JP2004321482A - 内視鏡用切除補助装置及び切除補助装置を用いた内視鏡による処置方法 - Google Patents

内視鏡用切除補助装置及び切除補助装置を用いた内視鏡による処置方法 Download PDF

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Abstract

【目的】簡単かつ確実、さらに従来より安価に、切除術中に病変部を所定の方向に牽引できるようにした内視鏡用切除補助装置、及び切除補助装置を用いた内視鏡による処置方法を提供する。
【構成】対象物内部の対象部位を掛着する着力掛着部材と、この着力掛着部材とは異なる位置で上記対象物内部に掛着される定点掛着部材と、該着力掛着部材と定点掛着部材とを連結し、上記着力掛着部材を上記定点掛着部材側に牽引する牽引連結部材と、を具備することを特徴とする内視鏡用切除補助装置。
【選択図】 図7

Description

【0001】
【技術分野】
本発明は、内視鏡観察下で例えば病変部を切除する際に用いる、内視鏡用切除補助装置、及び切除補助装置を用いた内視鏡による処置方法に関する。
【0002】
【従来技術及びその問題点】
従来、通常の手術において人体内部の病変部を切除する場合においては、把持鉗子を用いて病変部を持ち上げることにより病変部と隣接する正常組織との間隔を広げ、その状態で病変部と正常組織との間を切除している。しかし、例えば内視鏡粘膜切除術(EMR)では、体内には内視鏡を一台しか挿入できないため、病変を持ち上げることができず、注射針で病変部の周囲の正常粘膜に生理食塩水を注入して病変部を浮き上がらせ、その状態で高周波ナイフやスネアなどを用いて病変部と正常粘膜の間の切除を行っていた。
【0003】
しかし、このような従来の方法では、病変部を十分な位置まで持ち上げることができなかったため、病変部と正常組織との境界の切除部分を十分確保することができなかった。
また、病変部が扁平な形状である場合は、切除部分を作りだすことができないこともあった。
【0004】
さらに、切除作業中において、すでに切除した病変部が正常組織上に落ち込むことにより内視鏡による視界を妨げることがあり、特に病変部が大きい場合に顕著であった。そのため、切除部分を見ることができず、盲目的に切除するために正常部分を損傷して穿孔などの合併症が発生したり、血管を損傷して大出血をきたし、また出血時も出血部位の確認ができず止血できないことから重篤な合併症を来すことも考えられ、より安全な装置や処置方法が求められていた。
【0005】
そこで本出願人は、これらの問題点を解決すべく、人体内部の病変部を掛着する掛着部材と、該掛着部材と連結される磁性体からなる磁気アンカーと、人体の外部に配置され、磁界を発生して磁気アンカーに動力を与える磁気アンカー誘導装置と、を備え、磁気アンカー誘導装置が発生する磁界によって磁気アンカーに動力を与えて、掛着部材に掛着された病変部を持ち上げることを特徴とする磁気アンカー誘導装置を提案し、特許出願している(特願2002−268239号)。
【0006】
しかし、この磁気アンカー誘導装置を利用した内視鏡では、内視鏡で病変部の観察を行っている最中に、体内の上下左右の方向が分からなくなったり、磁気誘導装置による磁界の方向が分からなくなることがあるため、磁気アンカーにより病変部を所定の方向に移動させるには、熟練を要するという問題があった。
さらに、磁気アンカー誘導装置は高価な装置であるため、より安価に、病変部を確実に切除できる装置や処置方法が望まれていた。
【0007】
【発明の目的】
そこで本発明の目的は、簡単かつ確実、さらに従来より安価に、切除術中に病変部を所定の方向に牽引できるようにした内視鏡用切除補助装置、及び切除補助装置を用いた内視鏡による処置方法を提供することにある。
【0008】
【発明の概要】
本発明の内視鏡用切除補助装置は、対象物内部の対象部位を掛着する着力掛着部材と、この着力掛着部材とは異なる位置で上記対象物内部に掛着される定点掛着部材と、該着力掛着部材と定点掛着部材とを連結し、上記着力掛着部材を上記定点掛着部材側に牽引する牽引連結部材と、を具備することを特徴としている。
【0009】
