JP2004321969A - 塗布装置および塗布方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】エクストルージョン型ダイ1を用いた塗布装置であって、このダイの中央部供給口13から連続的に塗布液が供給される塗布装置を用いて塗布膜7を得る際に、この塗布膜表面にスジ状欠陥や部分的な厚みムラの生じない塗布装置および塗布方法を得ることを目的とする。
【解決手段】上記ダイに塗布液を供給する区間、いわゆる塗布液タンク2と供給パイプ5の接続部分からダイ内の分配部12までの間に、少なくとも1つの攪拌装置8を設け、塗布液の流れを乱すことによって、スジ状欠陥のない塗布膜を提供する。
【選択図】 図1
【解決手段】上記ダイに塗布液を供給する区間、いわゆる塗布液タンク2と供給パイプ5の接続部分からダイ内の分配部12までの間に、少なくとも1つの攪拌装置8を設け、塗布液の流れを乱すことによって、スジ状欠陥のない塗布膜を提供する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面の平滑性に優れ、スジ状等の欠陥がない塗布膜を形成できて、光学フィルムの製造などに好適なエクストルージョン型のダイを用いた塗布装置および塗布方法に関するものである。また、この塗布装置あるいは塗布方法により形成した塗布膜や、この塗布膜を用いた光学フィルムおよびこの光学フィルムを適用した画像表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、光学フィルムや各種樹脂シート等を製造する際の、塗布液の支持体への塗布方法としては、グラビアロールコート法、リバースロールコート法、ディップコート法、ブレードコート法、エアーナイフコート法、ワイヤーブロックコート法、リブロックスコート法、リブロックスロールコート法、エクストルージョンコート法、ロッドコート法、ワイヤーバーコート法、スライドコート法およびカーテンコート法等が知られているが、なかでも、塗布液の変質および異物混入や塗布膜表面の厚みムラを嫌う光学フィルム等の製造に関しては、密閉系で、支持体表面に均一に塗布できるエクストルージョン法を用いた塗布方法が好ましく用いられる。
【0003】
このエクストルージョン法による塗布方法は、ポンプ等の装置や毛細管現象を利用してダイ内に塗布液を供給し、ダイの先端部に有する幅広のスリットから、連続搬送される支持体表面に向けて連続的に押し出された塗布液を、支持体表面に均一な厚さで塗布する方法である(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
このエクストルージョン法の塗布装置は、ダイの中央部もしくは端部から塗布液が供給され、所定の圧力をもってスリットへと押し出されるものであるが、この際、スリットの幅方向で圧力分布が生じ、支持体表面の厚みムラやスジ状欠陥が発生する原因となっている。
【0005】
このような問題点に対して、これまで、両端部から塗料を供給するダイにおいては、塗布液を、ろ過部材を介してスリットに供給することで、塗布液供給による幅方向の流れを整流化し、塗布厚が均一でスジ等のない塗布膜を得る方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−86041号公報
【0007】
【特許文献2】
特開平5−31432号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来のようなろ過部材を介して塗布液を整流化する方法では、中央部から塗布液を供給し、分配部を経てスリットから押し出されるダイにおいては、分配部を有する構造であることから、塗布膜の厚みムラや表面スジを解消することは困難である。そこで本発明では、塗布液を中央部から供給する、エクストルージョン法を用いた塗布装置において、塗布膜の厚みムラや表面スジの生じない塗布装置および塗布方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を検討すべく、鋭意検討したところ、以下に示す塗布装置を用いることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、エクストルージョン型ダイの中央部から連続的に塗布液が供給される塗布装置において、このダイに塗布液を供給する区間であって、塗布液タンクと供給パイプの接続部分からダイ内の分配部までの間に、少なくとも1つの攪拌装置を有することを特徴とする塗布装置に関する。
【0011】
前記塗布装置に用いる攪拌装置は、その全部または一部がダイ内にある位置か、またはダイに隣接する位置に設置することが好ましく、また攪拌装置としては、メッシュフィルターや、スタティックミキサーを用いたものが好ましい。
【0012】
前記塗布装置に用いる塗布液の粘度は、0.5mPa・s〜1000mPa・sの範囲にある塗布液を用いることが好ましい。
【0013】
本発明は、前記塗布装置を用いた塗布方法に関する。また本発明は、前記塗布装置あるいは塗布方法により形成された乾燥後の厚みが0.01〜20μmである塗布膜および、この塗布膜を用いた光学フィルム、さらにはこの光学フィルムを適用した画像表示装置に関する。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明は、エクストルージョン型のダイ中央部へ連続的に塗布液が供給される塗布装置であって、連続搬送される支持体上に塗布液を塗布する工程において、支持体上に塗布された塗布膜にスジ状欠陥が発生することを防止するために、塗布液を供給する区間であって、塗布液タンクと供給ポンプの接続部からダイ内の分配部に入るまでの間に、少なくとも1つの攪拌装置を設けて塗布液の流れを乱すことで前記課題を解決したものである。
【0015】
本発明による塗布装置の構成としては、例えば、図1に示すように、タンク2の中に貯蔵した塗布液3を、ポンプ4を備えた供給パイプ5を介して、ダイ1に供給する。ダイ1内には、図2に示すようにダイの供給口13から分配部12の間に攪拌装置8を設置する。このダイ1と狭小な間隙を介して配置されており、フィルム状態で連続搬送される支持体6に、ダイの吐出口(スリット)11を介して、順次吐出塗布されて塗布膜7が形成される。形成された塗布膜は必要に応じ、乾燥工程や硬化処理工程等の必要な工程を経て、目的とする塗布膜を得る。また、この塗布膜は、支持体上より剥離回収して用いることもできる。
【0016】
本発明はエクストルージョン法によるエクストルージョン型のダイを用いた塗布方法に関する。このエクストルージョン法は、膜厚均一性や塗膜面の平滑性の良さから、精度の高い塗布方法として広く用いられている塗布方法であり、ダイの先端部にある吐出口より塗布液を押し出し、連続搬送される支持体に対して塗布する。エクストルージョン型のダイは、塗布液を供給する供給口と、供給された塗布液を幅手方向に留め、均一に供給するための分配部(マニホールド)および、この分配部より塗布液を幅手方向に均一に吐出するための吐出口(スリット)を有している。また、このダイの構造により、同時多層塗布も可能である。
【0017】
エクストルージョン型のダイは、例えば金属やプラスチック、セラミックス等、適宜な材料を用いて形成でき、その塗布幅を決定するスリットの長さも必要とする塗布膜に応じて適宜決定することができる。しかし、装置の寸法精度、組み立て精度には細心の注意を払って構成する必要があり、特に、塗布液を吐出するためのダイのスリット先端部と被塗布物である支持体間の距離については高精度の設定が要求される。そのスリット先端部と支持体間の距離が大きすぎると塗布が不可能になったり、塗布面にスジ状の欠陥が現れたりし、また小さすぎるとダイから供給される塗布液の全量が塗布されずに、ダイの支持体流れ方向上流側に液だまりが生じるため、規定の塗布膜厚さが得られなかったり、スジ状の欠陥があらわれたりするという問題が生ずる。したがって、このスリット先端部と支持体間の距離には適正な範囲があり、塗布液の物性や塗布条件、塗布装置の構造(例えば、ダイの支持体流れ方向上流側で余分な塗布液を吸引する装置を設け、塗布液形状の安定化を図ったもの等)により、適正な範囲は変わるため、塗布膜厚さの100倍以上の距離を設けても、塗布液の物性や塗布条件によっては塗布することが可能である。しかしながら、本発明によると、この距離が塗布膜厚さの20倍を超える場合には、塗布液の物性および塗布条件にもよるが、ダイ出口で発生したスジ状欠陥が塗布液の表面張力で緩和される効果が得られるため、本発明による装置および方法を用いるまでもなく、スジ状欠陥のない塗布膜が得られやすい。そのため、本発明では、スリット先端部から支持体までの距離は、塗布膜(乾燥前)厚さの1〜20倍であるものが好ましく用いられる。
【0018】
前記分配部(マニホールド)の形状としては、これに限定されることなく、塗布液の物性、塗布条件等により、流動解析等の解析手法を用いて、最適な形状設計したものを用いることができるが、通常、コートハンガータイプ、フィッシュテールタイプ、ストレートマニホールド(Tマニホールド)タイプ等の形状が用いられている。なかでも、本発明による方法では、コートハンガータイプの分配部を用いることが、幅方向の流速分布を一定にし、分配部に滞留部分ができにくい点から特に好ましい。このダイ形状や塗布液の物性および塗布条件を調整することにより、幅方向の流速分布は均一にすることができても、特異的に発生するスジ状欠陥を予測することは非常に困難であり、これらの条件は試行錯誤の上で決定することが多い。
【0019】
前記吐出口周辺部であるリップ部14は、塗布液を吐出する最終部分であり、ダイの幅方向、すなわち塗布液を吐出して形成する塗布膜の幅方向に連続して設けられる。このリップ部の形状としては、先細り型、槍型等、限定されることなく適宜な形状を用いることができる。また、このリップ部には、液切れ性の向上を目的とした撥水コートを施しても良い。撥水コートの形成剤としては、例えば、フッ素系やシリコーン系等の適宜な撥水剤を用いることができ、ポリマー系の撥水剤がコート膜の長寿命性等の点より好ましく用いられる。また、この撥水コートは、汚れ防止等を目的として、ダイ全体に設けても良い。
【0020】
本発明による塗布装置では、ダイ内の分配部までの間に少なくとも1つ以上の攪拌装置を設ける。この攪拌装置を設けることにより、塗布液の流れが乱され、ダイの分配部に塗布液が供給される前に吐出方向に生じる慣性力を、強制的に打ち消すことにより抑制できると考えられるため、塗布液の慣性力に起因すると思われる塗布膜上のスジ状欠陥を抑制できる。
【0021】
攪拌装置としては、塗布液の流れを乱す目的を達すればこれに限定されることなく適宜なものを用いうるが、例えば、メッシュフィルター、絞り装置、動力を有する羽根状攪拌装置または、動力を有しないスタティックミキサー等が挙げられる。メッシュフィルターとしては、単なるろ過部材とは異なり、塗布液の流れを乱すために設けるものであるため、複数層積層してブロック状にして用いることが好ましい。この積層枚数としては、塗布液の物性により異なるが、5〜100枚程度が好ましく、25〜75枚程度がより好ましい。また、メッシュサイズとしては、10〜600であればよく、50〜500であることが好ましい。本発明で特に好ましく用いられるものとしては、動力を必要とせず、塗布液の物性に左右されにくいため、スタティックミキサーが挙げられる。
【0022】
本発明では、攪拌装置は少なくとも1つ以上設ける必要があるが、2つ以上設置した場合の数および種類は特に限定されるものではなく、例えば、前記スタティックミキサーを2つあるいは、スタティックミキサーと前記メッシュフィルターを同一塗布装置内に同時に設置しても良い。
【0023】
攪拌装置の設置位置としては、塗布液の物性に応じて、塗布液タンク出口の供給パイプ接続部分からダイ内分配部までの区間であることが必要であり、この区間にポンプを有する塗布装置の場合、前記攪拌装置は、このポンプ出口の供給パイプ接続部分からダイ内分配部までの間に設置することが好ましい。また、慣性力を打ち消す効果を十分に得るためには、分配部により近い位置が好ましいため、攪拌装置の全部または一部がダイ内にあるか、またはダイに隣接する位置に設置することがより好ましい。
【0024】
本発明の塗布装置に用いることのできる塗布液は、液体であれば必要とされる用途に応じて選択でき、特に限定されるものではないが、例えば、磁気記録媒体用磁性塗布液、一般用及び産業用ハロゲン化銀感光材料用塗布液、感熱材料用塗布液、熱現像感光材料用塗布液、あるいは高分子材料を有機溶媒や水等に溶解した液、顔料分散液、コロイド状分散液等を挙げることができる。また、これらの塗布液には、適宜レベリング剤等の添加剤を混合してもよい。
【0025】
前記塗布液の粘度としては、特に限定されるものではないが、エクストルージョン法による塗布方法においては、通常0.5mPa・s〜1000mPa・sであり、0.5mPa・s〜800mPa・sが好ましく、0.5mPa・s〜500mPa・sであることがより好ましい。一般的に、粘度が0.5mPa・s未満のものや、1000mPa・sを超えるものは、本発明の課題であるスジ状欠陥が生じず、本発明による効果は少ないものと考えられるため、本発明による塗布装置を適用することなく、従来公知の塗布装置を用いればよい。
