JP2004321172A - 腸内環境改善用食品 - Google Patents
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Abstract
【課題】 腸内細菌叢を改善する、腸内環境改善用食品を提供すること。
【解決手段】 植物体(トウガラシを除く)の乳酸菌発酵物を含む腸内環境改善用食品。植物体が、アブラナ科植物であり、そして乳酸菌が、ラクトバチルス属に属する細菌であることが好ましい。
【選択図】 なし
【解決手段】 植物体(トウガラシを除く)の乳酸菌発酵物を含む腸内環境改善用食品。植物体が、アブラナ科植物であり、そして乳酸菌が、ラクトバチルス属に属する細菌であることが好ましい。
【選択図】 なし
Description
本発明は、腸内環境を改善する食品に関する。
ヒトの腸内には100兆個以上の細菌が棲息しており、その種類は約100種類に及ぶ。これらの細菌群は、腸内細菌叢を構成し、互いに共生または拮抗関係を保ちながら、摂取された食物または消化管分泌成分を栄養素として増殖し、便とともに細菌群が排泄される。これらの腸内細菌は、食物の消化吸収を高めたり、人体にとって有害な細菌の増殖を抑制し、感染を防ぐ効力をもつともいわれている。さらに、腸内細菌は、免疫、ガンおよびアレルギーとも深い関係があることが明らかになりつつある。
近年、腸内環境を改善する成分を積極的に摂取し、腸内の有用細菌数を増加させる食品が提案されている(例えば、特許文献1〜3)。さらに生体に有用な微生物(有用細菌)を食品として摂取することにより、腸内環境を改善する、いわゆる「プロバイオティクス」としてのアプローチもある(例えば、特許文献4および5)。
しかし、腸内環境を改善する成分を摂取しただけでは、その効力が十分でなく、体質によっては胃腸の機能が不安定になるなど、その効果が一律に得られるようなものではなかった。他方、有用細菌を含む食品は、有用細菌自体が腸内で生育しにくかったり、生育したとしても、強制的に摂取させた食品に含まれる外来の細菌種が増えるのみであり、腸内に元来棲息する有用細菌を増加させる観点からは十分な効果は得られていない。
特許2823640号公報
特開平6−90733号公報
特開平11−127815号公報
特開2001−69943号公報
特開2002−193817号公報
本発明は、腸内に棲息する有用細菌を増加させることによって、腸内環境を改善する食品を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討したところ、植物体の乳酸菌発酵物が、有用細菌数を増加または活性化させることによって、腸内環境を改善することを見出して本発明を完成させた。
本発明の腸内環境改善用食品は、植物体(トウガラシを除く)の乳酸菌発酵物を含み、該乳酸菌発酵物が、発酵に用いた乳酸菌以外の腸内に棲息する有用細菌を増加または活性化させる。
好ましい実施態様においては、上記植物体は、アブラナ科植物である。
好ましい実施態様においては、上記乳酸菌は、ラクトバチルス属に属する細菌である。
好ましい実施態様においては、上記有用細菌は、バチルス属またはビフィドバクテリウム属に属する細菌である。
本発明の腸内環境改善用食品を摂取することによって、発酵に用いた乳酸菌以外の腸内に棲息する有用細菌を増加または活性化させ、腸内細菌叢を改善することができる。その結果、腸内環境を改善することができる。したがって本発明の食品は、便秘の改善、免疫賦活、有害微生物代謝産物および有害酵素の抑制、生活習慣病の予防、アレルギー体質の改善などに有用である。
本発明の腸内環境改善用食品は、植物体の乳酸菌発酵物を含む。この植物体の乳酸菌発酵物は、植物体を乳酸菌により発酵させることによって得られるものをいい、発酵後、植物体の残渣を除去した発酵液も含まれる。
