JP2004325172A - 透明炭化水素系重合体を用いるマイクロチップ - Google Patents

透明炭化水素系重合体を用いるマイクロチップ Download PDF

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Kenichi Sanechika
健一 実近
Kazuishi Satou
一石 佐藤
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Abstract

【課題】透明で、紫外線領域における吸収の少ない、耐割れ性、耐衝撃性等の力学的性質が良好なマイクロチャネルを有する樹脂製のマイクロチップを安価に提供すること。
【解決手段】液体試料が流動する微細な流路を有する下部基板と、上部基板とを少なくとも有する、液体試料の電気的及び/又は光学的計測を行うためのマイクロチップであって、少なくとも下部基板が、鎖状共役ジエン系単量体に由来する単量体単位Aと、α位に水素を有するビニル芳香族系単量体に由来する単量体単位Bとからなる炭化水素系重合体の水素化体である透明炭化水素系重合体からなるマイクロチップ。
【選択図】 選択図なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、DNA、タンパク質等の微量試料の簡便な分析、検出に用いられる樹脂製マイクロチップに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、微少領域における化学反応や、分離・分析を行う技術が注目されている。そうした技術の具体的な応用例として、医療診断に必要な測定を患者近傍で行うベッドサイド診断、河川・土壌での廃棄物中の有害物質の測定対象近傍における分析、さらには食品の調理、収穫、輸入現場における汚染検査など、Point Of Care(以下、POCと言う。)分析が考えられ、そのための検出法や装置の開発が重要課題となっている。こうしたPOC分析においては、安価で簡便かつ短時間で実施が可能な微量分析方法が要求される。
【0003】
微量試料の分析、検出には、従来から、キャピラリーガスクロマトグラフィー(CGC)、キャピラリー液体クロマトグラフィー(CLC)等で成分を分離し質量分析計で検出するGCMS、LCMSが広く用いられてきた。
しかしながら、GCMS、LCMSは、検出器の質量分析計が大きく、患者のベッドサイドでPOC的に用いるには困難が伴う。また、血液等の患者由来の検体への接触が問題となることから、こうした場合の設備は、感染性廃棄物の対象となり、基本的にディスポーザブルにすることが求められている。
【0004】
以上の問題点を解決するために、10cmから数cm角程度以下のガラス等のチップ(以下、マイクロチップと言う。)表面に溝を刻んで、その溝における分離、反応を利用して、微量試料の分析を行うμ−TAS(miniaturized total analysis system)の研究が進められている。
μ−TASでは、検体量、検出に必要な試薬量、検出に用いた消耗品等の廃棄物、廃液の量がいずれも少なくなる上、検出に必要な時間もおおむね短時間で済むという利点がある。上記の微量分析装置に用いられるマイクロチップには、その加工性や精度の点から、主としてガラス板や石英板、シリコン板等の無機材料が用いられている。具体的には、光リソグラフィー技術を利用して、ガラス基板上にミクロンオーダーの溝を形成することができる。しかしながら、ガラス基板では表面加工の手間も含めて生産効率が極めて低くなることから大量生産時に大きな問題となることが予想される。
【0005】
一方、ガラス基板に代えて有機高分子(樹脂)材料を用いたいわゆる樹脂製チップが、上記の医療診断用分析装置用チップ用素材として、ガラスよりも生産性、コスト、或いは廃棄物としての処理等の点で優れていると期待され、樹脂製チップの小型、簡易型分析装置への適用について研究されている。
特許文献1には、透明樹脂を用いたキャピラリー及び平板からなる電気泳動装置が、特許文献2には、毛細管形状のトレンチ(溝)を有する分離用有機ポリマー基板が、非特許文献1には、アクリル樹脂製チップを用いた電気泳動分析システムなどが記載されている。
【0006】
しかしながら、かかる分析装置の測定対象となる生体物質には、紫外線領域の光に対する吸収しかもたない、すなわち肉眼的には無色のものも多いため、医療診断用の分析に用いるためには、紫外線領域の波長の光を光源とする測定手段が採用できることは非常に重要な意味を持つ。例えば260nmに吸収を持つDNAは蛍光標識することなく直接検出が可能になる。
こうした観点から、これらの技術において採用されている、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)あるいは、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の一般的な有機高分子材料は、紫外領域において吸収があるため、従来から汎用に使用されている一般的検出法である吸光度で、対象物質を検出しようとすると、チップ素材による吸収が極めて大きく、結果として正確な測定値が得られない。一方、より高感度が期待される検出法である蛍光標識をする場合においても、PMMA、PS、PC、PETは含有するカルボニル基や芳香環が紫外線を吸収し蛍光を発するため、そのバックグラウンドで検出感度が大きく低下するという問題がある。
【0007】
加えて、光透過性樹脂として従来から採用されているPMMAやPC等の非晶性ポリマー材料は、吸水性や射出成形時の分解性等に問題がある。即ち、熱安定性の面からは、例えばPMMAは200℃という比較的低い温度で解重合に基づく分解反応が起こり、成形体中にモノマーが残存する等の問題がある。また、PCは縮合系ポリマーであるため、特に成形の際にポリマー中の残存水分による加水分解が懸念されるという欠点がある。さらに、PMMA、PC、PET等の樹脂はメタノール、アセトニトリル等の極性溶剤に弱いためμ−TASで使用できる溶剤が制限され、用途が限定されるという欠点もある。
