JP2022175901A - フッ素樹脂成形体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】線膨張係数が所定値以下で、実用上許容可能な強度を有するフッ素樹脂成形体を提供すること、このようなフッ素樹脂成形体を簡便に製造可能な製造方法を提供すること。【解決手段】無機充填材を含むフッ素樹脂組成物からなるフッ素樹脂成形体であって、前記フッ素樹脂組成物が、溶融粘度が1010Pa・sec以上であるフッ素樹脂をマトリックスとし、前記無機充填材が、D50粒子径が0.01~1μmの粒子状無機充填材を含み、前記粒子状無機充填材は、シラン被覆で被覆されておらず、前記フッ素樹脂組成物全体に対して40体積%以上70体積%以下含まれ、前記フッ素樹脂成形体の25℃~200℃における線膨張係数が30ppm(3.0×10-5)/K以下である、フッ素樹脂成形体。【選択図】なし

Description

本発明は、フッ素樹脂成形体及びその製造方法に関するものである。
従来、各種の回転機器の金属回転軸の軸シールには、ラビリンスシールが採用されることが多い。ラビリンスシールは、回転軸外周面とこの面に対向するハウジング側に設けられる静止部との間の隙間を回転軸の軸方向に沿って流れる流体のシール構造の1つであり、例えば静止部側にフィンを設けることによって、回転軸と静止部の間に凹凸の隙間を複数段形成して、各段ごとに徐々に漏れ圧を下げて漏れ量を低減するものである。ラビリンスシールを構成する回転軸と静止部とがともに金属である場合、両者が接触すると金属同士の焼き付きが生じ、回転機器が破損する。これを回避するため、静止部を樹脂製にすることが検討されている。このような樹脂としては、例えば、フッ素樹脂が挙げられる。フッ素樹脂は耐熱性、耐薬品性、非粘着性、摺動性等の優れた特徴を有しており、各種のシール部材や摺動材等の用途に広く利用されているためである。しかし、フッ素樹脂を回転機器の金属回転軸のシール部材に用いた場合、フッ素樹脂の熱膨張係数が、回転軸に多用されているアルミや鋼などの一般的な金属の熱膨張係数より大きいため、高温になるに従い回転軸とシール部材との隙間が大きくなり、その隙間からの流体の漏出が起こり易くなる場合がある。
その改善策として、特許文献1では、10~60重量%のフッ素樹脂、37~60重量%の天然黒鉛粉末、及び2~30重量%の炭素繊維から成るフッ素樹脂組成物を成形して得られるシール材中の空隙に、熱硬化性樹脂を含浸し硬化させることにより該空隙を封孔したシール材を提案している。特許文献1に記載の発明では、このように熱硬化性樹脂を含浸させることで、従来のフッ素樹脂に黒鉛や炭素繊維を多量に添加することにより生ずる空隙から流体が浸透し漏れ出るのを防止したり、所定の変性ポリテトラフルオロエチレンに膨張黒鉛及び炭素繊維を添加してもなお生じる回転軸とシール部材との隙間の拡大を抑制したりすることができるとされている。
前述のシール部材や摺動材の用途ではなく、回路基板用材料に適用されるフッ素樹脂組成物においては、従来のポリイミド樹脂等に替えて低誘電率のフッ素樹脂を用いるべく、フッ素樹脂の高い熱膨張係数を改善するために、所定の充填材を用いることが提案されている(例えば、特許文献2~4)。
特許文献2には、溶融流動性を示すフッ素樹脂、及び、シリカを含有するフッ素樹脂組成物であって、フッ素樹脂は、カルボニル基含有官能基数が主鎖炭素数10個あたり25個以上であり、シリカは、球状シリカであり、線膨張係数が100ppm/℃以下であることを特徴とするフッ素樹脂組成物が開示されている。そして、このようなフッ素樹脂組成物は低誘電で線膨張係数が低く、密着性に優れるため、基板の反り抑制、耐ヒートサイクル性の向上が可能となる等とされている。
