JP2004325302A - 広範囲まで測定可能な活線絶縁診断装置および方法 - Google Patents

広範囲まで測定可能な活線絶縁診断装置および方法 Download PDF

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JP2004325302A
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Kenji Tsuji
建二 辻
Tokinori Kuwabara
時紀 桑原
Takanori Kadokawa
高則 角川
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Chubu Electric Power Co Inc
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Abstract

【課題】再現性に優れた精度の高い測定を実現できる広範囲まで測定可能な活線絶縁診断装置および方法を提供する。
【解決手段】電路1に低周波信号を重畳する低周波重畳電源4、2次巻線および校正信号入力巻線としての3次巻線を有し、電路1に取り付けられるZCT7、ZCT7の3次巻線に低周波の校正用電流を入力する校正用電源12を有し、校正測定によりZCT7の3次巻線に低周波の校正用電流を入力してゲインGcal(=|Ig÷Ical|)と位相差θcal(=Ig∠Ical)をZCT7の校正情報として求め、この校正情報を用いて、本測定によりZCT7より取得される零相電流Igを補正することにより、ZCT7での位相シフトの影響を除去する。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、活線電路の絶縁インピーダンスを測定して絶縁診断を行う広範囲まで測定可能な活線絶縁診断装置および方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電路の絶縁診断は、電路における地絡事故を未然に防止するために重要な作業である。しかし、活線運転中の電路を停電状態にすることは、場合によって非常に難しいため、電路の絶縁インピーダンスを活線状態で測定することにより絶縁状態の診断を行う活線絶縁診断装置が用いられている。
【0003】
図10(a)(b)は、従来の活線絶縁診断装置の一例を説明するもので、同図(a)は、装置の概略構成を示している。
【0004】
図において、501は三相Y結線された電路で、この電路501の中性点502には、低周波重畳電源(例えば周波数=1Hz)503が接続されている。また、電路501には、各相毎に(図面では一相分のみ示している。)遮断器504を介して対地絶縁抵抗の測定対象となる負荷505が接続されている。
【0005】
この場合、負荷505は、図10(b)に示すように等価的にRgなる対地絶縁抵抗507とCgなる対地容量508とで構成されている。ここで、これら対地絶縁抵抗507と対地容量508にそれぞれ流れる電流をIgR、IgCとし、また、低周波電圧信号をV、低周波重畳電圧Vの周波数をfとすると、同図のベクトル図からIgR=V/Rg、IgC=V・2πfCgがそれぞれ求められる。
【0006】
これにより、Rg=V/IgRから電路の地絡事故の判断基準となる対地絶縁抵抗Rgが求められる。
【0007】
なお、このときのIgRとIgCは、図10(c)に示す関係にあり、同図に示す零相電流Igと対地絶縁抵抗507に流れる電流IRgのなす角度θは、
θ=tan−1(IgC/IgR)=tan−1(2πfCgRg) (1)
で表わされる。
【0008】
そこで、上述の対地絶縁抵抗Rgを測定するため、以下述べる測定方法が用いられる。この場合、図10(a)に示すように、遮断器504と負荷505との間の電路501aには、零相変流器(以下、ZCTと称する。)506が取り付けられている。ZCT506には、電路501を停電させないためクランプ型ZCTが使用されている。
【0009】
そして、電路501a上の低周波電圧信号V、つまり低周波重畳電源503によって診断ポイントに発生する低周波電圧信号Vと、ZCT506の出力巻線から出力される零相電流Igを活線絶縁診断装置本体600に入力する。
【0010】
活線絶縁診断装置本体600には、狭帯域増幅回路601が設けられている。この狭帯域増幅回路601は、低周波電圧信号Vが与えられると、低周波電圧信号Vの成分からノイズを取り除くとともに、低周波重畳電源503の周波数成分(例えば1Hz)を選択増幅して基準信号を生成する。
【0011】
また、活線絶縁診断装置本体600には、位相検波器(PSD)602、603が設けられている。これらPSD602、603には、ZCT506で測定した零相電流Igが与えられている。このうち、PSD602には、狭帯域増幅回路601の出力である基準信号が参照信号として印加され、また、PSD603には、狭帯域増幅回路601の出力である基準信号を90度移相器604によって90度位相シフトした信号が参照信号として印加される。
【0012】
これにより、PSD602は、低周波電圧信号Vと同相な成分である対地絶縁抵抗成分電流IgRを出力し、一方、PSD603は、90度異なった参照信号で位相検波されているため、低周波電圧信号Vとは90度位相の異なった対地容量成分電流IgCを出力する。
【0013】
PSD602、603には、それぞれ平均化回路605、606を介して演算回路607が接続されている。これにより、各PSD602、603により得られたIgR、IgCは、平均化回路605、606を各別に介して演算回路607に送られ、Rg=V/IgR、Cg=V・2πf/IgCの演算が行われ、それぞれ対地絶縁抵抗Rg、対地容量Cgとして表示回路608に表示される。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このような活線絶縁診断装置によると、以下のような問題点があった。
【0015】
(a)絶縁診断の高感度化を目指すため、例えば、ZCT506に大きなゲイン(高感度)のものを使用すると、大きな位相シフトが発生し、これが原因で、(1)式の角度θが大きく変化してしまい、安定して対地絶縁抵抗Rgを測定するのが困難になる。
【0016】
ここで、その理由を簡単に説明する。図11(a)は、ZCT506の実際の測定ブロック図を示すもので、出力巻線として2次側コイル506aが設けられ、この2次側コイル506aの出力端に負荷抵抗として変換抵抗506bが接続されている。そして、電路501に通電電流Iが流れているとき、この電流Iにより2次側コイル506aに流れる電流を変換抵抗506bで電圧Vに変換し、この電圧Vを活線絶縁診断装置本体600に入力して対地絶縁抵抗を測定する。
【0017】
また、図11(b)は、ZCT506の等価回路を示すもので、(I/N)は通電電流IをZCT506の2次側(巻数=N)に換算した電流源、Lは2次側コイル506aのインダクタンス、Rは巻線抵抗、RLは変換抵抗506bである。
【0018】
このようなZCT506を用いて対地絶縁抵抗を測定する場合、ノイズなどの悪影響を避けるためZCT506の出力電圧が大きいほうが望ましい。このため、ZCT506の2次側コイル506aの巻数を小さくするか、または変換抵抗506bの値を大きくする必要がある。
【0019】
ところが、図12(a)に示すように変換抵抗RLをパラメータに、横軸を巻数N、縦軸をゲイン(Gain)で表わしたゲイン特性を見ると、例えば、高ゲインを得るため変換抵抗506bの値は大きい方が良いということで、RL=1kΩとすると、N=約10,000turn(=回)のときに最大ゲインとなることがわかる。しかし、図12(b)に示すように変換抵抗RLをパラメータに、横軸を巻数N、縦軸を位相シフト(Phase)で表わした位相シフト特性を見ると、RL=1kΩ、N=10,000turn(=回)のときの位相シフトは約35deg(=度)もの大きなものになってしまう。
【0020】
従って、診断の高感度化のため変換抵抗506bの値を大きく設定すると、位相シフトの量が大きくなってしまうため、位相誤差を重視する上述した活線絶縁診断装置では正確な絶縁診断をするのが難しいと考えられていた。
【0021】
このため、従来では、この問題を避けるため位相シフトが小さくなるように、2次側コイル506aの巻数を小さくし、変換抵抗506bの値も小さくした状態で使用しており、絶縁診断の高感度化は難しいとされている。
【0022】