【0008】
これら従来の高分子材料についての欠点を改良しようとする試みがなされ、新規な高分子材料として、1、3−シクロヘキサジエン(以下、CHDという。)またはCHD誘導体等のCHD系モノマー、また、ジシクロペンタジエン誘導体や種々の多環ノルボルネン系モノマーを用いた環状ポリオレフィンが開発され、これらの樹脂が透明性、耐熱性、耐薬品性、耐水性等に優れていることが記載されている。
【0009】
そして、特許文献3にはこれらの環状ポリオレフィンを基板として用いた樹脂製マイクロチップが開示され、液体試料が流動する微細な流路を有する基板の形成方法として、射出成形、圧縮成形、押し出し成形等の溶融成形が開示されている。さらに、マイクロチャネルを形成させる方法として、超音波融着、熱融着、ホットメルト接着剤やUV接着剤等の接着剤による接着、粘着剤による粘着、直接又は薄い弾性シートを介しての圧接等の方法で液体試料が流動する微細な流路を有する下部基板と平膜からなる上部基板を張り合わせる方法が開示されている。
【0010】
しかしながら、ジシクロペンタジエン誘導体や種々の多環ノルボルネン系モノマーを用いた環状ポリオレフィンは耐割れ性、耐衝撃性等の力学的性質が不十分なため、マイクロチックを製造するために用いるフィルム基板の取り扱いが困難であったり、製品そのものの強度が足らないと言う問題があった。
【0011】
一方、特許文献3に記載のCHD系のホモポリマー、あるいは、ブロックコポリマーの場合、シクロヘキサン環連続構造を有するために、溶解可能な溶媒が高沸点を有するデカヒドロナフタレンに事実上限定され、高度な特性を要求される光学フィルムを製造するために必須とされる溶媒キャスト法において、脱溶媒が極めて困難であり、その成形加工性に大きな問題を有していた。特に、厚膜のシート作成は溶剤キャスト法では残留溶剤の乾燥除去が難しいため工業的には不可能であった。また、シクロヘキサン環連続構造を有するため溶融成形温度が非常に高く、工業的な溶融成形が極めて困難であった。同様に、上記発明の下部基板と上部基板の微細な流路の安価形成の点でも不十分であった。
【0012】
【特許文献1】
特開平2−259557号公報
【特許文献2】
特開平8−327597号公報
【特許文献3】
特開2000−39420号公報
【非特許文献1】
Anal.Chem.,69,P.2626−2630(1997)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、透明で且つ紫外線領域における吸収の少ない、耐割れ性、耐衝撃性等の力学的性質が良好な樹脂製のマイクロチップを安価に提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究した結果、特定組成割合の鎖状共役ジエン系単量体に由来する単量体単位と、α位に水素を有するビニル芳香族系単量体に由来する単量体単位とからなる炭化水素系重合体の水素化体が本発明の課題を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、
[1] 液体試料が流動する微細な流路を有する下部基板と、上部基板とを少なくとも有する、液体試料の電気的及び/又は光学的計測を行うためのマイクロチップであって、これら基板のうち、少なくとも下部基板が下記式(1)で表される炭化水素系重合体の水素化体である透明炭化水素系重合体からなることを特徴とするマイクロチップ、
【0016】
【化2】
Figure 2004325172
【0017】
[式中、A、Bは炭化水素系重合体を構成する下記単量体単位を表し、l、mは、炭化水素系重合体の全質量に対する単量体単位A、Bのそれぞれの質量%を表し、l+m=100、及び5≦l≦30の関係を満足する。
A:鎖状共役ジエン系単量体に由来する単量体単位(該単量体単位は1種または2種以上であっても良い。)。
B:α位に水素を有するビニル芳香族系単量体に由来する単量体単位(該単量体単位は1種または2種以上であっても良い。)。]
[2] Aの単量体単位が1,3−ブタジエン及び/又はイソプレンに由来する単量体単位である[1]記載のマイクロチップ、
である。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に関して詳細に説明する。
本発明における透明炭化水素系重合体は上記式(1)で表される炭化水素系重合体の水素化体であり、該炭化水素系重合体は鎖状共役ジエン系単量体由来の単量体単位Aとα位に水素を有するビニル芳香族系単量体由来の単量体単位Bとからなる重合体である。
【0019】
上記鎖状共役ジエン系単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられ、工業的入手性の点で1,3−ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。本発明において鎖状共役ジエン系単量体に由来する単量体単位は1種又は2種以上であっても良い。本発明の透明炭化水素系重合体における該鎖状共役ジエン系単量体に由来する単量体単位の水素化率は、残存する非共役二重結合による光波長領域240〜400nmの紫外部における光線透過率、熱安定性、耐候性の点から95%以上が好ましく、より好ましくは99%以上である。鎖状共役ジエン系単量体に由来する単量体単位を水素化して得られる単量体単位としては、α−オレフィン系単量体由来の単量体単位であり、例えば、鎖状共役ジエン系単量体として1,3−ブタジエン、イソプレンを用いた場合は、重合後水素化して得られるポリマーはエチレン単量体、プロピレン単量体、エチルエチレン単量体、イソプロピルエチレン単量体、及び2−エチルプロピレン単量体から選ばれる単量体単位を含む。
【0020】
