JP2004323683A - 水膨潤性鉱物入りフッ素樹脂組成物およびそれを用いた成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】水膨潤性鉱物およびフッ素樹脂を含有している水膨潤性鉱物入りフッ素樹脂組成物。上記水膨潤性鉱物が、水膨潤性鉱物およびフッ素樹脂の合計100重量%中に、25〜50重量%の量で含まれていることが好ましい。該水膨潤性鉱物入りフッ素樹脂組成物からなるフッ素樹脂成形体。該成形体は焼成されていてもよい。
【効果】本発明によれば、フッ素樹脂本来の優れた特性である耐熱性、耐候性、耐化学薬品性を損なうことなく、親水性、および極めて優れた水中における低摩擦特性、水中における耐摩耗性を有するフッ素樹脂系成形体を簡単に製造できるような水膨潤性鉱物入りフッ素樹脂組成物およびそれを用いた成形体が提供される。
【選択図】なし
【効果】本発明によれば、フッ素樹脂本来の優れた特性である耐熱性、耐候性、耐化学薬品性を損なうことなく、親水性、および極めて優れた水中における低摩擦特性、水中における耐摩耗性を有するフッ素樹脂系成形体を簡単に製造できるような水膨潤性鉱物入りフッ素樹脂組成物およびそれを用いた成形体が提供される。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、水膨潤性鉱物入りフッ素樹脂組成物およびそれを用いた成形体に関する。
さらに詳しくは、本発明は、フッ素樹脂本来の優れた特性である耐熱性、耐候性、耐化学薬品性を損なうことなく、親水性、および極めて優れた水中における低摩擦特性、水中における耐摩耗性を有するフッ素樹脂成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
フッ素樹脂系成形体は、フッ素樹脂に充填材などを添加して所望形状に予備成形(圧縮成形)した後、炉内で加熱焼成したもので、フッ素樹脂の持つ耐薬品性、耐熱性、非粘着性、撥水性、低摩擦性等の特性を有しており、これらの特性を生かして、例えば、腐蝕性流体あるいは高温流体を扱うパイプライン、タンクあるいは機械装置などとして広く利用されている。さらに半導体製造プロセスや医療等に使用される高純度薬液貯蔵容器の素材としても使用されている。
【0003】
しかしながら、フッ素樹脂の優れた撥水性は、特に衛生面で充分な配慮を必要とする食品製造用機械器具、食品用容器などの食品用途や、医療用機械器具などの医療用途の場合、これら機械器具に組み込まれているパッキンや機械器具内のタンクやパイプ等の内外周面のライニングや容器等を水で洗浄しにくいという問題点がある。
【0004】
これに対して、親水性を有するフッ素樹脂に関する技術としては、フッ素樹脂粉末の表面を、熱硬化性樹脂や、金属、セラミックス又はそれらの混合物で被覆して、表面親水化することが提案されている(特許文献1)。
さらに、フッ素樹脂粉体を、親水基を有する含フッ素化合物の被膜で被覆する技術も提案されている(特許文献2)。
【0005】
しかしながら、上記何れの方法も、フッ素樹脂粉末の表面を処理する技術であり、それらの被覆技術を実施するには手間と費用がかかる。さらに、これら先行技術は、顔料、塗装用、メッキ浴添加剤、潤滑剤等、何れも水に分散させるフッ素樹脂材料に対しその親水性を向上させようとするものであり、最終製品としてのフッ素樹脂成形体として親水性のものを得ようとするものではない。
【0006】
また、フッ素樹脂成形体は、各種動的機器(攪拌機、回転軸、ポンプ等)あるいは摺動部材としても利用されている。しかし、フッ素樹脂の耐摩耗性は悪く、特に水中での耐摩耗性は著しく悪い。そこで、黒鉛などの炭素系充填材を配合したフッ素樹脂成形体が、摺動特性と耐摩耗性に優れるため好適に使用されている。
【0007】
しかしながら、フッ素樹脂成形体が食品用、医療用、製紙工業、樹脂製造などの化成品工業で使用される場合、上記の方法で得られるフッ素樹脂成形体は充填材の色調に起因して黒色となるため、該成形体の摩耗等に伴い、食品などの製品に黒色の摩耗粉混入の恐れが有り問題となっている。
【0008】
【特許文献1】
特開昭64−51454号
【特許文献2】
特許第3156860号
【0009】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、フッ素樹脂本来の優れた特性である耐熱性、耐候性、耐化学薬品性を損なうことなく、親水性、および極めて優れた水中における低摩擦特性、耐摩耗性を有する水膨潤性鉱物入りフッ素樹脂組成物およびそれを用いた、これら特性を具備した成形体を提供することを目的としている。
【0010】
【発明の概要】
本発明に係る水膨潤性鉱物入りフッ素樹脂組成物は、水膨潤性鉱物およびフッ素樹脂を含有していることを特徴としている。
本発明に係る上記水膨潤性鉱物入りフッ素樹脂組成物には、上記水膨潤性鉱物が、水膨潤性鉱物およびフッ素樹脂の合計100重量%中に、25〜50重量%の量で含まれていることが好ましい。
