JP2004329130A - 植物栽培システム - Google Patents

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Abstract

【課題】植物を栽培するための栽培地を有効的に活用し、収穫量若しくは栽培量を増大可能な植物栽培システムの提供を課題とする。
【解決手段】植物栽培システムGは、植物2が栽培される植物栽培空間Pが内部に形成された三階建て構造を有する植物栽培ハウス1と、植物栽培空間P内で植物2を水平方向に移送するためのベルトコンベア5と、鉛直方向に移送するためのエレベータ8とを具備して主に構成されている。さらに、植物栽培ハウス1は、屋根の大部分及び南壁が透明ガラス7によって形成され、三階部分Tにおいて複数の植物2が均等に太陽光Sを受けることができる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、植物栽培システムに関するものであり、特に野菜、果物、花卉等の植物の栽培及び生育に適した条件に植物栽培空間内を調整し、収穫量を増加させることが可能な植物栽培システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、野菜、果物、花卉等の植物は、屋外での路地栽培、或いは栽培地の一部をビニール素材などで覆った所謂「ビニールハウス」で栽培されることがある。また、家庭などでは、土に直に植えて栽培される場合や、鉢、プランター、及びポットなどの栽培容器に植えられた植物を栽培棚などに並べて栽培されることがある。
【0003】
ここで、植物は光合成を伴いながら生育するものであるため、太陽光の照射条件は栽培条件において非常に重要な要素である。したがって、上述した路地栽培やハウス栽培等を行う上で、栽培する植物を配置する場所、換言すれば、太陽光の確保が植物の生育に大きく寄与している。さらに、植物は、太陽光の照射とともに、光合成に必要な水を与えたり、肥料等の栄養分の施肥をしたり、害虫等による被害を抑えるために消毒液(消毒剤を含む)を散布する必要がある。
【0004】
以上の従来技術は、当業者において当然として行われているものであり、出願人は、この従来技術が記載された文献等を本願出願時においては特に知見していない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した植物を栽培する手法においては、路地栽培やハウス栽培などでは、植物を栽培する位置がほとんど変わることがなかった。すなわち、地面(畑など)に植物が直接、種や苗などの形で植えられた場合、一般に植物が生長するまでは、係る位置を動くことはなかった。また、鉢植えやプランターなどで栽培される場合には、鉢ごと、或いはプランターごと移動させる必要があった。ところが、植物の栽培位置を固定した状態で栽培することは、前述した太陽光の照射を充分受けられないことがあった。すなわち、太陽光の照射方向及び周囲の環境(例えば、まわりに壁や高層建築物がある場合など)によっては、一部の箇所が日陰となることがあり、充分な日照時間を得られないことがあった。そのため、植物が受ける太陽光の照射量が異なり、植物の生育に差異が生じることがあった。
【0006】
同様に、前述した水、肥料、及び消毒剤などの供給も偏りが生じる可能性が高く、例えば、同一の品種の植物であっても係る栽培条件の違いにより、サイズ、色、形などが不揃いになることがあった。特に、野菜などは、出荷する段階でサイズ等に規格が設けられていることがあり、規格外の野菜は出荷することができなかったり、或いは不当に低い価格で取引きされることがあった。また、観賞用などで栽培される花卉は、サイズ等が同一のものが特に好まれて取引きされることが多く、生産者は係る点に注意を払って生産する必要があった。しかしながら、上述した栽培環境では、特に太陽光の照射条件やその他の栽培条件によって不揃いになり、一定の品質の植物等を栽培することが困難なことがあり、係る点を解消することが、生産者などから期待されていた。
【0007】