本発明におけるα位に水素を有するビニル芳香族系単量体とは、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、o−メトキシスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどが挙げられ、工業的入手性の点でスチレンが特に好ましい。本発明のα位に水素を有するビニル芳香族系単量体に由来する単量体単位は1種又は2種以上であっても良い。本発明の透明炭化水素系重合体におけるα位に水素を有するビニル芳香族系単量体単位の水素化率は、残存する芳香環による光波長領域240〜400nmの紫外部における光線透過率、熱安定性、耐候性の点から90%以上が好ましく、より好ましくは95%以上、特に好ましくは99%以上である。α位に水素を有するビニル芳香族系単量体に由来する単量体単位を水素化して得られる単量体単位とは、α位に水素を有するビニル芳香族系単量体に含まれる芳香環を水素化した脂肪族環構造を有するビニルシクロヘキサン系単量体に由来する単量体単位である。
【0021】
本発明においては、α位に水素を有するビニル芳香族系単量体をα位に水素を有さないビニル芳香族系単量体、例えば、α−メチルスチレンなどで代替することは出来ない。α位に水素を有さないビニル芳香族系単量体に由来する単量体単位を水素化して得られる単量体単位を含有する透明炭化水素系重合体は耐熱性に劣るため、加熱溶融を行うと重合体の熱分解が起こるため事実上溶融成形は困難である。同様に、高温で使用する用途には用いることができない。
【0022】
本発明における透明炭化水素系重合体は、その他共重合可能な単量体に由来する単量体単位を含有することが出来る。これらの単量体単位は一種または二種以上であっても良い。その他共重合可能な単量体とはアニオン重合によって重合可能な従来公知な単量体であり、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メチルビニルケトン、α−シアノアクリル酸メチルなどの極性ビニル系単量体、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、環状ラクトン、環状ラクタム等の極性単量体、並びにヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等のアルキルシクロシロキサン、アルキルアリールシロキサン等の有機ケイ素化合物を例示することができる。
【0023】
また、本発明の透明炭化水素系重合体を得るのに用いられる炭化水素系重合体においては、鎖状共役ジエン系単量体に由来する単量体単位Aを5wt%以上、30wt%以下で含有することが必要であり、好ましくは10wt%以上、30wt%以下、より好ましくは20wt%以上、30wt%以下含有することである。単量体単位Aの含有量が5wt%未満だと、重合体が脆くなるためフィルム、シートで用いる場合割れ等の問題が生じるため好ましくない。一方、含有量が30wt%を越えると重合体に強度、弾性が無くなり取り扱いが困難となるだけでなく、熱変形温度が低くなるため好ましくない。
【0024】
本発明の炭化水素系重合体はランダム構造、テーパー構造、ブロック構造、交互構造等何れの構造をとることも可能であるが、水素化された炭化水素系重合体である透明炭化水素系重合体が熱変形温度等の耐熱性と耐割れ性、耐衝撃性等の力学的性質を高いレベルで満足するためには、ミクロ相分離構造を有するブロック構造が好ましい。ブロック構造はジブロック構造、トリブロック構造、マルチブロック構造など必要に応じて選択可能である。但し、α位に水素を有するビニル芳香族系単量体に由来する単量体単位Bからなる高分子連鎖ブロックを両端に有するトリブロック構造、マルチブロック構造をとる炭化水素系重合体の水素化体である透明炭化水素系重合体は耐熱性、機械的強度の点で好ましく、特に、真ん中に鎖状共役ジエン系単量体に由来する単量体単位Aからなる高分子連鎖ブロックを有し、両端にα位に水素を有するビニル芳香族系単量体に由来する単量体単位Bからなる高分子連鎖ブロックを有するトリブロック構造の炭化水素系重合体を水素化して得られる透明炭化水素系重合体が特に好ましい。
【0025】
このような構造を有している透明炭化水素系重合体の全体の数平均分子量は力学的性質の点から30000以上であることが好ましく、ポリマーの製造やその成形性の点から1000000以下であることが好ましい。
本発明において、重合体の数平均分子量とは、o−ジクロロベンゼンを溶媒として用いるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した標準ポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0026】
本発明の透明炭化水素系重合体においては、耐熱性の指標の一つであるガラス転移温度(Tg)は80℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上である。一方、ガラス転移温度が250℃以上になると溶融成形温度が非常に高くなり、熱分解等の問題で成形が困難となるため好ましくない。なお、本発明の式(1)で表される炭化水素系重合体がブロック重合体で、該重合体を水素化して得られる透明炭化水素系重合体が相分離構造を有する場合、ガラス転移温度を2つ以上示す場合があるが、ここで言うところのガラス転移温度は最も高いガラス転移温度を言う。
【0027】
本発明において透明炭化水素系重合体とは、光線透過率(ASTM D1003)が85%以上、かつ光波長領域240〜400nmの紫外部における光線透過率の最小値が100μm厚の平膜で50%以上の炭化水素系重合体である。
該透明炭化水素系重合体の光線透過率(ASTM D1003)は90%以上であることが好ましく。光波長領域240〜400nmの紫外部における光線透過率の最小値は100μm厚の平膜で70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。50%未満であると紫外線吸収に起因する蛍光のバックグラウンドのために蛍光標識法における検出感度が低下し、好ましくない。
【0028】
