JP2004004644A - 光拡散性シート、光学素子および画像表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】高精細なLCDに適用した場合にも、防眩性を維持しつつ、画面のギラツキ現象を抑え、かつ複屈折性を殆ど示さず、密着性、耐久性に優れた光拡散性シートを提供すること。
【解決手段】透明性フィルムの少なくとも片面に樹脂皮膜層を有し、当該樹脂皮膜層の表面に微細凹凸形状を有する光拡散層が形成されている光拡散性シートにおいて、前記透明性フィルムが、(A)側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換および/または非置換フェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有してなり、かつ当該前記微細凹凸形状表面が、以下に示す平均山間隔(Sm)、中心線平均表面粗さ(Ra)および十点平均表面粗さ(Rz)を満足することを特徴とする光拡散性シート。
Sm≦80μm、
Ra≦0.25μm、
Rz≦9Ra
【選択図】 図1
【解決手段】透明性フィルムの少なくとも片面に樹脂皮膜層を有し、当該樹脂皮膜層の表面に微細凹凸形状を有する光拡散層が形成されている光拡散性シートにおいて、前記透明性フィルムが、(A)側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換および/または非置換フェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有してなり、かつ当該前記微細凹凸形状表面が、以下に示す平均山間隔(Sm)、中心線平均表面粗さ(Ra)および十点平均表面粗さ(Rz)を満足することを特徴とする光拡散性シート。
Sm≦80μm、
Ra≦0.25μm、
Rz≦9Ra
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶ディスプレイ(LCD)、フラットパネルディスプレイ(FPD)、有機EL、PDPなどの画像表示装置において、画面の視認性の低下を抑えるために用いられている光拡散性シート、また当該光拡散性シートが設けられている光学素子に関する。さらには当該光学素子が用いられている画像表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、LCDなどの画像表示装置は、表示装置表面に蛍光燈などの室内照明、窓からの太陽光の入射、操作者の影などの写り込みにより、画像の視認性が妨げられる。そのため、ディスプレイ表面には、画像の視認性を向上するために、表面反射光を拡散し、外光の正反射を抑え、外部環境の写り込みを防ぐことができる(防眩性を有する)微細凹凸構造を形成させた光拡散層が設けられている。光拡散層の形成方法としては、構造の微細化が容易なこと、また生産性がよいことから微粒子を分散した樹脂をコーティングして樹脂皮膜層を形成する方法が主流となっている。
【0003】
しかし、高精細(たとえば、120ppi以上)なLCDの場合に、これに上記光拡散性シートを装着すると、光拡散層の表面で突出した粒子により形成される微細凹凸構造の凸形状のレンズ効果により、LCD表面にギラツキと輝度の強弱の部分が発生し視認性を低下させる問題がある。
【0004】
このような問題を解決するため、微細凹凸形状表面の平均山間隔(Sm)、中心線平均表面粗さ(Ra)等を特定範囲に調整することが開示されている(たとえば特許文献1、特許文献2等参照)。しかし、当該特定範囲になるように微細凹凸形状表面を調整しても必ずしも十分にギラツキを抑えることはできていない。
【0005】
また光拡散層が形成される透明性フィルムとしては、一般に、トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートなどの透明性に優れた材料が用いられている。特に、LCDに必要不可欠な偏光板に用いる透明性フィルムの材料としては、複屈折性の小さいトリアセチルセルロースフィルムが主流である。しかしながら、トリアセチルセルロースフィルムの表面に微細凹凸形状を形成した光拡散性シートでは、高温加湿下に長時間さらした場合に、トリアセチルセルロースフィルムの加水分解により、光拡散層の剥がれやクラックの問題がある。
【0006】
高温加湿下で加水分解しない透明性フィルムも存在する。当該透明性フィルムとしては、一般的にフィルムの機械的強度を向上させた延伸フィルムが用いられる。しかし、延伸フィルムは、延伸のために位相差が発生する。そのため、偏光子の保護フィルムとして用いた場合には、視野角特性が低下させる不具合がある。また最近では、延伸しても位相差が発現し難い、光学特性に優れた透明性フィルムとしてノルボルネン系樹脂フィルムが用いられているが、当該フィルムは光拡散として樹脂皮膜層を設けた場合に、当該樹脂皮膜層との密着性が悪く光拡散層を形成することが困難である。
【0007】
【特許文献1】
特開平9−193332号公報
【0008】
【特許文献2】
特開平9−193333号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高精細なLCDに適用した場合にも、防眩性を維持しつつ、画面のギラツキ現象を抑え、かつ複屈折性を殆ど示さず、密着性、耐久性に優れた光拡散性シートを提供することを目的とする。また当該光拡散性シートが設けられている光学素子、さらには当該光学素子を用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す特性を有する光拡散性シートにより前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0011】
すなわち本発明は、透明性フィルムの少なくとも片面に樹脂皮膜層を有し、当該樹脂皮膜層の表面に微細凹凸形状を有する光拡散層が形成されている光拡散性シートにおいて、前記透明性フィルムが、(A)側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換および/または非置換フェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有してなり、かつ当該前記微細凹凸形状表面が、以下に示す平均山間隔(Sm)、中心線平均表面粗さ(Ra)および十点平均表面粗さ(Rz)を満足することを特徴とする光拡散性シート、に関する。
Sm≦80μm、
Ra≦0.25μm、
Rz≦9Ra。
上記本発明の光拡散性シートは、微細凹凸構造表面のギラツキ現象が、主に表面凹凸構造のランダムな強弱光により生じるレンズ効果によって引き起こされると考えられることから、上記本発明は、平均山間隔(Sm)を80μm以下、中心線平均表面粗さ(Ra)を0.25μm以下となるように小さくしてギラツキを抑え、しかもRz/Raを9以下となるように十点平均表面粗さ(Rz)をできる限り小さくすることによりギラツキをさらに減少したものである。中心線平均表面粗さ(Ra)が大きくなると十点平均表面粗さ(Rz)も通常大きくなるが、本発明では中心線平均表面粗さ(Ra)に比して十点平均表面粗さ(Rz)を小さく抑えており、凸形状が同一形状を呈するように揃えられギラツキが減少している。前記値が前記所定範囲を外れる場合には、ギラツキが多くなる。
【0012】
平均山間隔(Sm)は、70μm以下、さらには40〜60μmとするのが好ましい。また、中心線平均表面粗さ(Ra)は、0.2μm以下、さらには0.1〜0.17μmとするのが好ましい。また、十点平均表面粗さ(Rz)は、1〜1.5μm程度とするのが好ましい。さらには、Rz/Raは7.5以下とするのが好ましい。
【0013】
また本発明の透明性フィルムは、前記熱可塑性樹脂(A)、(B)の混合物を主成分として含有する。当該透明性フィルムは、複屈折性を殆ど示さず、かつ高温度、高湿度の環境下においても光学的な劣化が少なく、樹脂皮膜層との密着性がよく、また耐久性に優れている。
【0014】
前記光拡散性シートにおいて、微細凹凸形状表面の60°光沢度が70%以下であることが好ましい。前記60°光沢度を70%以下とすることにより、写り込みの防止が良好であり防眩性が良い。前記60°光沢度は60%以下、さらには40〜50%とするのが好ましい。
【0015】
前記光拡散性シートにおいて、透明性フィルムが、面内屈折率が最大となる方向をX軸、X軸に垂直な方向をY軸、フィルムの厚さ方向をZ軸とし、それぞれの軸方向の屈折率をnx、ny、nz、透明性フィルムの厚さをd(nm)とした場合に、
面内位相差Re=(nx−ny)×dが、20nm以下であり、
かつ厚み方向位相差Rth={(nx+ny)/2−nz}×dが、30nm以下であることが好ましい。
【0016】
透明性フィルムの面内位相差は20nm以下、より好ましくは10nm以下であり、かつ厚み方向位相差は30nm以下、より好ましくは20nm以下である。このように位相差値を制御した透明性フィルムは、光拡散性シートを偏光板に適用した場合に、偏光が入射された場合の偏光状態への影響を少なくすることができる。透明性フィルムの厚さdは特に制限されないが、一般には10〜500μm以下、20〜300μmが好ましい。特に30〜200μmとするのが好ましい。
【0017】
前記光拡散性シートにおいて、透明性フィルムが、二軸延伸されたフィルムであることが好ましい。延伸手段、その倍率は、特に制限されないが、MD方向、TD方向のいずれの方向にも等倍延伸するのが好ましい。延伸倍率は0. 5〜3倍、さらには1〜2倍とするのが好ましい。一般的なプラスチック材料は、延伸することにより複屈折性を発現することから、偏光状態を維持する場合には無延伸の状態で用いる必要がある。しかし、無延伸フィルムでは強度が不足し、取扱いが困難である。前記熱可塑性樹脂(A)、(B)の混合物を主成分として含有する、本発明の透明性フィルムは、延伸により複屈折が発現しないため強度に優れたフィルムを得ることができる。
【0018】
また前記光拡散性シートにおいて、樹脂皮膜層が微粒子を含有しており、かつ樹脂皮膜層の表面凹凸形状が微粒子によって形成されていることが好ましい。また、樹脂皮膜層に含有される微粒子は有機系微粒子であることが好ましい。さらには、樹脂皮膜層が紫外線硬化型樹脂により形成されていることが好ましい。
【0019】
微粒子を用いることにより、表面凹凸形状を有する樹脂皮膜層を簡易かつ確実に実現でき、また上記中心線平均表面粗さ(Ra)、平均山間隔(Sm)および十点平均表面粗さ(Rz)の調整も容易である。特に、微粒子として有機系微粒子を用いた場合には、ギラツキを抑えるうえで有効である。また、紫外線硬化型樹脂は紫外線照射による硬化処理にて、簡単な加工操作にて効率よく樹脂皮膜層(光拡散層)を形成することができる。
【0020】
また本発明は、前記光拡散性シートの樹脂皮膜層の凹凸形状表面に、樹脂皮膜層の屈折率よりも低い屈折率の低屈性率層が設けられていることを特徴とする光拡散性シート、に関する。低屈折率層により反射防止機能を付与でき、ディスプレイ等の画像表面の乱反射による画面の白ボケを有効に抑えることができる。
【0021】
また本発明は、前記光拡散性シートが、光学素子の片面又は両面に設けられていることを特徴とする光学素子、に関する。さらには前記光学素子を用いたことを特徴とする画像表示装置、に関する。本発明の光拡散性シートは各種の用途に用いることができ、たとえば、光学素子に用いられ、各種の画像表示装置に適用される。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の好ましい実施形態を、図1を参照しながら説明する。図1は、光拡散層4が、透明性フィルム1上に形成されている光拡散性シートである。光拡散層4は、微粒子3が分散されている樹脂皮膜層2により形成されている。樹脂皮膜層2中に分散されている微粒子3は、光拡散層4の表面において凹凸形状を形成している。なお、図1では、樹脂皮膜層2が1層の場合を示しているが、樹脂皮膜層2と透明性フィルム1との間には、別途、微粒子を含有してもよい樹脂皮膜層を形成することにより、光拡散層を複数の樹脂皮膜層によって形成することもできる。
【0023】
透明性フィルム1としては、(A)側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換および/または非置換フェニル基およびニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有してなるもの使用する。かかる熱可塑性樹脂(A)、(B)を含有する透明保護フィルムは、たとえば、WO01/37007に記載されている。なお、透明保護フィルムは、熱可塑性樹脂(A)、(B)を主成分とする場合にも他の樹脂を含有することもできる。
【0024】
熱可塑性樹脂(A)は、側鎖に置換および/または非置換イミド基を有するものであり、主鎖は任意の熱可塑性樹脂である。主鎖は、例えば、炭素のみからなる主鎖であってもよく、または炭素以外の原子が炭素間に挿入されていてもよい。また炭素以外の原子からなっていてもよい。主鎖は好ましく炭化水素またはその置換体である。主鎖は、例えば付加重合により得られる。具体的には例えば、ポリオレフィンまたはポリビニルである。また主鎖は縮合重合により得られる。例えばエステル結合、アミド結合などで得られる。主鎖は好ましくは置換ビニルモノマーを重合させて得られるポリビニル骨格である。
【0025】
熱可塑性樹脂(A)に置換および/または非置換のイミド基を導入する方法としては、従来公知の任意の方法を採用できる。例えば、前記イミド基を有するモノマーを重合する方法、各種モノマーを重合して主鎖を形成した後、前記イミド基を導入する方法、前記イミド基を有する化合物を側鎖にグラフトさせる方法等があげられる。イミド基の置換基としては、イミド基の水素を置換し得る従来公知の置換基が使用可能である。例えば、アルキル基などがあげられる。
【0026】
熱可塑性樹脂(A)は、少なくとも1種のオレフィンから誘導される繰り返し単位と少なくとも1種の置換および/または非置換マレイミド構造を有する繰り返し単位とを含有する二元またはそれ以上の多元共重合体であるのが好ましい。上記オレフィン・マレイミド共重合体は、オレフィンとマレイミド化合物から、公知の方法で合成できる。合成法は、例えば、特開平5−59193号公報、特開平5−195801号公報、特開平6−136058号公報および特開平9−328523号公報に記載されている。
【0027】
オレフィンとしては、たとえば、イソブテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、2−メチル−1−へキセン、2−メチル−1−ヘプテン、2−メチル−1−へプテン、1−イソオクテン、2−メチル−1−オクテン、2−エチル−1−ペンテン、2−エチル−2−ブテン、2−メチル−2−ペンテン、2−メチル−2−へキセン等があげられる。これらのなかでもイソブテンが好ましい。これらのオレフィンは単独で用いてもよく、2種以上を組合せてもよい。
【0028】
マレイミド化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−i−プロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−s−ブチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、N−n−ペンチルマレイミド、N−n−ヘキシルマレイミド、N−n−へプチルマレイミド、N−n−オクチルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ステアリルマレイミド、N−シクロプロピルマレイミド、N−シクロブチルマレイミド、N−シクロペンチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−シクロヘプチルマレイミド、N−シクロオクチルマレイミド等があげられる。これらのなかでもN−メチルマレイミドが好ましい。これらマレイミド化合物は単独で用いてもよく、または2種以上を組み合わせてもよい。
【0029】