本発明に用いられる植物体としては、キャベツ、ケール、カリフラワー、ブロッコリー、白菜、大根、ラディッシュ、カイワレ大根、ワサビなどのアブラナ科植物;ピーマン、ナス、トマトなどのナス科植物(トウガラシを除く);大麦、小麦、二条麦、イネ、クマザサなどのイネ科植物(特に、葉);レタス、セロリ、セリ、パセリ、ニンジンなどのセリ科植物;キュウリ、カボチャ、メロン、トウガン、スイカなどのウリ科植物;玉ネギ、ニラ、ネギ、ニンニク、アスパラガスなどのユリ科植物;チャノキ、トウチャ、アッサムチャ、ヒサカキなどのツバキ科植物などが挙げられる。さらに、浅草ノリ、ワカメ、コンブ、アラメ、テングサ、ヒジキなどの藻類;ミカン、ウメ、ブドウ、リンゴ、カキ、バナナ、ナシなどの果実類なども挙げられる。これらの中で、好ましくはアブラナ科植物およびキク科植物、より好ましくはアブラナ科植物が用いられる。具体的には、アブラナ科植物のキャベツおよびブロッコリー、キク科植物のレタスが好適に用いられる。本発明においては、特にキャベツが好適に用いられる。これらの植物体は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いて発酵を行ってもよい。あるいは発酵後に、それぞれの植物体発酵物を混合することもできる。
キャベツは、食用に用いられるキャベツであれば、種類は特に限定されず、例えば、赤キャベツまたは紫キャベツであってもよい。赤キャベツは、赤色を保ったまま発酵できる点で好適に用いられ得る。キャベツの品種も特に限定されない。
植物体は、発酵前に予め粉砕処理することが好ましい。粉砕により得られる植物体(粉砕処理物)の形態は、カッター、スライサーなどで処理した破砕物;ミキサー、ジューサー、ブレンダー、マスコロイダーなどで処理した粉砕物またはペーストなどでもよい。発酵を効率よく行う観点から、一辺の長さが約1mm以下、好ましくは0.1mm以下の破砕物、粉砕物、またはペーストが好ましい。粉砕の効率を上げるために植物体に水を添加して行ってもよい。水の添加量は特に制限はないが、効率よく発酵させる、あるいは得られた発酵物を粉末化する観点から、植物体1重量部に対して1〜10重量部であることが好ましい。
本発明で用いられる乳酸菌は、植物体に付着した乳酸菌をそのまま利用してもよいが、通常、植物体に新たに添加する。発酵開始時の所定の乳酸菌量を多くすることにより乳酸菌を優先的に増殖させ、雑菌の繁殖の危険性を低くするだけでなく、菌株を選択することにより有用物質をより多く生産させることができる。
乳酸菌としては、ロイコノストック・メセントロイデス、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・カゼイ、ストレプトコッカス・サーモフィラス、ストレプロコッカス・フェカリス、ビフィドバクテリウム・ロンガムなどが挙げられる。好ましくはラクトバチルス属に属する乳酸菌である。特に、ラクトバチルス・プランタラムは、植物体の発酵において、その耐酸性、生育温度、および増殖速度の面から好適である。これらの乳酸菌は、単独でまたは組み合わせて用いられ得る。
乳酸菌の添加量は、植物体100重量部に対して、好ましくは0.005〜5.0重量部、より好ましくは0.01〜2.0重量部である。
乳酸菌を添加する前に、植物体または粉砕処理物に、植物体の細胞壁を分解する酵素を添加してもよい。このような酵素を添加することにより、植物体の細胞内に含まれる栄養分が溶出し、乳酸菌が資化し得る栄養分が多くなるため、乳酸菌の生育が良くなる。さらに、これらの酵素が植物の細胞壁(膜)へ作用する結果、植物体の乳酸菌発酵液中のセロビオース、セロオリゴ糖などの含量が多くなり、発酵液に機能性が付与されるという効果が得られる。これらの酵素としては、ペクチン分解酵素(例えば、ポリガラクツロナーゼ、ペクチンリアーゼ、ペクチンエステラーゼ、およびプロトペクチナーゼ)、セルロース分解酵素(例えば、セルラーゼ、およびヘミセルラーゼ)などが挙げられる。これらの酵素は混合して用いてもよい。具体的には、プロトペクチナーゼ、ヘミセルラーゼ、およびセルラーゼを含む製剤が好適に用いられる。これらは、植物体に対して0.001重量%〜約0.2重量%程度添加されるが、用いる酵素の精製度により異なる。ポリガラクツロナーゼを用いる場合、この酵素の最適pHはアルカリ側にあるので、植物体または粉砕処理物のpHが低い場合は、注意を要する。