加えて、上述した植物の栽培手法では、敷地(栽培地)に対する植物の栽培面積は、当然のことながら限られていた。そのため、同一品質の植物を大量生産することが困難であり、栽培面積当たりの植物の収穫量が限られていた。その結果、収穫効率等の低下により、栽培される植物の単価が必然的に高くなる傾向が強かった。
【0008】
そこで、本発明は、上記実情に鑑み、植物が栽培される条件を統一し、同一の品質の植物を多数栽培可能な植物栽培システムを提供することを第一の課題とし、植物を栽培するための栽培地を有効的に活用し、収穫量若しくは栽培量を増大可能な植物栽培システムを提供することを第二の課題とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明に係る植物栽培システムは、「鉢及びポットを含む栽培容器に植えられた植物を栽培する植物栽培空間を内部に有し、前記植物栽培空間に太陽光を取込み可能な透明素材で一部が形成された植物栽培ハウスと、前記植物栽培空間内で複数の前記植物を移送させる移送手段と、前記移送手段によって移送される前記植物の移送経路の少なくとも一部に設けられ、前記透明素材を介して取込まれた前記太陽光を、前記植物栽培空間で栽培される複数の前記植物に対して照射時間を一定にして照射する太陽光照射手段と」を具備して主に構成されている。
【0010】
ここで、栽培される植物には、たとえば、農家などで同一品種のものが大量に栽培される大根、白菜、及びニンジン等の野菜や、イチゴ等の果物などが含まれる。さらに、観賞用若しくは園芸用に栽培される花卉等も含まれる。また、植物栽培ハウスの一部が透明素材で設けられることにより、太陽光を植物栽培空間内に容易に取込むことが行える。ここで、透明素材としては、例えば、植物栽培ハウスの屋根や壁の一部(特に、太陽光が照射される方向:東・南・西)に適用可能な、ガラス製の素材若しくは透明性を有するプラスチック樹脂製素材などが挙げられる。
【0011】
したがって、本発明に係る植物栽培システムによれば、植物栽培ハウスの内部の植物栽培空間において、上述した植物が栽培される。このとき、植物は植物栽培空間内を移送手段によって移送することができる。ここで、移送手段としては、例えば、栽培空間内にベルトコンベア等を敷設し、ベルト上に載置された植物を、植物栽培空間を循環するように移送するものや、周知技術として知られる倉庫システムのように、予め植物を載置する場所を決定し、当該場所に複数の植物をそれぞれ移送するようにしたものなどが挙げられる。なお、移送される方向は、植物栽培空間内において鉛直方向及び水平方向、さらにこれらの双方向を組合わせたものなどのいずれかが想定される。
【0012】
また、植物栽培ハウスの一部、例えば、壁の一部若しくは屋根の一部などが、ガラスなどの透明素材で形成されているため、係る植物栽培ハウスは、内部の植物栽培空間に太陽光を取込むことが可能となる。さらに、前述の移送手段によって移送される植物の移送経路の途中には、係る太陽光を植物に対して照射可能な太陽光照射手段が設けられているため、太陽光が照射された植物は、光合成反応によって生育することが可能となる。すなわち、植物の移送経路の途中に、太陽光照射手段が設けられているため、植物栽培空間内で栽培されるそれぞれの植物に対する太陽光の照射時間を一定にすることが可能となる。その結果、栽培される植物の栽培条件を略同一とすることが可能となり、栽培後の植物のサイズや色などの変化がほとんどない、品質の安定した植物を係る植物栽培システムによって提供することが可能となる。
【0013】
また、植物を移送させる手段が設けられていることにより、従来のように、植物が植えられたプランター等を生産者が手作業で移動させることがなくなり、係る作業に対する労力を軽減することが可能となる。なお、植物栽培ハウス内には、作業者が入り、直接作業を行うスペースが確保されていることが望ましく、これにより、植物の手入れ(害虫の駆除等)や、野菜や果物などの実の収穫作業を植物栽培空間内で行うことが可能となる。
【0014】
また、本発明に係る植物栽培システムは、上記構成に加え、「少なくとも一つの前記植物を載置可能なパレットをさらに具備し、前記移送手段は、前記植物を前記パレットに載置した状態で移送する」構成であっても構わない。
