JP2004330297A - 真円度に優れた鋼管を得るための鋼管矯正方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】特にベアリングレースやその他に使用される切断リングの内外面の旋削加工時に残留応力歪みによる寸法変形の少ない継目無鋼管の低残留応力矯正方法を提供する。
【解決手段】継目無鋼管を冷間加工により成形し、次いで焼鈍した後、多ロール矯正機にて矯正する際、オフセット量12mm以上、クラッシュ量0.6mm以下とする矯正を行う継目無鋼管の低残留応力矯正方法。上記矯正において、多ロール矯正時に生じる変化量が軸方向歪を2.0%以上、周方向歪を10.0%以下とすること、さらに、外径/肉厚が13以上の薄肉鋼管を矯正することを特徴とする上記記載の継目無鋼管の低残留応力矯正方法。
【選択図】 図3
【解決手段】継目無鋼管を冷間加工により成形し、次いで焼鈍した後、多ロール矯正機にて矯正する際、オフセット量12mm以上、クラッシュ量0.6mm以下とする矯正を行う継目無鋼管の低残留応力矯正方法。上記矯正において、多ロール矯正時に生じる変化量が軸方向歪を2.0%以上、周方向歪を10.0%以下とすること、さらに、外径/肉厚が13以上の薄肉鋼管を矯正することを特徴とする上記記載の継目無鋼管の低残留応力矯正方法。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、真円度に優れた鋼管を得るための鋼管の矯正方法に関し、特にベアリングレースやその他に使用される切断リングの内外面の旋削加工時に残留応力歪みによる寸法変形の少ない継目無鋼管の低残留応力矯正方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、マンネスマン法や押出法により製造されたものを冷間加工(コールドピルガー)により、さらに精度の良い継目無鋼管を製造する際、冷間加工後の曲がりや焼鈍後の曲がりを矯正する必要があり、あるいは断面が真円度不良で楕円形状に成形されたものを改善するために矯正を行う必要がある。この継目無鋼管の矯正は、例えば、従来工程では継目無鋼管を冷間加工により成形し、次いで焼鈍した後、対向式ストレートナの多ロール矯正機により矯正を行い、この矯正した継目無鋼管をユーザー側で切断して旋削加工をし、仕上げ検査をしている。
【0003】
この場合、焼鈍後の曲がりを真直ぐに矯正するためには強い矯正力を必要とする。しかし、強い矯正を行い継目無鋼管を真直ぐにすると、矯正による残留応力を製品の鋼管に内在させてしまうこととなる。特に外径と肉厚比、すなわち、外径/肉厚が13以上の薄肉の製品に関しては、ユーザー側でのベアリングレースなどのリング内外面の旋削加工時に、この矯正時の残留応力による歪みの影響で真円度不良が発生する。この結果、ユーザー側にて内外面の旋削加工時の矯正による残留応力により変形が生じて寸法変化のため旋削回数が増加するなどの問題がある。
【0004】
上記のような問題を解決するために、例えば特開昭55−103222号公報(特許文献1)が提案されている。この方法はオーステナイト系ステンレス継目無鋼管を固溶化熱処理後他ロール矯正するに際し、被矯正材に与えられるクラッシュ量とオフセット量の矯正条件下で矯正を行うことにより被矯正材の外面円周方向残留応力を零または圧縮応力とする耐応力腐食割れ性オーステナイト系ステンレス継目無鋼管の製造方法が開示されている。
【0005】
また、特開平10−137850号公報(特許文献2)が提案されている。この方法は2ロールラインコンタクトタイプ矯正機を使用して、スリット幅が減少傾向を示し真円度が確保出来る範囲で、かつ、合格上限スリット幅増大値に達した点の上下ロール荷重電流値を超える上下ロール荷重電流値を最適条件として矯正する継目無鋼管の低残留歪み矯正方法が開示されている。さらには、特開平11−290947号公報(特許文献3)が提案されている。この方法は隣り合うロール対同士の間隔を、矯正すべき丸パイプまたは丸棒の外径に対応させた最適値に設定しておく丸パイプまたは丸棒の矯正方法が開示されている。
【0006】