【0026】
塗布液の粘度の測定方法としては、本願では、粘度測定装置(HAAKE社製:レオメーターRS−1)を用いて、せん断速度が10〜100[1/s]の範囲での粘度を測定し、その平均値を用いた。また、粘度の測定は、ダイの吐出口から吐出された塗布液で行うことが好ましいが、粘度が塗布装置中で変化するような粘度変化の大きい塗布液を用いない限り、塗布液タンク中の塗布液で粘度測定しても良い。
【0027】
本発明による塗布装置を用いて形成した塗布膜は、少なくとも1層あればよいが、必要に応じ、2層以上からなる塗布膜を同時または順次塗布する方法に適用しても良く、塗布膜の層数に限定されるものではない。
【0028】
前記塗布膜の塗布直後(乾燥前)の厚みとしては、一般的に1μm〜500μmであり、1μm〜100μmであることが好ましい。このとき、1μm未満であれば、スジ状欠陥の原因と考えられるダイ内での塗布液の慣性力の効果が小さくなるため、本願発明の効果は出にくく、500μmを超えると、本願発明の効果を得るまでもなく、厚みによるレベリング効果が得られるため、スジ状欠陥が緩和される。乾燥後の厚みとしては、必要とする性能を有する厚みであれば特に限定されるものではないが、0.01μm〜50μmであることが好ましく、0.01μm〜20μmであることがより好ましい。この塗布膜が、0.01μm未満であれば、上記と同様に慣性力の効果が小さくなるため、本願発明の効果は出にくく、であり、50μmを超えると、レベリング効果が得られるため、スジ状欠陥が緩和される。
【0029】
塗布膜厚さの測定方法としては、その塗布膜の性状に合わせて、光学的な方法を用いたものや、物理的、直接的な方法で測定するもの等、適宜な測定装置を限定されることなく用いることができるが、例えば本発明では、光干渉を利用した光学的な方法が好ましく用いられる。
【0030】
本発明で用いられる支持体としては、種類によって限定されるものではなく、紙、プラスチックフィルム、金属シート等を適宜用いることができる。紙としては、例えばレジンコート紙、合成紙等が挙げられ、金属シートとしては、アルミニウム板が代表的である。また、プラスチックフィルムとしては、ポリオレフィンフィルム(例えばポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等)、ポリエステルフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレン2,6−ナフタレートフィルム等)、ポリアミドフィルム(例えばポリエーテルケトンフィルム等)、セルロースアセテート(例えばセルローストリアセテート等)、ビニル系樹脂フィルム(例えばポリ塩化ビニル等)または、ポリアミド樹脂、ポリスルホン、ポリカーボネートからなるフィルム等が挙げられる。さらに、熱や紫外線照射等により硬化するものを用いても良く、そのような硬化型のフィルムを形成する場合、例えば支持体から容易に剥離できる層を先に形成して、その上に硬化フィルムを形成する方式等により、得られたフィルムの支持体から剥離回収することができる。したがって、複層構造のフィルムを形成することも可能である。
【0031】
前記支持体の搬送時の形状としては、特に限定されるものではなく、ドラム状、エンドレスベルトのようなベルト状、板状等、塗布液を順次連続的に吐出塗布でき、その塗布膜を支持してシート状に維持できる適宜な形状を用いることができる。また、表面形状としては、例えば、鏡面、プリズム状凹凸やエンボス加工されたもの等、適宜な表面形状を有するものを使用できる。さらに、前記支持体表面にはあらかじめコロナ放電処理、プラズマ処理、下塗り処理、熱処理、金属蒸着処理、アルカリ処理等の前処理が施されていてもよい。
【0032】
本発明による塗布装置を用いた塗布方法は、前記のようにエクストルージョン法で、攪拌装置を設けた塗布装置により、連続搬送される支持体に向けて塗布液が連続的に吐出塗布される塗布方法が好ましい。
【0033】
本発明の塗布装置により形成された塗布膜は、前記支持体あるいは、他のポリマーフィルムと積層することにより、光学フィルムとして用いることができる。光学フィルムとしては画像表示装置の形成に用いられるものが挙げられ、その種類は特に限定されるものではないが、例えば、偏光板、位相差板、楕円偏光板、視角補償フィルム、輝度向上フィルム等が挙げられる。
【0034】
偏光板としては、偏光子の片面または両面に透明保護フィルムを有するものが一般に用いられる。この偏光子としては、特に制限されず、各種のものを使用できる。例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質で染色して一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等があげられる。これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これら偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に、5〜80μm程度である。
【0035】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素の水溶液に浸漬または、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を塗布することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作成することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいてもよく、ヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行ってもよいし、染色しながら延伸してもよいし、また延伸してからヨウ素で染色してもよい。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
【0036】
前記偏光子の片面または両面に設けられる透明保護フィルムを形成する材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れるものが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマーがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや方向族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、または前記ポリマーのブレンド物なども前記透明保護フィルムを形成するポリマーの例としてあげられる。透明保護フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型、紫外線硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。これらの中でもイソシアネート架橋剤との反応性を有する水酸基を有するものが好ましく、特にセルロース系ポリマーが好ましい。透明保護フィルムの厚さは特に制限されないが、一般には500μm以下であり、1〜300μmが好ましい。特に5〜200μmとするのが好ましい。
【0037】
また、透明保護フィルムとしては、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルム、例えば、(A)側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換および/または非置換フェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が挙げられ、具体例としてはイソブテンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物のフィルムが挙げられる。フィルムは樹脂組成物の混合押出し品などからなるフィルムを用いることができる。
【0038】
透明保護フィルムの厚さは特に限定されるものではないが、一般には500μm以下であり、1〜300μmが好ましい。特に5〜200μmとするのがより好ましい。また、偏光特性や耐久性などの点より、保護フィルム表面をアルカリなどでケン化処理することが好ましい。
【0039】
前記透明保護フィルムは、前記の透明保護フィルム形成材料を溶液とし、前記偏光子に塗布することによって形成しても良い。
【0040】
また、透明保護フィルムはできるだけ色付きがないことが好ましい。したがって、Rth=[(nx+ny)/2−nz]・d(ただし、nx、nyはフィルム平面内の主屈折率、nzはフィルム厚方向の屈折率、dはフィルム厚である)で表されるフィルム厚み方向の位相差値が−90nm〜+75nmである透明保護フィルムが好ましく用いられる。かかる厚み方向の位相差値(Rth)が−90nm〜+75nmのものを使用することにより、透明保護フィルムに起因する偏光板の着色(光学的な着色)をほぼ解消することができる。厚み方向の位相差値(Rth)は、さらに好ましくは−80〜+60nm、特に−70nm〜+45nmが好ましい。
【0041】
前記透明保護フィルムの偏光子を接着させない面(前記塗布層を設けない面)には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした表面処理を施したものであってもよい。
【0042】
ハードコート処理は偏光板表面の傷つき防止などを目的に施されるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を透明保護フィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。反射防止処理は変更板表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、従来に準じた反射防止膜などの形成により達成することができる。また、スティッキング防止処理は隣接層との密着防止を目的に施される。
【0043】
また、アンチグレア処理は偏光板の表面で外光が反射して、偏光板透過光の視認を阻害することの防止等を目的に施されるものであり、例えば、サンドブラスト方式やエンボス加工方式による粗面化方式や透明微粒子の配合方式などの適宜な方式にて透明保護フィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。前記表面微細凹凸構造の形成に含有させる微粒子としては、例えば平均粒径が0.5〜50μmのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等からなる導電性のこともある無機系微粒子、架橋または未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子などの透明微粒子が用いられる。表面微細凹凸構造を形成する場合、微粒子の使用量は、表面微細凹凸構造を形成する透明樹脂100重量部に対して一般的に2〜50重量部程度であり、5〜25重量部が好ましい。アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角などを拡大するための拡散層(視角拡大機能など)をかねるものであってもよい。
【0044】
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等は、透明保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途光学層として透明保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
【0045】
前記偏光子と透明保護フィルムとの接着処理は特に限定されるものではないが、例えば、ビニルポリマーからなる接着剤、あるいは、ホウ酸やホウ砂、グルタルアルデヒドやメラミン、シュウ酸などのビニルアルコール系ポリマーの水溶性架橋剤から少なくともなる接着剤などを介して行うことができる。この接着層は、水溶液の塗布乾燥層などとして形成しうるが、その水溶液の調製に際しては、必要に応じて、他の添加剤や、酸等の触媒も配合することができる。
【0046】
前記偏光板において、本発明による塗布装置は、前記偏光子の染色、前記透明保護フィルムの形成または前記表面処理層の形成等に用いることができる。さらに、ポリマーフィルムに液晶ポリマーや液晶モノマー等の配向材料を塗布し、適宜あらかじめポリマーフィルムをラビングすることや、加熱、光照射を施すことで配向させることによって、位相差板や視角補償フィルム、輝度向上フィルム等の光学フィルムとすることができる。
【0047】
ポリマーフィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルビニルエーテル、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリアリルスルホン、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、セルロース系重合体、またはこれらの二元系、三元系各種共重合体、グラフト共重合体、ブレンド物などがあげられる。これらのポリマーフィルムは延伸等により配向物(延伸フィルム)となる。
【0048】
前記液晶モノマーとしては、リオトロピック性、サーモトロピック性のいずれのものも用いることができるが、作業性の点からサーモトロピック性のものが好適であり、例えば、アクリロイル基、ビニル基やエポキシ基等の官能基を導入したビフェニル誘導体、フェニルベンゾエート誘導体、スチルベン誘導体などを基本骨格としたもの等が挙げられる。このような液晶モノマーは、例えば、熱や光による方法、基板上をラビングする方法、配向補助剤を添加する方法等、適宜公知の方法を用いて配向させ、その後、この配向を維持した状態で、光、熱、電子線等により架橋および重合させることにより配向を固定化する方法が好ましく用いられる。
【0049】
液晶ポリマーとしては、例えば、液晶配向性を付与する共役性の直線状原子団(メソゲン)がポリマーの主鎖や側鎖に導入された主鎖型や側鎖型の各種のものなどがあげられる。主鎖型の液晶性ポリマーの具体例としては、屈曲性を付与するスペーサ部でメソゲン基を結合した構造の、例えばネマチック配向性のポリエステル系液晶性ポリマー、ディスコティックポリマーやコレステリックポリマーなどがあげられる。側鎖型の液晶性ポリマーの具体例としては、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリメタクリレートまたはポリマロネートを主鎖骨格とし、側鎖として共役性の原子団からなるスペーサ部を介してネマチック配向付与性のパラ置換環状化合物単位からなるメソゲン部を有するものなどがあげられる。これら液晶ポリマーは、例えば、ガラス板上に形成したポリイミドやポリビニルアルコール等の薄膜の表面をラビング処理したもの、酸化ケイ素を斜方蒸着したものなどの配向処理面上に液晶性ポリマーの溶液を展開して熱処理することにより行われる。
【0050】
本発明による光学フィルムは、実用に際して他の光学層を積層して用いることができる。その光学層については特に限定はないが、例えば反射板や半透過板、位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)、視角補償フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層を1層または2層以上用いることができる。特に偏光板に、さらに反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板または半透過型偏光板、偏光板にさらに位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板、偏光板にさらに視角補償フィルムが積層されてなる広視野角偏光板、あるいは偏光板にさらに輝度向上フィルムが積層されてなる偏光板が好ましい。
【0051】
反射型偏光板は、偏光板に反射層を設けたもので、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置などを形成するためのものであり、バックライト等の光源の内臓を省略できて、液晶表示装置の薄型化を図りやすいなどの利点を有する。反射型偏光板の形成は、必要に応じ透明保護層等を介して偏光板の片面に金属等からなる反射層を付設する方式などの適宜な方式にて行うことができる。
【0052】
反射型偏光板の具体例としては、必要に応じ、マット処理した透明保護フィルムの片面に、アルミニウム等の反射性金属からなる箔や蒸着膜を付設して反射層を形成したものなどがあげられる。また、前記透明保護フィルムに微粒子を含有させて表面微細凹凸構造とし、その上に微細凹凸構造の反射層を有するものなどもあげられる。前記した微細凹凸構造の反射層は、入射光を乱反射により拡散させて指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制しうる利点などを有する。また微粒子含有の透明保護フィルムは、入射光およびその反射光がそれを透過する際に拡散されて、明暗ムラをより抑制しうる利点なども有している。透明保護フィルムの表面微細凹凸構造を反映させた微細凹凸構造の反射層の形成は、例えば真空蒸着方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式等の蒸着方式やメッキ方式などの適宜な方式で、金属を透明保護層の表面に直接付設する方法などにより行うことができる。
【0053】
反射板は、前記偏光板の透明保護フィルムに直接付与する方式に代えて、その透明フィルムに準じた適宜なフィルムに反射層を設けてなる反射シートなどとして用いることもできる。なお、反射層は通常、金属からなるので、その反射面が透明保護フィルムや偏光板等で被覆された状態の使用形態が、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続の点や、保護層の別途付設回避の点などにより好ましい。
【0054】
なお、半透過型偏光板は、上記において反射層で光を反射し、かつ透過するハーフミラー等の半透過型の反射層とすることにより得ることができる。半透過型偏光板は通常、液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置などを比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射させて画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内臓光源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置などを形成できる。すなわち、半透過型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、比較的明るい雰囲気下においても内蔵光源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置などの形成に有用である。
【0055】
偏光板にさらに位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板について説明する。直線偏光を楕円偏光または円偏光に変えたり、楕円偏光または円偏光を直線偏光に変えたり、あるいは直線偏光の偏光方向を変える場合に、位相差板などが用いられる。特に、直線偏光を円偏光に変えたり、円偏光を直線偏光に変えたりする位相差板としては、いわゆる1/4波長板(λ/4板ともいう)が用いられる。1/2波長板(λ/2板ともいう)は、通常、直線偏光の偏光方向を変える場合に用いられる。
【0056】
楕円偏光板はスーパーツイストネマチック(STN)型液晶表示装置の液晶層の複屈折により生じた着色(青または黄)を補償(防止)して、前記着色のない白黒表示する場合などに有効に用いられる。さらに、三次元の屈折率を制御したものは、液晶表示装置の画面を斜め方向から見た際に生じる着色も補償(防止)することができて好ましい。円偏光板は、例えば画像がカラー表示になる反射型液晶表示装置の画像の色調を整える場合などに有効に用いられ、また、反射防止の機能も有する。
【0057】
位相差板としては、ポリマーフィルムを一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルム、液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどがあげられる。延伸処理は、例えばロール延伸法、長間隙沿延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法などにより行うことができる。延伸倍率は、一軸延伸の場合には1.1〜3倍程度が一般的である。位相差板の厚さも特に制限されないが、一般的には10〜200μm、好ましくは20〜100μmである。
【0058】
位相差板は、例えば各種波長板や液晶層の複屈折による着色や視角等の補償を目的としたものなどの使用目的に応じた適宜な位相差を有するものであってよく、2種以上の位相差板を積層して位相差等の光学特性を制御したものなどであってもよい。
【0059】
また上記の楕円偏光板や反射型楕円偏光板は、偏光板または反射型偏光板と位相差板を適宜な組み合わせで積層したものである。かかる楕円偏光板等は、(反射型)偏光板と位相差板の組み合わせとなるようにそれらを液晶表示装置の製造過程で順次別個に積層することによっても形成しうるが、前記のごとくあらかじめ楕円偏光板等の光学フィルムとしたものは、品質の安定性や積層作業性等に優れて、液晶表示装置などの製造効率を向上させうる利点がある。
【0060】
視角補償フィルムは、液晶表示装置の画面を、画面に垂直でなくやや斜めの方向から見た場合でも、画像が比較的鮮明に見えるように視野角を広げるためのフィルムである。このような視角補償位相差板としては、例えば位相差板、液晶ポリマー等の配向フィルムや透明基材上に液晶ポリマー等の配向層を支持したものなどからなる。通常の位相差板は、その面方向に一軸延伸された複屈折を有するポリマーフィルムが用いられるのに対し、視角補償フィルムとして用いられる位相差板には、面方向に二軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムとか、面方向に一軸に延伸され、厚さ方向にも延伸された、厚さ方向の屈折率を制御した複屈折を有するポリマーや傾斜配向フィルムのような二方向延伸フィルムなどが用いられる。傾斜配向フィルムとしては、例えばポリマーフィルムに熱収縮フィルムを接着して加熱によるその収縮力の作用下にポリマーフィルムを延伸処理または/および収縮処理したものや、液晶ポリマーを斜め配向させたものなどが挙げられる。位相差板の素材原料ポリマーは、先の位相差板で説明したポリマーと同様のものが用いられ、液晶セルによる位相差に基づく視認角の変化による着色等の防止や良視認の視野角の拡大などを目的とした適宜なものを用いうる。
【0061】
また、良視認の広い視野角を達成する点などより、液晶ポリマーの配向層、特にディスコティック液晶ポリマーの傾斜配向層からなる光学的異方性層をトリアセチルセルロースフィルムにて支持した光学補償位相差板が好ましく用いうる。
【0062】
偏光板と輝度向上フィルムを貼りあわせた偏光板は、通常液晶セルの裏側サイドに設けられて使用される。輝度向上フィルムは、液晶表示装置などのバックライトや裏側からの反射などにより自然光が入射すると所定偏光軸の直線偏光または所定方向の円偏光を反射し、他の光は透過する特性を示すもので、輝度向上フィルムを偏光板と積層した偏光板は、バックライト等の光源からの光を入射させて所定偏光状態の透過光を得るとともに、前記所定偏光状態以外の光は透過せずに反射される。この輝度向上フィルム面で反射した光をさらにその後ろ側に設けられた反射層等を介し反転させて輝度向上フィルムに再入射させ、その一部または全部を所定偏光状態の光として透過させて輝度向上フィルムを透過する光の増量を図るとともに、偏光子に吸収させにくい偏光を供給して、液晶画像表示等に利用しうる光量の増大を図ることにより輝度を向上させうるものである。すなわち、輝度向上フィルムを使用せずに、バックライトなどで液晶セルの裏側から偏光子を通して光を入射した場合には、偏光子の偏光軸に一致していない偏光方向を有する光は、ほとんど偏光子に吸収されてしまい、偏光子を透過してこない。すなわち、用いた偏光子の特性によっても異なるが、およそ50%の光が偏光子に吸収されてしまい、その分、液晶画像表示等に利用しうる光量が減少し、画像が暗くなる。輝度向上フィルムは、偏光子に吸収されるような偏光方向を有する光を偏光子に入射させずに、輝度向上フィルムでいったん反射させ、さらにその後ろ側に設けられた反射層等を介して反転させて輝度向上フィルムに再入射させることを繰り返し、この両者間で反射、反転している光の偏光方向が偏光市を通過しうるような偏光方向になった偏光のみを透過させて偏光子に供給するので、バックライトなどの光を効率的に液晶表示装置の画像の表示に使用でき、画面を明るくすることができる。
【0063】
輝度向上フィルムと上記反射層等の間に拡散板を設けることもできる。輝度向上フィルムによって反射した偏光状態の光は上記反射層等に向かうが、設置された拡散板は通過する光を均一に拡散すると同時に偏光状態を解消し、非偏光状態とする。すなわち元の自然光状態にもどす。この非偏光状態すなわち自然光状態の光が反射層等に向かい、反射層等を介して反射して、拡散板を再び通過して輝度向上フィルムに再入射することを繰り返す。元の自然光状態に戻す拡散板を設けることにより、表示画面の明るさを維持しつつ、同時に表示画面の明るさのムラを少なくし、均一の明るい画面を提供することができる。元の自然光状態に戻す拡散板を設けることにより、初回の入射光は反射の繰り返し回数が程よく増加し、拡散板の拡散機能とあいまって均一の明るい表示画面を提供することができたものと考えられる。