特許文献3には、A.フッ素化ポリマー物質;及びB.約7μmより大きくない平均粒径を有しそしてシリカ、石英粒子、中空微小球及びそれらの混合物の群から選ばれる充填剤;から成り、繊維状充填剤を含まず、そして組成物中のA及びBの総量を基にして、Aの量は約50~約90重量%でありそしてBの量は約50~約10重量%である、低い誘電定数及び低い熱膨張係数を有する組成物が開示されている。そして、このようなフッ素樹脂組成物は、レーザードリリング(drilling)及び/又は機械的ドリリング及び/又はパンチング(punching)によって得られるビア(vias)をその中に含む基体を供給するのに好適であるとされている。
特許文献4には、フルオロポリマー材料、低誘電率、低損失及び低熱膨張係数を有するセラミック充填材材料、2重量%以下の繊維強化材料を含有し、前記充填材材料が全基体材料の少なくとも約55重量%の量であり、前記セラミック充填材がシラン被覆で被覆されていることを特徴とする電気的基体材料が開示されている。そして、このような電気的基体材料は、従来よりも改良された電気的性能を示し、改良された表面取り付け及びめっきされた貫通孔信頼性を生ぜしめる比較的に高いコンプライアンス及び低い熱膨張係数を示すとされている。
特開2010-156398号公報 国際公開第2020/145133号 特開平6-88000号公報 特開昭63-259907号公報
しかし、特許文献1に記載のシール材に関する本発明者の検討結果によれば、例えばポリテトラフルオロエチレンのように溶融粘度が高く、溶融流動性を示さないフッ素樹脂をマトリックスとし、無機充填材を高充填した場合、予備成形を行って得られる予備成形体が形状を維持することは困難であることが判明した。つまり、予備成形を行って得られる予備成形体を加熱して焼結させて成形体を製造する一般的なフリーシンター法(特許文献1に記載のフリーベイキングに対応する。)では、成形体の製造が困難であることが判明した。
また、特許文献2に記載の主として回路基板用の組成物では、溶融流動性を示し、接着性を有するフッ素樹脂を実質的にマトリックスとして用いていることからシール部材や摺動部材として用いたとすれば改善の余地がある。特許文献3に記載の主として回路基板用の組成物は、コーティング用途としては使用可能であったとしても、特許文献1の場合と同様に成形体として形状を維持することは困難であると考えられる。特許文献4に記載の主として回路基板用の組成物では、無機充填材としてシラン被覆で被覆されたセラミック充填材を使用しているため、成形の際の加熱溶融時にシラン被覆に由来するボイドが成形体中に発生し、所望の線膨張係数を有する成形体が得られない場合がある。
以上のように、例えばポリテトラフルオロエチレンのように溶融粘度が高く、溶融流動性を示さないフッ素樹脂の場合は、溶融粘度が低いものと比べて、加熱溶融時に無機充填材を高充填で均一に分散することは実際には困難である。その結果として、成形体の熱膨張を抑制することが困難である。また、溶融粘度が高いフッ素樹脂に無機充填材を高充填すると、このようなフッ素樹脂を用いた成形方法として量産性がより高く一般的なフリーシンター法で成形しようとすると、例えばシール材や摺動材の用途に用いる成形体において実用上許容可能な強度を有する成形体の形成が困難である。
そこで、本発明の目的は、線膨張係数が所定値以下で、実用上許容可能な強度を有するフッ素樹脂成形体を提供することである。また、このようなフッ素樹脂成形体を簡便に製造可能な製造方法を提供することである。
本発明者は、前述の課題解決のために、鋭意検討を行った。その結果、マトリックスとなる所定のフッ素樹脂に対して所定の粒子径の粒子状無機充填材を採用し、所定の製法を採用することで、線膨張係数が所定値以下で、実用上許容可能な強度を有するフッ素樹脂成形体を簡便に得ることが可能であることを見出した。本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)無機充填材を含むフッ素樹脂組成物からなるフッ素樹脂成形体であって、前記フッ素樹脂組成物が、溶融粘度が1010Pa・sec以上であるフッ素樹脂をマトリックスとし、前記無機充填材が、D50粒子径が0.01~1μmの粒子状無機充填材を含み、前記粒子状無機充填材は、シラン被覆で被覆されておらず、前記フッ素樹脂組成物全体に対して40体積%以上70体積%以下含まれ、前記フッ素樹脂成形体の25℃~200℃における線膨張係数が30ppm(3.0×10-5)/K以下である、フッ素樹脂成形体。
