JP2004324483A - ジェット推進艇 - Google Patents

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Abstract

【課題】キャビテーション現象の発生を防止することができるジェット推進艇を提供する。
【解決手段】ウォータジェットポンプ30で加圧、加速した水を後方の噴射口31から噴射して、その反動によって推進するジェット推進艇10において、ウォータジェットポンプ30を駆動するエンジン20にターボチャージャ24を設け、エンジン20の回転数の上昇率が所定値以上の場合、ターボチャージャ24の過給圧の上昇を遅延制御する。
【選択図】 図4

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ウォータジェットポンプで加圧、加速した水を後方の噴射口から噴射して、その反動によって推進するジェット推進艇に関する。特に、このウォータジェットポンプにおけるキャビテーション現象の発生を回避するためのジェット推進艇に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ウォータジェットバイクにおいては、キャビテーション現象の発生を防止するため、ウォータジェットポンプの回転数を制御している。
例えば、先行技術文献1には、操船者の経験や勘に頼ることなくウォータジェット船におけるキャビテーション現象の発生を回避するための発明が記載されている。この発明によれば、ウォータジェットポンプの目標回転数の入力を受けると、ウォータジェットポンプの実際のポンプ回転数bと、キャビテーション現象の発生限界を示すキャビテーション限界回転数jをポンプ回転数bに対応して算出し、これらキャビテーション限界回転数jと目標回転数kとのうち何れか小さい方を実用目標回転数mとして択一的に選択することで、実用目標回転数mと実際のポンプ回転数bとに基づいて、ウォータジェットポンプの回転数を操作する。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−328591号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ターボチャージャ(過給機)を搭載したウォータジェットバイク(ジェット推進艇)においては、ライダーがスロットルを全開にすると、ターボチャージャの過給圧が急激に上昇し、それに伴って、エンジンの回転数が急上昇することで、ウォータジェットバイクの出力向上や急加速を実現しているが、このターボチャージャの過給圧の急上昇に伴い、エンジンの回転数及びウォータジェットポンプの回転数が急上昇すると、ダクトを流れる水流の流速も同様に急上昇する。
このとき、ダクト内では、水圧が急激に低下するため、当該水圧が飽和蒸気圧曲線を超えて、常温でも気泡(キャビティ)が発生する(キャビテーション現象)。
【0005】
この様子を図6で説明すると、スロットル(TH)開度が全開となると、エンジン(ENG)回転数NEがこれに伴って上昇する。このエンジン(ENG)回転数の急上昇に追随する形で、ターボチャージャの目標過給圧も急上昇し、エンジン(ENG)回転数は、さらに急上昇する。そして、エンジン(ENG)回転数、または、エンジン回転数の上昇率がある値に達すると、キャビテーション(ハンチング)が発生する(図6のA部を参照)。
しかし、このようなキャビテーションが発生すると、本来は船を推進させるために使われるべき推力エネルギーが、水の気化エネルギー、ウォータジェットポンプのインペラの振動等の仕事で無駄に消費されてしまうため、エンジンの回転数が安定せず、エンジン出力のハンチングを引き起こすという問題点がある。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、キャビテーション現象、推進力のハンチングの発生を防止することができるジェット推進艇を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明は上記の課題を解決すべくなされたもので、請求項1に記載の発明は、ウォータジェットポンプ(例えば、実施の形態におけるウォータジェットポンプ30)で加圧、加速した水を後方の噴射口(例えば、実施の形態における噴射口31)から噴射して、その反動によって推進するジェット推進艇(例えば、実施の形態におけるジェット推進艇10)において、前記ウォータジェットポンプを駆動するエンジン(例えば、実施の形態におけるエンジン20)に過給機(例えば、実施の形態におけるターボチャージャ24)を設け、前記エンジンの回転数の上昇率が所定値以上の場合、前記過給機の過給圧の上昇を遅延制御することを特徴とする。
【0008】