(b)クランプ型のZCT506を使用すると、クランプ部の不安定さ、つまりクランプ部の開閉に伴う鉄心の噛合せの不安定さ(水分、油分、ほこり等の付着、機械的ガタ)により、この部分の磁気特性が不安定となる。その結果、位相シフトが事前予測不可能な再現性の無い不安定なものとなり、これが原因で、正確な絶縁診断が難しくなる。
【0023】
(c)基準信号は、低周波電圧信号Vをフィルタリングして生成されるが、低周波重畳電源503や電路から混入するノイズを完全に除去するのは難しく、不安定な状態になるため、活線絶縁診断装置本体600での対地容量成分電流IgCと対地絶縁抵抗成分電流IgRの測定に誤差が生じ易く、正確な絶縁診断が難しくなる。
【0024】
(d)低周波電圧信号Vを基準信号としているため、低周波電圧信号Vの大きさの変化がそのまま測定誤差になる。つまり、診断ポイントで検出した低周波電圧信号Vを一定(基準)として演算処理を行っているが、仮に低周波電圧信号Vの取り出しポイントと低周波重畳電源503との間に、例えば接地表示灯等の抵抗が挿入されると、ここでの電圧降下により、基準信号と実際に測定される低周波電圧信号Vとの違いから測定誤差が発生する。
【0025】
(e)狭帯域増幅回路601に使用される電子部品(例えば抵抗やコンデンサ等)の値が、周囲温度や経年使用で微小な変化を生じて位相シフトを発生させることがあり、この位相シフトが対地容量成分電流IgCと対地絶縁低抗成分電流IgRの分離特性の劣化の原因となって正確な絶縁診断が難しくなる。
【0026】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、再現性に優れた精度の高い測定を実現できる広範囲まで測定可能な活線絶縁診断装置および方法を提供することを目的とする。
【0027】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、電路に低周波信号を重畳する低周波重畳電源と、出力巻線および校正信号入力巻線を有し、且つ前記電路に取り付けられる零相変流器と、前記零相変流器の校正信号入力巻線に低周波の校正信号を入力する校正用電源と、基準信号源を有し、該基準信号源の基準信号に基づいて、前記校正用電源の校正信号により前記零相変流器の出力巻線に出力される第1の電流信号情報および前記校正信号情報をそれぞれ検出するとともに、前記低周波重畳電源の低周波信号により前記電路に発生する電圧信号情報および前記零相変流器の出力巻線に出力される第2の電流信号情報をそれぞれ検出する信号検出手段と、前記第1の電流信号情報および校正信号情報により前記零相変流器の校正情報を求め、該校正情報により前記第2の電流信号情報を補正するとともに、該補正により取得された結果と前記電圧信号情報により前記電路の絶縁インピーダンスを求める演算手段とを具備したことを特徴としている。
【0028】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記低周波重畳電源をオンオフする第1のスイッチ手段と前記校正用電源をオンオフする第2のスイッチ手段をさらに有し、これら第1および第2のスイッチ手段のオンオフのタイミングが相反関係に設定されることを特徴としている。
【0029】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記低周波重畳電源の低周波信号および校正用電源の校正信号は、それぞれ異なる周波数に設定されることを特徴としている。
【0030】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記低周波信号と前記校正信号の周波数は、それぞれの周波数をfmeas、fcalとするとき、m/fmeas=n/fcalなる関係を満足する整数m、nが存在することを特徴としている。
【0031】
請求項5記載の発明は、請求項3または4記載の発明において、前記校正用電源をオンオフするスイッチ手段をさらに有し、該スイッチ手段は、前記信号検出手段が前記校正用電源の校正信号により前記零相変流器の出力巻線に出力される第1の電流信号情報および前記校正信号情報を検出した後、オフするように設定されることを特徴としている。
【0032】
請求項6記載の発明は、1乃至5のいずれかに記載の発明において、前記零相変流器は、位相特性を無視して変換ゲインを大きくする条件を満足するように前記出力巻線の巻数と該出力巻線に接続される負荷抵抗を設定したことを特徴としている。
【0033】
請求項7記載の発明は、1乃至5のいずれかに記載の発明において、前記零相変流器は、前記電路へ取付られる際、接合可能な一対の鉄心を有するクランプ型をなし、前記鉄心の接合部に高透磁率部材を介在させたことを特徴としている。
【0034】
請求項8記載の発明は、1乃至5のいずれかに記載の発明において、前記零相変流器は、前記電路へ取付られる際、接合可能な一対の鉄心を有するクランプ型をなし、前記鉄心の接合部をクリーニングするクリーニング手段を設けたことを特徴としている。
【0035】
請求項9記載の発明は、活線絶縁診断方法であって、出力巻線および校正信号入力巻線を有する零相変流器を電路に取り付け、前記電路に低周波重畳電源より低周波信号を重畳し、前記零相変流器の校正信号入力巻線に校正用電源より低周波の校正信号を入力し、基準信号源の基準信号に基づいて、前記校正用電源の校正信号により前記零相変流器の出力巻線に出力される第1の電流信号情報および前記校正信号情報をそれぞれ検出するとともに、前記低周波重畳電源の低周波信号により前記電路に発生する電圧信号情報および前記零相変流器の出力巻線に出力される第2の電流信号情報をそれぞれ検出し、前記第1の電流信号情報および校正信号情報により前記零相変流器の校正情報を求め、該校正情報により前記第2の電流信号情報を補正するとともに、該補正により取得された結果と前記電圧信号情報により前記電路の絶縁インピーダンスを求めることを特徴としている。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に従い説明する。
【0037】
(第1の実施の形態)
この第1の実施の形態では、実際に測定する活線状態にある電路に、クランプ型ZCTをクランプし、校正を行った後に本測定(対地絶縁抵抗測定)を行なうようにしている。この場合、校正測定と本測定を同じ周波数で行い、実際の測定周波数に対応したZCTの校正を行うことを特徴としている。このため、低周波重畳電源による電流と校正用電流が同時に発生しないように、これら電流の供給のオン/オフのタイミングをずらしており、最初にZCTの校正を行い、次に本測定を行っている。具体的には、最初に電路に重畳する重畳用低周波信号をオフし、校正用電源をオンにしてZCTの校正測定を行い、その後、重畳用低周波信号をオンし、校正用電源をオフとして対地絶縁抵抗の本測定を行っている。
【0038】
図1(a)は、本発明の第1の実施の形態が適用される活線絶縁診断装置の概略構成を示すものである。図において、1は三相Y結線された電路で、この電路1の中性点2には、抵抗(Re)3が挿入されている。
【0039】
抵抗3の両端には、第2のスイッチ手段としてのスイッチ5(SW1)を介して低周波重畳電源4が接続されている。低周波重畳電源4は、低周波信号として低周波重畳信号(例えば周波数fmeas=1Hz)を発生するものである。抵抗3は、スイッチ5がオフとなった場合、接地抵抗を低く保つためのものである。
【0040】
電路1には、各相毎に(図面では一相分のみ示している。)遮断器6を介して三相の負荷8が接続されている。この負荷8は、例えば三相モータなどからなるもので、低周波重畳電源4からの低周波信号が印加された状態で、対地絶縁抵抗が診断(測定)されるようになっている。
【0041】
遮断器6と負荷8との間の電路1aには、ZCT7が取り付けられている。このZCT7は、図1(b)に示すように三相分の電路1aが貫通された環状の鉄心7aを有していて、この鉄心7aに、出力巻線として零相電流測定用の2次巻線7bと、校正信号入力巻線としての1ターンの3次巻線7cが巻回されている。この3次巻線7cは、実際に測定する電路1aを模擬するもので、校正信号としての後述する校正用電流IcalをZCT7に与えるようにしている。
【0042】
一方、電路1a上の低周波電圧信号V、つまり低周波重畳電源4によって診断ポイントに発生する低周波電圧信号Vと、ZCT7の2次巻線7bから出力される零相電流Igは、信号検出手段としての活線絶縁診断装置本体10に入力され、また、後述する校正用電源12から出力される校正信号としての校正用電流Icalが3次巻線7cに入力されるようになっている。
【0043】