【引用文献】
(1)特許文献1(特開昭55−103222号公報)
(2)特許文献2(特開平10−137850号公報)
(3)特許文献3(特開平11−290947号公報)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の方法では、被矯正材の外面円周方向残留応力を零または圧縮応力とすることで、耐応力腐食割れ性オーステナイト系ステンレス継目無鋼管を製造することは可能であるが、内面円周方向および軸方向の歪みを除去することが出来ず、特に外径/肉厚が13以上の薄肉の製品に関しての残留応力による歪みの影響を十分に排除するまでに到っていない。そのために、ユーザー側にて内外面の旋削加工時の矯正による残留応力により変形が生じて寸法変化のため旋削回数が増加するなどの問題が発生している。
【0008】
また、上述した特許文献2または3に記載の方法によれば、かなり残留歪みを低減することは可能であるが、しかし、内面円周方向および軸方向の歪みを除去することが出来ず、特に外径/肉厚が13以上の薄肉の製品に関しての残留応力による歪みの影響を十分に排除するまでに到っていない。そのために、ユーザー側にて内外面の旋削加工時の矯正による残留応力により変形が生じて寸法変化のため旋削回数が増加するなどの問題が発生しているのが実状である。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述のような問題を解消するために、発明者らは鋭意開発を進めた結果、残留歪を蓄積しやすい多ロール矯正機のセットアップ条件を変更することで、残留歪を低減し優れた真円度を改善する継目無鋼管の低残留応力矯正方法を提供するものである。その発明の要旨とするところは、
(1)鋼管矯正にて残留歪を低減させる方法において、鋼管を冷間加工により成形し、次いで焼鈍した後、多ロール矯正機にて矯正する際、オフセット量12mm以上、クラッシュ量0.6mm以下とする矯正を行うことを特徴とする真円度に優れた鋼管を得るための鋼管矯正方法。
【0010】
(2)前記(1)に記載の矯正において、多ロール矯正時に生じる変形量が軸方向歪を2.0%以上、周方向歪を10.0%以下とすることを特徴とする真円度に優れた鋼管を得るための鋼管矯正方法。
(3)外径/肉厚が13以上の薄肉鋼管を矯正することを特徴とする前記(1)または(2)に記載の真円度に優れた鋼管を得るための鋼管矯正方法にある。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について図面に従って詳細に説明する。
図1は、多ロール矯正機での被矯正材の矯正中の歪み履歴を示した図である。この図に示すように、対向式ストレートナの多ロール矯正機1は曲げとクラッシュによって継目無鋼管2を矯正する場合に、CAE解析により得られた多ロール矯正機における矯正中の歪み履歴であって、実線はオフセットによって生じる曲げによる軸方向歪みを示し、この歪の繰り返し波形のピーク値は、No.1スタンド3からNo.2スタンド4に向かって増大し、No.2スタンド4の中央で最大に達し、その後No.2スタンド4からNo.3スタンド5に向かって減少する。
【0012】
一方、一点斜線はクラッシュによる周方向歪みを表し、各ロール中央点前後で増減過程の歪み履歴となる。このように材料の一点に注目すれば、繰り返しの引張圧縮変形となっており、鋼管の受ける曲げの方向は全方向に及ぶことから、曲がりや楕円の矯正が可能となる。そこで継目無鋼管2の残留応力を小さくするためには、単に矯正時のクラッシュ量を小さくするだけでは塑性変形が不十分で真直ぐには伸びない。しかし、オフセット量を従来のセッティングより大きくとることにより、矯正時の曲げによる塑性変形を生じさせることができるため、必然的に小さなクラッシュ量で矯正することができる。
【0013】
