JP2004327158A - 蓄電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】発明が解決しようとする課題は、蓄電池の正極集電体として要求される特性、すなわち、高い導電性、電解液に対する不溶性、電解液中での正極電位に対する電気化学的安定性、高い酸素過電圧といった特性を有する材質を正極集電体表面に形成した正極板を備えることにより、エネルギー密度および寿命性能の優れた蓄電池を提供することにある
【解決手段】正極集電体表面に耐食性導電材層を形成した正極板を備えた蓄電池において、前記耐食性導電材層が導電性ダイヤモンドを含むことを特徴とするものである。
【選択図】 図5
【解決手段】正極集電体表面に耐食性導電材層を形成した正極板を備えた蓄電池において、前記耐食性導電材層が導電性ダイヤモンドを含むことを特徴とするものである。
【選択図】 図5
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、蓄電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、飛躍的発展を遂げている電子応用機器は、蓄電池を電源としているものが多い。蓄電池には鉛、ニッケル水素、リチウムイオン等、種々のものがあるが、それぞれに未だ改善の余地がある。例えば、鉛蓄電池は、コスト・安全性・信頼性の面で二次電池として長く利用されてきているが、ニッケル水素やリチウムイオンに比べ、エネルギー密度が低いという欠点がある。
【0003】
鉛蓄電池の構成は、正極板、負極板、セパレータおよび電解液からなっている。正極板は、鉛あるいは鉛合金からなる格子に活物質の二酸化鉛(PbO2)が保持された構造で、負極板は、鉛あるいは鉛合金からなる格子に活物質の鉛(Pb)が保持された構造である。電解液には濃度、30〜45質量%の希硫酸が、また、セパレータには、多孔性合成樹脂製のものやガラス繊維製のものが用いられている。
【0004】
鉛蓄電池の劣化の主要因は正極集電体の腐食である。正極集電体は、開回路の状態でも電位の高いPbO2と常時接しているため、常に腐食される環境にある。充電時には充電過電圧が加わって、電位が高くなり腐食が加速する。集電体は、集電機能および活物質を保持する機能を持っているが、腐食が進めばこれらの機能が低下して蓄電池の容量を低下させる。したがって、長寿命化するためには集電体の体積を一定以上確保する必要がある。そのことによって、正極板は自ずと厚いものになる。
【0005】
また、正極活物質は微細構造を有する多孔性物質で、充・放電時に電解液である硫酸が関与するため、極板が厚くなると電解液の活物質細孔内での移動がし難くなり、正極活物質の利用率が低下する。さらに、正極集電体の耐食性をよくするために低比重電解液を用いるのが良いことは知られているが、これも電解液中の反応物として消費される硫酸根が不足することになり正極活物質の利用率を下げる要因となる。活物質の利用率が低下すると、必要量の電気容量を取り出すためにより多くの活物質量が必要となり、極板が重くなってエネルギー密度が低下する。このように鉛蓄電池を長寿命化するための正極集電体の腐食劣化抑制策が、理論エネルギー密度の低い鉛蓄電池の実用エネルギー密度を更に低くしている。
【0006】
上記は鉛蓄電池についてのものであるが、集電体の腐食に起因する電気特性低下という問題は、多くの蓄電池にも内在しており、より耐食性の優れた集電体を備えた蓄電池の出現が望まれる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、鉛蓄電池の正極集電体に要求される特性は、高い導電性、硫酸への不溶性、硫酸水溶液中での正極(PbO2)電位に対する電気化学的安定性、高い酸素過電圧である。鉛あるいは鉛合金以外の金属は、導電性の点では前者より優れていることが多いが、鉛蓄電池の電解液である希硫酸中で正極(PbO2)電位に晒されると著しく溶解あるいは腐食し、また、酸素過電圧が低いために正極で自己放電反応が促進したり充電特性に悪影響を与えたりして通常、適用不可能である。