オレフィン・マレイミド共重合体において、オレフィンの繰り返し単位の含有量は特に制限されないが、熱可塑性樹脂(A)の総繰り返し単位の20〜70モル%程度、好ましくは40〜60モル%、さらに好ましくは45〜55モル%である。マレイミド構造の繰り返し単位の含有量は30〜80モル%程度、好ましくは40〜60モル%、さらに好ましくは45〜55モル%である。
【0030】
熱可塑性樹脂(A)は前記オレフィンの繰り返し単位とマレイミド構造の繰り返し単位を含有し、これらの単位のみにより形成することができる。また前記以外に、他のビニル系単量体の繰り返し単位を50モル%以下の割合で含んでいてもよい。他のビニル系単量体としてはアクリル酸メチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸系単量体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸系単量体、酢酸ビニル等のビニルエステル単量体、メチルビニルエーテル等のビニルエーテル単量体、無水マレイン酸のような酸無水物、スチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシスチレン等のスチレン系単量体等があげられる。
【0031】
熱可塑性樹脂(A)の重量平均分子量は特に制限されないが、1×103 〜5×106 程度である。前記重量平均分子量は1×104 以上が好ましく、5×105 以下が好ましい。熱可塑性樹脂(A)のガラス転移温度は80℃以上、好ましくは100℃以上、さら好ましくは130℃以上である。
【0032】
また熱可塑性樹脂(A)としては、グルタルイミド系熱可塑性樹脂を用いることができる。グルタルイミド系樹脂は、特開平2−153904号公報等に記載されている。グルタルイミド系樹脂は、グルタルイミド構造単位とアクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチル構造単位を有する。グルタルイミド系樹脂中にも前記他のビニル系単量体を導入できる。
【0033】
熱可塑性樹脂(B)は、置換および/または非置換フェニル基とニトリル基とを側鎖に有する熱可塑性樹脂である。熱可塑性樹脂(B)の主鎖は、熱可塑性樹脂(A)と同様のものを例示できる。
【0034】
熱可塑性樹脂(B)に前記フェニル基を導入する方法としては、例えば、前記フェニル基を有するモノマーを重合する方法、各種モノマーを重合して主鎖を形成した後、フェニル基を導入する方法、フェニル基を有する化合物を側鎖にグラフトする方法等があげられる。フェニル基の置換基としては、フェニル基の水素を置換し得る従来公知の置換基が使用可能である。例えば、アルキル基などがあげられる。熱可塑性樹脂(B)にニトリル基を導入する方法もフェニル基の導入法と同様の方法を採用できる。
【0035】
熱可塑性樹脂(B)は、不飽和ニトリル化合物から誘導される繰り返し単位(ニトリル単位)とスチレン系化合物から誘導される繰り返し単位(スチレン系単位)とを含む二元または三元以上の多元共重合体であるのが好ましい。たとえばアクリロニトリル・スチレン系の共重合体を好ましく用いることができる。
【0036】
不飽和ニトリル化合物としては、シアノ基および反応性二重結合を有する任意の化合物があげられる。例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα−置換不飽和ニトリル、フマロニトリル等のα,β−二置換オレフィン性不飽和結合を有するニトリル化合物等があげられる。
【0037】
スチレン系化合物としては、フェニル基および反応性二重結合を有する任意の化合物があげられる。例えば、スチレン、ビニルトルエン、メトキシスチレン、クロロスチレン等の非置換または置換スチレン系化合物、α−メチルスチレン等のα−置換スチレン系化合物があげられる。
【0038】
熱可塑性樹脂(B)中のニトリル単位の含有量は特に制限されないが、総繰り返し単位を基準として、10〜70重量%程度、好ましくは20〜60重量%、さらに好ましくは20〜50重量%である。特に20〜40重量%、20〜30重量%が好ましい。スチレン系単位は、30〜80重量%程度、好ましくは40〜80重量%、さらに好ましくは50〜80重量%である。特に60〜80重量%、70〜80重量%が好ましい。
【0039】
熱可塑性樹脂(B)は前記ニトリル単位とスチレン系単位を含有し、これらの単位のみにより形成することができる。また前記以外に他のビニル系単量体の繰り返し単位を50モル%以下の割合で含んでいてもよい。他のビニル系単量体としては熱可塑性樹脂(A)に例示したもの、オレフィンの繰り返し単位、マレイミド、置換マレイミドの繰り返し単位等があげられる。かかる熱可塑性樹脂(B)としてはAS樹脂、ABS樹脂、ASA樹脂等があげられる。
【0040】
熱可塑性樹脂(B)の重量平均分子量は特に制限されないが、1×103 〜5×106 程度である。好ましくは1×104 以上、5×105 以下である。
【0041】
熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の比率は、透明保護フィルムに求められる位相差に応じて調整される。前記配合比は、一般的には熱可塑性樹脂(A)の含有量がフィルム中の樹脂の総量のうちの50〜95重量%であることが好ましく、60〜95重量%であることがより好ましく、さらに好ましくは、65〜90重量%である。熱可塑性樹脂(B)の含有量は、フィルム中の樹脂の総量のうちの5〜50重量%であることが好ましく、より好ましくは5〜40重量%であり、さらに好ましくは、10〜35重量%である。熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)はこれらを熱溶融混練することにより混合される。
【0042】
透明性フィルム1の厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より10〜500μm程度である。特に20〜300μmが好ましく、30〜200μmがより好ましい。
【0043】
微細凹凸構造表面を有する光拡散層4は、透明性フィルム1上に形成されていれば、その形成方法は特に制限されず、適宜な方式を採用することができる。たとえば、透明性フィルム1の表面そのものを微細凹凸構造表面を有する光拡散層4とすることができる。
【0044】
また、生産性の点からは、微細凹凸構造表面を有する樹脂皮膜層3を設けて、光拡散層4とするのが好ましい。たとえば、前記樹脂皮膜層2の形成に用いたフィルムの表面を、予め、サンドブラストやエンボスロール、化学エッチング等の適宜な方式で粗面化処理してフィルム表面に微細凹凸構造を付与する方法等により、樹脂皮膜層2を形成する材料そのものの表面を微細凹凸構造に形成する方法があげられる。また、樹脂皮膜層2上に別途樹脂皮膜層を塗工付加し、当該樹脂皮膜層表面に、金型による転写方式等により微細凹凸構造を付与する方法があげられる。また、図1のように樹脂皮膜層2に微粒子3を分散含有させて微細凹凸構造を付与する方法などがあげられる。これら微細凹凸構造の形成方法は、二種以上の方法を組み合わせ、異なる状態の微細凹凸構造表面を複合させた層として形成してもよい。前記樹脂皮膜層2の形成方法のなかでも、微細凹凸構造表面の形成性等の観点より、微粒子3を分散含有する樹脂皮膜層2を設ける方法が好ましい。
【0045】
以下、微粒子3を分散含有させて樹脂皮膜層2を設ける方法について説明する。当該樹脂皮膜層2を形成する樹脂としては微粒子3の分散が可能で、樹脂皮膜層形成後の皮膜として十分な強度を持ち、透明性のあるものを特に制限なく使用できる。前記樹脂としては熱硬化型樹脂、熱可塑型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂、二液混合型樹脂などがあげられるが、これらのなかでも紫外線照射による硬化処理にて、簡単な加工操作にて効率よく光拡散層を形成することができる紫外線硬化型樹脂が好適である。
【0046】
紫外線硬化型樹脂としては、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系、アミド系、シリコーン系、エポキシ系等の各種のものがあげられ、紫外線硬化型のモノマー、オリゴマー、ポリマー等が含まれる。好ましく用いられる紫外線硬化型樹脂は、例えば紫外線重合性の官能基を有するもの、なかでも当該官能基を2個以上、特に3〜6個有するアクリル系のモノマーやオリゴマーを成分を含むものがあげられる。また、紫外線硬化型樹脂には、紫外線重合開始剤が配合されている。
【0047】
前記紫外線硬化型樹脂(樹脂皮膜層2の形成)には、レベリング剤、チクソトロピー剤、帯電防止剤等の添加剤を用いることができる。チクソトロピー剤を用いると、微細凹凸構造表面における突出粒子の形成に有利である。チクソトロピー剤としては、0.1μm以下のシリカ、雲母等があげられる。これら添加剤の含有量は、通常、紫外線硬化型樹脂100重量部に対して、1〜15重量部程度とするのが好適である。
【0048】
微粒子3としては、各種金属酸化物、ガラス、プラスティックなどの透明性を有するものを特に制限なく使用することができる。例えばシリカやアルミナ、チタニアやジルコニア、酸化カルシウムや酸化錫、酸化インジウムや酸化カドミウム、酸化アンチモン等の導電性のこともある無機系微粒子、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、アクリル−スチレン共重合体、ベンゾグアナミン、メラミン、ポリカーボネート等の各種ポリマーからなる架橋又は未架橋の有機系微粒子やシリコーン系微粒子などがあげられる。これら微粒子3は、1種または2種以上を適宜に選択して用いることができるが、有機系微粒子が好ましい。微粒子の平均粒子径は1〜10μm、好ましくは2〜5μmである。
【0049】
微粒子3を含有する樹脂皮膜層2の形成方法は特に制限されず、適宜な方式を採用することができる。たとえば、前記透明性フィルム1上に、微粒子3を含有する樹脂(たとえば、紫外線硬化型樹脂:塗工液)を塗工し、乾燥後、硬化処理して表面に凹凸形状を呈するような樹脂皮膜層2により形成することにより行う。なお、塗工液は、ファンテン、ダイコーター、キャスティング、スピンコート、ファンテンメタリング、グラビア等の適宜な方式で塗工される。
【0050】
形成した光拡散層4の表面で平均山間隔(Sm)、中心線平均表面粗さ(Ra)および十点平均表面粗さ(Rz)を満足させるには、前記塗工液に含まれる微粒子3の平均粒子径、その割合や樹脂皮膜層2の厚さを適宜に調整する。
【0051】
前記塗工液に含まれる微粒子3の割合は特に制限されないが、樹脂100重量部に対して、6〜20重量部とするのがギラツキを抑えるうえで好ましい。また、樹脂皮膜層2の厚さは特に制限されないが、3〜6μm程度、特に4〜5μmとするのが好ましい。
【0052】
前記光拡散層4の凹凸形状表面には、反射防止機能を有する低屈折率層を設けることができる。低屈折率層の材料は光拡散層4(樹脂皮膜層2を設ける場合には樹脂皮膜層2)よりも屈折率の低いものであれば特に制限されない。低屈折率層の形成法は、特に制限されないが、湿式塗工法が、真空蒸着法等に比べてて簡易な方法であり好ましい。
【0053】
なお、低屈折率層の形成にあたっては、樹脂皮膜層2の表面に、親水化処理を施すことができる。親水化処理手段は、特に制限されないが、たとえば、コロナ放電処理、スパッタ処理、低圧UV照射、プラズマ処理などの表面処理法を好適に採用できる。またセルロース系材料、ポリエステル系材料の薄層塗布処理のどの密着性を向上させる処理を施すことができる。
【0054】
低屈折率層を形成する材料としては、例えば、紫外線硬化型アクリル樹脂等の樹脂系材料、樹脂中にコロイダルシリカ等の無機微粒子を分散させたハイブリッド系材料、テトラエトキシシラン、チタンテトラエトキシド等の金属アルコキシドを用いたゾル−ゲル系材料等があげられる。また、それぞれの材料は、表面の防汚染性付与するためフッ素基含有化合物を用いることができる。耐擦傷性の面からは、無機成分含有量が多い低屈折率層材料が優れる傾向にあり、特にゾル−ゲル系材料が好ましい。
【0055】
前記フッ素基を含有するゾル−ゲル系材料としては、パーフルオロアルキルアルコキシシランを例示できる。パーフルオロアルキルアルコキシシランとしては、たとえば、一般式(1):CF3 (CF2 )n CH2 CH2 Si(OR)3 (式中、Rは、炭素数1〜5個のアルキル基を示し、nは0〜12の整数を示す)で表される化合物があげられる。具体的には、たとえば、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシランなどがあげられる。これらのなかでも前記nが2〜6の化合物が好ましい。低屈折率層の形成にはシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、フッ化マグネシウム、セリア等をアルコール溶媒に分散したゾルなどを添加しても良い。その他、金属塩、金属化合物などの添加剤を適宜に配合することができる。
【0056】
低屈折率層の厚さは特に制限されないが、0.05〜0.3μm程度、特に0.1〜0.3μmとするのが好ましい。
【0057】
前記光拡散性シートの透明性フィルム1には、光学素子を接着することができる。光学素子としては、偏光子があげられる。偏光子は、特に制限されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、たとえば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等があげられる。これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これら偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に、5〜80μm程度である。
【0058】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、たとえば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸してもよし、また延伸してからヨウ素で染色してもよい。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
【0059】
前記偏光子は、通常、片側または両側に透明保護フィルムが設けられ偏光板として用いられる。透明保護フィルムは透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れるものが好ましい。透明保護フィルムとしては前記例示の透明性フィルムと同様の材料のものが好適に用いられる。また、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマーなどがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、または前記ポリマーのブレンド物なども前記透明保護フィルムを形成するポリマーの例としてあげられる。透明保護フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型、紫外線硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。前記透明保護フィルムは、表裏で同じポリマー材料からなる透明保護フィルムを用いてもよく、異なるポリマー材料等からなる透明保護フィルムを用いてもよい。透明性や機械的強度、熱安定性や水分遮断性などに優れるものが好ましく用いられる。また透明保護フィルムは、位相差等の光学的異方性が少ないほど好ましい場合が多い。前記光拡散性シートを、偏光子 (偏光板)の片側または両側に設ける場合、光拡散性シートの透明性フィルムは、偏光子の透明保護フィルムを兼ねることができる。透明保護フィルムの厚さは特に制限されないが10〜300μm程度が一般的である。
【0060】
光拡散性シートの偏光板への積層は、光拡散性シートに透明保護フィルム、偏光子、透明保護フィルムを順次に積層してもよいし、光拡散性シートに偏光子、透明保護フィルムを順次に積層したものでもよい。
【0061】