鋼管断面のある1点に注目して矯正時の歪を追跡すると、オフセットに対しては軸方向、クラッシュに対しては周方向の引張りと圧縮の繰り返し変形となっている。また、優れた真円度を得られる多ロール矯正機のセットアップ条件における矯正時の歪履歴を調査した結果、軸方向歪が2.0%以上、周方向歪が10.0%以下となることが分かった。矯正時の歪履歴は、CAE解析を用いて、ロールプロフィール、ロール回転速度、ロール間距離、摩擦係数、鋼管の変形抵抗(バウジンガー効果を考慮)および多ロール矯正機のセットアップ条件を入力データとして非定常変形解析を実施し、得られた結果より鋼管内面における任意に1点の歪履歴を求めた。
【0014】
実操業時では矯正時の歪履歴を測定することは難しいため、上記条件が達成されたかどうか判断する指標として矯正後の鋼管より採取した切断リングを用いてスリット試験により残留歪を測定した。図2は、本発明に係るスリット試験片を示す図である。この図に示すように、矯正後の鋼管より採取した切断リング幅20mmのものを用いて外径変化率を測定した。種々の実験の結果、本発明の条件を満たす矯正が行えた場合、スリット試験による外径変化率は1.0%以下となることを確認した。上記理由は、矯正中に蓄積した残留歪が大きく影響していることから、切断リングの真円度向上には残留歪低減が有効であることを示している。従って、切断リングで優れた真円度を得るためには、スリット試験により外径変化率を1.2%以下、好ましくは1.0%以下としなければならない。このためには、軸方向歪2%以上、好ましくは3%以上、周方向歪10%以下、好ましくは8%以下とする必要がある。
【0015】
図3は、本発明に係る継目無鋼管の残留応力を小さくするための矯正法の概略説明図である。図3(a)は従来の矯正法を示し、図3(b)は本発明の矯正法を示す。この図3(a)に示すように、従来の矯正法においては、No.1スタンド3からNo.2スタンド4に向かってのオフセット量δ0 が小さく、クラッシュ量δC を大きくとっていた。これに対し、図3(b)に示すように、残留応力を小さくするために、単にクラッシュ量δC を小さくするだけでは塑性変形が不十分で伸直度も得られないため、オフセット量δ0 を大きくとることにより、矯正時に塑性変形を生じさせて矯正する。そうすることにより必然的に小さいクラッシュ量δC で鋼管を矯正することが出来、残留応力も残留することなく伸直度を得ることができる。
【0016】
具体的には、オフセット量δ0 を12mm以上、クラッシュ0.6mm以下とする矯正を行うものである。オフセット量δ0 が12mm未満では、矯正時に塑性変形を少なく、その下限を12mmとする。また、オフセット量δ0 が12mm以上となると、必然的にクラッシュ0.6mmを超えると矯正は必要でなく、上限値として0.6mmで十分な効果が得られる。従って、その上限を0.6mmとした。また、特に、本発明の場合は、外径/肉厚が13以上の薄肉鋼管を矯正するときに、その効果が大きいことを見出した。
【0017】
【実施例】
外径160mmの管材をアッセル圧延して外径128mm×肉厚15mm(以下、φ128mm×15WTと表す)とし、その後ピルガー圧延機で圧伸して得られたφ90.6×6.2WTなるを、図1に示すような継目無鋼管を冷間加工により成形し、次いで焼鈍した後、対向式ストレートナ多ロール矯正機を用いて矯正するに当たり、表1に示すような外径/肉厚(D/T)の肉厚鋼管を矯正に供した。そのときのオフセット量δ0 およびクラッシュ量δC で行ったときの周方向歪と軸方向歪、および継目無鋼管の矯正後の残留歪みの評価方法は、ユーザーで使用されるのと同じように長尺鋼管を切断し、図2に示すような切断リングの状態での真円度(μm)で評価を行った。この真円度はタリロンド半径測定法で行った。評価としての伸直度は曲がり1mm/m以内:〇、切断リングの真円度はD/1000mm以内:〇(D=直径)で評価した。クラッシュ量はロールを下降させて負荷検知して止まったところを“0”点基準としてクラッシュ設定するものとする。
【0018】
【表1】
【0019】