一方、耐食性に優れた物質は絶縁体であることが多く、適用不可能で、適切な物質が見出せていないのが現状であった。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、上記問題を克服し、導電性を有し、耐食性にも優れた薄膜層を集電体表面に形成した極板を備えた蓄電池を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の課題を解決するための手段として、請求項1によれば、集電体表面に耐食性導電層を形成した極板を備えた蓄電池において、前記耐食性導電層が導電性ダイヤモンドを含むことを特徴とするものである。
【0010】
周知のとおり、ダイヤモンドはカーボンが強固に結合した物質で化学的に非常に安定な特性を有しており、蓄電池の充・放電反応、すなわち、電気化学的酸化・還元反応に対して安定であると共に、蓄電池に使用される電解液、例えば濃度、30〜45質量%の希硫酸にも侵されることなく安定して存在し得るのであるが、約1000Ωcmの絶縁体であり適用できない。それに対して、ダイヤモンドにホウ素や窒素をドープすることによって導電性が付加され、条件によって異なるが導電率が0.1〜10Ωcm以下となる。これを導電性ダイヤモンドと称している。しかも該導電性ダイヤモンドをアノード分極させた時の酸素過電圧が高く、しかも、上述したダイヤモンドの安定性を保持しているので、蓄電池の集電体として具備すべき特性を全て備えており、集電体の耐食性導電材に適していることを本願発明者は見出した。
【0011】
導電性ダイヤモンドの電気伝導率が正極活物質PbO2の4×10−3Ωcmに比べて低い場合でも、集電体の表面に導電性ダイヤモンドの薄膜層を形成すると共に、活物質を該薄膜層に圧迫を加えた状態で密着させることによって極板としての実用的な導電性が得られ、しかも、ダイヤモンドが本来有している化学的な安定性によって、薄くて軽量、かつ十分な耐食性を備えた極板が得られることを本願発明者は見出した。鉛蓄電池の場合、これを正極集電体として用いることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明は鉛蓄電池に限るものではなく、他の蓄電池にも適用可能である。尚、集電体に形成する耐食性導電層は導電性ダイヤモンドのみで形成してもよいが、他の耐食性導電材と共存させてもよい。さらに、耐食性導電層は、必ずしも集電体表面全体に形成する必要はなく、集電体形状によっては、表面の一部であってもよい。
【0013】
【実施例】
本発明を実施例に基づき詳細に説明する。
〔実施例1〕
図1は、本発明による実施例1の正極集電体を示す要部断面図で、1は鉛からなる集電体本体、2は該集電体表面にプラズマCVD法により形成された窒素をドープした導電性ダイヤモンド薄膜層をそれぞれ示す。
【0014】
図1に示す集電体と耐食性導電層を形成しない従来のPbのみの集電体とに、酸化鉛を主体とする粉末を希硫酸で練膏してペースト状にした正極用原料を充填し、熟成・乾燥を経て未化成正極板を作成した。さらに、Tiからなる集電体に上記と同じ方法で窒素をドープした導電性ダイヤモンド薄膜層を形成したものと、薄膜層を形成しないものについて、上記と同様の正極用原料を充填し、熟成・乾燥を経て未化成正極板を作成した。しかる後、通常の化成を行い、電解液である希硫酸の比重が1.280になるように調整した。これら4種類の極板を対極に鉛電極を用いて、20mA/cm2の定電流でアノード酸化試験を行った。
【0015】
試験結果を図2に示す。図2は、各電極のアノード酸化中の電圧推移を示すもので、導電性ダイヤモンドの薄膜層で被覆しなかったTi基板のみの集電体は、基板表面がアノード酸化を受け不働態化したため、早期に著しく高い電圧を示した。すなわち高い抵抗体が形成され、正極板として機能が維持できなくなってしまった。しかし、導電性ダイヤモンド層で被覆したTi集電体を用いた電極は、600時間酸化試験を行っても全く電圧挙動に異常はなく、鉛蓄電池の集電体として十分適用可能であることが分かった。また、Pb集電体に導電性ダイヤモンド層を被覆した電極もTi集電体と同様の効果が得られた。試験後、これらを解体調査した結果、いずれも導電性ダイヤモンド層の劣化が見られなかった。一方、Pbのみの集電体は、短期間で機能が維持できなくなるということはなかったが、従来の鉛蓄電池の特性であるアノード酸化による集電体の腐食が著しかった。