(2)前記フッ素樹脂がポリテトラフルオロエチレンである、前項(1)記載のフッ素樹脂成形体。
(3)前記無機充填材が、繊維状無機充填材を含み、前記繊維状無機充填材は、前記フッ素樹脂組成物全体に対して10体積%以上30体積%以下含まれる、前項(1)又は(2)に記載のフッ素樹脂成形体。
(4)前記繊維状無機充填材がピッチ系炭素繊維の短繊維を含有する、前項(3)に記載のフッ素樹脂成形体。
(5)前記粒子状無機充填材が溶融シリカを含有する、前項(1)~(4)の何れか一項に記載のフッ素樹脂成形体。
(6)前記フッ素樹脂組成物は、マトリックスとなる前記フッ素樹脂以外に、添加剤としての接着性含フッ素共重合体を含有し、前記接着性含フッ素共重合体が、前記フッ素樹脂組成物全体に対して5体積%以上10体積%以下含まれる、前項(1)~(5)の何れか一項に記載のフッ素樹脂成形体。
(7)前記フッ素樹脂組成物を溶融状態で加圧し、加圧下で冷却固化するホットプレス成形を行う、前項(1)~(6)の何れか一項に記載のフッ素樹脂成形体の製造方法。
本発明によれば、線膨張係数が所定値以下で、実用上許容可能な強度を有するフッ素樹脂成形体を提供することが可能である。また、このようなフッ素樹脂成形体を簡便に製造可能な製造方法を提供することが可能である。
本発明の実施形態に係るフッ素樹脂成形体は、無機充填材を含むフッ素樹脂組成物からなる。このフッ素樹脂組成物は、溶融粘度が1010Pa・sec以上であるフッ素樹脂をマトリックスとする。そして、無機充填材は、D50粒子径が0.01~1μmの粒子状無機充填材を含む。この粒子状無機充填材は、シラン被覆で被覆されていないのが好ましい。粒子状無機充填材はフッ素樹脂組成物全体に対して40体積%以上70体積%以下含まれる。この含有率はフッ素樹脂成形体においても維持される。さらに、このフッ素樹脂成形体の25℃~200℃における線膨張係数が30ppm(3.0×10-5)/K以下である。ここで、フッ素樹脂組成物に含まれる成分の含有率として採用する体積%は、例えば、使用する成分の密度とその添加量から算出することができる。
このように所定の微細な粒子径の粒子状無機充填材を用いることで、1010Pa・sec以上と溶融粘度が高いフッ素樹脂を用いた場合でも、溶融成形する際にマトリックスであるフッ素樹脂中に高含有率で粒子状無機充填材を充填しても、フッ素樹脂成形体においてフッ素樹脂と粒子状無機充填材の接触する面積が増大し、熱膨張する際のフッ素樹脂の物理的な拘束が高くなって、線膨張係数を所定値以下とすることが可能になるとともに、実用上許容可能な強度をフッ素樹脂成形体に付与することが可能になると考えられる。また、粒子状無機充填材は、シラン被覆で被覆されていないことが好ましく、溶融成形時にシラン被覆に由来するガスによるボイドの発生を抑制することができる。この観点からも、低い線膨張係数と実用上許容可能な強度をフッ素樹脂成形体に付与が可能になると考えられる。
マトリックスを構成するフッ素樹脂は、溶融粘度が1010Pa・sec以上であるものを採用する。このようなフッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられ、一般に摺動特性、耐薬品性等に優れており、高速で接触しても焼き付きが生じないという特性を有することから、PTFEが特に好ましい。PTFEはこのような特性を有することから、例えば、回転機器の金属回転軸のシール部材の構成材料として好適である。特に、金属回転軸のラビリンスシールを構成するマトリックス樹脂材料として好適である。PTFEは、公知の製法で得られたものを用いることが可能であり、例えば、乳化重合により製造されたファインパウダー(乳化重合品)、懸濁重合により製造されたモールディングパウダー(懸濁重合品)等が挙げられる。