表1に示すように、No.1〜10は本発明例、No.11〜13は従来例、No.14〜16は比較例である。従来例No.11はD/Tが13未満のもので、この場合は従来矯正でも切断時の真円度に大きな問題はないことを示している。従来例No.12またはNo.13はD/Tを13以上で、その値を変えた場合の従来でのオフセット量10mmとクラッシュ量1.0mm、0.9mm(No.2スタンド)の場合は、いずれも切断時の真円度に問題がある。比較例No.14は単にオフセット量を小さくした場合は、伸直度が得られない。比較例No.15〜16はオフセット量を小さく、かつ、クラッシュ量が大きい場合で、いずれも切断時の真円度に問題がある。これに対し、本発明例であるNo.1〜10はいずれも伸直度、長尺寸法および切断時の真円度も満足した所定の目標値を得ることができた。
【0020】
上記したように、特にD/Tが13以上のものは、従来よりオフセット量を大きくとることにより、小さなクラッシュ量で長尺鋼管の伸直を得る矯正が可能となり、この小さなクラッシュ量の矯正のため、鋼管内部の残留応力も小さくなり切断リングの真円度もD/1000mm以下にすることが可能となる。一方、D/Tがさらに高くなり薄肉になるにつれ(D/T17以上では)、オフセット量を大きく(13mm)とると矯正時に中央部分がふくれやすくなる現象が起こり(長尺寸法で評価)中央部と端部の外径寸法に差ができることがあるため、高D/Tでのオフセット量は、好ましくは12mm以上とすることにより、伸直度の得られた低残留歪み矯正が可能となった。
【0021】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によるオフセット量12mm以上、クラッシュ量0.6mm以下とすることで、長尺鋼管の変形量が軸方向歪が2.0%以上、周方向歪が10.0%以下となり、焼鈍により曲がった鋼管の伸直度および真円度を満足した鋼管を製造することが可能となり、ユーザー側での施削加工をしたときの寸法変化の少ない鋼管を製造することができる極めて優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】多ロール矯正機での被矯正材の矯正中の歪み履歴を示した図である。
【図2】本発明に係るスリット試験片を示す図である。
【図3】本発明に係る継目無鋼管の残留応力を小さくするための矯正法の概略説明図である。
【符号の説明】
1 多ロール矯正機
2 継目無鋼管
3 No.1スタンド
4 No.2スタンド
5 No.3スタンド
【発明の属する技術分野】
本発明は、真円度に優れた鋼管を得るための鋼管の矯正方法に関し、特にベアリングレースやその他に使用される切断リングの内外面の旋削加工時に残留応力歪みによる寸法変形の少ない継目無鋼管の低残留応力矯正方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、マンネスマン法や押出法により製造されたものを冷間加工(コールドピルガー)により、さらに精度の良い継目無鋼管を製造する際、冷間加工後の曲がりや焼鈍後の曲がりを矯正する必要があり、あるいは断面が真円度不良で楕円形状に成形されたものを改善するために矯正を行う必要がある。この継目無鋼管の矯正は、例えば、従来工程では継目無鋼管を冷間加工により成形し、次いで焼鈍した後、対向式ストレートナの多ロール矯正機により矯正を行い、この矯正した継目無鋼管をユーザー側で切断して旋削加工をし、仕上げ検査をしている。
【0003】
この場合、焼鈍後の曲がりを真直ぐに矯正するためには強い矯正力を必要とする。しかし、強い矯正を行い継目無鋼管を真直ぐにすると、矯正による残留応力を製品の鋼管に内在させてしまうこととなる。特に外径と肉厚比、すなわち、外径/肉厚が13以上の薄肉の製品に関しては、ユーザー側でのベアリングレースなどのリング内外面の旋削加工時に、この矯正時の残留応力による歪みの影響で真円度不良が発生する。この結果、ユーザー側にて内外面の旋削加工時の矯正による残留応力により変形が生じて寸法変化のため旋削回数が増加するなどの問題がある。
【0004】
上記のような問題を解決するために、例えば特開昭55−103222号公報(特許文献1)が提案されている。この方法はオーステナイト系ステンレス継目無鋼管を固溶化熱処理後他ロール矯正するに際し、被矯正材に与えられるクラッシュ量とオフセット量の矯正条件下で矯正を行うことにより被矯正材の外面円周方向残留応力を零または圧縮応力とする耐応力腐食割れ性オーステナイト系ステンレス継目無鋼管の製造方法が開示されている。