【0011】
本発明に係るフッ素樹脂成形体は、上記の水膨潤性鉱物入りフッ素樹脂組成物からなることを特徴とし、さらに、該フッ素樹脂成形体は、フッ素樹脂の融点以上の温度で加熱焼成されていてもよい。
本発明によれば、フッ素樹脂本来の優れた特性である耐熱性、耐候性、耐化学薬品性を損なうことなく、親水性、および極めて優れた水中における低摩擦特性、水中における耐摩耗性を有するフッ素樹脂系成形体を簡単に製造できるような水膨潤性鉱物入りフッ素樹脂組成物およびそれを用いた成形体が提供される。
【0012】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係る水膨潤性鉱物入りフッ素樹脂組成物およびそれを用いた成形体およびその製造方法などについて、具体的に説明する。
[水膨潤性鉱物入りフッ素樹脂組成物およびそれを用いた成形体]
本発明に係る水膨潤性鉱物入りフッ素樹脂組成物(単に、「フッ素樹脂組成物」等とも言う。)およびそれを用いた成形体(「フッ素樹脂成形体」等とも言う。)は、後述する水膨潤性鉱物とフッ素樹脂とを含有している。なお、以下の説明で、フッ素樹脂成形体には、特にその趣旨に反しない限り、焼成したものも含む。
【0013】
また、このフッ素樹脂組成物およびフッ素樹脂成形体には、水膨潤性鉱物、フッ素樹脂の他、必要により、充填材(水膨潤性鉱物を除く。以下同様。)などが含まれていてもよい。
また、水膨潤性鉱物入りフッ素樹脂組成物には、フッ素樹脂成形体に含まれるこれらの成分に加えて、液状の加工助剤などが含まれていてもよい。
【0014】
上記水膨潤性鉱物は、本発明の水膨潤性鉱物入りフッ素樹脂組成物中、あるいはそれを用いた成形体中の水膨潤性鉱物とフッ素樹脂との合計を100重量%とするとき、通常、25〜50重量%、好ましくは30〜40重量%の量で含まれていることが、フッ素樹脂本来の特性である耐熱性、耐候性、耐化学薬品性を損なうことなく、しかも水中摩擦摩耗損量が少なく、親水性を有する成形体が得られる点から望ましい。
【0015】
なお、フッ素樹脂組成物中あるいはフッ素樹脂成形体中における、水膨潤性鉱物とフッ素樹脂との合計を100重量%とするとき、水膨潤性鉱物量が上記範囲の量より少ないと、得られるフッ素樹脂成形体は、十分な親水性が得られない傾向があり、また、上記範囲の量より多いと、フッ素樹脂成形体は、引張強さ、伸び等の点で不十分となる傾向がある。
【0016】
<水膨潤性鉱物>
水膨潤性鉱物としては、水中で膨潤し、粘性のある微結晶の分散液となる水膨潤性鉱物が挙げられ、例えば、合成マイカ(例:コープケミカル(株)製「ソマシフ(ME100)」)や合成スメクタイト(例:コープケミカル(株)製「ルーセンタイト(SWN、SWF)」等が用いられる。
【0017】
このような水膨潤性鉱物である合成マイカ、合成スメクタイトなどについてさらに詳説すると、合成マイカは、鱗片状であり、天然マイカと同様の結晶構造を有し、タルクを主原料とする高純度フッ素系マイカであり、水中で膨潤し、粘性のある微結晶の分散液となる。
合成スメクタイトは、人工的に得られたスメクタイト型粘土鉱物であり、天然物に比べて不純物が少ないので、親水性に優れ、水中で膨潤し、良好な粘性のある微結晶の分散液となる。
【0018】
本発明では、このような合成マイカ、合成スメクタイトなどは、水膨潤性鉱物入りフッ素樹脂組成物およびそれを用いた成形体に含まれる水膨潤性鉱物として特に好適である。このような合成マイカ、合成スメクタイトなどに代表される合成水膨潤性鉱物を含有したフッ素樹脂組成物を用いると、作業性良く、引張強さなどに優れた所望の成形体を簡単に製造できる。
【0019】
上記スメクタイト型粘土鉱物としては、例えばモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト等が挙げられる。これらのスメクタイト型粘土鉱物は、その結晶構造が層状構造をとっている。そしてその層表面には珪素原子に結合した酸素原子が存在し、その結晶端面すなわち層構造の側面には水酸基が存在している。スメクタイト型粘土鉱物は、その結晶端面に水酸基が存在するために、元来結晶端面同士の親水的な結合性を有する。
<フッ素樹脂>
フッ素樹脂としては、PTFEの他、変性PTFE 、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF) 、四フッ化エチレン−エチレン共重合樹脂(ETFE) 、三フッ化塩化エチレン樹脂(PCTFE) 、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレンエチレン共重合樹脂(FEP)および四フッ化エチレン−パーフロロアルキル共重合樹脂(PFA)など、従来より公知のフッ素樹脂をいずれも好ましく用いることができる。
【0020】