その他、透明保護フィルムの偏光子を接着させない面は、ハードコート層やスティッキング防止や目的とした処理を施したものであってもよい。ハードコート処理は偏光板表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を透明保護フィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。また、スティッキング防止処理は隣接層との密着防止を目的に施される。なお、前記ハードコート層、スティッキング防止層等は、透明保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途光学層として透明保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
【0062】
また偏光板の層間へ、例えばハードコート層、プライマー層、接着剤層、粘着剤層、帯電防止層、導電層、ガスバリヤー層、水蒸気遮断層、水分遮断層等を挿入、または偏光板表面へ積層しても良い。また。偏光板の各層を作成する段階では、例えば、導電性粒子あるいは帯電防止剤、各種微粒子、可塑剤等を各層の形成材料に添加、混合等することにより改良を必要に応じておこなっても良い。
【0063】
光学素子としては、実用に際して、前記偏光板に、他の光学素子(光学層)を積層した光学フィルムを用いることができる。その光学層については特に限定はないが、例えば反射板や半透過板、位相差板(1/2 や1/4 等の波長板を含む)、視角補償フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層を1層または2層以上用いることができる。特に、偏光板に更に反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板または半透過型偏光板、偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板、偏光板に更に視角補償フィルムが積層されてなる広視野角偏光板、あるいは偏光板に更に輝度向上フィルムが積層されてなる偏光板が好ましい。楕円偏光板、光学補償付き偏光板等では偏光板側に光拡散性シートが付与される。
【0064】
さらに必要に応じて、耐擦傷性、耐久性、耐候性、耐湿熱性、耐熱性、耐湿性、透湿性、帯電防止性、導電性、層間の密着性向上、機械的強度向上等の各種特性、機能等を付与するための処理、または機能層の挿入、積層等を行うこともできる。
【0065】
反射型偏光板は、偏光板に反射層を設けたもので、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置などを形成するためのものであり、バックライト等の光源の内蔵を省略できて液晶表示装置の薄型化を図りやすいなどの利点を有する。反射型偏光板の形成は、必要に応じ、前記透明保護フィルム等を介して偏光板の片面に金属等からなる反射層を付設する方式などの適宜な方式にて行うことができる。
【0066】
反射型偏光板の具体例としては、必要に応じマット処理した透明保護フィルムの片面に、アルミニウム等の反射性金属からなる箔や蒸着膜を付設して反射層を形成したものなどがあげられる。
【0067】
反射板は前記偏光板の透明保護フィルムに直接付与する方式に代えて、その透明性フィルムに準じた適宜なフィルムに反射層を設けてなる反射シートなどとして用いることもできる。なお反射層は、通常、金属からなるので、その反射面が透明保護フィルムや偏光板等で被覆された状態の使用形態が、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続の点や、保護層の別途付設の回避の点などより好ましい。
【0068】
なお、半透過型偏光板は、上記において反射層で光を反射し、かつ透過するハーフミラー等の半透過型の反射層とすることにより得ることができる。半透過型偏光板は、通常液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置などを比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射させて画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内蔵光源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置などを形成できる。すなわち、半透過型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、比較的暗い雰囲気下においても内蔵光源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置などの形成に有用である。
【0069】
偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板について説明する。直線偏光を楕円偏光または円偏光に変えたり、楕円偏光または円偏光を直線偏光に変えたり、あるいは直線偏光の偏光方向を変える場合に、位相差板などが用いられる。特に、直線偏光を円偏光に変えたり、円偏光を直線偏光に変える位相差板としては、いわゆる1 /4 波長板(λ/4 板とも言う)が用いられる。1 /2 波長板(λ/2 板とも言う)は、通常、直線偏光の偏光方向を変える場合に用いられる。
【0070】
楕円偏光板はスーパーツイストネマチック(STN)型液晶表示装置の液晶層の複屈折により生じた着色(青又は黄)を補償(防止)して、前記着色のない白黒表示する場合などに有効に用いられる。更に、三次元の屈折率を制御したものは、液晶表示装置の画面を斜め方向から見た際に生じる着色も補償(防止)することができて好ましい。円偏光板は、例えば画像がカラー表示になる反射型液晶表示装置の画像の色調を整える場合などに有効に用いられ、また、反射防止の機能も有する。上記した位相差板の具体例としては、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレンやその他のポリオレフィン、ポリアリレート、ポリアミドの如き適宜なポリマーからなるフィルムを延伸処理してなる複屈折性フィルムや液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどがあげられる。位相差板は、例えば各種波長板や液晶層の複屈折による着色や視角等の補償を目的としたものなどの使用目的に応じた適宜な位相差を有するものであってよく、2種以上の位相差板を積層して位相差等の光学特性を制御したものなどであってもよい。
【0071】
また上記の楕円偏光板や反射型楕円偏光板は、偏光板又は反射型偏光板と位相差板を適宜な組合せで積層したものである。かかる楕円偏光板等は、(反射型)偏光板と位相差板の組合せとなるようにそれらを液晶表示装置の製造過程で順次別個に積層することによっても形成しうるが、前記の如く予め楕円偏光板等の光学フィルムとしたものは、品質の安定性や積層作業性等に優れて液晶表示装置などの製造効率を向上させうる利点がある。
【0072】
視角補償フィルムは、液晶表示装置の画面を、画面に垂直でなくやや斜めの方向から見た場合でも、画像が比較的鮮明にみえるように視野角を広げるためのフィルムである。このような視角補償位相差板としては、例えば位相差フィルム、液晶ポリマー等の配向フィルムや透明基材上に液晶ポリマー等の配向層を支持したものなどからなる。通常の位相差板は、その面方向に一軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムが用いられるのに対し、視角補償フィルムとして用いられる位相差板には、面方向に二軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムとか、面方向に一軸に延伸され厚さ方向にも延伸された厚さ方向の屈折率を制御した複屈折を有するポリマーや傾斜配向フィルムのような二方向延伸フィルムなどが用いられる。傾斜配向フィルムとしては、例えばポリマーフィルムに熱収縮フィルムを接着して加熱によるその収縮力の作用下にポリマーフィルムを延伸処理又は/及び収縮処理したものや、液晶ポリマーを斜め配向させたものなどが挙げられる。位相差板の素材原料ポリマーは、先の位相差板で説明したポリマーと同様のものが用いられ、液晶セルによる位相差に基づく視認角の変化による着色等の防止や良視認の視野角の拡大などを目的とした適宜なものを用いうる。
【0073】
また良視認の広い視野角を達成する点などより、液晶ポリマーの配向層、特にディスコティック液晶ポリマーの傾斜配向層からなる光学的異方性層をトリアセチルセルロースフィルムにて支持した光学補償位相差板が好ましく用いうる。
【0074】
偏光板と輝度向上フィルムを貼り合わせた偏光板は、通常液晶セルの裏側サイドに設けられて使用される。輝度向上フィルムは、液晶表示装置などのバックライトや裏側からの反射などにより自然光が入射すると所定偏光軸の直線偏光または所定方向の円偏光を反射し、他の光は透過する特性を示すもので、輝度向上フィルムを偏光板と積層した偏光板は、バックライト等の光源からの光を入射させて所定偏光状態の透過光を得ると共に、前記所定偏光状態以外の光は透過せずに反射される。この輝度向上フィルム面で反射した光を更にその後ろ側に設けられた反射層等を介し反転させて輝度向上フィルムに再入射させ、その一部又は全部を所定偏光状態の光として透過させて輝度向上フィルムを透過する光の増量を図ると共に、偏光子に吸収させにくい偏光を供給して液晶表示画像表示等に利用しうる光量の増大を図ることにより輝度を向上させうるものである。すなわち、輝度向上フィルムを使用せずに、バックライトなどで液晶セルの裏側から偏光子を通して光を入射した場合には、偏光子の偏光軸に一致していない偏光方向を有する光は、ほとんど偏光子に吸収されてしまい、偏光子を透過してこない。すなわち、用いた偏光子の特性によっても異なるが、およそ50%の光が偏光子に吸収されてしまい、その分、液晶画像表示等に利用しうる光量が減少し、画像が暗くなる。輝度向上フィルムは、偏光子に吸収されるような偏光方向を有する光を偏光子に入射させずに輝度向上フィルムで一旦反射させ、更にその後ろ側に設けられた反射層等を介して反転させて輝度向上フィルムに再入射させることを繰り返し、この両者間で反射、反転している光の偏光方向が偏光子を通過し得るような偏光方向になった偏光のみを、輝度向上フィルムは透過させて偏光子に供給するので、バックライトなどの光を効率的に液晶表示装置の画像の表示に使用でき、画面を明るくすることができる。
【0075】
輝度向上フィルムと上記反射層等の間に拡散板を設けることもできる。輝度向上フィルムによって反射した偏光状態の光は上記反射層等に向かうが、設置された拡散板は通過する光を均一に拡散すると同時に偏光状態を解消し、非偏光状態となる。すなわち、拡散板は偏光を元の自然光状態にもどす。この非偏光状態、すなわち自然光状態の光が反射層等に向かい、反射層等を介して反射し、再び拡散板を通過して輝度向上フィルムに再入射することを繰り返す。このように輝度向上フィルムと上記反射層等の間に、偏光を元の自然光状態にもどす拡散板を設けることにより表示画面の明るさを維持しつつ、同時に表示画面の明るさのむらを少なくし、均一で明るい画面を提供することができる。かかる拡散板を設けることにより、初回の入射光は反射の繰り返し回数が程よく増加し、拡散板の拡散機能と相俟って均一の明るい表示画面を提供することができたものと考えられる。
【0076】
前記の輝度向上フィルムとしては、例えば誘電体の多層薄膜や屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体の如き、所定偏光軸の直線偏光を透過して他の光は反射する特性を示すもの、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持したものの如き、左回り又は右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すものなどの適宜なものを用いうる。
【0077】
従って、前記した所定偏光軸の直線偏光を透過させるタイプの輝度向上フィルムでは、その透過光をそのまま偏光板に偏光軸を揃えて入射させることにより、偏光板による吸収ロスを抑制しつつ効率よく透過させることができる。一方、コレステリック液晶層の如く円偏光を投下するタイプの輝度向上フィルムでは、そのまま偏光子に入射させることもできるが、吸収ロスを抑制する点よりその円偏光を位相差板を介し直線偏光化して偏光板に入射させることが好ましい。なお、その位相差板として1/4波長板を用いることにより、円偏光を直線偏光に変換することができる。
【0078】
可視光域等の広い波長範囲で1/4波長板として機能する位相差板は、例えば波長550nmの淡色光に対して1/4波長板として機能する位相差層と他の位相差特性を示す位相差層、例えば1/2波長板として機能する位相差層とを重畳する方式などにより得ることができる。従って、偏光板と輝度向上フィルムの間に配置する位相差板は、1層又は2層以上の位相差層からなるものであってよい。
【0079】
なお、コレステリック液晶層についても、反射波長が相違するものの組み合わせにして2層又は3層以上重畳した配置構造とすることにより、可視光領域等の広い波長範囲で円偏光を反射するものを得ることができ、それに基づいて広い波長範囲の透過円偏光を得ることができる。
【0080】
また、偏光板は、上記の偏光分離型偏光板の如く、偏光板と2層又は3層以上の光学層とを積層したものからなっていてもよい。従って、上記の反射型偏光板や半透過型偏光板と位相差板を組み合わせた反射型楕円偏光板や半透過型楕円偏光板などであってもよい。
【0081】
前記光学素子への光拡散性シートの積層、さらには偏光板への各種光学層の積層は、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても行うことができるが、これらを予め積層したのものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着層等の適宜な接着手段を用いうる。前記の偏光板やその他の光学フィルムの接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
【0082】
前述した偏光板や、偏光板を少なくとも1層積層されている光学フィルム等の光学素子の少なくとも片面には、前記光拡散性シートが設けられているが、光拡散性シートが設けられていない面には、液晶セル等の他部材と接着するための粘着層を設けることもできる。粘着層を形成する粘着剤は特に制限されないが、例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、アクリル系粘着剤の如く光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく用いうる。
【0083】
また上記に加えて、吸湿による発泡現象や剥がれ現象の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる液晶表示装置の形成性などの点より、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着層が好ましい。
【0084】
粘着層は、例えば天然物や合成物の樹脂類、特に、粘着性付与樹脂や、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤や顔料、着色剤、酸化防止剤などの粘着層に添加されることの添加剤を含有していてもよい。また微粒子を含有して光拡散性を示す粘着層などであってもよい。
【0085】
偏光板、光学フィルム等の光学素子への粘着層の付設は、適宜な方式で行いうる。その例としては、例えばトルエンや酢酸エチル等の適宜な溶剤の単独物又は混合物からなる溶媒にベースポリマーまたはその組成物を溶解又は分散させた10〜40重量%程度の粘着剤溶液を調製し、それを流延方式や塗工方式等の適宜な展開方式で光学素子上に直接付設する方式、あるいは前記に準じセパレータ上に粘着層を形成してそれを光学素子上に移着する方式などがあげられる。粘着層は、各層で異なる組成又は種類等のものの重畳層として設けることもできる。粘着層の厚さは、使用目的や接着力などに応じて適宜に決定でき、一般には1〜500μmであり、5〜200μmが好ましく、特に10〜100μmが好ましい。