【0005】
また、特開平10−137850号公報(特許文献2)が提案されている。この方法は2ロールラインコンタクトタイプ矯正機を使用して、スリット幅が減少傾向を示し真円度が確保出来る範囲で、かつ、合格上限スリット幅増大値に達した点の上下ロール荷重電流値を超える上下ロール荷重電流値を最適条件として矯正する継目無鋼管の低残留歪み矯正方法が開示されている。さらには、特開平11−290947号公報(特許文献3)が提案されている。この方法は隣り合うロール対同士の間隔を、矯正すべき丸パイプまたは丸棒の外径に対応させた最適値に設定しておく丸パイプまたは丸棒の矯正方法が開示されている。
【0006】
【引用文献】
(1)特許文献1(特開昭55−103222号公報)
(2)特許文献2(特開平10−137850号公報)
(3)特許文献3(特開平11−290947号公報)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の方法では、被矯正材の外面円周方向残留応力を零または圧縮応力とすることで、耐応力腐食割れ性オーステナイト系ステンレス継目無鋼管を製造することは可能であるが、内面円周方向および軸方向の歪みを除去することが出来ず、特に外径/肉厚が13以上の薄肉の製品に関しての残留応力による歪みの影響を十分に排除するまでに到っていない。そのために、ユーザー側にて内外面の旋削加工時の矯正による残留応力により変形が生じて寸法変化のため旋削回数が増加するなどの問題が発生している。
【0008】
また、上述した特許文献2または3に記載の方法によれば、かなり残留歪みを低減することは可能であるが、しかし、内面円周方向および軸方向の歪みを除去することが出来ず、特に外径/肉厚が13以上の薄肉の製品に関しての残留応力による歪みの影響を十分に排除するまでに到っていない。そのために、ユーザー側にて内外面の旋削加工時の矯正による残留応力により変形が生じて寸法変化のため旋削回数が増加するなどの問題が発生しているのが実状である。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述のような問題を解消するために、発明者らは鋭意開発を進めた結果、残留歪を蓄積しやすい多ロール矯正機のセットアップ条件を変更することで、残留歪を低減し優れた真円度を改善する継目無鋼管の低残留応力矯正方法を提供するものである。その発明の要旨とするところは、
(1)鋼管矯正にて残留歪を低減させる方法において、鋼管を冷間加工により成形し、次いで焼鈍した後、多ロール矯正機にて矯正する際、オフセット量12mm以上、クラッシュ量0.6mm以下とする矯正を行うことを特徴とする真円度に優れた鋼管を得るための鋼管矯正方法。
【0010】
(2)前記(1)に記載の矯正において、多ロール矯正時に生じる変形量が軸方向歪を2.0%以上、周方向歪を10.0%以下とすることを特徴とする真円度に優れた鋼管を得るための鋼管矯正方法。
(3)外径/肉厚が13以上の薄肉鋼管を矯正することを特徴とする前記(1)または(2)に記載の真円度に優れた鋼管を得るための鋼管矯正方法にある。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について図面に従って詳細に説明する。
図1は、多ロール矯正機での被矯正材の矯正中の歪み履歴を示した図である。この図に示すように、対向式ストレートナの多ロール矯正機1は曲げとクラッシュによって継目無鋼管2を矯正する場合に、CAE解析により得られた多ロール矯正機における矯正中の歪み履歴であって、実線はオフセットによって生じる曲げによる軸方向歪みを示し、この歪の繰り返し波形のピーク値は、No.1スタンド3からNo.2スタンド4に向かって増大し、No.2スタンド4の中央で最大に達し、その後No.2スタンド4からNo.3スタンド5に向かって減少する。
【0012】