【0016】
図3に上記600時間のアノード酸化試験後の導電性ダイヤモンドを被覆したPb集電体とPbのみの集電体との腐食量の比較を示す。被覆したものは、被覆なしのものに比べて腐食量が著しく少なく、本発明の効果が明らかになった。
【0017】
図4に導電性ダイヤモンドの薄膜層を形成した集電体とPbのみの集電体とをそれぞれ用いた正極板を通常の鉛負極板を対極に用いて電流密度10mA/cm2および100mA/cm2で放電を行い、両者の放電特性の比較をした。いずれの場合も両者に放電特性の差はなく、導電性ダイヤモンドの薄膜層を形成させた構造の集電体を用いても鉛蓄電池の放電特性に悪影響を及ぼさないことがわかった。
【0018】
以上のように、導電性ダイヤモンドの薄膜層を集電体表面に形成することにより、従来のPbのみの集電体に比べてアノード酸化に対する耐食性が大幅に改善され、さらに、Tiのような単独では鉛蓄電池の集電体として使用できない金属であっても、導電性ダイヤモンド層で被覆することによって使用可能になることがわかった。このことにより、従来の比重の高い鉛あるいは鉛合金からなる集電体に代わって、比重の低いTiのような金属が鉛蓄電池の集電体に使用可能になり鉛蓄電池の欠点の一つである重量効率の低さを改善できることがわかった。
〔実施例2〕
実施例1と同じ方法で導電性ダイヤモンド層を形成した集電体の表面に、実施例1と同じ鉛蓄電池用ペースト状正極原料を充填・熟成・乾燥を行い、負極には通常の鉛シート上にペースト状負極原料を充填・熟成・乾燥を行い、両極板の間に微細ガラス繊維からなるセパレータを圧迫力が20kPaおよび400kPaになるように厚みを変えて挿入した。それらを定法に従い希硫酸を注液し、化成を行い、表1に示す内容の容量、約0.8Ah(10時間率)の制御弁式鉛蓄電池を作製した。
【0019】
図5は、該鉛蓄電池の構造を示す要部断面図で、1は正極集電体、2は導電性ダイヤモンド層、3は正極活物質、4は負極集電体、5は負極活物質、6はガラス繊維セパレータ、7は排気孔、8は絶縁枠をそれぞれ示す。
【0020】
図5に示すように、両極の集電体は外装ケースの一部を兼ねていると共に端子の機能も備えており、従来の鉛蓄電池のように端子が不要である。
【0021】
なお、導電性ダイヤモンド層で被覆せずPbシートをそのまま用いた以外は、上記と同じ方法で作製した従来型の制御弁式鉛電池も試験に供した。試作蓄電池の内容を表1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
これらの蓄電池を室温で0.5CA(C:定格容量、A:電流の単位)の電流で1時間放電し、0.2CAの電流で4.1時間充電するパターンの充・放電サイクル試験を行った。寿命試験中の放電容量の推移を図6に示す。
【0024】
図6に示すように、従来型鉛蓄電池No.3は、約500サイクルで寿命に達したが、本発明の蓄電池No.1および2は、いずれも800サイクルの時点でまだ十分な容量を維持しており、特に、圧迫力が400kPaの蓄電池2はより優れた寿命特性を示した。
【0025】
上記のように、Pbの集電体に導電性ダイヤモンドの薄膜層を形成すると共に、セパレータにより正極活物質に圧迫を加え前記導電性ダイヤモンドと活物質とを密着させることによって実用的な導電性が確保でき、導電性ダイヤモンドの優れた耐食性の効果により集電体の主構成要素であるPbの腐食が大幅に抑制され、鉛蓄電池の寿命性能が大幅に改善されることが明らかになった。
【0026】
本実施例では、活物質を集電体にペースト状の原料を充填した正極板を使用したが、あらかじめ別途作製した活物質のペレットを準備しておき、集電体に所定の圧力で当接する方法も適用可能である。
【0027】