フッ素樹脂としては、粉末状のものをそのまま用いても良く、水にフッ樹脂微粒子を分散させたディスパージョンを用いても良い。ディスパージョンを用いた場合においては、フッ素樹脂ディスパージョンに適量の水、充填材(水膨潤性鉱物を除く。)、水膨潤性鉱物などを加えて攪拌するだけで水膨潤性鉱物入りフッ素樹脂組成物を得ることができ、該組成物を用いることにより、より効率的に、前記フッ素樹脂本来の特性に加えて親水性に優れ、水中における低摩擦摩耗量に優れるなど、諸物性に優れた本発明の充填材入フッ素樹脂成形体を得ることができる。
<充填材>
充填材としては、目的に応じて、黒鉛、カーボンブラック、膨張黒鉛、活性炭、カーボンナノチューブ等の炭素系充填材;タルク、マイカ(水膨潤性鉱物を除く。)、クレー、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、等の無機充填材;またはPPS等の樹脂の粉体;
等が目的に応じて用いられる。また、炭素繊維、アラミド繊維、ロックウール等からなる繊維材長10mm以下の繊維材を充填材として用いても良い。
<液状の加工助剤>
加工助剤としては、室温(15〜30℃)および常圧下で、液状である限り、その粘度などは特に限定されず、例えば、脂肪族飽和炭化水素や芳香族炭化水素などに代表される有機溶剤、アルコール類、水等が使用できる。
【0021】
このような成分が含まれた本発明の水膨潤性鉱物入りフッ素樹脂組成物を調製するには、フッ素樹脂、水膨潤性鉱物の他、必要により充填材(水膨潤性鉱物を除く。)、加工助剤などを含めた上記各成分を任意の順序で一度に、あるいは少量ずつ複数回に分けて容器内に添加し、攪拌・混合等すればよい。
水膨潤性鉱物、例えば、膨潤マイカは、水中への分散性が良く、しかも沈殿しにくいため、本発明では、このフッ素樹脂組成物を調製する際に、膨潤マイカの水溶液また水分散液を用いることもできる。すなわち、本発明では、フッ素樹脂と、水と、膨潤マイカに代表される膨潤性鉱物などとを混合する際に、水膨潤性鉱物の膨潤マイカは、粉末で用いてもよく、水溶液あるいは水分散液で用いてもよく、何れの態様でも容易に混合することができる。
【0022】
この際に、必要により、所望のフッ素樹脂成形体が得られる限り、含まれるフッ素樹脂の溶融温度未満の温度での加熱等を行ってもよい。
[水膨潤性鉱物を用いた成形体の製造]
本発明に係るフッ素樹脂成形体は、基本的には従来公知のフッ素樹脂成形体の製造方法と同様の方法で製造可能であって、上記フッ素樹脂組成物を用いて、例えば、圧縮成形や押出成形等により所望の成形体に容易に成形可能である。
【0023】
例えば、粉末状フッ素樹脂組成物を所望形状の型内に充填し、プレス等の圧縮装置により、成型面圧400〜1000kgf/cm2の加圧下に、10〜20分間、室温(15〜30℃)で保持すれば、所望形状の成形体が得られる。なお、必要によりフッ素樹脂の融点未満の温度(例:30〜80℃)で加熱して、用いられた該加工助剤を揮発、除去させてもよい。
【0024】
上記のようにして得られた成形体は、含まれるフッ素樹脂の融点以上の温度で加熱焼成を行ってもよい。
加熱焼成は、得られた未焼成の成形体を加熱炉内に入れ、成形体に含まれているフッ素樹脂の融点以上の温度〜フッ素樹脂の融点+70℃の温度、好ましくは「フッ素樹脂の融点+20℃」〜「フッ素樹脂の融点+60℃」で、3〜12時間保持することにより行われる。
【0025】
例えば、フッ素樹脂がPTFE(四フッ化エチレン樹脂)の場合には、PTFEの融点である327℃以上の温度〜「PTFEの融点+70℃」の温度で、好ましくは360〜400℃の温度で、通常、3〜12時間、好ましくは5〜10時間加熱焼成すれば、成形体中のフッ素樹脂(粉末)が溶融し、互いに結合して、成形体中に含まれる充填材などが焼成物中ではフッ素樹脂間に保持・固定される。
【0026】
なお、上記加熱焼成に際しては、成形体を室温から上記焼成温度まで昇温するが、この際には、昇温速度30〜120℃/時で、10〜15時間かけて、連続的または段階的に昇温することが望ましい。
また、上記加熱焼成に際しては、室温から上記焼成温度まで昇温する途中で、一旦、100〜150℃で2〜10時間保持し、成形物中に含まれている溶剤または分散媒を揮散、除去する工程を設けることが望ましい。
【0027】
本発明では、このようにして所定の焼成温度まで成形体を昇温した後、上記焼成温度すなわち、フッ素樹脂の融点以上の温度〜「フッ素樹脂の融点+70℃」の温度で、上記時間すなわち、3〜12時間保持することが望ましい。
また、上記温度および時間での加熱焼成を行った後には、本発明では、このように焼成された成形体(焼成物)を、上記焼成温度から室温まで降温速度30〜140℃/時で、3〜10時間かけて連続的または段階的に、好ましくは連続的に降温することが望ましい。
【0028】
以上詳述したように、本発明によれば原料組成物から簡単に、低コストで所望のフッ素樹脂成形体を得ることができる。
このようにして得られた本発明に係るフッ素樹脂成形体は、フッ素樹脂本来の優れた特性である耐熱性、耐候性、耐化学薬品性を損なうことなく、親水性を有し、しかも極めて優れた、水中における低摩擦特性と水中における耐摩耗性とを有する。