活線絶縁診断装置本体10には、校正用電流を検出する抵抗(Rs)11、校正用電流Ical(例えば周波数fcal=1Hz)を校正信号として出力する校正用電源12、この校正用電源12の出力をオン/オフするためのスイッチ13(SW2)が設けられている。
【0044】
この場合、スイッチ13をオンした状態で、校正用電源12より抵抗11を介してZCT7の3次巻線7cに校正用電流Icalが出力され、また、抵抗11より校正用電流(Ical×Rs)が出力され、活線絶縁診断装置本体10に入力するようになっている。
【0045】
ここで、スイッチ5とスイッチ13のオン/オフのタイミングは、相反関係になるように設定されていて、スイッチ5がオンの時は、スイッチ13がオフ、スイッチ13がオンの時は、スイッチ5がオフするようになっている。
【0046】
この場合、これらスイッチ5,13が同時にオンにならないようにする工夫が必要で、低周波重畳電源4の電路1への接続位置と活線絶縁診断装置本体10が離れている場合は、有線または無線による通信手段を用いて相互に連絡し合うことが必要である。
【0047】
図2は、活線絶縁診断装置本体10の具体的な構成を示したものである。なお、ここでの活線絶縁診断装置本体10は、低周波電圧信号Vから基本波(商用周波数)を除去するためのフィルタ類は省略している。
【0048】
活線絶縁診断装置本体10には、本測定時、電圧信号情報として低周波電圧信号Vの同相成分Vrと直交成分Viを検出する位相検波器(PSD)101a、101bと、第2の電流信号情報としてZCT7の2次巻線7bから出力される零相電流Igの同相成分Irと直交成分Iiを検出する位相検波器(PSD)102a、102bがそれぞれ設けられている。また、校正測定時、第1の電流信号情報としてZCT7の2次巻線7bから出力される零相電流Igの同相成分ICOrと直交成分ICOiを検出する位相検波器(PSD)103a、103bと、校正信号情報としてZCT7の3次巻線7cへの校正電流Icalの同相成分ICIrと直交成分ICIiを検出する位相検波器(PSD)104a、104bがそれぞれ設けられている。
【0049】
この場合、各位相検波器(PSD)101a、102a、103a、104aには、基準信号源105の基準信号が参照信号として各別に印加され、また、位相検波器(PSD)101b、102b、103b、104bには、基準信号源105の基準信号を90度移相器101c〜104cによって90度位相シフトした信号が参照信号として各別に印加されるようになっている。
【0050】
この場合、基準信号源105は、独立して用意されるもので、水晶発振器などが用いられている。また、基準信号源105の基準信号の周波数は、低周波重畳電源4および校正用電源12と同じ周波数(1Hz)になっている。
【0051】
位相検波器(PSD)101a、101bには、平均化回路106、107を介して演算回路14が接続されている。同様にして、位相検波器(PSD)102a、102bには、平均化回路108、109を介して、位相検波器(PSD)103a、103bには、平均化回路110、111を介して、位相検波器(PSD)104a、104bには、平均化回路112、113を介して、それぞれ演算手段としての演算回路14が接続されている。
【0052】
演算回路14は、校正測定により取得される校正用電流Ical(=ICIr+j ICIi)と零相電流Ig(=ICOr+j ICOi)から校正用電流Icalと零相電流Ig間のゲインGcal(=|Ig÷Ical|)と位相差θcal(=Ig∠Ical)をZCT7の校正情報として求める。また、本測定により取得される零相電流Igを校正情報のゲインGcalと位相差θcalで補正してIg’を求め、さらに、Ig’と低周波電圧信号V(=Vr+j Vi)のアドミタンスY(=Ig’/V)の実数部が対地絶縁抵抗の逆数1/Rgで、虚数部が対地静電容量Cgのインピーダンスの逆数2πfCgに相当することから、このうちの実数部の逆数を取って、目的とする電路の絶縁インピーダンスとして対地絶縁抵抗Rgを求めるようにしている。
【0053】
演算回路14には、表示器15が接続されている。この表示器15は、演算回路14で演算された結果を表示するものである。
【0054】
次に、このように構成された実施の形態の動作を説明する。
【0055】
まず、校正測定を行う。
【0056】
この場合、スイッチ5をオフにし、スイッチ13をオンにする。すると、校正用電源12より抵抗11を介してZCT7の3次巻線7cに校正用電流Icalが流れる。
【0057】
この状態で、ZCT7の2次巻線7bから零相電流Igが出力され、この零相電流Igが位相検波器(PSD)103a、103bに与えられる。
【0058】
この場合、位相検波器(PSD)103aには、基準信号源105の基準信号が参照信号として印加され、位相検波器(PSD)103bには、基準信号源105の基準信号を90度移相器103cによって90度位相シフトした参照信号が与えられている。
【0059】
これにより、位相検波器(PSD)103aより零相電流Igの同相成分ICOr、位相検波器(PSD)103bより零相電流Igの直交成分ICOiがそれぞれ出力され、平均化回路110、111を介して演算回路14に入力される。
【0060】
また、抵抗11より校正用電流(Ical×Rs)が出力され、この校正用電流が位相検波器(PSD)104a、104bに与えられる。
【0061】
この場合、位相検波器(PSD)104aには、基準信号源105の基準信号が参照信号として印加され、位相検波器(PSD)104bには、基準信号源105の基準信号を90度移相器104cによって90度位相シフトした参照信号が与えられている。
【0062】
これにより、上述したと同様にして、位相検波器(PSD)104a、104bよりZCT7の3次巻線7cの校正電流Icalの同相成分ICIrと直交成分ICIiが出力され、平均化回路112、113を介して演算回路14に入力される。
【0063】
演算回路14では、これら校正用電流Ical(=ICIr+j ICIi)と零相電流Ig(=ICOr+j ICOi)から、校正用電流Icalと零相電流Ig間のゲインGcal(=|Ig÷Ical|)を計算するとともに、位相差θcal(=Ig∠Ical)を計算し、この結果をZCT7の校正情報として一時記憶する。
【0064】
次に、本測定を行う。
【0065】
この場合、スイッチ13をオフにし、スイッチ5をオンにする。すると、低周波重畳電源4よりZCT7に低周波重畳信号が与えられる。
【0066】
この状態で、ZCT7の2次巻線7bから零相電流Igが出力され、この零相電流Igが位相検波器(PSD)102a、102bに与えられる。
【0067】
この場合、位相検波器(PSD)102aには、基準信号源105の基準信号が参照信号として印加され、位相検波器(PSD)102bには、基準信号源105の基準信号を90度移相器102cによって90度位相シフトした参照信号が与えられている。
【0068】
これにより、位相検波器(PSD)102a、102bより零相電流Igの同相成分Irと直交成分Iiがそれぞれ出力され、平均化回路108、109を介して演算回路14に入力される。
【0069】
また、低周波電圧信号Vが位相検波器(PSD)101a、101bに与えられる。
【0070】
この場合、位相検波器(PSD)101aには、基準信号源105の基準信号が参照信号として印加され、位相検波器(PSD)101bには、基準信号源105の基準信号を90度移相器101cによって90度位相シフトした参照信号が与えられている。
【0071】
これにより、位相検波器(PSD)101a、101bより低周波電圧信号Vの同相成分Vrと直交成分Viがそれぞれ出力され、平均化回路106、107を介して演算回路14に入力される。
【0072】
演算回路14では、本測定で取得した零相電流Igを、校正測定により取得したZCT7の校正情報であるゲインGcalと位相差θcalにより補正してIg’を求める。
【0073】
ここで、Ig’は、ZCT7の特性を補正した活線状態の電路1に流れる1Hz電流成分に相当するもので、下式により表わされる。
【0074】
Ig’=Ig×Gcal×exp(jθcal) (2)
また、このIg’と低周波電圧信号VのアドミタンスY(=Ig’/V)の実数部が対地絶縁抵抗抵抗の逆数1/Rgで、虚数部が対地静電容量Cgのインピーダンスの逆数2πfCgに相当することから、実数部の逆数を取って、目的とする絶縁インピーダンスとして対地絶縁抵抗Rgが求められる。そして、演算回路14で演算された対地絶縁抵抗Rgが表示器15に表示される。