上記牽引連結部材を、上記着力掛着部材と定点掛着部材とに係合される弾性部材とすることが可能である。
【0010】
上記弾性部材は、上記着力掛着部材と定点掛着部材とに係合される輪ゴムとするのが実際的である。
【0011】
また、上記弾性部材を、両端部に、上記着力掛着部材と定点掛着部材とにそれぞれ係合するフック部を具備する圧縮コイルとすることも可能である。
【0012】
さらに、上記牽引連結部材を、柔軟なひも部と、該ひも部に、その長手方向に並べて固定された少なくとも3つのフック部と、を具備し、上記フック部はそのうちのいずれか2つを選択的に、上記着力掛着部材と定点掛着部材とにそれぞれ係合するものとしてもよい。
【0013】
上記着力掛着部材または定点掛着部材の少なくとも一方を、開閉可能で、上記対象部位を挟持可能なクリップとするのが実際的である。
【0014】
また、上記着力掛着部材または定点掛着部材の少なくとも一方を、上記対象部位に突き刺さる釣り針状の針部材とすることも可能である。
【0015】
本発明の切除補助装置を用いた内視鏡による処置方法は、対象物内部の対象部位に着力掛着部材を掛着し、該着力掛着部材の掛着部位とは異なる上記対象物内部に定点掛着部材を掛着し、上記着力掛着部材と上記定点掛着部材とを牽引連結部材で連結し、該牽引連結部材により、上記着力掛着部材を上記定点掛着部材側に牽引することを特徴としている。
【0016】
上記牽引連結部材を、上記着力掛着部材と定点掛着部材とに係合される弾性部材とすることが可能である。
【0017】
上記弾性部材を、上記着力掛着部材と定点掛着部材とに係合される輪ゴムとするのが実際的である。
【0018】
また、上記弾性部材を、両端部に、上記着力掛着部材と定点掛着部材とにそれぞれ係合するフック部を具備する圧縮コイルばねとすることも可能である。
【0019】
また、上記牽引連結部材を、柔軟なひも部と、該ひも部に、その長手方向に並べて固定された少なくとも3つのフック部と、を具備し、上記フック部はそのうちのいずれか2つを選択的に、上記着力掛着部材と定点掛着部材とにそれぞれ係合するものとしてもよい。
【0020】
上記着力掛着部材または定点掛着部材の少なくとも一方を、開閉可能で、上記対象部位を挟持可能なクリップとするのが実際的である。
【0021】
また、上記着力掛着部材または定点掛着部材の少なくとも一方を、上記対象部位に突き刺さる釣り針状の針部材としても良い。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1の実施形態を、図1から図9を参照しつつ詳しく説明する。
本実施形態の切除補助装置1は、着力クリップ2、定点クリップ3及び輪ゴム4からなるものである。
【0023】
図1及び図5等に示す着力クリップ(着力掛着部材)2は、一端に略円弧状の係合部2aが形成され、他端に先端部2bが形成された第1基片2cと、一端に先端部2dが形成された略直線状の第2基片2eと、第1基片2cと第2基片2eにそれぞれ固着された調整部材2fとを具備している。調整部材2fの詳しい構造に関する説明は省略するが、この調整部材2fは、その幅方向の寸法を調整可能であり、その幅を広げると、第1基片2cと第2基片2eの先端部2b、2dの間隔が広がり、その幅を狭めると、先端部2b、2dの間隔が狭まる。この着力クリップ2は、患者(対象物)体内の病変部(対象部位)Xを掴んで持ち上げるための部材である。
【0024】
同じく図1及び図2等に示す定点クリップ(定点掛着部材)3は、着力クリップ2と同じ構成の部材であり、着力クリップ2と同様に、患者A体内の病変部Xを掴むことが出来る。
【0025】
輪ゴム(牽引連結部材)(弾性部材)4は、図1及び図7等に示すように、着力クリップ2と定点クリップ3の係合部2a、3aに係合することにより、両クリップ2、3同士を連結するものである。
図3は、患者Aを載せるためのベッド5を示している。
【0026】
図4は、切除補助装置1を用いた切除術の実施に用いる内視鏡10を示している。
内視鏡10の構造は公知なので詳しい説明は省略するが、体内に挿入される挿入部11の先端面11aには、図5等に示すように、エア及び洗浄水を送るための送気送水ノズル12、切除部及びその周辺を照らすための照明窓13、切除部及びその周辺を観察するために対物レンズを配置した観察窓14、並びに、鉗子チャンネル(図示略)の出口15が設けられている。鉗子チャンネルは挿入部11内に設けられており、その入口16aは鉗子挿入口突起16の端面に形成されている。