【0029】
[用途]
このようにして得られたフッ素樹脂成形体は、フッ素樹脂、水膨潤性鉱物、必要により充填材(水膨潤性鉱物を除く)などを含有しており、フッ素樹脂成形体中における水膨潤性鉱物とフッ素樹脂との合計を100重量%とするとき、この水膨潤性鉱物量が、例えば、25〜50重量%、特に30〜40重量%の量であると、フッ素樹脂の持つ耐薬品性、耐熱性、非粘着性、低摩擦性等の特性(撥水性を除く。)を有しており、しかも親水性に優れ、その上水中における低摩擦特性、水中における耐摩耗性にも極めて優れている。
【0030】
従って、このフッ素樹脂成形体は、これらの特性を生かして、例えば、腐蝕性流体あるいは高温流体を扱うパイプライン、タンクあるいは機械装置などとして、さらに半導体製造プロセスや医療等に使用される高純度薬液貯蔵容器の素材として好適に使用できる。
このフッ素樹脂成形体を、特に、衛生面で充分な配慮を必要とする食品製造用機械器具、食品用容器などの食品用途や、医療用機械器具などの医療用途で、これら機械器具に組み込まれているパッキンや機械器具内のタンクやパイプ等として用いると、当該部位や部材、器具は、フッ素樹脂本来の特性(撥水性を除く。)を具備し、かつ水で洗浄しやすいため衛生的である。
【0031】
さらに、このフッ素樹脂成形体で、充填材として白色の充填材のみを含む場合は、黒色の摩耗粉を嫌う、食品用途、医療用途、製紙工業、化成品工業の摺動部材としてより好適に使用できる。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、水膨潤性鉱物およびフッ素樹脂を含有することにより、フッ素樹脂本来の優れた特性である耐熱性、耐候性、耐化学薬品性を損なうことなく、親水性を有し、しかも極めて優れた水中における低摩擦特性と耐摩耗性とを有するフッ素樹脂系成形体を簡単に製造できるような水膨潤性鉱物入りフッ素樹脂組成物およびそれを用いた成形体が提供される。
【0033】
【実施例】
以下、本発明について実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は係る実施例により何ら限定されるものではない。
▲1▼親水性試験
成形した試験片に水滴を室温で落とし、最終的に水滴がほとんど試験片内に吸収され、試験片表面に水滴がない状態になるまでの吸水所要時間(分)と、水滴滴下直後の接触角(度)を(測定装置:協和界面科学(株)製、接触角計CA−X型)にて測定。
▲2▼水中摩耗摩擦試験
水中摩擦摩耗試験では、水中にて試料と相手材を摺動摩擦し、その際の摩耗係数(単位:cm3・sec/kgf・m・hr)や摩擦係数を測定(測定装置:三井造船(株)製、摩擦摩耗試験機TT100C型)。
【0034】
なお、水中摩擦摩耗試験条件は以下の通り。
<水中摩擦摩耗試験条件>
締付圧力:6kgf/cm2、
周速:0.1m/s(208rpm)、
測定時間:24hr、
接触面積:2.01cm2、
相手材:SUS304。
【0035】
なお、表1中の「測定不可」は、試験後試料の重量減少が測定できないことを意味する。また、摩耗係数「1.41E−03」は、1.41×10−3を意味する。(以下同様)。
【0036】
【試験例1〜12】
フッ素樹脂成形体形成用樹脂組成物として、PTFEモールディングパウダー(ダイキン社製、M−12)と、膨潤性鉱物として水膨潤性マイカ(コープケミカル社製、ソマシフME−100)とを表1に示すような種々の配合比で、水を配合することなくドライで10分程度ミキサーにて混合した。
【0037】
この混合物を金型(縦100mm×横100mm)に投入し、成型面圧1000kgf/cm2で15分間圧縮成型した。
圧縮成型された試験片を加熱電気炉にて下記条件下で焼成(昇温・焼成・降温を含む。)した。
加熱、焼成および降温条件:
室温(約27℃)→2h(時間)で120℃まで昇温→120℃で5h保持→5hで365℃まで昇温→365℃で5h保持(焼成)→5hで室温まで冷却。
【0038】
上記のように焼成して得られた試験片からなるフッ素樹脂成形体について、表1に示す測定項目について、前記測定条件下で測定し、焼成物の比重、水滴滴下直後の接触角、親水(あるいは水滴吸収)所要時間(分)、水中摩耗係数、水中摩擦係数を測定した。
結果を表1に示す。
【0039】
また、表1に示す水中摩擦試験結果を図1に示し、また、表1に示す水中摩耗試験結果を図2に併せて示す。
【0040】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、試験例1〜12で得られた水膨潤性鉱物入りフッ素樹脂成形体の水中摩擦試験結果を示すグラフである。図1で、縦軸は、摩擦係数を示し、横軸は、フッ素樹脂と水膨潤性鉱物(膨潤マイカ)との合計量(100重量%)中の、水膨潤性鉱物の配合量(重量%)を示す。