溶融粘度が1010Pa・sec以上のフッ素樹脂のフッ素樹脂組成物全体中の含有率は、他の成分を考慮して、例えば、10~60体積%とすることができる。前記フッ素樹脂の含有率をこの範囲とすることで、より良好な強度、より低い線膨張率を有するフッ素樹脂組成物成形体を得ることができる。下限としては15体積%以上が好ましく、20体積%以上がより好ましく、25体積%以上がさらに好ましい。上限としては、55体積%以下が好ましく、45体積%以下がより好ましく、40体積%以下がさらに好ましい。
マトリックスを構成するフッ素樹脂の溶融粘度は、例えば、ASTM D 1238に準拠し、フローテスター(株式会社島津製作所製)により測定することができる。
無機充填材は、D50粒子径が0.01~1μmの粒子状無機充填材を含む。粒子状無機充填材とは、繊維状以外の無機充填材を意味する。粒子状無機充填材は、例えば、シリカ、黒鉛、マイカ、タルク、ガラス球、金属粒子、セラミック球等が挙げられる。このうち、成形体の線膨張係数を低下させる観点、フッ素樹脂中への均一分散性の観点等から、シリカが好ましい。シリカは、結晶性でも、非結晶性でもよいが、後述する球形状の粒子を得やすいため、非晶性シリカが好ましく、溶融シリカがより好ましい。粒子状無機充填材の形状は特に限定はないが、マトリックスとなるフッ素樹脂中への均一分散性、高充填性、成形体の熱膨張の等方性等の観点から、球形状が好ましい。球形状は、真球に近いものが好ましい。真球の基準としては、例えば、特許文献2に記載の球形度を採用することができる。具体的には、走査電子顕微鏡(SEM)で写真を撮り、その観察される粒子の面積と周囲長から、(球形度)={4π×(面積)÷(周囲長)}で算出される。球形度が1に近づくほど真球に近い。球形度の算出に用いる面積と周囲長の値は、例えば、画像処理装置を用いて100個の粒子について測定した平均値を採用することができる。このようにして算出される球形度は、0.80以上であることが好ましく、0.85以上であることがより好ましく、0.90以上がさらに好ましく、0.95以上が最も好ましい。以上のように、所定の粒子径の粒子状無機充填材としては、球形状の溶融シリカが特に好適である。このような球状溶融シリカは市販のものを用いることができる。
粒子状無機充填材は、例えば特許文献4に記載のようなシラン被覆で被覆されていないものが好ましい。これにより、前述のように、フッ素樹脂組成物を用いた溶融成形時にシラン被覆に由来するガスによるボイドの発生を抑制することができる。これにより、粒子状無機充填材による線膨張係数の低下作用が効果的に発揮される。以上のようにシラン被膜で被覆されていないことの意義は、溶融成形時に被膜に由来するガスの発生を防止することにある。したがって、シラン被膜以外でも、このようなガスが発生する原因となる成分を含む被膜が形成されていないものを用いるのが好ましい。また、逆に、ガスの原因物質を含まなければ、被膜が形成されていてもよい。尚、粒子状無機充填材は、シラン被覆で被膜されているものであっても、許容可能な場合はある。
粒子状無機充填材の粒子径は、D50粒子径(メジアン径)が前述の所定範囲であればよい。また、このような粒子状無機充填材の含有率は、フッ素樹脂組成物全体に対して前述の所定範囲であればよい。粒子状無機充填材のD50粒子径は、例えば、レーザー回折・散乱法により測定することができる。
