JP3716763B2 - 継目無鋼管のマンドレルミル圧延方法 - Google Patents

継目無鋼管のマンドレルミル圧延方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、中空素管をマンドレルミルにより延伸圧延する継目無鋼管のマンドレルミル圧延方法に係り、とくに、マンドレルバー引抜き時に発生する内面疵の抑制に関する。
【0002】
【従来の技術】
継目無鋼管は、通常、素材を加熱し、傾斜ロール等を用いた穿孔圧延により素材の軸心を貫通する貫通孔を設けた中空素管とする穿孔圧延工程と、この中空素管(ホロー)にマンドレルミル等により延伸圧延を施しシェルとする延伸圧延工程とを経て、さらにこのシェルにストレッチレデューサー等による圧延を施して製造されている。
【0003】
継目無鋼管の延伸圧延用として用いられるマンドレルミル1は、図1に示すように、互いに対向させた一対の孔型ロール3a,3b を備えた圧延スタンドS1 ,S2 , ‥,Sn を複数台連続して設け、かつ各圧延スタンドのロール回転軸を交互に90°ずつ傾けて配置されている。そして、中空素管(ホロー)4は、マンドレルバー2を挿入した状態で、入側の第1圧延スタンドS1 から最終圧延スタンドSn の間で、孔型ロール3a,3b とマンドレルバー2により延伸圧延されシェルとされる。なお、マンドレルミルには、圧延中、マンドレルバー2を保持するリテインド型と, 保持しないフルフルート型がある。圧延後、マンドレルバー2はシェル5から引き抜かれる。
【0004】
しかし、圧延後の形状が不適切であると、マンドレルバー引抜き時に、シェル内面の一部とマンドレルバーが接触し、筋状の内面疵が生じる場合がある。とくに、熱膨張係数が大きく、また工具(マンドレルバー等) と焼付きやすい、ステンレス鋼等の高合金鋼管の延伸圧延においては、内面疵の発生頻度は極めて高い。
【0005】
このような問題に対し、特開2001-9506 号公報には、マンドレルミルの最終スタンド出側でロール溝底中心位置およびロール溝底中心線に直交する位置で被圧延材 (シェル)の外径を測定し、ロール溝底中心位置でのシェル外径D G 、ロール溝底中心線に直交する位置でのシェル外径D F から得られる外径偏差率D D ( =(D F −D G )/D G ×100 ) を−1.0 〜1.0 の範囲とするように最終スタンドのロール隙間を調整する継目無鋼管製造用マンドレルミル圧延方法が提案されている。この技術によれば、マンドレルバー引抜き時に生じる内面疵を防止でき、品質および歩止りの向上が図れるとしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特開2001-9506 号公報に記載された技術では、最終スタンドのロール隙間を調整することでシェル定常部の内面疵を防止できたとしても、シェル後端部でのマンドレルバーとシェルとのクリアランスを確保できなくなり、シェル後端部で内面疵が発生する場合があり、内面疵を完全には防止できないという問題があった。とくに、マンドレルミルがフルフロート型の場合には、圧延終了後からマンドレルバー引抜き終了までリテインド型よりも時間を要し、そのためシェル熱収縮量が大きくなり、マンドレルバーとシェル後端部とのクリアランスがなくなり引抜きが困難となる場合もあった。
【0007】
本発明は、上記した従来技術の問題を解決し、内面疵の発生を防止できる継目無鋼管のマンドレルミル圧延方法を提案することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記した課題を達成するために、マンドレルミル圧延したシェルについて、内面疵の発生原因について鋭意研究した。その結果、実際に内面疵が多発するのはシェル後端部であり、シェル長手方向の定常部においては内面疵の発生がほとんどないことに気が付いた。内面疵が発生したとしても、軽度で最終製品では問題とならないものであった。そこで、本発明者らは、シェル後端部での内面疵発生原因についてさらに研究した。
【0009】