【図2】図2は、試験例1〜12で得られた水膨潤性鉱物入りフッ素樹脂成形体の水中摩耗試験結果を示すグラフである。図2で、縦軸は、摩耗係数(単位:cm3・sec/kgf・m・hr)を示し、横軸は、フッ素樹脂と水膨潤性鉱物(膨潤マイカ)との合計量(100重量%)中の、水膨潤性鉱物の配合量(重量%)を示す。
【発明の技術分野】
本発明は、水膨潤性鉱物入りフッ素樹脂組成物およびそれを用いた成形体に関する。
さらに詳しくは、本発明は、フッ素樹脂本来の優れた特性である耐熱性、耐候性、耐化学薬品性を損なうことなく、親水性、および極めて優れた水中における低摩擦特性、水中における耐摩耗性を有するフッ素樹脂成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
フッ素樹脂系成形体は、フッ素樹脂に充填材などを添加して所望形状に予備成形(圧縮成形)した後、炉内で加熱焼成したもので、フッ素樹脂の持つ耐薬品性、耐熱性、非粘着性、撥水性、低摩擦性等の特性を有しており、これらの特性を生かして、例えば、腐蝕性流体あるいは高温流体を扱うパイプライン、タンクあるいは機械装置などとして広く利用されている。さらに半導体製造プロセスや医療等に使用される高純度薬液貯蔵容器の素材としても使用されている。
【0003】
しかしながら、フッ素樹脂の優れた撥水性は、特に衛生面で充分な配慮を必要とする食品製造用機械器具、食品用容器などの食品用途や、医療用機械器具などの医療用途の場合、これら機械器具に組み込まれているパッキンや機械器具内のタンクやパイプ等の内外周面のライニングや容器等を水で洗浄しにくいという問題点がある。
【0004】
これに対して、親水性を有するフッ素樹脂に関する技術としては、フッ素樹脂粉末の表面を、熱硬化性樹脂や、金属、セラミックス又はそれらの混合物で被覆して、表面親水化することが提案されている(特許文献1)。
さらに、フッ素樹脂粉体を、親水基を有する含フッ素化合物の被膜で被覆する技術も提案されている(特許文献2)。
【0005】
しかしながら、上記何れの方法も、フッ素樹脂粉末の表面を処理する技術であり、それらの被覆技術を実施するには手間と費用がかかる。さらに、これら先行技術は、顔料、塗装用、メッキ浴添加剤、潤滑剤等、何れも水に分散させるフッ素樹脂材料に対しその親水性を向上させようとするものであり、最終製品としてのフッ素樹脂成形体として親水性のものを得ようとするものではない。
【0006】
また、フッ素樹脂成形体は、各種動的機器(攪拌機、回転軸、ポンプ等)あるいは摺動部材としても利用されている。しかし、フッ素樹脂の耐摩耗性は悪く、特に水中での耐摩耗性は著しく悪い。そこで、黒鉛などの炭素系充填材を配合したフッ素樹脂成形体が、摺動特性と耐摩耗性に優れるため好適に使用されている。
【0007】
しかしながら、フッ素樹脂成形体が食品用、医療用、製紙工業、樹脂製造などの化成品工業で使用される場合、上記の方法で得られるフッ素樹脂成形体は充填材の色調に起因して黒色となるため、該成形体の摩耗等に伴い、食品などの製品に黒色の摩耗粉混入の恐れが有り問題となっている。
【0008】
【特許文献1】
特開昭64−51454号
【特許文献2】
特許第3156860号
【0009】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、フッ素樹脂本来の優れた特性である耐熱性、耐候性、耐化学薬品性を損なうことなく、親水性、および極めて優れた水中における低摩擦特性、耐摩耗性を有する水膨潤性鉱物入りフッ素樹脂組成物およびそれを用いた、これら特性を具備した成形体を提供することを目的としている。
【0010】
【発明の概要】
本発明に係る水膨潤性鉱物入りフッ素樹脂組成物は、水膨潤性鉱物およびフッ素樹脂を含有していることを特徴としている。
本発明に係る上記水膨潤性鉱物入りフッ素樹脂組成物には、上記水膨潤性鉱物が、水膨潤性鉱物およびフッ素樹脂の合計100重量%中に、25〜50重量%の量で含まれていることが好ましい。
【0011】
本発明に係るフッ素樹脂成形体は、上記の水膨潤性鉱物入りフッ素樹脂組成物からなることを特徴とし、さらに、該フッ素樹脂成形体は、フッ素樹脂の融点以上の温度で加熱焼成されていてもよい。
本発明によれば、フッ素樹脂本来の優れた特性である耐熱性、耐候性、耐化学薬品性を損なうことなく、親水性、および極めて優れた水中における低摩擦特性、水中における耐摩耗性を有するフッ素樹脂系成形体を簡単に製造できるような水膨潤性鉱物入りフッ素樹脂組成物およびそれを用いた成形体が提供される。
【0012】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係る水膨潤性鉱物入りフッ素樹脂組成物およびそれを用いた成形体およびその製造方法などについて、具体的に説明する。
[水膨潤性鉱物入りフッ素樹脂組成物およびそれを用いた成形体]