無機充填材には、成形体の強度を向上させる観点、摺動特性の観点から、繊維状無機充填材が含まれてもよい。繊維状無機充填材としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維、ウィスカ等が挙げられるが、マトリックスとなるフッ素樹脂と比重が近く、マトリックスとなるフッ素樹脂中への均一分散性の観点等から、炭素繊維が好ましい。炭素繊維の種類は、特に限定はなく、ピッチ系でもPAN系でもよいが、摺動特性をより向上させる観点からは、ピッチ系のものが好ましい。炭素繊維の大きさは、特に限定はないが、均一分散性の観点等から、平均繊維長が0.1~0.3mm、平均繊維径が5~20μmの短繊維が好ましい。以上のように、繊維状無機充填材としては、ピッチ系炭素繊維の短繊維が特に好ましい。
無機充填材は、マトリックスとなるフッ素樹脂中への均一分散性の観点等から、マトリックスとなるフッ素樹脂と比重が近いものが好ましい。つまり、粒子状無機充填材及び繊維状無機充填材の比重は、フッ素樹脂と比重が近いものが好ましく、比重の比が、0.7~1.5であるのが好ましい。
粒子状無機充填材の含有率は、フッ素樹脂組成物全体に対して40体積%以上70体積%以下である。繊維状無機充填材を含有させる場合、成形体の強度の観点から、その含有率は、フッ素樹脂組成物全体に対して10体積%以上30体積%以下であるのが好ましい。また、無機充填材の含有率は、フッ素樹脂組成物全体に対して80体積%以下であるのが好ましい。つまり、粒子状無機充填材と繊維状無機充填材を含む場合は両者の合計が80体積%以下であるのが好ましい。成形体の線膨張係数及び強度の観点から、無機充填材の含有率は、40体積%以上であるのが好ましく、50体積%以上がより好ましい。粒子状無機充填材と繊維状無機充填材を含む場合は両者の合計が50体積%以上であるのが好ましい。
フッ素樹脂組成物には、前述の成分以外に、マトリックスである所定のフッ素樹脂に対する無機充填材の分散性を向上させる観点から、添加剤、特に分散助剤として、接着性含フッ素共重合体が含まれていてもよい。接着性含フッ素共重合体としては、例えば、接着性官能基が主鎖骨格中に導入された含フッ素共重合体が挙げられる。主鎖骨格を構成する含フッ素共重合体としては、例えば、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)単位を有する共重合体(CTFE共重合体)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、及びポリビニルフルオライド(PVF)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・ビニリデンフロライド共重合体(THV)、テトラフルオロエチレン・ビニリデンフルオライド共重合体等が挙げられる。また、このような含フッ素共重合体に導入可能な接着性官能基としては、例えば、カルボニル基含有官能基が挙げられる。カルボニル基含有官能基としては、例えば、カーボネート基、カルボン酸ハライド基(ハロゲノホルミル基)、ホルミル基、カルボキシル基、エステル基〔-C(=O)O-〕、酸無水物基〔-C(=O)O-C(=O)-〕、イソシアネート基、アミド基、イミド基〔-C(=O)-NH-C(=O)-〕、ウレタン基〔-NH-C(=O)O-〕、カルバモイル基〔NH-C(=O)-〕、カルバモイルオキシ基〔NH-C(=O)O-〕、ウレイド基〔NH-C(=O)-NH-〕、オキサモイル基〔NH-C(=O)-C(=O)-〕等の化学構造上の一部分であるもの等が挙げられる。このような接着性含フッ素共重合体としては、例えば、特許文献1に記載のものや、特許第4424246号公報、特許第5365939号公報、特許第5263269号公報に記載の接着性官能基が導入されたPFA(接着性PFAとも称する)等が挙げられる。このうち、接着性PFAが好ましい。接着性PFAは、市販のものを使用できる。