【0015】
ここで、パレットとは、略平板状を呈する皿(プレート)状のものであり、複数の鉢植え、或いはポット栽培されている植物をまとめて載置することが可能である。そして、係るパレットに載置された状態で、植物が前述の植物栽培空間を移送される。すなわち、植物栽培空間で栽培される植物の中には、例えば、イチゴなどの果実類の苗等が含まれている。係る苗の場合、比較的小型のものである。そのため、個々に対して前述の移送手段によって移送することは、移送手段の装置(例えば、ベルトコンベアなど)や移送の制御が困難となる。そこで、小型の植物を複数個まとめ、パレット上に載置して移送することにより、前述の問題を解消することが可能となる。
【0016】
また、本発明に係る植物栽培システムは、上記構成に加え、「前記栽培容器は、吊受部を有し、前記移送手段は、前記栽培容器の前記吊受部に係合可能なフック部と、前記フック部によって前記栽培容器を吊下げた状態で、前記植物栽培空間内を移送させる吊下移送手段と」をさらに具備するものであっても構わない。
【0017】
したがって、本発明に係る植物栽培システムによれば、移送手段として、植物が植えられた栽培容器の吊受部を、フック部によって係合して吊下状態とし、さらに係る状態を保持しながら、植物栽培空間を移送させるものが利用される。これにより、前述したベルトコンベア等の移送手段と比較して、植物栽培空間内を広く利用することが可能となり、植物を栽培する総面積を増大させることが可能となる。
【0018】
また、本発明に係る植物栽培システムは、上記構成に加え、「前記植物栽培ハウスは、少なくとも二階以上の複数階構造で構成され、前記移送手段は、前記植物を鉛直方向に移送する昇降手段と、前記植物を水平方向に移送する水平移送手段と、前記昇降手段及び前記水平移送手段の間で、移送される前記植物の受渡しを行う受渡手段と」をさらに具備するものであっても構わない。
【0019】
したがって、本発明に係る植物栽培システムによれば、植物栽培ハウスが二階建て以上の複数階(例えば、三階建て等)を有して構成されている。そして、植物を移送する移送手段は、各階において水平方向に移送するベルトコンベアなどの水平移送手段と、上下階にわたって植物を移送する昇降手段とが組合わされて構成されている。そのため、植物は、植物栽培ハウスの各々の階を移送することが可能となる。これにより、植物を栽培する栽培面積を増大させることが可能となり、栽培面積当たりの植物の収穫量(栽培量等)を増やし、栽培効率を向上させることができる。また、屋根の全面を透明素材であるガラスによって形成し、最上階全体を、太陽光を取込可能にした太陽光照射手段として利用し、それより下方の階に、その他の機能を付与するものとすることにより、植物に対して太陽光が照射される効率がさらに高くなり、より好適な生育条件にすることが可能となる。
【0020】
また、本発明に係る植物栽培システムは、上記構成に加え、「前記移送手段は、栽培する前記植物を外部から前記植物栽培空間内に搬入及び前記植物栽培空間内で栽培された前記植物を外部に搬出する搬入出口部と接続している」ものであっても構わない。
【0021】
したがって、本発明に係る植物栽培システムによれば、移送経路の少なくとも、一部に植物を搬入出することが可能な搬入出口部が設けられている。これにより、植物栽培空間内を循環等する植物を、移送の途中で植物栽培ハウスの外部に取出して、市場等に出荷したり、或いは新たに栽培する植物(苗)などを栽培ハウス内に導入することが、容易に行えるようになる。なお、前述した植物栽培ハウスが、複数階構造で形成されている場合、係る搬入出口部は、最下階に設けられていることが望ましい。すなわち、搬出用のトラック等の荷台を係る搬入出口部に近づけることにより、作業が容易に行えるようになる。また、係る搬入出口部を、植物栽培ハウス内に設けることにより、雨天の日などにおいても降雨の影響を受けることなく、植物の搬入及び搬出作業を行うことができる。
【0022】