乳酸菌を添加する前に、乳酸菌が優先的に増殖できる環境を整えるために、植物体または粉砕処理物のpHを低くしておくことが好ましい。例えば、乳酸菌がラクトバチルス・プランタラムである場合は、pH4.0程度に調整してから発酵を開始すれば、短期間で植物体の乳酸菌発酵物を得ることができる。植物体のpHを低下させる方法としては、例えば、植物体にpH低下剤を添加すること、あるいは植物体に電気分解処理した水(電解水)を添加することが挙げられる。
pH低下剤としては、塩酸、グルコン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、ソルビン酸などが挙げられる。発酵物の酸味を抑制するためには、グルコン酸が好ましい。これらのpH低下剤は、植物体に対して約0.1重量%〜1.2重量%程度加えることが好ましく、グルコン酸では約1重量%、他の有機酸では約0.3重量%加えることが好ましい。電解水は、該処理に用いた有隔膜の電解槽における陽極側の水を使用する。得られた電解水のpHが低すぎる場合には、イオン交換水の添加によって調整すればよい。
発酵を開始する前に、乳酸菌の優先的な生育のために、グルタミン酸またはその塩を植物体または粉砕処理物に加えることが好ましい。添加するグルタミン酸の量は、植物体または粉砕処理物に対して好ましくは0.05〜1重量%程度、より好ましくは0.2重量%程度である。
さらに乳酸菌の発酵を促進するために、植物体または粉砕処理物に予め乳酸菌代謝性の糖を添加してもよい。糖の添加は、糖分含量が少ない植物(糖分含量が3重量%未満)を発酵させる場合に有用である。また、糖は、発酵の促進および飲料への甘味の付加という目的で添加してもよい。添加される糖は、乳酸菌の生育と発酵に用いられる糖であり、例えば、庶糖、ぶどう糖、果糖、麦芽糖などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの糖は、好ましくは、糖分が植物の糖分と合わせて植物体または粉砕処理物中に約3重量%になるように加えられるが、これ以上になっても構わない。
次に、上記の植物体または粉砕処理物を乳酸菌により発酵させる。この発酵によって、植物体の成分が乳酸菌によって資化され、腸内細菌叢を改善し得る成分へと変換され得る。さらに、乳酸菌発酵により、低いpHを維持できるため、雑菌の繁殖も防ぐことができる。
発酵は、嫌気性条件下で行うことが好ましい。嫌気性条件は、植物体の混合物を脱気することにより、または発酵槽を密封して、窒素ガス、二酸化炭素ガス等のガスで満たすか、もしくは減圧することにより、あるいはそれらを組み合わせることにより得られる。また、嫌気条件下で発酵することにより、得られる植物体の乳酸菌発酵物の風味も良くなる。
発酵温度は、15℃〜40℃の範囲内で行われ得る。時間の効率化を重視する場合は、30℃〜40℃が好ましく、発酵物の青臭みの除去などの品質面を重視する場合は、15℃〜25℃の低温で行うことが好ましい。
発酵時間は、処理温度に応じて適宜決定すればよい。例えば30℃〜40℃の場合は、6時間〜48時間、好ましくは12時間〜36時間である。20℃〜25℃の場合は、5日間〜20日間である。