【0075】
従って、このようにすれば、低周波重畳電源4と別に校正用電源12を設け、さらにZCT7に校正信号入力巻線として3次巻線7cを設けて、校正測定により3次巻線7cに校正用電流Icalを流すことで、ゲインGcal(=|Ig÷Ical|)と位相差θcal(=Ig∠Ical)をZCT7の校正情報として求め、この校正情報を用いて本測定によりZCT7より取得される零相電流Igを補正して、ZCTでの位相シフトの影響を除去するようにした。
【0076】
これにより、ZCT7として、仮に2次巻線7bの巻数が多く変換抵抗を大きくした、大きなゲイン(高感度)で、位相シフトの大きなものを用いても、この時の位相シフトの影響を受けることがなくなるので、精度の高い対地絶縁抵抗(絶縁インピーダンス)の測定を安定して行うことができる。また、このことは、ZCT7として高感度のものから低感度のものまで幅広く使用できるので、要求される測定精度に合わせることで広範囲に亘って最適な測定を行うことができる。
【0077】
さらに、本測定によりZCT7から出力される零相電流IgをZCT7の校正情報で補正することにより、安定して目的とする対地絶縁抵抗Rgを求めることができるので、常に再現性に優れた測定を行うことができる。
【0078】
さらにまた、活線絶縁診断装置本体10の基準信号源として、独立して用意される水晶発振器が用いられ、安定した基準信号が確保されているので、従来のように低周波重畳電源からの低周波重畳信号により得られる低周波電圧信号Vを基準信号として用いるものと比べ、低周波電圧信号Vの不安定さから生じる基準信号の不安定要素を全て取り除くことができ、測定誤差のない、精度の高い測定を行うことができる。
【0079】
さらにまた、従来の狭帯域増幅回路を使用しなくなり、かかる回路に使用する電子部品が、周囲温度や経年使用で微小な変化を生じて発生していた位相シフトを除去できるので、この位相シフトの影響も取り除くことができ、安定した測定を行うことができる。
【0080】
なお、活線絶縁診断装置本体10の位相検波器(PSD)103a、103bは、位相検波器(PSD)102a、102bに位相検波器(PSD)103a、103bでの動作を兼用させるようにすれば、省略することができる。
【0081】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態を説明する。
【0082】
この第2の実施の形態では、実際に測定する活線状態にある電路にクランプ型ZCTをクランプし、校正測定と本測定とに異なった周波数を用いることにより、これら校正測定と本測定(対地絶縁抵抗測定)を同時に実行可能にしたことを特徴としている。
【0083】
図3は、第2の実施の形態が適用される活線絶縁診断装置の概略構成を示すもので、上述した図1と同一部分には、同符号を付している。
【0084】
この場合、三相Y結線された電路1の中性点2には、抵抗(Re)3を挿入されている。抵抗3の両端には、低周波信号として低周波重畳信号(例えば周波数fmeas=1Hz)を発生する低周波重畳電源4が接続されている。
【0085】
電路1には、各相毎に(図面では一相分のみ示している。)遮断器6を介して対地絶縁抵抗を診断(測定)される負荷8が接続されている。
【0086】
遮断器6と負荷8との間の電路1aには、零相変流器(ZCT)7が取り付けられている。このZCT7は、図1(b)で述べたと同様に構成したもので、零相電流測定用の2次巻線7bと、校正信号入力巻線として1ターンの3次巻線7cが巻回されている。この3次巻線7cは、実際に測定する電路1aを模擬するもので、校正信号としての校正用電流IcalをZCT7に与えるようにしている。
【0087】
一方、電路1a上の低周波電圧信号Vと、ZCT7の2次巻線7bから出力される零相電流Igは、活線絶縁診断装置本体20に入力され、後述する校正用電源22から出力される校正信号としての校正用電流Icalが3次巻線7cに入力されるようになっている。
【0088】
活線絶縁診断装置本体20には、校正用電流を検出するための抵抗(Rs)21と校正用電流Icalを校正信号として出力する校正用電源22が設けられている。この場合、校正用電源22は、低周波重畳電源4の低周波重畳信号(周波数fmeas=1Hz)と異なる周波数の校正用電流Ical(例えば、周波数fcal=0.9Hz)を校正信号として発生し、抵抗21を介してZCT7の3次巻線7cに出力するようになっている。つまり、ZCT7には、低周波重畳電源4からの低周波重畳信号(fmeas=1Hz)と校正用電源22からの校正用電流Ical(fcal=0.9Hz)が同時に与えられ、2次巻線7bからは、これら周波数fmeasとfcalの信号が加算された零相電流Igが出力されるようになっている。
【0089】
この場合、周波数fmeasとfcalには、m/fmeas=n/fcalなる関係を満足する整数m、nが存在するように設定されている。
【0090】
図4は、活線絶縁診断装置本体20の具体的な構成を示すもので、上述した図2と同一部分には、同符号を付している。
【0091】
この場合も、活線絶縁診断装置本体20は、低周波電圧信号Vから基本波(商用周波数)を除去するためのフィルタ類は省略している。
【0092】
活線絶縁診断装置本体20には、本測定時、低周波電圧信号Vの同相成分Vrと直交成分Viを検出する位相検波器(PSD)201a、201bと、ZCT7の2次巻線7bから出力される零相電流Igの同相成分Irと直交成分Iiを検出する位相検波器(PSD)202a、202bがそれぞれ設けられている。また、校正測定時、ZCT7の2次巻線7bから出力される零相電流Igの同相成分ICOrと直交成分ICOiを検出する位相検波器(PSD)203a、203bと、ZCT7の3次巻線7cの校正電流Icalの同相成分ICIrと直交成分ICIiを検出する位相検波器(PSD)204a、204bがそれぞれ設けられている。
【0093】
この場合、位相検波器(PSD)201a、202aには、第1の基準信号源23の基準信号が参照信号として各別に印加され、また、位相検波器(PSD)201b、202bには、第1の基準信号源23の基準信号を90度移相器201c、202cによって90度位相シフトした信号が参照信号として与えられるようになっている。
【0094】
また、位相検波器(PSD)203a、204aには、第2の基準信号源24の基準信号が参照信号として各別に印加され、また、位相検波器(PSD)203b、204bには、第2の基準信号源24の基準信号を90度移相器203c、204ccによって90度位相シフトした信号が参照信号として与えられるようになっている。
【0095】
この場合、第1および第2の基準信号源23、24は、独立して用意されるもので、水晶発振器などが用いられている。また、第1の基準信号源23の基準信号の周波数は、低周波重畳電源4と同じ周波数(例えば1Hz)になっており、第2の基準信号源24の基準信号の周波数は、校正用電源22と同じ周波数(例えば0.9Hz)になっている。
【0096】
位相検波器(PSD)201a、201bには、平均化回路206、207を介して演算回路25が接続されている。同様にして、位相検波器(PSD)202a、202bには、平均化回路208、209を介して、位相検波器(PSD)203a、203bには、平均化回路210、211を介して、位相検波器(PSD)204a、204bには、平均化回路212、213を介して、それぞれ演算回路25が接続されている。
【0097】
演算回路25は、第1の実施の形態で述べたと同様に、校正測定により取得される校正用電流Ical(=ICIr+j ICIi)と零相電流Ig(=ICOr+j ICOi)から校正用電流Icalと零相電流Ig間のゲインGcal(=|Ig÷Ical|)と位相差θcal(=Ig∠Ical)を求める。
【0098】
ところで、校正測定に用いられる校正用電源22の周波数fcalは、本測定に用いられる低周波重畳電源4の周波数fmeasと同じ周波数が用いられるべきであるが、この実施の形態では、異なる周波数を使用している。このため、校正測定で求められたゲインGcal(=|Ig÷Ical|)と位相差θcal(=Ig∠Ical)をそのままZCT7の校正情報として使用し、本測定で取得した零相電流Igを補正すると、大きな誤差を生じてしまう。
【0099】