【0064】
前記の輝度向上フィルムとしては、例えば誘電体の多層薄膜や屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体の如き、所定偏光軸の直線偏光を透過して他の光は反射する特性を示すもの、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持したものの如き、左回りまたは右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すものなどの適宜なものを用いうる。
【0065】
したがって、前記した所定偏光軸の直線偏光を透過させるタイプの輝度向上フィルムでは、その透過光をそのまま偏光板に偏光軸をそろえて入射させることにより、偏光板による吸収ロスを抑制しつつ、効率よく透過させることができる。一方、コレステリック液晶層の如く円偏光を透過するタイプの輝度向上フィルムでは、そのまま偏光子に入射させることもできるが、吸収ロスを抑制する点よりその円偏光を位相差板を介し直線偏光化して偏光板に入射させることが好ましい。なお、その位相差板として1/4波長板を用いることにより、円偏光を直線偏光に変換することができる。
【0066】
可視光域等の広い波長範囲で1/4波長板として機能する位相差板は、例えば波長550nmの単色光に対して1/4波長板として機能する位相差板と他の位相差特性を示す位相差板、例えば1/2波長板として機能する位相差板とを重畳する方式などにより得ることができる。したがって、偏光板と輝度向上フィルムの間に配置する位相差板は、1層または2層以上の位相差板からなるものであってよい。
【0067】
なお、コレステリック液晶層についても、反射波長が相違するものの組み合わせにして2層または3層以上重畳した配置構造とすることにより、可視光領域等の広い波長範囲で円偏光を反射するものを得ることができ、それに基づいて広い波長範囲の透過円偏光を得ることができる。
【0068】
また、偏光板は、上記の偏光分離型偏光板の如く、偏光板と2層または3層以上の光学層とを積層したものからなっていてもよい。したがって、上記の反射型偏光板や半透過型偏光板と位相差板を組み合わせた反射型楕円偏光板や半透過型楕円偏光板などであってもよい。
【0069】
偏光板に前記光学層を積層した光学フィルムは、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、あらかじめ積層して光学フィルムとしたものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着剤層等の適宜な接着手段を用いうる。前記の偏光板と他の光学層の接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
【0070】
本発明による塗布膜からなる光学フィルムは、液晶表示装置、エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、プラズマディスプレイ(PD)および電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)等の画像表示装置の形成に好ましく用いることができる。
【0071】
本発明による塗布膜からなる光学フィルムは液晶表示装置等の各種装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち、液晶表示装置は一般に、液晶セルと光学フィルム、および必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に軸立てて駆動回路を組み込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による偏光板または光学フィルムを用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型などの任意なタイプのものを用いうる。
【0072】
液晶セルの片側または両側に光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による偏光板または光学フィルムは液晶セルの片側または両側に設置することができる。両側に偏光板または光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層または2層以上配置することができる。
【0073】
次いで、有機エレクトロルミネセンス装置(有機EL表示装置)について説明する。一般に、有機EL表示装置は、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)を形成している。ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、あるいはこのような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体や、またあるいはこれらの正孔注入層、発光層、および電子注入層の積層体等、種々の組み合わせを持った構成が知られている。
【0074】
有機EL表示装置は、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、有機発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物質を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。途中の再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、このことからも予想できるように、電流と発光強度は印加電圧に対して整流性に伴う強い非線形性を示す。
【0075】
有機EL表示装置においては、有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明でなくてはならず、通常、酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いている。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg−Ag、Al−Liなどの金属電極を用いている。
【0076】
このような構成の有機EL表示装置において、有機発光層は、厚さ10nm程度と極めて薄い膜で形成されている。このため、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見える。
【0077】
電圧の印加によって発光する有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機エレクトロルミネセンス発光体を含む有機EL表示装置において、透明電極の表面側に偏光板を設けるとともに、これら透明電極と偏光板との間に位相差フィルムを設けることができる。
【0078】
位相差フィルムおよび偏光板は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差フィルムを1/4波長板で構成し、かつ偏光板と位相差フィルムとの偏光方向のなす角をπ/4に調整すれば、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0079】
すなわち、この有機EL表示装置に入射する外部光は、偏光板により直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は位相差フィルムにより一般に楕円偏光となるが、特に位相差フィルムが1/4波長板でしかも偏光板と位相差フィルムとの偏光方向のなす角がπ/4のときには円偏光となる。
【0080】
この円偏光は、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、位相差フィルムで再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光板の偏光方向と直交しているので、偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0081】
PDは、パネル内に封入された希ガス、とくにネオンを主体としたガス中で放電を発生させ、その際に発生する真空紫外線により、パネルのセルに塗られたR、G、Bの蛍光体を発生させることにより画像表示が可能となる。
【0082】
【実施例】
以下に実施例および比較例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例および比較例によって限定されるものではない。
【0083】
実施例1
塗布幅1100mm、スリット幅(ダイ内部における分配部以降の並行平板間の距離)0.15mmであり、図2のように、塗布液の供給口から分配部までの間、供給口に隣接した位置に口径8mmのスタティックミキサーによる攪拌装置を設けたエクストルージョン型ダイを用いて、流量2.92[cc/回転]のポンプを用いて、幅1200mm、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる支持体上に、下記化1からなる液晶モノマー(重合性棒状ネマティック液晶)と、下記化2からなるカイラル剤を、重量比8:1となるように混合し、この混合物が30重量%となるようにトルエンに溶解した後に、このトルエン溶液に、さらに光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製:イルガキュア907)を3重量%となるように加えて調製した塗布液(粘度:5mPa・s)を、塗布速度10m/minで塗布することにより、乾燥後の塗布膜厚みが5μmの塗布膜を形成した。その後、形成した塗布膜を目視により観察し、欠陥がないことを確認した。
【化1】
【化2】
【0084】
実施例2
実施例1において、スタティックミキサーからなる攪拌装置の設置位置を、図3のようにダイの供給口の外側に隣接した位置に設けたこと以外は、実施例1と同様にして、乾燥後の塗布膜厚みが5μmの塗布膜を形成した。その後、形成した塗布膜を目視により観察し、欠陥がないことを確認した。
【0085】
実施例3
実施例1において、スタティックミキサーの代わりに、塗布液の供給口から分配部までの間、供給口に隣接した位置(図2)に、直径30mmの金網(#100メッシュ)を50枚重ねたブロック(メッシュフィルター)による攪拌装置を設けたダイを用いて、他は実施例1と同様にして、乾燥後の塗布膜厚みが5μmの塗布膜を形成した。その後、形成した塗布膜を目視により観察し、欠陥がないことを確認した。
【0086】
比較例1
実施例1において、攪拌装置を設けないダイを用いて、実施例1と同様にして、乾燥後の塗布膜厚みが5μmの塗布膜を形成した。その後、形成した塗布膜を目視により観察し、幅方向中央部にスジ状欠陥の存在を確認した。
【0087】
(乾燥後の塗布膜厚み測定方法)
光学干渉膜厚計(大塚電子(株)製:MCPD−2000)を用いて測定した。
【0088】
(粘度測定方法)
粘度測定装置(HAAKE社製:レオメーターRS−1)を用いて、せん断速度が10〜100[1/s]の範囲での粘度を測定し、その平均値を用いた。
【0089】
【表1】
【0090】
上記表1の結果から明らかなように、塗布液タンクからダイ内の分配部までの間に攪拌装置を設けることによって、塗布膜上にスジ状欠陥のない塗布膜が得られることがわかった。
【0091】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、中央部に連続的に塗布液が供給されるダイを用いた塗布装置において、塗布液タンクと供給パイプの接続部分からダイ内の分配部までの間にメッシュフィルターや、スタティックミキサー等の攪拌装置を設けることによって、スジ状欠陥のない塗布膜が得られることを見出したものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による塗布装置構成の一例
【図2】本発明によるダイへの攪拌装置設置位置の一例
【図3】本発明によるダイへの攪拌装置設置位置の一例
【図4】本発明に用いる攪拌装置の一例(スタティックミキサー)
【図5】本発明に用いる攪拌装置の一例(羽根状攪拌装置)
【図6】本発明に用いる攪拌装置の一例(メッシュフィルター)
【符号の説明】
1:ダイ
11:吐出口(スリット)
12:分配部(マニホールド)
13:供給口
14:リップ部
2:塗布液タンク
3:塗布液
4:ポンプ
5:供給パイプ
6:支持体
7:塗布膜