また、本発明に係る植物栽培システムは、上記構成に加え、「前記植物の生育に適した温度及び湿度を含む植物栽培条件に、前記植物栽培空間を調整可能な調整手段を」さらに具備するものであっても構わない。
【0023】
したがって、本発明に係る植物栽培システムによれば、植物栽培空間内の温度や湿度などの植物栽培条件を、植物の生育に適したものにすることが可能となる。例えば、空気調和制御装置(エアーコンディショニング装置)及び湿度調整装置(加湿器、或いは除湿器)を植物栽培空間内に配することにより、外気温度及び季節に影響されることなく、生産者の希望する植物を一年中栽培することが可能となる。さらに、花卉などの開花時期を個々に調整することもできるようになる。
【0024】
また、本発明に係る植物栽培システムは、上記構成に加え、「前記植物が移送される前記移送経路の途中に設けられ、前記植物に水、肥料、及び消毒液の少なくともいずれか一つを供給可能な供給手段を」さらに具備するものであっても構わない。
【0025】
したがって、本発明に係る植物栽培システムによれば、植物が移送される移送経路の途中において、植物に対して、水、肥料、及び消毒液の少なくともいずれか一つがさらに供給される。ここで、植物が安定して生育する場合には、光合成に必要な太陽光、及び適する温度・湿度の植物栽培条件とともに、植物に対して水や肥料等を供給することが必要となる。そこで、植物栽培空間の移送中にこれらの水等を植物に対し、偏りなく与えることにより、さらにサイズ等が整った植物を安定して生育することが可能となる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態である植物栽培システムGについて、図1乃至図5に基づいて説明する。ここで、図1は本実施形態の植物栽培システムGが適用された植物栽培ハウス1を側方から模式的に示した説明図であり、図2は植物栽培ハウス1における植物栽培空間Pを上方から模式的に示した説明図であり、図3は植物栽培空間Pに設置されたパレット4及びパレット4に載置された植物2を拡大して示す説明図であり、図4は本実施形態の植物栽培システムGの機能的構成を示すブロック図であり、図5はパレット4に載置された植物2の移送経路Rの一例を模式的に示す説明図である。
【0027】
本実施形態の植物栽培システムGは、図1及び図2に示すように、鉢3にそれぞれ植えられた複数の植物2を栽培するための植物栽培空間Pを内部に有して建築された植物栽培ハウス1と、植物2を植物栽培空間Pの中で循環して移送させるように配設されたベルトコンベア5と、ベルトコンベア5の上に載せられ、さらにその上に前述の植物2が載置されるプレート状のパレット4とを主に有して構成されている。ここで、鉢3が本発明における栽培容器に相当し、ベルトコンベア5が本発明における移送手段及び水平移送手段に相当する。
【0028】
さらに、詳細に説明すると、植物栽培ハウス1は、図1に示すように、三階建て構造を有して建築され、二階部分D及び三階部分Tには、前述した植物栽培空間Pが形成されている。さらに、最下階に位置する一階部分Fには、トラック9が直接乗入れ可能な搬入出作業用のスペースHが設けられている。一方、三階部分Tの上方に位置する屋根は、所定の方向に若干傾斜した状態で形成されている。係る傾斜は、三階部分Tに太陽光Sをできるだけ多く取込むことができるように、ほぼ南側に向けて傾斜している(なお、係る傾斜の向きは北半球に植物栽培ハウス1を建築する場合であり、南半球に建築する場合は当然のことながら北向きに屋根を傾斜させる必要がある)。さらに、屋根の大部分及び三階部分Tの南壁側は、透明ガラス7(図1におけるハッチング箇所に相当)で形成されている。
【0029】
また、二階部分D及び三階部分Tの植物栽培空間Pには、二段に形成された栽培棚6がそれぞれ設置され、係る栽培棚6の棚上面に前述のベルトコンベア5がそれぞれ配されている。なお、ベルトコンベア5は、既に周知の技術であるためここでは詳細な説明は省略するものとする。ここで、三階部分Tに設けられ、前述の太陽光Sを照射可能な移送経路Rが設定されたベルトコンベア5が本発明における太陽光照射手段に相当する。さらに、ベルトコンベア5の一端は、二階部分Dと三階部分Tとの間で、植物2を移送させるためのエレベータ8と接続されている。