本発明における液体試料としては、マイクロチップにおける微細な流路(マイクロチャンネル)をスムーズに流れる試料であれば、溶液であっても分散液であってもよく、蛍光標識したデオキシリボ核酸(DNA)、タンパク質等の分散水溶液、あるいは、有機(メタノール、アセトニトリル等)分散溶液、リン酸、酢酸等の緩衝液を例として挙げることができる。
【0029】
本発明における光学的計測の方法としては、吸光度法(例えばN.Kuroda,et.al.,J.Chromatogr.,Vol.798 P.325−334(1998))、蛍光分光法(例えばS.C.Jakobson,et.al.,Anal.Chem.,Vol.66 P.4127−4132(1994)、特開平2−245655号公報)、化学発光法(例えばM.F.Regehr,et.al.,J.Capillary Electrophor,Vol.3 P.117−124(1996))等が一般的である。化学発光法、蛍光法は、それぞれ被検出物質が、酸化剤などとの反応、励起光により励起状態の化合物となり、この状態から、基底状態になるときのエネルギーが光として放出されるのを検出する方法である。一方、吸光度法は、被検出物質を含む溶液に光を入射し透過光強度を測定し、その入射強度に対する透過光強度の比を求める方法である。感度的には一般的に吸光度法、蛍光法、化学発光法の順に高くなる。
【0030】
また、別の計測方法としては、励起レーザー光で液体中の試料を励起していわゆる熱レンズを形成させ、プローブレーザー光でその熱レンズの変化を検出する光熱変換法(熱レンズ法)が挙げられる。プローブレーザー光の検出は、フォトダイオード、電荷結合デバイス(CCD)カメラ、光電子倍増管などで行うことができる。
本発明における電気的計測の方法としては、電極、イオン電極等を用いた電気化学的計測やマイクロチップをガスクロマト分析計、液体クロマト分析計、質量分析計に連結することで可能となるガス計測、液体計測、質量計測(ナノスプレー)等を挙げることができる。
【0031】
本発明における下部基板と上部基板の形状は特に限定はされないが、通常は平板状である。下部基板の厚さは通常10〜5000μmである。一方、上部基板の厚さは通常1〜500μmであり、好ましくは1〜100μmである。下部基板、上部基板の何れも本発明の透明炭化水素系重合体からなることが好ましい。但し、下部基板に比べて上部基板は薄いため、蛍光のバックグラウンドによる検出感度の低下が著しくない範囲で上部基板として透明炭化水素系重合体以外もの、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)を使用することも可能である。
【0032】
本発明における下部基板は液体試料が流動する微細な流路を有することが必要である。微細な流路の断面形状は特に限定されず、四角形、台形、三角形等の多角形の形状、半円形、半楕円形等いずれの形状でもよいが、四角形、台形が好ましい。寸法は最大幅が1〜5000μm、最大深さが0.1〜2000μm、流路に垂直な断面積が1〜10,000,000μmが好ましい。更に好ましくは、最大幅2〜500μm、最大深さ1〜200μm、流路に垂直な断面積が2〜100000μmである。
【0033】
この流路の寸法精度は、極微料成分の分析や定量分析等を行う上で操作の精度及び装置間の再現性を得るために、設計寸法に対し、幅及び深さが±5%以内、断面積が±7%以内であることが好ましい。また、高精度の定量分析を行うためには、幅及び深さが±2%以内、断面積が±4%以内の寸法精度が更に好ましい。
また、下部基板に液体試料が流動する微細な流路とともに連通口を形成させることも可能である。但し、その場合には通常上部基板を下部基板の両面に貼り合わせて使用する。
【0034】
一方、本発明における上部基板は、下部基板と向き合う面に液体試料が流動する微細な流路が形成されていても良いし、また単なる平膜であっても良い。
次に、前記透明炭化水素系重合体から本発明のマイクロチップを製造する方法について説明する。
本発明における透明炭化水素系重合体は公知の方法によって、マイクロチップ用の平板に溶融成形加工することができる。すなわち射出成形、圧縮成形、押し出し成形等を採用することができる。溶融成形加工することにより、残留溶剤等の不純物のない平膜を薄膜から厚膜まで容易に、かつ、安価に得ることが可能である。
【0035】
また、本発明の透明炭化水素系重合体は、溶解可能な溶媒に溶解し、スピンコート、ディップコート、ブレードコート、ロールコートなど適切な塗布法で基材にコート後、乾燥によりフィルムを得る公知のキャスト成膜法により、平膜に加工することも可能である。好ましい溶解可能な溶媒としてはシクロヘキサン、トルエン、デカリン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、シクロヘキサノン、1,1−ジメトキシシクロヘキサンが挙げられ、これらは1種であっても2種以上であってもよい。
【0036】
本発明において、微細な流路を形成する方法として、射出成形、圧縮成形、押し出し成形、又は金型キャビテイへの充填工程中に二酸化炭素を10MPa以下の圧力で充填させておいて射出成形するなどの方法で下部基板を成形する際に同時に流路を形成する方法、微細な流路が形成された金型を樹脂に押しつけることによって形成するエンボス加工による方法、エッチング加工やフォトリソグラフ加工より形成する方法、マスクで覆ってプラズマ処理により形成する方法、レーザーアブレーションを用いて流路を形成する方法などが挙げられる。その中でも、微細な流路が形成された金型を樹脂に押しつけることによって形成するエンボス加工は微細な流路を安定して精度良く形成できるため好ましい。
【0037】
上記上部基板と下部基板を貼り合わせ流路を形成する方法として、超音波融着、熱融着、ホットメルト接着剤やUV接着剤による接着、粘着剤による粘着、直接または薄い弾性シートを介しての圧接等の方法を挙げることができる。その中でも厚さ0.03mm程度のPE平膜を上部基板と下部基板の熱融着材として用い、120℃付近の温度で速度0.1〜1m/minでラミネーターを用い熱圧着する方法は簡便で好ましい。