一方、一点斜線はクラッシュによる周方向歪みを表し、各ロール中央点前後で増減過程の歪み履歴となる。このように材料の一点に注目すれば、繰り返しの引張圧縮変形となっており、鋼管の受ける曲げの方向は全方向に及ぶことから、曲がりや楕円の矯正が可能となる。そこで継目無鋼管2の残留応力を小さくするためには、単に矯正時のクラッシュ量を小さくするだけでは塑性変形が不十分で真直ぐには伸びない。しかし、オフセット量を従来のセッティングより大きくとることにより、矯正時の曲げによる塑性変形を生じさせることができるため、必然的に小さなクラッシュ量で矯正することができる。
【0013】
鋼管断面のある1点に注目して矯正時の歪を追跡すると、オフセットに対しては軸方向、クラッシュに対しては周方向の引張りと圧縮の繰り返し変形となっている。また、優れた真円度を得られる多ロール矯正機のセットアップ条件における矯正時の歪履歴を調査した結果、軸方向歪が2.0%以上、周方向歪が10.0%以下となることが分かった。矯正時の歪履歴は、CAE解析を用いて、ロールプロフィール、ロール回転速度、ロール間距離、摩擦係数、鋼管の変形抵抗(バウジンガー効果を考慮)および多ロール矯正機のセットアップ条件を入力データとして非定常変形解析を実施し、得られた結果より鋼管内面における任意に1点の歪履歴を求めた。
【0014】
実操業時では矯正時の歪履歴を測定することは難しいため、上記条件が達成されたかどうか判断する指標として矯正後の鋼管より採取した切断リングを用いてスリット試験により残留歪を測定した。図2は、本発明に係るスリット試験片を示す図である。この図に示すように、矯正後の鋼管より採取した切断リング幅20mmのものを用いて外径変化率を測定した。種々の実験の結果、本発明の条件を満たす矯正が行えた場合、スリット試験による外径変化率は1.0%以下となることを確認した。上記理由は、矯正中に蓄積した残留歪が大きく影響していることから、切断リングの真円度向上には残留歪低減が有効であることを示している。従って、切断リングで優れた真円度を得るためには、スリット試験により外径変化率を1.2%以下、好ましくは1.0%以下としなければならない。このためには、軸方向歪2%以上、好ましくは3%以上、周方向歪10%以下、好ましくは8%以下とする必要がある。
【0015】
図3は、本発明に係る継目無鋼管の残留応力を小さくするための矯正法の概略説明図である。図3(a)は従来の矯正法を示し、図3(b)は本発明の矯正法を示す。この図3(a)に示すように、従来の矯正法においては、No.1スタンド3からNo.2スタンド4に向かってのオフセット量δ0 が小さく、クラッシュ量δC を大きくとっていた。これに対し、図3(b)に示すように、残留応力を小さくするために、単にクラッシュ量δC を小さくするだけでは塑性変形が不十分で伸直度も得られないため、オフセット量δ0 を大きくとることにより、矯正時に塑性変形を生じさせて矯正する。そうすることにより必然的に小さいクラッシュ量δC で鋼管を矯正することが出来、残留応力も残留することなく伸直度を得ることができる。
【0016】
具体的には、オフセット量δ0 を12mm以上、クラッシュ0.6mm以下とする矯正を行うものである。オフセット量δ0 が12mm未満では、矯正時に塑性変形を少なく、その下限を12mmとする。また、オフセット量δ0 が12mm以上となると、必然的にクラッシュ0.6mmを超えると矯正は必要でなく、上限値として0.6mmで十分な効果が得られる。従って、その上限を0.6mmとした。また、特に、本発明の場合は、外径/肉厚が13以上の薄肉鋼管を矯正するときに、その効果が大きいことを見出した。
【0017】
【実施例】
外径160mmの管材をアッセル圧延して外径128mm×肉厚15mm(以下、φ128mm×15WTと表す)とし、その後ピルガー圧延機で圧伸して得られたφ90.6×6.2WTなるを、図1に示すような継目無鋼管を冷間加工により成形し、次いで焼鈍した後、対向式ストレートナ多ロール矯正機を用いて矯正するに当たり、表1に示すような外径/肉厚(D/T)の肉厚鋼管を矯正に供した。そのときのオフセット量δ0 およびクラッシュ量δC で行ったときの周方向歪と軸方向歪、および継目無鋼管の矯正後の残留歪みの評価方法は、ユーザーで使用されるのと同じように長尺鋼管を切断し、図2に示すような切断リングの状態での真円度(μm)で評価を行った。この真円度はタリロンド半径測定法で行った。評価としての伸直度は曲がり1mm/m以内:〇、切断リングの真円度はD/1000mm以内:〇(D=直径)で評価した。クラッシュ量はロールを下降させて負荷検知して止まったところを“0”点基準としてクラッシュ設定するものとする。