接着性含フッ素共重合体の含有率は、フッ素樹脂組成物全体に対して5~10体積%が好ましい。また、マトリックスとなるフッ素樹脂(A)に対する接着性含フッ素共重合体(B)の比(A/B、体積基準)は、3/1~8/1が好ましい。
フッ素樹脂組成物には、前述の各成分以外に、他の添加剤が添加されていてもよい。このような添加剤としては、例えば、着色剤等が挙げられる。このような添加剤の含有率は、5体積%以下とすることができる。
フッ素樹脂組成物は、前述の各成分を所望の体積基準の含有率となるように混合し、ヘンシェルミキサー等の撹拌機で撹拌することで得ることができる。フッ素樹脂組成物の性状は各成分の性状や混合時の条件等に応じて適宜決定されるが、各成分の良好な混合状態を確保する観点、溶融成形時の各成分の均一な分散性の観点から、粉体状であるのが好ましい。このような粉体状のフッ素樹脂組成物を得る場合は、各成分は粉体状のものを用いるのが好ましく、撹拌時に各成分を粉体状に維持できるように温度を調整するのが好ましい。また、各成分は、比重が近い粉体状のものを用いるのが好ましい。尚、各成分の含有率は、前述のように各成分の添加する質量及び各成分の密度から算出することができる。また、フッ素樹脂組成物における各成分の体積基準の含有率は、成形体においても維持される。
実施形態に係るフッ素樹脂成形体は、例えば前述のフッ素樹脂組成物を用いて成形された成形物である。そして、例えば後述する方法で製造することで、所定値以下の線膨張係数を有する成形体とすることができる。また、この成形体は、例えばシール材や摺動材等の用途において実用上許容可能な強度を有する。ここで、線膨張係数は、JIS K7197に準拠した方法で測定することができる。また、実用上許容可能な強度の基準としては、例えば、後述するように、JIS K7181に準拠して圧縮強度(圧縮速度5mm/min)を測定した時の5%圧縮強度が10MPa以上とすることができる。
フッ素樹脂成形体は、例えば以下のように前述のフッ素樹脂組成物を溶融状態で加圧し、加圧下で冷却固化する点に特徴を有するホットプレス成形により製造することができる。
先ず、前述の所望のフッ素樹脂組成物を例えば圧縮成形用金型に充填し、圧縮プレスを用いて、常温で、所定圧力で所定時間加圧した後、除圧する(予備成形工程)。フリーシンター法では、この後離型して加熱炉に予備成形物を設置するが、前述のようなフッ素樹脂組成物を用いた場合は、形状を維持することができないか、困難になる。そこで、以下の工程を行うことで、最終的に形状を維持することが可能であり、所望の線膨張係数と強度を付与可能であることが判明した。
予備成形工程の後、フッ素樹脂組成物が充填された状態の除圧後の圧縮成形用金型を、フッ素樹脂の融点以上の温度に加熱した加熱炉内に設置し、例えば、所定時間加熱し、圧縮金型内のフッ素樹脂を溶融状態にする(型内加熱溶融工程)。加熱炉は、金型を均一に加熱可能なものであればよく、例えば、熱風循環炉などを採用することができる。
次いで、フッ素樹脂が溶融状態のまま加熱炉内から圧縮成形用金型を取り出し、直ちに圧縮プレスに設置して、常温で、予備成形工程時の圧力以上の大きさで加圧を開始し、金型温度が150℃以下になった後、除圧し、離型する(加圧成形工程)。常温に冷却後、必要に応じて機械加工により所望の形状に加工することができる。このように、溶融状態にした所定のフッ素樹脂が加圧下で冷却され、固化することで、フッ素樹脂が無機充填材を十分に濡らしてフッ素樹脂粒子と無機充填材の界面接着性が高くなり、実用上許容可能な強度を有し、形状の維持が可能な成形体が得られると考えられる。フッ素樹脂がPTFEの場合は、PTFEの粒子同士が良好に融着することで所望の成形体が得られると考えられる。