【0038】
本発明の式(1)で表される炭化水素系重合体がブロック重合体で、該重合体を水素化して得られる透明炭化水素系重合体が相分離構造を有する場合、Tgを2つ以上示す場合があるが本発明で言うところのTgは最も高いガラス転移温度を言う。
本発明において用いる透明炭化水素系重合体は、いかなる製造方法によって得られたものであってもよく、特に制限を受けるものではないが、反応温度、重合収率、触媒コスト、さらに重合体の分子量、分子量分布、及び一次構造制御の観点から、工業的に最も好ましい重合方法として以下に記載した方法が挙げられる。
【0039】
該重合方法に用いられる触媒として1(1A)族金属を含有する有機金属化合物(以下しばしば、該有機金属化合物を有機1族金属化合物と称する。)と、該有機1族金属化合物と錯体形成能を有する有機化合物(錯化剤)とを組み合わせて重合触媒とするのが好ましい。該重合触媒を用いる方法は、鎖状共役ジエン系単量体とα位に水素を有するビニル芳香族系単量体の重合がリビング重合的に進行するため、式(1)で表される炭化水素系重合体が定量的に得られる。しかも他の共重合モノマーを導入することも可能である。
【0040】
この重合方法では反応がリビング的に進行するため、式(1)で表される炭化水素系重合体の分子量調節が自由に行え、目的に応じた分子量設計が可能である。
有機1族金属化合物に用いることが可能な1(1A)族金属とは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムであり、特に好ましい1族金属としてリチウムおよびナトリウムを例示することができる。これらは1種でも、必要に応じて2種以上の混合物であっても構わない。
【0041】
本発明の式(1)で表される炭化水素系重合体の重合方法において、重合触媒として特に好ましく用いられる有機リチウム化合物、有機ナトリウム化合物とは、少なくとも炭素原子を一個以上含有する有機分子に結合する一個又は二個以上のリチウム原子若しくはナトリウム原子を含有する従来公知の化合物である。例えばメチルリチウム、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、iso−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、ペンチルリチウム、ヘキシルリチウム、アリルリチウム、シクロヘキシルリチウム、フェニルリチウム、ヘキサメチレンジリチウム、1,3−ビス(1−リチウム−1,3,3−トリメチル−ブチル)ベンゼン、シクロペンタジエニルリチウム、インデニルリチウム、ブタジエニルジリチウム、イソプレニルジリチウム等、又はポリブタジエニルリチウム、ポリイソプレニルリチウム、ポリスチリルリチウム等の高分子鎖の一部にリチウム原子を含有するオリゴマー若しくは高分子等の、従来公知の有機リチウム、或るいはナフタレンナトリウム、α−メチルスチレンナトリウムリビング4量体、n−アミルナトリウム等、又はポリブタジエニルナトリウム、ポリイソプレニルナトリウム、ポリスチリルナトリウム等の高分子鎖の一部にナトリウム原子を含有するオリゴマー若しくは高分子等の、従来公知の有機ナトリウムを例示することができる。
【0042】
特に好ましい有機リチウム化合物としては、n−ブチルリチウム、シクロヘキシルリチウムを例示することができ、有機ナトリウム化合物としてはナフタレンナトリウム、α−メチルスチレンナトリウムリビング4量体を例示することができる。本発明における重合触媒の使用量は、目的とする分子量、高分子構造を得るために必要な量を適宜選択することができる。
【0043】
有機1族金属化合物と錯体形成能を有する有機化合物(錯化剤)としては、アミン類、エーテル類、チオエーテル類が好ましく、またこれらの錯化剤は1種でも、必要に応じて2種以上の混合物であっても構わない。本発明に用いられる錯化剤として工業的観点から好ましいのはエーテル類、アミン類である。エーテル類は分子中に1個以上の酸素原子を含んだエーテル類、例えばジメチルエーテル、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジメトキシエチレングリコール、ジエトキシエチレングリコール、ジオキサン、トリオキサン、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン、1,1−ジメトキシシクロヘキサン、1,1−ジエトキシシクロへキサンなどを例示することができる。アミン類の中では第三(三級)アミン類が最も好ましい。好ましい第三アミン化合物としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノメタン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、テトラメチルジエチレントリアミン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7、ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、4,4’−ビピリジル等が挙げられるが、工業的に採用できる最も好ましい第三アミン化合物としては、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)が挙げられる。
【0044】
重合反応の形式は一括し込み式、追添式、一部一括し込み追添併用式、あるいは連続式などを利用することが可能である。即ち本発明の炭化水素系重合体の重合方法においては、重合溶媒、重合開始剤、アミン類、単量体を適宜必要に応じて、その一部および全量をあらかじめ反応器に添加することが可能であり、またその後の各成分の添加順序、添加時期、添加速度も適宜必要に応じて選択することが可能である。
【0045】