そこで、演算回路25では、校正測定で求められたゲインGcalおよび位相差θcalを、後述する方法で周波数補正し、この結果を正しいZCT7の校正情報として本測定により取得される零相電流Igを改めて補正してIg’を求める。そして、Ig’と低周波電圧信号V(=Vr+j Vi)のアドミタンスY(=Ig’/V)の実数部が対地絶縁抵抗の逆数1/Rgで、虚数部が対地静電容量Cgのインピーダンスの逆数2πfCgに相当することから、このうちの実数部の逆数を取って、目的とする対地絶縁抵抗Rgを求めるようにしている。
【0100】
演算回路25には、表示器26が接続されている。この表示器26は、演算回路25で演算された結果を表示するものである。
【0101】
次に、このように構成された実施の形態の動作を説明する。
【0102】
この場合、校正測定と本測定を同時に行う。
【0103】
校正測定では、校正用電源22より抵抗21を介してZCT7の3次巻線7cに校正用電流Ical(周波数fcal=0.9Hz)が流れる。
【0104】
この状態で、ZCT7の2次巻線7bから零相電流Igが出力され、この零相電流Igが位相検波器(PSD)203a、203bに与えられる。
【0105】
この場合、位相検波器(PSD)203aには、第2の基準信号源24より校正用電源22と同じ周波数(0.9Hz)の基準信号が参照信号として印加され、位相検波器(PSD)203bには、第2の基準信号源24の基準信号を90度移相器203cによって90度位相シフトした参照信号が印加されている。
【0106】
これにより、位相検波器(PSD)203aより零相電流Igの同相成分ICOr、位相検波器(PSD)203bより零相電流Igの直交成分ICoiがそれぞれ出力され、平均化回路210、211を介して演算回路25に入力される。
【0107】
また、抵抗21より校正用電流(Ical×Rs)が出力され、この校正用電流が位相検波器(PSD)204a、204bに与えられる。
【0108】
この場合、位相検波器(PSD)204aには、第2の基準信号源24より校正用電源22と同じ周波数(0.9Hz)の基準信号が参照信号として印加され、位相検波器(PSD)204bには、第2の基準信号源24の基準信号を90度移相器204cによって90度位相シフトした参照信号が印加されている。
【0109】
これにより、上述したと同様にして、位相検波器(PSD)204a、204bよりZCT7の3次巻線7cの校正電流Icalの同相成分ICirと直交成分ICIiが出力され、平均化回路212、213を介して演算回路25に入力される。
【0110】
演算回路25では、これら校正用電流Ical(=ICIr+j ICIi)と零相電流Ig(=ICOr+j ICOi)から校正用電流Icalと零相電流Ig間のゲインGcal(=|Ig÷Ical|)と位相差θcal(=Ig∠Ical)を計算する。
【0111】
次に、このような計算で求められたゲインGcalおよび位相差θcalを周波数補正する。
【0112】
本来、本測定と校正測定は同じ周波数で行うべきものであるが、この実施の形態では、それぞれ異なる周波数を用いるため、これら本測定と校正測定の周波数の違いを考慮して、校正測定の結果を補正し、本測定の周波数で測定したと仮定したゲイン及び位相差に換算する必要がある。
【0113】
ここで、詳しくは後述するが、本測定の周波数fmeas(Hz)に周波数補正されたゲインKmeas(Gmeas)は、既知の角周波数ωcal,ωmeasおよび校正測定から得られるゲインKcal(Gcal)および位相差θcalから推定できる。
【0114】
【数1】
Figure 2004325302
【0115】
また、位相については、本測定での周波数をfmeas、校正測定時の周波数をfcal、位相差をθcalとした場合、周波数fmeasで測定したと仮定したときの位相差(推定値)θmeasは、次式で表わされる。
【0116】
θmeas = tan−1{(fcal/fmeas)×tan(θcal)} (4)
次に、本測定では、低周波重畳電源4よりZCT7に周波数fmeas(=例えば1Hz)の本測定信号(低周波重畳信号)が与えられる。
【0117】
この状態で、ZCT7の2次巻線7bから零相電流Igが出力され、この零相電流Igが位相検波器(PSD)202a、202bに与えられる。
【0118】
この場合、位相検波器(PSD)202aには、第1の基準信号源23より低周波重畳電源4と同じ周波数(1Hz)の基準信号が参照信号として印加され、位相検波器(PSD)202bには、第1の基準信号源23の基準信号を90度移相器202cによって90度位相シフトした参照信号が印加されている。
【0119】
これにより、位相検波器(PSD)202a、202bより零相電流Igの同相成分Irと直交成分Iiがそれぞれ出力され、平均化回路208、209を介して演算回路25に入力される。
【0120】
また、低周波電圧信号Vが位相検波器(PSD)201a、201bに与えられる。
【0121】
この場合、位相検波器(PSD)201aには、第1の基準信号源23より低周波重畳電源4と同じ周波数(1Hz)の基準信号が参照信号として与えられ、位相検波器(PSD)201bには、第1の基準信号源23の基準信号を90度移相器201cによって90度位相シフトした参照信号が与えられている。
【0122】
これにより、位相検波器(PSD)201a、201bより低周波電圧信号Vの同相成分Vrと直交成分Viがそれぞれ出力され、平均化回路206、207を介して演算回路25に入力される。
【0123】
演算回路25では、本測定で取得した零相電流Igを、校正測定により取得したゲインGcalと位相差θcalから推定した本測定の周波数fmeasで測定したと仮定したときのゲインGmeas’と位相差θmeas’で補正してIg’を求める。
【0124】
ここで、Ig’は、ZCT7の特性を補正した活線状態の電路1に流れる1Hz電流成分に相当するもので、下式により表わされる。
【0125】
Ig’=Ig・Gmeas’・exp(jθmeas’) (5)
また、このIg’と低周波電圧信号VのアドミタンスY(=Ig’/V)の実数部が対地絶縁抵抗抵抗の逆数1/Rgで、虚数部が対地静電容量Cgのインピーダンスの逆数2πfCgに相当することから、実数部の逆数を取って、目的とする対地絶縁抵抗Rgが求められる。そして、演算回路25で演算された対地絶縁抵抗Rgが表示器26に表示される。
【0126】
ところで、ZCT7には、低周波重畳電源4からの低周波重畳信号(fmeas=1Hz)と校正用電源22からの校正用電流Ical(fcal=0.9Hz)が同時に与えられ、2次巻線7bからは、周波数fmeasとfcalの両方の信号が加算された零相電流Igが出力される。
【0127】
このため、この実施の形態では、本測定時の周波数fmeasに対応させて位相検波器(PSD)201a、201b、202a、202bを設けるとともに、校正測定時の周波数fcalに対応させて位相検波器(PSD)203a、203b、204a、204bを設けることにより、それぞれの周波数fmeas、fcalの信号を分離して零相電流Igを検出できるようにしている。
【0128】
この場合、活線絶縁診断装置本体20としてデジタルロックインアンプやデジタル処理を行うデジタル方式のものを使用し、周波数fmeasおよびfcalに下記の関係を満足するものを選べば、これら周波数fmeas、fcal相互の影響を原理的に完全になくすこと(無干渉状態)ができる。これはアナログ方式にはない、デジタル方式の大きな利点である。
【0129】
ここでは、本測定時の周波数fmeasと校正測定時の周波数fcalの選び方がポイントとなり、fmeasとfcalの相互の影響がない周波数条件である「波形取込み期間内に、fmeasおよびfcalが整数周期」となるように設定している。つまり、周波数fmeasとfcalには、m/fmeas=n/fcalなる関係を満足する整数m、nが存在するように設定されている。
【0130】
例えば、波形取込み期間を10秒とすれば、
fmeas=1Hz 10秒中に、10周期
fcal=0.9Hz(=9/10Hz) 10秒中に、9周期
あるいは
1.1Hz(=11/10Hz) 10秒中に、11周期
となるように周波数fmeas、fcalをそれぞれ設定すれば、これら周波数fmeas、fcal相互の影響を排除することができる。
【0131】
一方、このように本測定の周波数fmeasと校正測定の周波数fcalを異なる周波数に設定すると、校正測定で得られるゲインGcalと位相差θcalを周波数補正して、本測定の周波数fmeasで測定したと仮定したゲインGmeas’及び位相差θmeas’に換算する必要がある。
【0132】
この換算する方法を以下に詳細に説明する。
【0133】
まず、ゲイン補正について。
【0134】