【0086】
粘着層の露出面に対しては、実用に供するまでの間、その汚染防止等を目的にセパレータが仮着されてカバーされる。これにより、通例の取扱状態で粘着層に接触することを防止できる。セパレータとしては、上記厚さ条件を除き、例えばプラスチックフィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体等の適宜な薄葉体を、必要に応じシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系や硫化モリブデン等の適宜な剥離剤でコート処理したものなどの、従来に準じた適宜なものを用いうる。
【0087】
なお本発明において、上記した光学素子を形成する偏光子や透明保護フィルムや光学層等、また粘着層などの各層には、例えばサリチル酸エステル系化合物やべンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などの方式により紫外線吸収能をもたせたものなどであってもよい。
【0088】
本発明の光拡散シートを設けた光学素子は液晶表示装置等の各種装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと光学素子、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による光学素子を用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型などの任意なタイプのものを用いうる。
【0089】
液晶セルの片側又は両側に前記光学素子を配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による光学素子は液晶セルの片側又は両側に設置することができる。両側に光学素子を設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【0090】
次いで有機エレクトロルミネセンス装置(有機EL表示装置)について説明する。一般に有機EL表示装置は、透明性フィルム上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)を形成している。ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、あるいはこのような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体や、またあるいはこれらの正孔注入層、発光層、および電子注入層の積層体等、種々の組み合わせをもった構成が知られている。
【0091】
有機EL表示装置は、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、有機発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物資を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。途中の再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、このことからも予想できるように、電流と発光強度は印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
【0092】
有機EL表示装置においては、有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明でなくてはならず、通常酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いている。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg−Ag、Al−Liなどの金属電極を用いている。
【0093】
このような構成の有機EL表示装置において、有機発光層は、厚さ10nm程度ときわめて薄い膜で形成されている。このため、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明性フィルムの表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明性フィルムの表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見える。
【0094】
電圧の印加によって発光する有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機エレクトロルミネセンス発光体を含む有機EL表示装置において、透明電極の表面側に偏光板を設けるとともに、これら透明電極と偏光板との間に位相差板を設けることができる。
【0095】
位相差板および偏光板は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差板を1 /4 波長板で構成し、かつ偏光板と位相差板との偏光方向のなす角をπ/4 に調整すれば、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0096】
すなわち、この有機EL表示装置に入射する外部光は、偏光板により直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は位相差板により一般に楕円偏光となるが、とくに位相差板が1 /4 波長板でしかも偏光板と位相差板との偏光方向のなす角がπ/4 のときには円偏光となる。
【0097】
この円偏光は、透明性フィルム、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、透明性フィルムを透過して、位相差板に再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光板の偏光方向と直交しているので、偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0098】
【実施例】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何等限定されるものではない。
【0099】
製造例1
イソブテンおよびN−メチルマレイミドからなる交互共重合体(N−メチルマレイミド含有量50モル%)75重量部と、アクリロニトリルの含有量が28重量%であるアクリロニトリル−スチレン共重合体25重量部とを塩化メチレンに溶解し、固形分濃度15重量%の溶液を得た。この溶液をガラス板状に敷いポリエチレンテレフタレートフィルム上に流延し、室温で60分間放置した後、当該フィルムから剥がした。100℃で10分間乾燥後に、140℃で10分間、さらに160℃で30分間乾燥して、厚さ50μmの透明性フィルムを得た。透明性フィルムの面内位相差Re=4nm、厚み方向位相差Rth=4nm、であった。
【0100】
なお、面内位相差Re、厚み方向位相差Rthは、屈折率nx、ny、nzを自動複屈折測定装置(王子計測機器株式会社製,自動複屈折計KOBRA21ADH)により計測した結果から算出した。
【0101】
製造例2
N−メチルグルタルイミドとメチルメタクリレートからなるグルタルイミド共重合体(N−メチルグルタルイミド含有量75重量%、酸含量0.01ミリ当量/g以下、ガラス転移温度147℃)65重量部と、アクリロニトリル及びスチレンの含有量がそれぞれ28重量%、72重量%であるアクリロニトリル−スチレン共重合体35重量部とを用い、溶融混練して得た樹脂組成物を、Tダイ溶融押出機に供給して、厚さ135μmのフィルムを得た。このフィルムをMD方向に160℃で1.7倍延伸した後に、TD方向に160℃で1.8倍延伸した。得られた二軸延伸透明性フィルムの厚みは55μm、面内位相差Re=1nm、厚み方向位相差Rth=3nmであった。
【0102】
実施例1
平均粒子径3.5μmのポリスチレンビーズ12重量部、紫外線硬化型樹脂(ウレタンアクリレート系モノマー)100重量部、ベンゾフェノン系光重合開始剤5重量部及びその固形分が40重量%となるように計量された溶剤(トルエン)とを混合した溶液を、製造例1で得られた透明性フィルム上に塗布し、120℃で5分間乾燥した後、紫外線照射により硬化処理して、厚さ約4μmの微細凹凸構造表面の樹脂皮膜層を有する光拡散性シートを作製した。
【0103】
実施例2
製造例1と同様にして厚さ100μmの透明性フィルムを作製した。この透明性フィルムをMD方向に160℃で1.5倍延伸した後に、TD方向に160℃で1.5倍延伸することにより厚さ45μmの二軸延伸透明性フィルムを得た。二軸延伸透明性フィルムの面内位相差Re=4nm、厚み方向位相差Rth=12nm、であった。実施例1において、透明性フィルムとして、前記二軸延伸透明性フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして光拡散性シートを作製した。
【0104】
実施例3
実施例1において、ポリスチレンビーズの使用量を14重量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして光拡散性シートを作製した。
【0105】
実施例4
実施例1において、樹脂皮膜層の厚さを3μmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして光拡散性シートを作製した。
【0106】
実施例5
実施例2において、樹脂皮膜層の凹凸形状表面に、さらに樹脂皮膜層の屈折率(1.51)よりも低い低屈折率層(材料:フッ素変性ポリシロキサン,屈折率:1.39)を0.1μm設けたこと以外は実施例2と同様にして光拡散性シートを作製した。
【0107】
実施例6
実施例1において、透明性フィルムとして、製造例2で得られた前記二軸延伸透明性フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして光拡散性シートを作製した。
【0108】
比較例1
実施例1において、透明性フィルムとして、厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(面内位相差Re=2nm、厚み方向位相差Rth=40nm)を用いたこと以外は実施例1と同様にして光拡散性シートを作製した。
【0109】
比較例2
実施例1において、透明性フィルムとして、厚さ40μmのノルボルネン系フィルム(面内位相差Re=4nm、厚み方向位相差Rth=20nm)を用いたこと以外は実施例1と同様にして光拡散性シートを作製した。
【0110】
比較例3
実施例1において、透明性フィルムとして、厚さ50μmの二軸延伸したポリカーボネートフィルム(面内位相差Re=10nm、厚み方向位相差Rth=120nm)を用いたこと以外は実施例1と同様にして光拡散性シートを作製した。
【0111】
比較例4
実施例1において、平均粒子径3.5μmのポリスチレンビーズ12重量部を平均粒子径2〜3μmのシリカビーズ12重量部に変えた以外は実施例1と同様にして光拡散性シートを作製した。
【0112】
比較例5
実施例1において、ポリスチレンビーズの使用量を10重量部に変え、樹脂皮膜層の厚さを2.5μmに変更した以外は、実施例1と同様にして光拡散性シートを作製した。
【0113】
上記実施例、比較例で得られた光拡散性シートの表面凹凸構造の形状を、JIS B0601に準じ、触針式表面粗さ測定機として株式会社東京精密製のサーフコム470Aを用いて測定した。なお、測定はダイヤモンドからなる先端部を頂角55度の円錐形とした直径1mmの測定針を介して凹凸面上を一定方向に3mmの長さで走査し、その場合の測定針の上下方向の移動変化を測定することにより行い、それを記録した表面粗さ曲線から、平均山間隔(Sm)、中心線平均表面粗さ(Ra)および十点平均表面粗さ(Rz)を算出した。また、60°光沢度を、JIS K7105−1981に準じて、スガ試験機(株)製(デジタル変角光沢計UGV−5DP)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0114】
【表1】
【0115】
実施例および比較例で得られた光拡散性シートに下記評価を行った結果を表2に示す。
【0116】
(ギラツキ)
光拡散性シートに偏光板(185μm)を接着したものを、ガラス基板に接着し、ライトテーブル上に固定されたマスクパターン(開口率25%)上でギラツキ度合い(ギラツキ)を目視により以下の基準で評価した。なお、蛍光灯下における写り込み(防眩性)はいずれも良好であった。
◎:ギラツキが全くない。
○:ギラツキがほとんどない。
△:ギラツキが小さく実用上問題はない。
×:ギラツキがある。
【0117】
(密着性)
光拡散性シートをガラス板に粘着剤で貼り合せ、JIS K5400の碁盤テープ法で光拡散層(樹脂被膜層)と透明性フィルムの初期の密着性を以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
◎:全く剥がれない。
△:剥がれ面積は全正方形面積の65%未満。ただし、全く剥がれない場合を除く。
×:剥がれ面積は全正方形面積の65%未満以上。
【0118】
(耐久性)
光拡散性シートをガラス板に粘着剤で貼り合せ、80℃、90%RHの恒温恒湿器に投入した。その後、570時間後、1000時間後の外観、密着性を以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
◎:570時間、1000時間後にクラック、剥がれなし(全面)。
×:570時間後に全面にクラック、剥がれあり。
【0119】
【表2】
表2に示す通り、本発明の光拡散性シートはギラツキ、密着性、耐久性に優れていることが認められる。
【0120】
実施例7
実施例1で作製した光拡散性シートをポリウレタン系接着剤を用いてポリビニルアルコール系偏光子の片面に接着するとともに、製造例1で作製した透明性フィルムをその反対面に同様に積層して光拡散機能付き偏光板を得た。
【0121】
実施例8
実施例2で作製した光拡散性シートをポリウレタン系接着剤を用いてポリビニルアルコール系偏光子の片面に接着するとともに、実施例2で作製した二軸延伸透明性フィルムをその反対面に同様に積層して光拡散機能付き偏光板を得た。
【0122】
実施例9
実施例6で作製した光拡散性シートをポリウレタン系接着剤を用いてポリビニルアルコール系偏光子の片面に接着するとともに、製造例2で作製した二軸延伸透明性フィルムをその反対面に同様に積層して光拡散機能付き偏光板を得た。
【0123】
比較例6
比較例1で作製した光拡散性シートをポリウレタン系接着剤を用いてポリビニルアルコール系偏光子の片面に接着するとともに、トリアセチルセルロースフィルムをその反対面に同様に積層して光拡散機能付き偏光板を得た。
【0124】
比較例7
比較例3で作製した光拡散性シートをポリウレタン系接着剤を用いてポリビニルアルコール系偏光子の片面に接着するとともに、ポリカーボネートフィルムをその反対面に同様に積層して光拡散機能付き偏光板を得た。
【0125】
実施例7〜9および比較例6、7で作製した光拡散機能付き偏光板を、それぞれの偏光軸が直交状態になるように張り合わせ、偏光軸方向から方位角45°、極角70°における透過率(%)を測定した。透過率は、日立製作所製の分光光度計U−4100を用い、550nmの値を測定した。結果を表3に示す。
【0126】
【表3】
表3に示す通り、本発明の光拡散性シートからは、偏光特性に優れた光拡散機能付きの偏光板が得られることが認められる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光拡散性シートの断面図の一例である。
【符号の説明】
1:透明性フィルム
2:樹脂皮膜層
3:微粒子
4:光拡散層