8:攪拌装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面の平滑性に優れ、スジ状等の欠陥がない塗布膜を形成できて、光学フィルムの製造などに好適なエクストルージョン型のダイを用いた塗布装置および塗布方法に関するものである。また、この塗布装置あるいは塗布方法により形成した塗布膜や、この塗布膜を用いた光学フィルムおよびこの光学フィルムを適用した画像表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、光学フィルムや各種樹脂シート等を製造する際の、塗布液の支持体への塗布方法としては、グラビアロールコート法、リバースロールコート法、ディップコート法、ブレードコート法、エアーナイフコート法、ワイヤーブロックコート法、リブロックスコート法、リブロックスロールコート法、エクストルージョンコート法、ロッドコート法、ワイヤーバーコート法、スライドコート法およびカーテンコート法等が知られているが、なかでも、塗布液の変質および異物混入や塗布膜表面の厚みムラを嫌う光学フィルム等の製造に関しては、密閉系で、支持体表面に均一に塗布できるエクストルージョン法を用いた塗布方法が好ましく用いられる。
【0003】
このエクストルージョン法による塗布方法は、ポンプ等の装置や毛細管現象を利用してダイ内に塗布液を供給し、ダイの先端部に有する幅広のスリットから、連続搬送される支持体表面に向けて連続的に押し出された塗布液を、支持体表面に均一な厚さで塗布する方法である(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
このエクストルージョン法の塗布装置は、ダイの中央部もしくは端部から塗布液が供給され、所定の圧力をもってスリットへと押し出されるものであるが、この際、スリットの幅方向で圧力分布が生じ、支持体表面の厚みムラやスジ状欠陥が発生する原因となっている。
【0005】
このような問題点に対して、これまで、両端部から塗料を供給するダイにおいては、塗布液を、ろ過部材を介してスリットに供給することで、塗布液供給による幅方向の流れを整流化し、塗布厚が均一でスジ等のない塗布膜を得る方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−86041号公報
【0007】
【特許文献2】
特開平5−31432号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来のようなろ過部材を介して塗布液を整流化する方法では、中央部から塗布液を供給し、分配部を経てスリットから押し出されるダイにおいては、分配部を有する構造であることから、塗布膜の厚みムラや表面スジを解消することは困難である。そこで本発明では、塗布液を中央部から供給する、エクストルージョン法を用いた塗布装置において、塗布膜の厚みムラや表面スジの生じない塗布装置および塗布方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を検討すべく、鋭意検討したところ、以下に示す塗布装置を用いることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、エクストルージョン型ダイの中央部から連続的に塗布液が供給される塗布装置において、このダイに塗布液を供給する区間であって、塗布液タンクと供給パイプの接続部分からダイ内の分配部までの間に、少なくとも1つの攪拌装置を有することを特徴とする塗布装置に関する。
【0011】
前記塗布装置に用いる攪拌装置は、その全部または一部がダイ内にある位置か、またはダイに隣接する位置に設置することが好ましく、また攪拌装置としては、メッシュフィルターや、スタティックミキサーを用いたものが好ましい。
【0012】
前記塗布装置に用いる塗布液の粘度は、0.5mPa・s〜1000mPa・sの範囲にある塗布液を用いることが好ましい。
【0013】
本発明は、前記塗布装置を用いた塗布方法に関する。また本発明は、前記塗布装置あるいは塗布方法により形成された乾燥後の厚みが0.01〜20μmである塗布膜および、この塗布膜を用いた光学フィルム、さらにはこの光学フィルムを適用した画像表示装置に関する。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明は、エクストルージョン型のダイ中央部へ連続的に塗布液が供給される塗布装置であって、連続搬送される支持体上に塗布液を塗布する工程において、支持体上に塗布された塗布膜にスジ状欠陥が発生することを防止するために、塗布液を供給する区間であって、塗布液タンクと供給ポンプの接続部からダイ内の分配部に入るまでの間に、少なくとも1つの攪拌装置を設けて塗布液の流れを乱すことで前記課題を解決したものである。
【0015】
本発明による塗布装置の構成としては、例えば、図1に示すように、タンク2の中に貯蔵した塗布液3を、ポンプ4を備えた供給パイプ5を介して、ダイ1に供給する。ダイ1内には、図2に示すようにダイの供給口13から分配部12の間に攪拌装置8を設置する。このダイ1と狭小な間隙を介して配置されており、フィルム状態で連続搬送される支持体6に、ダイの吐出口(スリット)11を介して、順次吐出塗布されて塗布膜7が形成される。形成された塗布膜は必要に応じ、乾燥工程や硬化処理工程等の必要な工程を経て、目的とする塗布膜を得る。また、この塗布膜は、支持体上より剥離回収して用いることもできる。
【0016】
本発明はエクストルージョン法によるエクストルージョン型のダイを用いた塗布方法に関する。このエクストルージョン法は、膜厚均一性や塗膜面の平滑性の良さから、精度の高い塗布方法として広く用いられている塗布方法であり、ダイの先端部にある吐出口より塗布液を押し出し、連続搬送される支持体に対して塗布する。エクストルージョン型のダイは、塗布液を供給する供給口と、供給された塗布液を幅手方向に留め、均一に供給するための分配部(マニホールド)および、この分配部より塗布液を幅手方向に均一に吐出するための吐出口(スリット)を有している。また、このダイの構造により、同時多層塗布も可能である。
【0017】
エクストルージョン型のダイは、例えば金属やプラスチック、セラミックス等、適宜な材料を用いて形成でき、その塗布幅を決定するスリットの長さも必要とする塗布膜に応じて適宜決定することができる。しかし、装置の寸法精度、組み立て精度には細心の注意を払って構成する必要があり、特に、塗布液を吐出するためのダイのスリット先端部と被塗布物である支持体間の距離については高精度の設定が要求される。そのスリット先端部と支持体間の距離が大きすぎると塗布が不可能になったり、塗布面にスジ状の欠陥が現れたりし、また小さすぎるとダイから供給される塗布液の全量が塗布されずに、ダイの支持体流れ方向上流側に液だまりが生じるため、規定の塗布膜厚さが得られなかったり、スジ状の欠陥があらわれたりするという問題が生ずる。したがって、このスリット先端部と支持体間の距離には適正な範囲があり、塗布液の物性や塗布条件、塗布装置の構造(例えば、ダイの支持体流れ方向上流側で余分な塗布液を吸引する装置を設け、塗布液形状の安定化を図ったもの等)により、適正な範囲は変わるため、塗布膜厚さの100倍以上の距離を設けても、塗布液の物性や塗布条件によっては塗布することが可能である。しかしながら、本発明によると、この距離が塗布膜厚さの20倍を超える場合には、塗布液の物性および塗布条件にもよるが、ダイ出口で発生したスジ状欠陥が塗布液の表面張力で緩和される効果が得られるため、本発明による装置および方法を用いるまでもなく、スジ状欠陥のない塗布膜が得られやすい。そのため、本発明では、スリット先端部から支持体までの距離は、塗布膜(乾燥前)厚さの1〜20倍であるものが好ましく用いられる。
【0018】
前記分配部(マニホールド)の形状としては、これに限定されることなく、塗布液の物性、塗布条件等により、流動解析等の解析手法を用いて、最適な形状設計したものを用いることができるが、通常、コートハンガータイプ、フィッシュテールタイプ、ストレートマニホールド(Tマニホールド)タイプ等の形状が用いられている。なかでも、本発明による方法では、コートハンガータイプの分配部を用いることが、幅方向の流速分布を一定にし、分配部に滞留部分ができにくい点から特に好ましい。このダイ形状や塗布液の物性および塗布条件を調整することにより、幅方向の流速分布は均一にすることができても、特異的に発生するスジ状欠陥を予測することは非常に困難であり、これらの条件は試行錯誤の上で決定することが多い。
【0019】
前記吐出口周辺部であるリップ部14は、塗布液を吐出する最終部分であり、ダイの幅方向、すなわち塗布液を吐出して形成する塗布膜の幅方向に連続して設けられる。このリップ部の形状としては、先細り型、槍型等、限定されることなく適宜な形状を用いることができる。また、このリップ部には、液切れ性の向上を目的とした撥水コートを施しても良い。撥水コートの形成剤としては、例えば、フッ素系やシリコーン系等の適宜な撥水剤を用いることができ、ポリマー系の撥水剤がコート膜の長寿命性等の点より好ましく用いられる。また、この撥水コートは、汚れ防止等を目的として、ダイ全体に設けても良い。
【0020】
本発明による塗布装置では、ダイ内の分配部までの間に少なくとも1つ以上の攪拌装置を設ける。この攪拌装置を設けることにより、塗布液の流れが乱され、ダイの分配部に塗布液が供給される前に吐出方向に生じる慣性力を、強制的に打ち消すことにより抑制できると考えられるため、塗布液の慣性力に起因すると思われる塗布膜上のスジ状欠陥を抑制できる。
【0021】
攪拌装置としては、塗布液の流れを乱す目的を達すればこれに限定されることなく適宜なものを用いうるが、例えば、メッシュフィルター、絞り装置、動力を有する羽根状攪拌装置または、動力を有しないスタティックミキサー等が挙げられる。メッシュフィルターとしては、単なるろ過部材とは異なり、塗布液の流れを乱すために設けるものであるため、複数層積層してブロック状にして用いることが好ましい。この積層枚数としては、塗布液の物性により異なるが、5〜100枚程度が好ましく、25〜75枚程度がより好ましい。また、メッシュサイズとしては、10〜600であればよく、50〜500であることが好ましい。本発明で特に好ましく用いられるものとしては、動力を必要とせず、塗布液の物性に左右されにくいため、スタティックミキサーが挙げられる。
【0022】
本発明では、攪拌装置は少なくとも1つ以上設ける必要があるが、2つ以上設置した場合の数および種類は特に限定されるものではなく、例えば、前記スタティックミキサーを2つあるいは、スタティックミキサーと前記メッシュフィルターを同一塗布装置内に同時に設置しても良い。
【0023】
攪拌装置の設置位置としては、塗布液の物性に応じて、塗布液タンク出口の供給パイプ接続部分からダイ内分配部までの区間であることが必要であり、この区間にポンプを有する塗布装置の場合、前記攪拌装置は、このポンプ出口の供給パイプ接続部分からダイ内分配部までの間に設置することが好ましい。また、慣性力を打ち消す効果を十分に得るためには、分配部により近い位置が好ましいため、攪拌装置の全部または一部がダイ内にあるか、またはダイに隣接する位置に設置することがより好ましい。
【0024】
本発明の塗布装置に用いることのできる塗布液は、液体であれば必要とされる用途に応じて選択でき、特に限定されるものではないが、例えば、磁気記録媒体用磁性塗布液、一般用及び産業用ハロゲン化銀感光材料用塗布液、感熱材料用塗布液、熱現像感光材料用塗布液、あるいは高分子材料を有機溶媒や水等に溶解した液、顔料分散液、コロイド状分散液等を挙げることができる。また、これらの塗布液には、適宜レベリング剤等の添加剤を混合してもよい。
【0025】
前記塗布液の粘度としては、特に限定されるものではないが、エクストルージョン法による塗布方法においては、通常0.5mPa・s〜1000mPa・sであり、0.5mPa・s〜800mPa・sが好ましく、0.5mPa・s〜500mPa・sであることがより好ましい。一般的に、粘度が0.5mPa・s未満のものや、1000mPa・sを超えるものは、本発明の課題であるスジ状欠陥が生じず、本発明による効果は少ないものと考えられるため、本発明による塗布装置を適用することなく、従来公知の塗布装置を用いればよい。
【0026】
塗布液の粘度の測定方法としては、本願では、粘度測定装置(HAAKE社製:レオメーターRS−1)を用いて、せん断速度が10〜100[1/s]の範囲での粘度を測定し、その平均値を用いた。また、粘度の測定は、ダイの吐出口から吐出された塗布液で行うことが好ましいが、粘度が塗布装置中で変化するような粘度変化の大きい塗布液を用いない限り、塗布液タンク中の塗布液で粘度測定しても良い。
【0027】
本発明による塗布装置を用いて形成した塗布膜は、少なくとも1層あればよいが、必要に応じ、2層以上からなる塗布膜を同時または順次塗布する方法に適用しても良く、塗布膜の層数に限定されるものではない。
【0028】