【0027】
次に、切除補助装置1を用いた病変部Xの切除要領について説明する。
切除補助装置1を用いた切除術の実施に先立っては、まず、図3に示すように、局所麻酔を施した患者Aをベッド5上に横たわらせる。
次いで、患者Aの体内に図5から図9に示すオーバーチューブ20を、患者Aの口から挿入し、このオーバーチューブ20の先端部を、臓器B内の病変部Xに近接させる。そして、オーバーチューブ20内に内視鏡10の挿入部11を挿入し、その先端部をオーバーチューブ20の先端から突出させ、病変部Xに近接させる。このように、内視鏡10の挿入部11の先端を臓器B内に挿入すると、観察窓14から得られた臓器B内の観察像が、図示を省略したテレビモニタに写し出される。
【0028】
この状態で、鉗子挿入口突起16の入口16aから、先端部に注射針を具備するチューブ状の処置具(図示略)を挿入し、その注射針を挿入部11の出口15から突出させて、注射針を病変部Xの周辺から臓器壁の粘膜下層B1に挿入して生理食塩水を注入し、病変部Xを固有筋層B2から浮き上がらせておく。
【0029】
次に、以下に説明する要領により、着力クリップ2、定点クリップ3及び輪ゴム4を、それぞれ個別に患者Aの臓器B内へ挿入する。
【0030】
まず、患者Aの体外において、弾性材料からなる可撓性チューブ30の先端開口部に、先端部2b、2dが開いた状態の着力クリップ2を嵌合し、その状態のまま、可撓性チューブ30を鉗子挿入口突起16の入口16aから鉗子チャンネル内に挿入し、その先端部を鉗子チャンネルの出口15から突出させる(図5参照)。次いで、可撓性チューブ30を操作して、着力クリップ2を病変部Xに近づけたら、可撓性チューブ30内に事前に挿入してあるプッシングロッド(図示略)を前方に押し出して、着力クリップ2を可撓性チューブ30から脱落させ、病変部X近傍に配置させる(図6参照)。
【0031】
次いで、図示は省略したが、鉗子チャンネルから可撓性チューブ30を一旦引き抜き、体外において、可撓性チューブ30の先端開口部に、先端部3b、3d同士が開いた状態の定点クリップ3を嵌合して、可撓性チューブ30により定点クリップ3を弾性把持し、その状態のまま、可撓性チューブ30を鉗子挿入口突起16の入口16aから鉗子チャンネル内に挿入し、その先端部を鉗子チャンネルの出口15から突出させる。次いで、可撓性チューブ30を操作して、定点クリップ3を病変部Xに近づけたら、プッシングロッドを前方に押し出して、定点クリップ3を可撓性チューブ30から脱落させ、病変部X近傍に配置させる(図6参照)。
【0032】
次いで、鉗子チャンネルから可撓性チューブ30を引き抜き、代わりに、図6に示す把持鉗子40を鉗子チャンネルに挿入し、その先端部を、挿入部11の先端面11aから突出させる。この把持鉗子40は、可撓性チューブ40aの先端に開閉可能な金属製の把持部材41を具備し、かつ、可撓性チューブ40aの基端部に操作部(図示略)を具備するものであり、この操作部を操作すると把持部材41が開閉する。
そして、この把持鉗子41を操作して着力クリップ2の調整部材2fを把持し、その幅を狭めることにより、着力クリップ2の両先端部2b、2dの間で、病変部Xの一方の端部X1を掴む(図6参照)。
さらに、把持鉗子40を操作して、定点クリップ3の調整部材3fを掴み、その幅を狭めることにより、両先端部3b、3dの間で、病変部Xの他方の端部(別の対象部位)X2を掴む(図6参照)。
【0033】
次いで、把持鉗子40を内視鏡10から一旦抜き取り、体外において、把持部材41で輪ゴム4を把持し、その状態で、再度、把持鉗子40を鉗子チャンネルに挿入して、輪ゴム4と挿入部11の先端部を臓器B内に挿入する(図6参照)。
そして、把持鉗子40の操作部を操作することによって、輪ゴム4の一部を、着力クリップ2の係合部2aと調整部材2fの間に通して係合部2aに係合し、さらに、輪ゴム4の他の一部を、定点クリップ3の係合部3aに係合させて、臓器B内において切除補助装置1を完成させる(図7参照)。