本実施例では図5に示す2Vの蓄電池を製作したが、本発明の構造では、両極の集電体が外装ケースの一部を兼ねていると共に端子の機能も備えているので、2Vの単蓄電池(セル)を積層するだけで高電圧あるいは高容量のモジュール電池を容易に作製できる。図7は高電圧モジュールの一例を示す要部断面図、図8は高容量のモジュールの一例を示す要部断面図をそれぞれ示す。
【0028】
図7において、構成部材は図5と同じ番号を付記する。
【0029】
図8において、9は正極端子、10は負極端子をそれぞれ示す。他の構成部材は図5と同じ番号を付記する。
【0030】
図7および図8に示すように本発明の方式を採用することによって、従来の鉛蓄電池では、蓄電池を直列接続して高電圧化あるいは並列接続して高容量化する際に必要であった極板耳群同士の溶接あるいはセル間を接続捍により溶接・接続するもしくは蓄電池外部で端子間をリード線等による結線するといった手間が不要で、容易に高電圧あるいは高容量の蓄電池を得ることができる。
【0031】
また、本発明の導電性ダイヤモンド層を正極集電体表面に形成する技術を適用すれば、基本的に集電体の腐食がないために、バイポーラ電池も容易に実現可能である。図9は、バイポーラ電池の一例を示す構造断面図で、11はバイポーラ集電体を示す。他の構成部材は図5と同じ番号を付記する。
【0032】
図9に示すように1枚の集電体11の導電性ダイヤモンド薄膜層2を形成した面には正極活物質3を充填し、反対側には負極活物質5を充填し、この極板をセパレータ6を介して多数枚積層することにより高電圧の蓄電池が容易に作製できる。このような1枚の集電体で正・負極活物質を有する極板を用いた蓄電池をバイポーラ電池と呼ぶ。本発明の蓄電池は集電体の腐食がほとんどないことからバイポーラ電池を作製するのに適しており、非常に安価なモジュール蓄電池が供給できる。
【0033】
実施例では、ダイヤモンドに窒素をドープした導電性ダイヤモンドを適用したが、ホウ素をドープした導電性ダイヤモンドも同様の効果が得られた。
【0034】
集電体表面に導電性ダイヤモンドの薄膜層を形成する方法として、実施例ではプラズマCVD法を採用したが、スパッタリング法によっても実現可能である。また、これらの方法にこだわらず、金属集電体に導電性ダイヤモンドの薄膜層を形成できる方法であれば、特に上記方法にはこだわらない。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、集電体表面に耐食性導電層を形成した極板を用いた蓄電池においては、耐食性が優れておれば、集電体の導電性に問題がある、あるいは導電性が優れていると正極の酸素過電圧が低下し充電特性に悪影響を与えるといった問題が発生し、実用化に至っていなかったが、本発明によればそのような問題点を解決し、耐食性に優れ、しかも軽くて薄い蓄電池用集電体が得られ、そのことによって長寿命でエネルギー密度が高くしかも信頼性の高い蓄電池を安価に提供できその工業的な価値は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による正極集電体の実施例の構造を示す要部模式断面図。
【図2】アノード酸化試験中の端子電圧の推移を示す特性図。
【図3】アノード酸化試験後の鉛集電体の腐食量を示す特性図。
【図4】本発明品と従来品との放電特性の比較を示す図。
【図5】導電性ダイヤモンドの薄膜層を形成した正極板を用いた鉛蓄電池の構造の一例を示す模式断面図。
【図6】本発明品および従来品のサイクル寿命試験中の放電容量の推移を示す特性図。
【図7】正極集電体表面に導電性ダイヤモンド層を形成した正極板を用いた鉛蓄電池の高電圧化の一例を示す模式断面図。
【図8】正極集電体表面に導電性ダイヤモンド層を形成した正極板を用いた鉛蓄電池の高容量化の一例を示す模式断面図。
【図9】正極集電体表面に導電性ダイヤモンド層を形成した正極板によるバイポーラー鉛蓄電池の構造を示す模式断面図。
【符号の説明】
1 集電体本体
2 導電性ダイヤモンドの薄膜層
3 正極活物質
4 負極集電体
5 負極活物質
6 セパレータ
7 排気孔
8 絶縁枠
9 正極端子
10 負極端子
11 バイポーラ集電体
【発明の属する技術分野】