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶ディスプレイ(LCD)、フラットパネルディスプレイ(FPD)、有機EL、PDPなどの画像表示装置において、画面の視認性の低下を抑えるために用いられている光拡散性シート、また当該光拡散性シートが設けられている光学素子に関する。さらには当該光学素子が用いられている画像表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、LCDなどの画像表示装置は、表示装置表面に蛍光燈などの室内照明、窓からの太陽光の入射、操作者の影などの写り込みにより、画像の視認性が妨げられる。そのため、ディスプレイ表面には、画像の視認性を向上するために、表面反射光を拡散し、外光の正反射を抑え、外部環境の写り込みを防ぐことができる(防眩性を有する)微細凹凸構造を形成させた光拡散層が設けられている。光拡散層の形成方法としては、構造の微細化が容易なこと、また生産性がよいことから微粒子を分散した樹脂をコーティングして樹脂皮膜層を形成する方法が主流となっている。
【0003】
しかし、高精細(たとえば、120ppi以上)なLCDの場合に、これに上記光拡散性シートを装着すると、光拡散層の表面で突出した粒子により形成される微細凹凸構造の凸形状のレンズ効果により、LCD表面にギラツキと輝度の強弱の部分が発生し視認性を低下させる問題がある。
【0004】
このような問題を解決するため、微細凹凸形状表面の平均山間隔(Sm)、中心線平均表面粗さ(Ra)等を特定範囲に調整することが開示されている(たとえば特許文献1、特許文献2等参照)。しかし、当該特定範囲になるように微細凹凸形状表面を調整しても必ずしも十分にギラツキを抑えることはできていない。
【0005】
また光拡散層が形成される透明性フィルムとしては、一般に、トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートなどの透明性に優れた材料が用いられている。特に、LCDに必要不可欠な偏光板に用いる透明性フィルムの材料としては、複屈折性の小さいトリアセチルセルロースフィルムが主流である。しかしながら、トリアセチルセルロースフィルムの表面に微細凹凸形状を形成した光拡散性シートでは、高温加湿下に長時間さらした場合に、トリアセチルセルロースフィルムの加水分解により、光拡散層の剥がれやクラックの問題がある。
【0006】
高温加湿下で加水分解しない透明性フィルムも存在する。当該透明性フィルムとしては、一般的にフィルムの機械的強度を向上させた延伸フィルムが用いられる。しかし、延伸フィルムは、延伸のために位相差が発生する。そのため、偏光子の保護フィルムとして用いた場合には、視野角特性が低下させる不具合がある。また最近では、延伸しても位相差が発現し難い、光学特性に優れた透明性フィルムとしてノルボルネン系樹脂フィルムが用いられているが、当該フィルムは光拡散として樹脂皮膜層を設けた場合に、当該樹脂皮膜層との密着性が悪く光拡散層を形成することが困難である。
【0007】
【特許文献1】
特開平9−193332号公報
【0008】
【特許文献2】
特開平9−193333号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高精細なLCDに適用した場合にも、防眩性を維持しつつ、画面のギラツキ現象を抑え、かつ複屈折性を殆ど示さず、密着性、耐久性に優れた光拡散性シートを提供することを目的とする。また当該光拡散性シートが設けられている光学素子、さらには当該光学素子を用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す特性を有する光拡散性シートにより前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0011】
すなわち本発明は、透明性フィルムの少なくとも片面に樹脂皮膜層を有し、当該樹脂皮膜層の表面に微細凹凸形状を有する光拡散層が形成されている光拡散性シートにおいて、前記透明性フィルムが、(A)側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換および/または非置換フェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有してなり、かつ当該前記微細凹凸形状表面が、以下に示す平均山間隔(Sm)、中心線平均表面粗さ(Ra)および十点平均表面粗さ(Rz)を満足することを特徴とする光拡散性シート、に関する。
Sm≦80μm、
Ra≦0.25μm、
Rz≦9Ra。
上記本発明の光拡散性シートは、微細凹凸構造表面のギラツキ現象が、主に表面凹凸構造のランダムな強弱光により生じるレンズ効果によって引き起こされると考えられることから、上記本発明は、平均山間隔(Sm)を80μm以下、中心線平均表面粗さ(Ra)を0.25μm以下となるように小さくしてギラツキを抑え、しかもRz/Raを9以下となるように十点平均表面粗さ(Rz)をできる限り小さくすることによりギラツキをさらに減少したものである。中心線平均表面粗さ(Ra)が大きくなると十点平均表面粗さ(Rz)も通常大きくなるが、本発明では中心線平均表面粗さ(Ra)に比して十点平均表面粗さ(Rz)を小さく抑えており、凸形状が同一形状を呈するように揃えられギラツキが減少している。前記値が前記所定範囲を外れる場合には、ギラツキが多くなる。
【0012】
平均山間隔(Sm)は、70μm以下、さらには40〜60μmとするのが好ましい。また、中心線平均表面粗さ(Ra)は、0.2μm以下、さらには0.1〜0.17μmとするのが好ましい。また、十点平均表面粗さ(Rz)は、1〜1.5μm程度とするのが好ましい。さらには、Rz/Raは7.5以下とするのが好ましい。
【0013】
また本発明の透明性フィルムは、前記熱可塑性樹脂(A)、(B)の混合物を主成分として含有する。当該透明性フィルムは、複屈折性を殆ど示さず、かつ高温度、高湿度の環境下においても光学的な劣化が少なく、樹脂皮膜層との密着性がよく、また耐久性に優れている。
【0014】
前記光拡散性シートにおいて、微細凹凸形状表面の60°光沢度が70%以下であることが好ましい。前記60°光沢度を70%以下とすることにより、写り込みの防止が良好であり防眩性が良い。前記60°光沢度は60%以下、さらには40〜50%とするのが好ましい。
【0015】
前記光拡散性シートにおいて、透明性フィルムが、面内屈折率が最大となる方向をX軸、X軸に垂直な方向をY軸、フィルムの厚さ方向をZ軸とし、それぞれの軸方向の屈折率をnx、ny、nz、透明性フィルムの厚さをd(nm)とした場合に、
面内位相差Re=(nx−ny)×dが、20nm以下であり、
かつ厚み方向位相差Rth={(nx+ny)/2−nz}×dが、30nm以下であることが好ましい。
【0016】
透明性フィルムの面内位相差は20nm以下、より好ましくは10nm以下であり、かつ厚み方向位相差は30nm以下、より好ましくは20nm以下である。このように位相差値を制御した透明性フィルムは、光拡散性シートを偏光板に適用した場合に、偏光が入射された場合の偏光状態への影響を少なくすることができる。透明性フィルムの厚さdは特に制限されないが、一般には10〜500μm以下、20〜300μmが好ましい。特に30〜200μmとするのが好ましい。
【0017】
前記光拡散性シートにおいて、透明性フィルムが、二軸延伸されたフィルムであることが好ましい。延伸手段、その倍率は、特に制限されないが、MD方向、TD方向のいずれの方向にも等倍延伸するのが好ましい。延伸倍率は0. 5〜3倍、さらには1〜2倍とするのが好ましい。一般的なプラスチック材料は、延伸することにより複屈折性を発現することから、偏光状態を維持する場合には無延伸の状態で用いる必要がある。しかし、無延伸フィルムでは強度が不足し、取扱いが困難である。前記熱可塑性樹脂(A)、(B)の混合物を主成分として含有する、本発明の透明性フィルムは、延伸により複屈折が発現しないため強度に優れたフィルムを得ることができる。
【0018】
また前記光拡散性シートにおいて、樹脂皮膜層が微粒子を含有しており、かつ樹脂皮膜層の表面凹凸形状が微粒子によって形成されていることが好ましい。また、樹脂皮膜層に含有される微粒子は有機系微粒子であることが好ましい。さらには、樹脂皮膜層が紫外線硬化型樹脂により形成されていることが好ましい。
【0019】
微粒子を用いることにより、表面凹凸形状を有する樹脂皮膜層を簡易かつ確実に実現でき、また上記中心線平均表面粗さ(Ra)、平均山間隔(Sm)および十点平均表面粗さ(Rz)の調整も容易である。特に、微粒子として有機系微粒子を用いた場合には、ギラツキを抑えるうえで有効である。また、紫外線硬化型樹脂は紫外線照射による硬化処理にて、簡単な加工操作にて効率よく樹脂皮膜層(光拡散層)を形成することができる。
【0020】
また本発明は、前記光拡散性シートの樹脂皮膜層の凹凸形状表面に、樹脂皮膜層の屈折率よりも低い屈折率の低屈性率層が設けられていることを特徴とする光拡散性シート、に関する。低屈折率層により反射防止機能を付与でき、ディスプレイ等の画像表面の乱反射による画面の白ボケを有効に抑えることができる。
【0021】
また本発明は、前記光拡散性シートが、光学素子の片面又は両面に設けられていることを特徴とする光学素子、に関する。さらには前記光学素子を用いたことを特徴とする画像表示装置、に関する。本発明の光拡散性シートは各種の用途に用いることができ、たとえば、光学素子に用いられ、各種の画像表示装置に適用される。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の好ましい実施形態を、図1を参照しながら説明する。図1は、光拡散層4が、透明性フィルム1上に形成されている光拡散性シートである。光拡散層4は、微粒子3が分散されている樹脂皮膜層2により形成されている。樹脂皮膜層2中に分散されている微粒子3は、光拡散層4の表面において凹凸形状を形成している。なお、図1では、樹脂皮膜層2が1層の場合を示しているが、樹脂皮膜層2と透明性フィルム1との間には、別途、微粒子を含有してもよい樹脂皮膜層を形成することにより、光拡散層を複数の樹脂皮膜層によって形成することもできる。
【0023】
透明性フィルム1としては、(A)側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換および/または非置換フェニル基およびニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有してなるもの使用する。かかる熱可塑性樹脂(A)、(B)を含有する透明保護フィルムは、たとえば、WO01/37007に記載されている。なお、透明保護フィルムは、熱可塑性樹脂(A)、(B)を主成分とする場合にも他の樹脂を含有することもできる。
【0024】
熱可塑性樹脂(A)は、側鎖に置換および/または非置換イミド基を有するものであり、主鎖は任意の熱可塑性樹脂である。主鎖は、例えば、炭素のみからなる主鎖であってもよく、または炭素以外の原子が炭素間に挿入されていてもよい。また炭素以外の原子からなっていてもよい。主鎖は好ましく炭化水素またはその置換体である。主鎖は、例えば付加重合により得られる。具体的には例えば、ポリオレフィンまたはポリビニルである。また主鎖は縮合重合により得られる。例えばエステル結合、アミド結合などで得られる。主鎖は好ましくは置換ビニルモノマーを重合させて得られるポリビニル骨格である。
【0025】
熱可塑性樹脂(A)に置換および/または非置換のイミド基を導入する方法としては、従来公知の任意の方法を採用できる。例えば、前記イミド基を有するモノマーを重合する方法、各種モノマーを重合して主鎖を形成した後、前記イミド基を導入する方法、前記イミド基を有する化合物を側鎖にグラフトさせる方法等があげられる。イミド基の置換基としては、イミド基の水素を置換し得る従来公知の置換基が使用可能である。例えば、アルキル基などがあげられる。
【0026】
熱可塑性樹脂(A)は、少なくとも1種のオレフィンから誘導される繰り返し単位と少なくとも1種の置換および/または非置換マレイミド構造を有する繰り返し単位とを含有する二元またはそれ以上の多元共重合体であるのが好ましい。上記オレフィン・マレイミド共重合体は、オレフィンとマレイミド化合物から、公知の方法で合成できる。合成法は、例えば、特開平5−59193号公報、特開平5−195801号公報、特開平6−136058号公報および特開平9−328523号公報に記載されている。
【0027】
オレフィンとしては、たとえば、イソブテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、2−メチル−1−へキセン、2−メチル−1−ヘプテン、2−メチル−1−へプテン、1−イソオクテン、2−メチル−1−オクテン、2−エチル−1−ペンテン、2−エチル−2−ブテン、2−メチル−2−ペンテン、2−メチル−2−へキセン等があげられる。これらのなかでもイソブテンが好ましい。これらのオレフィンは単独で用いてもよく、2種以上を組合せてもよい。
【0028】
マレイミド化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−i−プロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−s−ブチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、N−n−ペンチルマレイミド、N−n−ヘキシルマレイミド、N−n−へプチルマレイミド、N−n−オクチルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ステアリルマレイミド、N−シクロプロピルマレイミド、N−シクロブチルマレイミド、N−シクロペンチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−シクロヘプチルマレイミド、N−シクロオクチルマレイミド等があげられる。これらのなかでもN−メチルマレイミドが好ましい。これらマレイミド化合物は単独で用いてもよく、または2種以上を組み合わせてもよい。
【0029】
オレフィン・マレイミド共重合体において、オレフィンの繰り返し単位の含有量は特に制限されないが、熱可塑性樹脂(A)の総繰り返し単位の20〜70モル%程度、好ましくは40〜60モル%、さらに好ましくは45〜55モル%である。マレイミド構造の繰り返し単位の含有量は30〜80モル%程度、好ましくは40〜60モル%、さらに好ましくは45〜55モル%である。
【0030】
熱可塑性樹脂(A)は前記オレフィンの繰り返し単位とマレイミド構造の繰り返し単位を含有し、これらの単位のみにより形成することができる。また前記以外に、他のビニル系単量体の繰り返し単位を50モル%以下の割合で含んでいてもよい。他のビニル系単量体としてはアクリル酸メチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸系単量体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸系単量体、酢酸ビニル等のビニルエステル単量体、メチルビニルエーテル等のビニルエーテル単量体、無水マレイン酸のような酸無水物、スチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシスチレン等のスチレン系単量体等があげられる。
【0031】
熱可塑性樹脂(A)の重量平均分子量は特に制限されないが、1×103 〜5×106 程度である。前記重量平均分子量は1×104 以上が好ましく、5×105 以下が好ましい。熱可塑性樹脂(A)のガラス転移温度は80℃以上、好ましくは100℃以上、さら好ましくは130℃以上である。
【0032】
また熱可塑性樹脂(A)としては、グルタルイミド系熱可塑性樹脂を用いることができる。グルタルイミド系樹脂は、特開平2−153904号公報等に記載されている。グルタルイミド系樹脂は、グルタルイミド構造単位とアクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチル構造単位を有する。グルタルイミド系樹脂中にも前記他のビニル系単量体を導入できる。
【0033】
熱可塑性樹脂(B)は、置換および/または非置換フェニル基とニトリル基とを側鎖に有する熱可塑性樹脂である。熱可塑性樹脂(B)の主鎖は、熱可塑性樹脂(A)と同様のものを例示できる。
【0034】