発酵の停止は、通常、嫌気性条件を解除することにより行うが、糖を加えて行うことも可能である。このような糖としては、糖アルコール(例えば、ソルビトール)、オリゴ糖(例えば、マルトオリゴ糖、キトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖)などが挙げられる。このようなオリゴ糖は、発酵物の細菌叢改善作用を高めるだけでなくう蝕の予防などに効果があるため、得られる植物体の乳酸菌発酵物に機能性をさらに付与し得る。
このようにして、植物体の乳酸菌発酵物を得ることができる。得られた植物体の乳酸菌発酵物から発酵液を回収してもよい。発酵液の回収には当業者が通常用いる方法、例えば、遠心分離、濾過などが適用され得る。
発酵液は、濃縮してペースト状にすることもできる。濃縮には、膜濃縮、加熱濃縮、真空(減圧)濃縮、凍結濃縮などの種々の方法が用いられ、加熱による成分の変性を低減する観点から、加熱を必要としない膜濃縮および凍結濃縮が好ましい。
さらに必要に応じて、これらの植物体の乳酸菌発酵物を殺菌処理して保存する。殺菌は、気流殺菌、高圧殺菌、加熱殺菌などの当業者が通常用いる方法により行う。殺菌は、各種の栄養分を保持するために、できるだけ低温、かつ短時間で行うことが好ましい。
このようにして得られる植物体の乳酸菌発酵物は、乾燥し、粉末化して、例えば、発酵粉末(発酵物の一形態)または発酵エキス末(発酵液の一形態)としてもよい。発酵物の乾燥は、当業者が一般的に用いる種々の方法が用いられるが、凍結乾燥、および噴霧乾燥が好ましく用いられる。噴霧乾燥を行う場合、必要に応じてデキストリン、シクロデキストリン、デンプン、およびマルトースのような賦形剤を添加する。好適にはデキストリンが用いられ、発酵物を乾燥する場合は、発酵物とデキストリンとの比は、重量比で1:5〜10:1が好ましい。発酵液を乾燥する場合は、処理液とデキストリンとの比は、重量比で1:10〜5:1が好ましい。
本発明の腸内環境改善用食品は、上記の植物体の乳酸菌発酵物を含む。その含量は、食品およびその摂取態様に応じて、適宜決定され得る。植物体の乳酸菌発酵物は、本発明の食品中に1日の摂取量が好ましくは0.1〜3g、より好ましくは0.3〜1gとなるような割合で含む。上記範囲内で発酵物を含有することによって、十分な腸内環境改善効果を得ることができる。
本発明の食品は、上記植物体の乳酸菌発酵物の他に、必要に応じて、ローヤルゼリー、ビタミン類、ミネラル、キチン・キトサン、レシチン等を含む他の食品素材を含有してもよい。そしてさらに、ハードカプセル、ソフトカプセル等のカプセル剤、錠剤、もしくは丸剤として成形されるか、または粉末、顆粒、ティーバッグなどにする。これらは、その形状または好みに応じて、そのままか、あるいは水、湯、もしくは牛乳などに溶いて、または成分を浸出して飲むことができる。
さらに本発明の食品は、植物体の乳酸菌発酵物として発酵液を用いる場合、健康飲料としても利用し得る。例えば、植物体の乳酸菌発酵液そのままか、あるいは種々の調味料、例えば、グラニュー糖、蜂蜜、ソルビットなどの甘味料、アルコール、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸などの酸味料、香料、色素などを加えて、好みの味に調整して用いることができる。そして、このような発酵液は、他の発酵ジュースや野菜ジュースなど(例えば、人参ジュースあるいは混合野菜ジュース)と混合すれば、更に栄養価の高いジュースとすることができる。あるいは、寒天等に混合してゼリーとすることもでき、野菜ジュースなどと混合してシャーベット、フローズンヨーグルトあるいはアイスクリームとすることもできる。また、これらの混合ジュースは、低pHであれば、120℃、4分の完全殺菌をしなくても、100℃以下の殺菌条件で殺菌できる。例えば、pHが4.0以下の場合では、65℃、10分相当の殺菌条件で十分に殺菌できる。