前記塗布膜の塗布直後(乾燥前)の厚みとしては、一般的に1μm〜500μmであり、1μm〜100μmであることが好ましい。このとき、1μm未満であれば、スジ状欠陥の原因と考えられるダイ内での塗布液の慣性力の効果が小さくなるため、本願発明の効果は出にくく、500μmを超えると、本願発明の効果を得るまでもなく、厚みによるレベリング効果が得られるため、スジ状欠陥が緩和される。乾燥後の厚みとしては、必要とする性能を有する厚みであれば特に限定されるものではないが、0.01μm〜50μmであることが好ましく、0.01μm〜20μmであることがより好ましい。この塗布膜が、0.01μm未満であれば、上記と同様に慣性力の効果が小さくなるため、本願発明の効果は出にくく、であり、50μmを超えると、レベリング効果が得られるため、スジ状欠陥が緩和される。
【0029】
塗布膜厚さの測定方法としては、その塗布膜の性状に合わせて、光学的な方法を用いたものや、物理的、直接的な方法で測定するもの等、適宜な測定装置を限定されることなく用いることができるが、例えば本発明では、光干渉を利用した光学的な方法が好ましく用いられる。
【0030】
本発明で用いられる支持体としては、種類によって限定されるものではなく、紙、プラスチックフィルム、金属シート等を適宜用いることができる。紙としては、例えばレジンコート紙、合成紙等が挙げられ、金属シートとしては、アルミニウム板が代表的である。また、プラスチックフィルムとしては、ポリオレフィンフィルム(例えばポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等)、ポリエステルフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレン2,6−ナフタレートフィルム等)、ポリアミドフィルム(例えばポリエーテルケトンフィルム等)、セルロースアセテート(例えばセルローストリアセテート等)、ビニル系樹脂フィルム(例えばポリ塩化ビニル等)または、ポリアミド樹脂、ポリスルホン、ポリカーボネートからなるフィルム等が挙げられる。さらに、熱や紫外線照射等により硬化するものを用いても良く、そのような硬化型のフィルムを形成する場合、例えば支持体から容易に剥離できる層を先に形成して、その上に硬化フィルムを形成する方式等により、得られたフィルムの支持体から剥離回収することができる。したがって、複層構造のフィルムを形成することも可能である。
【0031】
前記支持体の搬送時の形状としては、特に限定されるものではなく、ドラム状、エンドレスベルトのようなベルト状、板状等、塗布液を順次連続的に吐出塗布でき、その塗布膜を支持してシート状に維持できる適宜な形状を用いることができる。また、表面形状としては、例えば、鏡面、プリズム状凹凸やエンボス加工されたもの等、適宜な表面形状を有するものを使用できる。さらに、前記支持体表面にはあらかじめコロナ放電処理、プラズマ処理、下塗り処理、熱処理、金属蒸着処理、アルカリ処理等の前処理が施されていてもよい。
【0032】
本発明による塗布装置を用いた塗布方法は、前記のようにエクストルージョン法で、攪拌装置を設けた塗布装置により、連続搬送される支持体に向けて塗布液が連続的に吐出塗布される塗布方法が好ましい。
【0033】
本発明の塗布装置により形成された塗布膜は、前記支持体あるいは、他のポリマーフィルムと積層することにより、光学フィルムとして用いることができる。光学フィルムとしては画像表示装置の形成に用いられるものが挙げられ、その種類は特に限定されるものではないが、例えば、偏光板、位相差板、楕円偏光板、視角補償フィルム、輝度向上フィルム等が挙げられる。
【0034】
偏光板としては、偏光子の片面または両面に透明保護フィルムを有するものが一般に用いられる。この偏光子としては、特に制限されず、各種のものを使用できる。例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質で染色して一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等があげられる。これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これら偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に、5〜80μm程度である。
【0035】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素の水溶液に浸漬または、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を塗布することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作成することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいてもよく、ヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行ってもよいし、染色しながら延伸してもよいし、また延伸してからヨウ素で染色してもよい。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
【0036】
前記偏光子の片面または両面に設けられる透明保護フィルムを形成する材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れるものが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマーがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや方向族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、または前記ポリマーのブレンド物なども前記透明保護フィルムを形成するポリマーの例としてあげられる。透明保護フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型、紫外線硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。これらの中でもイソシアネート架橋剤との反応性を有する水酸基を有するものが好ましく、特にセルロース系ポリマーが好ましい。透明保護フィルムの厚さは特に制限されないが、一般には500μm以下であり、1〜300μmが好ましい。特に5〜200μmとするのが好ましい。
【0037】
また、透明保護フィルムとしては、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルム、例えば、(A)側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換および/または非置換フェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が挙げられ、具体例としてはイソブテンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物のフィルムが挙げられる。フィルムは樹脂組成物の混合押出し品などからなるフィルムを用いることができる。
【0038】
透明保護フィルムの厚さは特に限定されるものではないが、一般には500μm以下であり、1〜300μmが好ましい。特に5〜200μmとするのがより好ましい。また、偏光特性や耐久性などの点より、保護フィルム表面をアルカリなどでケン化処理することが好ましい。
【0039】
前記透明保護フィルムは、前記の透明保護フィルム形成材料を溶液とし、前記偏光子に塗布することによって形成しても良い。
【0040】
また、透明保護フィルムはできるだけ色付きがないことが好ましい。したがって、Rth=[(nx+ny)/2−nz]・d(ただし、nx、nyはフィルム平面内の主屈折率、nzはフィルム厚方向の屈折率、dはフィルム厚である)で表されるフィルム厚み方向の位相差値が−90nm〜+75nmである透明保護フィルムが好ましく用いられる。かかる厚み方向の位相差値(Rth)が−90nm〜+75nmのものを使用することにより、透明保護フィルムに起因する偏光板の着色(光学的な着色)をほぼ解消することができる。厚み方向の位相差値(Rth)は、さらに好ましくは−80〜+60nm、特に−70nm〜+45nmが好ましい。
【0041】
前記透明保護フィルムの偏光子を接着させない面(前記塗布層を設けない面)には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした表面処理を施したものであってもよい。
【0042】
ハードコート処理は偏光板表面の傷つき防止などを目的に施されるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を透明保護フィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。反射防止処理は変更板表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、従来に準じた反射防止膜などの形成により達成することができる。また、スティッキング防止処理は隣接層との密着防止を目的に施される。
【0043】
また、アンチグレア処理は偏光板の表面で外光が反射して、偏光板透過光の視認を阻害することの防止等を目的に施されるものであり、例えば、サンドブラスト方式やエンボス加工方式による粗面化方式や透明微粒子の配合方式などの適宜な方式にて透明保護フィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。前記表面微細凹凸構造の形成に含有させる微粒子としては、例えば平均粒径が0.5〜50μmのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等からなる導電性のこともある無機系微粒子、架橋または未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子などの透明微粒子が用いられる。表面微細凹凸構造を形成する場合、微粒子の使用量は、表面微細凹凸構造を形成する透明樹脂100重量部に対して一般的に2〜50重量部程度であり、5〜25重量部が好ましい。アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角などを拡大するための拡散層(視角拡大機能など)をかねるものであってもよい。
【0044】
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等は、透明保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途光学層として透明保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
【0045】
前記偏光子と透明保護フィルムとの接着処理は特に限定されるものではないが、例えば、ビニルポリマーからなる接着剤、あるいは、ホウ酸やホウ砂、グルタルアルデヒドやメラミン、シュウ酸などのビニルアルコール系ポリマーの水溶性架橋剤から少なくともなる接着剤などを介して行うことができる。この接着層は、水溶液の塗布乾燥層などとして形成しうるが、その水溶液の調製に際しては、必要に応じて、他の添加剤や、酸等の触媒も配合することができる。
【0046】
前記偏光板において、本発明による塗布装置は、前記偏光子の染色、前記透明保護フィルムの形成または前記表面処理層の形成等に用いることができる。さらに、ポリマーフィルムに液晶ポリマーや液晶モノマー等の配向材料を塗布し、適宜あらかじめポリマーフィルムをラビングすることや、加熱、光照射を施すことで配向させることによって、位相差板や視角補償フィルム、輝度向上フィルム等の光学フィルムとすることができる。
【0047】
ポリマーフィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルビニルエーテル、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリアリルスルホン、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、セルロース系重合体、またはこれらの二元系、三元系各種共重合体、グラフト共重合体、ブレンド物などがあげられる。これらのポリマーフィルムは延伸等により配向物(延伸フィルム)となる。
【0048】
前記液晶モノマーとしては、リオトロピック性、サーモトロピック性のいずれのものも用いることができるが、作業性の点からサーモトロピック性のものが好適であり、例えば、アクリロイル基、ビニル基やエポキシ基等の官能基を導入したビフェニル誘導体、フェニルベンゾエート誘導体、スチルベン誘導体などを基本骨格としたもの等が挙げられる。このような液晶モノマーは、例えば、熱や光による方法、基板上をラビングする方法、配向補助剤を添加する方法等、適宜公知の方法を用いて配向させ、その後、この配向を維持した状態で、光、熱、電子線等により架橋および重合させることにより配向を固定化する方法が好ましく用いられる。
【0049】