【0034】
このように、着力クリップ2と定点クリップ3を病変部Xに掛着させた状態で切除補助装置1を組み立てると、輪ゴム4が初期状態に比べて伸び、輪ゴム4全体に、着力クリップ2と定点クリップ3とを引き寄せ合う張力が生じる。このため、着力クリップ2が定点クリップ3側に引き寄せられ、病変部X1は所望方向に引っ張られた状態となる。
【0035】
このように、病変部Xが所望方向に引っ張られた状態となると、病変部Xと正常組織との境界部に、十分な大きさの切除部分が形成されるので、続いて、把持鉗子40を内視鏡10から取り出し、図7に示すように、高周波メス50などの切開具を鉗子チャネルから臓器B内に挿入し、病変部Xを粘膜とともにその端部X1から切除する。
そして、端部X1を一旦切除すると、病変部Xは、輪ゴム4に生じた張力により、着力クリップ2に掴まれた端部X1部分が、定点クリップ3に掴まれた端部X2側に引き寄せられるので、高周波メス50による切除領域が、端部X1側から端部X2側までスムーズに拡がり(図8参照)、やがて、病変部X全体が完全に切除される(図9参照)。
なお、高周波メス50による切除作業時においては、切除領域が拡がるにつれて、高周波メス50の先端50aの位置の確認はより容易となる。
【0036】
以上のように切除作業を終えると、両クリップ2、3に病変部Xが取り付いた状態になるので、病変部Xが紛失することが防止される。切除した病変部Xを回収するには、連結されたままの着力クリップ2、定点クリップ3、輪ゴム4、及び病変部Xの一部分を把持鉗子40で把持し、そのままの状態で、内視鏡10を体内から抜き去る。そして、その後に、切除した部分の縫合、消毒などの処置を行う。
【0037】
以上のように、本実施形態の切除補助装置1を用いれば、磁気誘導装置のような高価を装置を用いずに、病変部Xを所望方向に十分な距離だけ移動させることができる。そのため、病変部Xと正常組織との境界の切除部分を、容易かつ確実に十分な大きさで確保することができ、また、病変部Xが扁平な形状であっても、十分な大きさの切除部分を作りだすことができ、しかも、高周波メス50等の処置具による切除時に、輪ゴム4の張力により、病変部Xの一方の端部X1が他方の端部X2側に引き寄せられるので、病変部Xを容易に切除することが可能となる。
【0038】
さらに、病変部Xは着力クリップ2により持ち上げられるため、切除部分を十分確保することができ、すでに切除した病変部Xが固有筋層B2上に落ち込むことを防止できる。
また、任意の位置に着力クリップ2と定点クリップ3を配置できるため、切除した病変部Xにより内視鏡の視界が妨げられることがない。
【0039】
次に、本発明の第2の実施形態について、図10及び図11を参照しながら説明する。
なお、第1の実施形態と同じ部材には同じ符号を付すに止めて、その詳細な説明は省略する。
【0040】
本実施形態の切除補助装置60は、着力クリップ61、定点クリップ62、及び圧縮コイルばね63(牽引連結部材)(弾性部材)とからなるものである。
図示する着力クリップ(着力掛着部材)61は、患者(対象物)体内の病変部(対象部位)を掴んで持ち上げるための部材である。このクリップ61は、U字状に折り曲げた弾性材料からなるものであり、その弾性により、互いに離れる方向に付勢された一対の開閉片61aを具備しており、両開閉片61aの先端には先端部61bが形成されている。両開閉片61aの相対間隔は可変であり、両開閉片61aには、互いの間隔を調節後に位置固定するラチェット部材61cが備えられている。図11に示すように、このラチェット部材61cは、一対の係合片61c1を具備しており、両係合片61c1の対向面には、互いに係脱可能な係合歯61c2が形成されている。ラチェット部材61cは、対をなす開閉片61aが間隔を縮める方向に弾性変形するときにはその変形を妨げず、かつ両開閉片61aの間隔調整後にその間隔を保持する機能を有する。さらに、両開閉片61aの基端部間には係合孔61dが形成されている。
【0041】
同じく図示する定点クリップ(定点掛着部材)62は、着力クリップ61と同じ構成のものであり、開閉片62a、先端部62b、ラチェット部材62c、係合孔62dを具備しており、両先端部62b間で病変部(対象部位)を掴むものである。