マンドレルミルでは、隣接する圧延スタンドのロール回転軸が交互に90°ずつ傾けて配置されているため、中空素管は、図2に示すように、隣接する圧延スタンドSn-1 、Sn で交互に90°異なる方向に圧延される。このため、圧延されにくい個所がシェル内面に厚肉凸部を形成する (図2(b)参照)。これは、図2(b)に示すような厚肉凸部であり、ロール底近傍でロール溝底中心位置から約45°のシェル内面の4ヵ所で形成される。このシェル内面の厚肉凸部は、シェル長手方向各位置で同様に発生する。このシェル内面の厚肉凸部の存在により、図3に示すように厚肉凸部では、マンドレルバー2とシェル5のクリアランスが小さくなる。このクリアランスが極めて小さくなりシェル5に焼嵌めされた状態(例えば図3(a))となる場合には、マンドレルバー2が引抜かれる際に内面疵が発生したり, 引き抜きそのものが困難となる場合が考えられる。しかし、シェル長手方向の定常部においては、後端部と同様に、シェル内面の厚肉凸部が形成されるにもかかわらず、内面疵は発生しない。
【0010】
そこで、本発明者らは、長手方向におけるシェル外径の変化が、内面疵発生に大きく影響していると考え、長手方向各位置のシェル外径について調査した。この結果を図4に示す。スタンド間長さに相当する部分で圧縮力を作用させることが不可能なシェル後端部では、圧延スタンド間圧縮力を作用させることができるシェル長手方向の定常部にくらべて、平均外径が小さくなっている。
【0011】
このことから、本発明者らは、シェル後端部では、シェル長手方向の定常部にくらべ、マンドレルバーとシェルのクリアランスを確保できにくくなり、マンドレルバー引抜きに伴う内面疵が多発するものと考えた。すなわち、シェル平均外径、即ちシェル周長を大きく仕上げるような延伸圧延を施すことができれば、マンドレルバーとシェルとのクリアランスを十分に確保することができ、マンドレルバー引抜き時の内面疵を防止できる。
【0012】
そこで、本発明者らは、シェル周長を大きく仕上げ、内面疵を防止できる延伸圧延について、さらに考究した。その結果、マンドレルミルの前段圧延スタンドである、第1圧延スタンドおよび第2圧延スタンドの孔型ロールを、ロール孔型周長が中空素管の周長との比で、所定の関係を満足するロール孔型を有するロールとすることにより、寸法精度の低下(偏肉率の増大)、内面欠陥の増加(バルジ疵の発生)を伴わずに、内面疵の発生を防止できるという知見を得た。なお、バルジ疵とは、圧延中のフランジ部におけるバルジ曲率半径が小さくなりすぎ、内側表層面が円周方向に座屈して生じる内面欠陥のことをいう。
【0013】
本発明は, 上記した知見に基づいて, さらに検討を加えて完成されたものである。
すなわち、本発明は、中空素管にマンドレルバーを挿入し、該中空素管を、互いに対向させた一対の孔型ロールを備えた圧延スタンドを複数台連続して配置したマンドレルミルにより延伸圧延しシェルとする、継目無鋼管のマンドレルミル圧延方法において、前記複数台の圧延スタンドのうち、入側の2台の圧延スタンドである、第1圧延スタンドおよび第2圧延スタンドの孔型ロールを、該第1圧延スタンドのロール孔型周長RL1 と前記中空素管の周長HLとの比RL1/HL、および、該第2圧延スタンドのロール孔型周長RL2 と前記中空素管の周長HLとの比RL2/HL、が、次 (1) 、(2)および(3)式
0.955≦RL1/HL≦1.025 ……(1)
−RL1/HL+1.895 ≦RL2/HL≦−RL1/HL+1.945 ……(2)
RL1/HL −0.105 ≦RL2/HL≦RL1/HL−0.015 ……(3)
(ここで、RL1 :第1圧延スタンドのロール孔型周長(mm)、RL2 :第2圧延スタンドのロール孔型周長(mm)、HL :中空素管の周長(mm))