上記有機1族金属化合物と錯化剤からなる重合触媒の調製方法は特に制限されるものではなく、必要に応じて従来公知の技術を採用することができる。例えば、不活性ガス雰囲気下に有機1族金属化合物を有機溶媒に溶解し、これにアミン類の溶液を添加して一定時間保った後、重合触媒(錯体)を単離することなく、モノマーを添加して重合を行うことも可能である。有機1族金属化合物と錯化剤のモル比は有機1族金属化合物をMモル、錯化剤をNモルとするとM/N=20/1〜1/20の範囲であることが高収率で高分子量体を得る上で好ましい。
【0046】
重合方法も特に制限されるものではなく、気相重合、塊状重合、又は溶液重合等を採用することができる。溶液重合の場合に使用できる重合溶媒としては、n−ブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタンの様な脂肪族炭化水素、
シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、デカリンの様な脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンの様な芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランの様なエーテル類が挙げられる。これらの重合溶媒は一種でも又は二種以上の混合物であっても構わない。
【0047】
重合は−100〜120℃、最も好ましくは0〜100℃の範囲の温度で実施することができる。さらに工業的観点からは、室温(20℃)〜80℃の範囲で実施することが有利である。
重合系の圧力は上記重合温度範囲でモノマー及び溶媒を液相に維持するのに十分な圧力の範囲で行えばよく、特に限定されるものではない。
重合反応に要する時間は、目的又は重合条件によって種々異なったものになるため特に限定することはできないが、通常は48時間以内であり、特に好適には1〜10時間である。また重合系の雰囲気は乾燥した窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気であることが望ましい。
【0048】
次に、式(1)で表される炭化水素系重合体は、重合反応終了後に適当な水素化触媒を使用して、ビニル芳香族系単量体に由来する繰り返し単位構造内に含まれる芳香環、鎖状共役ジエン系単量体に由来する繰り返し単位構造内に含まれる非共役二重結合が水素化され、本発明における透明炭化水素系重合体となる。
式(1)で表される炭化水素系重合体は、光線透過率、熱安定性、耐候性等の物性に悪影響を及ぼさない範囲で、上記水素化する以外に従来公知の炭素−炭素二重結合に対する付加反応を行い、置換基、官能基を導入することができる。好ましい置換基、官能基としては、アルキル基、アリール基、シラノール基、水酸基、カルボン酸基、エステル基、酸無水物基、エポキシ基、カルボン酸塩基、アミノ基、アミド基、イミド基、イミノ基、オキサゾリン基、ヒドラジン基、ヒドラジド基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、シリル基、シリルエステル基、シリルエーテル基、チオール基、スルフィド基、チオカルボン酸基、スルホン酸基を例示することができる。
【0049】
水素化反応は該式(1)で表される炭化水素系重合体及び水素化触媒の存在下に、水素雰囲気下において実施される。反応形式は従来公知の方法を採用することができる。例えば、バッチ式、セミバッチ式、連続式又はそれらの組み合わせ等のいずれも採用することができる。
水素化触媒としては、従来公知の均一触媒及び不均一触媒のいずれも用いることができ、特にその種類、量は制限されない。
【0050】
水素化触媒に含有される金属として工業的に特に好ましいものとしては、チタン、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム等が挙げられる。これらの金属はエーテル、アミン、チオール、ホスフィン、カルボニル、オレフィン、ジエン等の官能基を有する有機化合物(配位子)と組み合わせた均一触媒として使用してもよいし、また活性炭、アルミナ、硫酸バリウム、シリカ、チタニア、ゼオライト、架橋ポリスチレン等の担体に担持させて不均一触媒として使用しても構わない。工業的観点から好ましいのは水素化触媒回収可能な不均一触媒である。本発明において、水素化反応における水素化触媒の使用量は、水素化条件によって適宜選択されるが、一般には重合体に対して金属濃度として10wtppm〜50wt%の範囲である。
【0051】
水素化反応に用いる溶媒として好ましいものとしては、n−ブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタンの様な脂肪族炭化水素、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、デカリンの様な脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンの様な芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランの様なエーテル類が挙げられる。これらの水素化反応溶媒は一種でも、又は二種以上の混合物であっても構わない。
【0052】
水素化反応の温度は0〜300℃の範囲であり、好ましくは30〜200℃、更に好ましくは90〜200℃である。
水素化反応の圧力は、通常0.1〜25MPaの範囲であり、特に好ましくは0.5〜15MPaである。
水素化反応に要する時間は、重合体溶液の濃度、反応系の温度、圧力とも関係するために特に限定することはできないが、通常5分〜240時間である。
【0053】
本発明の透明炭化水素系重合体を反応溶液から分離回収する方法としては、重合体を反応溶液から回収する際に通常使用される方法を採用することができる。例えば反応溶液と水蒸気を直接接触させることで重合溶媒を蒸発除去させる水蒸気凝固法、重合溶媒と混合可能な重合体の貧溶媒に添加して重合体を沈澱させる方法、反応溶液を薄膜状にした上で加熱を行い溶媒を留去させる方法、ベント付き押出機で溶媒を留去しながらペレット化まで行う方法などを例示することができ、透明炭化水素系重合体及び用いた溶媒の性質に応じて最適な方法を採用することが可能である。