【0030】
ここで、エレベータ8は、エレベータ筐体14と、エレベータ筐体14を上下方向に駆動するための滑車及び駆動モータからなる駆動部15と、駆動部15とエレベータ筐体14を接続するワイヤーケーブル16と、ワイヤーケーブル16の一端に設けられ、上下方向に昇降するエレベータ筐体14とバランスをとるためのウェイト17とから主に構成されている。さらに、エレベータ筐体14の内部には、前述した各階部分F,D,Tにおいてパレット4に載置された植物2を受渡すための受渡装置12aが設けられている。ここで、エレベータ8が本発明における昇降手段に相当する。
【0031】
さらに、一階部分FのスペースHは、植物栽培空間Pに新たに栽培する植物2を搬入し、或いは栽培が完了した植物2を市場等に出荷するために搬出する搬入出口部Cが設けられて、前述したエレベータ8と接続している。そして、作業者Mによって前述の搬入作業若しくは搬出作業を行うことができる。なお、係る搬入出口部Cには、受渡装置12bが設置され、植物2の受渡作業を容易にしている。
【0032】
また、本実施形態の植物栽培システムGは、植物栽培空間Pで栽培される植物2に対し、前述の太陽光S以外のものを供給することができる。すなわち、三階部分T及び二階部分Dには、植物栽培空間P内の温度及び湿度を管理するための温湿度調整装置10がそれぞれ設けられ、二段に設けられた栽培棚6の上段の上方及び上段裏面6aには、植物2に対して水を供給可能な給水装置11がそれぞれ設けられている。ここで、温湿度調整装置10が本発明における調整手段に相当し、給水装置11が本発明における供給手段に相当する。
【0033】
さらに、植物栽培ハウス1の一階部分Fには、前述したベルトコンベア5,エレベータ8,温湿度調整装置10,給水装置11,及び受渡装置12a,12bをそれぞれ集中して制御するための操作パネル13が設けられている(詳細は後述する)。これにより、作業者Mは、予め立てられた栽培計画に応じて植物2を植物栽培空間P内で移送し、さらに適切な植物栽培条件に温度及び湿度を管理し、さらに適量の水を供給することができる。
【0034】
また、植物栽培空間P(ここでは、三階部分Tについて示す)は、図2に特に示すように、栽培棚6の上に、ベルトコンベア5が設置され、さらにその上にパレット4及び鉢3に植えられた植物2が載置されている。ここで、ベルトコンベア5は、一部が前出のエレベータ8と接続した状態で、植物栽培空間Pを縦横方向(図2における紙面上下方向及び紙面左右方向に相当)に、植物2を循環するように移送することができるように形成されている。なお、植物栽培空間Pには、そのほかに、作業者Mが植物2の手入れ及び管理を直接行うための作業者用通行路19及び階段18が設けられている。さらに詳しく説明すると、植物2が載置されたパレット4が、縦方向(若しくは長手方向)に8個並べられ、さらに横方向(若しくは短手方向)に4個並べられるようになっている。そして、図3に示すように、一つのパレット4の上には、鉢3に植えられた植物2が「4×4」の計16個が載置されている。なお、植物2は、鉢3に土20とともに植えられている。ここで、パレット4のサイズは、本実施形態においては、縦90cm×横90cmのものが利用されている。
【0035】
ここで、操作パネル13を介して行われる植物栽培システムGの制御について、図4に基づいて説明する。図4に示すように、操作パネル13は、作業者Mによって操作及び条件の入力等を行うボタン、スイッチ及び調整つまみなどからなる操作部21を有し、操作部21からの入力に基づいてエレベータ8等の種々の制御を行う制御部22と接続している。さらに、制御部22には、予め定められたスケジュールに基づいて植物2に給水等を行う時間を検知するためのタイマ29と、植物栽培空間P内の温度及び湿度を含む植物栽培条件を検知可能なセンサ30とが接続されている。
【0036】