このように構成することで、スロットルが全開となり、前記エンジンの回転数が急上昇し、前記エンジンの回転数の上昇率が所定値以上となった場合には、前記過給機の過給圧の上昇を遅延制御し、前記エンジンの回転数の上昇を抑えることができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、ウォータジェットポンプで加圧、加速した水を後方の噴射口から噴射して、その反動によって推進するジェット推進艇において、前記ウォータジェットポンプを駆動するエンジンに過給機を設け、当該エンジンの回転数が所定値を上回った場合、前記過給機の過給圧を抑制制御することを特徴とする。
【0010】
このように構成することで、スロットルが全開となり、前記エンジンの回転数が急上昇し、前記エンジンの回転数が所定値を上回った場合には、前記過給機の過給圧を抑制制御し、前記エンジンの回転数の急激な上昇を抑えることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明のジェット推進艇の一実施形態について説明する。図1は本実施形態のジェット推進艇を示す一部切り欠き側面図、図2は同じく平面図である。
これらの図(主として図1)に示すように、このジェット推進艇10は、鞍乗り型小型船舶であり、艇体11上のシート12に乗員が座り、スロットルレバー付きの操舵ハンドル13を握って操作して、エンジン20のスロットルバルブ(図示せず)の開度を調整することで、エンジン20の出力を調整する。
艇体11は、ハル14とデッキ15とを接合して内部に空間16を形成した浮体構造となっている。前記空間16内において、ハル14上には、エンジン20が搭載され、このエンジン20で駆動される推進手段としてのウォータジェットポンプ30がハル14の後部に設けられている。
【0012】
ウォータジェットポンプ30は、船底に開口した取水口17から艇体後端に開口した噴流口31およびディフレクタ38に至るダクト18内に配置されたインペラ32を有しており、インペラ32の駆動用のドライブシャフト22がエンジン20の出力軸21にカプラ21aを介して連結されている。
したがって、エンジン20によりカプラ21aおよびシャフト22を介してインペラ32が回転駆動されると、取水口17から取り入れられた水が噴流口31からディフレクタ38を経て噴出され、これによって艇体11が推進される。
エンジン20の駆動回転数、すなわちウォータジェットポンプ30による推進力は、前記操作ハンドル13のスロットルレバ−13a(図2参照)の回動操作によって操作される。ディフレクタ38は、図示しない操作ワイヤーで操作ハンドル13と連係されていて、ハンドル13の操作で回動操作され、これによって艇体11の進路を変更することができる。
【0013】
図3は主としてエンジン20を示す概略斜視図である。
このエンジン20はDOHC型で直列4気筒のドライサンプ式4サイクルエンジンであり、そのクランクシャフト(図1の出力軸21参照)が挺体11の前後方向に沿うように配置されている。
図1〜図3に示すように、艇体11の進行方向Fに向かってエンジン20の左側には、サージタンク41とインタークーラ22とが接続配置され、エンジン20の右側には、排気マニホルド23が接続配置されている。
エンジン20の後方には、エンジン20へ吸気を圧送するターボチャージャ(週給機)24が配設されているとともに、エンジン20の前方には、ターボチャージャ24へパイプ25を介して新気を導入するエアクリーナケース40が配設されている。
ターボチャージャ24のタービン部には排気マニホルド23(図2参照)の排気出口が接続されている。また、ターボチャージャ24のコンプレッサ部には前記インタークーラ22がパイプ22aで接続され、インタークーラ22にパイプ21bでサージタンク41が接続されている。したがって、エアクリーナケース40からの新気はパイプ25を介してターボチャージャ24に供給され、そのコンプレッサ部で圧縮されてパイプ22aを介しインタークーラ22へ供給されて冷却された後、サージタンク41を介してエンジン20へと供給されることとなる。
【0014】
ターボチャージャ24のタービン部にてタービンを回転させた排気は、第1排気管51,転覆時の水の逆流(ターボチャージャ24等への水の侵入)を防止するための逆流防止室52,および第2排気管53を通じてウォーターマフラ60へと排出され、さらにウォーターマフラ60から排気・排水管54を経てウォータジェットポンプ30による水流内へと排出される。
【0015】
エンジン20には、エンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ及びスロットルの開度を検出するスロットル開度センサがそれぞれ設けられる。また、ターボチャージャ24には、過給圧を検出する過給圧センサが設けられる。エンジン回転数センサ、スロットル開度センサ、過給圧センサは、それぞれジェット推進艇10の制御装置100と接続される。これらセンサにおいて測定された実測値は、制御装置100に対して、常時を出力される。