【0042】
圧縮コイルばね63は、ばね部63aの両端部にフック部63b、63cをそれぞれ具備するものである。
【0043】
図示は省略するが、着力クリップ61は、体外において、把持鉗子40の把持部材41により把持され、そのままの状態で把持鉗子40により臓器B内に挿入され、把持部材41を開くことにより、病変部X近傍に載置される。なお、定点クリップ62も同様の要領により、病変部X近傍に載置される。
そして、このように病変部X近傍に着力クリップ61と定点クリップ62を載置した後に、把持鉗子40を操作して着力クリップ61のラチェット部材61cを締めることにより、着力クリップ61の両開閉片61aを閉じて、両先端部61bにより病変部Xの一方の端部X1を掴む(図10参照)。
さらに、同じ要領により、定点クリップ62の両先端部62bにより、病変部Xの他方の端部X2を掴む。
【0044】
圧縮コイルばね63は、体外において、そのフック部63bが把持鉗子40の把持部材41により把持され、そのままの状態で把持鉗子40により臓器B内に挿入される。
そして、把持部材41と圧縮コイルばね63を臓器B内に入れた後に、把持部材41により、圧縮コイルばね63のフック部63bを着力クリップ61の係合孔61dに係合し、その後に、把持部材41により、フック部63cをばね部63aの付勢力に抗しながら定点クリップ62側に引き寄せ、フック部63cを定点クリップ62の係合孔62dに係合させ、臓器B内において切除補助装置60を組み立てる。
【0045】
このように、着力クリップ61と定点クリップ62を病変部Xに掛着させた状態で切除補助装置60を組み立てると、圧縮コイルばね63が初期状態に比べて伸び、ばね部63aに、着力クリップ61と定点クリップ62を互いに引き寄せ合う付勢力が生じる。このため、着力クリップ61が定点クリップ62側に引き寄せられ、病変部X1が所望方向に引っ張られた状態となる。
【0046】
そのため、このような本実施形態によっても、病変部Xと正常組織との境界部に、十分な大きさの切除部分を形成することができ、さらに、高周波メス50などの切開具により、病変部X全体をスムーズに切除することができ(図示略)、第1の実施形態と同様な効果が得られる。
【0047】
最後に、本発明の第3の実施形態について、図12及び図13を参照しながら説明する。
なお、第1及び第2の実施形態と同じ部材には同じ符号を付すに止めて、その詳細な説明は省略する。
【0048】
本実施形態の切除補助装置70は、第2の実施形態と同構成の着力クリップ61と定点クリップ62、及びひも状の柔軟連結具71(牽引連結部材)とからなるものである。
この柔軟連結具71は、柔軟で弾性を有さないひも部71aと、ひも部71aの両端部と中間部とに固着された4個のフック部71b、71c、71d、71eとからなるものである。
【0049】
着力クリップ61と定点クリップ62は、第2の実施形態と同じ要領により、臓器B内に挿入される。そして、把持部材41を利用することにより、両クリップ61、62の先端部61b、62b間で、病変部Xの両端部X1、X2をそれぞれ掴む(図12参照)。
【0050】
柔軟連結具71は、体外において、そのフック部71bが把持鉗子40の把持部材41により把持され、そのままの状態で把持鉗子40により臓器B内に挿入される。
さらに、把持部材41により、一方の端部のフック部71bが着力クリップ61の係合孔61dに係合され、その後さらに、把持部材41により、他方の端部のフック部71eが定点クリップ62の係合孔62dに係合され、臓器B内において切除補助装置70が組み立てられる。
そして、係合孔62dにフック部71eを係合すると、ひも部71aが緊張し、ひも部71aに張力T(図12参照)が生じるので、着力クリップ61が定点クリップ62側に引き寄せられ、病変部X1が所望方向に引っ張られた状態となる。そのため、このような本実施形態によっても、病変部Xと正常組織との境界部に、十分な大きさの切除部分を形成することができ、病変部X全体をスムーズに切除することができる。
【0051】