ここで、制御部22は、エレベータ8と電気的に接続し、植物2の上下方向の移送を制御するための昇降制御手段24及びベルトコンベア5と接続し、植物2の水平方向の移送を制御するための水平移送制御手段25を含んで構成される移送制御手段23と、エレベータ筐体14内に設置された受渡装置12a及び搬入出口Cに設けられた受渡装置12bの作動をそれぞれ独立して制御可能な受渡制御手段26と、給水装置11による植物2への水の供給において、給水量及び給水時間などを管理し、制御する供給制御手段27と、植物栽培空間Pの温度及び湿度を植物2の生育に適した条件に温湿度調整装置10を制御する調整制御手段28とから主に構成されている。さらに、図4に示すように、エレベータ8等の装置5,10,11,12a,12bには、それぞれ電源31が接続され、装置5等を作動させるための電力が供給されている。
【0037】
これにより、作業者Mは、本実施形態の植物栽培システムGにおいて、操作パネル13の操作部21を操作することにより、植物栽培ハウス1内で植物2の栽培を集中的に管理することができる。なお、操作パネル13には、センサ30等によって検知した検知結果、或いは装置5等から作動状態を示すフィードバックデータを表示し、栽培状況を確認するために表示部(液晶モニタなど)及びメータ等が設けられているものであってもよい。
【0038】
次に、本実施形態の植物栽培システムGの使用方法の一例について、主として図5に基づいて説明する。まず、図3に示したようなパレット4を準備し、その上に鉢3に土20とともに植えられた植物2を用意する。ここで、植物2は、本実施形態では、果実の実る前の苗(例えば、イチゴの苗)を想定している。そして、スペースHに乗入れたトラック9の荷台から、栽培対象となる植物2の苗(図示しない)が植えられた鉢3がパレット4に載置された状態で降ろされる。このとき、エレベータ8のエレベータ筐体14は、一階部分Fに降ろされている。そして、搬入出口部Cの受渡装置12b及びエレベータ筐体14内の受渡装置12aを使用して、エレベータ筐体14内に受渡される。その後、エレベータ筐体14は、所定の階部分D,Tの所定の栽培棚6の所まで昇動作を行う。ここで、同一階部分(例えば、二階部分D)において、栽培棚6の上段及び下段の間の上下方向の移動は、エレベータ8を利用して行われる。
【0039】
係る操作を繰返すことにより、植物栽培ハウス1の植物栽培空間Pには、複数の植物2が載置された状態のパレット4が収容されることになる。なお、図2に示したように、各栽培棚6には、上下段にそれぞれ32個のパレット4が載置可能であり、各階部分D,T毎に最大で64個のパレット4、植物栽培ハウス1の全体で計128個のパレット4を収容することができる。さらに、一つのパレット4には、16個の植物2が載置されているため、総合計で2048個の植物2を一括して収容することができる。なお、収容する個数は、植物栽培ハウス1の大きさ及び階数によって異なることは当然である。
【0040】
そして、図5に示すように、植物2(パレット4を含む)は、ベルトコンベア5によって植物栽培空間Pを循環することが可能であるため、植物2の移送経路Rの途中で設けられた給水装置11によって給水を受けることができる。さらに、植物2が三階部分Tにエレベータ8を介して移送された場合、屋根及び南壁が透明ガラス7で形成されていることにより、三階部分Tの大部分で太陽光Sの照射を植物2は受けることができる。これにより、植物2の苗は、光合成反応により次第に大きく成長することとなる。なお、パレット4が前述したように各々の階部分D,Tにおいて移送経路Rに従って循環して移送されているため、各々の植物2に対して満遍なく、太陽光S及び水(図示しない)が与えられるため、植物2の生育に偏りを生じることがない。そのため、植物栽培空間Pで栽培される植物2にサイズや色などの品質の差が生じる可能性が少なくなり、同一の品質及びサイズの植物2を均一に生育させることができる。特に、前述したイチゴなどの場合、実った果実の発育状態が一致するため、出荷時期を合わせることができる。さらに、鑑賞若しくは園芸用の草花などの場合、花の開花時期を植物栽培空間P内で合わせることができるため、上述のように出荷時期を合わせることが容易となる。この場合、植物栽培ハウス1の内部に設けられた温湿度調整装置10などによって生育及び開花等の時期を調整することが容易に行える。