本発明に係る水膨潤性鉱物入りフッ素樹脂組成物(単に、「フッ素樹脂組成物」等とも言う。)およびそれを用いた成形体(「フッ素樹脂成形体」等とも言う。)は、後述する水膨潤性鉱物とフッ素樹脂とを含有している。なお、以下の説明で、フッ素樹脂成形体には、特にその趣旨に反しない限り、焼成したものも含む。
【0013】
また、このフッ素樹脂組成物およびフッ素樹脂成形体には、水膨潤性鉱物、フッ素樹脂の他、必要により、充填材(水膨潤性鉱物を除く。以下同様。)などが含まれていてもよい。
また、水膨潤性鉱物入りフッ素樹脂組成物には、フッ素樹脂成形体に含まれるこれらの成分に加えて、液状の加工助剤などが含まれていてもよい。
【0014】
上記水膨潤性鉱物は、本発明の水膨潤性鉱物入りフッ素樹脂組成物中、あるいはそれを用いた成形体中の水膨潤性鉱物とフッ素樹脂との合計を100重量%とするとき、通常、25〜50重量%、好ましくは30〜40重量%の量で含まれていることが、フッ素樹脂本来の特性である耐熱性、耐候性、耐化学薬品性を損なうことなく、しかも水中摩擦摩耗損量が少なく、親水性を有する成形体が得られる点から望ましい。
【0015】
なお、フッ素樹脂組成物中あるいはフッ素樹脂成形体中における、水膨潤性鉱物とフッ素樹脂との合計を100重量%とするとき、水膨潤性鉱物量が上記範囲の量より少ないと、得られるフッ素樹脂成形体は、十分な親水性が得られない傾向があり、また、上記範囲の量より多いと、フッ素樹脂成形体は、引張強さ、伸び等の点で不十分となる傾向がある。
【0016】
<水膨潤性鉱物>
水膨潤性鉱物としては、水中で膨潤し、粘性のある微結晶の分散液となる水膨潤性鉱物が挙げられ、例えば、合成マイカ(例:コープケミカル(株)製「ソマシフ(ME100)」)や合成スメクタイト(例:コープケミカル(株)製「ルーセンタイト(SWN、SWF)」等が用いられる。
【0017】
このような水膨潤性鉱物である合成マイカ、合成スメクタイトなどについてさらに詳説すると、合成マイカは、鱗片状であり、天然マイカと同様の結晶構造を有し、タルクを主原料とする高純度フッ素系マイカであり、水中で膨潤し、粘性のある微結晶の分散液となる。
合成スメクタイトは、人工的に得られたスメクタイト型粘土鉱物であり、天然物に比べて不純物が少ないので、親水性に優れ、水中で膨潤し、良好な粘性のある微結晶の分散液となる。
【0018】
本発明では、このような合成マイカ、合成スメクタイトなどは、水膨潤性鉱物入りフッ素樹脂組成物およびそれを用いた成形体に含まれる水膨潤性鉱物として特に好適である。このような合成マイカ、合成スメクタイトなどに代表される合成水膨潤性鉱物を含有したフッ素樹脂組成物を用いると、作業性良く、引張強さなどに優れた所望の成形体を簡単に製造できる。
【0019】
上記スメクタイト型粘土鉱物としては、例えばモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト等が挙げられる。これらのスメクタイト型粘土鉱物は、その結晶構造が層状構造をとっている。そしてその層表面には珪素原子に結合した酸素原子が存在し、その結晶端面すなわち層構造の側面には水酸基が存在している。スメクタイト型粘土鉱物は、その結晶端面に水酸基が存在するために、元来結晶端面同士の親水的な結合性を有する。
<フッ素樹脂>
フッ素樹脂としては、PTFEの他、変性PTFE 、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF) 、四フッ化エチレン−エチレン共重合樹脂(ETFE) 、三フッ化塩化エチレン樹脂(PCTFE) 、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレンエチレン共重合樹脂(FEP)および四フッ化エチレン−パーフロロアルキル共重合樹脂(PFA)など、従来より公知のフッ素樹脂をいずれも好ましく用いることができる。
【0020】
フッ素樹脂としては、粉末状のものをそのまま用いても良く、水にフッ樹脂微粒子を分散させたディスパージョンを用いても良い。ディスパージョンを用いた場合においては、フッ素樹脂ディスパージョンに適量の水、充填材(水膨潤性鉱物を除く。)、水膨潤性鉱物などを加えて攪拌するだけで水膨潤性鉱物入りフッ素樹脂組成物を得ることができ、該組成物を用いることにより、より効率的に、前記フッ素樹脂本来の特性に加えて親水性に優れ、水中における低摩擦摩耗量に優れるなど、諸物性に優れた本発明の充填材入フッ素樹脂成形体を得ることができる。
<充填材>
充填材としては、目的に応じて、黒鉛、カーボンブラック、膨張黒鉛、活性炭、カーボンナノチューブ等の炭素系充填材;タルク、マイカ(水膨潤性鉱物を除く。)、クレー、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、等の無機充填材;またはPPS等の樹脂の粉体;
等が目的に応じて用いられる。また、炭素繊維、アラミド繊維、ロックウール等からなる繊維材長10mm以下の繊維材を充填材として用いても良い。
<液状の加工助剤>