本発明の腸内環境用改善用食品は、摂取することによって、発酵に用いた乳酸菌以外の腸内に棲息する有用細菌を増加または活性化させ、それによって、腸内細菌叢を改善すること、すなわち腸内環境を改善することができる。さらに、植物体の乳酸菌発酵物は、乳酸菌により生成された整腸作用を有する有機酸などを含むため、腸内環境を改善する効果だけでなく、優れた胃腸機能の改善効果も有する。
上記腸内に棲息する有用細菌としては、バクテロイデス属、ユーロバクテリウム属、ペプトコッカス属、ビフィドバクテリウム属、ラクトバチルス属、および一部のバチルス属に属する細菌が挙げられる。特に、バチルス属およびビフィドバクテリウム属の菌体数が増加する。具体的には、成人の健康維持に有用なビフィドバクテリウム・アドレッセンス、ビフィドバクテリウム・ロングガム、およびバチルス・コアグランスの菌体数が増加する。
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明がこの実施例に限定されないことはいうまでもない。
(実施例1)
キャベツを4つ切りにして水洗いした後、カッターミキサーで破砕し、さらに、マスコロイダーを用いて粉砕した。この粉砕したキャベツ1kgに水2kgを加えた。次に、このキャベツ粉砕物に、ラクトバチルス・プランタムの乾燥乳酸菌末(協和ハイフーズ株式会社)を最終濃度が0.1重量%となるように添加してよく攪拌した後、ジャケットつきタンクに充填し、30℃にて48時間嫌気性発酵を行った。発酵後、得られたキャベツの乳酸菌発酵物を遠心分離して上清を回収し、キャベツの乳酸菌発酵液を得た。この発酵液を加熱濃縮および加熱殺菌し、さらにデキストリンを100g加えてスプレードライすることにより、キャベツの乳酸菌発酵液の乾燥粉末176gを得た。得られた乾燥粉末0.3gあたり100mLの水を加えて溶解し、食品を調製した。
キャベツを4つ切りにして水洗いした後、カッターミキサーで破砕し、さらに、マスコロイダーを用いて粉砕した。この粉砕したキャベツ1kgに水2kgを加えた。次に、このキャベツ粉砕物に、ラクトバチルス・プランタムの乾燥乳酸菌末(協和ハイフーズ株式会社)を最終濃度が0.1重量%となるように添加してよく攪拌した後、ジャケットつきタンクに充填し、30℃にて48時間嫌気性発酵を行った。発酵後、得られたキャベツの乳酸菌発酵物を遠心分離して上清を回収し、キャベツの乳酸菌発酵液を得た。この発酵液を加熱濃縮および加熱殺菌し、さらにデキストリンを100g加えてスプレードライすることにより、キャベツの乳酸菌発酵液の乾燥粉末176gを得た。得られた乾燥粉末0.3gあたり100mLの水を加えて溶解し、食品を調製した。
この食品を10名の被験者に摂取させ、食品摂取前および摂取後の便に存在する腸内有用細菌の増加の割合を測定することによって、腸内環境改善効果を評価した。まず、各被験者の便をそれぞれ採取した後、上記食品100mLを各被験者に1日1回の割合で2週間摂取させた。2週間摂取後、再度、各被験者の便を採取し、食品摂取前後の便を採取した。
次に、食品摂取前後の便各200mgからQIAamp DNA Stool Mini Kit(キアゲン社製)を用いて便中に存在する腸内の有用細菌のDNAを抽出した。
DNAを150ng(OD280nmで測定し、算出した値)含む抽出物と200μMのプライマー0.5μLと精製水23μLとを混合して、さらに、PCRビーズ(ファルマシアバイオテック)を加えて試料を調製した。上記プライマーは、ビフィドバクテリウム・アドレッセンスについては、配列番号1および配列番号2のDNAを、バチルス・コアグランスについては、配列番号3および配列番号4のDNAを用いた。