以上のようなフッ素樹脂成形体は、所定値以下の低い線膨張係数を有するため、加熱による寸法変化を抑制可能なため、線膨張係数が低い部材と組み合わせて用いる各種の用途に適用可能である。特に、マトリックスとして所定のフッ素樹脂を含有するため、各種回転機器等のシール部材や摺動材等として好適である。特に、回転機器の金属回転軸のシール部材、とりわけ、ラビリンスシール又はアブレイダブルシールを構成するシール部材として好適である。アブレイダブルシールとは、被切削用のシール部材を静止部に有するシールであり、回転軸に形成されるフィンの回転よって、被切削用のシール部材が削られることにより、最適な距離を確保するものである。ラビリンスシールとは、アブレイダブルシールのような被切削用のシール部材を使用しないものであり、前述のように、例えば、静止部側にフィンを設け、回転軸と静止部の間に凹凸の隙間を複数段形成したものである。以上のような回転機器のラビリンスシールは、特に、ターボ圧縮機のシール部材として好適である。
以下、実施例に基づき本発明に係る実施形態をより詳細に説明する。
(実施例1)
<フッ素樹脂組成物の調製>
PTFE(ファイン)(三井・ケマーズフロロプロダクツ株式会社製、テフロン(登録商標)PTFE ファインパウダー 641-J、乳化重合品、平均粒子径:400μm、比重:2.17、融点:327℃、溶融粘度:1012Pa・sec)35体積%、粒子状無機充填材(デンカ株式会社製、UFP-35HH、溶融シリカ、D50粒子径:0.1μm、比重:2.2、形状:球状(球形状))40体積%、繊維状無機充填材(株式会社クレハ製、クレカチョップ KGF-200 M-201S、炭素繊維、ピッチ系、平均繊維長0.15mm、平均繊維径14.5μm、比重:1.60)20体積%、接着性含フッ素共重合体(AGC株式会社製、Fluon+ EA-2000 パウダー、比重:2.13、融点:310℃、溶融粘度:10Pa・sec、接着性官能基導入PFA)5体積%を混合し、実験用小型ブレンダーにて2分間攪拌し、フッ素樹脂組成物を得た。
<フッ素樹脂成形体の製造>
得られたフッ素樹脂組成物を用い、以下のようにホットプレス成形法によりフッ素樹脂成形体を得た。先ず、φ40mmの円柱状の空間を形成可能な圧縮成形金型に得られたフッ素樹脂組成物を投入し、圧縮プレスにて成形圧力10MPa、金型温度25℃で予備成形した後、該組成物の入った状態で該金型を加熱炉内で、360℃で加熱し、PTFEを溶融させた。次いで、該金型を加熱炉から取り出して、PTFEが溶融状態のままとなるようにして圧縮プレスに設置し、30MPaで加圧しながら、自然冷却した後、脱型してφ40mm×70mm高さのフッ素樹脂成形体を得た。得られたフッ素樹脂成形体を後述する評価に用いた。
(実施例2)
PTFE(ファイン)を、PTFE(モールディング)(三井・ケマーズフロロプロダクツ株式会社製、テフロン(登録商標)PTFE モールディングパウダー 7-J、懸濁重合品、平均粒子径 30μm、比重2.17、融点:327℃、溶融粘度:1012Pa・sec)に変更した以外は、実施例1と同様にして、フッ素樹脂組成物を調製し、フッ素樹脂成形体を製造した。得られたフッ素樹脂成形体を後述する評価に用いた。
(実施例3)
PTFEの含有率を表1に示す含有率とし、粒子状無機充填材として、デンカ株式会社製、SFP-30M(溶融シリカ、D50粒子径:0.7μm、比重:2.2、形状:球状(球形状))を用い、表1に示す含有率とした以外は、実施例1と同様にして、フッ素樹脂組成物を調製し、フッ素樹脂成形体を製造した。得られたフッ素樹脂成形体を後述する評価に用いた。
(実施例4、5、比較例1~3)
成分組成を表1のようにした以外は、実施例1と同様にして、フッ素樹脂組成物を調製し、フッ素樹脂成形体を製造した。得られたフッ素樹脂成形体を後述する評価に用いた。尚、比較例2では、粒子状無機充填材として、マイカ(株式会社ヤマグチマイカ製、SJ-005、D50粒子径:5μm)を用いた。
(参考例1)