加工助剤としては、室温(15〜30℃)および常圧下で、液状である限り、その粘度などは特に限定されず、例えば、脂肪族飽和炭化水素や芳香族炭化水素などに代表される有機溶剤、アルコール類、水等が使用できる。
【0021】
このような成分が含まれた本発明の水膨潤性鉱物入りフッ素樹脂組成物を調製するには、フッ素樹脂、水膨潤性鉱物の他、必要により充填材(水膨潤性鉱物を除く。)、加工助剤などを含めた上記各成分を任意の順序で一度に、あるいは少量ずつ複数回に分けて容器内に添加し、攪拌・混合等すればよい。
水膨潤性鉱物、例えば、膨潤マイカは、水中への分散性が良く、しかも沈殿しにくいため、本発明では、このフッ素樹脂組成物を調製する際に、膨潤マイカの水溶液また水分散液を用いることもできる。すなわち、本発明では、フッ素樹脂と、水と、膨潤マイカに代表される膨潤性鉱物などとを混合する際に、水膨潤性鉱物の膨潤マイカは、粉末で用いてもよく、水溶液あるいは水分散液で用いてもよく、何れの態様でも容易に混合することができる。
【0022】
この際に、必要により、所望のフッ素樹脂成形体が得られる限り、含まれるフッ素樹脂の溶融温度未満の温度での加熱等を行ってもよい。
[水膨潤性鉱物を用いた成形体の製造]
本発明に係るフッ素樹脂成形体は、基本的には従来公知のフッ素樹脂成形体の製造方法と同様の方法で製造可能であって、上記フッ素樹脂組成物を用いて、例えば、圧縮成形や押出成形等により所望の成形体に容易に成形可能である。
【0023】
例えば、粉末状フッ素樹脂組成物を所望形状の型内に充填し、プレス等の圧縮装置により、成型面圧400〜1000kgf/cm2の加圧下に、10〜20分間、室温(15〜30℃)で保持すれば、所望形状の成形体が得られる。なお、必要によりフッ素樹脂の融点未満の温度(例:30〜80℃)で加熱して、用いられた該加工助剤を揮発、除去させてもよい。
【0024】
上記のようにして得られた成形体は、含まれるフッ素樹脂の融点以上の温度で加熱焼成を行ってもよい。
加熱焼成は、得られた未焼成の成形体を加熱炉内に入れ、成形体に含まれているフッ素樹脂の融点以上の温度〜フッ素樹脂の融点+70℃の温度、好ましくは「フッ素樹脂の融点+20℃」〜「フッ素樹脂の融点+60℃」で、3〜12時間保持することにより行われる。
【0025】
例えば、フッ素樹脂がPTFE(四フッ化エチレン樹脂)の場合には、PTFEの融点である327℃以上の温度〜「PTFEの融点+70℃」の温度で、好ましくは360〜400℃の温度で、通常、3〜12時間、好ましくは5〜10時間加熱焼成すれば、成形体中のフッ素樹脂(粉末)が溶融し、互いに結合して、成形体中に含まれる充填材などが焼成物中ではフッ素樹脂間に保持・固定される。
【0026】
なお、上記加熱焼成に際しては、成形体を室温から上記焼成温度まで昇温するが、この際には、昇温速度30〜120℃/時で、10〜15時間かけて、連続的または段階的に昇温することが望ましい。
また、上記加熱焼成に際しては、室温から上記焼成温度まで昇温する途中で、一旦、100〜150℃で2〜10時間保持し、成形物中に含まれている溶剤または分散媒を揮散、除去する工程を設けることが望ましい。
【0027】
本発明では、このようにして所定の焼成温度まで成形体を昇温した後、上記焼成温度すなわち、フッ素樹脂の融点以上の温度〜「フッ素樹脂の融点+70℃」の温度で、上記時間すなわち、3〜12時間保持することが望ましい。
また、上記温度および時間での加熱焼成を行った後には、本発明では、このように焼成された成形体(焼成物)を、上記焼成温度から室温まで降温速度30〜140℃/時で、3〜10時間かけて連続的または段階的に、好ましくは連続的に降温することが望ましい。
【0028】
以上詳述したように、本発明によれば原料組成物から簡単に、低コストで所望のフッ素樹脂成形体を得ることができる。
このようにして得られた本発明に係るフッ素樹脂成形体は、フッ素樹脂本来の優れた特性である耐熱性、耐候性、耐化学薬品性を損なうことなく、親水性を有し、しかも極めて優れた、水中における低摩擦特性と水中における耐摩耗性とを有する。
【0029】
[用途]
このようにして得られたフッ素樹脂成形体は、フッ素樹脂、水膨潤性鉱物、必要により充填材(水膨潤性鉱物を除く)などを含有しており、フッ素樹脂成形体中における水膨潤性鉱物とフッ素樹脂との合計を100重量%とするとき、この水膨潤性鉱物量が、例えば、25〜50重量%、特に30〜40重量%の量であると、フッ素樹脂の持つ耐薬品性、耐熱性、非粘着性、低摩擦性等の特性(撥水性を除く。)を有しており、しかも親水性に優れ、その上水中における低摩擦特性、水中における耐摩耗性にも極めて優れている。
【0030】
従って、このフッ素樹脂成形体は、これらの特性を生かして、例えば、腐蝕性流体あるいは高温流体を扱うパイプライン、タンクあるいは機械装置などとして、さらに半導体製造プロセスや医療等に使用される高純度薬液貯蔵容器の素材として好適に使用できる。