熱可塑性樹脂(B)に前記フェニル基を導入する方法としては、例えば、前記フェニル基を有するモノマーを重合する方法、各種モノマーを重合して主鎖を形成した後、フェニル基を導入する方法、フェニル基を有する化合物を側鎖にグラフトする方法等があげられる。フェニル基の置換基としては、フェニル基の水素を置換し得る従来公知の置換基が使用可能である。例えば、アルキル基などがあげられる。熱可塑性樹脂(B)にニトリル基を導入する方法もフェニル基の導入法と同様の方法を採用できる。
【0035】
熱可塑性樹脂(B)は、不飽和ニトリル化合物から誘導される繰り返し単位(ニトリル単位)とスチレン系化合物から誘導される繰り返し単位(スチレン系単位)とを含む二元または三元以上の多元共重合体であるのが好ましい。たとえばアクリロニトリル・スチレン系の共重合体を好ましく用いることができる。
【0036】
不飽和ニトリル化合物としては、シアノ基および反応性二重結合を有する任意の化合物があげられる。例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα−置換不飽和ニトリル、フマロニトリル等のα,β−二置換オレフィン性不飽和結合を有するニトリル化合物等があげられる。
【0037】
スチレン系化合物としては、フェニル基および反応性二重結合を有する任意の化合物があげられる。例えば、スチレン、ビニルトルエン、メトキシスチレン、クロロスチレン等の非置換または置換スチレン系化合物、α−メチルスチレン等のα−置換スチレン系化合物があげられる。
【0038】
熱可塑性樹脂(B)中のニトリル単位の含有量は特に制限されないが、総繰り返し単位を基準として、10〜70重量%程度、好ましくは20〜60重量%、さらに好ましくは20〜50重量%である。特に20〜40重量%、20〜30重量%が好ましい。スチレン系単位は、30〜80重量%程度、好ましくは40〜80重量%、さらに好ましくは50〜80重量%である。特に60〜80重量%、70〜80重量%が好ましい。
【0039】
熱可塑性樹脂(B)は前記ニトリル単位とスチレン系単位を含有し、これらの単位のみにより形成することができる。また前記以外に他のビニル系単量体の繰り返し単位を50モル%以下の割合で含んでいてもよい。他のビニル系単量体としては熱可塑性樹脂(A)に例示したもの、オレフィンの繰り返し単位、マレイミド、置換マレイミドの繰り返し単位等があげられる。かかる熱可塑性樹脂(B)としてはAS樹脂、ABS樹脂、ASA樹脂等があげられる。
【0040】
熱可塑性樹脂(B)の重量平均分子量は特に制限されないが、1×103 〜5×106 程度である。好ましくは1×104 以上、5×105 以下である。
【0041】
熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の比率は、透明保護フィルムに求められる位相差に応じて調整される。前記配合比は、一般的には熱可塑性樹脂(A)の含有量がフィルム中の樹脂の総量のうちの50〜95重量%であることが好ましく、60〜95重量%であることがより好ましく、さらに好ましくは、65〜90重量%である。熱可塑性樹脂(B)の含有量は、フィルム中の樹脂の総量のうちの5〜50重量%であることが好ましく、より好ましくは5〜40重量%であり、さらに好ましくは、10〜35重量%である。熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)はこれらを熱溶融混練することにより混合される。
【0042】
透明性フィルム1の厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より10〜500μm程度である。特に20〜300μmが好ましく、30〜200μmがより好ましい。
【0043】
微細凹凸構造表面を有する光拡散層4は、透明性フィルム1上に形成されていれば、その形成方法は特に制限されず、適宜な方式を採用することができる。たとえば、透明性フィルム1の表面そのものを微細凹凸構造表面を有する光拡散層4とすることができる。
【0044】
また、生産性の点からは、微細凹凸構造表面を有する樹脂皮膜層3を設けて、光拡散層4とするのが好ましい。たとえば、前記樹脂皮膜層2の形成に用いたフィルムの表面を、予め、サンドブラストやエンボスロール、化学エッチング等の適宜な方式で粗面化処理してフィルム表面に微細凹凸構造を付与する方法等により、樹脂皮膜層2を形成する材料そのものの表面を微細凹凸構造に形成する方法があげられる。また、樹脂皮膜層2上に別途樹脂皮膜層を塗工付加し、当該樹脂皮膜層表面に、金型による転写方式等により微細凹凸構造を付与する方法があげられる。また、図1のように樹脂皮膜層2に微粒子3を分散含有させて微細凹凸構造を付与する方法などがあげられる。これら微細凹凸構造の形成方法は、二種以上の方法を組み合わせ、異なる状態の微細凹凸構造表面を複合させた層として形成してもよい。前記樹脂皮膜層2の形成方法のなかでも、微細凹凸構造表面の形成性等の観点より、微粒子3を分散含有する樹脂皮膜層2を設ける方法が好ましい。
【0045】
以下、微粒子3を分散含有させて樹脂皮膜層2を設ける方法について説明する。当該樹脂皮膜層2を形成する樹脂としては微粒子3の分散が可能で、樹脂皮膜層形成後の皮膜として十分な強度を持ち、透明性のあるものを特に制限なく使用できる。前記樹脂としては熱硬化型樹脂、熱可塑型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂、二液混合型樹脂などがあげられるが、これらのなかでも紫外線照射による硬化処理にて、簡単な加工操作にて効率よく光拡散層を形成することができる紫外線硬化型樹脂が好適である。
【0046】
紫外線硬化型樹脂としては、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系、アミド系、シリコーン系、エポキシ系等の各種のものがあげられ、紫外線硬化型のモノマー、オリゴマー、ポリマー等が含まれる。好ましく用いられる紫外線硬化型樹脂は、例えば紫外線重合性の官能基を有するもの、なかでも当該官能基を2個以上、特に3〜6個有するアクリル系のモノマーやオリゴマーを成分を含むものがあげられる。また、紫外線硬化型樹脂には、紫外線重合開始剤が配合されている。
【0047】
前記紫外線硬化型樹脂(樹脂皮膜層2の形成)には、レベリング剤、チクソトロピー剤、帯電防止剤等の添加剤を用いることができる。チクソトロピー剤を用いると、微細凹凸構造表面における突出粒子の形成に有利である。チクソトロピー剤としては、0.1μm以下のシリカ、雲母等があげられる。これら添加剤の含有量は、通常、紫外線硬化型樹脂100重量部に対して、1〜15重量部程度とするのが好適である。
【0048】
微粒子3としては、各種金属酸化物、ガラス、プラスティックなどの透明性を有するものを特に制限なく使用することができる。例えばシリカやアルミナ、チタニアやジルコニア、酸化カルシウムや酸化錫、酸化インジウムや酸化カドミウム、酸化アンチモン等の導電性のこともある無機系微粒子、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、アクリル−スチレン共重合体、ベンゾグアナミン、メラミン、ポリカーボネート等の各種ポリマーからなる架橋又は未架橋の有機系微粒子やシリコーン系微粒子などがあげられる。これら微粒子3は、1種または2種以上を適宜に選択して用いることができるが、有機系微粒子が好ましい。微粒子の平均粒子径は1〜10μm、好ましくは2〜5μmである。
【0049】
微粒子3を含有する樹脂皮膜層2の形成方法は特に制限されず、適宜な方式を採用することができる。たとえば、前記透明性フィルム1上に、微粒子3を含有する樹脂(たとえば、紫外線硬化型樹脂:塗工液)を塗工し、乾燥後、硬化処理して表面に凹凸形状を呈するような樹脂皮膜層2により形成することにより行う。なお、塗工液は、ファンテン、ダイコーター、キャスティング、スピンコート、ファンテンメタリング、グラビア等の適宜な方式で塗工される。
【0050】
形成した光拡散層4の表面で平均山間隔(Sm)、中心線平均表面粗さ(Ra)および十点平均表面粗さ(Rz)を満足させるには、前記塗工液に含まれる微粒子3の平均粒子径、その割合や樹脂皮膜層2の厚さを適宜に調整する。
【0051】
前記塗工液に含まれる微粒子3の割合は特に制限されないが、樹脂100重量部に対して、6〜20重量部とするのがギラツキを抑えるうえで好ましい。また、樹脂皮膜層2の厚さは特に制限されないが、3〜6μm程度、特に4〜5μmとするのが好ましい。
【0052】
前記光拡散層4の凹凸形状表面には、反射防止機能を有する低屈折率層を設けることができる。低屈折率層の材料は光拡散層4(樹脂皮膜層2を設ける場合には樹脂皮膜層2)よりも屈折率の低いものであれば特に制限されない。低屈折率層の形成法は、特に制限されないが、湿式塗工法が、真空蒸着法等に比べてて簡易な方法であり好ましい。
【0053】
なお、低屈折率層の形成にあたっては、樹脂皮膜層2の表面に、親水化処理を施すことができる。親水化処理手段は、特に制限されないが、たとえば、コロナ放電処理、スパッタ処理、低圧UV照射、プラズマ処理などの表面処理法を好適に採用できる。またセルロース系材料、ポリエステル系材料の薄層塗布処理のどの密着性を向上させる処理を施すことができる。
【0054】
低屈折率層を形成する材料としては、例えば、紫外線硬化型アクリル樹脂等の樹脂系材料、樹脂中にコロイダルシリカ等の無機微粒子を分散させたハイブリッド系材料、テトラエトキシシラン、チタンテトラエトキシド等の金属アルコキシドを用いたゾル−ゲル系材料等があげられる。また、それぞれの材料は、表面の防汚染性付与するためフッ素基含有化合物を用いることができる。耐擦傷性の面からは、無機成分含有量が多い低屈折率層材料が優れる傾向にあり、特にゾル−ゲル系材料が好ましい。
【0055】
前記フッ素基を含有するゾル−ゲル系材料としては、パーフルオロアルキルアルコキシシランを例示できる。パーフルオロアルキルアルコキシシランとしては、たとえば、一般式(1):CF3 (CF2 )n CH2 CH2 Si(OR)3 (式中、Rは、炭素数1〜5個のアルキル基を示し、nは0〜12の整数を示す)で表される化合物があげられる。具体的には、たとえば、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシランなどがあげられる。これらのなかでも前記nが2〜6の化合物が好ましい。低屈折率層の形成にはシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、フッ化マグネシウム、セリア等をアルコール溶媒に分散したゾルなどを添加しても良い。その他、金属塩、金属化合物などの添加剤を適宜に配合することができる。
【0056】
低屈折率層の厚さは特に制限されないが、0.05〜0.3μm程度、特に0.1〜0.3μmとするのが好ましい。
【0057】
前記光拡散性シートの透明性フィルム1には、光学素子を接着することができる。光学素子としては、偏光子があげられる。偏光子は、特に制限されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、たとえば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等があげられる。これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これら偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に、5〜80μm程度である。
【0058】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、たとえば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸してもよし、また延伸してからヨウ素で染色してもよい。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
【0059】
前記偏光子は、通常、片側または両側に透明保護フィルムが設けられ偏光板として用いられる。透明保護フィルムは透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れるものが好ましい。透明保護フィルムとしては前記例示の透明性フィルムと同様の材料のものが好適に用いられる。また、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマーなどがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、または前記ポリマーのブレンド物なども前記透明保護フィルムを形成するポリマーの例としてあげられる。透明保護フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型、紫外線硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。前記透明保護フィルムは、表裏で同じポリマー材料からなる透明保護フィルムを用いてもよく、異なるポリマー材料等からなる透明保護フィルムを用いてもよい。透明性や機械的強度、熱安定性や水分遮断性などに優れるものが好ましく用いられる。また透明保護フィルムは、位相差等の光学的異方性が少ないほど好ましい場合が多い。前記光拡散性シートを、偏光子 (偏光板)の片側または両側に設ける場合、光拡散性シートの透明性フィルムは、偏光子の透明保護フィルムを兼ねることができる。透明保護フィルムの厚さは特に制限されないが10〜300μm程度が一般的である。
【0060】
光拡散性シートの偏光板への積層は、光拡散性シートに透明保護フィルム、偏光子、透明保護フィルムを順次に積層してもよいし、光拡散性シートに偏光子、透明保護フィルムを順次に積層したものでもよい。
【0061】
その他、透明保護フィルムの偏光子を接着させない面は、ハードコート層やスティッキング防止や目的とした処理を施したものであってもよい。ハードコート処理は偏光板表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を透明保護フィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。また、スティッキング防止処理は隣接層との密着防止を目的に施される。なお、前記ハードコート層、スティッキング防止層等は、透明保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途光学層として透明保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
【0062】
また偏光板の層間へ、例えばハードコート層、プライマー層、接着剤層、粘着剤層、帯電防止層、導電層、ガスバリヤー層、水蒸気遮断層、水分遮断層等を挿入、または偏光板表面へ積層しても良い。また。偏光板の各層を作成する段階では、例えば、導電性粒子あるいは帯電防止剤、各種微粒子、可塑剤等を各層の形成材料に添加、混合等することにより改良を必要に応じておこなっても良い。
【0063】
光学素子としては、実用に際して、前記偏光板に、他の光学素子(光学層)を積層した光学フィルムを用いることができる。その光学層については特に限定はないが、例えば反射板や半透過板、位相差板(1/2 や1/4 等の波長板を含む)、視角補償フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層を1層または2層以上用いることができる。特に、偏光板に更に反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板または半透過型偏光板、偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板、偏光板に更に視角補償フィルムが積層されてなる広視野角偏光板、あるいは偏光板に更に輝度向上フィルムが積層されてなる偏光板が好ましい。楕円偏光板、光学補償付き偏光板等では偏光板側に光拡散性シートが付与される。
【0064】
さらに必要に応じて、耐擦傷性、耐久性、耐候性、耐湿熱性、耐熱性、耐湿性、透湿性、帯電防止性、導電性、層間の密着性向上、機械的強度向上等の各種特性、機能等を付与するための処理、または機能層の挿入、積層等を行うこともできる。