【0054】
更に重合開始剤に含有される金属、アミン類、水素化触媒金属などを極めて低減させた高純度の透明炭化水素系重合体を得ることが必要な場合は、該透明炭化水素系重合体溶液中の金属イオンを適当なキレート化剤で水可溶化した上で高純度イオン交換水との交流接触にて抽出除去する方法、イオン交換樹脂カラムによるイオン性不純物除去方法、二酸化炭素超臨界法を使用した金属イオン及び低分子アミン除去方法を必要に応じて実施することが可能である。
【0055】
また、本発明の透明炭化水素系重合体の分離回収時には該共重合体の熱的安定性、紫外線などに対する安定性及び難燃性を向上させるため、光線透過率等の物性に悪影響を及ぼさない範囲内で公知の安定剤及び酸化防止剤、具体的にはフェノール系、有機ホスフェート系、有機ホスファイト系、アミン系、イオウ系、ケイ素含有系、ハロゲン系等の種々の安定剤、酸化防止剤、難燃剤を添加することが可能である。これら安定剤、酸化防止剤、難燃剤の一般的添加量は、重合体100重量部に対し、0.001から5重量部の範囲から選択される。
【0056】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、本発明に用いた単量体、炭化水素化合物溶媒、エーテル化合物は事前に不活性ガス下で蒸留精製したものを使用した。数平均分子量及び重量平均分子量分布としてはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値を示す。各単量体の転化率はガスクロマトグラフィーにより求めた。高分子のガラス転位温度(Tg)は熱天秤で求めた。水素化率は核磁気共鳴(NMR)解析で求めた。
【0057】
<0.82規定1,3−ビス[1−リチオ−1,3,3−トリメチル−ブチル]ベンゼン/トリエチルアミン等モル混合物(以下0.82規定DiLiと記載)の調製>
脱水したトリエチルアミンに、そのmol数と等しいmol数のsec−ブチルリチウム溶液を1時間かけて滴下後、減圧蒸留で脱水したm−ジイソプロピルベンゼンを、0℃で1時間かけて加え、25℃で12時間養生したものを使用した。
【0058】
<ガスクロマトグラフィー測定>
β,β’−オキシジプロピオニトリルをカラム充填物にしたパックドカラム、検出器には水素炎イオン化検出器を使用している(株)島津製作所製GC−14を用いた。移動相はHe、カラム温度90℃、インジェクション及びディテクター部の温度は200℃で行った。実際の各成分の転化率を求めるにあたり内部標準としてエチルベンゼンを使用した。
【0059】
<ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定>
合成例で示した重合後の高分子の数平均分子量測定、重量平均分子量分布測定には、Showdexカラム(K−802、同804、同805)を付した東ソー製HLC−8020型装置を使用した。測定はテトラヒドロフラン移動相、カラム温度40℃の条件で行った。分子量は標準ポリスチレンサンプルの溶出時間から作成した検量線から、ポリスチレン換算分子量として算出した。
合成例で示した水素化後の高分子はテトラヒドロフランへの溶解度が低いため高分子ラボラトリー社製PL−210高温GPCを用いて測定した。移動相はo−ジクロロベンゼン、カラム温度は130℃とした。
【0060】
<ガラス転位温度(Tg)の測定方法>
ガラス転移温度は熱天秤(以後、DSCという。)(パーキンエルマー社製DSC−7)を用い、毎分10℃の昇温速度で測定した。
<水素化率の測定方法>
NMR装置(日本電子(株)製 JEOL−EX270)を使用して水素化率を求めた。測定溶媒:o−ジクロロベンゼン−d4、濃度:12.5mg/0.5cm、温度:135℃。ビニル芳香族系単量体としてスチレン等を用いた場合は、紫外吸光度分析により水素化後の高分子中の残存ベンゼン環の量を求めて、スチレン等の水素化率(%)を求めた。
【0061】
<電気浸透流測定>
高電圧発生装置(Spellman社製 CZE1000)を用い、Huang等の方法(Anal.Chem.,1988,60,P.1837−1838)で電気浸透流を測定した。測定条件はリン酸緩衝液13.4mM濃度、pH=7、流路長2cm、電圧300Vである。
【0062】
[合成例1]
市販の透明炭化水素系重合体であるスチレン(以下Stと記載)とブタジエン(以下Bdと記載)のブロック共重合体(旭化成(株)製 アサフレックス825、St含量77wt%、Bd含量23wt%、St/Bd/Stトリブロック構造)300gをシクロへキサン3000gに窒素下で溶解させた。次いで、5%パラジウム担持アルミナ粉体(平均粒子径40μm)(日本国エヌ・イー・ケムキャット社製)240gと混合後、5dm高圧反応器に加えた。高純度窒素、次いで高純度水素(富士アセチレン工業(株)製)で十分に内部ガスを置換し、反応器内圧を7.85MPaにした。その後、水素圧を保ちながら、徐々に反応器内部温度を上げ、180℃に到達後この温度で4時間反応を継続した。内部温度を40℃まで冷却後、窒素雰囲気下にて口径0.2μmPTFEメンブラン(東洋濾紙社製T020A)を使用した加圧濾過器を用いて、5%パラジウムアルミナ粉体を除去し、透明のポリマー溶液を得た。この濾過後のポリマー溶液をその全容積の4倍のアセトンに注ぎ込み、析出回収を実施した。濾別回収後、上記ポリマー溶液の容積の4倍の容積のアセトンで洗浄後、真空乾燥器で乾燥し、残留溶媒を除去した。乾燥後のポリマー粉体の水素化率を測定したところStの水素化率は100%、Bdの水素化率は100%であった。水素化後のポリマーのガラス転移温度は二つ認められポリマーが相分離構造を維持していることを示した。低温側のガラス転移温度は−44℃、高温側のガラス転移温度は147℃であった。
【0063】
[合成例2]