このフッ素樹脂成形体を、特に、衛生面で充分な配慮を必要とする食品製造用機械器具、食品用容器などの食品用途や、医療用機械器具などの医療用途で、これら機械器具に組み込まれているパッキンや機械器具内のタンクやパイプ等として用いると、当該部位や部材、器具は、フッ素樹脂本来の特性(撥水性を除く。)を具備し、かつ水で洗浄しやすいため衛生的である。
【0031】
さらに、このフッ素樹脂成形体で、充填材として白色の充填材のみを含む場合は、黒色の摩耗粉を嫌う、食品用途、医療用途、製紙工業、化成品工業の摺動部材としてより好適に使用できる。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、水膨潤性鉱物およびフッ素樹脂を含有することにより、フッ素樹脂本来の優れた特性である耐熱性、耐候性、耐化学薬品性を損なうことなく、親水性を有し、しかも極めて優れた水中における低摩擦特性と耐摩耗性とを有するフッ素樹脂系成形体を簡単に製造できるような水膨潤性鉱物入りフッ素樹脂組成物およびそれを用いた成形体が提供される。
【0033】
【実施例】
以下、本発明について実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は係る実施例により何ら限定されるものではない。
▲1▼親水性試験
成形した試験片に水滴を室温で落とし、最終的に水滴がほとんど試験片内に吸収され、試験片表面に水滴がない状態になるまでの吸水所要時間(分)と、水滴滴下直後の接触角(度)を(測定装置:協和界面科学(株)製、接触角計CA−X型)にて測定。
▲2▼水中摩耗摩擦試験
水中摩擦摩耗試験では、水中にて試料と相手材を摺動摩擦し、その際の摩耗係数(単位:cm3・sec/kgf・m・hr)や摩擦係数を測定(測定装置:三井造船(株)製、摩擦摩耗試験機TT100C型)。
【0034】
なお、水中摩擦摩耗試験条件は以下の通り。
<水中摩擦摩耗試験条件>
締付圧力:6kgf/cm2、
周速:0.1m/s(208rpm)、
測定時間:24hr、
接触面積:2.01cm2、
相手材:SUS304。
【0035】
なお、表1中の「測定不可」は、試験後試料の重量減少が測定できないことを意味する。また、摩耗係数「1.41E−03」は、1.41×10−3を意味する。(以下同様)。
【0036】
【試験例1〜12】
フッ素樹脂成形体形成用樹脂組成物として、PTFEモールディングパウダー(ダイキン社製、M−12)と、膨潤性鉱物として水膨潤性マイカ(コープケミカル社製、ソマシフME−100)とを表1に示すような種々の配合比で、水を配合することなくドライで10分程度ミキサーにて混合した。
【0037】
この混合物を金型(縦100mm×横100mm)に投入し、成型面圧1000kgf/cm2で15分間圧縮成型した。
圧縮成型された試験片を加熱電気炉にて下記条件下で焼成(昇温・焼成・降温を含む。)した。
加熱、焼成および降温条件:
室温(約27℃)→2h(時間)で120℃まで昇温→120℃で5h保持→5hで365℃まで昇温→365℃で5h保持(焼成)→5hで室温まで冷却。
【0038】
上記のように焼成して得られた試験片からなるフッ素樹脂成形体について、表1に示す測定項目について、前記測定条件下で測定し、焼成物の比重、水滴滴下直後の接触角、親水(あるいは水滴吸収)所要時間(分)、水中摩耗係数、水中摩擦係数を測定した。
結果を表1に示す。
【0039】
また、表1に示す水中摩擦試験結果を図1に示し、また、表1に示す水中摩耗試験結果を図2に併せて示す。
【0040】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、試験例1〜12で得られた水膨潤性鉱物入りフッ素樹脂成形体の水中摩擦試験結果を示すグラフである。図1で、縦軸は、摩擦係数を示し、横軸は、フッ素樹脂と水膨潤性鉱物(膨潤マイカ)との合計量(100重量%)中の、水膨潤性鉱物の配合量(重量%)を示す。
【図2】図2は、試験例1〜12で得られた水膨潤性鉱物入りフッ素樹脂成形体の水中摩耗試験結果を示すグラフである。図2で、縦軸は、摩耗係数(単位:cm3・sec/kgf・m・hr)を示し、横軸は、フッ素樹脂と水膨潤性鉱物(膨潤マイカ)との合計量(100重量%)中の、水膨潤性鉱物の配合量(重量%)を示す。
Claims (4)
- 水膨潤性鉱物およびフッ素樹脂を含有していることを特徴とする水膨潤性鉱物入りフッ素樹脂組成物。
- 上記水膨潤性鉱物が、水膨潤性鉱物およびフッ素樹脂の合計100重量%中に、25〜50重量%の量で含まれていることを特徴とする請求項1に記載の水膨潤性鉱物入りフッ素樹脂組成物。
- 請求項1〜2の何れかに記載の水膨潤性鉱物入りフッ素樹脂組成物からなる、フッ素樹脂成形体。
- 請求項3に記載のフッ素樹脂成形体を、フッ素樹脂の融点以上の温度で加熱焼成してなることを特徴とする、焼成されたフッ素樹脂成形体。
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