【0018】
【表1】
【0019】
表1に示すように、No.1〜10は本発明例、No.11〜13は従来例、No.14〜16は比較例である。従来例No.11はD/Tが13未満のもので、この場合は従来矯正でも切断時の真円度に大きな問題はないことを示している。従来例No.12またはNo.13はD/Tを13以上で、その値を変えた場合の従来でのオフセット量10mmとクラッシュ量1.0mm、0.9mm(No.2スタンド)の場合は、いずれも切断時の真円度に問題がある。比較例No.14は単にオフセット量を小さくした場合は、伸直度が得られない。比較例No.15〜16はオフセット量を小さく、かつ、クラッシュ量が大きい場合で、いずれも切断時の真円度に問題がある。これに対し、本発明例であるNo.1〜10はいずれも伸直度、長尺寸法および切断時の真円度も満足した所定の目標値を得ることができた。
【0020】
上記したように、特にD/Tが13以上のものは、従来よりオフセット量を大きくとることにより、小さなクラッシュ量で長尺鋼管の伸直を得る矯正が可能となり、この小さなクラッシュ量の矯正のため、鋼管内部の残留応力も小さくなり切断リングの真円度もD/1000mm以下にすることが可能となる。一方、D/Tがさらに高くなり薄肉になるにつれ(D/T17以上では)、オフセット量を大きく(13mm)とると矯正時に中央部分がふくれやすくなる現象が起こり(長尺寸法で評価)中央部と端部の外径寸法に差ができることがあるため、高D/Tでのオフセット量は、好ましくは12mm以上とすることにより、伸直度の得られた低残留歪み矯正が可能となった。
【0021】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によるオフセット量12mm以上、クラッシュ量0.6mm以下とすることで、長尺鋼管の変形量が軸方向歪が2.0%以上、周方向歪が10.0%以下となり、焼鈍により曲がった鋼管の伸直度および真円度を満足した鋼管を製造することが可能となり、ユーザー側での施削加工をしたときの寸法変化の少ない鋼管を製造することができる極めて優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】多ロール矯正機での被矯正材の矯正中の歪み履歴を示した図である。
【図2】本発明に係るスリット試験片を示す図である。
【図3】本発明に係る継目無鋼管の残留応力を小さくするための矯正法の概略説明図である。
【符号の説明】
1 多ロール矯正機
2 継目無鋼管
3 No.1スタンド
4 No.2スタンド
5 No.3スタンド
Claims (3)
- 鋼管矯正にて残留歪を低減させる方法において、鋼管を冷間加工により成形し、次いで焼鈍した後、多ロール矯正機にて矯正する際、オフセット量12mm以上、クラッシュ量0.6mm以下とする矯正を行うことを特徴とする真円度に優れた鋼管を得るための鋼管矯正方法。
- 請求項1に記載の矯正において、多ロール矯正時に生じる変形量が軸方向歪を2.0%以上、周方向歪を10.0%以下とすることを特徴とする真円度に優れた鋼管を得るための鋼管矯正方法。
- 外径/肉厚が13以上の薄肉鋼管を矯正することを特徴とする請求項1または2に記載の真円度に優れた鋼管を得るための鋼管矯正方法。
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2003
- 2003-06-13 JP JP2003169811A patent/JP2004330297A/ja active Pending
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