制御装置100は、エンジン20及びターボチャージャ24等の制御を行うECU(Engine Controll Unit)である。
【0016】
次に、図面を参照して、本実施形態のジェット推進艇の動作について説明する。図4は、主として、本実施形態のジェット推進艇におけるエンジン(ENG)回転数NEの時間変化を示すグラフである。このグラフにおいて、横軸は時間(sec)、縦軸はエンジン回転数(rpm)を示している。また、図5は、本実施形態のジェット推進艇における過給圧制御処理の流れを示すフローチャートである。
時間0においては、スロットルバルブのTH開度が低いので、エンジン回転数NE、実過給圧PCは、安定的に低い値に保たれている。このとき、エンジン回転数センサは、エンジン回転数NEを測定し、制御装置100に出力する。また、スロットル開度センサは、スロットルバルブのTH開度を測定し、制御装置100に出力する。
制御装置100は、スロットルバルブのTH開度の入力を受けて、制御装置100のROMに予め書き込まれている目標過給圧POBJNのプログラムマップに基づいて、入力されるエンジン回転数と対応する目標過給圧POBJNを読み出して、この目標過給圧POBJNに基づいて、ターボチャージャ24の過給圧を制御する。このとき、エンジン回転数NEが低いので、プログラムマップに基づいて読み出される目標過給圧POBJNは、実過給圧PCよりも高い値を取る。
【0017】
今、ライダーが、スロットルレバー付きの操舵ハンドル13を握ることで、エンジン20のスロットルバルブのTH開度が全開となったとする。このとき、エンジン回転数センサは、エンジン回転数NEを測定し、制御装置100に出力する。また、スロットル開度センサは、スロットルバルブのTH開度(全開)を測定し、制御装置100に出力する。制御装置100は、スロットルバルブのTH開度の入力を受けて、予め設定された設定値以上であるか否かを判定する(図5のステップS1)。なお、本実施形態においては、一例として、スロットルバルブの開度の設定値を全開としている。
制御装置100は、このとき、スロットルバルブの開度が全開となったことをトリガとして(ステップS1でYes)、ROMに記憶された過給圧の設定量1をセットして、当該設定量1に基づいて、ターボチャージャ24の過給圧を制御する(ステップS2)。一方、スロットルバルブの開度が設定値に達していない場合(ステップS1でNo)、再度、ステップS1を繰り返す。
この過給圧制御コマンドWCMDにおける設定量1は、本来、ターボチャージャ24の制御に使用される目標過給圧よりも低い値に設定される。また、設定量1は、時間軸に対して固定の値を取る。
【0018】
スロットル(TH)開度が全開となると、エンジン回転数NEがこれに伴って上昇する。制御装置100は、この上昇したエンジン回転数NEに基づいて、目標過給圧POBJNについてフィードバック制御を行う。すなわち、制御装置100は、この上昇したエンジン回転数NEと対応する目標過給圧POBJNを算出する。
今、算出される目標過給圧POBJNは、エンジン回転数NEの急上昇に追随する形となる。
すなわち、エンジン回転数NEとともに、ターボチャージャの目標過給圧POBJNも急上昇するが、制御装置100は、当該設定量1に基づいて、ターボチャージャ24の過給圧を制御する。エンジン回転数センサは、この間、さらに、エンジン回転数NEを測定し、制御装置100に出力する。
制御装置100は、入力されるエンジン回転数NEが設定値以上であるか否かを判定する。エンジン回転数NEが設定値(図4の設定NE1)に達すると(ステップS3でYes)、これをトリガとしてタイマをセットし(ステップS5)、この時点から一定時間(TIMER1)だけ、さらに、当該設定量1に基づいて、ターボチャージャ24の過給圧を制御する。
【0019】
また、エンジン回転数NEが設定値に達していない場合(ステップS3でNo)、制御装置100は、さらに、入力されるエンジン回転数NEと経過時間とから、時間当たりのエンジン回転数NEの上昇率を算出する。そして、算出したエンジン回転数NEの上昇率が設定値に達すると(ステップS4でYes)、御装置100は、上記ステップS5と同様に、これをトリガとしてタイマをセットし(ステップS5)、この時点から一定時間(TIMER1)だけ、さらに、当該設定量1に基づいて、ターボチャージャ24の過給圧を制御する。
一方、エンジン回転数NE、エンジン回転数の上昇率のいずれもが設定値に達していない場合は(ステップS4でNo)、再度、ステップS3から繰り返す。
【0020】
そして、タイマにより、エンジン回転数NE、あるいは、エンジン回転数NEの上昇率が設定値に達してから、一定時間(TIMER1)だけ経過したと判定すると(ステップS6でYes)、制御装置100は、当該時点における実過給圧PC、目標過給圧POBJNに基づいて、設定復帰量を算出する(ステップS7)。