この場合、図11(b)に示したZCTの等価回路において、簡単のため巻線抵抗Rを省略すると、ZCTの1次側電流Iと2次側電圧V間とのゲイン絶対値Kは、次のように表せる。
【0135】
【数2】
Figure 2004325302
【0136】
ここで、周波数fcal(Hz)での校正測定で得られたゲイン絶対値をKcalとすれば、Kcalは次のようになる。
【0137】
【数3】
Figure 2004325302
【0138】
同様に、fcal(Hz)の校正測定で得られた位相シフトがθcalであったとすると、
【数4】
Figure 2004325302
となるので、式(8)を式(7)に代入すると下記のようにLを消去できる。
【0139】
【数5】
Figure 2004325302
【0140】
一方、本測定時の周波数fmeas(Hz)におけるゲイン絶対値Kmeasは、周波数fcalの場合と同様に図11(b)の等価回路を用いて下記の式で求められる。
【0141】
【数6】
Figure 2004325302
【0142】
ここで、RLおよびLは測定周波数に関わらず一定の値であるため、式(10)に式(8)を代入すると、Kmeasは次のようになる。
【0143】
【数7】
Figure 2004325302
【0144】
また、式(9)と式(11)を割算すると、L、RL、Nが消去できるため、下記のように既知の角周波数ωcal,ωmeasおよび校正測定から得られるゲインKcal,位相θcalから、本測定fmeas(Hz)でのゲインKmeasを推定することができる。
【0145】
【数8】
Figure 2004325302
【0146】
次に、計算例を説明する。
【0147】
いま、図11(b)において、電流電圧変換抵抗RLを1kΩ、2次側の巻数Nを7,906turn(L≒156H)とすると、本測定の周波数fmeas(=1Hz)と校正測定の周波数fcal(=0.9Hz)とでは、
Kcal=0.08368, θcal=48.6deg
Kmeas=0.08854(論理値)
と、6%弱のゲイン誤差が生じる。この誤差は、本測定と校正測定とでは周波数が違うために発生したものである。
【0148】
このため、校正測定の結果であるゲインKcalを、式(12)を用いて本測定の周波数におけるゲインとなるよう補正する必要がある。
【0149】
すなわち、式(12)に各値を代入すると次のように、
【数9】
Figure 2004325302
となり、Kmeasと一致した推定結果が得られる。
【0150】
次に、位相補正について、
この場合も、図11(b)に示したZCTの等価回路において、簡単のため巻線抵抗Rを省略すると、ZCTの1次側電流Iと2次側電圧Vとの間の位相シフトθは、下記のように表すことができる。
【0151】
【数10】
Figure 2004325302
【0152】
ここでI’は、(=I/N)でZCTの2次側に流れる電流である。また、2次側インダクタンスLは、
【数11】
Figure 2004325302
で表わされる。また、周波数fcal(Hz)での校正測定で得られる位相シフト量をθcalとすれば、
【数12】
Figure 2004325302
となり、周波数fmeas(Hz)で測定したときの位相シフト量(推定値)θmeasは、
【数13】
Figure 2004325302
となる。これが補正式である。
【0153】
これにより、既知の周波数fmeas、fcalと、校正で得られる位相シフトθcalから、本測定の周波数fmeasでの位相シフトθmeasを求めることができる。
【0154】
次に、計算例を説明する。
【0155】
この場合も、図11(b)において、電流電圧変換抵抗RLを1kΩ、2次側の巻数Nを7,906turn(L≒156H)とすると、本測定の周波数fmeas(=1Hz)と校正測定の周波数fcal(=0.9Hz)とでは、
【数14】
Figure 2004325302
となり、これらに3deg程度の違いが生じ、補正計算なしでは実用にならない。
【0156】
そこで、校正周波数での位相シフト値に式(16)に示す補正式を適用し、本測定の周波数である1Hzにおける位相シフトを推定する。この推定値θmeas’は上記の補正式を用いて次のように計算できる。
【0157】
【数15】
Figure 2004325302
【0158】
この値は本測定の周波数におけるZCTの位相シフト値θmeasと高度に一致している。
【0159】
このようにして本測定の周波数fmeasと校正測定の周波数fcalが異なる周波数に設定された場合、校正測定で得られるゲインGcalと位相差θcalを周波数補正することにより、本測定の周波数fmeasで測定したと仮定したゲインGmeas’及び位相差θmeas’を推定することができる。
【0160】
従って、このようにしても、上述した第1の実施の形態と同様な効果を期待できる。加えて、本測定と校正測定を同時に行うようにしたので、仮に、測定中にZCT7の特性、つまり位相シフトやゲイン等の特性に変化が生じても、この時の特性変化に直ちに追従することができ、常に精度の高い対地絶縁抵抗測定を行うことができる。また、本測定と校正測定を同時に行うことで、対地絶縁抵抗測定に要する時間を大幅に短縮できる。
【0161】
さらに、校正測定のための回路を活線絶縁診断装置本体20に内蔵しているので、例え活線絶縁診断装置本体20と低周波重畳電源4とが遠く離れていても支障なく対地絶縁抵抗測定作業を進めることができ、作業の大幅な能率改善を図ることができる。
【0162】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態を説明する。
【0163】
この第3の実施の形態では、活線状態にある電路にクランプ型ZCTをクランプし、最初に校正測定を行い、その後に校正用電源をオフにして、本測定により対地絶縁抵抗測定を行うようにしたことを特徴としている。
【0164】
この場合も、上述した第2の実施の形態と同様に校正測定で使用する周波数と本測定で使用する周波数は異なるものを使用しており、異なる点は、校正用電源をオフする機能が追加されていることである。
【0165】
図5は、第3の実施の形態が適用される活線絶縁診断装置の概略構成を示し、図6は、同実施の形態に適用される活線絶縁診断装置本体の具体的な構成を示すもので、これら図面は、上述した図3および図4と同一部分には、同符号を付している。
【0166】
この場合、抵抗(Rs)21と校正用電源22との間に、スイッチ31が接続されている。スイッチ31は、校正用電源22からの校正用電流Icalをオンオフするためのもので、校正測定時にのみオンされ、その後の本測定ではオフされるようになっている。
【0167】
その他は、上述した図3および図4と同様である。
【0168】
次に、このように構成された実施の形態の動作を説明する。
【0169】
この場合、最初に、活線状態の電路1aにZCT7をクランプし、スイッチ31をオンにして校正測定を行う。
【0170】
この校正測定では、校正用電源22より抵抗21を介してZCT7の3次巻線7cに校正用電流Ical(周波数fcal=0.9Hz)が流れ、活線絶縁診断装置本体20により校正用電流Ical(=ICIr+j ICIi)と零相電流Ig(=ICOr+j ICOi)が求められる。
【0171】
そして、これら校正電流Ical及び零相電流Igc間のゲインGcal(=|Igc÷Ical|)と位相差θcal(=Igc∠Ical)を計算する。
【0172】
次に、これらの計算で求められたゲインGcalおよび位相差θcalを周波数補正する。つまり、本測定と校正測定の周波数の違いを事前に考慮して、校正測定の結果を補正し、本測定の周波数で測定したと仮定したゲインGmeas’と位相差θmeas’に換算する。これをZCT7の校正情報として一時記憶する。
【0173】
その後、スイッチ31をオフにして校正用電源22を取り去り、本測定に移行する。
【0174】
この本測定では、低周波重畳電源4よりZCT7に周波数fmeas(1Hz)の本測定信号(低周波重畳信号)が与えられ、低周波電圧信号V及び零相電流Igのそれぞれの成分が求められる。
【0175】
そして、本測定により取得された零相電流Igを、校正情報であるゲインGmeas’と位相シフトθmeas’で補正してIg’ を求める。
【0176】
Ig’ = Ig×Gmeas’・exp(jθmeas’ )
この結果のIg’は、ZCT7の特性を補正した活線状態の電路1に流れる1Hz電流成分に相当する。
【0177】