を満足するロール孔型を有する孔型ロールとすることを特徴とする継目無鋼管のマンドレルミル圧延方法である。また、本発明では、前記中空素管が、高合金鋼製であることが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明では、内面疵を防止するために、マンドレルミル前段スタンド(第1圧延スタンドおよび第2圧延スタンド)のロール孔型周長を拡大することによってシェル周長を拡大する。前段圧延スタンドでは圧下率、縮径率が大きく設定されているため、ロール孔型の寸法変更によるロール孔型の周長変化量を大きくでき、シェル周長の拡大による内面疵の防止という観点からは好都合となる。一方、後段圧延スタンドでは、シェルの形状仕上げ行うことを第一の役割としているため、ロール孔型の周長を拡大することは真円度の低下、偏肉率の増加に繋がるという問題がある。
【0015】
通常、マンドレルミルのロール孔型は、図5に示すように、二つの円弧から形成され、溝底曲率半径R1n、側壁曲率半径R2n、コーナー曲率半径R3n、R1n領域角θ1n、孔型深さHn で主に決定される。ロール孔型の周長拡大には、θ1nを小さくすること、R2nを大きくすることが効果的である。
本発明では、第1圧延スタンドロール孔型の周長RL1 、および第2圧延スタンドのロール孔型の周長RL2 が、中空素材の周長HLとの関係で、次(1)式
0.955 ≦ RL1/HL ≦ 1.025 ……(1)
、次 (2)式
−RL1/HL+1.895 ≦ RL2/HL ≦ −RL1/HL+1.945 ……(2)
および次 (3) 式
RL1/HL−0.105 ≦ RL2/HL ≦ RL1/HL−0.015 ……(3)
(ここで、RL1 :第1圧延スタンドのロール孔型周長(mm)、RL2 :第2圧延スタンドのロール孔型周長(mm)、HL :中空素管の周長(mm))
を同時に満足するように、それぞれのロール孔型のパラメータを調整する。なお、本発明でいうロール孔型周長は、R2nとR3nの円弧の接点に接し、中心が上下ロールの孔型中心線上に存在するR4nの円弧の長さとR1nの円弧の長さおよびR2nの円弧の長さを加えた、ロール孔型の 1/4断面における長さを測定して、その長さの4倍、すなわち、4(R1n・θ1n+R2n・θ2n+R4n・θ4n)をいうものとする。
【0016】
この条件を、図6に図示する。
第1圧延スタンドロール孔型の周長RL1 が(1)式の範囲を外れる、RL1/HL>1.025 の場合、バルジ疵の発生および偏肉率の増加が確実に生じ、RL1/HL<0.955 の場合、RL2 を調整してもシェル周長を増大できず、内面疵の発生が顕著となる。
【0017】
また、第2圧延スタンドロール孔型の周長RL2 が、 (2) 式の右辺(RL2/HL ≦ −RL1/HL+1.945 )を満足しない場合には、バジル疵の発生および偏肉率の増加が生じ、一方、 (2) 式の左辺(−RL1/HL+1.895 ≦ RL2/HL)を満足しない場合には、内面疵の発生が顕著となる。
また、第2圧延スタンドロール孔型の周長RL2 が、 (3) 式の右辺(RL2/HL ≦ RL1/HL−0.015 )を満足しない場合には、偏肉率の増加が生じ、一方、 (3) 式の左辺(RL1/HL−0.105 ≦ RL2/HL)を満足しない場合には、バルジ疵の発生が顕著となる。
【0018】
すなわち、図6の斜線の範囲内となるように、第1圧延スタンドおよび第2圧延スタンドの孔型ロールのロール孔型周長(RL1 、RL2 )を調整することにより、内面欠陥の増大、寸法精度の低下を伴うことなく, 内面疵の発生を防止できる。一方、図6の斜線の範囲を外れる、第1圧延スタンドおよび/または第2圧延スタンドのロール孔型周長の過度の拡大は、圧延中のバルジ幅拡大によるバルジ疵の増加、厚肉凸部の増大による偏肉率の悪化を伴う。また、図6の斜線の範囲を外れる、ロール孔型周長の過度の縮小は、内面疵を増大させる。
【0019】
上記したマンドレルミル圧延方法は、中空素管が, 熱膨張係数の大きい高合金鋼製の場合にとくに好適である。
【0020】
【実施例】
中空素管(外径:182mm φ、肉厚:10.0 mm )を、8台の圧延スタンドを連続的に配設したマンドレルミルを利用して、延伸圧延を施しシェル(外径:154mm φ、肉厚:5.0 mm、長さ:20m)とした。中空素管は、13%Cr鋼製とした。圧延に際しては、入り側の第1圧延スタンドおよび第2圧延スタンドの孔型ロールのロール孔型周長R1L,R2L を表1に示すように変更した。なお、表1に示す値は、中空素管の周長HLに対する比、R1L/HL,R2L/HL で表示した。