5dm高圧反応器を乾燥窒素で十分に乾燥及び脱酸素した。反応溶媒としてデカリン3150gを用い、N,N,N,N′−テトラメチルエチレンジアミン2.54gを反応器に加えた。次いで室温下にて0.82規定DiLiを16.66g加えた。反応器内部温度を40℃に昇温し、シクロヘキサジエン(CHD)350gを加え、重合を開始した。6時間後、メタノール2cmを加えて重合を停止させてポリマー溶液を得た。反応後のCHDの転化率は94.9%であった。
【0064】
次いで上記のポリマー溶液1300gと、デカリン1350gに分散させたスポンジニッケル触媒(日本国日興リカ(株)製 R−100、水中重量390g)とを高純度窒素(富士アセチレン工業(株)製)下にて混合し、5dm高圧反応器に再度加えた。高純度窒素、次いで高純度水素(富士アセチレン工業(株)製)で十分に内部ガスを置換し、反応器内部を7.85MPaにした。その後、水素圧を保ちながら、徐々に反応器内部温度を上げ、160℃に到達後この温度で8時間反応を継続した。内部温度を室温まで冷却後、窒素雰囲気下にて口径0.2μmPTFEメンブランを使用した加圧濾過器でスポンジニッケル触媒を除去し、透明なポリマー溶液を得た。この濾過後のポリマー溶液を全容積の4倍のアセトンに注ぎ込み、析出後、濾別し、上記ポリマー溶液の4倍量のアセトンで洗浄し回収を実施した。回収したポリマーを真空乾燥器で乾燥し、残留溶媒を除去した。回収ポリマーの水素化率は98.0%であった。また、ガラス転移温度は240℃であった。
【0065】
[合成例3]
グレードの異なるブロック共重合体(旭化成(株)製 アサフレックス830、St含量66wt%、Bd含量34wt%、St/Bd/Stトリブロック構造)を合成例1と同様な方法により水素化し透明炭化水素系重合体を得た。乾燥後のポリマー粉体の水素化率を測定したところStの水素化率は100%、Bdの水素化率は100%であった。
【0066】
[実施例1]
厚さ0.1mm以上の平膜をキャスト成膜で作成することは残留溶剤除去が難しいことから工業的には困難である。そこで、合成例1で得たポリマーを射出成型機(NISSEI:Ne9300T、日本製)を用いて、射出温度250℃、射出圧力88MPa、金型温度68℃で射出成形を行い、厚さ2.00±0.01mmの範囲にある平膜を得た。さらに、この平膜を加熱圧縮成型機(加熱冷却2段プレスSA−301容量70トン、テスター産業(株)製)を用い、窒素雰囲気下、圧力20MPa、圧縮成形温度180℃で圧縮成形を行い、厚さが0.20±0.01mmの範囲にある平膜を得た。マイクロチップ用途に供する平膜は、最終製品に至るまでに様々な工程を経るため、耐割れ性、耐衝撃性が十分でないと歩留まりが極めて悪化し、好ましくない。そのため耐割れ性、耐衝撃性が重要であり、特に平膜端部の切断時に加わる衝撃で、割れが発生しないことが重要である。この耐衝撃性評価方法としてカッターによる切断面のひび割れ発生の有無を見る方法を用いた。具体的には、乾燥後の平膜の長軸方向にカッターの刃をあて切断を行い、切断面のひび割れの有無を確認した。本平膜のいずれの端面にも全くひび割れが見られず耐割れ性、耐衝撃性が充分であることが分かった。この平膜を温度150℃、圧力10MPaでエンボス加工を行い、長さ40mm、幅100μm、深さ40μmの流路を形成し下部基板を作成した。
【0067】
上部基板として厚さ0.03mmのPET平膜を用い、接着層として厚さ0.03mmの低密度ポリエチレン(PE)平膜を用いて、接着層を挟んで上部基板と厚さ0.1mmの下部基板を積層し、温度125℃、速度0.2m/min、ロール間に25kgの力を加えラミネータで熱圧着してマイクロチップを得た。上記の方法で電気浸透流を測定した結果、5.02×10−8−1−1の値を示した。
【0068】
[比較例1]
合成例2で得られたポリマーを用いて実施例1と同様な方法により平膜の作成を試みたが、射出温度を350℃以上にする必要がありポリマーの熱分解が起こり溶融成形は出来なかった。
【0069】
[比較例2]
市販の透明炭化水素系重合体であるノルボルネンの開環重合体でるシクロペンタンとエチレンの交互共重合体(日本ゼオン(株)製 ゼオノア1600R)のガラス転移温度は163℃であった。このポリマーを用いて実施例1と同様な方法により、厚さが0.10±0.01mmの範囲にある平膜を得た。実施例1と同様な方法により切断を行い、切断面のひび割れの有無を確認した。本平膜のいずれの端面にも所々にひび割れが見られ耐割れ性、耐衝撃性が不充分であることが分かった。
【0070】
[比較例3]
合成例3で得られたポリマーを用いて実施例1と同様な方法により、厚さが0.10±0.01mmの範囲にある平膜を得た。平膜は強度、弾性が無く取り扱いが困難であった。また、熱変形温度が低いため熱融着時に下部基板の一部に溶融が起こり寸法精度の良い流路形成が出来なかった。
【0071】
【発明の効果】
本発明によって、透明で、紫外線領域における吸収の少ない、耐割れ性、耐衝撃性等の力学的性質が良好な樹脂製のマイクロチップを安価に提供することができる。

Claims (2)

  1. 液体試料が流動する微細な流路を有する下部基板と、上部基板とを少なくとも有する、液体試料の電気的及び/又は光学的計測を行うためのマイクロチップであって、これら基板のうち、少なくとも下部基板が下記式(1)で表される炭化水素系重合体の水素化体である透明炭化水素系重合体からなることを特徴とするマイクロチップ。
    Figure 2004325172
    [式中、A、Bは炭化水素系重合体を構成する下記単量体単位を表し、l、mは、炭化水素系重合体の全質量に対する単量体単位A、Bのそれぞれの質量%を表し、l+m=100、及び5≦l≦30の関係を満足する。
    A:鎖状共役ジエン系単量体に由来する単量体単位(該単量体単位は1種または2種以上であっても良い。)。
    B:α位に水素を有するビニル芳香族系単量体に由来する単量体単位(該単量体単位は1種または2種以上であっても良い。)。]
  2. Aの単量体単位が1,3−ブタジエン及び/又はイソプレンに由来する単量体単位である請求項1記載のマイクロチップ。
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