【0065】
反射型偏光板は、偏光板に反射層を設けたもので、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置などを形成するためのものであり、バックライト等の光源の内蔵を省略できて液晶表示装置の薄型化を図りやすいなどの利点を有する。反射型偏光板の形成は、必要に応じ、前記透明保護フィルム等を介して偏光板の片面に金属等からなる反射層を付設する方式などの適宜な方式にて行うことができる。
【0066】
反射型偏光板の具体例としては、必要に応じマット処理した透明保護フィルムの片面に、アルミニウム等の反射性金属からなる箔や蒸着膜を付設して反射層を形成したものなどがあげられる。
【0067】
反射板は前記偏光板の透明保護フィルムに直接付与する方式に代えて、その透明性フィルムに準じた適宜なフィルムに反射層を設けてなる反射シートなどとして用いることもできる。なお反射層は、通常、金属からなるので、その反射面が透明保護フィルムや偏光板等で被覆された状態の使用形態が、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続の点や、保護層の別途付設の回避の点などより好ましい。
【0068】
なお、半透過型偏光板は、上記において反射層で光を反射し、かつ透過するハーフミラー等の半透過型の反射層とすることにより得ることができる。半透過型偏光板は、通常液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置などを比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射させて画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内蔵光源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置などを形成できる。すなわち、半透過型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、比較的暗い雰囲気下においても内蔵光源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置などの形成に有用である。
【0069】
偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板について説明する。直線偏光を楕円偏光または円偏光に変えたり、楕円偏光または円偏光を直線偏光に変えたり、あるいは直線偏光の偏光方向を変える場合に、位相差板などが用いられる。特に、直線偏光を円偏光に変えたり、円偏光を直線偏光に変える位相差板としては、いわゆる1 /4 波長板(λ/4 板とも言う)が用いられる。1 /2 波長板(λ/2 板とも言う)は、通常、直線偏光の偏光方向を変える場合に用いられる。
【0070】
楕円偏光板はスーパーツイストネマチック(STN)型液晶表示装置の液晶層の複屈折により生じた着色(青又は黄)を補償(防止)して、前記着色のない白黒表示する場合などに有効に用いられる。更に、三次元の屈折率を制御したものは、液晶表示装置の画面を斜め方向から見た際に生じる着色も補償(防止)することができて好ましい。円偏光板は、例えば画像がカラー表示になる反射型液晶表示装置の画像の色調を整える場合などに有効に用いられ、また、反射防止の機能も有する。上記した位相差板の具体例としては、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレンやその他のポリオレフィン、ポリアリレート、ポリアミドの如き適宜なポリマーからなるフィルムを延伸処理してなる複屈折性フィルムや液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどがあげられる。位相差板は、例えば各種波長板や液晶層の複屈折による着色や視角等の補償を目的としたものなどの使用目的に応じた適宜な位相差を有するものであってよく、2種以上の位相差板を積層して位相差等の光学特性を制御したものなどであってもよい。
【0071】
また上記の楕円偏光板や反射型楕円偏光板は、偏光板又は反射型偏光板と位相差板を適宜な組合せで積層したものである。かかる楕円偏光板等は、(反射型)偏光板と位相差板の組合せとなるようにそれらを液晶表示装置の製造過程で順次別個に積層することによっても形成しうるが、前記の如く予め楕円偏光板等の光学フィルムとしたものは、品質の安定性や積層作業性等に優れて液晶表示装置などの製造効率を向上させうる利点がある。
【0072】
視角補償フィルムは、液晶表示装置の画面を、画面に垂直でなくやや斜めの方向から見た場合でも、画像が比較的鮮明にみえるように視野角を広げるためのフィルムである。このような視角補償位相差板としては、例えば位相差フィルム、液晶ポリマー等の配向フィルムや透明基材上に液晶ポリマー等の配向層を支持したものなどからなる。通常の位相差板は、その面方向に一軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムが用いられるのに対し、視角補償フィルムとして用いられる位相差板には、面方向に二軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムとか、面方向に一軸に延伸され厚さ方向にも延伸された厚さ方向の屈折率を制御した複屈折を有するポリマーや傾斜配向フィルムのような二方向延伸フィルムなどが用いられる。傾斜配向フィルムとしては、例えばポリマーフィルムに熱収縮フィルムを接着して加熱によるその収縮力の作用下にポリマーフィルムを延伸処理又は/及び収縮処理したものや、液晶ポリマーを斜め配向させたものなどが挙げられる。位相差板の素材原料ポリマーは、先の位相差板で説明したポリマーと同様のものが用いられ、液晶セルによる位相差に基づく視認角の変化による着色等の防止や良視認の視野角の拡大などを目的とした適宜なものを用いうる。
【0073】
また良視認の広い視野角を達成する点などより、液晶ポリマーの配向層、特にディスコティック液晶ポリマーの傾斜配向層からなる光学的異方性層をトリアセチルセルロースフィルムにて支持した光学補償位相差板が好ましく用いうる。
【0074】
偏光板と輝度向上フィルムを貼り合わせた偏光板は、通常液晶セルの裏側サイドに設けられて使用される。輝度向上フィルムは、液晶表示装置などのバックライトや裏側からの反射などにより自然光が入射すると所定偏光軸の直線偏光または所定方向の円偏光を反射し、他の光は透過する特性を示すもので、輝度向上フィルムを偏光板と積層した偏光板は、バックライト等の光源からの光を入射させて所定偏光状態の透過光を得ると共に、前記所定偏光状態以外の光は透過せずに反射される。この輝度向上フィルム面で反射した光を更にその後ろ側に設けられた反射層等を介し反転させて輝度向上フィルムに再入射させ、その一部又は全部を所定偏光状態の光として透過させて輝度向上フィルムを透過する光の増量を図ると共に、偏光子に吸収させにくい偏光を供給して液晶表示画像表示等に利用しうる光量の増大を図ることにより輝度を向上させうるものである。すなわち、輝度向上フィルムを使用せずに、バックライトなどで液晶セルの裏側から偏光子を通して光を入射した場合には、偏光子の偏光軸に一致していない偏光方向を有する光は、ほとんど偏光子に吸収されてしまい、偏光子を透過してこない。すなわち、用いた偏光子の特性によっても異なるが、およそ50%の光が偏光子に吸収されてしまい、その分、液晶画像表示等に利用しうる光量が減少し、画像が暗くなる。輝度向上フィルムは、偏光子に吸収されるような偏光方向を有する光を偏光子に入射させずに輝度向上フィルムで一旦反射させ、更にその後ろ側に設けられた反射層等を介して反転させて輝度向上フィルムに再入射させることを繰り返し、この両者間で反射、反転している光の偏光方向が偏光子を通過し得るような偏光方向になった偏光のみを、輝度向上フィルムは透過させて偏光子に供給するので、バックライトなどの光を効率的に液晶表示装置の画像の表示に使用でき、画面を明るくすることができる。
【0075】
輝度向上フィルムと上記反射層等の間に拡散板を設けることもできる。輝度向上フィルムによって反射した偏光状態の光は上記反射層等に向かうが、設置された拡散板は通過する光を均一に拡散すると同時に偏光状態を解消し、非偏光状態となる。すなわち、拡散板は偏光を元の自然光状態にもどす。この非偏光状態、すなわち自然光状態の光が反射層等に向かい、反射層等を介して反射し、再び拡散板を通過して輝度向上フィルムに再入射することを繰り返す。このように輝度向上フィルムと上記反射層等の間に、偏光を元の自然光状態にもどす拡散板を設けることにより表示画面の明るさを維持しつつ、同時に表示画面の明るさのむらを少なくし、均一で明るい画面を提供することができる。かかる拡散板を設けることにより、初回の入射光は反射の繰り返し回数が程よく増加し、拡散板の拡散機能と相俟って均一の明るい表示画面を提供することができたものと考えられる。
【0076】
前記の輝度向上フィルムとしては、例えば誘電体の多層薄膜や屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体の如き、所定偏光軸の直線偏光を透過して他の光は反射する特性を示すもの、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持したものの如き、左回り又は右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すものなどの適宜なものを用いうる。
【0077】
従って、前記した所定偏光軸の直線偏光を透過させるタイプの輝度向上フィルムでは、その透過光をそのまま偏光板に偏光軸を揃えて入射させることにより、偏光板による吸収ロスを抑制しつつ効率よく透過させることができる。一方、コレステリック液晶層の如く円偏光を投下するタイプの輝度向上フィルムでは、そのまま偏光子に入射させることもできるが、吸収ロスを抑制する点よりその円偏光を位相差板を介し直線偏光化して偏光板に入射させることが好ましい。なお、その位相差板として1/4波長板を用いることにより、円偏光を直線偏光に変換することができる。
【0078】
可視光域等の広い波長範囲で1/4波長板として機能する位相差板は、例えば波長550nmの淡色光に対して1/4波長板として機能する位相差層と他の位相差特性を示す位相差層、例えば1/2波長板として機能する位相差層とを重畳する方式などにより得ることができる。従って、偏光板と輝度向上フィルムの間に配置する位相差板は、1層又は2層以上の位相差層からなるものであってよい。
【0079】
なお、コレステリック液晶層についても、反射波長が相違するものの組み合わせにして2層又は3層以上重畳した配置構造とすることにより、可視光領域等の広い波長範囲で円偏光を反射するものを得ることができ、それに基づいて広い波長範囲の透過円偏光を得ることができる。
【0080】
また、偏光板は、上記の偏光分離型偏光板の如く、偏光板と2層又は3層以上の光学層とを積層したものからなっていてもよい。従って、上記の反射型偏光板や半透過型偏光板と位相差板を組み合わせた反射型楕円偏光板や半透過型楕円偏光板などであってもよい。
【0081】
前記光学素子への光拡散性シートの積層、さらには偏光板への各種光学層の積層は、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても行うことができるが、これらを予め積層したのものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着層等の適宜な接着手段を用いうる。前記の偏光板やその他の光学フィルムの接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
【0082】
前述した偏光板や、偏光板を少なくとも1層積層されている光学フィルム等の光学素子の少なくとも片面には、前記光拡散性シートが設けられているが、光拡散性シートが設けられていない面には、液晶セル等の他部材と接着するための粘着層を設けることもできる。粘着層を形成する粘着剤は特に制限されないが、例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、アクリル系粘着剤の如く光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく用いうる。
【0083】
また上記に加えて、吸湿による発泡現象や剥がれ現象の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる液晶表示装置の形成性などの点より、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着層が好ましい。
【0084】
粘着層は、例えば天然物や合成物の樹脂類、特に、粘着性付与樹脂や、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤や顔料、着色剤、酸化防止剤などの粘着層に添加されることの添加剤を含有していてもよい。また微粒子を含有して光拡散性を示す粘着層などであってもよい。
【0085】
偏光板、光学フィルム等の光学素子への粘着層の付設は、適宜な方式で行いうる。その例としては、例えばトルエンや酢酸エチル等の適宜な溶剤の単独物又は混合物からなる溶媒にベースポリマーまたはその組成物を溶解又は分散させた10〜40重量%程度の粘着剤溶液を調製し、それを流延方式や塗工方式等の適宜な展開方式で光学素子上に直接付設する方式、あるいは前記に準じセパレータ上に粘着層を形成してそれを光学素子上に移着する方式などがあげられる。粘着層は、各層で異なる組成又は種類等のものの重畳層として設けることもできる。粘着層の厚さは、使用目的や接着力などに応じて適宜に決定でき、一般には1〜500μmであり、5〜200μmが好ましく、特に10〜100μmが好ましい。
【0086】
粘着層の露出面に対しては、実用に供するまでの間、その汚染防止等を目的にセパレータが仮着されてカバーされる。これにより、通例の取扱状態で粘着層に接触することを防止できる。セパレータとしては、上記厚さ条件を除き、例えばプラスチックフィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体等の適宜な薄葉体を、必要に応じシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系や硫化モリブデン等の適宜な剥離剤でコート処理したものなどの、従来に準じた適宜なものを用いうる。
【0087】
なお本発明において、上記した光学素子を形成する偏光子や透明保護フィルムや光学層等、また粘着層などの各層には、例えばサリチル酸エステル系化合物やべンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などの方式により紫外線吸収能をもたせたものなどであってもよい。
【0088】
本発明の光拡散シートを設けた光学素子は液晶表示装置等の各種装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと光学素子、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による光学素子を用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型などの任意なタイプのものを用いうる。
【0089】
液晶セルの片側又は両側に前記光学素子を配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による光学素子は液晶セルの片側又は両側に設置することができる。両側に光学素子を設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【0090】