各試料についてプログラムテンプコントロールシステムPC−708(ASPEC)を用いて、以下の条件でPCRを行った。PCRの条件は、ビフィドバクテリウム・アドレッセンスの場合、94℃で2分間加熱した後、94℃で20秒間、45℃で20秒間、および72℃で1分間の反応を1サイクルとして、20サイクル繰り返すように設定した。バチルス・コアグランスの場合、94℃で2分間加熱した後、94℃で20秒間、55℃で20秒間、および72℃で1分間の反応を1サイクルとして、20サイクル繰り返すように設定した。なお、この条件は、予め食品摂取前の便から抽出したDNAを用いて、その増幅がプラトーに達しないように設定した。
PCR終了後、各PCR増幅物を、トリス、ホウ酸、およびEDTAを含むTBE緩衝液で希釈して作製した1%アガロースゲルを用いる電気泳動に供し、30分間泳動を行った。分子量マーカーとしてOne Step Ladder 100(ニッポンジーン)を用いた。電気泳動後、アガロースゲル中のDNAのバンドをエチジウムブロマイドで染色し、イメージアナライザー(Tyhoon:アマシャムバイオテク株式会社)を用いて、以下の所定の分子量のバンドの発光強度を数値化した:
ビフィドバクテリウム・アドレッセンスのDNA分子量:279bp、
バチルス・コアグランスのDNA分子量:269bp。
ビフィドバクテリウム・アドレッセンスのDNA分子量:279bp、
バチルス・コアグランスのDNA分子量:269bp。
食品摂取前の便由来の試料から得られた検出バンドの発光強度を1とした場合の、同一被験者の食品摂取後の便由来の試料から得られたバンドの発光強度の相対値をそれぞれ算出し、その平均値を求めた。結果を表1に示す。
(比較例1)
ラクトバチルス・プランタラムの乾燥乳酸菌末を添加せず、さらに発酵を行わずに上清を回収したこと以外は、実施例1と同様にしてキャベツ粉砕物の上清の乾燥粉末180gを得た。得られた乾燥粉末0.3gあたり100mLの水を加えて溶解し、食品を調製した。以後の操作は、実施例1と同様に行って、腸内環境改善効果を評価した。結果を表1に示す。
ラクトバチルス・プランタラムの乾燥乳酸菌末を添加せず、さらに発酵を行わずに上清を回収したこと以外は、実施例1と同様にしてキャベツ粉砕物の上清の乾燥粉末180gを得た。得られた乾燥粉末0.3gあたり100mLの水を加えて溶解し、食品を調製した。以後の操作は、実施例1と同様に行って、腸内環境改善効果を評価した。結果を表1に示す。
表1の結果から、実施例1および2の植物体の乳酸菌発酵物を含む食品を摂取した群は、いずれも有用細菌であるビフィドバクテリウム・アドレッセンスおよびバチルス・コアグランスが約2〜2.5倍増加していることがわかる。これに対して、比較例1および2の乳酸菌発酵していない植物体を含む食品を摂取した群では、食品摂取前の有用細菌の量と比較してあまり変化はなかった。これは、植物体の乳酸菌発酵物を含む食品を摂取することによって、腸内に棲息する有用細菌が増殖し、腸内細菌叢が改善されていることを示す。
本発明の腸内環境改善用食品を摂取することによって、発酵に用いた乳酸菌以外の腸内に棲息する有用細菌を増加または活性化させ、腸内細菌叢を改善することができる。その結果、腸内環境を改善することができる。したがって本発明の食品は、便秘の改善、免疫賦活、有害微生物代謝産物および有害酵素の抑制、生活習慣病の予防、アレルギー体質の改善などに有用である。
Claims (4)
- 植物体(トウガラシを除く)の乳酸菌発酵物を含む、腸内環境改善用食品であって、該乳酸菌発酵物が、発酵に用いた乳酸菌以外の腸内に棲息する有用細菌を増加または活性化させる、食品。
- 前記植物体が、アブラナ科植物である、請求項1に記載の腸内環境改善用食品。
- 前記乳酸菌が、ラクトバチルス属に属する細菌である、請求項1または2に記載の腸内環境改善用食品。
- 前記有用細菌が、バチルス属またはビフィドバクテリウム属に属する細菌である、請求項1から3のいずれかの項に記載の腸内環境改善用食品。
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