【0041】
その後、栽培が完了し、出荷の時期が到来すると、再び、植物栽培空間Pからエレベータ8を介して一階部分Fにそれぞれパレット4に載置した状態で降ろされ、搬入出口部Cからトラック9の荷台に載せられて出荷される。なお、この場合、搬入出口部Cにおいて実った果実等の収穫物のみを作業者Mの手によって収穫し(図1参照)、市場等に出荷することも可能である。
【0042】
以上、本実施形態の植物栽培システムGによれば、植物栽培空間P内の移送経路Rを植物2が循環して移送される。このとき、太陽光Sの照射及び水などの供給が、係る移送経路Rの上でそれぞれ植物2に対して行われるため、植物栽培ハウス1内の植物2は、均等に太陽光Sの照射及び水の供給を受けることができる。その結果、植物栽培条件を同一に近づけることが可能となるため、栽培し、生育する植物2はサイズや色などが整ったものとなる。その結果、サイズなどの規格が細かく決められた野菜や果物などは、規格内に合わせて容易に栽培することが可能となり、生産効率を向上させることができる。特に、植物2に対する太陽光Sの照射条件を同一にすることにより、生育状態をほぼ同一のものとすることができる。
【0043】
さらに、植物2が、植物栽培空間P内を循環移送されることにより、互いに隣接する植物及びそれらの植物の対向する部位が刻々変化する。そのため、植物が定位置にて固定されて栽培される場合のように、成長した植物が絡み合う問題も起こらない。これにより、同一速度によって栽培される植物が移送されると、同一品種の植物を同時に大量に、同一栽培条件下において栽培することが可能となる。また、植物栽培ハウス1に複数の階を設けることにより、限られた敷地面積をさらに有効利用して、生産量を増加させることができる。
【0044】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0045】
すなわち、本実施形態の植物栽培システムGにおいて、移送手段としてベルトコンベア5を用いるものを示したが、これに限定されるものではなく、例えば、複数本のローラを並べ、ローラの回転によってパレット4を所定方向に移送するものであっても構わない。さらに、パレット4を使用せず、鉢に鉤状の吊受部などを設け、移送手段としてクレーン機構を利用して、係る吊受部とクレーンの先端に設けられたフックとを係合させることにより、植物を吊下げた状態で移送するものであっても構わない。
【0046】
さらに、ベルトコンベア5によって形成される移送経路Rは、図2及び図5に示したものに限定されるものではなく、植物栽培空間P内を鉛直方向及び水平方向に自在に移送可能にして形成するものであっても構わない。例えば、各々の階の各々の栽培棚6ごとに一本設けられていなくてもよく、栽培棚6の上段と下段にわたって移送されるように、同一階で略鉛直方向に移送させるものであっても構わない。さらに、昇降手段としてエレベータ8を用いるものを示したが、クレーン機構等により、植物2及びパレット4を吊下げて昇降させるものであってもよい。
【0047】
また、移送経路Rの植物2に対して、水を給水可能な給水装置11を供給手段として設けたものを示したが、これに限定されるものではなく、そのほか、植物2の生育に欠かせない肥料や害虫による被害を防ぐための消毒剤などの散布を可能な供給手段を設けてもよい。
【0048】
また、植物栽培ハウス1は、本実施形態に示したものに限定されるものではなく、例えば野菜、花卉等の販売が可能な店舗を兼ねて構成されていてもよい。すなわち一階部分Fには店舗が、二階部分D及び三階部分Tには植物栽培空間Pが設けられていてもよい。これにより、二階部分D及び三階部分Tで栽培された植物2を、直接消費者に提供することができる。