また、このIg’と低周波電圧信号VのアドミタンスY(=Ig’/V)の実数部が対地絶縁抵抗抵抗の逆数1/Rgで、虚数部が対地静電容量Cgのインピーダンスの逆数2πfCgに相当することから、実数部の逆数を取って、目的とする対地絶縁抵抗Rgが求められる。そして、演算回路25で演算された対地絶縁抵抗Rgを含む結果が表示器26に表示される。
【0178】
従って、このようにしても、上述した第1の実施の形態と同様な効果を期待できる。加えて、本測定時には、ZCT7の2次巻線7bには、本来の目的信号である低周波重畳電源4の本測定信号(低周波重畳信号)による1Hz成分(及びノイズとしての基本波)のみが出力されるので、測定レンジ等を最適化、すなわち最高感度での対地絶縁抵抗測定を実現することができる。
【0179】
なお、上述した第1乃至第3の実施の形態では、低周波重畳電源4を三相Y結線された電路1の中性点2に接続しているが、これは任意の相の電路に接続するようにしてもよい。また、これらの実施の形態では、低周波重畳電源4の低周波重畳信号の検出に位相検波器(PSD)を使用したが、これ以外の方法を用いることもできる。
【0180】
(第4の実施の形態)
ところで、上述した第1乃至3の実施の形態では、校正測定によりゲインGcal(=|Ig÷Ical|)と位相差θcal(=Ig∠Ical)をZCT7の校正情報として求め、この校正情報を用いて、本測定によりZCT7より取得される零相電流Igを補正することにより、ZCT7での位相シフトの影響を除去するようにしている。このため、ZCT7として、仮に大きなゲイン(高感度)で、位相シフトの大きなものを使用しても、このときの位相シフトの影響を受けることなくなり、正確な対地絶縁抵抗を測定することができる。
【0181】
一方で、ZCT7の使い方や一部構造を改良して、ZCTの位相シフトの繰り返し安定性が得られるようにすれば、さらに精度の高い対地絶縁抵抗の測定を実現できることも事実である。
【0182】
そこで、この第4の実施の形態では、以下に述べるようにしている。
【0183】
(1)ZCTの使い方に関する改良
ZCTには、電路への取り付け方法により貫通型あるいはクランプ型の区別がある。前者は構造上、通電する前にZCTに電路を通す必要があるのに対し、後者はZCTの磁路を構成する一対のコア(鉄心)が開閉可能となっており、開放状態で電路を挿通し、閉止状態で測定を行う。このため回路を停電させることなくZCTを取り付けることが可能である。
【0184】
そして、このようなクランプ型のZCTを上述した第1乃至3の実施の形態に適用することにより、ZCT自体の位相シフト特性の不安定さ、再現性を気にすることなく、ZCTのゲインを最適なものに設定できる。
【0185】
また、このようなクランプ型のZCTの位相シフトをみると、図12(b)に示すように巻数=10,000回の場合には、RL=10Ωのとき、約4度である。この場合のゲインは10−3であるが、これ以上の高感度を希望するには、同じZCTであるならば、変換抵抗RLを大きくする必要がある。例えば、RL=100Ωとすると、確かにゲインは10 と10倍程度増加するが、位相シフトは倍増してしまう。これでは、前述したように測定の再現性に問題が出てくるため、高感度化はあきらめざるを得ない。
【0186】
しかし、上述した第1乃至3の実施の形態を適用すれば、ZCTに巻数=10,000回、RL=1kΩで使用しても、これによる位相シフトを校正できるため、100倍近い感度向上が可能となる。このことは、ZCTの2次側巻数を10,000回以上とし、及び/又は、ZCTの変換抵抗RL、つまり負荷抵抗を1kΩ以上とした場合にも、位相シフト特性の不安定さ、再現性を気にすることなく、精度の高い対地絶縁抵抗の測定を実現できる。つまり、ZCTには、位相特性を無視して変換ゲインを大きくする条件を満足するように2次巻線の巻数と負荷抵抗を設定したものも適用できる。
【0187】
(2)クランプ型のZCTのクランプ部の改良
クランプ型のZCTは、活線状態の電路を停電させることなく電流測定が可能であるという優れた特徴を有しているが、その反面で、構造上、クランプ部分が存在するため、クランプ部に係わる問題点として「クランプ部の(磁気的)不安定さ」がある。
【0188】
そこで、クランプ部分の構造を以下のように構成している。
【0189】
図7は、クランプ型ZCTの要部の概略構成を示している。図において、41は図示しない2次巻線などが収容されるZCT本体で、このZCT本体41には、ZCTの磁気回路を構成する一対の鉄心42、43が回動可能に設けられている。これら鉄心42、43は、円弧状をなすもので、それぞれの一方端部をZCT本体41に回動可能に支持されている。また、鉄心42、43は、ZCT本体41を中心に回動することで、それぞれの他方端部の端面42a、43aが噛み合わされるようになっている。つまり、鉄心42、43は、電路への取付前は、図示のように端面42a、43aの間を開放され、電路を挿通した状態で、図示矢印方向に回動することで、端面42a、43a間が噛み合って接合され、環状の磁気回路を構成するようになっている。
【0190】
なお、上述は、鉄心42、43の両方が回動するようになっているが、鉄心42、43のいずれか一方のみが回動するようにした構成であってもよい。
【0191】
ところで、上述したZCTの位相シフトの問題であるが、この位相シフトは、大きさそのものだけが問題なのではなく、位相シフトの繰り返し安定性(例えばクランプ開閉動作に伴う再現性)も重要であるということは前述した通りである。これは、安定性が良好であれば位相シフト量をキャンセルすれば事足りるからである。
【0192】
ところが、現実には、ZCTの磁気回路(コア部分)は機械的に噛み合わせた(嵌合)状態であり、噛み合わせ時の圧力はその時々で不定であり、また、噛み合わせ部分での鉄心の汚れも毎回同じではあり得ず、その結果、ZCTの出力は不安定になり再現性に欠けるため精度の高い測定には適さない。
【0193】
図8は、鉄心42、43の他方端部の端面42a、43aでの噛み合わせ状態を改善した一例を示すものである。
【0194】
この場合、鉄心42、43は、珪素鋼板やパーマロイなどの高透磁率材料を重ね合わせてなるもので、それぞれの端面42a、43aには、凹凸部42a1、43a1が形成されている。
【0195】
これら凹凸部42a1、43a1は、端面42a、43aが接する際に互いに噛み合うようになっている。凹凸部42a1、43a1の表面には、磁性材料膜としてフィルム状又は柔軟性のあるパーマロイなどの高透磁率材料44が設けられている。
【0196】
このようにすると、鉄心42、43の端面42a、43aの凹凸部42a1、43a1を図示矢印方向から噛み合わせた場合、これら凹凸部42a1、43a1間に、薄い高透磁率材料44が介在するので、凹凸部42a1、43a1の間にガタが発生することなく、安定した状態で接合することができる。また、凹凸部42a1、43a1間の高透磁率材料44により鉄心42、43の接合部での磁気的損失も最小限にでき、安定した磁気回路を構成することができる。
【0197】
従って、このようにすれば、ZCTを電路にクランプした状態でも、クランプ部の機械的に噛み合わせた部分の磁気回路を常に安定させることができるので、位相シフトの繰り返し安定性を確保することができる。これにより、ZCTの出力は安定したものとなり再現性に富んだ精度の高い測定を実現できる。
【0198】
図9(a)(b)(c)は、鉄心42、43の他方端部の端面42a、43aでの噛み合わせ状態を改善した他の例を示すもので、凹凸部42a1、43a1に汚れが存在する場合である。
【0199】
この場合、図9(a)は、図9(b)(c)の全体図を示すもので、図8と同一部分には同符号を付している。
【0200】
図9(b)では、鉄心42の凹凸部42a1にクリーニング手段としてのワイパー45が設けられ、凹凸部42a1、43a1を図示矢印方向から噛み合わせた場合、ワイパー45の操作により鉄心43の凹凸部43a1側に付着した汚れ46を除去するようになっている。
【0201】
この場合、ワイパー45が設けられていない鉄心43の凹凸部43a1側には、ワイパー45の厚み相当の溝(図示せず)が形成されており、この溝に、凹凸部42a1、43a1が噛み合わさせた状態でワイパー45が収められるようになっている。これにより、凹凸部42a1、43a1が噛み合わさせた接合状態で端面42a、43a間の密着性が保たれている。
【0202】