次いで有機エレクトロルミネセンス装置(有機EL表示装置)について説明する。一般に有機EL表示装置は、透明性フィルム上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)を形成している。ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、あるいはこのような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体や、またあるいはこれらの正孔注入層、発光層、および電子注入層の積層体等、種々の組み合わせをもった構成が知られている。
【0091】
有機EL表示装置は、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、有機発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物資を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。途中の再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、このことからも予想できるように、電流と発光強度は印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
【0092】
有機EL表示装置においては、有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明でなくてはならず、通常酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いている。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg−Ag、Al−Liなどの金属電極を用いている。
【0093】
このような構成の有機EL表示装置において、有機発光層は、厚さ10nm程度ときわめて薄い膜で形成されている。このため、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明性フィルムの表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明性フィルムの表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見える。
【0094】
電圧の印加によって発光する有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機エレクトロルミネセンス発光体を含む有機EL表示装置において、透明電極の表面側に偏光板を設けるとともに、これら透明電極と偏光板との間に位相差板を設けることができる。
【0095】
位相差板および偏光板は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差板を1 /4 波長板で構成し、かつ偏光板と位相差板との偏光方向のなす角をπ/4 に調整すれば、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0096】
すなわち、この有機EL表示装置に入射する外部光は、偏光板により直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は位相差板により一般に楕円偏光となるが、とくに位相差板が1 /4 波長板でしかも偏光板と位相差板との偏光方向のなす角がπ/4 のときには円偏光となる。
【0097】
この円偏光は、透明性フィルム、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、透明性フィルムを透過して、位相差板に再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光板の偏光方向と直交しているので、偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0098】
【実施例】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何等限定されるものではない。
【0099】
製造例1
イソブテンおよびN−メチルマレイミドからなる交互共重合体(N−メチルマレイミド含有量50モル%)75重量部と、アクリロニトリルの含有量が28重量%であるアクリロニトリル−スチレン共重合体25重量部とを塩化メチレンに溶解し、固形分濃度15重量%の溶液を得た。この溶液をガラス板状に敷いポリエチレンテレフタレートフィルム上に流延し、室温で60分間放置した後、当該フィルムから剥がした。100℃で10分間乾燥後に、140℃で10分間、さらに160℃で30分間乾燥して、厚さ50μmの透明性フィルムを得た。透明性フィルムの面内位相差Re=4nm、厚み方向位相差Rth=4nm、であった。
【0100】
なお、面内位相差Re、厚み方向位相差Rthは、屈折率nx、ny、nzを自動複屈折測定装置(王子計測機器株式会社製,自動複屈折計KOBRA21ADH)により計測した結果から算出した。
【0101】
製造例2
N−メチルグルタルイミドとメチルメタクリレートからなるグルタルイミド共重合体(N−メチルグルタルイミド含有量75重量%、酸含量0.01ミリ当量/g以下、ガラス転移温度147℃)65重量部と、アクリロニトリル及びスチレンの含有量がそれぞれ28重量%、72重量%であるアクリロニトリル−スチレン共重合体35重量部とを用い、溶融混練して得た樹脂組成物を、Tダイ溶融押出機に供給して、厚さ135μmのフィルムを得た。このフィルムをMD方向に160℃で1.7倍延伸した後に、TD方向に160℃で1.8倍延伸した。得られた二軸延伸透明性フィルムの厚みは55μm、面内位相差Re=1nm、厚み方向位相差Rth=3nmであった。
【0102】
実施例1
平均粒子径3.5μmのポリスチレンビーズ12重量部、紫外線硬化型樹脂(ウレタンアクリレート系モノマー)100重量部、ベンゾフェノン系光重合開始剤5重量部及びその固形分が40重量%となるように計量された溶剤(トルエン)とを混合した溶液を、製造例1で得られた透明性フィルム上に塗布し、120℃で5分間乾燥した後、紫外線照射により硬化処理して、厚さ約4μmの微細凹凸構造表面の樹脂皮膜層を有する光拡散性シートを作製した。
【0103】
実施例2
製造例1と同様にして厚さ100μmの透明性フィルムを作製した。この透明性フィルムをMD方向に160℃で1.5倍延伸した後に、TD方向に160℃で1.5倍延伸することにより厚さ45μmの二軸延伸透明性フィルムを得た。二軸延伸透明性フィルムの面内位相差Re=4nm、厚み方向位相差Rth=12nm、であった。実施例1において、透明性フィルムとして、前記二軸延伸透明性フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして光拡散性シートを作製した。
【0104】
実施例3
実施例1において、ポリスチレンビーズの使用量を14重量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして光拡散性シートを作製した。
【0105】
実施例4
実施例1において、樹脂皮膜層の厚さを3μmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして光拡散性シートを作製した。
【0106】
実施例5
実施例2において、樹脂皮膜層の凹凸形状表面に、さらに樹脂皮膜層の屈折率(1.51)よりも低い低屈折率層(材料:フッ素変性ポリシロキサン,屈折率:1.39)を0.1μm設けたこと以外は実施例2と同様にして光拡散性シートを作製した。
【0107】
実施例6
実施例1において、透明性フィルムとして、製造例2で得られた前記二軸延伸透明性フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして光拡散性シートを作製した。
【0108】
比較例1
実施例1において、透明性フィルムとして、厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(面内位相差Re=2nm、厚み方向位相差Rth=40nm)を用いたこと以外は実施例1と同様にして光拡散性シートを作製した。
【0109】
比較例2
実施例1において、透明性フィルムとして、厚さ40μmのノルボルネン系フィルム(面内位相差Re=4nm、厚み方向位相差Rth=20nm)を用いたこと以外は実施例1と同様にして光拡散性シートを作製した。
【0110】
比較例3
実施例1において、透明性フィルムとして、厚さ50μmの二軸延伸したポリカーボネートフィルム(面内位相差Re=10nm、厚み方向位相差Rth=120nm)を用いたこと以外は実施例1と同様にして光拡散性シートを作製した。
【0111】
比較例4
実施例1において、平均粒子径3.5μmのポリスチレンビーズ12重量部を平均粒子径2〜3μmのシリカビーズ12重量部に変えた以外は実施例1と同様にして光拡散性シートを作製した。
【0112】
比較例5
実施例1において、ポリスチレンビーズの使用量を10重量部に変え、樹脂皮膜層の厚さを2.5μmに変更した以外は、実施例1と同様にして光拡散性シートを作製した。
【0113】
上記実施例、比較例で得られた光拡散性シートの表面凹凸構造の形状を、JIS B0601に準じ、触針式表面粗さ測定機として株式会社東京精密製のサーフコム470Aを用いて測定した。なお、測定はダイヤモンドからなる先端部を頂角55度の円錐形とした直径1mmの測定針を介して凹凸面上を一定方向に3mmの長さで走査し、その場合の測定針の上下方向の移動変化を測定することにより行い、それを記録した表面粗さ曲線から、平均山間隔(Sm)、中心線平均表面粗さ(Ra)および十点平均表面粗さ(Rz)を算出した。また、60°光沢度を、JIS K7105−1981に準じて、スガ試験機(株)製(デジタル変角光沢計UGV−5DP)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0114】
【表1】
【0115】
実施例および比較例で得られた光拡散性シートに下記評価を行った結果を表2に示す。
【0116】
(ギラツキ)
光拡散性シートに偏光板(185μm)を接着したものを、ガラス基板に接着し、ライトテーブル上に固定されたマスクパターン(開口率25%)上でギラツキ度合い(ギラツキ)を目視により以下の基準で評価した。なお、蛍光灯下における写り込み(防眩性)はいずれも良好であった。
◎:ギラツキが全くない。
○:ギラツキがほとんどない。
△:ギラツキが小さく実用上問題はない。
×:ギラツキがある。
【0117】
(密着性)
光拡散性シートをガラス板に粘着剤で貼り合せ、JIS K5400の碁盤テープ法で光拡散層(樹脂被膜層)と透明性フィルムの初期の密着性を以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
◎:全く剥がれない。
△:剥がれ面積は全正方形面積の65%未満。ただし、全く剥がれない場合を除く。
×:剥がれ面積は全正方形面積の65%未満以上。
【0118】
(耐久性)
光拡散性シートをガラス板に粘着剤で貼り合せ、80℃、90%RHの恒温恒湿器に投入した。その後、570時間後、1000時間後の外観、密着性を以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
◎:570時間、1000時間後にクラック、剥がれなし(全面)。
×:570時間後に全面にクラック、剥がれあり。
【0119】
【表2】
表2に示す通り、本発明の光拡散性シートはギラツキ、密着性、耐久性に優れていることが認められる。
【0120】
実施例7
実施例1で作製した光拡散性シートをポリウレタン系接着剤を用いてポリビニルアルコール系偏光子の片面に接着するとともに、製造例1で作製した透明性フィルムをその反対面に同様に積層して光拡散機能付き偏光板を得た。
【0121】
実施例8
実施例2で作製した光拡散性シートをポリウレタン系接着剤を用いてポリビニルアルコール系偏光子の片面に接着するとともに、実施例2で作製した二軸延伸透明性フィルムをその反対面に同様に積層して光拡散機能付き偏光板を得た。
【0122】
実施例9
実施例6で作製した光拡散性シートをポリウレタン系接着剤を用いてポリビニルアルコール系偏光子の片面に接着するとともに、製造例2で作製した二軸延伸透明性フィルムをその反対面に同様に積層して光拡散機能付き偏光板を得た。
【0123】
比較例6
比較例1で作製した光拡散性シートをポリウレタン系接着剤を用いてポリビニルアルコール系偏光子の片面に接着するとともに、トリアセチルセルロースフィルムをその反対面に同様に積層して光拡散機能付き偏光板を得た。
【0124】
比較例7
比較例3で作製した光拡散性シートをポリウレタン系接着剤を用いてポリビニルアルコール系偏光子の片面に接着するとともに、ポリカーボネートフィルムをその反対面に同様に積層して光拡散機能付き偏光板を得た。
【0125】
実施例7〜9および比較例6、7で作製した光拡散機能付き偏光板を、それぞれの偏光軸が直交状態になるように張り合わせ、偏光軸方向から方位角45°、極角70°における透過率(%)を測定した。透過率は、日立製作所製の分光光度計U−4100を用い、550nmの値を測定した。結果を表3に示す。
【0126】
【表3】
表3に示す通り、本発明の光拡散性シートからは、偏光特性に優れた光拡散機能付きの偏光板が得られることが認められる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光拡散性シートの断面図の一例である。
【符号の説明】
1:透明性フィルム
2:樹脂皮膜層
3:微粒子
4:光拡散層
Claims (10)
- 透明性フィルムの少なくとも片面に樹脂皮膜層を有し、当該樹脂皮膜層の表面に微細凹凸形状を有する光拡散層が形成されている光拡散性シートにおいて、前記透明性フィルムが、(A)側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換および/または非置換フェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有してなり、かつ当該前記微細凹凸形状表面が、以下に示す平均山間隔(Sm)、中心線平均表面粗さ(Ra)および十点平均表面粗さ(Rz)を満足することを特徴とする光拡散性シート。
Sm≦80μm、
Ra≦0.25μm、
Rz≦9Ra - 微細凹凸形状表面の60°光沢度が70%以下であることを特徴とする請求項1記載の光拡散性シート。
- 透明性フィルムが、面内屈折率が最大となる方向をX軸、X軸に垂直な方向をY軸、フィルムの厚さ方向をZ軸とし、それぞれの軸方向の屈折率をnx、ny、nz、透明性フィルムの厚さをd(nm)とした場合に、
面内位相差Re=(nx−ny)×dが、20nm以下であり、
かつ厚み方向位相差Rth={(nx+ny)/2−nz}×dが、30nm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の光拡散性シート。 - 透明性フィルムが、二軸延伸されたフィルムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光拡散性シート。
- 樹脂皮膜層が微粒子を含有し、かつ樹脂皮膜層の表面凹凸形状が微粒子によって形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光拡散性シート。
- 微粒子が有機系微粒子であることを特徴とする請求項5記載の光拡散性シート。
- 樹脂皮膜層が紫外線硬化型樹脂により形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光拡散性シート。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の光拡散性シートの樹脂皮膜層の凹凸形状表面に、樹脂皮膜層の屈折率よりも低い屈折率の低屈性率層が設けられていることを特徴とする光拡散性シート。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の光拡散性シートが、光学素子の片面又は両面に設けられていることを特徴とする光学素子。
- 請求項9記載の光学素子を用いたことを特徴とする画像表示装置。
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