成分組成を表1のようにした以外は、実施例1と同様にして、フッ素樹脂組成物を調製した。このフッ素樹脂組成物を用いて、以下のようにフリーシンター成形法により、フッ素樹脂成形体の製造を試みた。先ず、φ40mmの円柱状の空間を形成可能なの圧縮成形金型に、得られたフッ素樹脂組成物を投入し、圧縮プレスにて成形圧力50MPa、金型温度25℃で予備成形した。その後、離型したところ、予備成形体は非常に脆くて形状を保持できず、加熱焼成できなかった。つまり、フリーシンター法により成形体を得ることができなかった。
(評価)
<線膨張係数測定>
JIS K7197に従い、線膨張係数を測定した。先ず、実施例1~5及び比較例1~3で得られたフッ素樹脂成形体から、φ5×10mmの試験片を機械加工により作製した。次いで、得られた各試験片について、熱機械測定装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製、TMA/SS6100)を用いて、25℃~200℃の温度範囲で5℃/minで昇温し、平均線膨張係数を測定した。評価結果を表1に示す。
<圧縮強度測定>
JIS K7181に準拠して圧縮特性を測定した。先ず、実施例1~5及び比較例1~3で得られたフッ素樹脂成形体から、φ8×20mmの試験片を機械加工により作製した。次いで、得られた各試験片について、島津製作所製、オートグラフAG-X plusにて、試験速度5mm/minにて圧縮強度を測定し、5%圧縮強度を求めた。評価結果を表1に示す。
表1に実施例1~5、比較例1~3、参考例1の成分組成、成形法、成形可否、評価結果を示す。表1中の項目「成形可否」は、採用した各成形法による成形が可能であったか否かを示したものであり、「○」は、問題なく成形体ができたこと、「×」は、予備成形体が形成できなかったことを示している。
Figure 2022175901000001
表1に示すように、所定の溶融粘度のフッ素樹脂をマトリックスとし、特定の粒子状無機充填材を所定の含有率で含むフッ素樹脂組成物の場合(実施例1~5)は、そのホットプレス成形により得られるフッ素樹脂成形体は所定の線膨張係数を有し、実用上許容可能な変形強度を有することが分かる。

Claims (7)

  1. 無機充填材を含むフッ素樹脂組成物からなるフッ素樹脂成形体であって、
    前記フッ素樹脂組成物が、溶融粘度が1010Pa・sec以上であるフッ素樹脂をマトリックスとし、
    前記無機充填材が、D50粒子径が0.01~1μmの粒子状無機充填材を含み、
    前記粒子状無機充填材は、シラン被覆で被覆されておらず、前記フッ素樹脂組成物全体に対して40体積%以上70体積%以下含まれ、
    前記フッ素樹脂成形体の25℃~200℃における線膨張係数が30ppm(3.0×10-5)/K以下である、フッ素樹脂成形体。
  2. 前記フッ素樹脂がポリテトラフルオロエチレンである、請求項1記載のフッ素樹脂成形体。
  3. 前記無機充填材が、繊維状無機充填材を含み、前記繊維状無機充填材は、前記フッ素樹脂組成物全体に対して10体積%以上30体積%以下含まれる、請求項1又は2に記載のフッ素樹脂成形体。
  4. 前記繊維状無機充填材がピッチ系炭素繊維の短繊維を含有する、請求項3に記載のフッ素樹脂成形体。
  5. 前記粒子状無機充填材が溶融シリカを含有する、請求項1~4の何れか一項に記載のフッ素樹脂成形体。
  6. 前記フッ素樹脂組成物は、マトリックスとなる前記フッ素樹脂以外に、添加剤としての接着性含フッ素共重合体を含有し、
    前記接着性含フッ素共重合体が、前記フッ素樹脂組成物全体に対して5体積%以上10体積%以下含まれる、請求項1~5の何れか一項に記載のフッ素樹脂成形体。
  7. 前記フッ素樹脂組成物を溶融状態で加圧し、加圧下で冷却固化するホットプレス成形を行う、請求項1~6の何れか一項に記載のフッ素樹脂成形体の製造方法。
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