この後さらに、把持鉗子(図示略)40により、フック部71eを係合孔62dから外し、フック部71dを係合孔62dに係合させると、ひも部71aにさらに大きな張力が生じ、着力クリップ61が定点クリップ62側にさらに引き寄せられるので、高周波メス50による切除力が、病変部X1の一方の端部X1側から他方の端部X2側によりスムーズに拡がる。さらに、図13に示すように、把持鉗子40を使って、係合孔62dにフック部71cを係合させると、ひも部71aにさらに大きな張力が生じ、着力クリップ61が定点クリップ62側にさらに引き寄せられるので、切除領域が端部X2側にさらに拡がり、最終的に病変部Xが完全に切除される(図示略)。
【0052】
このように本実施形態によっても、第1及び第2の実施形態と同様に、病変部Xと正常組織との境界部に、十分な大きさの切除部分を形成することができ、さらに、高周波メス50などの切開具により、病変部X全体をスムーズに切除することができる。
【0053】
さらに、定点クリップ62の係合孔62dに係合させるフック部71c、71d、71eを選択することにより、ひも部71aに生じる張力Tが変化するので、病変部Xと正常組織との境界部に形成しようとする切除部分の大きさを調整することが可能である。
【0054】
以上、本発明について各実施形態を参照しつつ説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、改良の目的または本発明の思想の範囲内において改良または変更が可能である。例えば、着力クリップ2、61と定点クリップ3、62の代わりに、病変部Xに突き刺すことが可能な釣り針状の針部材(着力掛着部材及び定点掛着部材)(図示略)を2個用意し、これらの針部材同士を、輪ゴム4や圧縮コイルばね63や柔軟連結具71で連結して実施することも可能である。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によると、簡単かつ確実、さらに従来より安価に、切除術中に病変部を所定の方向に牽引できるようにした内視鏡用切除補助装置、及び切除補助装置を用いた内視鏡による処置方法を提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態の切除補助装置の構成を示す図である。
【図2】クリップの形状を示す図である。
【図3】ベッドに患者を載せた状態を示す側面図である。
【図4】病変部の切除を行うときに用いる内視鏡の全体図である。
【図5】切除補助装置を体内の臓器内へ導入する手順を示す図である。
【図6】同じく、切除補助装置を体内の臓器内へ導入する手順を示す図である。
【図7】切除補助装置を用いた病変部の切除工程を示す図である。
【図8】同じく、切除補助装置を用いた病変部の切除工程を示す図である。
【図9】切除補助装置を用いた病変部の切除作業により、病変部が完全に切除された状態を示す図である。
【図10】本発明の第2の実施形態の図7と同様の、病変部の切除工程を示す図である。
【図11】ラチェット部材の拡大断面図である。
【図12】本発明の第3の実施形態の図7と同様の、病変部の切除工程を示す図である。
【図13】同じく、病変部の切除工程を示す図である。
【符号の説明】
1 切除補助装置
2 着力クリップ(着力掛着部材)
2a 係合部
2b 先端部
2c 第1基片
2d 先端部
2e 第2基片
2f 調整部材
3 定点クリップ(定点掛着部材)
3a 係合部
3b 先端部
3c 第1基片
3d 先端部
3e 第2基片
3f 調整部材
4 輪ゴム(牽引連結部材)(弾性部材)
5 ベッド
10 内視鏡
11 挿入部
11a 先端面
12 送気送水ノズル
13 照明窓
14 観察窓
15 鉗子チャンネルの出口
16 鉗子挿入口突起
16a 入口
20 オーバーチューブ
30 可撓性チューブ
40 把持鉗子
40a 可撓性チューブ
41 把持部材
50 高周波メス
50a 先端部
60 切除補助装置
61 着力クリップ(着力掛着部材)
61a 開閉片
61b 先端部
61c ラチェット部材
61c1 係合片
61c2 係合歯
61d 係合孔
62 定点クリップ(定点掛着部材)
62a 開閉片
62b 先端部
62c ラチェット部材
62c1 係合片
62c2 係合歯
62d 係合孔
63 圧縮コイルばね(牽引連結部材)(弾性部材)
63a ばね部
