多くなり、経済的でないことから、ヨウ素は二糖類に対して1〜20重量%の範囲である。
【0032】
また、請求項9〜11記載の発明によれば、ヨウ化アルカリはヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、若しくはヨウ化カリウムである。中でも、ブローイングアウト法により製造したヨウ素の吸収液や有機ヨウ素化合物を酸若しくはアルカリで加水分解して得たヨウ素含有液よりも電気透析で分離したヨウ化ナトリウム水溶液をそのままあるいは濃縮して用いることが最も経済的で好ましい。
【0033】
また、ヨウ化アルカリの量は、少ないとヨウ素の溶解性が悪く、多いと経済的ではないことから、ヨウ素に対するモル比で0.5〜2の範囲、通常は0.8〜1.5である。
【0034】
尚、本発明に係る水溶性固体防殺菌剤組成物には香料等、ヨードホールに使用される各種添加剤を更に加えてもよい。
【0035】
以上の水溶性固体防殺菌剤組成物は極めて安定であり遊離ヨウ素による臭気は殆どなく、使用時に水へ溶解され、液中にヨウ素を遊離させることができる。また、担体としてポリビニルピロリドン、アミノ酸、尿素等を用いたヨウ素系水溶性固体防殺菌剤と比較して同等の殺菌効果があり、且つ安定化担体として安価な二糖類を用いることで経済的にも満足のいくものとなる。
【0036】
【実施例】
本発明の具体的な実施例について説明する。各実施例から、所期の効果が得られることが確認できる。
【0037】
実施例1
ヨウ化ナトリウムを少量のメタノールに溶解した後、ヨウ素を加え溶解した。次いで、第1リン酸ナトリウムおよびトレハロースを添加しよく混合後、減圧乾燥にてメタノールを留去し、下記組成の水溶性固体防殺菌剤組成物を得た。
【0038】
トレハロース 72.5重量%
ヨウ素 10.0重量%
ヨウ化ナトリウム 10.0重量%
第1リン酸ナトリウム 7.5重量%
臭気 ほとんど無臭
【0039】
実施例2
ヨウ化カリウムを少量の水に加え溶解した。次いでクエン酸およびマルトースを添加し良く混合後、減圧乾燥にて水を留去し、下記の水溶性固体防殺菌剤組成物を得た。
【0040】
マルトース 67.0重量%
ヨウ素 15.0重量%
ヨウ化カリウム 15.0重量%
クエン酸 3.0重量%
臭気 ほとんど無臭
【0041】
比較例1
ヨウ化カリウムを少量の水に加え溶解した。次いで第1リン酸ナトリウムおよびグリシンを添加し良く混合後、減圧乾燥にて水を留去し、下記の水溶性固体防殺菌剤組成物を得た。
【0042】
グリシン 62.5重量%
ヨウ素 15.0重量%
ヨウ化カリウム 15.0重量%
第1リン酸ナトリウム 7.5重量%
臭気 わずかにヨウ素臭
【0043】
比較例2
ヨウ化カリウムを少量の水に加え溶解した。次いで第1リン酸ナトリウムおよび尿素を添加し良く混合後、減圧乾燥にて水を留去し、下記の水溶性固体防殺菌剤組成物を得た。
【0044】
尿素 62.5重量%
ヨウ素 15.0重量%
ヨウ化カリウム 15.0重量%
第1リン酸ナトリウム 7.5重量%
臭気 1ヶ月経過で刺激臭発生
【0045】
以上の本実施例の水溶性固体防殺菌剤組成物は、例えば医療、酪農、食品加工、環境衛生など各分野における防殺菌剤に使用される。

Claims (11)

  1. ヨウ素を安定化させるものであって、二糖類で構成されていることを特徴とするヨウ素安定化担体。
  2. 防殺菌効果を有するものであって、二糖類にヨウ素を担持させて構成されていることを特徴とする水溶性固体防殺菌剤組成物。
  3. 防殺菌効果を有する水溶性固体防殺菌剤組成物の製造方法であって、水若しくはエタノールなどの有機溶媒で溶解したヨウ化アルカリにヨウ素を溶解し、この溶液を二糖類と混合した後、水若しくは有機溶媒を除去することを特徴とする水溶性固体防殺菌剤組成物の製造方法。
  4. 請求項3記載の水溶性固体防殺菌剤組成物の製造方法において、酸とともに二糖類と混合をすることを特徴とする水溶性固体防殺菌剤組成物の製造方法。
  5. 請求項4記載の水溶性固体防殺菌剤組成物の製造方法において、酸は、ヨウ素に対して1〜100重量%の範囲で添加することを特徴とする水溶性固体防殺菌剤組成物の製造方法。
  6. 請求項4,5いずれか1項に記載の水溶性固体防殺菌剤組成物の製造方法において、酸として、リン酸、シュウ酸、クエン酸若しくはその酸性塩を採用することを特徴とする水溶性固体防殺菌剤組成物の製造方法。
  7. 請求項3〜6いずれか1項に記載の防殺菌剤組成物の製造方法において、二糖類として、トレハロース若しくはマルトースを採用することを特徴とする水溶性固体防殺菌剤組成物の製造方法。
  8. 請求項3〜7いずれか1項に記載の水溶性固体防殺菌剤組成物の製造方法において、ヨウ素は、二糖類に対し、1〜20%(重量)であることを特徴とする水溶性固体防殺菌剤組成物の製造方法。
  9. 請求項3〜8いずれか1項に記載の水溶性固体防殺菌剤組成物の製造方法において、ヨウ化アルカリとして、濃度をヨウ素に対するモル比で0.5〜2の範囲のヨウ化アルカリを採用することを特徴とする水溶性固体防殺菌剤組成物の製造方法。
  10. 請求項3〜9いずれか1項に記載の水溶性固体防殺菌剤組成物の製造方法において、ヨウ化アルカリとして、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム若しくはヨウ化カリウムを採用することを特徴とする水溶性固体防殺菌剤組成物の製造方法。
  11. 請求項10記載の水溶性固体防殺菌剤組成物の製造方法において、ヨウ化アルカリとして、電気透析で分離したヨウ化ナトリウム水溶液を採用することを特徴とする水溶性固体防殺菌剤組成物の製造方法。
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