液晶ポリマーとしては、例えば、液晶配向性を付与する共役性の直線状原子団(メソゲン)がポリマーの主鎖や側鎖に導入された主鎖型や側鎖型の各種のものなどがあげられる。主鎖型の液晶性ポリマーの具体例としては、屈曲性を付与するスペーサ部でメソゲン基を結合した構造の、例えばネマチック配向性のポリエステル系液晶性ポリマー、ディスコティックポリマーやコレステリックポリマーなどがあげられる。側鎖型の液晶性ポリマーの具体例としては、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリメタクリレートまたはポリマロネートを主鎖骨格とし、側鎖として共役性の原子団からなるスペーサ部を介してネマチック配向付与性のパラ置換環状化合物単位からなるメソゲン部を有するものなどがあげられる。これら液晶ポリマーは、例えば、ガラス板上に形成したポリイミドやポリビニルアルコール等の薄膜の表面をラビング処理したもの、酸化ケイ素を斜方蒸着したものなどの配向処理面上に液晶性ポリマーの溶液を展開して熱処理することにより行われる。
【0050】
本発明による光学フィルムは、実用に際して他の光学層を積層して用いることができる。その光学層については特に限定はないが、例えば反射板や半透過板、位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)、視角補償フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層を1層または2層以上用いることができる。特に偏光板に、さらに反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板または半透過型偏光板、偏光板にさらに位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板、偏光板にさらに視角補償フィルムが積層されてなる広視野角偏光板、あるいは偏光板にさらに輝度向上フィルムが積層されてなる偏光板が好ましい。
【0051】
反射型偏光板は、偏光板に反射層を設けたもので、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置などを形成するためのものであり、バックライト等の光源の内臓を省略できて、液晶表示装置の薄型化を図りやすいなどの利点を有する。反射型偏光板の形成は、必要に応じ透明保護層等を介して偏光板の片面に金属等からなる反射層を付設する方式などの適宜な方式にて行うことができる。
【0052】
反射型偏光板の具体例としては、必要に応じ、マット処理した透明保護フィルムの片面に、アルミニウム等の反射性金属からなる箔や蒸着膜を付設して反射層を形成したものなどがあげられる。また、前記透明保護フィルムに微粒子を含有させて表面微細凹凸構造とし、その上に微細凹凸構造の反射層を有するものなどもあげられる。前記した微細凹凸構造の反射層は、入射光を乱反射により拡散させて指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制しうる利点などを有する。また微粒子含有の透明保護フィルムは、入射光およびその反射光がそれを透過する際に拡散されて、明暗ムラをより抑制しうる利点なども有している。透明保護フィルムの表面微細凹凸構造を反映させた微細凹凸構造の反射層の形成は、例えば真空蒸着方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式等の蒸着方式やメッキ方式などの適宜な方式で、金属を透明保護層の表面に直接付設する方法などにより行うことができる。
【0053】
反射板は、前記偏光板の透明保護フィルムに直接付与する方式に代えて、その透明フィルムに準じた適宜なフィルムに反射層を設けてなる反射シートなどとして用いることもできる。なお、反射層は通常、金属からなるので、その反射面が透明保護フィルムや偏光板等で被覆された状態の使用形態が、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続の点や、保護層の別途付設回避の点などにより好ましい。
【0054】
なお、半透過型偏光板は、上記において反射層で光を反射し、かつ透過するハーフミラー等の半透過型の反射層とすることにより得ることができる。半透過型偏光板は通常、液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置などを比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射させて画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内臓光源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置などを形成できる。すなわち、半透過型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、比較的明るい雰囲気下においても内蔵光源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置などの形成に有用である。
【0055】
偏光板にさらに位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板について説明する。直線偏光を楕円偏光または円偏光に変えたり、楕円偏光または円偏光を直線偏光に変えたり、あるいは直線偏光の偏光方向を変える場合に、位相差板などが用いられる。特に、直線偏光を円偏光に変えたり、円偏光を直線偏光に変えたりする位相差板としては、いわゆる1/4波長板(λ/4板ともいう)が用いられる。1/2波長板(λ/2板ともいう)は、通常、直線偏光の偏光方向を変える場合に用いられる。
【0056】
楕円偏光板はスーパーツイストネマチック(STN)型液晶表示装置の液晶層の複屈折により生じた着色(青または黄)を補償(防止)して、前記着色のない白黒表示する場合などに有効に用いられる。さらに、三次元の屈折率を制御したものは、液晶表示装置の画面を斜め方向から見た際に生じる着色も補償(防止)することができて好ましい。円偏光板は、例えば画像がカラー表示になる反射型液晶表示装置の画像の色調を整える場合などに有効に用いられ、また、反射防止の機能も有する。
【0057】
位相差板としては、ポリマーフィルムを一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルム、液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどがあげられる。延伸処理は、例えばロール延伸法、長間隙沿延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法などにより行うことができる。延伸倍率は、一軸延伸の場合には1.1〜3倍程度が一般的である。位相差板の厚さも特に制限されないが、一般的には10〜200μm、好ましくは20〜100μmである。
【0058】
位相差板は、例えば各種波長板や液晶層の複屈折による着色や視角等の補償を目的としたものなどの使用目的に応じた適宜な位相差を有するものであってよく、2種以上の位相差板を積層して位相差等の光学特性を制御したものなどであってもよい。
【0059】
また上記の楕円偏光板や反射型楕円偏光板は、偏光板または反射型偏光板と位相差板を適宜な組み合わせで積層したものである。かかる楕円偏光板等は、(反射型)偏光板と位相差板の組み合わせとなるようにそれらを液晶表示装置の製造過程で順次別個に積層することによっても形成しうるが、前記のごとくあらかじめ楕円偏光板等の光学フィルムとしたものは、品質の安定性や積層作業性等に優れて、液晶表示装置などの製造効率を向上させうる利点がある。
【0060】
視角補償フィルムは、液晶表示装置の画面を、画面に垂直でなくやや斜めの方向から見た場合でも、画像が比較的鮮明に見えるように視野角を広げるためのフィルムである。このような視角補償位相差板としては、例えば位相差板、液晶ポリマー等の配向フィルムや透明基材上に液晶ポリマー等の配向層を支持したものなどからなる。通常の位相差板は、その面方向に一軸延伸された複屈折を有するポリマーフィルムが用いられるのに対し、視角補償フィルムとして用いられる位相差板には、面方向に二軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムとか、面方向に一軸に延伸され、厚さ方向にも延伸された、厚さ方向の屈折率を制御した複屈折を有するポリマーや傾斜配向フィルムのような二方向延伸フィルムなどが用いられる。傾斜配向フィルムとしては、例えばポリマーフィルムに熱収縮フィルムを接着して加熱によるその収縮力の作用下にポリマーフィルムを延伸処理または/および収縮処理したものや、液晶ポリマーを斜め配向させたものなどが挙げられる。位相差板の素材原料ポリマーは、先の位相差板で説明したポリマーと同様のものが用いられ、液晶セルによる位相差に基づく視認角の変化による着色等の防止や良視認の視野角の拡大などを目的とした適宜なものを用いうる。
【0061】
また、良視認の広い視野角を達成する点などより、液晶ポリマーの配向層、特にディスコティック液晶ポリマーの傾斜配向層からなる光学的異方性層をトリアセチルセルロースフィルムにて支持した光学補償位相差板が好ましく用いうる。
【0062】
偏光板と輝度向上フィルムを貼りあわせた偏光板は、通常液晶セルの裏側サイドに設けられて使用される。輝度向上フィルムは、液晶表示装置などのバックライトや裏側からの反射などにより自然光が入射すると所定偏光軸の直線偏光または所定方向の円偏光を反射し、他の光は透過する特性を示すもので、輝度向上フィルムを偏光板と積層した偏光板は、バックライト等の光源からの光を入射させて所定偏光状態の透過光を得るとともに、前記所定偏光状態以外の光は透過せずに反射される。この輝度向上フィルム面で反射した光をさらにその後ろ側に設けられた反射層等を介し反転させて輝度向上フィルムに再入射させ、その一部または全部を所定偏光状態の光として透過させて輝度向上フィルムを透過する光の増量を図るとともに、偏光子に吸収させにくい偏光を供給して、液晶画像表示等に利用しうる光量の増大を図ることにより輝度を向上させうるものである。すなわち、輝度向上フィルムを使用せずに、バックライトなどで液晶セルの裏側から偏光子を通して光を入射した場合には、偏光子の偏光軸に一致していない偏光方向を有する光は、ほとんど偏光子に吸収されてしまい、偏光子を透過してこない。すなわち、用いた偏光子の特性によっても異なるが、およそ50%の光が偏光子に吸収されてしまい、その分、液晶画像表示等に利用しうる光量が減少し、画像が暗くなる。輝度向上フィルムは、偏光子に吸収されるような偏光方向を有する光を偏光子に入射させずに、輝度向上フィルムでいったん反射させ、さらにその後ろ側に設けられた反射層等を介して反転させて輝度向上フィルムに再入射させることを繰り返し、この両者間で反射、反転している光の偏光方向が偏光市を通過しうるような偏光方向になった偏光のみを透過させて偏光子に供給するので、バックライトなどの光を効率的に液晶表示装置の画像の表示に使用でき、画面を明るくすることができる。
【0063】
輝度向上フィルムと上記反射層等の間に拡散板を設けることもできる。輝度向上フィルムによって反射した偏光状態の光は上記反射層等に向かうが、設置された拡散板は通過する光を均一に拡散すると同時に偏光状態を解消し、非偏光状態とする。すなわち元の自然光状態にもどす。この非偏光状態すなわち自然光状態の光が反射層等に向かい、反射層等を介して反射して、拡散板を再び通過して輝度向上フィルムに再入射することを繰り返す。元の自然光状態に戻す拡散板を設けることにより、表示画面の明るさを維持しつつ、同時に表示画面の明るさのムラを少なくし、均一の明るい画面を提供することができる。元の自然光状態に戻す拡散板を設けることにより、初回の入射光は反射の繰り返し回数が程よく増加し、拡散板の拡散機能とあいまって均一の明るい表示画面を提供することができたものと考えられる。
【0064】
前記の輝度向上フィルムとしては、例えば誘電体の多層薄膜や屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体の如き、所定偏光軸の直線偏光を透過して他の光は反射する特性を示すもの、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持したものの如き、左回りまたは右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すものなどの適宜なものを用いうる。
【0065】
したがって、前記した所定偏光軸の直線偏光を透過させるタイプの輝度向上フィルムでは、その透過光をそのまま偏光板に偏光軸をそろえて入射させることにより、偏光板による吸収ロスを抑制しつつ、効率よく透過させることができる。一方、コレステリック液晶層の如く円偏光を透過するタイプの輝度向上フィルムでは、そのまま偏光子に入射させることもできるが、吸収ロスを抑制する点よりその円偏光を位相差板を介し直線偏光化して偏光板に入射させることが好ましい。なお、その位相差板として1/4波長板を用いることにより、円偏光を直線偏光に変換することができる。