また、図9(c)は、鉄心42の凹凸部42a1の先端に突起47が形成されており、凹凸部42a1、43a1を図示矢印方向から噛み合わせた場合、突起47により鉄心43の凹凸部43a1側に付着した汚れ48を掻き落とすようになっている。この場合、突起47と対向する鉄心43の凹凸部43a1の先端のエッジ部分49を切り落して突起47が凹凸部43a1の先端に衝突するのを防止して、スムーズに凹凸部43a1側面に当接できるようになっている。
【0203】
この場合も、突起47が設けられていない鉄心43の凹凸部43a1側面には、突起47に対応する溝(図示せず)が形成されており、この溝に、凹凸部42a1、43a1が噛み合わさせた状態で突起47が収納されるようになっている。これにより、凹凸部42a1、43a1が噛み合わさせた接合状態で端面42a、43a間の密着性が保たれている。
【0204】
従って、このようにしても、ZCTを電路にクランプした状態で、クランプ部の機械的に噛み合わせた部分での汚れによる影響を排除でき、この部分での磁気回路を常に安定させることができるので、位相シフトの繰り返し安定性を確保することができる。これにより、ZCTの出力は安定したものとなり再現性に富んだ精度の高い測定を実現できる。
【0205】
なお、上述した図8および図9(b)(c)は、それぞれ単独で実施できるのは勿論、これらを適宜組み合わせて実施することもできる。
【0206】
その他、本発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、実施段階では、その要旨を変更しない範囲で種々変形することが可能である。
【0207】
さらに、上記実施の形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示されている複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出できる。例えば、実施の形態に示されている全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題を解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出できる。
【0208】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、再現性に優れた精度の高い測定を実現できる広範囲まで測定可能な活線絶縁診断装置および方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の活線絶縁診断装置の概略構成を示す図。
【図2】第1の実施の形態に適用される活線絶縁診断装置本体の概略構成を示す図。
【図3】本発明の第2の実施の形態の活線絶縁診断装置の概略構成を示す図。
【図4】第2の実施の形態に適用される活線絶縁診断装置本体の概略構成を示す図。
【図5】本発明の第3の実施の形態の活線絶縁診断装置の概略構成を示す図。
【図6】第3の実施の形態に適用される活線絶縁診断装置本体の概略構成を示す図。
【図7】本発明の第4の実施の形態に適用されるクランプ型ZCTの概略構成を示す図。
【図8】第4の実施の形態の要部の要部の概略構成を示す図。
【図9】第4の実施の形態の要部の要部の概略構成を示す図。
【図10】従来の活線絶縁診断装置の一例を説明するための図。
【図11】従来の活線絶縁診断装置のZCTの接続例とZCTの等価回路を示す図。
【図12】ZCTのゲイン特性と位相シフト特性を説明するための図。
【符号の説明】
1…電路
1a…電路
2…中性点
3…抵抗
4…低周波重畳電源
5.13…スイッチ
6…遮断器
7…ZCT
7a…鉄心
7b…2次巻線
7c…3次巻線
8…負荷
10…活線絶縁診断装置本体
101a〜104a…位相検波器(PSD)
101b〜104b…位相検波器(PSD)
101c〜104c…90度移相器
105…基準信号源
106〜113…平均化回路
11…抵抗
12…校正用電源
14…演算回路
15…表示器
20…活線絶縁診断装置本体
201a〜204a…位相検波器(PSD)
201b〜204b…位相検波器(PSD)
201c〜204c…90度移相器
206〜213…平均化回路
21…抵抗
22…校正用電源
23…第1の基準信号源
24…第2の基準信号源
25…演算回路
26…表示器
31…スイッチ
41…ZCT本体
42.43…鉄心
42a.43a…端面
42a1.43a1…凹凸部
44…高透磁率材料
45…ワイパー
46…汚れ
47…突起
48…よごれ
49…エッジ部分

Claims (9)

  1. 電路に低周波信号を重畳する低周波重畳電源と、
    出力巻線および校正信号入力巻線を有し、且つ前記電路に取り付けられる零相変流器と、
    前記零相変流器の校正信号入力巻線に低周波の校正信号を入力する校正用電源と、
    基準信号源を有し、該基準信号源の基準信号に基づいて、前記校正用電源の校正信号により前記零相変流器の出力巻線に出力される第1の電流信号情報および前記校正信号情報をそれぞれ検出するとともに、前記低周波重畳電源の低周波信号により前記電路に発生する電圧信号情報および前記零相変流器の出力巻線に出力される第2の電流信号情報をそれぞれ検出する信号検出手段と、
    前記第1の電流信号情報および校正信号情報により前記零相変流器の校正情報を求め、該校正情報により前記第2の電流信号情報を補正するとともに、該補正により取得された結果と前記電圧信号情報により前記電路の絶縁インピーダンスを求める演算手段と
    を具備したことを特徴とする広範囲まで測定可能な活線絶縁診断装置。
  2. 前記低周波重畳電源をオンオフする第1のスイッチ手段と前記校正用電源をオンオフする第2のスイッチ手段をさらに有し、これら第1および第2のスイッチ手段のオンオフのタイミングが相反関係に設定されることを特徴とする請求項1記載の広範囲まで測定可能な活線絶縁診断装置。
  3. 前記低周波重畳電源の低周波信号および校正用電源の校正信号は、それぞれ異なる周波数に設定されることを特徴とする請求項1記載の広範囲まで測定可能な活線絶縁診断装置。
  4. 前記低周波信号と前記校正信号の周波数は、それぞれの周波数をfmeas、fcalとするとき、m/fmeas=n/fcalなる関係を満足する整数m、nが存在することを特徴とする請求項3記載の広範囲まで測定可能な活線絶縁診断装置。
  5. 前記校正用電源をオンオフするスイッチ手段をさらに有し、該スイッチ手段は、前記信号検出手段が前記校正用電源の校正信号により前記零相変流器の出力巻線に出力される第1の電流信号情報および前記校正信号情報を検出した後、オフするように設定されることを特徴とする請求項3または4記載の広範囲まで測定可能な活線絶縁診断装置。
  6. 前記零相変流器は、位相特性を無視して変換ゲインを大きくする条件を満足するように前記出力巻線の巻数と該出力巻線に接続される負荷抵抗を設定したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の広範囲まで測定可能な活線絶縁診断装置。
  7. 前記零相変流器は、前記電路へ取付られる際、接合可能な一対の鉄心を有するクランプ型をなし、前記鉄心の接合部に高透磁率部材を介在させたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の活線絶縁診断装置。
  8. 前記零相変流器は、前記電路へ取付られる際、接合可能な一対の鉄心を有するクランプ型をなし、前記鉄心の接合部をクリーニングするクリーニング手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の広範囲まで測定可能な活線絶縁診断装置。
  9. 出力巻線および校正信号入力巻線を有する零相変流器を電路に取り付け、
    前記電路に低周波重畳電源より低周波信号を重畳し、前記零相変流器の校正信号入力巻線に校正用電源より低周波の校正信号を入力し、
    基準信号源の基準信号に基づいて、前記校正用電源の校正信号により前記零相変流器の出力巻線に出力される第1の電流信号情報および前記校正信号情報をそれぞれ検出するとともに、前記低周波重畳電源の低周波信号により前記電路に発生する電圧信号情報および前記零相変流器の出力巻線に出力される第2の電流信号情報をそれぞれ検出し、
    前記第1の電流信号情報および校正信号情報により前記零相変流器の校正情報を求め、該校正情報により前記第2の電流信号情報を補正するとともに、該補正により取得された結果と前記電圧信号情報により前記電路の絶縁インピーダンスを求める
    ことを特徴とする広範囲まで測定可能な活線絶縁診断方法。
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