63b 63c フック部
70 切除補助装置
71 柔軟連結具(牽引連結部材)
71a ひも部
71b 71c 71d 71e フック部
A 患者(対象物)
A1 頭部
B 臓器
B1 粘膜下層
B2 固有筋層
X 病変部(対象部位)
X1 X2 端部

Claims (14)

  1. 対象物内部の対象部位を掛着する着力掛着部材と、
    この着力掛着部材とは異なる位置で上記対象物内部に掛着される定点掛着部材と、
    該着力掛着部材と定点掛着部材とを連結し、上記着力掛着部材を上記定点掛着部材側に牽引する牽引連結部材と、
    を具備することを特徴とする内視鏡用切除補助装置。
  2. 請求項1記載の内視鏡用切除補助装置において、上記牽引連結部材が、上記着力掛着部材と定点掛着部材とに係合される弾性部材である内視鏡用切除補助装置。
  3. 請求項2記載の内視鏡用切除補助装置において、上記弾性部材が、上記着力掛着部材と定点掛着部材とに係合される輪ゴムである内視鏡用切除補助装置。
  4. 請求項2記載の内視鏡用切除補助装置において、上記弾性部材が、両端部に、上記着力掛着部材と定点掛着部材とにそれぞれ係合するフック部を具備する圧縮コイルばねである内視鏡用切除補助装置。
  5. 請求項1記載の内視鏡用切除補助装置において、上記牽引連結部材が、柔軟なひも部と、該ひも部に、その長手方向に並べて固定された少なくとも3つのフック部と、を具備し、上記フック部はそのうちのいずれか2つを選択的に、上記着力掛着部材と定点掛着部材とにそれぞれ係合するものである内視鏡用切除補助装置。
  6. 請求項1から5のいずれか1項記載の内視鏡用切除補助装置において、上記着力掛着部材または定点掛着部材の少なくとも一方が、開閉可能で、上記対象部位を挟持可能なクリップである内視鏡用切除補助装置。
  7. 請求項1から5のいずれか1項記載の内視鏡用切除補助装置において、上記着力掛着部材または定点掛着部材の少なくとも一方が、上記対象部位に突き刺さる釣り針状の針部材である内視鏡用切除補助装置。
  8. 対象物内部の対象部位に着力掛着部材を掛着し、
    該着力掛着部材の掛着部位とは異なる上記対象物内部に定点掛着部材を掛着し、
    上記着力掛着部材と上記定点掛着部材とを牽引連結部材で連結し、該牽引連結部材により、上記着力掛着部材を上記定点掛着部材側に牽引することを特徴とする切除補助装置を用いた内視鏡による処置方法。
  9. 請求項8記載の切除補助装置を用いた内視鏡による処置方法において、上記牽引連結部材を、上記着力掛着部材と定点掛着部材とに係合される弾性部材とした切除補助装置を用いた内視鏡による処置方法。
  10. 請求項9記載の切除補助装置を用いた内視鏡による処置方法において、上記弾性部材を、上記着力掛着部材と定点掛着部材とに係合される輪ゴムとした切除補助装置を用いた内視鏡による処置方法。
  11. 請求項9記載の切除補助装置を用いた内視鏡による処置方法において、上記弾性部材を、両端部に、上記着力掛着部材と定点掛着部材とにそれぞれ係合するフック部を具備する圧縮コイルばねとした切除補助装置を用いた内視鏡による処置方法。
  12. 請求項8記載の切除補助装置を用いた内視鏡による処置方法において、上記牽引連結部材を、柔軟なひも部と、該ひも部に、その長手方向に並べて固定された少なくとも3つのフック部と、を具備し、上記フック部はそのうちのいずれか2つを選択的に、上記着力掛着部材と定点掛着部材とにそれぞれ係合するものとした切除補助装置を用いた内視鏡による処置方法。
  13. 請求項8から12のいずれか1項記載の切除補助装置を用いた内視鏡による処置方法において、上記着力掛着部材または定点掛着部材の少なくとも一方を、開閉可能で、上記対象部位を挟持可能なクリップとした切除補助装置を用いた内視鏡による処置方法。
  14. 請求項8から12のいずれか1項記載の切除補助装置を用いた内視鏡による処置方法において、上記着力掛着部材または定点掛着部材の少なくとも一方を、上記対象部位に突き刺さる釣り針状の針部材とした切除補助装置を用いた内視鏡による処置方法。
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