そして、制御装置100は、算出した設定復帰量を設定量1に加算し、この加算値をセットする(ステップS8)。そして、上記ステップS5と同様に、加算値セットをトリガとして、新たにタイマをセットし(ステップS9)、この時点から一定時間(TIMER2)だけ、さらに、当該加算値(設定量1+設定復帰量)に基づいて、ターボチャージャ24の過給圧を制御する。
【0021】
そして、タイマにより、前回加算値をセットしてから、一定時間(TIMER2)だけ経過したと判定すると(ステップS10でYes)、制御装置100は、同様に、当該時点における実過給圧PC、目標過給圧POBJNに基づいて、設定復帰量を算出し、算出した設定復帰量をさらに加算して、この加算値に基づいて、ターボチャージャ24の過給圧を制御する。一方、一定時間(TIMER2)が経過するまでは(ステップS10でNo)、制御装置100は、加算値に基づいて、ターボチャージャ24の過給圧を制御する。
制御装置100は、以上の処理を目標過給圧POBJNに対して実過給圧PCが安定するまで、例えば、設定復帰量の絶対値が設定値以下となるまで実行する。
【0022】
このようなターボチャージャ24の過給圧制御によって、エンジン回転数の上昇率は、確実に一定値以下に制限される。また、エンジン20とウォータジェットポンプ30とは、インペラ32の駆動用のドライブシャフト22がエンジン20の出力軸21にカプラ21aを介して連結されていることから、当該エンジン回転数に連動して、ウォータジェットポンプの回転数が決定される。
したがって、ウォータジェットポンプの回転数の許容上昇率が、ウォータジェットポンプにおけるキャビテーションの発生特性に基づいて決定されれば、上述したエンジン回転数の上昇率、または、エンジン回転数(設定NE1)を決定することができる。
そして、このようにタイマ値を設定することで、キャビテーションが発生するウォータジェットポンプの回転数の上昇率を回避することができる。
【0023】
したがって、本実施形態のジェット推進艇によれば、ウォータジェットポンプ30におけるキャビテーションの発生を防止することができ、推力エネルギーの無駄な消費を防止することができる効果が得られる。
また、キャビテーションの発生を防止することで、さらに、上述したような急加速時においても、図4のAに示すように、エンジンの回転数を安定化させることができるため、振動の増大を抑制することができる効果が得られる。
【0024】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において適宜変形実施可能である。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載の発明によれば、スロットルが全開となり、前記エンジンの回転数が急上昇し、前記エンジンの回転数の上昇率が所定値以上となった場合には、前記過給機の過給圧の上昇を遅延制御し、前記エンジンの回転数の上昇率を抑えるので、キャビテーション現象の発生を防止することができる効果を得ることができる。
【0026】
また、請求項2に記載の発明によれば、スロットルが全開となり、前記エンジンの回転数が急上昇し、前記エンジンの回転数が所定値を上回った場合には、前記過給機の過給圧を抑制制御し、前記エンジンの回転数の急激な上昇を抑えるので、より確実にキャビテーション現象の発生を防止することができる効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態のジェット水艇の一部切り欠き側面図。
【図2】同じく平面図。
【図3】主としてエンジン及びターボチャージャを示す概略斜視図。
【図4】主として、エンジン回転数の時間変化を示すグラフ。
【図5】過給圧制御処理の流れを示すフローチャート。
【図6】従来のエンジン回転数の時間変化を示すグラフ。
【符号の説明】
10…ジェット推進艇
20…エンジン
24…ターボチャージャ
30…ウォータジェットポンプ
100…制御装置

Claims (2)

  1. ウォータジェットポンプで加圧、加速した水を噴射して推進するジェット推進艇において、前記ウォータジェットポンプを駆動するエンジンに過給機を設け、前記エンジンの回転数の上昇率が所定値以上の場合、前記過給機の過給圧の上昇を遅延制御することを特徴とするジェット推進艇。
  2. ウォータジェットポンプで加圧、加速した水を噴射して推進するジェット推進艇において、前記ウォータジェットポンプを駆動するエンジンに過給機を設け、当該エンジンの回転数が所定値を上回った場合、前記過給機の過給圧を抑制制御することを特徴とするジェット推進艇。
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