【0049】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る植物栽培システムを用いると、植物に対する植物栽培条件を同一として、複数の植物をまとめて管理しながら栽培することが可能となり、栽培される植物の品質を安定させることができる。さらに、植物栽培ハウスを複数階構造に構成することにより、栽培面積を増大させ、単位栽培面積当たりの植物の栽培量(特に、野菜などの収穫量)を大幅に増やし、生産効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】植物栽培システムが適用された植物栽培ハウスを側方から模式的に示した説明図である。
【図2】植物栽培ハウスにおける植物栽培空間を上方から模式的に示した説明図である。
【図3】植物栽培空間に設置されたパレット及びパレットに載置された植物を拡大して示す説明図である。
【図4】植物栽培システムの機能的構成を示すブロック図である。
【図5】パレットに載置された植物の移送経路の一例を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
1 植物栽培ハウス
2 植物
3 鉢(栽培容器)
4 パレット
5 ベルトコンベア(移送手段、水平移送手段)
7 透明ガラス(透明素材、太陽光照射手段)
8 エレベータ(移送手段、昇降手段)
10 温湿度調整装置(調整手段)
11 給水装置(供給手段)
C 搬入出口部
G 植物栽培システム
P 植物栽培空間
R 移送経路
S 太陽光
T 三階部分(太陽光照射手段)

Claims (7)

  1. 鉢及びポットを含む栽培容器に植えられた植物を栽培する植物栽培空間を内部に有し、前記植物栽培空間に太陽光を取込み可能な透明素材で一部が形成された植物栽培ハウスと、
    前記植物栽培空間内で複数の前記植物を移送させる移送手段と、
    前記移送手段によって移送される前記植物の移送経路の少なくとも一部に設けられ、前記透明素材を介して取込まれた前記太陽光を、前記植物栽培空間で栽培される複数の前記植物に対して照射時間を一定にして照射する太陽光照射手段とを具備することを特徴とする植物栽培システム。
  2. 少なくとも一つの前記植物を載置可能なパレットをさらに具備し、
    前記移送手段は、
    前記植物を前記パレットに載置した状態で移送することを特徴とする請求項1に記載の植物栽培システム。
  3. 前記栽培容器は、吊受部を有し、
    前記移送手段は、
    前記栽培容器の前記吊受部に係合可能なフック部と、
    前記フック部によって前記栽培容器を吊下げた状態で、前記植物栽培空間内を移送させる吊下移送手段と
    をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の植物栽培システム。
  4. 前記植物栽培ハウスは、
    少なくとも二階以上の複数階構造で構成され、
    前記移送手段は、
    前記植物を鉛直方向に移送する昇降手段と、
    前記植物を水平方向に移送する水平移送手段と、
    前記昇降手段及び前記水平移送手段の間で、移送される前記植物の受渡しを行う受渡手段と
    をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の植物栽培システム。
  5. 前記移送手段は、
    栽培する前記植物を外部から前記植物栽培空間内に搬入及び前記植物栽培空間内で栽培された前記植物を外部に搬出する搬入出口部と接続していることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の植物栽培システム。
  6. 前記植物の生育に適した温度及び湿度を含む植物栽培条件に、前記植物栽培空間を調整可能な調整手段をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載の植物栽培システム。
  7. 前記植物が移送される前記移送経路の途中に設けられ、
    前記植物に水、肥料、及び消毒液の少なくともいずれか一つを供給可能な供給手段をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一つに記載の植物栽培システム。
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