本発明は、蓄電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、飛躍的発展を遂げている電子応用機器は、蓄電池を電源としているものが多い。蓄電池には鉛、ニッケル水素、リチウムイオン等、種々のものがあるが、それぞれに未だ改善の余地がある。例えば、鉛蓄電池は、コスト・安全性・信頼性の面で二次電池として長く利用されてきているが、ニッケル水素やリチウムイオンに比べ、エネルギー密度が低いという欠点がある。
【0003】
鉛蓄電池の構成は、正極板、負極板、セパレータおよび電解液からなっている。正極板は、鉛あるいは鉛合金からなる格子に活物質の二酸化鉛(PbO2)が保持された構造で、負極板は、鉛あるいは鉛合金からなる格子に活物質の鉛(Pb)が保持された構造である。電解液には濃度、30〜45質量%の希硫酸が、また、セパレータには、多孔性合成樹脂製のものやガラス繊維製のものが用いられている。
【0004】
鉛蓄電池の劣化の主要因は正極集電体の腐食である。正極集電体は、開回路の状態でも電位の高いPbO2と常時接しているため、常に腐食される環境にある。充電時には充電過電圧が加わって、電位が高くなり腐食が加速する。集電体は、集電機能および活物質を保持する機能を持っているが、腐食が進めばこれらの機能が低下して蓄電池の容量を低下させる。したがって、長寿命化するためには集電体の体積を一定以上確保する必要がある。そのことによって、正極板は自ずと厚いものになる。
【0005】
また、正極活物質は微細構造を有する多孔性物質で、充・放電時に電解液である硫酸が関与するため、極板が厚くなると電解液の活物質細孔内での移動がし難くなり、正極活物質の利用率が低下する。さらに、正極集電体の耐食性をよくするために低比重電解液を用いるのが良いことは知られているが、これも電解液中の反応物として消費される硫酸根が不足することになり正極活物質の利用率を下げる要因となる。活物質の利用率が低下すると、必要量の電気容量を取り出すためにより多くの活物質量が必要となり、極板が重くなってエネルギー密度が低下する。このように鉛蓄電池を長寿命化するための正極集電体の腐食劣化抑制策が、理論エネルギー密度の低い鉛蓄電池の実用エネルギー密度を更に低くしている。
【0006】
上記は鉛蓄電池についてのものであるが、集電体の腐食に起因する電気特性低下という問題は、多くの蓄電池にも内在しており、より耐食性の優れた集電体を備えた蓄電池の出現が望まれる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、鉛蓄電池の正極集電体に要求される特性は、高い導電性、硫酸への不溶性、硫酸水溶液中での正極(PbO2)電位に対する電気化学的安定性、高い酸素過電圧である。鉛あるいは鉛合金以外の金属は、導電性の点では前者より優れていることが多いが、鉛蓄電池の電解液である希硫酸中で正極(PbO2)電位に晒されると著しく溶解あるいは腐食し、また、酸素過電圧が低いために正極で自己放電反応が促進したり充電特性に悪影響を与えたりして通常、適用不可能である。一方、耐食性に優れた物質は絶縁体であることが多く、適用不可能で、適切な物質が見出せていないのが現状であった。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、上記問題を克服し、導電性を有し、耐食性にも優れた薄膜層を集電体表面に形成した極板を備えた蓄電池を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の課題を解決するための手段として、請求項1によれば、集電体表面に耐食性導電層を形成した極板を備えた蓄電池において、前記耐食性導電層が導電性ダイヤモンドを含むことを特徴とするものである。
【0010】