【0066】
可視光域等の広い波長範囲で1/4波長板として機能する位相差板は、例えば波長550nmの単色光に対して1/4波長板として機能する位相差板と他の位相差特性を示す位相差板、例えば1/2波長板として機能する位相差板とを重畳する方式などにより得ることができる。したがって、偏光板と輝度向上フィルムの間に配置する位相差板は、1層または2層以上の位相差板からなるものであってよい。
【0067】
なお、コレステリック液晶層についても、反射波長が相違するものの組み合わせにして2層または3層以上重畳した配置構造とすることにより、可視光領域等の広い波長範囲で円偏光を反射するものを得ることができ、それに基づいて広い波長範囲の透過円偏光を得ることができる。
【0068】
また、偏光板は、上記の偏光分離型偏光板の如く、偏光板と2層または3層以上の光学層とを積層したものからなっていてもよい。したがって、上記の反射型偏光板や半透過型偏光板と位相差板を組み合わせた反射型楕円偏光板や半透過型楕円偏光板などであってもよい。
【0069】
偏光板に前記光学層を積層した光学フィルムは、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、あらかじめ積層して光学フィルムとしたものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着剤層等の適宜な接着手段を用いうる。前記の偏光板と他の光学層の接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
【0070】
本発明による塗布膜からなる光学フィルムは、液晶表示装置、エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、プラズマディスプレイ(PD)および電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)等の画像表示装置の形成に好ましく用いることができる。
【0071】
本発明による塗布膜からなる光学フィルムは液晶表示装置等の各種装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち、液晶表示装置は一般に、液晶セルと光学フィルム、および必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に軸立てて駆動回路を組み込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による偏光板または光学フィルムを用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型などの任意なタイプのものを用いうる。
【0072】
液晶セルの片側または両側に光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による偏光板または光学フィルムは液晶セルの片側または両側に設置することができる。両側に偏光板または光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層または2層以上配置することができる。
【0073】
次いで、有機エレクトロルミネセンス装置(有機EL表示装置)について説明する。一般に、有機EL表示装置は、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)を形成している。ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、あるいはこのような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体や、またあるいはこれらの正孔注入層、発光層、および電子注入層の積層体等、種々の組み合わせを持った構成が知られている。
【0074】
有機EL表示装置は、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、有機発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物質を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。途中の再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、このことからも予想できるように、電流と発光強度は印加電圧に対して整流性に伴う強い非線形性を示す。
【0075】
有機EL表示装置においては、有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明でなくてはならず、通常、酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いている。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg−Ag、Al−Liなどの金属電極を用いている。
【0076】
このような構成の有機EL表示装置において、有機発光層は、厚さ10nm程度と極めて薄い膜で形成されている。このため、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見える。
【0077】
電圧の印加によって発光する有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機エレクトロルミネセンス発光体を含む有機EL表示装置において、透明電極の表面側に偏光板を設けるとともに、これら透明電極と偏光板との間に位相差フィルムを設けることができる。
【0078】
位相差フィルムおよび偏光板は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差フィルムを1/4波長板で構成し、かつ偏光板と位相差フィルムとの偏光方向のなす角をπ/4に調整すれば、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0079】
すなわち、この有機EL表示装置に入射する外部光は、偏光板により直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は位相差フィルムにより一般に楕円偏光となるが、特に位相差フィルムが1/4波長板でしかも偏光板と位相差フィルムとの偏光方向のなす角がπ/4のときには円偏光となる。
【0080】
この円偏光は、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、位相差フィルムで再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光板の偏光方向と直交しているので、偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0081】
PDは、パネル内に封入された希ガス、とくにネオンを主体としたガス中で放電を発生させ、その際に発生する真空紫外線により、パネルのセルに塗られたR、G、Bの蛍光体を発生させることにより画像表示が可能となる。
【0082】
【実施例】
以下に実施例および比較例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例および比較例によって限定されるものではない。
【0083】
実施例1
塗布幅1100mm、スリット幅(ダイ内部における分配部以降の並行平板間の距離)0.15mmであり、図2のように、塗布液の供給口から分配部までの間、供給口に隣接した位置に口径8mmのスタティックミキサーによる攪拌装置を設けたエクストルージョン型ダイを用いて、流量2.92[cc/回転]のポンプを用いて、幅1200mm、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる支持体上に、下記化1からなる液晶モノマー(重合性棒状ネマティック液晶)と、下記化2からなるカイラル剤を、重量比8:1となるように混合し、この混合物が30重量%となるようにトルエンに溶解した後に、このトルエン溶液に、さらに光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製:イルガキュア907)を3重量%となるように加えて調製した塗布液(粘度:5mPa・s)を、塗布速度10m/minで塗布することにより、乾燥後の塗布膜厚みが5μmの塗布膜を形成した。その後、形成した塗布膜を目視により観察し、欠陥がないことを確認した。
【化1】
【化2】
【0084】
実施例2
実施例1において、スタティックミキサーからなる攪拌装置の設置位置を、図3のようにダイの供給口の外側に隣接した位置に設けたこと以外は、実施例1と同様にして、乾燥後の塗布膜厚みが5μmの塗布膜を形成した。その後、形成した塗布膜を目視により観察し、欠陥がないことを確認した。
【0085】
実施例3
実施例1において、スタティックミキサーの代わりに、塗布液の供給口から分配部までの間、供給口に隣接した位置(図2)に、直径30mmの金網(#100メッシュ)を50枚重ねたブロック(メッシュフィルター)による攪拌装置を設けたダイを用いて、他は実施例1と同様にして、乾燥後の塗布膜厚みが5μmの塗布膜を形成した。その後、形成した塗布膜を目視により観察し、欠陥がないことを確認した。
【0086】
比較例1
実施例1において、攪拌装置を設けないダイを用いて、実施例1と同様にして、乾燥後の塗布膜厚みが5μmの塗布膜を形成した。その後、形成した塗布膜を目視により観察し、幅方向中央部にスジ状欠陥の存在を確認した。
【0087】
(乾燥後の塗布膜厚み測定方法)
光学干渉膜厚計(大塚電子(株)製:MCPD−2000)を用いて測定した。
【0088】
(粘度測定方法)
粘度測定装置(HAAKE社製:レオメーターRS−1)を用いて、せん断速度が10〜100[1/s]の範囲での粘度を測定し、その平均値を用いた。
【0089】
【表1】
【0090】
上記表1の結果から明らかなように、塗布液タンクからダイ内の分配部までの間に攪拌装置を設けることによって、塗布膜上にスジ状欠陥のない塗布膜が得られることがわかった。
【0091】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、中央部に連続的に塗布液が供給されるダイを用いた塗布装置において、塗布液タンクと供給パイプの接続部分からダイ内の分配部までの間にメッシュフィルターや、スタティックミキサー等の攪拌装置を設けることによって、スジ状欠陥のない塗布膜が得られることを見出したものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による塗布装置構成の一例
【図2】本発明によるダイへの攪拌装置設置位置の一例
【図3】本発明によるダイへの攪拌装置設置位置の一例
【図4】本発明に用いる攪拌装置の一例(スタティックミキサー)
【図5】本発明に用いる攪拌装置の一例(羽根状攪拌装置)
【図6】本発明に用いる攪拌装置の一例(メッシュフィルター)
【符号の説明】
1:ダイ
11:吐出口(スリット)
12:分配部(マニホールド)
13:供給口
14:リップ部
2:塗布液タンク
3:塗布液
4:ポンプ
5:供給パイプ
6:支持体
7:塗布膜
8:攪拌装置
Claims (9)
- エクストルージョン型ダイの中央部から連続的に塗布液が供給される塗布装置において、このダイに塗布液を供給する区間であって、塗布液タンクと供給パイプの接続部分からダイ内の分配部までの間に、少なくとも1つの攪拌装置を有することを特徴とする塗布装置。
- 攪拌装置を、その全部または一部がダイ内にある位置か、またはダイに隣接する位置に設置することを特徴とする請求項1記載の塗布装置。
- 攪拌装置がメッシュフィルターを用いたものである請求項1または2記載の塗布装置。
- 攪拌装置がスタティックミキサーを用いたものである請求項1または2記載の塗布装置。
- 塗布液の粘度が0.5mPa・s〜1000mPa・sの範囲にある塗布液を用いる請求項1〜4のいずれかに記載の塗布装置。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の塗布装置を用いた塗布方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の塗布装置または、請求項6記載の塗布方法により形成された乾燥後の厚みが0.01〜50μmである塗布膜。
- 請求項7記載の塗布膜を少なくとも1層以上有する光学フィルム。
- 請求項8記載の光学フィルムを有する画像表示装置。
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