【0021】
得られたシェルについて、バルジ疵、内面疵、偏肉率を調査した。
バルジ疵は、シェルを所定の長さに切断した後、全長にわたり、内面を目視で観察し、疵の有無を測定した。
内面疵は、シェル内面を最後端から2mの範囲について、指先による触感および目視により、観察し、後端からの疵長さを測定した。さらに、同一条件でマンドレルミル圧延したシェルをレデューサー圧延した造管材の内面疵をシェルと同様の方法で疵長さで測定し、評価の正当性を確認した。
【0022】
偏肉率は、シェルの長手方向の定常部10断面および先後端部各10断面から採取した試験片で、円周方向に10゜ピッチの36点の肉厚をマイクロメータで測定し、偏肉率(%)=(最大肉厚−最小肉厚)/(平均肉厚)×100 を算出した。なお、ここでは、得られた各シェルの偏肉率を、現状の圧延条件と同等な比較例No. 1の偏肉率を基準にして、その値からのずれを求め、偏肉率の変化の度合いを評価した
得られた結果を表1に示す。
【0023】
【表1】
Figure 0003716763
【0024】
本発明例はいずれも、内面疵が大幅に低減し、バルジ疵の発生もなく、また偏肉率の極端な増加という悪影響も見られない。 本発明によれば、寸法精度、内面欠陥の増大もなく、シェル後端部での内面疵の発生を抑制でき、マンドレルバーの引抜きが容易となる。
【0025】
【発明の効果】
本発明によれば、バルジ疵の発生、偏肉率の増加等、内面欠陥の増大、寸法精度の低下を伴うことなく、シェル後端部での内面疵の発生を抑制でき、歩留向上、生産性の向上等産業上格段の効果を奏する。また、容易にマンドレルバー引抜きが可能となるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】マンドレルミルの概略説明図である。
【図2】中空素材の圧延状況を模式的に示す断面説明図である。
【図3】中空シェルの断面形状と内面疵発生の関係の一例を模式的に示す説明図である。
【図4】中空シェル長手方向各位置の平均外径変化の一例を示すグラフである。
【図5】ロール孔型形状を説明する断面概略図である。
【図6】内面疵と(ロール孔型周長)/(中空素材周長)の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 マンドレルミル
2 マンドレルバー
3,3a,3b ロール
4 中空素材
5 シェル

Claims (2)

  1. 中空素管にマンドレルバーを挿入し、該中空素管を、互いに対向させた一対の孔型ロールを備えた圧延スタンドを複数台連続して配置したマンドレルミルにより延伸圧延しシェルとする、継目無鋼管のマンドレルミル圧延方法において、前記複数台の圧延スタンドのうち、入側の2台の圧延スタンドである、第1圧延スタンドおよび第2圧延スタンドの孔型ロールを、該第1圧延スタンドのロール孔型周長RL1 と前記中空素管の周長HLとの比RL1/HL、および、該第2圧延スタンドのロール孔型周長RL2 と前記中空素管の周長HLとの比RL2/HL、が、下記 (1) 、(2)および(3)式を満足するロール孔型を有する孔型ロールとすることを特徴とする継目無鋼管のマンドレルミル圧延方法。

    0.955≦RL1/HL≦1.025 ……(1)
    −RL1/HL+1.895 ≦RL2/HL≦−RL1/HL+1.945 ……(2)
    RL1/HL −0.105 ≦RL2/HL≦RL1/HL−0.015 ……(3)
    ここで、RL1 :第1圧延スタンドのロール孔型周長(mm)
    RL2 :第2圧延スタンドのロール孔型周長(mm)
    HL :中空素管の周長(mm)
  2. 前記中空素管が、高合金鋼製であることを特徴とする請求項1に記載の継目無鋼管のマンドレルミル圧延方法。
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