周知のとおり、ダイヤモンドはカーボンが強固に結合した物質で化学的に非常に安定な特性を有しており、蓄電池の充・放電反応、すなわち、電気化学的酸化・還元反応に対して安定であると共に、蓄電池に使用される電解液、例えば濃度、30〜45質量%の希硫酸にも侵されることなく安定して存在し得るのであるが、約1000Ωcmの絶縁体であり適用できない。それに対して、ダイヤモンドにホウ素や窒素をドープすることによって導電性が付加され、条件によって異なるが導電率が0.1〜10Ωcm以下となる。これを導電性ダイヤモンドと称している。しかも該導電性ダイヤモンドをアノード分極させた時の酸素過電圧が高く、しかも、上述したダイヤモンドの安定性を保持しているので、蓄電池の集電体として具備すべき特性を全て備えており、集電体の耐食性導電材に適していることを本願発明者は見出した。
【0011】
導電性ダイヤモンドの電気伝導率が正極活物質PbO2の4×10−3Ωcmに比べて低い場合でも、集電体の表面に導電性ダイヤモンドの薄膜層を形成すると共に、活物質を該薄膜層に圧迫を加えた状態で密着させることによって極板としての実用的な導電性が得られ、しかも、ダイヤモンドが本来有している化学的な安定性によって、薄くて軽量、かつ十分な耐食性を備えた極板が得られることを本願発明者は見出した。鉛蓄電池の場合、これを正極集電体として用いることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明は鉛蓄電池に限るものではなく、他の蓄電池にも適用可能である。尚、集電体に形成する耐食性導電層は導電性ダイヤモンドのみで形成してもよいが、他の耐食性導電材と共存させてもよい。さらに、耐食性導電層は、必ずしも集電体表面全体に形成する必要はなく、集電体形状によっては、表面の一部であってもよい。
【0013】
【実施例】
本発明を実施例に基づき詳細に説明する。
〔実施例1〕
図1は、本発明による実施例1の正極集電体を示す要部断面図で、1は鉛からなる集電体本体、2は該集電体表面にプラズマCVD法により形成された窒素をドープした導電性ダイヤモンド薄膜層をそれぞれ示す。
【0014】
図1に示す集電体と耐食性導電層を形成しない従来のPbのみの集電体とに、酸化鉛を主体とする粉末を希硫酸で練膏してペースト状にした正極用原料を充填し、熟成・乾燥を経て未化成正極板を作成した。さらに、Tiからなる集電体に上記と同じ方法で窒素をドープした導電性ダイヤモンド薄膜層を形成したものと、薄膜層を形成しないものについて、上記と同様の正極用原料を充填し、熟成・乾燥を経て未化成正極板を作成した。しかる後、通常の化成を行い、電解液である希硫酸の比重が1.280になるように調整した。これら4種類の極板を対極に鉛電極を用いて、20mA/cm2の定電流でアノード酸化試験を行った。
【0015】
試験結果を図2に示す。図2は、各電極のアノード酸化中の電圧推移を示すもので、導電性ダイヤモンドの薄膜層で被覆しなかったTi基板のみの集電体は、基板表面がアノード酸化を受け不働態化したため、早期に著しく高い電圧を示した。すなわち高い抵抗体が形成され、正極板として機能が維持できなくなってしまった。しかし、導電性ダイヤモンド層で被覆したTi集電体を用いた電極は、600時間酸化試験を行っても全く電圧挙動に異常はなく、鉛蓄電池の集電体として十分適用可能であることが分かった。また、Pb集電体に導電性ダイヤモンド層を被覆した電極もTi集電体と同様の効果が得られた。試験後、これらを解体調査した結果、いずれも導電性ダイヤモンド層の劣化が見られなかった。一方、Pbのみの集電体は、短期間で機能が維持できなくなるということはなかったが、従来の鉛蓄電池の特性であるアノード酸化による集電体の腐食が著しかった。
【0016】
図3に上記600時間のアノード酸化試験後の導電性ダイヤモンドを被覆したPb集電体とPbのみの集電体との腐食量の比較を示す。被覆したものは、被覆なしのものに比べて腐食量が著しく少なく、本発明の効果が明らかになった。
【0017】
図4に導電性ダイヤモンドの薄膜層を形成した集電体とPbのみの集電体とをそれぞれ用いた正極板を通常の鉛負極板を対極に用いて電流密度10mA/cm2および100mA/cm2で放電を行い、両者の放電特性の比較をした。いずれの場合も両者に放電特性の差はなく、導電性ダイヤモンドの薄膜層を形成させた構造の集電体を用いても鉛蓄電池の放電特性に悪影響を及ぼさないことがわかった。
【0018】
以上のように、導電性ダイヤモンドの薄膜層を集電体表面に形成することにより、従来のPbのみの集電体に比べてアノード酸化に対する耐食性が大幅に改善され、さらに、Tiのような単独では鉛蓄電池の集電体として使用できない金属であっても、導電性ダイヤモンド層で被覆することによって使用可能になることがわかった。このことにより、従来の比重の高い鉛あるいは鉛合金からなる集電体に代わって、比重の低いTiのような金属が鉛蓄電池の集電体に使用可能になり鉛蓄電池の欠点の一つである重量効率の低さを改善できることがわかった。
〔実施例2〕
実施例1と同じ方法で導電性ダイヤモンド層を形成した集電体の表面に、実施例1と同じ鉛蓄電池用ペースト状正極原料を充填・熟成・乾燥を行い、負極には通常の鉛シート上にペースト状負極原料を充填・熟成・乾燥を行い、両極板の間に微細ガラス繊維からなるセパレータを圧迫力が20kPaおよび400kPaになるように厚みを変えて挿入した。それらを定法に従い希硫酸を注液し、化成を行い、表1に示す内容の容量、約0.8Ah(10時間率)の制御弁式鉛蓄電池を作製した。
【0019】
図5は、該鉛蓄電池の構造を示す要部断面図で、1は正極集電体、2は導電性ダイヤモンド層、3は正極活物質、4は負極集電体、5は負極活物質、6はガラス繊維セパレータ、7は排気孔、8は絶縁枠をそれぞれ示す。
【0020】
図5に示すように、両極の集電体は外装ケースの一部を兼ねていると共に端子の機能も備えており、従来の鉛蓄電池のように端子が不要である。
【0021】
なお、導電性ダイヤモンド層で被覆せずPbシートをそのまま用いた以外は、上記と同じ方法で作製した従来型の制御弁式鉛電池も試験に供した。試作蓄電池の内容を表1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
これらの蓄電池を室温で0.5CA(C:定格容量、A:電流の単位)の電流で1時間放電し、0.2CAの電流で4.1時間充電するパターンの充・放電サイクル試験を行った。寿命試験中の放電容量の推移を図6に示す。
【0024】
図6に示すように、従来型鉛蓄電池No.3は、約500サイクルで寿命に達したが、本発明の蓄電池No.1および2は、いずれも800サイクルの時点でまだ十分な容量を維持しており、特に、圧迫力が400kPaの蓄電池2はより優れた寿命特性を示した。
【0025】
上記のように、Pbの集電体に導電性ダイヤモンドの薄膜層を形成すると共に、セパレータにより正極活物質に圧迫を加え前記導電性ダイヤモンドと活物質とを密着させることによって実用的な導電性が確保でき、導電性ダイヤモンドの優れた耐食性の効果により集電体の主構成要素であるPbの腐食が大幅に抑制され、鉛蓄電池の寿命性能が大幅に改善されることが明らかになった。
【0026】
本実施例では、活物質を集電体にペースト状の原料を充填した正極板を使用したが、あらかじめ別途作製した活物質のペレットを準備しておき、集電体に所定の圧力で当接する方法も適用可能である。
【0027】
本実施例では図5に示す2Vの蓄電池を製作したが、本発明の構造では、両極の集電体が外装ケースの一部を兼ねていると共に端子の機能も備えているので、2Vの単蓄電池(セル)を積層するだけで高電圧あるいは高容量のモジュール電池を容易に作製できる。図7は高電圧モジュールの一例を示す要部断面図、図8は高容量のモジュールの一例を示す要部断面図をそれぞれ示す。
【0028】
図7において、構成部材は図5と同じ番号を付記する。
【0029】
図8において、9は正極端子、10は負極端子をそれぞれ示す。他の構成部材は図5と同じ番号を付記する。
【0030】
図7および図8に示すように本発明の方式を採用することによって、従来の鉛蓄電池では、蓄電池を直列接続して高電圧化あるいは並列接続して高容量化する際に必要であった極板耳群同士の溶接あるいはセル間を接続捍により溶接・接続するもしくは蓄電池外部で端子間をリード線等による結線するといった手間が不要で、容易に高電圧あるいは高容量の蓄電池を得ることができる。
【0031】
また、本発明の導電性ダイヤモンド層を正極集電体表面に形成する技術を適用すれば、基本的に集電体の腐食がないために、バイポーラ電池も容易に実現可能である。図9は、バイポーラ電池の一例を示す構造断面図で、11はバイポーラ集電体を示す。他の構成部材は図5と同じ番号を付記する。
【0032】
図9に示すように1枚の集電体11の導電性ダイヤモンド薄膜層2を形成した面には正極活物質3を充填し、反対側には負極活物質5を充填し、この極板をセパレータ6を介して多数枚積層することにより高電圧の蓄電池が容易に作製できる。このような1枚の集電体で正・負極活物質を有する極板を用いた蓄電池をバイポーラ電池と呼ぶ。本発明の蓄電池は集電体の腐食がほとんどないことからバイポーラ電池を作製するのに適しており、非常に安価なモジュール蓄電池が供給できる。
【0033】
実施例では、ダイヤモンドに窒素をドープした導電性ダイヤモンドを適用したが、ホウ素をドープした導電性ダイヤモンドも同様の効果が得られた。
【0034】
集電体表面に導電性ダイヤモンドの薄膜層を形成する方法として、実施例ではプラズマCVD法を採用したが、スパッタリング法によっても実現可能である。また、これらの方法にこだわらず、金属集電体に導電性ダイヤモンドの薄膜層を形成できる方法であれば、特に上記方法にはこだわらない。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、集電体表面に耐食性導電層を形成した極板を用いた蓄電池においては、耐食性が優れておれば、集電体の導電性に問題がある、あるいは導電性が優れていると正極の酸素過電圧が低下し充電特性に悪影響を与えるといった問題が発生し、実用化に至っていなかったが、本発明によればそのような問題点を解決し、耐食性に優れ、しかも軽くて薄い蓄電池用集電体が得られ、そのことによって長寿命でエネルギー密度が高くしかも信頼性の高い蓄電池を安価に提供できその工業的な価値は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による正極集電体の実施例の構造を示す要部模式断面図。
【図2】アノード酸化試験中の端子電圧の推移を示す特性図。
【図3】アノード酸化試験後の鉛集電体の腐食量を示す特性図。
【図4】本発明品と従来品との放電特性の比較を示す図。
【図5】導電性ダイヤモンドの薄膜層を形成した正極板を用いた鉛蓄電池の構造の一例を示す模式断面図。
【図6】本発明品および従来品のサイクル寿命試験中の放電容量の推移を示す特性図。
【図7】正極集電体表面に導電性ダイヤモンド層を形成した正極板を用いた鉛蓄電池の高電圧化の一例を示す模式断面図。
【図8】正極集電体表面に導電性ダイヤモンド層を形成した正極板を用いた鉛蓄電池の高容量化の一例を示す模式断面図。
【図9】正極集電体表面に導電性ダイヤモンド層を形成した正極板によるバイポーラー鉛蓄電池の構造を示す模式断面図。
【符号の説明】
1 集電体本体
2 導電性ダイヤモンドの薄膜層
3 正極活物質
4 負極集電体
5 負極活物質
6 セパレータ
7 排気孔
8 絶縁枠
9 正極端子
10 負極端子
11 バイポーラ集電体
Claims (1)
- 集電体表面に耐食性導電層を形成した極板を備えた蓄電池において、
前記耐食性導電層が導電性ダイヤモンドを含むことを特徴とする蓄電池。
Priority Applications (1)
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Family Applications (1)
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Country | Link |
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JP (1) | JP2004327158A (ja) |
-
2003
- 2003-04-23 JP JP2003118332A patent/JP2004327158A/ja active Pending
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